JP6698565B2 - 熱電変換層、熱電変換素子、熱電変換モジュール - Google Patents

熱電変換層、熱電変換素子、熱電変換モジュール Download PDF

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Description

本発明は、熱電変換層、熱電変換素子、及び、熱電変換モジュールに関する。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料が、熱によって発電する発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換素子は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要とせず、例えば、体温で作動する腕時計、僻地用電源、及び、宇宙用電源等に用いられている。
熱電変換材料としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)に代表されるナノ炭素材料が提案されている。
例えば、特許文献1では、「半導体ナノワイヤー及び半導体ナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種を含有する熱電変換材料であって、低熱伝導粒子を含む不織布状の熱電変換材料」を開示している。つまり、特許文献1では、ナノ炭素材料である半導体ナノワイヤー及び半導体ナノチューブと低熱伝導粒子とを含有する不織布状の熱電変換層を形成している。
特許文献1では、ナノ炭素材料と低熱伝導粒子とを混合することで熱電変換層を形成している。
また、特許文献2では、「溶媒中で、(i)金属酸塩、又は(ii)金属塩とカルコゲンとの混合物、を加熱分解させることにより得られる、半導体ナノ構造体」、及び「半導体ナノ構造体とカーボンナノチューブとを含有する熱電変換材料である複合材料」を開示している。つまり、特許文献2では、ナノ炭素材料であるカーボンナノチューブと、無機ナノ粒子である半導体ナノ粒子とを含有する熱電変換層を形成している。特許文献2では、ナノ炭素材料であるカーボンナノチューブに別途合成した半導体ナノ粒子を混合することで熱電変換層を形成している。
特開2016−139797号公報 特開2014−075442号公報
一方、昨今においては、熱電変換素子の耐久性等の観点から、熱電変換層と、熱電変換層と層の厚み方向に接する隣接層(例えば、基材)との密着性の向上も求められている。
本発明者らは、特許文献1及び2に記載された熱電変換層について検討したところ、昨今要求されている熱電変換性能(特に、性能指数Z)を必ずしも満たさないことを明らかとした。さらに、上記熱電変換層を用いて熱電変換素子を作製したところ、熱電変換層と、熱電変換層と層の厚み方向に接する隣接層との密着性が低く、さらなる改善が必要であることを知見した。
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、熱電変換性能(特に、性能指数Z)に優れ、かつ、熱電変換素子に適用した際に隣接層との密着性に優れた熱電変換層を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記熱電変換層を備えた熱電変換素子及び熱電変換モジュールを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の構成の熱電変換層によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
〔1〕ナノ炭素材料と、金属元素を含有する無機ナノ粒子と、を含有する熱電変換層であって、
上記熱電変換層を走査型電子顕微鏡にて観察し、エネルギー分散型X線分析により得られる上記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する上記金属元素の含有比率を用いて、下記式(1)により算出される面内ばらつきの最大値Tが、0〜30%である熱電変換層。
式(1)T=|最大偏差|/|平均値|×100
上記平均値とは、走査型電子顕微鏡にて観察した上記熱電変換層の10か所の領域における上記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する上記金属元素の含有比率をそれぞれ算出し、それらを算術平均して得られる平均値である。
上記最大偏差とは、走査型電子顕微鏡にて観察した上記熱電変換層の10か所の領域における上記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する上記金属元素の含有比率のうち上記平均値から最も離された測定値と、上記平均値との偏差である。
〔2〕 上記無機ナノ粒子の含有量が、上記ナノ炭素材料に対して、0.01〜300質量%である、〔1〕に記載の熱電変換層。
〔3〕 上記ナノ炭素材料が、カーボンナノチューブである〔1〕又は〔2〕に記載の熱電変換層。
〔4〕 上記無機ナノ粒子が、金属硫化物粒子又は金属酸化物粒子である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の熱電変換層。
〔5〕 上記無機ナノ粒子が、金属硫化物粒子である、〔4〕に記載の熱電変換層。
〔6〕 上記無機ナノ粒子が、銅、銀、鉛、亜鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、〔4〕又は〔5〕に記載の熱電変換層。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱電変換層を備えた、熱電変換素子。
〔8〕 〔7〕に記載の熱電変換素子を複数個備えた、熱電変換モジュール。
本発明によれば、熱電変換性能(特に、性能指数Z)に優れ、かつ、熱電変換素子に適用した際に隣接層との密着性に優れた熱電変換層を提供することができる。
また、本発明によれば、上記熱電変換層を備えた熱電変換素子及び熱電変換モジュールを提供することができる。
本発明の熱電変換素子の第1実施態様の断面図である。 本発明の熱電変換素子の第2実施態様の断面図である。 本発明の熱電変換素子の第3実施態様の概念図である(上面図)。 本発明の熱電変換素子の第3実施態様の概念図である(正面図)。 本発明の熱電変換素子の第3実施態様の概念図である(底面図)。 本発明の熱電変換素子の第4実施態様の概念図である。 本発明の熱電変換素子の第5実施態様の概念図である。 実施例で作製する熱電変換モジュールの模式図である。 熱電変換モジュールの出力を測定する装置を示す模式図である。
以下、本発明の熱電変換層、熱電変換素子、及び、熱電変換モジュールについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート化合物」との記載は、「アクリレート化合物及びメタアクリレート化合物のいずれか一方又は双方」の意味を表す。
〔熱電変換層〕
まず、本発明の熱電変換層の特徴点について説明する。
本発明の熱電変換層は、ナノ炭素材料と、金属元素を含有する無機ナノ粒子(以後、単に「無機ナノ粒子」とも称する)と、を含有する熱電変換層であり、熱電変換層を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)にて観察し、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)により得られるナノ炭素材料由来の炭素元素に対する金属元素の含有比率を用いて、下記式(1)により算出される面内ばらつきの最大値Tが、0〜30%である。下記式(1)により算出される面内ばらつきの最大値Tは、性能指数Zにより優れる点で、0〜25%であることがより好ましく、0〜20%であることが更に好ましい。
式(1) T=|最大偏差|/|平均値|×100
ここで、平均値とは、走査型電子顕微鏡にて観察した熱電変換層の10か所の領域におけるナノ炭素材料由来の炭素元素に対する金属元素の含有比率をそれぞれ算出し、それらを算術平均して得られる平均値である。
最大偏差とは、走査型電子顕微鏡にて観察した熱電変換層の10か所の領域におけるナノ炭素材料由来の炭素元素に対する金属元素の含有比率のうち平均値から最も離された測定値と、平均値との偏差である。
なお、上記SEMにより観察される熱電変換層の任意の10か所の抽出方法は特に限定されないが、各領域間の距離が少なくとも500μm離れていることが好ましい。
また、SEMにより観察される各領域の大きさは、いずれも縦250μm×横200μmである。
また、SEMにより観察される熱電変換層としては、表面の大きさが縦5cm×横5cmの熱電変換層を用いる。
以下に、ナノ炭素材料としてカーボンナノチューブ、及び、無機ナノ粒子として酸化銅を含有する熱電変換層を例に挙げて、上記面内ばらつきの最大値Tの算出方法を説明する。
上記熱電変換層とする場合、上記ナノ炭素材料に対する上記無機ナノ粒子の存在比率は、SEM−EDXにより、炭素元素に対する銅元素の含有比率として測定する。
具体的には、SEMにより熱電変換層表面の任意の10か所の領域(N〜N10)を抽出し、EDXにより各領域における銅元素の存在量(Cu〜Cu10(質量%))及び炭素元素の存在量(C〜C10(質量%))を測定した後、各領域毎に炭素元素に対する銅元素の含有比率を算出する(A〜A10(質量%))。次いで、各領域毎に、炭素元素に対する銅元素の含有比率から平均値Aを差し引いた値の絶対値をとり、偏差を求める。なお、上記平均値AはA〜A10の平均として求められる。上記式(1)における最大偏差とは、上記偏差のうちの最大値を意味する。熱電変換層の面内ばらつきの最大値Tは、式(1)に基づき、上記最大偏差を平均値で除することにより得られる。
以下、特許文献1及び2に記載される熱電変換層と本発明の熱電変換層との構成上の差異を比較しながら、本発明の熱電変換層が本発明の効果を奏する上で推測される機序について説明する。
本発明の熱電変換層の特徴点は、熱電変換層中に含まれる無機ナノ粒子が凝集せず、面内に均一に存在している点にある。つまり、炭素ナノ材料に対する上記無機ナノ粒子の存在比率の面内におけるばらつき(面内ばらつき)が小さい点にある。
本発明者らは、特許文献1及び2に記載される熱電変換層について検討したところ、特許文献1及び2に記載される熱電変換層は、ナノ炭素材料と低熱伝導粒子(特許文献1)又は半導体ナノ構造体(特許文献2)とを単に混合することで形成されているため、この結果として、熱電変換性能及び密着性の低下を引き起こしていることを知見した。具体的には、特許文献1及び2に記載される熱電変換層は、熱電変換層中に含まれる低熱伝導粒子又は半導体ナノ構造体が凝集し、ナノ炭素材料と不均一に存在することで、熱電変換性能及び密着性の低下を引き起こしていることを知見した。
本発明者らは、上記知見に基づき鋭意検討した結果、ナノ炭素材料上に無機ナノ粒子を凝集することなく均一に担持させることにより(つまり、面内ばらつきを小さくすることにより)、上記課題が解決できることを見出した。
