JP6694740B2 - 車両用ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents

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本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
従来、車両用ブレーキ液圧制御装置として、車両の制動時に、車輪速度に基づいて車両減速度を推定し、推定した車両減速度に基づいて路面摩擦係数(以下、「路面μ」ともいう。)を推定するものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、アンチロックブレーキ制御(以下、「ABS制御」ともいう。)における増圧制御の開始時点の車輪速度を少なくとも2回取得することにより路面μを推定している。
特開2013−71657号公報
しかしながら、従来技術では、増圧制御が2回行われた後に路面μを推定するので、路面μを推定するタイミングが遅くなるといった問題がある。
そこで、本発明は、路面μを推定するタイミングを早くすることを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置は、各車輪の車輪減速度を算出する車輪減速度算出手段と、前輪のホイールシリンダ圧を取得するホイールシリンダ圧取得手段と、前記ホイールシリンダ圧取得手段によって取得した前輪のホイールシリンダ圧と、前記車輪減速度算出手段によって算出された各車輪の車輪減速度とに基づいて、路面が高μ路であるか否かを判断する高μ路判定手段と、を備え、前記高μ路判定手段は、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧が第1閾値以上であり、かつ、各車輪の車輪減速度の絶対値がすべて第2閾値以上である場合に、高μ路であると判定するように構成されている。
この構成によれば、前輪のホイールシリンダ圧と各車輪の車輪減速度とに基づいて高μ路であるか否かを判定するので、ABS制御の減圧制御の開始時点において路面μを判定することができる。
これによれば、精度良く路面μを判定することができる。なお、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧が第1閾値以上であるということは、各ホイールシリンダ圧がABS制御の介入により減圧されていないこと、つまり路面が低μ路でないことを示しているので、路面μがある程度高い値であることを意味している。また、各車輪の車輪減速度の絶対値がすべて第2閾値以上であるということは、各車輪の接地路面がいずれも同じような高μ路であることを意味している。
また、前記した構成において、前記高μ路判定手段によって高μ路であると判定された場合に、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の介入閾値を、高μ路でないと判定された場合よりも大きな値に設定する閾値設定手段を備えていてもよい。
これによれば、高μ路であると判定された場合には、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の介入閾値が大きな値(すなわち減圧制御に介入し難い値)になるので、高μ路においてアンチロックブレーキ制御が開始されるタイミングを遅らせることができる。
また、前記した構成において、前記高μ路判定手段によって高μ路であると判定された場合に、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の減圧量を、高μ路でないと判定された場合よりも小さな値に設定してもよい。
これによれば、高μ路であると判定された場合には、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の減圧量が小さな値になるので、高μ路において過剰に減圧されるのを抑えることができる。
本発明によれば、路面μを推定するタイミングを早くすることができる。
本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を備えた車両の構成図である。 液圧ユニットの構成を示す構成図である。 制御部の構成を示すブロック図である。 制御部の動作を示すフローチャートである。 制御部の動作の一例を示すタイムチャート(a)〜(c)である。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置1は、車両2の各車輪3に付与する制動力を適宜制御する装置である。車両用ブレーキ液圧制御装置1は、油路や各種部品が設けられる液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部100とを主に備えている。
