本発明の濾過材は、融着繊維が融着した融着不織布層を有し、融着繊維の融着部が損傷していないため、濾過材は剛性を有するものであるとともに、100γ値が35以上の捕集効率の優れるものである。
本発明の融着不織布層は剛性に優れているように、融着繊維を含み、融着した不織布層である。この融着繊維は融着可能な樹脂(以下、「融着樹脂」と表記することがある)を繊維表面に有する繊維であれば良く、特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を融着樹脂として繊維表面に有する融着繊維であることができる。特に、剛性に優れているように、ポリエステル系樹脂を融着樹脂として繊維表面に有する融着繊維が好ましい。
本発明の融着繊維は前述のような融着樹脂を繊維表面に有していれば良く、融着樹脂のみから構成されていても良いが、融着樹脂が融着しても繊維形態を維持し、剛性の優れる融着繊維であるように、融着樹脂に加えて、融着樹脂が融着する条件では融着しない樹脂(以下、「非融着樹脂」と表記することがある)を含む2種類以上の樹脂からなる融着繊維であるのが好ましい。融着樹脂と非融着樹脂とからなる融着繊維は、例えば、非融着樹脂を融着樹脂で被覆した芯鞘型融着繊維、非融着樹脂と融着樹脂とを貼り合せたサイドバイサイド型融着繊維、を挙げることができる。特に、芯鞘型融着繊維は剛性の優れる融着繊維であり、結果として融着不織布層であることができるため好適である。
前述の通り、融着樹脂がポリエステル系樹脂からなるのが好ましいため、非融着樹脂と融着樹脂との組合せ(非融着樹脂/融着樹脂)が、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステルの組合せ、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートの組合せ、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの組合せからなるのが好ましく、特に、これら非融着樹脂と融着樹脂との組合せが芯成分/鞘成分であるのが好ましい。
このような融着繊維(好ましくはポリエステル系樹脂を融着樹脂とする融着繊維、特には、非融着樹脂と融着樹脂のいずれもがポリエステル系樹脂からなる芯鞘型融着繊維)は、剛性に優れているように、融着不織布層中、30mass%以上含まれているのが好ましく、50mass%以上含まれているのがより好ましく、60mass%以上含まれているのが更に好ましく、70mass%以上含まれているのが更に好ましい。
本発明の融着不織布層を構成できる融着繊維以外の繊維(以下、「非融着繊維」ということがある)は、融着繊維が融着する温度では融着しない繊維であり、特に限定するものではないが、例えば、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維;レーヨン系繊維などの再生繊維;アセテート系繊維などの半合成繊維;ガラス系繊維などの無機繊維;綿や麻などの植物繊維;羊毛などの動物繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、合成繊維であると、後述の摩擦帯電不織布層構成繊維と摩擦することによって、摩擦帯電不織布層の帯電量を維持又は向上させやすいため好適である。
なお、本発明の濾過材を、難燃性を必要とする用途に使用する場合には、融着不織布層は限界酸素指数が20以上の繊維を含んでいるのが好ましい。この限界酸素指数が20以上の繊維量が多ければ多い程、難燃性に優れているため、限界酸素指数が20以上の繊維は、融着不織布層中、70mass%以上を占めているのが好ましく、80mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、100mass%を占めているのが最も好ましい。なお、この限界酸素指数は、JIS K 7201により測定した値をいう。
このような限界酸素指数が20以上の繊維は特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ビニロン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維;ガラス系繊維などの無機繊維;羊毛、絹などの動物繊維;などを挙げることができる。前述の通り、後述の摩擦帯電不織布層構成繊維と摩擦することによって、摩擦帯電不織布層の帯電量を維持又は向上させやすい合成繊維が好適であり、剛性に優れるポリエステル系繊維が特に好適である。
本発明の融着不織布層の構成繊維(融着繊維、非融着繊維、限界酸素指数が20以上の繊維など)の繊度は特に限定するものではないが、融着不織布層が存在することによって濾過材の剛性が優れているように、繊度15dtex以上の構成繊維を含んでいるのが好ましく、繊度16dtex以上の構成繊維を含んでいるのがより好ましい。一方で、繊度が大き過ぎると、融着不織布層が濾過に関与しにくくなる傾向があるため、50dtex以下であるのが好ましい。このような繊度15dtex以上の構成繊維が多ければ多い程、濾過材の剛性を高めることができるため、融着不織布層中、30mass%以上含まれているのが好ましく、45mass%以上含まれているのがより好ましく、65mass%以上含まれているのが更に好ましく、80mass%以上含まれているのが更に好ましい。一方で、融着不織布層も濾過に関与しやすいように、15dtex未満の構成繊維も含んでいるのが好ましく、12dtex以下の構成繊維も含んでいるのがより好ましく、10dtex以下の構成繊維も含んでいるのが更に好ましく、8dtex以下の構成繊維も含んでいるのが更に好ましい。なお、本発明における「繊度」はJIS L 1015:2010、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる値を意味する。
また、融着不織布層の構成繊維(融着繊維、非融着繊維、限界酸素指数が20以上の繊維など)の繊維長は特に限定するものではないが、融着不織布層が存在していることによって濾過材の剛性が優れているように、30mm以上であるのが好ましく、40mm以上であるのがより好ましく、50mm以上であるのが更に好ましい。一方で、繊維長が長すぎると、構成繊維が均一に分散することが困難になり、捕集効率が悪くなる傾向があるため、150mm以下であるのが好ましく、110mm以下であるのがより好ましい。本発明における「繊維長」は、JIS L 1015:2010、8.4.1[補正ステープルダイヤグラム法(B法)]により得られる値を意味する。
融着不織布層の目付は特に限定するものではないが、濾過材に剛性を付与できるように、20〜200g/m2であるのが好ましく、30〜100g/m2であるのがより好ましく、40〜80g/m2であるのが更に好ましい。本発明における目付は1m2あたりの質量であり、JIS L 1085:1998、6.2「単位面積当たりの質量」に規定する方法により得られる値をいう。