なお、本発明者らは、熱電変換層中におけるナノ炭素材料上に無機ナノ粒子を均一に担持させる方法の一つとして、後述する実施例欄に示されるように、特定の製造方法により得られるナノ炭素材料と無機ナノ粒子とが複合化された複合粒子を用いて熱電変換層を形成する方法を見出している。
上記無機ナノ粒子は、熱電変換層内において、主として、ナノ炭素材料に対するドーパントとしての機能と、ナノ炭素材料同士の熱伝導を抑制する機能とを有する。本発明の熱電変換層は、特許文献1及び2の熱電変換層と比較すると、熱電変換層中において上記無機ナノ粒子がより均一に存在する(なお、特許文献1及び2の熱電変換層は、上述のとおり、熱電変換層中に含まれる低熱伝導粒子又は半導体ナノ構造体が凝集し、ナノ炭素材料と不均一に存在していると推測される)。この結果、ナノ炭素材料に対するドーピング効果が向上する(導電率σ、ゼーベック係数Sが大きくなる)、及び/又は、ナノ炭素材料同士の熱伝導がより抑制される(熱伝導性κが小さくなる)ため、結果として、熱電変換層の性能指数Zが優れると推測される。
また、上記熱電変換層におけるナノ炭素材料の表面は、無機ナノ粒子が均一に存在するため、微細な凹凸を有すると推測される。この微細な凹凸が、隣接層表面の微細な凹凸に対し入り込むことで、熱電変換層を熱電変換素子又は熱電変換モジュールに適用した際に、熱電変換層と隣接層との密着性にも優れるものと推測される。
また、上記無機ナノ粒子が、金属硫化物粒子又は金属酸化物粒子である場合(好ましくは、無機ナノ粒子が、銅、銀、鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する場合)には、上記無機ナノ粒子のナノ炭素材料に対するドーピング効果により優れ、結果として、上記熱電変換層は、性能指数Zにより一層優れる。
以下に、熱電変換層を形成する各種成分について説明する。
本発明の熱電変換層は、ナノ炭素材料と無機ナノ粒子とを含有する。
以下、まず、熱電変換層を構成する各成分について説明し、次いで、熱電変換層の製造方法について説明する。
<ナノ炭素材料>
本発明において、ナノ炭素材料とは、ナノサイズ(1000nm未満)であれば特に限定されない。なお、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノフィラメント、カーボンナノコイル、気相成長カーボン(VGCF)、及びコップ型のナノカーボン物質等の場合には、一次粒子の最も短い径の長さが1000nm未満を満たしていれば、上記一次粒子が凝集した二次粒子もナノ炭素材料に含まれる。つまり、例えば、カーボンナノチューブ(以下「CNT」ともいう。)は、強い分子間力で帯状または粒状に凝集するが、その凝集物の最も短い径の長さが1000nmを超えても、構成するカーボンナノチューブ一本の直径が1000nm未満であれば、ナノ炭素材料に含まれる。また、例えば、グラフェン等の場合には、その厚みが1000nm未満であればナノ炭素材料に含まれる。
ナノ炭素材料としては、上記要件を満たし、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されない。
ナノ炭素材料としては、炭素原子のsp混成軌道で構成される炭素−炭素結合によって炭素原子同士が化学結合してなるナノメートルサイズの導電性材料等が挙げられ、具体的には、フラーレン、カーボンナノチューブ(以下「CNT」ともいう。)、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノフィラメント、カーボンナノコイル、気相成長カーボン(VGCF)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子、及び、カーボンナノチューブの頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質等が挙げられる。また、ナノ炭素材料として、結晶構造がグラファイト型であり導電性を示す各種カーボンブラックも用いることができ、例えば、ケッチェンブラック、及びアセチレンブラック等が挙げられる。
これらのナノ炭素材料は、従来の製造方法によって製造できる。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco(High Pressure CO)法、及びオイルファーネス法等が挙げられる。このようにして製造されたナノ炭素材料は、そのまま用いることもでき、また、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、及び、クロマトグラフ等によって精製されたものを用いることもできる。さらに、ナノ炭素材料は、必要に応じて、ボールミル、振動ミル、サンドミル、及びロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕したもの、及び、化学的又は物理的処理によって短く切断されたもの等を用いることもできる。
ナノ炭素材料のサイズはナノメートルサイズであれば特に限定されない。ナノ炭素材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノフィラメント、カーボンナノコイル、気相成長カーボン(VGCF)、又はコップ型のナノカーボン物質等である場合、製造容易性、成膜性、及び導電性等の観点から、平均長さは0.01〜1000μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましい。また、それらの平均直径は、耐久性、透明性、成膜性、及び導電性等の観点から、0.4〜100nmが好ましく、0.4〜50nmがより好ましく、0.4〜15nmが更に好ましい。
ナノ炭素材料としては、導電性により優れる、及び/又は、溶媒中での分散性に優れる点で、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラファイト、グラフェン、又はカーボンナノ粒子が好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。
(カーボンナノチューブ)
以下、カーボンナノチューブ(CNT)について説明する。
カーボンナノチューブ(CNT)は、1枚の炭素膜(グラフェンシート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層CNT、及び、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。なお、単層CNT、2層CNT、及び多層CNTを各々単独で用いても、2種以上を併用してもよい。特に、導電性及び半導体特性において優れた性質を持つ単層CNT又は2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
上記単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者が併せて含有されていてもよい。また、CNTには金属等が内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたもの(特にフラーレンを内包したものをピーポッドという)が含有されていてもよい。
CNTはアーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という)、及びレーザーアブレーション法等によって製造できる。CNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、アーク放電法又はCVD法により得られたものであることが好ましい。
CNTを製造する際には、同時にフラーレン、グラファイト、又は非晶性炭素が副生成物として生じることがある。これら副生成物を除去するために精製してもよい。CNTの精製方法は特に限定されないが、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、及びクロマトグラフ等の方法が挙げられる。その他に、硝酸、硫酸等による酸処理、又は超音波処理も不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
CNTを製造して使用する場合、精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。CNTは、硝酸及び硫酸等による酸処理、超音波処理、並びに、凍結粉砕法等により短繊維状にカットすることができる。また、併せてフィルターによる分離を行うことも、純度を向上させる観点から好ましい。
なお、カットしたCNTだけではなく、あらかじめ短繊維状に作製したCNTも同様に使用できる。
単層CNTの平均長さは特に制限されないが、製造容易性、成膜性、及び導電性等の観点から、0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
単層CNTの直径は、特に制限されないが、耐久性、成膜性、導電性、及び熱電性能等により優れる点で、0.5〜4.0nmが好ましく、0.6〜3.0nmがより好ましく、0.7〜2.0nmが更に好ましい。
・単層CNTの直径の算出
本明細書で記載する単層CNTの直径は、下記の方法により評価したものである。すなわち、単層CNTの532nm励起光でのラマンスペクトルを測定し(励起波長532nm)、ラジアルブリージング(RBM)モードのシフトω(RBM)(cm−1)より、下記算出式を用いて算出する。なお、上記ωは、RBMモード中の最大ピークの値を採用する。算出式:直径(nm)=248/ω(RBM)
ナノ炭素材料の含有量は、熱電変換層中、熱電変換層の全質量に対して、1〜99質量%が好ましく、5〜95質量%がより好ましく、10〜95質量%が更に好ましい。
ナノ炭素材料は、熱電変換層中、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のナノ炭素材料を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<無機ナノ粒子>
本発明において、無機ナノ粒子とは、ナノサイズ(1000nm未満)であれば特に限定されない。なお、一次粒子の最も短い径(短径)の長さが1000nm未満であれば、上記一次粒子が凝集した二次粒子も無機ナノ粒子に含まれる。なお、一次粒子の短径は、投影面積円相当径から求めることができる。
無機ナノ粒子としては、上記要件を満たし、且つ、金属元素を含有する無機材料であれば特に限定されず、金属粒子(例えば、銅粒子、銀粒子、鉛粒子、亜鉛粒子、及び錫粒子等)、金属酸化物粒子、及び金属硫化物粒子等が挙げられるが、なかでも、熱電変換性能により優れる点で、金属硫化物粒子又は金属酸化物粒子が好ましく、金属硫化物粒子がより好ましい。
また、上記金属硫化物粒子及び金属酸化物粒子は、熱電変換性能により優れる点で、銅、銀、鉛、亜鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有することが好ましく、銅、銀、鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有することがより好ましい。