各車輪3には、それぞれ車輪ブレーキFL,RR,RL,FRが備えられ、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRには、液圧源としてのマスタシリンダ5から供給される液圧により制動力を発生するホイールシリンダ4が備えられている。マスタシリンダ5とホイールシリンダ4とは、それぞれ液圧ユニット10に接続されている。そして、ブレーキペダル6の踏力(運転者の制動操作)に応じてマスタシリンダ5で発生したブレーキ液圧が、制御部100および液圧ユニット10で制御された上でホイールシリンダ4に供給される。
制御部100には、各車輪3の車輪速度を検出する車輪速センサ91が接続されている。そして、この制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)および入出力回路を備えており、車輪速センサ91などからの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。なお、制御部100の詳細は、後述することとする。
図2に示すように、液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダル6に加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ5と、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。
液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路(液圧路)を有する基体であるポンプボディ11に油路と各種の電磁バルブが配置されることで構成されている。マスタシリンダ5の出力ポート5a,5bは、ポンプボディ11の入力ポート11aに接続され、ポンプボディ11の出力ポート11bは、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに接続されている。そして、通常時はポンプボディ11内の入力ポート11aから出力ポート11bまでが連通した油路となっていることで、ブレーキペダル6の踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。なお、マスタシリンダ5の出力ポート5aに接続された液圧系統は、車輪ブレーキFL,RRに接続され、マスタシリンダ5の出力ポート5bに接続された液圧系統は、車輪ブレーキRL,FRに接続され、これらの各系統は、略同様の構成を有している。
各液圧系統には、入力ポート11aと出力ポート11bを繋ぐ液圧路上に、供給する電流に応じてその上下流の液圧の差を調整可能な常開型比例電磁弁である調圧弁12が設けられている。調圧弁12には、並列して、出力ポート11b側へのみの流れを許容するチェック弁12aが設けられている。
調圧弁12よりも車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側の液圧路は途中で分岐して、それぞれが出力ポート11bに接続されている。そして、各出力ポート11bに対応する各液圧路上には、それぞれ常開型比例電磁弁である入口弁13が配設されている。各入口弁13には、並列して、調圧弁12側へのみの流れを許容するチェック弁13aが設けられている。
各出力ポート11bとこれに対応する入口弁13との間の液圧路からは、それぞれ、常閉型電磁弁からなる出口弁14を介して調圧弁12と入口弁13の間に繋がる還流液圧路19Bが設けられている。
この還流液圧路19B上には、出口弁14側から順に、過剰なブレーキ液を一時的に吸収するリザーバ16、チェック弁16a、ポンプ17およびオリフィス17aが配設されている。チェック弁16aは、調圧弁12と入口弁13の間へ向けての流れのみを許容するように配置されている。ポンプ17は、モータ21により駆動され、調圧弁12と入口弁13の間へ向けての圧力を発生するように設けられている。オリフィス17aは、ポンプ17から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および調圧弁12が作動することにより発生する脈動を減衰させている。