また、剛性に優れているように、融着不織布層の厚さは0.2mm以上であるのが好ましく、0.3mm以上であるのがより好ましく、0.4mm以上であるのが更に好ましく、0.5mm以上であるのが更に好ましく、0.6mm以上であるのが更に好ましく、0.7mm以上であるのが更に好ましい。一方で、厚さが100mmを超えると、形態安定性が悪くなりやすく、また、厚過ぎて汎用性に劣る傾向があるため100mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのがより好ましく、30mm以下であるのが更に好ましく、20mm以下であるのが更に好ましく、10mm以下であるのが更に好ましく、5mm以下であるのが更に好ましく、3mm以下であるのが更に好ましく、2mm以下であるのが更に好ましい。
本発明における「厚さ」は、濾過材の厚さ方向断面における実体顕微鏡写真を撮影し、無作為に選んだ5点における厚さの算術平均値をいう。なお、融着不織布層など、層を判別しにくい場合には、例えば、カヤステインQ、テスターカラー、ボーケンステイン、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液等により染色することによって、各層を認識しやすくした上で、厚さを測定することができる。例えば、融着不織布層が好適であるポリエステル系樹脂を融着樹脂として繊維表面に有する融着繊維を含んでいる場合、カヤステインQを用いて融着不織布層を茶色に染色することにより、正確に融着不織布層の厚さを測定できる。
本発明の融着不織布層は融着繊維が融着した層であるが、融着繊維の融着部が損傷していないため、剛性の優れる層である。例えば、融着繊維を融着させた後に、ニードルを作用させると、ニードルの作用によって、融着繊維が融着した融着部が破壊され、繊維間の結合部(融着部)が破壊されてしまうため、融着不織布層の剛性が低下してしまい、結果として濾過材の剛性が低下し、濾過材として使用しにくいものであるが、本発明の濾過材においては、融着繊維の融着部が損傷していないため、剛性が優れ、濾過材として使用しやすいものである。
なお、本発明の融着不織布層は融着繊維が融着した層であるが、融着繊維の融着以外の結合を有していても良い。例えば、ニードルや水流などの流体流による絡合、接着剤による接着などによる結合も有していても良い。特に、繊維表面全体が濾過に関与できるように、融着不織布層は融着繊維の融着のみ、又は融着繊維の融着と絡合により結合しているのが好ましい。なお、絡合により結合している場合、絡合作用によって融着繊維の融着部が損傷しないように、絡合作用によって結合した後に、融着繊維を融着させることが好ましい。
本発明の濾過材は前述のような融着不織布層に加えて、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した摩擦帯電不織布層を有しているため、100γ値が35以上という、捕集効率の優れる濾過材である。
本発明の摩擦帯電不織布層は構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在し、摩擦によって帯電した不織布層であるが、この構成繊維は構成樹脂が異なれば、摩擦帯電するが、充分な帯電量であるように、摩擦によって帯電しやすい構成樹脂からなる繊維が混在しているのが好ましい。例えば、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維との組合せ;フッ素系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;ウレタン系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;塩化ビニル系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;ポリオレフィン系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;アクリル系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維の組合せ;ビニロン系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;アセテート系繊維とポリアミド系繊維、羊毛、ガラス系繊維、絹又はレーヨン系繊維との組合せ;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維との組合せは帯電量が多いため好適な組合せである。
なお、「構成樹脂が異なる」とは、繊維表面(両端部を除く)の構成樹脂が異なることを意味し、仮に、繊維内部を構成する樹脂が他の繊維の繊維表面又は繊維内部の構成樹脂と同じであったとしても、繊維表面(両端部を除く)の構成樹脂が異なっていれば、構成樹脂の異なる繊維であるとみなす。
前述の通り、摩擦帯電不織布層構成繊維はポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維との組合せが好ましいが、ポリオレフィン系繊維構成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、又は、これら樹脂の一部をシアノ基やハロゲンで置換した樹脂などを挙げることができ、ポリオレフィン系繊維はこれら構成樹脂1種類、又は2種類以上からなる複合繊維であることができる。例えば、芯鞘型複合繊維であり、鞘成分がポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系繊維であっても良い。
また、好適であるポリオレフィン系繊維の場合、リン系添加剤とイオウ系添加剤を含有しているのが好ましい。リン系添加剤とイオウ系添加剤を含有していることによって、初期捕集効率が向上するためである。なお、リン系添加剤とイオウ系添加剤に加えて、更に、フェノール系、アミン系などの他の添加剤が含まれていても良い。
このリン系添加剤はポリオレフィン系繊維中、0.01mass%以上含有しているのが好ましく、0.2mass%以上含有しているのがより好ましく、0.3mass%以上含有しているのが更に好ましく、0.6mass%以上含有しているのが更に好ましい。
このリン系添加剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)などのリン系酸化防止剤を挙げることができる。