無機ナノ粒子としては、なかでも、熱電変換性能により優れる点で、銅、銀、鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む硫化物であることがより好ましい。
なお、無機ナノ粒子は、上記金属元素のほかに、目的に応じ他の金属元素を含有してもよい。つまり、無機ナノ粒子は、銅、銀、鉛、亜鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素と、銅、銀、鉛、亜鉛、及び錫以外の少なくとも1種の金属元素とを含有していてもよい。
2種以上の金属元素を含む酸化物及び硫化物としては、例えば、CuAlO、CuGaO、CuInO、AgAlO、AgGaO、AgInO、PbTiO、SnNb、SnTa、SnNb、SnTa、CuAlS、CuGaS、CuInS、CuZnGeS、CuZnSnS、Cu12(1−x−y)Ni12xZn12ySb13、Cu26Si32、Cu26Ge32、Cu26Sn32、Cu26NbSi32、Cu26NbGe32、Cu26NbSn32、Cu26TaSi32、Cu26TaGe32、Cu26TaSn32、AgAlS、AgGaS、AgInS、AgZnGeS、AgZnSnS、Sn1−xNaS、Sn1−xAgS、Pb1−xNaS、及びPb1−xAgS等が挙げられる。なお、xは、0〜0.3であり、yは、0〜0.3である。
無機ナノ粒子の含有量は、熱電変換層中、熱電変換層の全質量に対して、0.01〜90質量%が好ましく、0.01〜85質量%がより好ましく、0.01〜80質量%が更に好ましい。
無機ナノ粒子は、熱電変換層中、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機ナノ粒子を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
また、ナノ炭素材料に対する無機ナノ粒子の含有量は特に制限されず、通常、0.001〜400質量%の場合が多い。なかでも、性能指数Zにより優れる点で、ナノ炭素材料に対する無機ナノ粒子の含有量は、0.01〜300質量%であることが好ましい。なかでも、性能指数Zにより一層優れる点で、無機ナノ粒子の含有量は、ナノ炭素材料に対して、0.05質量%以上が好ましく、250質量%以下が好ましく、100質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が最も好ましい。
[任意成分]
本発明の熱電変換層は、上述した成分以外の他の成分(バインダー、界面活性剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、及び可塑剤等)を含有してもよい。各成分の定義、具体例及び好適な態様は、それぞれ、後述する熱電変換層形成用組成物に含有される各成分と同じである。
〔熱電変換層の製造方法〕
熱電変換層を製造する方法は特に制限されないが、例えば、以下に示す態様等が挙げられる。具体的には、所定の成分を含有する熱電変換層形成用組成物を予め調製し、この熱電変換層形成用組成物を用いて熱電変換層を形成する方法である。
まず、熱電変換層形成用組成物について述べ、その後、製造方法について述べる。
(熱電変換層形成用組成物)
上述のとおり、熱電変換層形成用組成物は、ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子を含有する。
まず、組成物中に含有される各成分について述べ、その後、組成物の調製方法について述べる。
(1)ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子
上記ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子の定義、具体例及び好適な態様については上述のとおりである。熱電変換層形成用組成物中の上記ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子の合計含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。また、固形分中の上記ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子の合計含有量は、5〜99.5質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。なお、上記固形分とは、熱電変換層を形成する成分を意図し、溶媒は含まれない。
(2)分散媒
熱電変換層形成用組成物は、上記ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子の他に分散媒を含有するのが好ましい。
分散媒(溶媒)は、上記成分を分散できればよく、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン系溶媒、DMF(ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、及びDMSO(ジメチルスルホキシド)等の非プロトン性の極性溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、テトラメチルベンゼン、及びピリジン等の芳香族系溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、及びメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、及びジグライム等のエーテル系溶媒等が挙げられる。
分散媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、分散媒は、あらかじめ脱気しておくことが好ましい。分散媒中における溶存酸素濃度を、10ppm以下とすることが好ましい。脱気の方法としては、減圧下超音波を照射する方法、及び、アルゴン等の不活性ガスをバブリングする方法等が挙げられる。
更に、分散媒として水以外を使用する場合は、あらかじめ脱水しておくことが好ましい。分散媒中における水分量を、1000ppm以下とすることが好ましく、100ppm以下とすることがより好ましい。分散媒の脱水方法としては、モレキュラーシーブを用いる方法及び蒸留等の公知の方法を用いることができる。
熱電変換層形成用組成物中の分散媒の含有量は、組成物全量に対して、25〜99.9質量%であることが好ましい。
(3)その他の成分
上述した成分の他、バインダー、界面活性剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、及び可塑剤等が含まれていてもよい。
バインダーとしては、共役高分子及び非共役高分子が挙げられる。バインダーはナノ炭素材料の距離を調整することにより熱伝導率を低下させる効果を示す。
共役高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン、PEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)、ポリアニリン、及び、ポリピロール等が挙げられる。非共役高分子としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ化合物、ポリシロキサン、及び、ゼラチン等が挙げられる。
なかでも、熱電変換層の熱電変換性能(特に、性能指数Z)により優れる点で、上記バインダーは、非共役高分子が好ましく、水素結合性官能基を有する樹脂(水素結合性樹脂)がより好ましい。
水素結合性官能基としては、水素結合性を有する官能基であればよく、例えば、OH基、NH基、NHR基(Rは、芳香族基又は脂肪族炭化水素基を表す)、COOH基、CONH基、NHOH基、SOH基(スルホン酸基)、及び−OP(=O)OH基(リン酸基)等のほか、−NHCO−基、−NH−基、−CONHCO−結合、−NH−NH−結合、−C(=O)−基(カルボニル基)、及び−ROR−基(エーテル基:Rは、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂肪族炭化水素基を表す。ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)等を有する基が挙げられる。
水素結合性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、キサンタンガム、グァーガム、ヒドロキシエチルグァーガム、カルボキシメチルグァーガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、マンナン、グルコマンナン、デンプン、カードラン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、デキストラン、ケラト硫酸、サクシノグルカン、カロニン酸、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、マクロゴール、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、ゼラチン、寒天、カードラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、澱粉、化工澱粉、及び、ベントナイト等が挙げられる。なお、カルボキシ基等の酸性基を有するものは、一部もしくはすべてがナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩等の塩になっていてもよい。
上述した共役高分子又は非共役高分子の重量平均分子量は特に制限されず、例えば1000以上であり、5000以上が好ましく、7000〜300,000がより好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ法(GPC(Gel Permeation Chromatography))法にて測定され、標準ポリスチレンで換算して求められる。
上記ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子の合計含有量に対するバインダーの含有量は、特に限定されず、0.1〜100質量%が好ましい。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤等)が挙げられる。なかでも、アニオン性界面活性剤が好ましく、デオキシコール酸ナトリウムがより好ましい。なお、界面活性剤は分散剤としての機能を有する。
界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
また、熱電変換層は、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、及び可塑剤等も含有してもよい。