入力ポート11aと調圧弁12を繋ぐ導入液圧路19Aと、還流液圧路19Bにおけるチェック弁16aとポンプ17の間の部分とは、吸入液圧路19Cにより接続されている。そして、吸入液圧路19Cには、常閉型電磁弁である吸入弁15が配設されている。また、導入液圧路19Aには、マスタシリンダ5内の液圧を検出する圧力センサ92が設けられている。
以上のような構成の液圧ユニット10は、通常時には、各電磁弁に通電がなされず、入力ポート11aから導入されたブレーキ液圧は、調圧弁12、入口弁13を通って出力ポート11bに出力され、各ホイールシリンダ4にそのまま付与される。そして、アンチロックブレーキ制御を行う場合など、ホイールシリンダ4の過剰なブレーキ液圧を減圧する場合には、対応する入口弁13を閉じ、出口弁14を開くことで還流液圧路19Bを通してブレーキ液をリザーバ16へと流し、ホイールシリンダ4のブレーキ液を抜くことができる。また、運転者のブレーキペダル6の操作が無い場合にホイールシリンダ4の加圧を行う場合には、吸入弁15を開き、モータ21を駆動することで、ポンプ17の加圧力により積極的にホイールシリンダ4へブレーキ液を供給することができる。さらに、ホイールシリンダ4の加圧の程度を調整したい場合には、調圧弁12に流す電流を調整することで調整することができる。
次に、制御部100の詳細について説明する。
図3に示すように、制御部100は、車輪減速度算出手段110と、ホイールシリンダ圧取得手段の一例としてのホイールシリンダ圧推定手段120と、高μ路判定手段130と、アンチロックブレーキ制御手段140と、制御実行手段150と、記憶手段160とを備えている。
車輪減速度算出手段110は、車輪速センサ91から取得した各車輪3の車輪速度Vwに基づいて各車輪3の車輪減速度Awを算出する機能を有している。車輪減速度算出手段110は、各車輪3の車輪減速度Awを算出すると、算出した各車輪減速度Awをアンチロックブレーキ制御手段140と高μ路判定手段130とに出力する。
ホイールシリンダ圧推定手段120は、圧力センサ92から取得したマスタシリンダ圧Pmと、アンチロックブレーキ制御手段140から出力されてくる入口弁13や出口弁14等の制御履歴とに基づいて、左右の前輪の各ホイールシリンダ4内の液圧(以下、「ホイールシリンダ圧Pw」ともいう。)を推定する機能を有している。ホイールシリンダ圧推定手段120は、各ホイールシリンダ圧Pwを推定すると、推定した各ホイールシリンダ圧Pwを高μ路判定手段130に出力する。
高μ路判定手段130は、ホイールシリンダ圧推定手段120から出力されてくる前輪の各ホイールシリンダ圧Pwと、車輪減速度算出手段110から出力されてくる各車輪3の車輪減速度Awとに基づいて、路面が高μ路であるか否かを判断する機能を有している。詳しくは、高μ路判定手段130は、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwが第1閾値TH1以上であり、かつ、各車輪3の車輪減速度Awの絶対値がすべて第2閾値TH2以上である場合に、高μ路であると判定する。
なお、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwが第1閾値TH1以上であるということは、各ホイールシリンダ圧PwがABS制御の介入により減圧されていないこと、つまり路面が低μ路でないことを示しているので、路面μがある程度高い値であることを意味している。また、各車輪3の車輪減速度Awの絶対値がすべて第2閾値TH2以上であるということは、各車輪3の接地路面がいずれも同じような高μ路であることを意味している。
高μ路判定手段130は、高μ路であると判定した場合には、そのことを示す高μ信号をアンチロックブレーキ制御手段140に出力し、高μ路でないと判定した場合には、そのことを示す非高μ信号をアンチロックブレーキ制御手段140に出力する。
アンチロックブレーキ制御手段140は、車輪速センサ91から取得した各車輪3の車輪速度Vwと、車輪減速度算出手段110から取得した各車輪減速度Awとに基づいて、ABS制御を実行するか否かを車輪3ごとに判定し、実行すると判定した場合に、ABS制御時の液圧制御の指示(減圧制御、保持制御および増圧制御のいずれにするかの指示)を車輪3ごとに決定する機能を有している。詳しくは、アンチロックブレーキ制御手段140は、車輪速センサ91で検出される各車輪3の車輪速度Vwと、各車輪速度Vwに基づいて推定される車両速度Vcとに基づいて、各車輪3のスリップ量SLを算出する。
なお、本実施形態では、スリップ量SLとして、車両速度Vcから車輪速度Vwを減算した値を用いることとするが、本発明はこれに限定されず、(Vc−Vw)/Vcで表されるスリップ率をスリップ量SLとして用いてもよい。