イオウ系添加剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスなどのイオウ系酸化防止剤などが好適に使用できる。このイオウ系添加剤はポリオレフィン系繊維中、0.01mass%以上含まれているのが好ましく、0.1mass%以上含まれているのがより好ましい。
なお、リン系添加剤とイオウ系添加剤の合計量が多くなると、紡糸性が悪くなる傾向があるため、リン系添加剤とイオウ系添加剤の合計量がポリオレフィン系繊維の5mass%以下であるのが好ましく、2mass%以下であるのがより好ましく、1mass%以下であるのが更に好ましい。
一方、アクリル系繊維としては、アクリロニトリルを主成分(85%以上)とするポリアクリロニトリル系と、アクリロニトリルを35%以上85%未満含むモダクリル系のいずれであっても使用することができる。また、ポリアクリロニトリル系繊維は有機系溶媒を用いて紡糸したものと、無機系溶媒を用いて紡糸したものの2種類があるが、いずれのポリアクリロニトリル系繊維であっても良い。
なお、摩擦帯電不織布層構成繊維として融着繊維を含み、融着していると、更に剛性の優れる濾過材であることができ、また、構成繊維が毛羽立ちにくく、繊維の脱落も生じにくい、という効果を奏する。
このような摩擦帯電不織布層を構成する融着繊維は、融着不織布層を構成できる融着繊維と同様の融着繊維であることができる。つまり、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を融着樹脂とする融着繊維を挙げることができ、剛性の優れるポリエステル系樹脂を融着樹脂とする融着繊維が好ましい。
また、摩擦帯電不織布層を構成できる融着繊維は前述のような融着樹脂を有していれば良く、融着樹脂のみから構成されていても良いし、剛性の優れる摩擦帯電不織布層であるように、融着樹脂に加えて非融着樹脂を含む融着繊維であるのが好ましい。例えば、2種類の樹脂から構成されている場合、非融着樹脂を融着樹脂で被覆した芯鞘型融着繊維、非融着樹脂と融着樹脂とを貼り合せたサイドバイサイド型融着繊維、を挙げることができる。特に、芯鞘型融着繊維であると、剛性の優れる摩擦帯電不織布層であることができるため好適である。
前述の通り、ポリエステル系樹脂を融着樹脂とする融着繊維が好適であるため、非融着樹脂と融着樹脂との組合せ(非融着樹脂/融着樹脂)が、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステルの組合せ、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートの組合せ、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの組合せからなるのが好ましく、特に、前記樹脂の組合せが芯成分/鞘成分であるのが好ましい。
なお、摩擦帯電不織布層が融着繊維を含んでいる場合、摩擦帯電不織布層を構成する融着繊維は融着不織布層を構成する融着繊維と同じであっても良いし、異なっていても良いが、同じであると、融着不織布層と摩擦帯電不織布層とが強固に融着し、層間剥離しにくい濾過材であることができる。
また、本発明の摩擦帯電不織布層は、前述の通り、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維とを含んでいるのが好ましいが、融着繊維を含んでいる場合、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維に加えて融着繊維を含んでいても良いし、アクリル系繊維に替えて融着繊維を含み、融着繊維とポリオレフィン系繊維とを含んでいても良い。
なお、摩擦帯電不織布層の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、繊維の表面積が広いと、繊維同士が擦れやすく、帯電量が多くなって、捕集効率の向上が望めるため、10dtex以下であるのが好ましく、7dtex以下であるのがより好ましく、5dtex以下であるのが更に好ましく、3dtex以下であるのが更に好ましい。一方で、繊維が細くなり過ぎると、圧力損失が上昇しやすくなる傾向があるため、0.1dtex以上であるのが好ましく、0.5dtex以上であるのがより好ましく、1dtex以上であるのが更に好ましい。
また、摩擦帯電不織布層構成繊維の繊維長は特に限定するものではないが、繊維長が短くても長くても、構成繊維が均一に分散することが困難になる傾向があり、結果として、捕集効率が悪くなる傾向があるため、20〜150mmであるのが好ましく、35〜110mmであるのがより好ましく、50〜80mmであるのが更に好ましい。
本発明の摩擦帯電不織布層は、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した層であるが、構成樹脂の異なる繊維の混合比率は効率的に摩擦帯電する比率であれば良く、繊維の組合せによって異なるため、特に限定するものではないが、繊維同士の摩擦によって帯電しやすいように、正に帯電する繊維本数と、負に帯電する繊維本数との比率が、1:0.5〜2であるのが好ましく、1:0.56〜1.8であるのがより好ましく、1:0.63〜1.6であるのが更に好ましく、1:0.67〜1.5であるのが更に好ましい。
なお、摩擦帯電不織布層が融着繊維を含んでいる場合であっても、繊維同士の摩擦によって帯電しやすいように、正に帯電する繊維本数と、負に帯電する繊維本数との比率が前記比率であるように、融着繊維が混在しているのが好ましい。摩擦帯電不織布層の剛性と毛羽立ちを抑えるために、融着繊維を含んでいる場合には、摩擦帯電不織布層の1mass%以上を融着繊維が占めているのが好ましく、2mass%以上を融着繊維が占めているのがより好ましい。一方で、融着繊維量が多くなると、摩擦帯電に関与する繊維量が少なくなり、充分に帯電できない傾向があるため、融着繊維は摩擦帯電不織布層の60mass%以下であるのが好ましく、50mass%以下であるのがより好ましく、40mass%以下であるのが更に好ましい。
本発明の摩擦帯電不織布層の目付は特に限定するものではないが、帯電量が多いように、ある程度の繊維量があるのが好ましいため、20g/m2以上であるのが好ましく、30g/m2以上であるのがより好ましく、40g/m2以上であるのが更に好ましい。一方で、目付が高過ぎると、圧力損失が上昇する傾向があるため、200g/m2以下であるのが好ましく、180g/m2以下であるのがより好ましく、150g/m2以下であるのが更に好ましく、100g/m2以下であるのが更に好ましく、80g/m2以下であるのが更に好ましく、60g/m2以下であるのが更に好ましい。