酸化防止剤としては、イルガノックス1010(日本チバガイギー製)、スミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)、スミライザーGS(住友化学工業(株)製)、及びスミライザーGM(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
耐光安定剤としては、TINUVIN 234(BASF製)、CHIMASSORB 81(BASF製)、及びサイアソーブUV−3853(サンケミカル製)等が挙げられる。
耐熱安定剤としては、IRGANOX 1726(BASF製)が挙げられる。
可塑剤としては、アデカサイザーRS(アデカ製)等が挙げられる。
(熱電変換層形成用組成物の製造方法)
熱電変換層形成用組成物の製造方法は特に制限されないが、以下の工程1及び工程2を含む製造方法が好ましく挙げられる。この製造方法にて得られる熱電変換層形成用組成物中には、ナノ炭素材料と無機ナノ粒子とが複合化された複合材料(複合粒子)が含まれる。
(工程1)ナノ炭素材料の分散液を調製する工程
(工程2)上記分散液中で無機ナノ粒子を形成し、ナノ炭素材料及び無機ナノ粒子を含有する熱電変換層形成用組成物を得る工程
(工程1)
工程1は、ナノ炭素材料の分散液を調製する工程である。
分散媒(溶媒)は、ナノ炭素材料を分散できればよく、水、有機溶媒及びこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール及びイソプピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
分散媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、分散媒は、あらかじめ脱気しておくことが好ましい。分散媒中における溶存酸素濃度を、10ppm以下とすることが好ましい。脱気の方法としては、減圧下超音波を照射する方法、及び、アルゴン等の不活性ガスをバブリングする方法等が挙げられる。
さらに、分散媒として水以外を使用する場合は、あらかじめ脱水しておくことが好ましい。分散媒中における水分量を、1000ppm以下とすることが好ましく、100ppm以下とすることがより好ましい。分散媒の脱水方法としては、モレキュラーシーブを用いる方法及び蒸留等の公知の方法を用いることができる。
分散液中の分散媒の含有量は、組成物全量に対して、25〜99.99質量%が好ましく、30〜99.95質量%がより好ましく、30〜99.9質量%が更に好ましい。
なお、分散液は、ナノ炭素材料のほか、所望により他の成分を混合して調製することができる。好ましくは、分散媒にナノ炭素材料、及び所望により他の成分を混合して、ナノ炭素材料を分散させて調製する。
分散液の調製方法に特に制限はなく、通常の混合装置等を用いて常温常圧下で行うことができる。例えば、各成分を溶媒中で撹拌、振とう、又は、混練して、溶解又は分散させて調製すればよい。溶解又は分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
また、上記分散工程において溶媒を室温以上沸点以下の温度まで加熱する、分散時間を延ばす、又は、撹拌、振とう、混練、及び超音波等の印加強度を上げる等によって、ナノ炭素材料の分散性を高めることができる。
(工程2)
工程2は、上記分散液中で無機ナノ粒子を形成する工程である。一般的に、溶液中での無機ナノ粒子の形成では、溶液中に目的物が析出する反応(均一核生成)と、溶液中に予め存在する核上又は反応容器の壁上に目的物が析出する反応(不均一核生成)とが同時に進行する。一般に、均一核生成と不均一核生成とでは、後者の方がより低いエネルギーで進行する。上記分散液中で無機ナノ粒子を形成することで、ナノ炭素材料を核とし、ナノ炭素材料上への目的物の析出が支配的に進行し、無機ナノ粒子が凝集することなく、ナノ炭素材料上に無機ナノ粒子が均一に担持された複合粒子を得ることができる。
上記分散液中で無機ナノ粒子を形成する工程は特に限定されないが、例えば、無機ナノ材料の前駆体となる金属塩をナノ炭素材料の存在下で金属元素を含有する無機ナノ粒子とする方法等が挙げられる。
無機ナノ粒子が金属酸化物粒子である場合には、例えば、上記分散液中、ナノ炭素材料の存在下でアルカリにより金属塩を金属水酸化物としたのち、熱処理により金属酸化物粒子とする方法が挙げられる。
また、無機ナノ粒子が金属硫化物粒子である場合には、例えば、上記分散液中、硫黄源(例えば、チオアセトアミド等)と、金属塩とを反応させることにより金属硫化物粒子を得る方法が挙げられる。
上記金属塩としては、適切な溶剤に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(CHCOO)、M(NO、MCl、M2/n(SO)、及び、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)等が挙げられる。上記金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Cu(I)イオン、Cu(II)イオン、Ag(I)イオン、Pb(II)イオン、Zn(II)イオン、及び、Sn(II)イオンが挙げられ、なかでも、Cu(I)イオン、Cu(II)イオン、Ag(I)イオン、Pb(II)イオン、Zn(II)イオン、又は、Sn(II)イオンが好ましい。
ナノ炭素材料上に無機ナノ粒子を均一に形成するための好ましい条件について説明する。
上記分散液中で無機ナノ粒子を形成する際の金属塩の濃度としては、1×10−10〜1×10−1Mが好ましく、1×10−10〜1×10−3Mがより好ましく、1×10−10〜1×10−5Mが更に好ましい。同様に、金属塩のナノ炭素材料に対する質量比としては、20質量%以下が好ましく、10%質量以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
上記分散液中で無機ナノ粒子を形成する際の温度としては、溶媒にもよるが、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、50〜100℃が更に好ましく、50〜80℃が特に好ましい。同様に、上記分散液中で無機ナノ粒子を形成する際の時間としては、15〜180分が好ましく、30〜180分がより好ましく、60〜180分が更に好ましい。
上記で得られた熱電変換層形成用組成物には、さらに必要に応じて、他の成分(例えば、溶媒、バインダー、界面活性剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、及び可塑剤等)を混合してもよい。
混合方法は特に制限されず、通常の混合装置等を用いて常温常圧下で行うことができる。各成分の分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
(熱電変換層の製造方法)
熱電変換層形成用組成物を用いて熱電変換層を製造する方法は特に制限されないが、例えば、基材上に上記組成物を塗布し、成膜する方法等が挙げられる。
成膜方法は特に制限されず、例えば、スピンコート法、エクストルージョンダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法、メタルマスク印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、及びインクジェット法等の公知の塗布方法を用いることができる。
また、塗布後は、必要に応じて乾燥工程を行う。例えば、熱風を吹き付けることにより溶媒を揮発、及び乾燥させることができる。
〔厚み〕
本発明の熱電変換層の平均厚みは、温度差を付与する観点等から、1〜500μmが好ましく、2〜300μmがより好ましく、3〜200μmが更に好ましく、5〜100μmが特に好ましい。
なお、熱電変換層の平均厚みは、任意の10点における熱電変換層の厚みを測定し、それらを算術平均して求める。
〔熱電変換素子、熱電変換モジュール〕
本発明の熱電変換素子は、上述した熱電変換層を備えていればよく、その構成は特に制限されないが、例えば、上述した熱電変換層と、熱電変換層と電気的に接続した電極対とを備える態様が挙げられる。本発明の熱電変換素子は、上述した熱電変換層をp型熱電変換層として備えていることが好ましい。
また、本発明の熱電変換モジュールは、上記熱電変換素子を複数個備えていれば、その構成は特に制限されない。
以下に、本発明の熱電変換層を備える熱電変換素子、及び上記熱電変換素子を複数個備えた熱電変換モジュールについて、その各好適態様を詳述する。
本発明の熱電変換素子は、熱電変換層が本発明の熱電変換層のみからなるものでもよいし、更に、例えば、本発明の熱電変換層をp型熱電変換層として機能させることにより、このp型熱電変換層と、電気的に接続されたn型熱電変換層とを備えるものでもよい。n型熱電変換層とp型熱電変換層とは両者が電気的に接続されていれば、直接両者が接していても、導体(例えば、電極)が間に配置されていてもよい。
<第1実施態様>
図1に、本発明の熱電変換素子の第1実施態様の断面図を示す。
図1に示す熱電変換素子110は、第1の基材12上に、第1の電極13及び第2の電極15を含む一対の電極と、第1の電極13及び第2の電極15間に、上記熱電変換層14を備えている。第2の電極15の他方の表面には第2の基材16が配設されており、第1の基材12及び第2の基材16の外側には互いに対向して金属板11及び17が配設されている。
<第2実施態様>
図2に、本発明の熱電変換素子の第2実施態様の断面図を示す。
図2に示す熱電変換素子120は、第1の基材22上に、第1の電極23及び第2の電極25が配置され、その上に上記熱電変換層24が設けられている。また、熱電変換層24の他方の表面には第2の基材26が設けられている。
<第3実施態様>
図3A〜図3Cに、本発明の熱電変換素子の第3実施態様を概念的に示す。なお、図3Aは上面図(図3Bを紙面上方から見た図)、図3Bは正面図(後述する基板等の面方向から見た図)、図3Cは底面図(図3Bを紙面下方から見た図)である。
図3A〜図3Cに示すように、熱電変換素子130は、基本的に、第1基板32と、上記熱電変換層34と、第2基板30と、第1の電極36及び第2の電極38とを有して構成される。
具体的には、第1基板32の表面には、熱電変換層34が形成される。また、第1基板32の表面には、熱電変換層34を第1基板32の基板面方向(以下、単に『面方向』とも言う。言い換えれば、第1基板32及び第2基板30を積層する方向とは直交する方向。)に挟むようにして、熱電変換層34に接触して第1の電極36及び第2の電極38(電極対)が形成される。
また、図3A〜図3Cにおいては図示しないが、第1基板32と熱電変換層34との間、又は、第2基板30と熱電変換層34との間において、粘着層が配置されていてもよい。
