以下、図面を参照して発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
<第1の実施の形態>
まず、図1〜図3を参照しながら、第1の発明に関連した第1の実施の形態について説明する。
図1には、調光部材20が適用される一例として、調光部材20を備えたサンバイザ10が示されている。図1に示されているように、自動車1には、その内部であってフロントガラスに対面する位置に、サンバイザ10が配置されている。サンバイザ10は、フロントガラスを通って入射する太陽光等を低減し、自動車1の乗員に良好な視界を与えることができる。
調光部材20は、可視光の透過率を調節可能であり、例えば透過率を高く調節する場合には25%以上、低く調節する場合には10%以下とすることができる。図2に示すように、調光部材20は、一対の透明基材である第1透明基材21及び第2透明基材22と、第1透明基材21及び第2透明基材22の間に配置された調光セル30と、第1透明基材21と調光セル30とを接合する第1接合層23と、第2透明基材22と調光セル30とを接合する第2接合層24と、を備える。
以下、調光部材20の各構成要素について、説明する。
まず、第1透明基材21及び第2透明基材22について説明する。第1透明基材21及び第2透明基材22は、調光セル30の形状を一定に維持し、調光セル30を傷や汚れから保護するためのものである。調光セル30の形状を一定に維持するために、第1透明基材21及び第2透明基材22は、剛性を有する。具体的には、第1透明基材21及び第2透明基材22の曲げ強さは、1000MPa以上であることが好ましい。曲げ強さは、JIS K 7171で規定されており、例えば、インストロン社製 万能試験機によって測定することができる。
また、第1透明基材21及び第2透明基材22は、樹脂によって形成されており、ガラス転移温度の高い樹脂であるポリカーボネートを含んでいることが好ましい。樹脂によって形成されることで、第1透明基材21及び第2透明基材22は、破損しにくくなり得る。第1透明基材21及び第2透明基材22は、シャルピー衝撃値が1kJ/m2以上となるように形成されることが好ましい。また、第1透明基材21及び第2透明基材22に含まれるポリカーボネートの分子量が、17,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。第1透明基材21及び第2透明基材22がこのような材料で形成されていると、第1透明基材21及び第2透明基材22が破損してしまっても、第1透明基材21及び第2透明基材22の破片の縁部が鋭利にならず、調光部材20の使用者を負傷させる危険性を低減することができる。
なお、「透明」とは、第1透明基材21及び第2透明基材22を介して当該透明基材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
また、第1透明基材21及び第2透明基材22は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1透明基材21及び第2透明基材22を得ることができる。第1透明基材21及び第2透明基材22は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、第1接合層23及び第2接合層24について説明する。上述したように、第1接合層23は、第1透明基材21と調光セル30とを接合し、第2接合層24は、第2透明基材22と調光セル30とを接合する。第1接合層23及び第2接合層24は、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)やOCR(Optical Clear Resin)である。すなわち、第1接合層23及び第2接合層24は、光学的に透明な接着剤の層である。また、第1接合層23及び第2接合層24は、第1透明基材21及び第2透明基材22と実質的に同じ屈折率を有していることが好ましい。この場合、第1透明基材21及び第2透明基材22と第1接合層23及び第2接合層24との各界面における光の反射を低減することができる。
また、第1接合層23及び第2接合層24は、後述する調光セル30に含まれる液晶セル35において液晶が偏在することを避けるために、室温環境(例えば1℃以上30℃以下、特に好ましくは15℃以上25℃以下)における貯蔵弾性率が6×106Pa以下、好ましくは1.4×106Pa以下となっている。また、第1接合層23及び第2接合層24は、第1透明基材21及び第2透明基材22から剥離して気泡が生じることを避けるために、室温環境における貯蔵弾性率が3×104Pa以上となっていることが好ましく、1×105Pa以上となっていることがより好ましい。これらの不具合と貯蔵弾性率との関係については、後に詳しく説明する。
なお、貯蔵弾性率は、固体粘弾性アナライザ(ティー・エイ・インスツルメント社製「RSA−III」)によって、JIS K 7244−1に準拠した動的粘弾性測定法によって測定されることができる。貯蔵弾性率は、温度−50〜150℃の範囲で、周波数1Hz、アタッチメントモード ねじりせん断モード、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
第1接合層23及び第2接合層24の少なくとも一方の厚さは、50μm以上であることが好ましい。2つの剛性を有する部材を接合層を介して積層させる場合、接合層と剛性を有する部材との間に入り込んだ空気は、接合層と剛性を有する部材の間から抜けにくく、気泡として入り込んでしまう。したがって、例えば第1接合層23が50μmより薄いと、第2透明基材22及び調光セル30等と積層した第1接合層23を第1透明基材21に積層する際に、第1透明基材21及び第2透明基材22が共に剛性を有することから、第1接合層23と第1透明基材21との間に気泡が入り込みやすくなる。他方、剛性を有する部材と剛性を有さない部材とを接合層を介して積層させる場合、接合層と剛性を有さない部材との間に空気が入り込んでも、剛性を有さない部材が湾曲させながら積層していくことで空気の排出を誘導することができる。したがって、例えば第2接合層24が50μmより薄くても、調光セル30を第2接合層24に積層する際には、第2接合層24と第2透明基材22との間に気泡は入り込みにくい。また、第1接合層23及び第2接合層24は、厚みが1000μm以下であることが好ましい。厚みが1000μmよりも厚いと、量産性、価格及び強度の点で不利となる。第1接合層23及び第2接合層24は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、調光セル30について説明する。図3に示すように、調光セル30は、第1偏光板31と、第2偏光板32と、第1偏光板31と第2偏光板32との間に配置された液晶セル35とを含む。調光セル30は、電圧印加等の電子制御によって液晶セル35の液晶の配向状態を変化させることができる。液晶の配向を変化させることで、第1偏光板31及び第2偏光板32の間を進む光の偏光状態を制御する。これにより、例えばクロスニコルやパラレルニコルで配置された第1偏光板31及び第2偏光板32の間を進む光の可視光透過率を調節することができる。また、調光セル30の厚みは、例えば100μm以上800μm以下である。
なお、クロスニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに直交するように配置されていることをいい、パラレルニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに平行になるように配置されていることをいう。
第1偏光板31及び第2偏光板32は、入射した光を直交する二つの偏光成分(p偏光成分及びs偏光成分)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、p偏光成分)をより高い透過率で透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、s偏光成分)をより高い吸収率で吸収する機能を有している。すなわち、第1偏光板31及び第2偏光板32を通すことで、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分を選択して取り出すことができる。
液晶セル35には、例えばVA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式またはFFS(Fringe Field Switching)方式の液晶を用いることができる。液晶セル35は、樹脂からなるフィルムを基材として液晶が保持されたフィルム液晶であってもよいし、薄膜状のガラスを基材として液晶が保持されたガラス液晶であってもよい。
調光セル30は、配線30cを有している。配線30cは、例えば自動車1に設けられた制御装置(図示せず)に接続され、駆動電力や制御信号を調光セル30に提供する。
調光セル30には、配線30cを介して電圧を印加する等の電子制御を行うことにより、液晶セル35の液晶の配向を変化させることができる。液晶の配向によって、液晶セル35を透過する光の偏光方向は変化し得る。例えば、電圧が印加され液晶の配向が変化した液晶セル35を、第1偏光板31を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶セル35を透過する光は、その偏光方向を90°回転させる。第1偏光板31及び第2偏光板32がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を90°回転したことで、光は第2偏光板32を透過することができる。一方、電圧が印加されておらず液晶の配向が変化していない液晶セル35を、第1偏光板31を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶セル35を透過する光は、その偏光方向を回転させない。第1偏光板31及び第2偏光板32がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を回転しなかった光は第2偏光板32を透過することができない。このように、液晶セル35の液晶の配向の変化の有無によって、光の透過を制御することができる。したがって、調光セル30は、電子制御により可視光透過率を調節することができる。
なお、調光部材20には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、調光部材20の第1透明基材21、第2透明基材22、第1接合層23、第2接合層24及び調光セル30の少なくとも一つに、何らかの機能を付与するようにしてもよい。調光部材20に付与され得る機能としては、一例として、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、調光部材20の製造方法の一例について説明する。
まず、第2透明基材22上に第2接合層24が積層される。第2接合層24は、例えばディスペンサによって塗布されることで設けられる。第2接合層24と積層する第2透明基材22の面に段差が生じていたとしても、第2接合層24が塗布されることで段差は埋め合わされるため、第2透明基材22と第2接合層24との間に気泡は生じにくい。
次に、第2接合層24上に調光セル30を積層する。調光セル30は、剛性を有さないため、調光セル30と第2接合層24との間の空気を押し出しながら積層することができる。したがって、第2接合層24の厚さにかかわらず、第2接合層24と調光セル30との間に気泡は生じにくい。
次に、調光セル30上に第1接合層23が積層される。第1接合層23は、例えばディスペンサによって塗布されることで設けられる。調光セル30に段差が生じていたとしても、第1接合層23が塗布されることで段差は埋め合わされるため、調光セル30と第1接合層23との間に気泡は生じにくい。
その後、第1接合層23に、第1透明基材21が積層される。第1透明基材21及び第1接合層23に積層している第2透明基材22が剛性を有するため、第1接合層23と積層する第1透明基材21の面に段差が生じていると、段差に空気が入り込むことがある。しかしながら、第1接合層23が十分な厚さであると、第1接合層23が変形することによって段差内に入り込み、段差内の空気を排出しやすくなる。したがって、段差に気泡を残留させないために、第1接合層23の厚さが十分な厚さであること、具体的には50μm以上であることが好ましい。
以上の各工程は、低圧環境下または真空環境下で行われることが好ましい。このことにより、調光部材20の各層の間の界面に気泡が混入することを抑制することができる。
ところで、このような調光部材20には、局所的な変色が生じることがあった。本件発明者らが検討したところ、調光部材20の局所的な変色は、樹脂で形成された透明基材の変形によって調光セルに圧力がかかり、調光セルの液晶セルにおいて液晶が偏在することで発生すると推定された。さらに、この推定原因に対応した対策によって調光部材の局所的な変色を効果的に抑制し得ることを確認した。
樹脂で形成された透明基材の変形は、熱によって起こり得る。例えば、調光部材20がサンバイザとして自動車1の内部で用いられる場合、高温に晒され得る。樹脂で形成された第1透明基材21及び第2透明基材22のガラス転移温度は、100〜150℃程度である。したがって、第1透明基材21及び第2透明基材22は、80℃程度の温度に晒されると、変形し得る。この熱による第1透明基材21及び第2透明基材22の変形によって、調光セル30に圧力がかかり、調光セル30の液晶セル35において液晶が偏在した結果、調光部材20に局所的な変色を生じさせていると考えられる。