アンチロックブレーキ制御手段140は、スリップ量SLが、所定の減圧閾値SLth以上になり、かつ、車輪減速度Awが0以下であるときに車輪3がロックしそうになったと判定して、液圧制御の指示を減圧制御に決定する。ここで、車輪減速度Awは、車輪加速度と同じ意味であり、負の値である場合には車輪3が減速していることを示し、正の値である場合には車輪3が加速していることを示す。
また、アンチロックブレーキ制御手段140は、車輪減速度Awが0よりも大きいときに、液圧制御の指示を保持制御に決定する。さらに、アンチロックブレーキ制御手段140は、スリップ量SLが減圧閾値SLth未満となり、かつ、車輪減速度Awが0以下であるときに、液圧制御の指示を増圧制御に決定する。
そして、アンチロックブレーキ制御手段140は、液圧制御の指示を決定した場合には、決定した液圧制御の指示(減圧、保持または増圧の指示)を制御実行手段150に出力する。
また、アンチロックブレーキ制御手段140は、前述した閾値を設定するための閾値設定手段141と、減圧制御における基本減圧量Pbを設定するための基本減圧量設定手段142とを有している。ここで、本実施形態における減圧制御は、基本減圧制御と漸減圧制御とで構成されており、基本減圧制御においては液圧を基本減圧量Pbだけ連続して減圧させ、漸減圧制御においては微小減圧と微小保持を繰り返し行うことで緩やかに液圧を減圧させている。
閾値設定手段141は、ABS制御が開始される前において、高μ路判定手段130から出力されてくる信号に基づいて、前述した減圧閾値SLth(ABS制御における減圧制御の介入閾値)を設定する機能を有している。詳しくは、閾値設定手段141は、高μ路判定手段130から出力されてくる信号が非高μ信号である場合には、減圧閾値SLthを第1減圧閾値SLth1に設定する。ここで、第1減圧閾値SLth1は、路面μが分からない状況において設定する閾値であり、実験やシミュレーション等によって、低μ路を考慮したある程度小さな値に設定されている。
また、閾値設定手段141は、高μ路判定手段130から出力されてくる信号が高μ信号である場合には、減圧閾値SLthを第1減圧閾値SLth1よりも大きな第2減圧閾値SLth2に設定する。なお、ABS制御の開始前に設定した減圧閾値SLthは、少なくとも2回目の増圧制御が開始されるまで保持されていればよく、例えば2回目の増圧制御の開始後は、従来の方法(増圧開始時の車輪速度を利用する方法)によって推定した路面μに基づいて設定し直してもよい。
基本減圧量設定手段142は、ABS制御が開始される前において、高μ路判定手段130から出力されてくる信号に基づいて、前述した基本減圧量Pb(ABS制御における減圧制御の減圧量)を設定する機能を有している。詳しくは、基本減圧量設定手段142は、高μ路判定手段130から出力されてくる信号が非高μ信号である場合には、基本減圧量Pbを第1減圧量Pb1に設定する。ここで、第1減圧量Pb1は、路面μが分からない状況において設定する閾値であり、実験やシミュレーション等によって、低μ路を考慮したある程度大きな値に設定されている。
また、基本減圧量設定手段142は、高μ路判定手段130から出力されてくる信号が高μ信号である場合には、基本減圧量Pbを第1減圧量Pb1よりも小さな第2減圧量Pb2に設定する。なお、ABS制御の開始前に設定した基本減圧量Pbは、少なくとも2回目の増圧制御が開始されるまで保持されていればよく、例えば2回目の増圧制御の開始後は、従来の方法によって推定した路面μに基づいて設定し直してもよい。
制御実行手段150は、アンチロックブレーキ制御手段140から出力されてくる液圧制御の指示に基づいて、入口弁13および出口弁14等を制御することで、ホイールシリンダ圧Pwを制御する機能を有している。具体的に、制御実行手段150は、液圧制御の指示が減圧制御である場合には、入口弁13および出口弁14に電流を流すことで、入口弁13を閉じ、出口弁14を開けるように制御する。また、制御実行手段150は、液圧制御の指示が保持制御である場合には、入口弁13に電流を流し、出口弁14に電流を流さないことで、入口弁13および出口弁14を両方とも閉じるように制御する。
そして、制御実行手段150は、液圧制御の指示が増圧制御である場合には、出口弁14に電流を流さないことで出口弁14を閉じ、入口弁13に、電流を流さない、または、指示液圧に対応した駆動電流を流すことで、入口弁13の上下流の差圧をコントロールして、ホイールシリンダ圧Pwを意図した増圧レートで増圧する。
記憶手段160には、前述した各閾値TH1,TH2,SLth1,SLth2や各減圧量Pb1,Pb2などが記憶されている。