図3A〜図3Cに示すように、第1基板32は、低熱伝導部32a、及び、低熱伝導部32aよりも熱伝導率が高い高熱伝導部32bを有する。同様に、第2基板30も、低熱伝導部30a、及び、低熱伝導部30aよりも熱伝導率が高い高熱伝導部30bを有する。
熱電変換素子130において、両基板は、互いの高熱伝導部が、第1の電極36と第2の電極38との離間方向(すなわち通電方向)に異なる位置となるように配置される。
熱電変換素子130は、好ましい態様として、粘着層で貼着される第2基板30を有し、更に、第1基板32及び第2基板30が、共に、低熱伝導部及び高熱伝導部を有する。熱電変換素子130は、高熱伝導部及び低熱伝導部を有する基板を2枚用い、両基板の高熱伝導部を面方向に異なる位置として、この2枚の基板で熱電変換層を挟持してなる構成を有する。
すなわち、熱電変換素子130は、熱電変換層の面方向に温度差を生じさせて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換素子(以下、in plane型の熱電変換素子とも言う)であって、図示例においては、低熱伝導部と低熱伝導部よりも熱伝導率が高い高熱伝導部とを有する基板を用いることにより、熱電変換層34の面方向に温度差を生じさせて、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
<第4実施態様>
図4に、熱電変換素子の第4実施態様を概念的に示す。なお、以下の態様では、上記熱電変換層をp型熱電変換層として用いた場合について詳述する。
図4に示す熱電変換素子140は、n型熱電変換層(n型熱電変換部)41とp型熱電変換層(p型熱電変換部)42とを有しており、両者は並列に配置されている。p型熱電変換層42は、ナノ炭素材料と、金属元素を含有する無機ナノ粒子と、を含有するp型熱電変換層である。n型熱電変換層41の構成については、後段で詳述する。
n型熱電変換層41の上端部は第1の電極45Aに、また、p型熱電変換層42の上端部は第3の電極45Bにそれぞれ電気的及び機械的に接続されている。第1の電極45A及び第3の電極45Bの外側には、上側基材46が配置されている。n型熱電変換層41及びp型熱電変換層42の下端部は、それぞれ下側基材43に支持された第2の電極44に電気的及び機械的に接続されている。このように、n型熱電変換層41及びp型熱電変換層42は第1の電極45A、第2の電極44、及び第3の電極45Bにより直列接続されている。つまり、n型熱電変換層41及びp型熱電変換層42は、第2の電極44を介して、電気的に接続されている。
熱電変換素子140は、上側基材46及び下側基材43間に温度差(図4中の矢印方向)を与え、例えば、上側基材46側を低温部、下側基材43側を高温部にする。このような温度差を与えた場合、n型熱電変換層41の内部においては負の電荷を持った電子47が低温部側(上側基材46側)に移動し、第2の電極44は第1の電極45Aより高電位となる。一方、p型熱電変換層42の内部では、正の電荷を持ったホール48が低温部側(上側基材46側)に移動し、第3の電極45Bは第2の電極44より高電位となる。その結果、第1の電極45Aと第3の電極45B間に電位差が生じ、例えば電極の終端に負荷を接続すると電力を取り出すことができる。この際、第1の電極45Aは負極、第3の電極45Bは正極となる。
<第5実施態様>
なお、熱電変換素子140は、例えば、図5に示すように、複数のn型熱電変換層41、41・・・と複数のp型熱電変換層42、42・・・とを交互に配置し、これらを第1及び第3の電極45と第2の電極44とで直列接続することによって、より高い電圧を得ることができる。
図5に示すように、本発明においては、複数の熱電変換素子を電気的に接続させ、いわゆるモジュール(熱電変換モジュール)を構成してもよい。
以下、熱電変換素子を構成する各部材について詳述する。
<基材>
熱電変換素子中の基材(第1実施態様の第1の基材12及び第2の基材16、第2実施態様の第1の基材22及び第2の基材26、第3実施態様の低熱伝導部32a、30a、第4実施態様の上側基材46及び下側基材43)は、ガラス、透明セラミックス、及びプラスチックフィルム等の基材を用いることができる。本発明の熱電変換素子において、基材はフレキシビリティーを有しているのが好ましく、具体的には、ASTM D2176に規定の測定法による耐屈曲回数MITが1万サイクル以上であるフレキシビリティーを有しているのが好ましい。このようなフレキシビリティーを有する基材は、プラスチックフィルムが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、及び、ビスフェノールAとイソ及びテレフタル酸のポリエステルフィルム等のポリエステルフィルム;ゼオノアフィルム(商品名、日本ゼオン社製)、アートンフィルム(商品名、JSR社製)、及びスミライトFS1700(商品名、住友ベークライト社製)等のポリシクロオレフィンフィルム;カプトン(商品名、東レ・デュポン社製)、アピカル(商品名、カネカ社製)、ユーピレックス(商品名、宇部興産社製)、及びポミラン(商品名、荒川化学社製)等のポリイミドフィルム;ピュアエース(商品名、帝人化成社製)、及びエルメック(商品名、カネカ社製)等のポリカーボネートフィルム;スミライトFS1100(商品名、住友ベークライト社製)等のポリエーテルエーテルケトンフィルム;トレリナ(商品名、東レ社製)等のポリフェニルスルフィドフィルム;等が挙げられる。入手の容易性、耐熱性(好ましくは100℃以上)及び経済性の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、各種ポリイミド、又はポリカーボネートフィルム等が好ましい。
基材の厚さは、取り扱い性、耐久性等の観点から、好ましくは5〜3000μm、より好ましくは5〜500μm、更に好ましくは5〜100μm、特に好ましくは5〜50μmである。基材の厚みをこの範囲にすることで、熱電変換層に効率的に温度差を付与することができ、外部衝撃による熱電変換層の損傷も起こりにくい。
<電極>
熱電変換素子中の電極を形成する電極材料としては、ITO(Indium−Tin−Oxide)、及びZnO等の透明電極材料;銀、銅、金、及びアルミニウム等の金属電極材料;CNT、及びグラフェン等の炭素材料;PEDOT(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))/PSS(polystyrene sulfonate)、及びPEDOT/Tos(Tosylate)等の有機材料;が挙げられる。なお、電極は、金、銀、銅、若しくはカーボン等の導電性微粒子を分散した導電性ペースト、はんだ、又は、金、銀、銅、若しくはアルミニウム等の金属ナノワイヤーを含有する導電性ペースト等を使用して形成することができる。
<n型熱電変換層>
第4実施態様の熱電変換素子及び第5実施態様の熱電変換モジュールが有するn型熱電変換層としては、公知のn型熱電変換層が使用される。n型熱電変換層に含まれる材料としては、公知の材料が適宜使用される。
なお、n型熱電変換層の形成方法(製造方法)は、上述した本発明の熱電変換層の製造方法と同様の方法により形成することができる。
〔熱電発電用物品〕
本発明の熱電変換素子は、各種の熱電発電用物品に適用することができる。熱電発電用物品としては、具体的には、温泉熱発電機、太陽熱発電機、及び廃熱発電機等の発電機、並びに、腕時計用電源、半導体駆動電源、及び小型センサー用電源等の電源が挙げられる。また、本発明の熱電変換素子を適用した熱電発電用物品は、ペルチェ素子として冷却又は温度制御等に用いることもできる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔分散液の作製〕
(分散液1の調製)
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、CNT分散液を得た。
次に、エタノール200mLに酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.1Mの酢酸銅エタノール溶液を調製した。同様に、純水200mLに水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)を溶解させ、1.2Mの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
上記CNT分散液に、上記水酸化ナトリウム水溶液を加えた。その後、得られた分散液を水浴にて60℃に昇温し、上記酢酸銅エタノール溶液を滴下しながら120分間反応させ、CNT存在下でCuO粒子を形成し、分散液1を得た。
なお、酢酸銅エタノール溶液はCuO粒子がCNTに対して350質量%となるよう、水酸化ナトリウム水溶液は、添加される水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム量が、添加される酢酸銅エタノール溶液中のCu量に対して4モル当量となるよう、それぞれ加えた。また、酢酸銅エタノール溶液は、滴下直後の全溶液に対する酢酸銅の濃度が1×10−5M以下となるよう滴下量/間隔を調整した。
(分散液2の調製)
分散液1の調製において、CuO粒子がCNTに対して300質量%となるよう、酢酸銅エタノール溶液の使用量を変更した以外は、同様の方法により分散液2を調製した。
(分散液3〜8の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅エタノール溶液及び水酸化ナトリウム水溶液の濃度をそれぞれ0.001M及び0.2Mとし、酢酸銅エタノール溶液をCuO粒子がCNTに対して表2に記載の質量(単位:質量%)となるよう酢酸銅エタノール溶液の使用量を変更した以外は、同様の方法により分散液3〜8を調製した。
(分散液9の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸銀(和光純薬工業社製)に変えて0.001Mの酢酸銀水溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.2Mとし、酢酸銀水溶液をAgO粒子がCNTに対して1質量%になるように加えた以外は、同様の方法により分散液9を調製した。
(分散液10の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を塩化スズ(II)二水和物(関東化学社製)に変えて0.001Mの塩化スズエタノール溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.2Mとし、塩化スズエタノール溶液をSnO粒子がCNTに対して1質量%になるように加えた以外は、同様の方法により分散液10を調製した。
(分散液11の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸鉛三水和物(関東化学社製)に変えて0.001Mの酢酸鉛エタノール溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.2Mとし、酢酸鉛エタノール溶液をPbO粒子がCNTに対して1質量%になるように加えた以外は、同様の方法により分散液11を調製した。