調光部材20に局所的な変色を生じさせないために、調光セル30の液晶セル35における液晶の偏在を防止することが望まれる。本件発明者らが鋭意検討した結果、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率を低くすることで、第1透明基材21及び第2透明基材22の変形を第1接合層23及び第2接合層24で吸収して、調光セル30が第1透明基材21及び第2透明基材22の変形の影響を受けないようにすることができることを確認した。具体的には、室温環境における第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率を6×106Pa以下、好ましくは1.4×106Pa以下とすることで、第1透明基材21及び第2透明基材22が熱によって変形したとしても、調光部材20に局所的な変色が生じないことが確認された。
また、このような調光部材20には、第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間に気泡が生じることがあった。本件発明者らが検討したところ、気泡は、上述したような第1透明基材21と第1接合層23とを積層する際に入り込むことで生じるほか、調光部材20が高温に晒されることでも生じることがあると推定された。
調光部材20が高温に晒されると、第1透明基材21及び第2透明基材22が変形して第1接合層23及び第2接合層24から剥離することがあり、剥離した隙間に空気が入り込むことで気泡が発生し得る。また、調光部材20が高温に晒されると、第1透明基材21及び第2透明基材22に含まれる水分等がガスとなり、そのガスが第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間を剥離させて入り込むことで、気泡が発生し得ると考えられる。
本件発明者らが鋭意検討した結果、調光部材20の第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間に気泡を発生させないために、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率を高くすることで、第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間の剥離を防止して、気泡の発生を抑制することができることを確認した。具体的には、室温環境における第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率を3×104Pa以上、好ましくは1×105Pa以上とすることで、高温に晒されても第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間の剥離が防止され、気泡の発生が抑制されることが確認された。
以上のように、第1の実施の形態の調光部材20は、一対の透明基材21,22と、一対の透明基材21,22の間に配置された調光セル30と、透明基材21,22と調光セル30との間に配置され、透明基材21,22と調光セル30とを接合する2つの接合層23,24と、を備え、調光セル30は、電子制御により可視光透過率を調節可能であり、接合層23,24の貯蔵弾性率は、1℃以上30℃以下で、6×106Pa以下である。このような調光部材20によれば、第1透明基材21及び第2透明基材22が熱によって変形したとしても、第1透明基材21及び第2透明基材22の変形を第1接合層23及び第2接合層24で吸収することができる。したがって、調光セル30が第1透明基材21及び第2透明基材22の変形の影響を受けず、調光セル30の液晶セル35に液晶の偏在を生じにくくすることができる。すなわち、調光部材20に局所的な変色を生じにくくすることができる。
また、第1の実施の形態の調光部材20において、第1接合層23及び第2接合層24の少なくとも一方の厚さは、50μm以上である。上述した第1の実施の形態では、第1接合層23の厚さが、50μm以上となっている。このような調光部材20によれば、第1接合層23と積層する第1透明基材21の面に段差が生じていても、第1接合層23が変形することによって段差が埋め合わされることができ、段差に空気が入らず、気泡が入り込みにくい。したがって、調光部材20に気泡が発生することを抑制することができる。
さらに、第1の実施の形態の調光部材20において、接合層23,24の貯蔵弾性率は、1℃以上30℃以下で、3×104Pa以上である。このような調光部材20によれば、第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間の剥離を防止して、気泡の発生を抑制することができる。
なお、上述した第1の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
例えば、上述した第1の施の形態の調光部材20は、第1透明基材21と第1接合層23との間及び/又は第2透明基材22と第2接合層24との間に配置された易接着層を、さらに備えてもよい。図2に示された例では、第1透明基材21と第1接合層23との間に易接着層21aが配置されている。易接着層21aは、当該易接着層の両面の部材の密着性及び接着性を向上させるための層である。すなわち、易接着層21aと第1透明基材21との接着力および易接着層21aと第1接合層23との接着力は、第1透明基材21と第1接合層23との接着力よりも強くなっている。また、第2透明基材22と第2接合層24との間に易接着層が配置されている場合も、易接着層と第2透明基材22との接着力および易接着層と第2接合層24との接着力は、第2透明基材22と第2接合層24との接着力よりも強くなっている。ここで二つの層の接着力の強さは、JIS K 6854に準拠した剥離試験、例えば、インストロン社製 万能試験機によって測定することができる。易接着層は、透明な材料からなり、例えばアクリルまたはウレタンを含む樹脂である。また、易接着層の厚さは、例えば3μm以上50μm以下である。
このような易接着層によれば、第1透明基材21と第1接合層23及び/又は第2透明基材22と第2接合層24との密着性及び接着性を向上させて、第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間の剥離を防止することができる。したがって、第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間の気泡の発生を抑制することができる。
また、上述した第1の実施の形態の調光部材20は、第1透明基材21と第1接合層23との間及び/又は第2透明基材22と第2接合層24との間に配置されたバリア層を、さらに備えてもよい。図2に示された例では、第2透明基材22と第2接合層24との間にバリア層22aが配置されている。バリア層22aは、第2透明基材22から発生するガスを遮断し、第2接合層24にガスの影響を及ぼさないようにするための層である。このために、バリア層22aの水蒸気透過率が1g/m2・da以下であることが好ましい。また、第1透明基材21と第1接合層23との間にバリア層が配置されている場合も、バリア層は、第1透明基材21から発生するガスを遮断し、第1接合層23にガスの影響を及ぼさないようにすることができる。なお水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W3/31)を用い、温度40℃、湿度100%RHで測定可能である。バリア層は、透明な材料からなり、例えば酸炭化ケイ素(SiOC)の蒸着膜が使用される。この場合のバリア層の厚さは、例えば50nm以上1μm以下である。しかし、バリア層は透明であれば、作製方法は塗工など他の手法で作製してもよい。
このようなバリア層によれば、調光部材20に熱が加わった際に、第1透明基材21及び/又は第2透明基材22から発生する水分等によるガスが第1接合層23及び/又は第2接合層24に達することを抑制することができる。したがって、ガスが第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間を剥離させて入り込むことで発生し得る気泡を抑制することができる。
さらに、上述した第1の実施の形態の調光部材20は、第1透明基材21の第1接合層23が配置された側とは反対側及び/又は第2透明基材22の第2接合層24が配置された側とは反対側に配置された反射防止層を、さらに備えてもよい。図2に示された例では、第1透明基材21の第1接合層23が配置された側とは反対側に反射防止層21bが配置されている。反射防止層は、調光部材20の表面における可視光の反射を抑止して、可視光透過率を向上させるための層である。反射防止層は、透明な材料からなり、例えば第1透明基材21及び第2透明基材22より屈折率の低い材料からなる。また、反射防止層は、可視光の最短波長(例えば380nm)未満のピッチで配列された微小突起を有してもよい。反射防止層の厚さは、例えば反射防止層を設けたフィルムを貼合する場合は20μm以上500μm以下、塗工または蒸着で設ける場合は、10μm以下である。
また、上述した第1の実施の形態では、調光セル30の液晶セル35は、VA方式等の2つの偏光板31,32を伴って用いる方式の液晶が用いられている。しかしながら、調光セル30として、GH(Guest Host)方式の液晶が用いられてもよい。GH方式の液晶は、液晶組成物と二色性色素組成物とがランダムに配向した状態と、いわゆるツイスト配向した状態とを電圧の制御により変化させて透過率を制御することができる。GH方式の液晶である液晶セル35を用いる場合、図3に示すような第1偏光板31及び第2偏光板32の一方あるいは両方を配置しなくてもよい。
さらに、上述した第1の実施の形態では、調光部材20は、外部から電力の供給を受けていたが、調光部材20の一部に太陽電池(図示せず)を設け、この太陽電池から電力を供給するように構成されても良い。更には、太陽電池の出力により照射光量を判断し、それに応じて透過率を自動制御してもよい。
以上の説明においては、調光部材20がサンバイザ10に採用された例を用いたが、調光部材20の用途は、サンバイザには限定されない。他の用途の例としては、自動車のサイドウィンドウやサンルーフ、あるいは電車や航空機などの移動体の窓部分に採用することが可能である。さらに、建築物の窓部分に採用することも可能である。
以上において上述した第1の実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
<実施例>
以下、実施例を用いて第1の発明をより詳細に説明するが、第1の発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜9および比較例1〜5として、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率及び第1接合層23の厚さの少なくとも一方がそれぞれ異なる調光部材20を用意した。実施例及び比較例の調光部材20における第1透明基材21及び第2透明基材22は、ポリカーボネートからなり、厚さは3mmである。
なお、貯蔵弾性率は、例えばテルペンのような粘着付与性樹脂や、フタル酸ジオクチル(DOP)やアジピン酸ジオクチル(DOA)のような可塑剤を添加することで、調節することができる。あるいは、架橋剤の分量を調節することや、接合層の材料の主ポリマーの官能基数を増減させることでも、貯蔵弾性率を調節することができる。
各実施例及び比較例について、調光部材20が製造された直後、すなわち後述する耐熱試験前に気泡が発生しているかを、目視及び拡大鏡を用いることによって観察して確認した。また、調光部材20が高温に晒されて用いられることを想定して、調光部材20を恒温槽にて80℃の条件で400時間保管する耐熱試験を行い、耐熱試験後に気泡が発生しているか及び液晶の偏在による変色が発生しているかを、目視及び拡大鏡を用いることによって観察して確認した。なお、液晶の偏在による変色の確認は、調光部材20の透過率を高くした状態及び低くした状態の両方で行い、いずれかで液晶の偏在が確認されれば液晶の偏在が生じているとした。
実施例1〜9及び比較例1〜5における、第1接合層23及び第2接合層24の室温環境における貯蔵弾性率、第1接合層23の厚さ、調光部材20の製造直後の気泡、耐熱試験後の気泡の発生及び耐熱試験後の液晶の偏在についての結果を、以下の表1及び表2に示す。気泡の発生及び液晶の偏在について、拡大鏡を用いても観察されなかったものにはAを、目視では観察されなかったが拡大鏡を用いると観察されたものにはBを、目視で観察されたものにはCを、それぞれ付している。以下において言及する表1〜表3において、製造直後の気泡の発生についての結果を結果1として、耐熱試験後の気泡の発生についての結果を結果2として、耐熱試験後の液晶の偏在についての結果を結果3として、それぞれ、示している。
まず、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率の異なる実施例及び比較例の結果を、以下の表1に示す。