特に、帯電量が多いように、摩擦帯電不織布層における、摩擦帯電に関与する繊維量は20g/m2以上であるのが好ましく、30g/m2以上であるのがより好ましく、35g/m2以上であるのが更に好ましく、40g/m2以上であるのが更に好ましく、45g/m2以上であるのが更に好ましい。一方、摩擦帯電不織布層における、摩擦帯電に関与する繊維量は圧力損失が上昇しにくいように、200g/m2以下であるのが好ましく、180g/m2以下であるのがより好ましく、150g/m2以下であるのが更に好ましく、100g/m2以下であるのが更に好ましく、80g/m2以下であるのが更に好ましく、60g/m2以下であるのが更に好ましい。
また、摩擦帯電不織布層の厚さは特に限定するものではないが、構成繊維がある程度、自由に動いて、摩擦帯電しやすいように、0.5mm以上であるのが好ましく、0.6mm以上であるのがより好ましく、0.7mm以上であるのが更に好ましく、0.8mm以上であるのが更に好ましく、1mm以上であるのが更に好ましい。一方で、形態安定性に優れ、汎用性に優れる濾過材であるように、20mm以下であるのが好ましく、10mm以下であるのがより好ましく、5mm以下であるのが更に好ましく、3mm以下であるのが更に好ましく、2mm以下であるのが更に好ましい。
本発明の濾過材は前述のような融着不織布層と摩擦帯電不織布層とを有するものであるが、その100γ値は35以上の捕集効率の優れるものである。この100γ値が大きければ大きい程、初期圧力損失が低く、捕集効率が高いことを意味するため、100γ値が大きい程、摩擦帯電不織布層の帯電レベルが高いことを意味する。そのため、100γ値は40以上であるのが好ましく、45以上であるのがより好ましく、50以上であるのが更に好ましく、55以上であるのが更に好ましく、60以上であるのが更に好ましく、65以上であるのが更に好ましく、70以上であるのが更に好ましい。
この100γ値は次の手順により得られる値である。
(1)粒径0.3〜0.5(μm)の大気塵を用い、面風速10(cm/秒)の条件で、捕集効率(=E、単位:%)を測定する。つまり、次の式から捕集効率(=E)を算出する。なお、この式において、Aは濾過材よりも下流側における大気塵数(単位:個)を意味し、Bは濾過材よりも上流側における大気塵数(単位:個)を意味する。
E=(1−A/B)×100
(2)前記捕集効率測定前における、面風速10(cm/秒)の条件での初期圧力損失(=ΔP、単位:Pa)を測定する。
(3)これら捕集効率(=E)と初期圧力損失(=ΔP)を用いて、次の数式(但し「ln」は自然対数)から算出される値を100γ値とする。
100γ=[{−ln(1−E/100)}/ΔP]×100
本発明の濾過材は前述のような融着不織布層と摩擦帯電不織布層とを有するものであるが、融着不織布層構成繊維及び/又は摩擦帯電不織布層構成繊維の一部は他方の層に進入し、絡合しているのが好ましい。このように他方の層に進入し、絡合していることによって、融着不織布層と摩擦帯電不織布層とが剥離しにくいため、濾過性能の優れる濾過材であることができる。特に、摩擦帯電不織布層構成繊維が融着不織布層に進入していると、濾過材製造時、濾過材加工時、或いは濾過材使用時に、融着不織布層が変形(特に厚さ方向に変形)した時に、摩擦帯電不織布層構成繊維同士が擦れ合い、摩擦帯電しやすく、帯電量が減少しにくく、捕集効率が優れるため、好適な態様である。
本発明の濾過材は、前述のような融着不織布層と摩擦帯電不織布層とを有するものであるが、いずれの層も一層である必要はなく、いずれかの層を二層以上、又はいずれの層も二層以上有していても良い。特に、摩擦帯電不織布層の両面に、前述のような融着不織布層を備えた三層構造であると、剛性が優れているため好適である。また、摩擦帯電不織布層の両面に、融着不織布層を備えていることによって、濾過材加工時等の摩擦しやすい場面においても、毛羽立つことがないため好適である。
このように濾過材が摩擦帯電不織布層の両面に融着不織布層を備えた三層構造である場合、難燃性に優れているように、いずれの融着不織布層も構成繊維として、限界酸素指数が20以上の繊維を含み、摩擦帯電不織布層の目付の0.5倍以上の目付を有するのが好ましい。限界酸素指数が20以上の繊維が多い方が難燃性に優れているため、限界酸素指数が20以上の繊維はいずれの融着不織布層においても、70mass%以上を占めているのが好ましく、80mass%以上を占めているのがより好ましく、90mass%以上を占めているのが更に好ましく、100mass%を占めているのが最も好ましい。また、融着不織布層の目付が高い、つまり、限界酸素指数が20以上の繊維量が多い方が難燃性に優れているため、いずれの融着不織布層も、目付が摩擦帯電不織布層の目付の0.6倍以上であるのがより好ましく、0.7倍以上であるのが更に好ましく、0.8倍以上であるのが更に好ましく、0.9倍以上であるのが更に好ましく、1倍以上であるのが更に好ましい。一方で、融着不織布層の目付が高すぎると、厚さが厚くなり過ぎて襞折りしにくいなど、汎用性に劣る傾向があるため、融着不織布層の目付は摩擦帯電不織布層の目付の4倍以下であるのが好ましく、3倍以下であるのがより好ましく、2倍以下であるのが更に好ましい。
本発明の濾過材が三層構造からなる場合、融着不織布層は全く同じであっても良いし、構成繊維の樹脂組成、繊度、繊維長;融着不織布層の構造、繊維配合、目付、厚さ;の中から選ばれる、少なくとも一点で異なる融着不織布層であっても良い。前述の通り、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布層に進入し、絡合しているのが好ましいが、いずれか一方の融着不織布層に進入し、絡合していても、両方の融着不織布層に進入し、絡合していても良い。
本発明の濾過材は基本的に融着不織布層と摩擦帯電不織布層とからなるものであるが、濾過材の剛性と捕集効率に悪影響を与えないのであれば、別の層を有することもできる。例えば、ネット層、スパンボンド不織布層を有することによって、濾過材の剛性を更に高めることができ、また、メルトブロー不織布層、湿式不織布層、静電紡糸不織布層などの層を有することによって、捕集効率を高めることができる。なお、本発明の濾過材の摩擦帯電不織布層構成繊維の一部は融着不織布層に進入し、絡合しているのが好ましいため、このような場合、前述のような別の層は融着不織布層と摩擦帯電不織布層との間以外の所に位置しているのが好ましい。つまり、別の層は融着不織布層の外側、又は摩擦帯電不織布層の外側に位置しているのが好ましい。
本発明の濾過材の目付は特に限定するものではないが、40〜400g/m2であるのが好ましく、60〜280g/m2であるのがより好ましく、80〜230g/m2であるのが更に好ましく、90〜180g/m2であるのが更に好ましく、100〜160g/m2であるのが更に好ましい。