(分散液12の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸亜鉛二水和物(関東化学社製)に変えて0.001Mの酢酸亜鉛エタノール溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.2Mとし、酢酸亜鉛エタノール溶液をZnO粒子がCNTに対して1質量%になるように加えた以外は、同様の方法により分散液12を調製した。
(分散液13の調製)
分散液1の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を塩化ビスマス(III)(和光純薬工業社製)に変えて0.001Mの塩化ビスマスエタノール溶液を調製し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.2Mとし、塩化ビスマスエタノール溶液をBi粒子がCNTに対して1質量%になるように加えた以外は、同様の方法により分散液13を調製した。
(分散液14の調製)
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、CNT分散液を得た。
次に、アセトン200mLに酢酸パラジウム(II)(東京化成工業社製)を溶解させ、0.001Mの酢酸パラジウムアセトン溶液を調製した。同様に、純水200mLにホスフィン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.1Mのホスフィン酸ナトリウム水溶液を調製した。
上記CNT分散液に、ホスフィン酸ナトリウム水溶液を加えた。その後、得られた分散液を水浴にて60℃に昇温し、上記酢酸パラジウムアセトン溶液を滴下しながら120分間反応させ、CNT存在下でPd粒子を形成し、分散液14を得た。
なお、酢酸パラジウムアセトン溶液はPd粒子がCNTに対して1質量%となるよう、ホスフィン酸ナトリウム水溶液は、添加されるホスフィン酸ナトリウム水溶液中のホスフィン酸ナトリウム量が、添加される酢酸パラジウムアセトン溶液中のPd量に対して10モル当量となるよう、それぞれ加えた。また、酢酸パラジウムアセトン溶液は、滴下直後の全溶液に対する酢酸パラジウムの濃度が1×10−5M以下となるよう滴下量/間隔を調整した。
(分散液15の調製)
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、CNT分散液を得た。
次に、エタノール200mLに酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.001Mの酢酸銅エタノール溶液を調製した。同様に、純水200mLにチオアセトアミド(東京化成工業社製)を溶解させ、0.01Mのチオアセトアミド水溶液を調製した。
上記CNT分散液に、チオアセトアミド水溶液を加えた。その後、得られた分散液を水浴にて60℃に昇温し、上記酢酸銅エタノール溶液を滴下しながら120分間反応させ、CNT存在下でCuS粒子を形成し、分散液15を調製した。
なお、酢酸銅エタノール溶液はCuS粒子がCNTに対して1質量%となるよう、チオアセトアミド水溶液は、添加されるチオアセトアミド水溶液中のチオアセトアミド量が、添加される酢酸銅エタノール溶液中のCu量に対して4モル当量となるように、それぞれ加えた。また、酢酸銅エタノール溶液は、滴下直後の全溶液に対する酢酸銅の濃度が1×10−5M以下となるよう滴下量/間隔を調整した。
(分散液16の調製)
分散液15の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸銀(和光純薬工業社製)に変えて0.001Mの酢酸銀水溶液を調製した以外は、同様の方法により分散液16を調製した。
(分散液17〜20の調製)
分散液15の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を塩化スズ(II)二水和物(関東化学社製)、酢酸鉛三水和物(関東化学社製)、酢酸亜鉛二水和物(関東化学社製)、及び塩化ビスマス(III)(和光純薬工業社製)に変えた以外は、同様の方法により分散液17〜20をそれぞれ調製した。
(分散液21の調製)
グラフェン(商品名「グラフェンナノプレートレット」東京化成社製 厚さ6〜8nm)40mgとアセトン32mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、分散液を得た。
次に、エタノール200mLに酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.001Mの酢酸銅エタノール溶液を調製した。同様に、純水200mLに水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
上記CNT分散液に、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。その後、得られた分散液を水浴にて60℃に昇温し、上記酢酸銅エタノール溶液を滴下しながら120分間反応させ、グラフェン存在下でCuO粒子を形成し、分散液21を得た。
なお、酢酸銅エタノール溶液はCuO粒子がグラフェンに対して1質量%となるよう、水酸化ナトリウム水溶液は、添加される水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム量が、添加される酢酸銅エタノール溶液中のCu量に対して4モル当量となるように、それぞれ加えた。また、酢酸銅エタノール溶液は、滴下直後の全溶液に対する酢酸銅の濃度が1×10−5M以下となるよう滴下量/間隔を調整した。
〔実施例1〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
上記で得られた分散液1を、濾紙(直径125mm)を設置したブフナー漏斗と吸引瓶とを用いて減圧濾過することにより、バッキーペーパー膜を得た。
分散剤としてデオキシコール酸ナトリウム(東京化成工業社製)1200mgを、分散溶媒である水16mLに溶解させて混合液とし、得られた混合液に3mm角程度のサイズにカットしたバッキーペーパー400mgを加えた。更に得られた組成物を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、1000rpmで2分間、5000rpmで5分間混合して、予備混合物を得た。得られた予備混合物を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃以下の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、高速旋回薄膜分散法で分散処理した。得られた分散組成物を自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎ARE−310)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、熱電変換層形成用組成物を調製した。
<熱電変換層の作製>
厚さ1.1mm、サイズ40mmx50mmのポリイミド基板にテフロン(登録商標)製の枠1枚(厚さ0.2μm)を貼り付け、その枠内に得られた熱電変換層形成用組成物を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を50℃で30分、120℃で30分乾燥した後、乾燥後の塗膜をエタノールに1時間浸漬することにより分散剤を除去した。更に、分散剤を除去した塗膜を50℃で30分、120℃で150分乾燥することにより熱電変換層を得た。
得られた熱電変換層を5cm角程度のサイズ(面内ばらつき用測定試料)と、1cm角程度のサイズ(熱電変換性能測定用試料)にカットし、測定用の熱電変換層を作製した。
〔実施例2〜20〕
上記実施例1の熱電変換層の作製において、分散液1を分散液2〜20に変えた以外は同様の方法により、実施例2〜20の熱電変換層を作製した。また、実施例1と同様に、得られた熱電変換層を5cm角程度のサイズ(面内ばらつき用測定試料)と、1cm角程度のサイズ(熱電変換性能測定用試料)にカットし、測定用の熱電変換層を作製した。
〔実施例21〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
分散液21をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のメンブレンフィルターを設置したグラスフィルターと吸引瓶を用いて減圧濾過することにより、グラフェン膜を得た。
分散剤としてデオキシコール酸ナトリウム(東京化成工業社製)1200mgを、分散溶媒である水16mLに溶解させて混合液とし、得られた混合液に3mm角程度のサイズにカットしたグラフェン膜400mgを加えた。更に得られた組成物を、メカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、1000rpmで2分間、5000rpmで5分間混合して、予備混合物を得た。得られた予備混合物を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製)を用いて、10℃以下の恒温層中、周速10m/secで2分間、次いで周速40m/secで5分間、高速旋回薄膜分散法で分散処理した。得られた分散組成物を自転・公転ミキサー(シンキー社製、あわとり練太郎ARE−310)にて、2000rpmで30秒間混合、2200rpmで30秒間脱泡して、熱電変換層形成用組成物を調製した。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、実施例21の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例1〕
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、比較例1のCNT分散液を得た。
上記実施例1の熱電変換層の作製において、分散液1を上記比較例1のCNT分散液に変えた以外は同様の方法により、比較例1の熱電変換層を作製した。また、実施例1と同様に、得られた熱電変換層を5cm角程度のサイズ(面内ばらつき用測定試料)と、1cm角程度のサイズ(熱電変換性能測定用試料)にカットし、測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例2〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、CNT分散液を得た。