表1に表された実施例1〜7及び比較例1,2の結果から理解されるように、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が60×105Paより大きいサンプル、すなわち比較例1及び比較例2では、耐熱試験後の調光部材20に目視でも液晶の偏在が確認された。この液晶の偏在は、上述したように、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が高すぎて、熱による第1透明基材21及び第2透明基材22の変形を第1接合層23及び第2接合層24で吸収できなかったために生じたと考えられる。
表1に示された結果から、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率を60×105Pa以下とすることで、液晶の偏在を抑制することができることが理解される。とりわけ、実施例1および実施例2の比較から、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が14×105Pa以下であることが、液晶の偏在を抑制することには好ましいことが理解される。
また、実施例1〜7及び比較例3の結果から理解されるように、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が0.3×105Paより小さい場合、耐熱試験後の調光部材20に目視でも気泡の発生が確認された。この気泡は、上述したように、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が低すぎて、熱による第1透明基材21及び第2透明基材22の変形や第1透明基材21及び第2透明基材22から発生したガスによって、第1透明基材21と第1接合層23との間及び第2透明基材22と第2接合層24との間が剥離したために生じたと考えられる。
表1に示された結果から、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が0.3×105Pa以上であることで、気泡の発生を抑制することができることが理解される。とりわけ、実施例5および実施例6の比較から、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が1×105Pa以上であることが、気泡の発生を抑制することには好ましいことが理解される。
次に、第1接合層23の厚さの異なる実施例及び比較例の結果を、以下の表2に示す。
表2に示された実施例5,8,9及び比較例4,5の結果から理解されるように、第1接合層23の厚さが50μmより小さい場合、調光部材20の製造直後において気泡が生じていた。この気泡は、上述したように、第1接合層23の厚さが薄すぎるため、第1透明基材21と第1接合層23とを積層する際に、第1接合層23と積層する第1透明基材21の面の段差に入り込んだと考えられる。なお、表2の結果において、比較例4,5で耐熱試験後の結果2でも気泡が観察されているのは、製造直後に気泡が生じていたため、耐熱試験後もその気泡が観察されるためである。
表2に示された結果から、第1接合層23の厚さが50μm以上であることで、気泡の発生を抑制することができることが理解される。とりわけ、実施例8および実施例9の比較から、第1接合層23の厚さが75μm以上であることが、気泡の発生を抑制することには好ましいことが理解される。
ところで、上述したように、透明基材と接合層との間に易接着層を配置することで、透明基材と接合層との密着性及び接着性を向上させて、透明基材と接合層との間の剥離を防止することができる。したがって、易接着層を配置することで、耐熱試験後の気泡の発生を抑制することができると考えられる。
また、上述したように、透明基材と接合層との間にバリア層を配置することで、透明基材から発生するガスが接合層に達することを抑制することができる。したがって、ガスが透明基材と接合層との間を剥離させて入り込むことで発生し得る気泡を抑制することができると考えられる。すなわち、バリア層を配置することで、耐熱試験後の気泡の発生を抑制することができると考えられる。
易接着層又はバリア層を配置した実施例及び比較例について、以下に示す。実施例6にアクリルを含む樹脂を材料とする易接着層を追加の層として設けたものを実施例10とし、ウレタンを含む樹脂を材料とする易接着層を追加の層として設けたものを実施例11とした。また、実施例6にバリア層を追加の層として設けたものを実施例12とした。また、実施例7に易接着層を追加の層として設けたものを実施例13とし、バリア層を追加の層として設けたものを実施例14とした。さらに、比較例3に易接着層を追加の層として設けたものを比較例6とし、バリア層を追加の層として設けたものを比較例7とした。
実施例6,7,10〜14及び比較例3,6,7の結果を、以下の表3に示す。
表3に示された実施例6,7と実施例10〜14の結果の比較から理解されるように、易接着層またはバリア層を設けることで、耐熱試験後の気泡の発生をより抑制することができることが確認された。一方、比較例3,6,7の結果から理解されるように、第1接合層23及び第2接合層24の貯蔵弾性率が低すぎると、易接着層またはバリア層を設けたとしても、耐熱試験後に気泡の発生が確認された。この気泡は、貯蔵弾性率が低すぎると、易接着層またはバリア層を設けたとしても、接合層が剥離してしまうために生じたと考えられる。
また、熱による第1透明基材21及び第2透明基材22の変形は、ガラス転移温度が低いほど生じやすい。上述の実施例1〜9で用いたポリカーボネートからなる透明基材のガラス転移温度(Tg)は145℃である。しかしながら、透明基材がポリカーボネートを主成分としながらも他の成分を含む透明基材であると、ガラス転移温度は低下し得る。
実施例3〜5について、透明基材の成分構成を変更し、ガラス転移温度が125℃となっている調光部材を作成し、実施例15〜17とした。実施例3〜5,15〜17の結果を、以下の表4に示す。
表4に示された結果から理解されるように、透明基材のガラス転移温度を125℃としても、耐熱試験後の結果に変化はないことが確認された。したがって、透明基材のガラス転移温度が少なくとも125℃以上であれば、気泡の発生および液晶の偏在の発生といった調光部材を介した視界を悪化させるような問題が生じにくいということが理解される。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態と同様に、調光部材120が適用される一例として、図1に示されたサンバイザ10を例示することができる。図1に示されているように、自動車1には、その内部であってフロントガラス5に対面する位置に、サンバイザ10が配置されている。サンバイザ10は、フロントガラス5を通って入射する太陽光等を低減し、自動車1の乗員に良好な視界を与えることができる。
以下、図4〜図11を参照しながら、第2の発明に関連した第2の実施の形態について説明する。
調光部材120は、可視光の透過率を調節可能である。図4に示すように、調光部材120は、一対の基材である第1透明基材121及び第2透明基材122と、第1透明基材121及び第2透明基材122に積層された調光セル130と、第1透明基材121と調光セル130とを接合する第1接合層123と、第2透明基材122と調光セル130とを接合する第2接合層124と、を備える。
以下、調光部材120の各構成要素について、説明する。
まず、第1透明基材121及び第2透明基材122について説明する。第1透明基材121及び第2透明基材122は、調光セル130の形状を一定に維持し、調光セル130を傷や汚れから保護するためのものである。第1透明基材121及び第2透明基材122は、ポリカーボネートを含んでいることが好ましい。第1透明基材121及び第2透明基材122にポリカーボネートが含まれていると、後述する第1透明基材121及び第2透明基材122のリタデーションを容易に制御して製造することができる。また、第2の実施の形態による調光部材120では、第1透明基材121及び第2透明基材122に含まれるポリカーボネートの分子量が、17,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。第1透明基材121及び第2透明基材122がこのような材料で形成されていると、第1透明基材121及び第2透明基材122が破損しても、第1透明基材121及び第2透明基材122の破片の縁部が鋭利にならず、調光部材120の使用者を負傷させる危険性を低減することができる。しかしながら、これに限らず、第1透明基材121及び第2透明基材122は、ガラス板で形成されていてもよい。第1透明基材121及び第2透明基材122がガラス板で形成されている場合、第1透明基材121及び第2透明基材122が破損した際に調光部材120の使用者を負傷させる危険性を低減するために、表面に飛散防止用のシートを設けることが好ましい。
なお、「透明」とは、第1透明基材121及び第2透明基材122を介して当該透明基材の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
また、第1透明基材121及び第2透明基材122は、0.1mm以上10mm以下、好ましくは0.5mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1透明基材121及び第2透明基材122を得ることができる。第1透明基材121及び第2透明基材122は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
第1透明基材121及び第2透明基材122は、押出成形によって製造されることが好ましい。押出成形によれば、第1透明基材121及び第2透明基材122を、均質で平板状に形成することができる。押出成形によって平板状に製造するために、第1透明基材121及び第2透明基材122のメルトボリュームフローレートが、10cm3/10分以下となっていることが好ましい。なお、メルトボリュームフローレートは、ISO1133に従った温度300℃で加重1.2kgの条件で測定する。
次に、第1接合層123及び第2接合層124について説明する。上述したように、第1接合層123は、第1透明基材121と調光セル130とを接合し、第2接合層124は、第2透明基材122と調光セル130とを接合する。第2の実施の形態において、第1接合層123及び第2接合層124は、いわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)である。すなわち、第1接合層123及び第2接合層124は、透明で、粘着性を有する。また、第1接合層123及び第2接合層124は、第1透明基材121及び第2透明基材122と実質的に同じ屈折率を有していることが好ましい。この場合、第1透明基材121及び第2透明基材122と第1接合層123及び第2接合層124との各界面における光の反射を低減することができる。
第1接合層123及び第2接合層124は、厚みが25μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚みが25μmよりも薄いと、調光部材の歪みを接合面で吸収できないため、気泡や調光部材の不具合(たとえば液晶GAP不良に伴う色ムラ)を生じやすい。その一方で、厚みが1000μmよりも厚いと、量産性、価格及び強度の点で不利となる。第1接合層123及び第2接合層124は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、調光セル130について説明する。図5に示すように、調光セル130は、第1偏光板131と、第2偏光板132と、第1偏光板131と第2偏光板132との間に配置された液晶セル135とを含む。第1偏光板131及び第2偏光板132は、入射した光を直交する二つの偏光成分(p偏光成分及びs偏光成分)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、p偏光成分)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、s偏光成分)を吸収する機能を有している。液晶セル135には、例えばVA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式またはFFS(Fringe Field Switching)方式の液晶を用いることができる。調光セル130は、電圧印加等の電子制御によって液晶セル135の液晶の配向を変化させることができる。液晶の配向を変化させることで、第1偏光板131及び第2偏光板132の間を進む光の偏光状態を制御する。これにより、例えばクロスニコルやパラレルニコルで配置された第1偏光板131及び第2偏光板132の間を進む光の可視光透過率を調節することができる。なお、クロスニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに直交するように配置されていることをいい、パラレルニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに平行になるように配置されていることをいう。また、調光セル130の厚みは、例えば100μm以上800μm以下である。
液晶セル135は、樹脂からなるフィルムを基材として液晶が保持されたフィルム液晶であってもよいし、薄膜状のガラスを基材として液晶が保持されたガラス液晶であってもよい。フィルム液晶である場合、液晶セル135に可撓性を付与することができる。
図4に示すように、調光セル130は、配線130cを有している。配線130cは、自動車1に設けられた制御装置(図示せず)に接続され、駆動電力や制御信号を調光セル130に提供する。配線130cは、透明な導電体によって形成されることが好ましい。この場合、外部から配線130cが実質的に視認されなくなり、調光部材120の外観を向上させることができる。