また、本発明の濾過材の厚さも特に限定するものではないが、0.7〜120mmであるのが好ましく、0.9〜150mmであるのがより好ましく、1.1〜35mmであるのが更に好ましく、1.3〜35mmであるのが更に好ましく、1.4〜23mmであるのが更に好ましく、1.5〜13mmであるのが更に好ましく、1.8〜8mmであるのが更に好ましく、2〜5mmであるのが更に好ましく、2〜4mmであるのが更に好ましい。
更に、本発明の濾過材は融着不織布層を有し、剛性の優れるものであるが、JIS L 1913:2010の6.7.4に規定するガーレ法によって測定した剛軟度が2.5mN以上であるのが好ましく、3mN以上であるのがより好ましく、3.5mN以上であるのが更に好ましい。なお、試験片は、30mm×40mmの大きさの長方形とし、摩擦帯電不織布層が表面に露出している場合には、摩擦帯電不織布層側が振り子Bと当接するように、30mmの辺をチャックに固定して測定する。
本発明のフィルタエレメントは前述のような本発明の濾過材を襞折りした状態で備えている。そのため、濾過材は充分な剛性を有し、隣接する濾過材同士が接触することもないため、充分な捕集効率を有するフィルタエレメントである。なお、本発明の濾過材は剛性のあるものであるため、襞折り加工を良好に実施して製造できるフィルタエレメントである。
本発明のフィルタエレメントは上述のような本発明の濾過材を使用していること以外は、従来のフィルタエレメントと全く同様であることができる。
例えば、襞折り加工は、ジグザグ形状に折って、襞を形成できる限り限定されず、例えば、レシプロ式やロータリー式などのプリーツ加工機、ジグザグ形状に成形された押型でプレスする方法により実施することができる。
また、襞折りした濾過材の外枠による固定は、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのホットメルト樹脂を外枠と濾過材との間に介在させることにより行うことができる。なお、外枠としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの各種金属;各種樹脂;紙;不織布(例えば、本発明の濾過材)からなる外枠を使用することができる。
本発明の濾過材は、例えば、(1)融着繊維を含む融着用繊維ウエブと、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した混在繊維ウエブとを積層して、融着用繊維ウエブ層と混在繊維ウエブ層とを有する積層繊維ウエブを形成する工程、(2)前記積層繊維ウエブを構成する融着用繊維ウエブ層の融着繊維を融着させて、融着不織布層と混在繊維ウエブ層とを有する、融着積層不織布を形成する工程、(3)前記融着積層不織布を洗浄し、油剤を取り除いて、洗浄積層不織布を形成する工程、(4)前記洗浄積層不織布の混在繊維ウエブ層構成繊維を、気体の作用による繊維同士の摩擦によって帯電させ、融着不織布層と摩擦帯電不織布層とを有する濾過材を形成する工程、により製造することができる。このように、本発明の濾過材の製造方法は、融着積層不織布層を形成し、油剤を取り除き、摩擦帯電しやすい洗浄積層不織布とした後に、気体の作用による繊維同士の摩擦によって帯電させる方法であり、帯電後に融着積層不織布層を形成する際の熱の影響を受けないため、捕集効率の優れる濾過材を製造することができる。また、気体の作用により摩擦帯電させる方法であり、気体の作用によっては融着繊維の融着部が損傷しないため、剛性の優れる濾過材を製造することができる。更に、混在繊維ウエブの両面に融着用繊維ウエブを積層して三層構造の積層繊維ウエブとした場合であっても、気体の作用によって、中間層の混在繊維ウエブ構成繊維を効果的に摩擦帯電させることができ、捕集効率の優れる濾過材を製造することができる。
より具体的には、まず、(1)融着繊維を含む融着用繊維ウエブと、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した混在繊維ウエブとを積層して、融着用繊維ウエブ層と混在繊維ウエブ層とを有する積層繊維ウエブを形成する工程を実施する。融着用繊維ウエブは、例えば、前述のような融着繊維、必要であれば非融着繊維、好ましくは限界酸素指数が20以上の繊維、を使用し、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、スパンボンド法により融着用繊維ウエブを形成することができる。なお、前述の通り、融着繊維は融着用繊維ウエブ中、30mass%以上含まれているのが好ましく、50mass%以上含まれているのがより好ましく、60mass%以上含まれているのが更に好ましく、70mass%以上含まれているのが最も好ましい。
一方、構成樹脂の異なる2種類以上の繊維が混在した混在繊維ウエブは、例えば、前述のような繊維を使用して、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法により形成することができる。なお、本発明の濾過材を構成する摩擦帯電不織布層は、前述のような繊維から構成することができるが、摩擦によって帯電しやすいように、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維とを含んでいるのが好ましいため、混在繊維ウエブ中に、ポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維とを含んでいるのが好ましい。また、摩擦帯電不織布層に剛性や毛羽立ち防止性を付与する場合には、ポリオレフィン系繊維又はアクリル系繊維に替えて、又はポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維に加えて、融着繊維を含んでいるのが好ましい。
なお、融着用繊維ウエブと混在繊維ウエブとの積層は、1層ずつ積層して積層繊維ウエブとしても良いが、いずれかの繊維ウエブを2層以上として積層繊維ウエブとしたり、両方の繊維ウエブを2層以上として積層繊維ウエブとすることができる。
特に、混在繊維ウエブの両面に融着用繊維ウエブを積層して積層繊維ウエブとすると、摩擦帯電不織布層の両面に融着不織布層を有する濾過材を製造することができ、更に剛性に優れ、毛羽立ちにくい濾過材を製造することができるため好適である。更に、融着用繊維ウエブが、酸素限界指数が20以上の繊維を含み、混在繊維ウエブの目付の0.5倍以上の目付を有する場合には、難燃性にも優れる濾過材を製造することができるため、特に好適である。このように、混在繊維ウエブの両面に融着用繊維ウエブを積層して積層繊維ウエブとする場合、融着用繊維ウエブは全く同じであっても良いし、構成繊維の樹脂組成、繊度、繊維長;融着用繊維ウエブの形成方法、繊維配合、目付、厚さ;の中から選ばれる、少なくとも一点で異なる融着用繊維ウエブであっても良い。