次に、エタノール200mLに酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.001Mの酢酸銅エタノール溶液を調製した。同様に、純水200mLに水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。エタノール100mL、上記酢酸銅エタノール溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を混合し、水浴にて60℃に昇温し、更に120分間反応させてCuO粒子を形成することにより、CuO粒子分散液を調製した。
このCuO粒子分散液に上記CNT分散液を混合することにより、比較例2の熱電変換層形成用組成物を得た。
なお、酢酸銅エタノール溶液はCuO粒子がCNTに対して1質量%となるよう、水酸化ナトリウム水溶液は、添加される水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム量が、添加される酢酸銅エタノール溶液中のCu量に対して4モル当量となるよう、それぞれ混合した。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例2の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例3〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
比較例2の熱電変換層形成用組成物の調製において、CuO粒子をAgO粒子に変えた以外は同様の方法により比較例3の熱電変換層形成用組成物を調製した。
なお、AgO粒子は、比較例2のCuO粒子分散液の調整において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸銀(和光純薬工業社製)に変え、溶媒をエタノールから純水に変えた以外は、同様の方法により調製したものである。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例3の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例4及び5〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
比較例2の熱電変換層形成用組成物の調製において、CuO粒子を、SnO粒子又はZnO粒子に変えた以外は同様の方法により比較例4及び5の熱電変換層形成用組成物を調製した。
なお、SnO粒子及びZnO粒子は、比較例2のCuO粒子分散液の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を塩化スズ(II)二水和物(関東化学社製)、又は酢酸亜鉛二水和物(関東化学社製)に変えた以外は、同様の方法により調製したものである。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例4及び5の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例6〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
単層CNT0.4g(OCSiAl社製TUBALL 1.5nm(直径))とエタノール400mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、CNT分散液を得た。
次に、エタノール200mLに酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を溶解させ、0.001Mの酢酸銅エタノール溶液を調製した。同様に、純水200mLにチオアセトアミド(東京化成工業社製)を溶解させ、0.01Mのチオアセトアミド水溶液を調製した。エタノール100mL、上記酢酸銅エタノール溶液及びチオアセトアミド水溶液を混合し、水浴にて60℃に昇温し、120分間反応させてCuS粒子を形成することにより、CuS粒子分散液を調製した。
このCuS粒子分散液に上記CNT分散液を混合することにより、比較例6の熱電変換層形成用組成物を得た。
なお、酢酸銅エタノール溶液はCuS粒子がCNTに対して1質量%となるよう、チオアセトアミド水溶液は、添加されるチオアセトアミド水溶液中のチオアセトアミド量が、添加される酢酸銅エタノール溶液中のCu量に対して4モル当量となるよう、それぞれ混合した。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例6の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例7〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
比較例6の熱電変換層形成用組成物の調製において、CuS粒子をAgS粒子に変えた以外は同様の方法により比較例7の熱電変換層形成用組成物を調製した。
なお、AgS粒子は、比較例6のCuS分散液の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を酢酸銀(和光純薬工業社製)に変え、溶媒をエタノールから純水に変えた以外は、同様の方法により調製したものである。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例7の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例8及び9〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
比較例6の熱電変換層形成用組成物の調製において、CuS粒子を、SnS粒子又はPbS粒子に変えた以外は同様の方法により比較例8及び9の熱電変換層形成用組成物を調製した。
なお、SnS粒子及びPbS粒子は、比較例6のCuS分散液の調製において、酢酸銅一水和物(和光純薬工業社製)を塩化スズ(II)二水和物(関東化学社製)、又は酢酸鉛三水和物(関東化学社製)に変えた以外は、同様の方法により調製したものである。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例8及び9の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例10〕
<熱電変換層形成用組成物の調製>
特開2014−156370号公報の実施例1に記載の方法において、チタン源を銅源として銅エトキシド(II)(和光純薬工業社製)に変え、銅エトキシドをCuO粒子がCNTに対して1質量%となるよう加えた以外は、同様の方法で熱電変換層形成用組成物を得た。
<熱電変換層の作製>
ついで、上記実施例1と同様の方法により、比較例10の熱電変換層を作製し、さらに測定用の熱電変換層を作製した。
〔比較例11〕
グラフェン(商品名「グラフェンナノプレートレット」東京化成社製 厚さ6〜8nm)40mgとアセトン32mLとをメカニカルホモジナイザー(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENiZER HF93)を用いて、18000rpmで5分間混合して、分散液を得た。
ついで、上記実施例21と同様の方法により、比較例11の熱電変換層を作製した。また、実施例21と同様に、得られた熱電変換層を5cm角程度のサイズ(面内ばらつき用測定試料)と、1cm角程度のサイズ(熱電変換性能測定用試料)にカットし、測定用の熱電変換層を作製した。
〔分散液の形態観察〕
実施例1〜21で用いた各分散液(分散液1〜21に相当)、及び比較例2〜10で用いた各分散液を純水にて10倍に希釈し、マイクログリッドに滴下して乾燥させた後、TEM−EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて10万倍の倍率で観察及び元素分析を実施し、無機ナノ粒子の形態観察及び組成分析を行った。この形態観察及び組成分析の結果について、本発明では以下のように定義する。
「均一に複合化している」:目的の組成の無機ナノ粒子がほとんど凝集せずナノ炭素材料上に担持され複合化している状態。
「不均一に複合化している」:目的の組成の無機ナノ粒子が凝集してナノ炭素材料上に担持されている状態。
「複合化していない」:目的の組成の無機ナノ粒子が凝集し、ナノ炭素材料と別々に存在している状態。
この分析の結果、実施例1〜21で用いた各分散液(分散液1〜21に相当)は均一に複合化していた。一方、比較例2〜9の分散液は複合化していなかった。また、比較例10の分散液は不均一に複合化していた。
なお、分散液1〜21及び比較例2〜9の分散液中における無機ナノ粒子の短径は、いずれも500nm以下であった。
〔評価〕
各実施例及び各比較例の熱電変換層について、以下に示す各評価を実施した。
<面内ばらつきの評価>
SEM−EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、熱電変換層(5cm×5cmサイズ)の10か所の領域において炭素元素に対する金属元素の含有比率を測定し、下記式(1)により算出される面内ばらつきの最大値Tを求めた。
式(1)T=|最大偏差|/|平均値|×100(%)
なお、熱電変換層の10か所の領域は無作為に選択し(なお、各領域は少なくとも500μm以上離れている)、各領域のサイズは250μm×200μmである。
式(1)中、上記平均値とは、5cm×5cmサイズの熱電変換層から選ばれる任意の10か所の領域を測定して得られる炭素元素に対する金属元素の含有比率から算出される平均値である。
また、上記最大偏差とは、任意の10か所の領域を測定して得られる炭素元素に対する金属元素の含有比率のうち、平均値から最も離れた測定値と平均値との偏差である。結果を表2に示す。
<導電率(σ)、ゼーベック係数(S)>
熱電特性測定装置MODEL RZ2001i(オザワ科学社製)を用いて、約80℃及び105℃における熱電変換層の導電率及びゼーベック係数(絶対温度1K当りの熱起電力)を測定し、内挿により、100℃における導電率及びゼーベック係数を算出した。1実施例(比較例)につき10試料測定し、その平均値を用いた。
なお、導電率及びゼーベック係数の評価は、各々、下記に示す式により規格化した値に基づいて実施した。
(導電率(σ))
実施例1〜20及び比較例1〜10は比較例1を、実施例21及び比較例11は比較例11をそれぞれ基準比較例とし、下記式より各実施例及び各比較例の各規格化導電率を求めた。評価基準は下記の通りである。結果を表2及び表3に示す。
(規格化導電率)=(各実施例又は各比較例の熱電変換層の導電率)/(基準比較例の熱電変換層の導電率)
≪評価基準≫
「A」:規格化導電率が1.50以上
「B」:規格化導電率が1.30以上、1.50未満
「C」:規格化導電率が1.10以上、1.30未満
「D」:規格化導電率が1.10未満
(ゼーベック係数(S))
実施例1〜20及び比較例1〜10は比較例1を、実施例21及び比較例11は比較例11をそれぞれ基準比較例とし、下記式より各実施例及び各比較例の各規格化ゼーベック係数を求めた。評価基準は下記の通りである。結果を表2及び表3に示す。