調光セル130には、配線130cを介して電圧を印加する等の電子制御を行うことにより、液晶セル135の液晶の配向を変化させることができる。液晶の配向によって、液晶セル135を透過する光の偏光方向は変化し得る。例えば、電圧が印加され液晶の配向が変化した液晶セル135を、第1偏光板131を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶セル135を透過する光は、その偏光方向を90°回転させる。第1偏光板131及び第2偏光板132がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を90°回転したことで、光は第2偏光板132を透過することができる。一方、電圧が印加されておらず液晶の配向が変化していない液晶セル135を、第1偏光板131を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶セル135を透過する光は、その偏光方向を回転させない。第1偏光板131及び第2偏光板132がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を回転しなかった光は第2偏光板132を透過することができない。このように、液晶セル135の液晶の配向の変化の有無によって、光の透過を制御することができる。したがって、調光セル130は、電子制御により可視光透過率を調節することができる。
調光部材120の平面視において、調光部材120の構成要素である第1透明基材121、第2透明基材122、第1接合層123、第2接合層124及び調光セル130は、略同一の形状を有している。図4に示された例では、調光部材120の各構成要素は、平面視において矩形形状を有している。調光セル130は、第1透明基材121及び第2透明基材122と重なっている領域を含んでいる。また、平面視において、調光セル130は、第1透明基材121及び第2透明基材122からはみ出さないことが好ましい。すなわち、平面視における調光セル130の寸法は、第1透明基材121および第2透明基材122の寸法より小さいことが好ましい。
なお、調光部材120には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、調光部材120の第1透明基材121、第2透明基材122、第1接合層123、第2接合層124及び調光セル130の少なくとも一つに、何らかの機能を付与するようにしてもよい。調光部材120に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、図6〜図8を参照して、調光部材120の製造方法の一例について説明する。
まず、押出成形により、第1透明基材121及び第2透明基材122が平板状に製造される。
次に、図6に示すように、第1透明基材121の片面に第1接合層123が貼合される。同様に、第2透明基材122の片面に第2接合層124が貼合される。
その後、図7に示すように、調光セル130の一方の面に第2接合層124を介して第2透明基材122が接合されることで、第2透明基材122に調光セル130が積層される。調光セル130には、配線130cが設けられている。
そして、図8に示すように、調光セル130の他方の面に第1透明基材121が接合されることで、第1透明基材121に調光セル130が積層される。この接合は、第1透明基材121に予め貼合された第1接合層123によって実現される。
以上の各工程は、低圧環境下、好ましくは真空環境下で、行われることが好ましい。このことにより、第1接合層123及び第2接合層124を貼合する際に、界面に気泡が混入することを回避することができる。
ところで、上述したように、調光部材120には、虹ムラが観察されることがあった。とりわけ、調光部材120を備えるサンバイザ10を自動車1の内部に配置すると、虹ムラが観察されていた。虹ムラが生じると、調光部材120を介した視界を悪化させてしまう。本件発明者らが鋭意検討したところ、調光部材120の使用者に対面する側とは逆側の透明基材(第1透明基材121)においてリタデーションに大きなばらつきがあると、虹ムラが観察され得ることが確認された。このような現象について検討を重ねたところ、次に説明する原因によって虹ムラが発生すると推測され、さらに、この推定原因に対応した対策によって虹ムラを効果的に抑制し得ることを確認した。
なお、リタデーションとは、測定波長548.2nmの光を用いて測定された、第1透明基材121の面内の各位置における屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)との差(nx−ny)と、第1透明基材121の厚さ(d)との積(d×(nx−ny))によって規定され、長さ(nm)の単位で表される。
リタデーションを有する部材を光が透過すると、偏光状態が変化する。したがって、図9に示すように、リタデーションを有する透明基材155を入射側偏光板151及び出射側偏光板152の間に配置し、入射側偏光板151の側から光L1を入射させると、透明基材155を配置しない場合に比べて、透明基材155のリタデーションに応じて、出射側偏光板152から出射する光の量が変化する。すなわち、入射側偏光板151及び出射側偏光板152の間にリタデーションを有する透明基材155を配置すると、入射側偏光板151から出射側偏光板152までの可視光透過率が変化する。この可視光透過率の変動は、波長に応じて異なる。したがって、透明基材155のリタデーションに応じて、可視光透過率の高い波長が変化し、出射側偏光板152から出射する光が、透明基材155のリタデーションに応じた色に視認される。
透明基材155の面内の各位置におけるリタデーションにばらつきがあると、透明基材155を透過する光の偏光状態は、透明基材155の面内の各位置におけるリタデーションに応じてばらつく。このため、透明基材155の面内の各位置において、可視光透過率の高い波長が変化する。したがって、図9に示すようにリタデーションにばらつきのある透明基材155を入射側偏光板151及び出射側偏光板152の間に配置し、入射側偏光板151の側から光L1を入射させると、出射側偏光板152から出射する光は、出射側偏光板152の各位置において異なった波長の光の透過率が高くなる。このため、出射側偏光板152の各位置から出射する光が異なる波長の光となって色がばらつき、虹ムラとして視認される。このような虹ムラは、入射側偏光板151及び出射側偏光板152に依存することなく、例えば、入射側偏光板151及び出射側偏光板152をクロスニコルで配置したとしても、パラレルニコルで配置したとしても、生じる。
すなわち、虹ムラは、偏光状態にある光が、リタデーションにばらつきのある部材を透過し、さらに偏光状態を変化されることで生じることに起因すると推測された。
一方、図9に示すような偏光板等の偏光子によらなくても、次のような場合には偏光状態の光が生じる。図10に示すように、屈折率の異なる物体の界面に角度をもって入射した光は、入射面に平行な偏光成分(p偏光成分)と入射面に垂直な偏光成分(s偏光成分)とで反射率が異なる。とりわけ、ある角度で入射した光は、入射面に平行な偏光成分の反射率が0になる。すなわち、入射光が反射されると偏光状態が変化する。この角度は、ブリュースター角として知られている。例えば、ガラスと空気の界面において、約60度の入射角で入射した光は、反射されると偏光状態が変化する。
したがって、図11に示すように、例えば自動車1の内部において、フロントガラス5に約60度で入射した光L3は、反射されると偏光状態が変化する。偏光状態が変化した光L4が上述した第2の実施の形態の調光部材120を備えるサンバイザ10に入射すると、フロントガラス5に対面する側の透明基材(ここでは第1透明基材121)の調光セル130と重なっている領域におけるリタデーションのばらつきに応じた虹ムラが生じることになる。
虹ムラの発生を抑制することは、透明基材の面内の各位置において透過率の高くなる波長がばらつくことを避けることで達成され得る。そのためには、第1透明基材121の調光セル130と重なっている領域におけるリタデーションのばらつきを抑制することが考えられる。具体的には、第1透明基材121のリタデーションのばらつきを100nm以下とすることで、虹ムラとして視認されるような色のばらつきの発生を抑制することができる。
また、リタデーションが小さくなるほど、リタデーションの変動に対する波長ごとの可視光透過率の変動が小さくなる。すなわち、リタデーションのばらつきがあっても、波長ごとの可視光透過率がほとんど変化しない。したがって、リタデーションのばらつきが十分に小さいと、目視で確認されるほどの虹ムラが生じなくなる。具体的には、第1透明基材121の調光セル130と重なっている領域におけるリタデーションの平均を400nm以下、好ましくは200nm以下とすると、リタデーションに応じた波長ごとの可視光透過率の変動が十分に小さくなり、リタデーションのばらつきによる虹ムラを効果的に目立たなくさせることができる。
あるいは、リタデーションが大きくなるほど、リタデーションの変動に対する波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなる。また、リタデーションが大きくなるほど、複数の波長の光が透過しやすくなるため、透過した光が混色して視認されやすくなる。すなわち、リタデーションのばらつきがあっても、波長ごとの可視光透過率が大きく変動するため、ある波長の透過率が低くなっても別の波長の透過率が高くなる。このため、透過する光の混色の変化が目視においては視認されにくい。具体的には、第1透明基材121の調光セル130と重なっている領域におけるリタデーションの平均を2000nm以上、好ましくは3000nm以上とすると、リタデーションに応じた波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなり、リタデーションのばらつきによって可視光透過率が変動しても、混色して視認され、色の変化が視認されにくい。すなわち、虹ムラを効果的に目立たなくさせることができる。
なお、第1透明基材121の調光セル130と重なっている領域におけるリタデーションは、以下のようにして測定される。まず、図9に示したような対象となる透明基材155を入射側偏光板151及び出射側偏光板152の間に配置して、入射側偏光板151の側から光を入光させる。そして、出射側偏光板の側から観察した際に、目視において対象となる透明基材155の最も色の変化が生じている部分を6cm角で区画する。入射側偏光板151及び出射側偏光板152は、例えばパラレルニコルで配置する。対象となる透明基材155の区画された部分を、縦方向に3分割、横方向に3分割し、分割されたそれぞれの中央部でリタデーションを測定する。すなわち、6cm角で区画された透明基材155においてリタデーションを等間隔に9点測定する。リタデーションは、KOBRA−WR(王子計測器株式会社製)を使用し平行ニコル回転法で又はRETS−1250VA(大塚電子株式会社製)を使用し回転検光子法で、測定することができる。
測定された9つのリタデーションの最大値と最小値との差を、リタデーションのばらつきとする。また、測定された9つのリタデーションの値の平均を、リタデーションの平均とする。
以上のように、第2の実施の形態の調光部材120は、第1透明基材121と、第1透明基材121に積層された調光セル130と、第1透明基材121と調光セル130とを接合する第1接合層123と、を備える。調光セル130は、電子制御により可視光透過率を調節することができる。第1透明基材121の調光セル130が重なっている領域におけるリタデーションの最大値と最小値との差が、100nm以下である。このような調光部材120によれば、リタデーションのばらつきが小さいため、第1透明基材121の面内の各位置において透過率の高い光の波長が異なることを避けることができる。したがって、偏光状態の光が第1透明基材121に入射したとしても、第1透明基材121での透過率は波長によるばらつきが小さくなるため、調光セル130から出射する光に虹ムラが発生することを効果的に抑制することができる。すなわち、調光部材120における第1透明基材121のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
また、第2の実施の形態の調光部材120において、第1透明基材121は、ポリカーボネートを含み、第1透明基材121の調光セル130が重なっている領域におけるリタデーションの平均値が2000nm以上である。このような調光部材120によれば、第1透明基材121のリタデーションが十分に大きいため、リタデーションの変動に対する波長ごとの可視光透過率の変動が大きく、透過した光が混色して視認されやすくなる。このため、リタデーションのばらつきによって可視光透過率が変動しても、虹ムラとなり得る色の変化が視認されにくくなる。すなわち、調光部材120における第1透明基材121のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