次に、制御部100によるABS制御の減圧閾値SLthおよび基本減圧量Pbの設定方法について図4を参照して説明する。
図4に示すように、制御部100は、運転者によりブレーキペダル6が踏まれると(START)、まず、ABS制御中であるか否かを判断する(S1)。ステップS1においてABS制御中であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
ステップS1においてABS制御中でないと判断した場合には(No)、制御部100は、各センサ91,92から各車輪3の車輪速度Vwとマスタシリンダ圧Pmを取得する(S2)。ステップS2の後、制御部100は、各車輪3の車輪速度Vwから各車輪3の車輪減速度Awを算出する(S3)。
ステップS3の後、制御部100は、マスタシリンダ圧PmとABS制御の制御履歴から左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwを推定する(S4)。なお、ABS制御を開始する前においては、制御履歴がないことから、制御部100は、マスタシリンダ圧Pmの値を、そのまま左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwとして推定する。
ステップS4の後、制御部100は、各ホイールシリンダ圧Pwが第1閾値TH1以上であるか否かを判断する(S5)。ステップS5において各ホイールシリンダ圧Pwがともに第1閾値TH1以上であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、各車輪3の車輪減速度Awの絶対値がすべて第2閾値TH2以上であるか否かを判断する(S6)。
ステップS5において左右のうち少なくとも一方のホイールシリンダ圧Pwが第1閾値TH1未満であると判断した場合(No)、または、ステップS6において各車輪3のうち少なくとも一つの車輪3の車輪減速度Awの絶対値が第2閾値TH2未満であると判断した場合には(No)、制御部100は、高μ路でないと判定し、ステップS7の処理に移行する。
ステップS7において、制御部100は、減圧閾値SLthとして、第1減圧閾値SLth1を設定する(S7)。ステップS7の後、制御部100は、基本減圧量Pbとして、第1減圧量Pb1を設定して(S8)、本制御を終了する。
ステップS6において各車輪3の車輪減速度Awの絶対値がすべて第2閾値TH2以上であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、高μ路であると判定し、減圧閾値SLthとして、第1減圧閾値SLth1よりも大きな第2減圧閾値SLth2を設定する(S9)。ステップS9の後、制御部100は、基本減圧量Pbとして、第1減圧量Pb1よりも小さな第2減圧量Pb2を設定して(S10)、本制御を終了する。
次に、制御部100による制御の一例について図5を参照して説明する。なお、図5(b)に示す車輪減速度Awの波形は、車輪減速度Awの前回値に今回値を加えた値を示している。
図5(a),(c)に示すように、運転者がブレーキペダル6を踏むと(時刻t1)、マスタシリンダ圧Pmおよび前輪の各ホイールシリンダ圧Pw(1つのみ図示)が上昇していくとともに、車両速度Vcおよび車輪速度Vwが低くなっていく。なお、ブレーキ制御の初期の段階では、減圧閾値SLthは第1減圧閾値SLth1に設定され、基本減圧量Pbは第1減圧量Pb1に設定されている。
その後、図5(b),(c)に示すように、各車輪3の車輪減速度Aw(1つのみ図示)の絶対値が第2閾値TH2以上になるとともに(時刻t2)、各ホイールシリンダ圧Pwがともに第1閾値TH1以上になると(時刻t3)、制御部100は、高μ路であると判定する。ここで、図5(b)では、便宜上、負の車輪減速度Awに合わせて第2閾値TH2も負の値で示しているが、これは、車輪減速度Awの絶対値と正の第2閾値TH2とを比較しているものと同義である。
制御部100は、高μ路であると判定すると、減圧閾値SLthを第1減圧閾値SLth1から当該第1減圧閾値SLth1よりも大きな第2減圧閾値SLth2に設定し直すとともに、基本減圧量Pbを第1減圧量Pb1から当該第1減圧量Pb1よりも小さな第2減圧量Pb2に設定し直す。これにより、高μ路において、減圧制御の開始タイミングを、時刻t4(スリップ量SLが第1減圧閾値SLth1以上になる時刻)から時刻t5(スリップ量SLが第2減圧閾値SLth2以上になる時刻)に遅らせることができるとともに、ホイールシリンダ圧Pwが過剰に減圧されるのを抑えることができる。