(規格化ゼーベック係数)=(各実施例又は各比較例の熱電変換層のゼーベック係数)/(基準比較例の熱電変換層のゼーベック係数)
≪評価基準≫
「A」:規格化ゼーベック係数が1.50以上
「B」:規格化ゼーベック係数が1.30以上、1.50未満
「C」:規格化ゼーベック係数が1.10以上、1.30未満
「D」:規格化ゼーベック係数が1.10未満
<熱伝導率κ、性能指数Z比の評価>
(性能指数Z比の評価)
以下の式により性能指数Zを算出した。
(性能指数Z)=[(導電率)×(ゼーベック係数)]/熱伝導率
なお、性能指数Zの算出にあたり、以下の式により各実施例及び各比較例の熱電変換層の熱伝導率を算出した。なお、熱拡散率、比熱、及び、密度についても、導電率及びゼーベック係数と同様に1実施例(比較例)につき10試料測定し、その平均値を用いた。
(熱伝導率[W/mK])=(比熱[J/kg・K])×(密度[kg/m])×(熱拡散率[m/s])
なお、上記式において、「比熱」はDSC法(示差走査熱量測定法)により測定し、「密度」は質量/体積より測定した。「熱拡散率」は、熱拡散率測定装置ai−Phase Mobile 1u(アイフェイズ株式会社製)を用いて測定した。
算出された各実施例及び各比較例の性能指数Zの値を用いて、下記に示す式により規格化性能指数Z比(以下、「Z比」ともいう。)を算出した。具体的には、下記式より各実施例及び各比較例のZ比を求めた。なお、実施例1〜20及び比較例1〜10は比較例1を、実施例21及び比較例11は比較例11をそれぞれ基準比較例に用いた。結果を表2及び表3に示す。
(Z比)=(各実施例又は各比較例の熱電変換層の性能指数Z)/(基準比較例の熱電変換層の性能指数Z)
≪評価基準≫
「AA」:規格化性能指数Zが7.00以上
「A」:規格化性能指数Zが5.00以上、7.00未満
「B」:規格化性能指数Zが3.50以上、5.00未満
「C」:規格化性能指数Zが2.50以上、3.50未満
「D」:規格化性能指数Zが2.00以上、2.50未満
「E」:規格化性能指数Zが2.00未満
(熱伝導率κの評価)
熱伝導率κの評価は、下記に示す式により規格化した値に基づいて実施した。具体的には、実施例1〜20及び比較例1〜10は比較例1を、実施例21及び比較例11は比較例11をそれぞれ基準比較例とし、下記式より各実施例及び各比較例の各規格化熱伝導率(以下、「規格化熱伝導率」ともいう。)を求めた。評価基準は下記の通りである。結果を表2及び表3に示す。
(規格化熱伝導率)=(各実施例又は各比較例の熱電変換層の熱伝導率)/(基準比較例の熱電変換層の熱伝導率)
≪評価基準≫
「A」:規格化熱伝導率が0.500未満
「B」:規格化熱伝導率が0.500以上、0.700未満
「C」:規格化熱伝導率が0.700以上、0.900未満
「D」:規格化熱伝導率が0.900以上
<密着性の評価>
各実施例及び各比較例の熱電変換層をそれぞれ10個ずつ準備し、ニチバン株式会社製セロハンテープ(幅24mm)を密着させてから剥がした。剥がした後の熱電変換層の外観を目視で観察することにより、密着性を評価した。評価基準は下記の通りである。結果を表1に示す。
「A」:10個の試料のいずれにも剥離が観察されなかった。
「B」:10個の試料のうち、1個以上の試料で剥離が観察された。
以下に表2及び表3を示す。
なお、表2及び表3の無機ナノ粒子欄に記載される「ナノ炭素材料に対する含有量」は、ナノ炭素材料に対する無機ナノ粒子の含有量に相当する。
また、表2及び表3の「複合化の有無」は、ナノ炭素材料と無機ナノ粒子との状態を示す。ナノ炭素材料の存在下にて無機ナノ粒子を形成した場合(複合化されている場合)には「有」、そうでない場合(複合化されていない場合)には「無」で表す。
表2に示す結果から、実施例1〜21の熱電変換層は、いずれも面内ばらつきの最大値Tが30%以下であることが確認された。また、実施例1〜21の熱電変換層は、いずれも規格化Zに優れ、且つ、密着性にも優れていることが確認された。
また、表2の実施例1〜8の対比から、熱電変換層中、無機ナノ粒子の含有量が、ナノ炭素材料に対して0.01〜300質量%である場合(好ましくは0.01〜250質量%、より好ましくは0.05〜3質量%である場合)に、性能指数Zにより優れることが確認された。
また、実施例5、9〜20の対比から、無機ナノ粒子として金属硫化物粒子又は金属酸化物粒子を含有する場合(より好ましくは金属硫化物粒子を含有する場合)には、熱電変換性能がより一層優れることが確認された。また、実施例5、9〜13、15〜20の対比から、無機ナノ粒子が、銅、銀、鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する場合には、熱電変換性能がより優れることが確認された。なかでも無機ナノ粒子が、銅、銀、鉛、又は錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する硫化物である場合に、ゼーベック係数S、導電性σ、熱伝導性κ、性能指数Zのいずれについても優れることが確認された。
一方、比較例2〜10の熱電変換層は、面内ばらつきの最大値Tが大きく、この結果として熱電変換性能及び密着性のいずれにおいても所望の効果が得られなかった。
なお、比較例10の方法で形成される複合粒子は、金属酸化物粒子のカーボンナノチューブへの被覆性は高くなるが、電磁波照射により急速に加熱されることにより粒子形成が素早く進行するため、金属酸化物粒子同士の凝集が避けられないことを明らかとした。つまり、比較例10の方法で形成される複合粒子は、無機ナノ粒子がナノ炭素材料上に担持されてはいるものの、金属酸化物同士の凝集もある程度存在するため、熱電変換性能及び密着性において所望の効果が発現しなかったと考えられる。
(実施例22)熱電変換モジュールの作製
熱電変換層を4mm×8mmのサイズにカットしたこと以外は実施例5と同様にして熱電変換層を16個作製した。
次いで、上記熱電変換層を用いて図6に示す熱電変換モジュールを作製した。
まず、幅1.6cm×長さ14cmの基板120(ポリイミド基板)に、スクリーン印刷により、銀ペーストを印刷し、銀ペーストの印刷物を120℃で1時間乾燥させて、電極130を16対と配線132を同時に形成した。なお、電極1つ当たりのサイズは、幅4mm×長さ2.5mmで、電極間距離は5mmである。また、後述する16個の熱電変換層150が直列に接続されるように、1対の電極130間が幅1mmの配線により接続される。
次に、幅4mm×長さ8mmのサイズにカットした熱電変換層を、両面テープを用いて電極間に張り付けた。電極と熱電変換層の接触部に銀ペーストを塗布し、120℃で1時間乾燥することにより電極と熱電変換層を接着させ電気的に接続した。このようにして得られた熱電変換モジュール200を実施例22の熱電変換モジュールとして用いた。
(比較例12)
熱電変換層を4mm×8mmサイズにカットした比較例2の熱電変換層を用いたこと以外は実施例22と同様にして熱電変換モジュールを作製した。
(熱電変換モジュールの評価)
図7は、実施例における熱電変換モジュールの評価方法を説明するための図である。図7に示すように、熱電変換モジュール200の発電層側をアラミドフィルム310により保護した。そして、熱電変換モジュール200の下部をホットプレート330上に設置した銅プレート320で挟みこんで固定することにより、熱電変換モジュール200の下部を効率的に加熱できるようにした。
次いで、熱電変換モジュール200の両端における取り出し電極(図示せず)にソースメーター(ケースレーインスツルメンツ社製)の端子(図示せず)を取り付け、ホットプレート330の温度を100℃で一定に保って、熱電変換モジュール200に温度差を付与した。
電流−電圧特性を測定し、短絡電流及び開放電圧を測定した。測定結果から、「(出力)=[(電流)×(電圧)/4]」によって出力を算出した。その結果、出力は実施例22>比較例12となり、実施例22の熱電変換層の性能を支持する結果が得られた。
110、120、130、140 熱電変換素子
11、17 金属板
12、22 第1の基材
13、23 第1の電極
14、24 熱電変換層
15、25 第2の電極
16、26 第2の基材
30 第2基板
32 第1基板
32a,30a 低熱伝導部
32b,30b 高熱伝導部
34 熱電変換層
36 第1の電極
38 第2の電極
41 n型熱電変換層
42 p型熱電変換層
43 下側基材
44 第2の電極
45 第1及び第3の電極
45A 第1の電極
45B 第3の電極
46 上側基材
47 電子
48 ホール
120 基板
130 電極
132 配線
150 熱電変換層
200 熱電変換モジュール
310 アラミドフィルム
320 銅プレート
330 ホットプレート

Claims (8)

  1. ナノ炭素材料と、金属元素を含有する無機ナノ粒子と、を含有する熱電変換層であって、
    前記熱電変換層を走査型電子顕微鏡にて観察し、エネルギー分散型X線分析により得られる前記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する前記金属元素の含有比率を用いて、下記式(1)により算出される面内ばらつきの最大値Tが、0〜30%である熱電変換層。
    式(1)T=|最大偏差|/|平均値|×100
    前記平均値とは、走査型電子顕微鏡にて観察した前記熱電変換層の10か所の領域における前記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する前記金属元素の含有比率をそれぞれ算出し、それらを算術平均して得られる平均値である。
    前記最大偏差とは、走査型電子顕微鏡にて観察した前記熱電変換層の10か所の領域における前記ナノ炭素材料由来の炭素元素に対する前記金属元素の含有比率のうち前記平均値から最も離された測定値と、前記平均値との偏差である。
  2. 前記無機ナノ粒子の含有量が、前記ナノ炭素材料に対して、0.01〜300質量%である、請求項1に記載の熱電変換層。
  3. 前記ナノ炭素材料が、カーボンナノチューブである、請求項1又は2に記載の熱電変換層。
  4. 前記無機ナノ粒子が、金属硫化物粒子又は金属酸化物粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換層。
  5. 前記無機ナノ粒子が、金属硫化物粒子である、請求項4に記載の熱電変換層。
  6. 前記無機ナノ粒子が、銅、銀、鉛、亜鉛、及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、請求項4又は5に記載の熱電変換層。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電変換層を備えた、熱電変換素子。
  8. 請求項7に記載の熱電変換素子を複数個備えた、熱電変換モジュール。
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