さらに、第2の実施の形態の調光部材120において、第1透明基材121は、ポリカーボネートを含み、第1透明基材121の調光セル130が重なっている領域におけるリタデーションの平均値が400nm以下である。このような調光部材120によれば、第1透明基材121のリタデーションが十分に小さいため、リタデーションの変動に対する波長ごとの可視光透過率の変動が小さくなる。このため、リタデーションのばらつきによって可視光透過率が変動しても、虹ムラとなり得る色の変化が視認されにくくなる。すなわち、調光部材120における第1透明基材121のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
なお、上述した第2の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
上述した第2の実施の形態による調光部材120では、調光セル130の両面に第1透明基材121及び第2透明基材122が積層されているが、調光セル130の片面のみに透明基材が積層されていてもよい。すなわち、例えば調光セル130には第1透明基材121のみが積層されていてもよい。
また、上述した第2の実施の形態では、調光セル130の液晶セル135は、VA方式等の2つの偏光板131,132を伴って用いる方式の液晶が用いられている。しかしながら、調光セル130として、GH(Guest Host)方式の液晶が用いられてもよい。GH方式の液晶は、液晶組成物と二色性色素組成物とがランダムに配向した状態と、いわゆるツイスト配向した状態とを電圧の制御により変化させて透過率を制御することができる。したがって、GH方式の液晶では、偏光板を用いることを要しない。
調光セル130として、偏光板を要しないGH方式の液晶を用いる場合でも、GH方式の液晶に含まれる二色性色素組成物が、偏光子として機能するため、調光部材120の一方の側、例えば第1透明基材121のリタデーションにばらつきがある場合、第1透明基材121の側から偏光状態の光が入射すると、上述した第2の実施の形態と同様に、虹ムラが生じる。
この場合でも、上述したように、第1透明基材121のリタデーションのばらつきを100nm以下とすることで、虹ムラを目視で確認されなくすることができる。
さらに、上述した第2の実施の形態では、第1透明基材121及び第2透明基材122は、押出成形によって製造されているが、第1透明基材121及び第2透明基材122は、射出成型によって製造されてもよい。射出成型によって製造された透明基材は、3次元形状を有し得る。射出成型によって製造された透明基材は、3次元形状として、曲面を含んでいてもよい。ただし、透明基材の曲面が曲率半径の小さな3次元形状を有していると、透明基材の製造時にリタデーションを意図したように調節することが困難になる。したがって、透明基材にリタデーションのばらつきが生じてしまい、調光部材120に虹ムラが生じやすくなる。したがって、透明基材の曲面の曲率半径は、大きいことが好ましい。具体的には、調光セル130と重なっている領域における透明基材の曲面の曲率半径は、10cm以上であることが好ましく、20cm以上であることがより好ましい。なお、射出成型によって製造された透明基材のリタデーションのばらつきは、例えば射出成形時に圧縮成型を行うことで、小さくすることができる。
また、上述した第2の実施の形態においては、第1透明基材121及び第2透明基材122と調光セル130とを接合させる第1接合層123及び第2接合層124としてOCAが採用されたが、例えばヒートシールによって接合させることも可能である。この場合、1回の工程で調光セル130の両面に第1透明基材121及び第2透明基材122を接合することができるため、片面ずつ接合する必要が無く、製造工程を簡素化することができる。
さらに、上述した第2の実施の形態では、調光部材120は、外部から電力の供給を受けていたが、調光部材120の一部に太陽電池(図示せず)を設け、この太陽電池から電力を供給するように構成されても良い。更には、太陽電池の出力により照射光量を判断し、それに応じて透過率を自動制御してもよい。
以上の説明においては、調光部材120がサンバイザ10に採用された例を用いたが、調光部材120の用途は、サンバイザには限定されない。他の用途の例としては、自動車のサイドウィンドウやサンルーフ、あるいは電車や航空機などの移動体の窓部分に採用することが可能である。さらに、建築物の窓部分に採用することも可能である。
<実施例>
以下、実施例を用いて第2の発明をより詳細に説明するが、第2の発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例として、異なる透明基材を用意した。実施例1〜6および比較例1は、押出成形によって製造された透明基材である。実施例7および比較例2〜6は、射出成型によって製造された透明基材である。
図9に示すように、透明基材155を入射側偏光板151及び出射側偏光板152の間に配置した。入射側偏光板151及び出射側偏光板152は、クロスニコルで配置した。入射側偏光板151の側に光源を配置して出射側偏光板152の側から観察した際に、虹ムラの有無を確認した。また、目視において対象となる透明基材の最も色の変化が生じている部分を6cm角で区画し、6cm角で区画された透明基材においてリタデーションを等間隔に9点測定した。
測定した9点でのリタデーションのばらつき及び平均と、虹ムラについて目視で観察した各実施例および比較例の結果を以下の表5に示す。リタデーションのばらつきとは、上述したように、測定された9つのリタデーションの最大値と最小値との差を表し、リタデーションの平均とは、測定された9つのリタデーションの値の平均を表している。虹ムラについて、目視では確認されなかったものにはAを、目視で注意深く観察するとわずかに確認されたが視界の妨げにはならない程度のものにはBを、目視で確認されたが視界の妨げにはならない程度のものにはCを、目視ではっきり確認され視界の妨げとなったものにはDを、それぞれ付している。
実施例1〜7と比較例1〜6から理解されるように、リタデーションのばらつきが100nm以下であると、虹ムラが目視において視界の妨げにはならなくなる。また、リタデーションの平均が、400nm以下または2000nm以上であっても、リタデーションのばらつきが100nmより大きいと、虹ムラが目視において確認された。この実施例1〜7及び比較例1〜6から、リタデーションの最大値と最小値との差が、100nm以下であることで、透明基材のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を抑制することができることが理解される。
また、実施例1,3,5の比較から理解されるように、リタデーションの平均が2000nm以上となると、虹ムラがわずかに確認される程度になり、3000nm以上となると、虹ムラが目視では確認されなくなる。したがって、リタデーションの平均が2000nm以上、好ましくは3000nm以上となると、透明基材のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を、より抑制することができるということができる。
さらに、実施例2,4,6の比較から理解されるように、リタデーションの平均が400nm以下となると、虹ムラがわずかに確認される程度になり、200nm以下となると、虹ムラが目視では確認されなくなる。したがって、リタデーションの平均が400nm以下、好ましくは200nm以下となると、透明基材のリタデーションを原因とする虹ムラの発生を、より抑制することができるということができる。
<第3の実施の形態>
第1及び第2の実施の形態と同様に、調光部材220が適用される一例として、図1に示されたサンバイザ10を例示することができる。図1に示されているように、自動車1には、その内部であってフロントガラス5に対面する位置に、サンバイザ10が配置されている。サンバイザ10は、フロントガラス5を通って入射する太陽光等を低減し、自動車1の乗員に良好な視界を与えることができる。
以下、図12〜図22を参照しながら、第3の発明に関連した第3の実施の形態について説明する。
調光部材220は、可視光の透過率を調節可能である。図12に示すように、調光部材220は、一対の支持体である第1透明支持体230及び第2透明支持体240と、第1透明支持体230及び第2透明支持体240に支持されて積層された調光ユニット250と、第1透明支持体230と調光ユニット250とを接合する第1接合層223と、第2透明支持体240と調光ユニット250とを接合する第2接合層224と、を備える。
以下、調光部材220の各構成要素について、説明する。
まず、第1透明支持体230及び第2透明支持体240について説明する。第1透明支持体230及び第2透明支持体240は、調光ユニット250の形状を一定に維持するように支持しながら、調光ユニット250を傷や汚れから保護するための部材である。図12に示すように、第1透明支持体230は、第1基材層231と、第1基材層231に積層された第1高リタデーション層232と、第1基材層231および第1高リタデーション層232より調光ユニット250から離れた位置に設けられた第1機能層233と、を有している。また、第2透明支持体240は、第2基材層241を有している。図12に示された例では、第1透明支持体230では、第1基材層231と第1機能層233との間に第1高リタデーション層232が設けられており、第1機能層233が調光部材220の一方の表面を形成する層となっている。
なお、「透明」とは、第1透明支持体230及び第2透明支持体240を介して当該透明支持体の一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
第1及び第2基材層231,241は、第1及び第2透明支持体230,240の基材となる層であり、十分な厚さを有する樹脂によって形成される。第1及び第2基材層231,241を形成する樹脂は、一般に、光学異方性を有する。すなわち、第1及び第2基材層231,241は、リタデーションを有する。例えば、第1及び第2基材層231,241のリタデーションは、50nm以上12000nm以下である。また、第1及び第2基材層231,241のリタデーションは、面内の各位置で、100nm以上ばらついていることもある。なお、リタデーションとは、測定波長548.2nmの光を用いて測定された、当該基材層の面内の各位置における屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)との差(nx−ny)と、当該基材層の厚さ(d)との積(d×(nx−ny))によって規定され、長さ(nm)の単位で表される。また、リタデーションのばらつきとは、例えば6cm角で区画された第1及び第2基材層231,241においてリタデーションを等間隔に9点測定し、測定された9つのリタデーションの最大値と最小値との差のことを意味する。リタデーションは、KOBRA−WR(王子計測器株式会社製)を使用し平行ニコル回転法で又はRETS−1250VA(大塚電子株式会社製)を使用し回転検光子法で、測定することができる。
第1及び第2基材層231,241は、アクリルおよびポリカーボネートの少なくとも一方を含んでいることが好ましく、アクリルを含んでいることがより好ましい。例えば、第1及び第2基材層231,241は、2つのアクリルの間にポリカーボネートが積層された構成であってよい。また、第1及び第2基材層231,241に含まれるアクリルまたはポリカーボネートの分子量が、17,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。第1及び第2基材層231,241がこのような材料で形成されていると、第1及び第2基材層231,241が破損しても、第1及び第2基材層231,241の破片の縁部が鋭利にならず、調光部材220の使用者を負傷させる危険性を低減することができる。しかしながら、これに限らず、第1及び第2基材層231,241は、ガラスフィルムで形成されていてもよい。第1及び第2基材層231,241がガラスフィルムで形成されている場合、第1及び第2基材層231,241が破損した際に調光部材220の使用者を負傷させる危険性を低減するために、表面に飛散防止用のシートを設けることが好ましい。
第1及び第2基材層231,241は、0.1mm以上10mm以下、好ましくは0.5mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1及び第2基材層231,241を得ることができる。第1及び第2基材層231,241は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
第1及び第2基材層231,241は、射出成型によって製造することができる。射出成型によって製造されることで、第1及び第2基材層231,241は、3次元形状、例えば曲面を有することができる。しかしながら、射出成型によって製造されると、第1及び第2基材層231,241のリタデーションにはばらつきが生じやすくなる。第1及び第2基材層231,241のリタデーションのばらつきは、例えば射出成形時に圧縮成型を行うことである程度小さくすることはできるが、リタデーションのばらつきを無くすことはできない。
第1高リタデーション層232は、第1基材層231より高いリタデーションを有する。第1高リタデーション層232のリタデーションは、例えば平均が4000nm以上である。また、第1高リタデーション層232は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂を含んでいる。第1高リタデーション層232は、このような樹脂を延伸させることで製造することができる。第1高リタデーション層232は、リタデーションを有するため、遅相軸方向および進相軸方向を有する。また、第1高リタデーション層232の厚さは、例えば10μm以上300μm以下である。