次いで、(2)前記積層繊維ウエブを構成する融着用繊維ウエブ層の融着繊維を融着させて、融着不織布層と混在繊維ウエブ層とを有する、融着積層不織布を形成する工程を実施するが、その前に、前記積層繊維ウエブの混在繊維ウエブ層構成繊維又は融着用繊維ウエブ層構成繊維を、融着用繊維ウエブ層又は混在繊維ウエブ層へ進入させ、絡合させるのが好ましい。このように他方の層に進入させ、絡合させることによって、融着不織布層と摩擦帯電不織布層とが剥離しにくく、濾過性能の優れる濾過材を製造できるためである。特に、混在繊維ウエブ層構成繊維を融着用繊維ウエブ層へ進入させ、絡合させると、濾過材製造時、濾過材加工時、或いは濾過材使用時に、融着不織布層が変形(特に厚さ方向に変形)した時に、摩擦帯電不織布層構成繊維同士が擦れ合い、摩擦帯電しやすく、帯電量が減少しにくく、捕集効率が優れる濾過材であることができるため、好適である。
このように、融着用繊維ウエブ層の融着繊維を融着させる前の段階で、混在繊維ウエブ層構成繊維又は融着用繊維ウエブ層構成繊維を、融着用繊維ウエブ層又は混在繊維ウエブ層へ進入させ、絡合させれば、融着繊維の融着部を損傷することがないため、剛性の優れる濾過材を製造することができる。
この絡合方法は特に限定するものではないが、例えば、ニードルを作用させる方法、水流を作用させる方法などを挙げることができる。特に、ニードルを作用させる方法であると、比較的粗く絡合させることができ、混在繊維ウエブ層構成繊維の自由度が高く、後工程の気体の作用によっても充分に繊維同士を摩擦帯電させやすいため、好適である。この好適であるニードル条件は特に限定するものではないが、針密度30〜100本/cm2で作用させるのが好ましく、40〜90本/cm2で作用させるのがより好ましい。
なお、混在繊維ウエブ層の両面に融着用繊維ウエブ層を有する場合には、一方の融着用繊維ウエブ層側からのみニードル又は水流を作用させても良いし、両方の融着用繊維ウエブ層からニードル又は水流を作用させても良い。
好ましくは上述の通り、絡合させた後に、(2)前記積層繊維ウエブを構成する融着用繊維ウエブ層の融着繊維を融着させて、融着不織布層と混在繊維ウエブ層とを有する、融着積層不織布を形成する工程を有することによって、剛性の優れる濾過材を製造することができる。また、後述のような油剤を取り除くための洗浄の前の段階で融着繊維を融着させ、その後に摩擦帯電させており、融着繊維を融着させる際の熱の影響を受けないため、帯電量が多く、捕集効率に優れる濾過材を製造することができる。なお、洗浄する前の段階で融着繊維を融着させて融着不織布層を形成しているため、融着積層不織布を洗浄しても、洗浄による負荷に耐え、形態を維持できるという効果も奏する。
この融着用繊維ウエブ層の融着繊維を融着させて融着不織布層とする方法は、融着繊維が融着し、融着不織布層を形成できる方法であれば良く、融着条件は融着繊維によって異なるため、特に限定するものではない。この条件は融着繊維に応じて、実験的に適宜設定できる。なお、加熱手段は、例えば、熱風ドライヤ、赤外線ランプ、加熱ロールなどで実施することができるが、熱風ドライヤ、赤外線ランプなどの、固体による圧力が作用しない加熱手段であると、嵩高な融着不織布層とすることができ、剛性の優れる濾過材を製造しやすいため好適である。
なお、混在繊維ウエブ層が構成繊維として融着繊維を含んでいる場合には、融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維を融着させるのと同時に融着させると、製造工程上、好適である。そのため、混在繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂は、融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂と、融点差が10℃以内にあるのが好ましく、融点差が5℃以内にあるのがより好ましく、特に、同じ融着繊維からなるのが好ましい。しかしながら、混在繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂は、融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂と、融点差が10℃を超えていても良く、この場合、別工程でそれぞれ融着させることができる。
同様に、混在繊維ウエブ層の両面に融着用繊維ウエブ層を有する場合には、両方の融着用繊維ウエブ層構成融着繊維を同時に融着させると、製造工程上、好適である。そのため、一方の融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂は、他方の融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂と、融点差が10℃以内にあるのが好ましく、融点差が5℃以内にあるのがより好ましく、特に、同じ融着繊維からなるのが好ましい。しかしながら、一方の融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂は、他方の融着用繊維ウエブ層を構成する融着繊維の融着樹脂と、融点差が10℃を超えていても良く、この場合、別工程で融着させることができる。
続いて、(3)前記融着積層不織布を洗浄し、油剤を取り除いて、洗浄積層不織布を形成する工程を実施する。この工程を実施することにより、混在繊維ウエブ層を構成する繊維の吸湿性を低下させることができるため、効率良く、摩擦帯電させることができる。このように、融着積層不織布を形成した後に油剤を取り除いているため、油剤の付着した繊維を使用して混在繊維ウエブを形成できる。そのため、油剤を取り除いた繊維を使用して混在繊維ウエブを形成する場合と比較して、繊維の開繊性に優れており、捕集効率を高めることができるとともに、生産安定性に寄与し、更には、開繊機に対して除電器等の設置の必要がなくなるなど、装置構成を簡潔にできるという効果を奏する。
この融着積層不織布の洗浄方法は特に限定するものではなく、例えば、アルカリ性水溶液、アルコール、水(温水又は熱水を含む)、又はこれらの混合溶液で洗浄することができる。なお、これら溶液を用いて、2回以上洗浄しても良い。その場合には、同じ溶液であっても良いし、異なる溶液であっても良い。
そして、(4)前記洗浄積層不織布の混在繊維ウエブ層構成繊維を、気体の作用による繊維同士の摩擦によって帯電させ、融着不織布層と摩擦帯電不織布層とを有する濾過材を形成する工程を実施して、本発明の濾過材を製造することができる。このように、本発明においては、気体の作用によって摩擦帯電させているため、融着繊維の融着部を損傷させることがない。そのため、融着不織布層が本来有する剛性を維持することができるため、剛性の優れる濾過材を製造することができる。つまり、ニードルを作用させて摩擦帯電させる場合のように、固体を利用して摩擦帯電させると、融着繊維の融着部が損傷し、融着不織布層の剛性を維持することが困難であるが、気体によって摩擦帯電させているため、融着繊維の融着部が損傷せず、融着不織布層の剛性を維持することができ、結果として、剛性の優れる濾過材を製造することができる。