ここで、図5(a),(c)に破線で示すグラフは、高μ路判定を行わないで、減圧閾値SLthおよび基本減圧量Pbを、初期値である第1減圧閾値SLth1および第1減圧量Pb1のままに設定している形態を示している。この形態では、減圧閾値SLthが第2減圧閾値SLth2よりも小さな第1減圧閾値SLth1であることから、本実施形態よりも早いタイミング(時刻t4)で減圧制御が開始される。また、この形態では、基本減圧量Pbが第2減圧量Pb2よりも大きな第1減圧量Pb1であることから、本実施形態よりもホイールシリンダ圧Pwが大きく減圧される。
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
前輪の各ホイールシリンダ圧Pwと各車輪3の車輪減速度Awとに基づいて高μ路であるか否かを判定するので、ABS制御の減圧制御の開始時点において路面μを判定することができる。
左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwが第1閾値TH1以上であり、かつ、各車輪3の車輪減速度Awの絶対値がすべて第2閾値TH2以上である場合に、高μ路であると判定したので、精度良く路面μを判定することができる。
高μ路であると判定された場合には、ABS制御における減圧制御の減圧閾値SLthが大きな第2減圧閾値SLth2に設定されるので、高μ路においてABS制御が開始されるタイミングを遅らせることができる。
高μ路であると判定された場合には、ABS制御における減圧制御の基本減圧量Pbが小さな第2減圧量Pb2に設定されるので、高μ路において過剰に減圧されるのを抑えることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、ホイールシリンダ圧取得手段として、マスタシリンダ圧Pmと制御履歴からホイールシリンダ圧Pwを推定するホイールシリンダ圧推定手段120を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ホイールシリンダ圧を検出するセンサからホイールシリンダ圧を取得する手段であってもよい。
前記実施形態では、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwを第1閾値TH1と比較したが、本発明はこれに限定されず、左右の一方の前輪のホイールシリンダ圧のみを第1閾値と比較してもよい。ただし、前記実施形態のように左右の前輪の各ホイールシリンダ圧Pwを第1閾値TH1と比較する場合には、左右の路面μが大きく異なるスプリット路において高μ路と判定されにくいので、スプリット路において良好な制動制御を行うことができる。
1 車両用ブレーキ液圧制御装置
3 車輪
100 制御部
110 車輪減速度算出手段
120 ホイールシリンダ圧推定手段
130 高μ路判定手段

Claims (3)

  1. 各車輪の車輪減速度を算出する車輪減速度算出手段と、
    前輪のホイールシリンダ圧を取得するホイールシリンダ圧取得手段と、
    前記ホイールシリンダ圧取得手段によって取得した前輪のホイールシリンダ圧と、前記車輪減速度算出手段によって算出された各車輪の車輪減速度とに基づいて、路面が高μ路であるか否かを判断する高μ路判定手段と、を備え
    前記高μ路判定手段は、左右の前輪の各ホイールシリンダ圧が第1閾値以上であり、かつ、各車輪の車輪減速度の絶対値がすべて第2閾値以上である場合に、高μ路であると判定することを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
  2. 前記高μ路判定手段によって高μ路であると判定された場合に、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の介入閾値を、高μ路でないと判定された場合よりも大きな値に設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする請求項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
  3. 前記高μ路判定手段によって高μ路であると判定された場合に、アンチロックブレーキ制御における減圧制御の減圧量を、高μ路でないと判定された場合よりも小さな値に設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
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