第1機能層233は、反射防止機能(AR機能又はLR機能ともいう)および防眩機能(AG機能ともいう)の少なくとも一方を有していてもよい。また、第1機能層233は、その他の機能を有していてもよい。第1機能層233の厚さは、例えば50nm以上20μm以下である。
次に、第1接合層223及び第2接合層224について説明する。上述したように、第1接合層223は、第1透明支持体230と調光ユニット250とを接合し、第2接合層224は、第2透明支持体240と調光ユニット250とを接合する。第3の実施の形態において、第1接合層223及び第2接合層224は、いわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)である。すなわち、第1接合層223及び第2接合層224は、透明で、粘着性を有する。また、第1接合層223及び第2接合層224は、第1透明支持体230及び第2透明支持体240と実質的に同じ屈折率を有していることが好ましい。この場合、第1透明支持体230及び第2透明支持体240と第1接合層223及び第2接合層224との各界面における光の反射を低減することができる。
第1接合層223及び第2接合層224は、厚みが25μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚みが25μmよりも薄いと、調光部材の歪みを接合面で吸収できないため、気泡や調光部材の不具合(たとえば液晶GAP不良に伴う色ムラ)を生じやすい。その一方で、厚みが1000μmよりも厚いと、量産性、価格及び強度の点で不利となる。第1接合層223及び第2接合層224は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、調光ユニット250について説明する。図13に示すように、調光ユニット250は、第1偏光板251と、第2偏光板252と、第1偏光板251と第2偏光板252との間に配置された液晶ユニット255とを含む。調光ユニット250の第1偏光板251の側に第1接合層223が設けられ、第1透明支持体230が積層される。同様に、調光ユニット250の第2偏光板252の側に第2接合層224が設けられ、第2透明支持体240が積層される。また、図12に示すように、調光ユニット250は、配線250cを有している。配線250cは、自動車1に設けられた制御装置(図示せず)に接続され、駆動電力や制御信号を調光ユニット250に提供する。配線250cは、透明な導電体によって形成されることが好ましい。この場合、外部から配線250cが実質的に視認されなくなり、調光部材220の外観を向上させることができる。調光ユニット250の厚みは、例えば100μm以上3mm以下である。
第1偏光板251及び第2偏光板252は、入射した光を直交する二つの偏光成分(p偏光成分及びs偏光成分)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、p偏光成分)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、s偏光成分)を吸収する機能を有している。第1偏光板251及び第2偏光板252は、クロスニコルまたはパラレルニコルで配置されている。クロスニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに直交するように配置されていることをいい、パラレルニコルとは、2つの偏光板の透過軸が互いに平行になるように配置されていることをいう。
液晶ユニット255には、例えばVA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式またはFFS(Fringe Field Switching)方式の液晶を用いることができる。液晶ユニット255は、樹脂からなるフィルムを基材として液晶が保持されたフィルム液晶であってもよいし、薄膜状のガラスを基材として液晶が保持されたガラス液晶であってもよい。フィルム液晶である場合、液晶ユニット255に可撓性を付与することができる。
調光ユニット250には、配線250cを介して電圧を印加する等の電子制御を行うことにより、液晶ユニット255の液晶の配向を変化させることができる。液晶の配向によって、液晶ユニット255を透過する光の偏光方向は変化し得る。例えば、電圧が印加され液晶の配向が変化した液晶ユニット255を、第1偏光板251を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶ユニット255を透過する光は、その偏光方向を90°回転させる。第1偏光板251及び第2偏光板252がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を90°回転したことで、光は第2偏光板252を透過することができる。一方、電圧が印加されておらず液晶の配向が変化していない液晶ユニット255を、第1偏光板251を透過した特定方向の偏光成分を有する光が通過する場合、液晶ユニット255を透過する光は、その偏光方向を回転させない。第1偏光板251及び第2偏光板252がクロスニコルで配置されていると、偏光方向を回転しなかった光は第2偏光板252を透過することができない。このように、液晶ユニット255の液晶の配向の変化の有無によって、光の透過を制御することができる。したがって、調光ユニット250は、電子制御により可視光透過率を調節することができる。
調光部材220の平面視において、調光部材220の構成要素である第1透明支持体230、第2透明支持体240、第1接合層223、第2接合層224及び調光ユニット250は、略同一の形状を有している。図12に示された例では、調光部材220の各構成要素は、平面視において矩形形状を有している。調光ユニット250は、第1透明支持体230及び第2透明支持体240と重なっている領域を含んでいる。また、平面視において、調光ユニット250は、第1透明支持体230及び第2透明支持体240からはみ出さないことが好ましい。すなわち、平面視における調光ユニット250の寸法は、第1透明支持体230および第2透明支持体240の寸法より小さいことが好ましい。
なお、調光部材220には、図示された例に限られず、第1透明支持体の第1機能層233とは別の特定の機能を発揮することを期待された機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、調光部材220の第1透明支持体230、第2透明支持体240、第1接合層223、第2接合層224及び調光ユニット250の少なくとも一つに、何らかの機能を付与するようにしてもよい。調光部材220に付与され得る機能としては、一例として、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、図14〜図16を参照して、調光部材220の製造方法の一例について説明する。
まず、射出成型により、第1基材層231及び第2基材層241が製造される。第1基材層231には、第1高リタデーション層232および第1機能層233が積層され、第1透明支持体230が製造される。第1機能層233は、第1透明支持体230の表面をなすように形成される。
次に、図14に示すように、第1透明支持体230の第1機能層233が設けられた側とは反対側の面に第1接合層223が貼合される。また、第2透明支持体240の片面に第2接合層224が貼合される。
その後、図15に示すように、調光ユニット250の一方の面に第2接合層224を介して第2透明支持体240が接合されることで、第2透明支持体240に調光ユニット250が積層される。調光ユニット250には、配線250cが設けられている。
そして、図16に示すように、調光ユニット250の他方の面に第1透明支持体230が接合されることで、第1透明支持体230に調光ユニット250が積層される。この接合は、第1透明支持体230に予め貼合された第1接合層223によって実現される。
以上の各工程は、低圧環境下、好ましくは真空環境下で、行われることが好ましい。このことにより、第1接合層223及び第2接合層224を貼合する際に、界面に気泡が混入することを回避することができる。
ところで、上述したように、調光部材220には、虹ムラが観察されることがあった。とりわけ、調光部材220を備えるサンバイザ10を自動車1の内部に配置すると、虹ムラが観察されていた。虹ムラが生じると、調光部材220を介した視界を悪化させてしまう。本件発明者らが鋭意検討したところ、調光部材220の使用者に対面する側とは逆側の透明支持体(第1透明支持体230)においてリタデーションにばらつきがある部材が含まれていると、虹ムラが観察され得ることが確認された。すなわち、第1透明支持体230の第1基材層231のリダテーションのばらつきに起因して、虹ムラは発生していた。このような現象について検討を重ねたところ、次に説明する原因によって虹ムラが発生すると推測され、さらに、この推定原因に対応した対策によって虹ムラを効果的に抑制し得ることを確認した。
リタデーションを有する部材を光が透過すると、当該光の偏光状態が変化する。したがって、図17に示すように、リタデーションを有する部材を入射側偏光板271及び出射側偏光板272の間に配置し、入射側偏光板271の側から光L5を入射させると、第1透明支持体230を配置しない場合に比べて、偏光板の間に配置された部材のリタデーションに応じて、出射側偏光板272から出射する光の量、すなわち可視光透過率が変化する。この可視光透過率の変化は、波長に応じて異なる。したがって、偏光板の間に配置される部材のリタデーションに応じて、可視光透過率の高い波長が変化し、出射側偏光板272から出射する光L6が、偏光板の間に配置される部材のリタデーションに応じた色に視認される。
面内の各位置にリタデーションのばらつきがある部材を透過する光の偏光状態は、当該部材の面内の各位置におけるリタデーションに応じてばらつく。このため、当該部材の面内の各位置において、可視光透過率の高い波長が変化する。したがって、図17に示すようにリタデーションにばらつきのある部材を入射側偏光板271及び出射側偏光板272の間に配置し、入射側偏光板271の側から光L5を入射させると、出射側偏光板272から出射する光L6は、出射側偏光板272の各位置において異なった波長の光の透過率が高くなる。このため、出射側偏光板272の各位置から出射する光が異なる波長の光となって色がばらつき、虹ムラとして視認される。このような虹ムラは、入射側偏光板271及び出射側偏光板272の配置に依存することなく、例えば、入射側偏光板271及び出射側偏光板272をクロスニコルで配置したとしても、パラレルニコルで配置したとしても、生じる。
すなわち、虹ムラは、偏光状態にある光が、リタデーションにばらつきのある部材を透過し、さらに偏光状態が変化することで生じることに起因すると推測された。とりわけ、リタデーションは、上述したように、部材の屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)との差(nx−ny)と、当該部材の厚さ(d)〔nm〕との積(d×(nx−ny))〔nm〕によって規定される。したがって、図17に示すように、部材の法線方向(正面方向)から角度θだけ傾斜した方向から観察する場合、部材の実質的な厚さはd/cosθ〔nm〕となるため、リタデーションがより大きくなる。すなわち、リタデーションのばらつきも大きくなる。このため、正面方向から角度θだけ傾斜した方向から観察する場合、正面方向から観察する場合に比べ、虹ムラがより観察されやすくなる。
一方、図17に示すような偏光板等の偏光子によらなくても、次のような場合には偏光状態の光が生じる。図10に示すように、屈折率の異なる物体の界面に角度をもって入射した光、言い換えると0°より大きな入射角で入射する光は、入射面に平行な偏光成分(p偏光成分)と入射面に垂直な偏光成分(s偏光成分)とで反射率が異なる。とりわけ、ある入射角で入射した光は、入射面に平行な偏光成分の反射率が0になる。すなわち、入射光が反射されると偏光状態が変化する。この角度は、ブリュースター角として知られている。例えば、ガラスと空気の界面において、約60°の入射角で入射した光は、反射されると偏光状態が変化する。
したがって、図11に示すように、例えば自動車1の内部において、フロントガラス5に約60°の入射角で入射した光L3は、反射されると偏光状態が変化する。偏光状態が変化した光L4が上述した第3の実施の形態の調光部材220を備えるサンバイザ10に入射すると、フロントガラス5に対面する側の透明支持体(ここでは第1透明支持体230)の調光ユニット250と重なっている領域におけるリタデーションのばらつきに応じた虹ムラが生じることになる。
虹ムラの発生を抑制するために、部材のリダテーションのばらつきを抑制することが考えられた。しかしながら、第1基材層231のリダテーションのばらつきは、上述したように、第1基材層231を射出成型で製造したことで生じており、第1基材層231のリダテーションのばらつきを虹ムラが発生しない程度にまで抑制することは困難であった。そこで、本件発明者らは検討を重ね、第1透明支持体230にリタデーションの大きな第1高リタデーション層232を設けて第1透明支持体230のリダテーションを大きくすることで、虹ムラの発生を効果的に抑制できることを知見した。