特に、混在繊維ウエブ層の両面に融着不織布層を有する三層構造の洗浄積層不織布であったとしても、融着不織布層の嵩を減じることなく、気体の作用によって、中間層の混在繊維ウエブ層構成繊維を効果的に摩擦帯電させることができるため、剛性を損なわない、という効果も奏する。
本発明で用いる気体は混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電させることができる限り、特に限定するものではないが、例えば、酸素、窒素、水素、塩素;メタンなどの炭化水素ガス;二酸化炭素などの炭素酸化物;二酸化窒素などの窒素酸化物;二酸化硫黄などの硫黄酸化物;アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの希ガス;などを挙げることができ、これら単独からなる気体、あるいはこれらの混合気体(例えば、大気)であることができ、製造環境の点から大気であるのが好ましい。
なお、気体の作用によって混在繊維ウエブ層構成繊維同士を摩擦帯電させる方法は特に限定するものではないが、例えば、ノズル等の気体噴出口から気体を、洗浄積層不織布に向けて噴出することによって摩擦帯電させることができる。このように気体を噴出する場合、洗浄積層不織布において、混在繊維ウエブ層が表面に露出している場合には、摩擦帯電しやすいように、混在繊維ウエブ層面に対して、気体を噴出するのが好ましい。なお、混在繊維ウエブ層が表面に露出している洗浄積層不織布であっても、両表面層に対して、気体を噴出するのが好ましい。一方、両表面層が融着不織布層からなる三層構造の洗浄積層不織布の場合には、摩擦帯電しやすいように、両表面層面に対して、気体を噴出するのが好ましい。なお、混在繊維ウエブ層構成繊維が融着不織布層に進入し、絡合している場合には、摩擦帯電しやすいように、混在繊維ウエブ層構成繊維が進入した融着不織布層面に対して、気体を噴出するのが好ましい。
なお、ノズル等の気体噴出口は1つである必要はなく、2つ以上であることができ、洗浄積層不織布の幅に相当するだけの数の気体噴出口から気体を噴出すると、全体的に均一に帯電した摩擦帯電不織布層とすることができるため、好適である。
この噴出される気体は、混在繊維ウエブ層構成繊維が摩擦帯電しやすいように、ある程度の流量であるのが好ましい。より具体的には、1つの気体噴出口(例えば、ノズル)あたり、80NL/min.以上であるのが好ましく、100NL/min.以上であるのがより好ましく、120NL/min.以上であるのが更に好ましく、130NL/min.以上であるのが更に好ましく、140NL/min.以上であるのが更に好ましい。
なお、気体の噴出は連続的であっても良いが、断続的であると、混在繊維ウエブ層構成繊維を叩く感じとなり、より摩擦帯電しやすいため好適である。例えば、5回/秒以上の間隔で断続的に気体を噴出するのが好ましく、10回/秒以上の間隔であるのがより好ましく、15回/秒以上の間隔であるのが更に好ましく、18回/秒以上の間隔であるのが更に好ましい。
また、気体の作用時間は混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電できる時間であれば良く、特に限定するものではないが、0.5秒以上であるのが好ましく、1秒以上であるのがより好ましく、1.5秒以上であるのが更に好ましい。
更に、気体の温度も特に限定するものではないが、気体の熱によって帯電量に影響を与えないように、また、製造上のエネルギーの観点から、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましく、40℃以下であるのが更に好ましい。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
(芯鞘型融着繊維A)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維A(繊度:17dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:20、HUVIS社製、商品名:LMF)を用意した。
(芯鞘型融着繊維B)
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、共重合ポリエステル(融点:110℃)を鞘成分とする芯鞘型融着繊維B(繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:20、HUVIS社製、商品名:LMF)を用意した。
(アクリル系繊維)
アクリル系繊維として、有機溶媒に溶解させた紡糸液を湿式紡糸したポリアクリロニトリル系アクリル繊維[ボンネル(登録商標)H815、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:18、三菱レイヨン製、密度:1.15g/cm3]を用意した。
(ポリプロピレン系繊維)
ポリプロピレン系繊維として、ウベニットウPP−NM(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、限界酸素指数:18、宇部日東化成株式会社製、密度:0.89g/cm3)を用意した。
(実施例1)
(1)芯鞘型融着繊維A80mass%と芯鞘型融着繊維B20mass%とを混綿し、カード機により開繊して、融着用繊維ウエブA(目付:50g/m2)を形成した。また、融着用繊維ウエブAと全く同様にして、融着用繊維ウエブB(目付:50g/m2)を形成した。
また、アクリル系繊維60mass%とポリプロピレン系繊維40mass%とを混綿し(アクリル系繊維本数:ポリプロピレン系繊維本数=1.5:1)、カード機により開繊して、混在繊維ウエブ(目付:50g/m2)を形成した。
その後、前記融着用繊維ウエブA、Bを混在繊維ウエブの両面に積層し、融着用繊維ウエブA層/混在繊維ウエブ層/融着用繊維ウエブB層の三層積層繊維ウエブを形成した。
次いで、前記三層積層繊維ウエブの融着用繊維ウエブA層側から、針密度40本/cm2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブ層を構成するアクリル系繊維とポリプロピレン系繊維の一部を融着用繊維ウエブB層へ進入させるとともに絡合させ、一体化積層繊維ウエブを形成した。
(2)前記一体化積層繊維ウエブを温度150℃に設定した熱風ドライヤで熱処理し、融着用繊維ウエブ層A、Bを構成する芯鞘型融着繊維A及びBの鞘成分のみを融着させ、融着不織布A層/混在繊維ウエブ層/融着不織布B層の三層構造を有する融着積層不織布を形成した。