部材のリタデーションが大きくなるほど、各偏光成分の透過率の違いから、リタデーションの変動に対する当該部材を透過する光の波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなる。リタデーションが大きくなるほど、様々な波長の光が透過しやすくなるため、透過した光が混色して視認されやすくなる。部材にリタデーションのばらつきがあっても、波長ごとの可視光透過率が大きく変動して様々な波長の光が透過するため、透過する光の色は、混色により、目視においては視認されにくくなる。具体的には、第1透明支持体230の調光ユニット250と重なっている領域におけるリタデーションを4000nm以上とすると、リタデーションに応じた波長ごとの可視光透過率の変動が非常に大きくなり、リタデーションのばらつきによって可視光透過率が変動しても、混色して視認され、色が認識されにくい。すなわち、虹ムラを効果的に目立たなくさせることができる。
また、第1透明支持体230を備える調光部材220において虹ムラが観察されないためには、第1透明支持体230の法線方向(正面方向)だけでなく第1透明支持体230の法線方向から傾斜した方向においても虹ムラの発生が抑制されて観察されにくくなることが好ましい。調光部材220は法線方向から45°以内の角度で観察される態様で用いられることが多く、とりわけ35°以内の角度で観察される態様で用いられることが多いため、第1透明支持体230の法線方向から45°傾斜した方向において、好ましくは35°傾斜した方向において、虹ムラの発生が抑制されていることが好ましい。
上述したように、虹ムラを目立たなくさせるには、光が混色して視認され、色が認識されにくくなればよい。本件発明者らが検討を重ねた結果、虹ムラを目立たなくさせるには、第1透明支持体230を図17に示すようなクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に当該第1透明支持体230における第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272の透過軸方向とが40°以上50°以下の角度をなすように配置した状態で、2つの偏光板271,272を第1透明支持体230の法線方向から45°傾斜した方向に透過する波長が550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、10〔%〕以上であることが好ましく、2つの偏光板271,272を第1透明支持体230の法線方向から35°傾斜した方向に透過する波長が550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、12.5〔%〕以上であることがより好ましいことを知見した。
さらに、第1高リタデーション層232において虹ムラが目立たなければ、透過する光の色が混色により認識されなくなっていると考えられる。したがって、第1高リタデーション層232と第1基材層231とを有する第1透明支持体230でも、様々な波長の光が透過して虹ムラの発生を抑制することができると考えられる。本件発明者らが検討を重ねた結果、第1高リタデーション層232をクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272の透過軸方向とが40°以上50°以下の角度をなすように配置した状態で、第1高リタデーション層232の法線方向から45°傾斜した方向に2つの偏光板271,272を透過する波長が550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、10〔%〕以上であることが好ましく、2つの偏光板271,272を第1高リタデーション層232の法線方向から35°傾斜した方向に透過する第1高リタデーション層232に入射した波長が550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、12.5〔%〕以上であることがより好ましいことを知見した。
上述の第1高リタデーション層232や第1透明支持体230を透過する光の透過率について、波長が550nm以上650nm以下の光で考えているのは、第1高リタデーション層232が十分に大きなリタデーションを有することから透過する光の波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなるため、この波長域で透過率の最大値と最小値とに10%以上の差があれば、その他の波長域においても十分な大きさの透過率の光が生じて、様々な波長の光が透過すると考えられるからである。
以下において、第1透明支持体230に第1高リタデーション層232を設けることで虹ムラを目立たなくさせる上述の効果について、具体例を用いて説明する。
図18は、リタデーションが450nm、面内の各位置でのリダテーションのばらつきが150nmの第1基材層231を、図17に示すようにクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に配置した状態で、第1基材層231の法線方向から0°、20°、40°、60°傾斜した方向に第1基材層231を間に挟んだ2つの偏光板271,272を透過する各波長域での光の透過率〔%〕のスペクトル分布を表しているグラフである。図18から理解されるように、第1基材層231の法線方向からの傾斜角度によって、透過率が大きくなる波長域が大きく異なっている。具体的には、第1基材層231の法線方向から0°傾斜した方向(正面方向)では波長域490nm〜510nmの光が強く観察され、20°傾斜した方向では波長域410nm〜420nm及び600nm〜700nmの光が強く観察され、40°傾斜した方向では波長域430nm〜550nmの光が強く観察され、60°傾斜した方向では波長域560nm〜620nmの光が強く観察される。このように、観察する角度によって強く観察される光の波長が異なるため、第1基材層231のようなリタデーションを有する層のみの第1透明支持体を備える調光部材220では虹ムラが発生し得る。
図19は、リタデーションが4000nm以上、具体的には8400nmの第1高リタデーション層232を図17に示すようにクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に当該第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272とが45°の角度をなすように配置した状態で、第1高リタデーション層232の法線方向から0°、20°、40°、60°傾斜した方向に第1高リタデーション層232を間に挟んだ2つの偏光板271,272を透過する各波長域での光の透過率のスペクトル分布を表しているグラフである。図19から理解されるように、第1高リタデーション層232の法線方向からの傾斜角度が異なる各グラフにおいて、透過率の高くなっている波長域が多数存在する。すなわち、各傾斜角度において、色が混色により認識されなくなり、虹ムラは発生しない。したがって、第1高リタデーション層232を有する第1透明支持体230では、リタデーションにいくらかのばらつきがある第1基材層231を有しても、虹ムラは発生しないと考えられる。
図20は、第1基材層231および第1高リタデーション層232を有する第1透明支持体230を図17に示すようにクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に当該第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272とが45°の角度をなすように配置した状態で、第1透明支持体230の法線方向から0°、20°、40°、60°傾斜した方向に第1透明支持体230を間に挟んだ2つの偏光板271,272を透過する各波長域での光の透過率のスペクトル分布を表しているグラフである。図20から理解されるように、第1透明支持体230の法線方向からの傾斜角度が異なる各グラフにおいて、透過率の高くなっている波長域が多数存在する。すなわち、各傾斜角度において、色が混色により認識されなくなり、虹ムラは発生しないと考えられる。
以下の表6は、リタデーションが4000nm以上の第1高リタデーション層232を図17に示すようにクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に当該第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272とが45°の角度をなすように配置した状態で、第1高リタデーション層232の法線方向から0°から65°まで5°ずつ傾斜した方向でそれぞれ観察した場合における、第1高リタデーション層232を挟んだ2つの偏光板271,272を透過する波長域550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値、最小値、および最大値と最小値との差を示している。また、各角度において、目視にて虹ムラの有無を観察した。表の符号「A」は、目視で虹ムラが観察されなかったことを表し、符号「B」は、視界の妨げにならない程度にわずかにだけ虹ムラが観察されたことを表し、符号「C」は、視界の妨げになる程に虹ムラがはっきりと観察されたことを表している。
表6から理解されるように、第1高リタデーション層232の法線方向からの傾斜角度が大きくなるにつれて、透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が小さくなっていく傾向がある。また、透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が10%以上であれば、虹ムラは視界の妨げにならない程度にしか観察されなくなった。とりわけ、透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が12.5%以上であれば、目視では虹ムラは観察されなくなった。
また、第1高リタデーション層232の法線方向から45°傾斜した方向において、透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が10%以上となっている。したがって、第1高リタデーション層232の法線方向からの傾斜角度が45°以内では、視界の妨げとなるような虹ムラが観察されていない。とりわけ、第1高リタデーション層232の法線方向から35°傾斜した方向において、透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が12.5%以上となっている。したがって、第1高リタデーション層232の法線方向からの傾斜角度が35°以内では、虹ムラが観察されていない。すなわち、表6から、第1高リタデーション層232をクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272の透過軸方向とが40°以上50°以下の角度をなすように配置した状態で、2つの偏光板271,272を第1高リタデーション層232の法線方向から45°傾斜した方向に透過する波長域550nm以上650nm以下の光の透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、10%以上であることで、好ましくは、第1高リタデーション層232の法線方向から35°傾斜した方向に透過する当該高リタデーション層に入射した波長域550nm以上650nm以下の光の透過率のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、12.5%以上であることで、虹ムラの発生を効果的に抑制することができていることが理解される。
なお、図18乃至図20に示した各波長域での光の透過率のスペクトル分布の測定においては、2つの偏光板271,272として日東電工製のCWQを用いた。
以上のように、第3の実施の形態の調光部材220は、第1透明支持体230と、第1透明支持体230に支持された調光ユニット250と、を備え、調光ユニット250は、電子制御により可視光透過率を調節可能であり、第1透明支持体230は、光学異方性を有する第1基材層231と、第1基材層231に積層された第1高リタデーション層232と、を有し、第1高リタデーション層232のリタデーションは、4000nm以上である。このような調光部材220によれば、第1透明支持体230のリタデーションが十分に大きいため、リタデーションの変動に対する波長ごとの可視光透過率の変動が大きく、様々な波長の光が透過するため、透過した光が混色して視認されやすくなる。このため、リタデーションのばらつきによって可視光透過率が変動しても、虹ムラとなり得る色が視認されにくくなる。すなわち、調光部材220における第1基材層231のリタデーションのばらつきを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
また、第3の実施の形態の調光部材220において、第1高リタデーション層232をクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272の透過軸方向とが40°以上50°以下の角度をなすように配置した状態で、第1高リタデーション層232の法線方向から45°傾斜した方向に2つの偏光板271,272を透過する波長域550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、10〔%〕以上である。このような調光部材220によれば、第1高リタデーション層232が十分に大きなリタデーションを有することから、透過する光の波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなるため、可視光の波長域において透過率の最大値と最小値とに十分な大きさの差が生じて、様々な波長の光が透過しやすくなる。この結果、透過する光の色が目視においては視認されにくくなる。したがって、第1透明支持体230の法線方向から45°傾斜した方向においても、虹ムラが観察されにくくなる。
さらに、第3の実施の形態の調光部材220において、第1透明支持体230をクロスニコルで配置された2つの偏光板271,272の間に第1透明支持体230における第1高リタデーション層232の遅相軸方向と2つの偏光板271,272の透過軸方向とが40°以上50°以下の角度をなすように配置した状態で、第1透明支持体230の法線方向から45°傾斜した方向に2つの偏光板271,272を透過する波長域550nm以上650nm以下の光の透過率〔%〕のスペクトル分布の最大値と最小値との差が、10〔%〕以上である。このような調光部材220によれば、第1透明支持体230の第1高リタデーション層232が十分に大きなリタデーションを有することから、透過する光の波長ごとの可視光透過率の変動が大きくなるため、可視光の波長域において透過率の最大値と最小値とに十分な大きさの差が生じて、様々な波長の光が透過しやすくなる。この結果、透過する光の色が目視においては視認されにくくなる。したがって、第1透明支持体230の法線方向から45°傾斜した方向においても、虹ムラが観察されにくくなる。
また、第3の実施の形態の調光部材220において、第1透明支持体230は、第1基材層231および第1高リタデーション層232より調光ユニット250から離間した位置に設けられた第1機能層233をさらに有し、第1機能層233は、反射防止機能および防眩機能の少なくとも一方を有する。このような調光部材220によれば、調光部材220に効果的に反射防止機能や防眩機能を付与することができる。
なお、上述した第3の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
例えば、第2透明支持体240は、第2基材層241に積層された第2高リタデーション層をさらに有していてもよい。調光部材220の使用者が、例えば偏光サングラスを使用している場合、調光ユニット250の第2偏光板252と偏光サングラスとの間に配置されることになる第2透明支持体240のリタデーションのばらつきによって、虹ムラが観察され得る。第2透明支持体240に第2高リタデーション層を設けることで、第2透明支持体240のリタデーションを大きくすることができる。これにより、上述した第1基材層231のリタデーションのばらつきによる虹ムラが抑制されることと同様に、第2基材層241のリタデーションのばらつきを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
また、第2透明支持体240は、第2基材層241より調光ユニット250から離れた位置に設けられた第2機能層をさらに有していてもよい。第2機能層は、第1機能層233と同様に、反射防止機能および防眩機能の少なくとも一方を有し得る。
上述した第3の実施の形態では、図12に示すように、第1透明支持体230では、第1基材層231と第1機能層233との間に、第1高リタデーション層232が設けられている。しかしながら、第1高リタデーション層232と第1機能層233との間に、第1基材層231が設けられていてもよい。すなわち、図12に示す第1基材層231と第1高リタデーション層とが、逆に配置されていてもよい。いずれの場合でも、調光部材220における第1基材層231のリタデーションのばらつきを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。同様に、第2透明支持体240が第2高リタデーション層を有する場合、第2接合層224に近い側に第2基材層241が設けられてもよいし、第2接合層224に近い側に第2高リタデーション層が設けられてもよい。いずれの場合でも、第2基材層241のリタデーションのばらつきを原因とする虹ムラの発生を抑制することができる。
上述した第3の実施の形態による調光部材220では、調光ユニット250が第1偏光板251と、第2偏光板252と、第1偏光板251と第2偏光板252との間に配置された液晶ユニット255とを含む例を示したが、調光ユニット250の構成はこの例に限られない。例えば、調光ユニットは、複数の液晶ユニットと、液晶ユニットに対応して設けられた吸収型偏光板と、2つの液晶ユニットの間に配置された反射型偏光板と、を含んでもよい。吸収型偏光板は、上述した第3の実施の形態における偏光板251,252と同様に、光の一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を吸収する。反射型偏光板は、光の一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を反射する。この場合、各液晶ユニットに電圧を印加して液晶ユニットを透過する光の偏光方向を変化させることで、調光部材における光の透過(逆に言えば「遮光」)を制御することができるだけでなく、光の反射をも制御することができる。
一例として、図21に示されているような、第1吸収型偏光板351と、第1液晶ユニット355と、反射型偏光板354と、第2吸収型偏光板352と、第2液晶ユニット356と、第3吸収型偏光板353と、がこの順で積層された調光ユニット350の作用を説明する。ここで説明する例では、第1吸収型偏光板351および第3吸収型偏光板353の透過軸は同一であり、反射型偏光板354および第2吸収型偏光板352の透過軸と直交している。第1液晶ユニット355には、TN方式の液晶が用いられており、電圧を印加されていない状態では透過する光の偏光方向を90°回転させ、電圧が印加されている状態では透過する光の偏光方向を変化させない。第2液晶ユニット356には、VA方式の液晶が用いられており、電圧を印加されていない状態では透過する光の偏光方向を変化させず、電圧が印加されている状態では液晶が倒れて当該第2液晶ユニット356の複屈折率を変化させ、偏光方向を90°変化させながら光を透過させる。
まず、調光ユニット350に第1吸収型偏光板351側から入射した光L7について説明する。第1液晶ユニット355に電圧が印加されている場合、光L7は、第1液晶ユニット355を透過して反射型偏光板354にて反射され、再度第1液晶ユニット355を透過した後、第1吸収型偏光板351から出射する。すなわち、第1吸収型偏光板351側から入射した光L7は反射される。第1液晶ユニット355及び第2液晶ユニット356に電圧が印加されていない場合、光L7は、第1液晶ユニット355によって偏光方向を回転させ、反射型偏光板354及び第2吸収型偏光板352を透過する。その後、第2液晶ユニット356を透過するが、第3吸収型偏光板353に吸収される。すなわち、第1吸収型偏光板351側から入射した光L7は遮光される。第1液晶ユニット355には電圧が印加されていないが第2液晶ユニット356には電圧が印加されている場合、光L7は、第1液晶ユニット355によって偏光方向を回転させ、反射型偏光板354及び第2吸収型偏光板352を透過する。その後、第2液晶ユニット356によって偏光方向を変化させ、第3吸収型偏光板353を透過して出射する。すなわち、第1吸収型偏光板351側から入射した光L7は調光ユニット350を透過する。
次に、調光ユニット350に第3吸収型偏光板353側から入射した光L8について説明する。第2液晶ユニット356に電圧が印加されていない場合、光L8は、第2液晶ユニット356を透過して第2吸収型偏光板352に吸収される。すなわち、第3吸収型偏光板353側から入射した光L8は遮光される。第2液晶ユニット356及び第1液晶ユニット355に電圧が印加されている場合、光L8は、第2液晶ユニット356によって偏光方向を変化させ、第2吸収型偏光板352及び反射型偏光板354を透過する。その後、第1液晶ユニット355を透過するが、第1吸収型偏光板351に吸収される。すなわち、第3吸収型偏光板353側から入射した光L8は遮光される。第2液晶ユニット356には電圧が印加されているが第1液晶ユニット355には電圧が印加されていない場合、光L8は、第2液晶ユニット356によって偏光方向を変化させ、第2吸収型偏光板352及び反射型偏光板354を透過する。その後、第1液晶ユニット355によって偏光方向を回転させ、第1吸収型偏光板351を透過して出射する。すなわち、第3吸収型偏光板353側から入射した光L8は調光ユニット350を透過する。このように、各液晶ユニットへの電圧の印加を制御することで、調光部材に入射した光の透過、遮光、反射を、適宜に切り換えることができる。
別の例として、図22に示されているような、第1吸収型偏光板451と、第1液晶ユニット455と、反射型偏光板454と、第2液晶ユニット456と、第2吸収型偏光板452と、がこの順で積層された調光ユニット450の作用を説明する。ここで説明する例では、第1吸収型偏光板451および第2吸収型偏光板452の透過軸は同一であり、反射型偏光板454の透過軸と直交している。図21に示した例と同様に、第1液晶ユニット455には、TN方式の液晶が用いられており、第2液晶ユニット456には、VA方式の液晶が用いられている。
まず、調光ユニット450に第1吸収型偏光板451側から入射した光L9について説明する。第1液晶ユニット455に電圧が印加されている場合、光L9は、第1液晶ユニット455を透過して反射型偏光板454にて反射され、再度第1液晶ユニット455を透過した後、第1吸収型偏光板451から出射する。すなわち、第1吸収型偏光板451側から入射した光L9は反射される。第1液晶ユニット455及び第2液晶ユニット456に電圧が印加されていない場合、光L9は、第1液晶ユニット455によって偏光方向を回転させ、反射型偏光板454を透過する。その後、第2液晶ユニット456を透過するが、第2吸収型偏光板452に吸収される。すなわち、第1吸収型偏光板451側から入射した光L9は遮光される。第1液晶ユニット455には電圧が印加されていないが第2液晶ユニット456には電圧が印加されている場合、光L9は、第1液晶ユニット455によって偏光方向を回転させ、反射型偏光板454を透過する。その後、第2液晶ユニット456によって偏光方向を変化させ、第2吸収型偏光板452を透過して出射する。すなわち、第1吸収型偏光板451側から入射した光L9は調光ユニット450を透過する。
次に、調光ユニット450に第2吸収型偏光板452側から入射した光L10について説明する。第2液晶ユニット456に電圧が印加されていない場合、光L10は、第2液晶ユニット456を透過して反射型偏光板454で反射され、再度第2液晶ユニット456を透過した後、第2吸収型偏光板452から出射する。すなわち、第2吸収型偏光板452側から入射した光L10は反射される。第2液晶ユニット456及び第1液晶ユニット455に電圧が印加されている場合、光L10は、第2液晶ユニット456によって偏光方向を変化させ、反射型偏光板454を透過する。その後、第1液晶ユニット455を透過するが、第1吸収型偏光板451に吸収される。すなわち、第2吸収型偏光板452側から入射した光L10は遮光される。第2液晶ユニット456には電圧が印加されているが第1液晶ユニット455には電圧が印加されていない場合、光L10は、第2液晶ユニット456によって偏光方向を変化させ、反射型偏光板454を透過する。その後、第1液晶ユニット455によって偏光方向を回転させ、第1吸収型偏光板451を透過して出射する。すなわち、第2吸収型偏光板452側から入射した光L10は調光ユニット450を透過する。このように、各液晶ユニットへの電圧の印加を制御することで、調光部材に入射した光の透過、遮光、反射を、適宜に切り換えることができる。
図21に示した例の構成の調光ユニット350によれば、調光ユニット350による透過、遮光、反射の各機能を、より確実に発揮させることができる。例えば、各液晶ユニットへの電圧の印加を制御して、調光ユニット350で光を遮光させようとする場合に、調光ユニット350の光の透過率をより低くすることができる。一方、図22に示した例の構成の調光ユニット450によれば、調光ユニット450による透過、遮光、反射の各機能を、簡易な構成で適宜に切り換えることができる。
上述した第3の実施の形態による調光部材220では、調光ユニット250の両面に第1透明支持体230及び第2透明支持体240が積層されているが、調光ユニット250の片面のみに透明支持体が積層されていてもよい。すなわち、例えば調光ユニット250には第1透明支持体230のみが積層されていてもよい。
また、上述した第3の実施の形態では、調光部材220は、外部から電力の供給を受けていたが、調光部材220の一部に太陽電池(図示せず)を設け、この太陽電池から電力を供給するように構成されても良い。更には、太陽電池の出力により照射光量を判断し、それに応じて透過率を自動制御してもよい。
以上の説明においては、調光部材220がサンバイザ10に採用された例を用いたが、調光部材220の用途は、サンバイザには限定されない。他の用途の例としては、自動車のサイドウィンドウやサンルーフ、あるいは電車や航空機などの移動体の窓部分に採用することが可能である。さらに、建築物の窓部分に採用することも可能である。