(3)前記融着積層不織布を温度70℃の温水で6秒洗浄した後、自然乾燥して、油剤を取り除いた洗浄積層不織布を形成した。
(4)前記洗浄積層不織布に対して、20本のノズルを用い、融着不織布A層面に対して、室温の空気を、1本のノズルあたり150NL/min.の流量、20回/秒の間隔で断続的に、1.7秒間噴出した後、20本のノズルを用い、融着不織布B層面に対して、室温の空気を、1本のノズルあたり150NL/min.の流量、20回/秒の間隔で断続的に、1.7秒間噴出することによって、混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電させ、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして形成した、融着不織布A層/混在繊維ウエブ層/融着不織布B層の三層構造を有する融着積層不織布に対して、洗浄することなく、融着不織布A層側から針密度80本/cm2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電させ、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(比較例2)
実施例1と同様にして、融着用繊維ウエブA(目付:50g/m2)及び融着用繊維ウエブB(目付:50g/m2)を形成した。
また、温度70℃の温水で6秒洗浄した後、自然乾燥して、油剤を取り除いたアクリル系繊維60mass%と、同様に洗浄したポリプロピレン系繊維40mass%とを混綿し(アクリル系繊維本数:ポリプロピレン系繊維本数=1.5:1)、カード機により開繊して、摩擦帯電した混在繊維ウエブ(目付:50g/m2)を形成した。
その後、前記融着用繊維ウエブA、Bを混在繊維ウエブの両面に積層し、融着用繊維ウエブA層/混在繊維ウエブ層/融着用繊維ウエブB層の三層積層繊維ウエブを形成した。
次いで、前記三層積層繊維ウエブの融着用繊維ウエブA層側から、針密度40本/cm2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブ層を構成するアクリル系繊維とポリプロピレン系繊維の一部を融着用繊維ウエブB層へ進入させるとともに絡合及び帯電させ、融着用繊維ウエブA層/摩擦帯電不織布層/融着用繊維ウエブB層の三層からなる一体化積層繊維ウエブを形成した。
そして、前記一体化積層繊維ウエブを温度150℃に設定した熱風ドライヤで熱処理し、融着用繊維ウエブ層A、Bを構成する芯鞘型融着繊維A及びBの鞘成分のみを融着させ、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(実施例2)
融着用繊維ウエブA、Bの目付を40g/m2とし、混在繊維ウエブの目付を30g/m2としたこと以外は実施例1と同様にして、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:110g/m2、厚さ:2.5mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(実施例3)
融着用繊維ウエブA、Bの目付を20g/m2とし、混在繊維ウエブの目付を50g/m2としたこと以外は実施例1と同様にして、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:90g/m2、厚さ:2.2mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(実施例4)
芯鞘型融着繊維A60mass%と芯鞘型融着繊維B15mass%、アクリル系繊維15mass%、及びポリプロピレン繊維10mass%とを混綿し、カード機により開繊して、融着用繊維ウエブA(目付:50g/m2)を形成した。また、融着用繊維ウエブAと全く同様にして、融着用繊維ウエブB(目付:50g/m2)を形成した。
この融着用繊維ウエブA、Bを使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層/融着不織布B層の三層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布B層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(実施例5)
(1)芯鞘型融着繊維A(嵩高用融着繊維)80mass%と芯鞘型融着繊維B(嵩高用融着繊維)20mass%とを混綿し、カード機により開繊して、融着用繊維ウエブA(目付:100g/m2)を形成した。
また、アクリル系繊維60mass%とポリプロピレン系繊維40mass%とを混綿し(アクリル系繊維本数:ポリプロピレン系繊維本数=1.5:1)、カード機により開繊して、混在繊維ウエブ(目付:50g/m2)を形成した。
その後、前記融着用繊維ウエブAを混在繊維ウエブの片面に積層し、融着用繊維ウエブA層/混在繊維ウエブ層の二層積層繊維ウエブを形成した。
次いで、前記二層積層繊維ウエブの混在繊維ウエブ層側から、針密度40本/cm2でニードルを作用させることにより、混在繊維ウエブ層を構成するアクリル系繊維とポリプロピレン系繊維の一部を融着用繊維ウエブA層へ進入させるとともに絡合し、一体化積層繊維ウエブを形成した。
(2)前記一体化積層繊維ウエブを温度150℃に設定した熱風ドライヤで熱処理し、融着用繊維ウエブA層を構成する芯鞘型融着繊維A及びBの鞘成分のみを融着させ、融着不織布A層/混在繊維ウエブ層の二層構造を有する融着積層不織布を形成した。
(3)前記融着積層不織布を温度70℃の温水で6秒洗浄した後、自然乾燥して、油剤を取り除いた洗浄積層不織布を形成した。
(4)前記洗浄積層不織布の融着不織布A層面に対して、20本のノズルを用い、室温の空気を、1本のノズルあたり150NL/min.の流量、20回/秒の間隔で断続的に、1.7秒間噴出することによって、混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電させ、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層の二層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布A層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(実施例6)
洗浄積層不織布の混在繊維ウエブ層面に対して、20本のノズルを用い、室温の空気を、1本のノズルあたり150NL/min.の流量、20回/秒の間隔で断続的に、1.7秒間噴出することによって、混在繊維ウエブ層構成繊維を摩擦帯電させたこと以外は、実施例5と全く同様にして、融着不織布A層/摩擦帯電不織布層の二層構造を有する濾過材(目付:150g/m2、厚さ:3mm、摩擦帯電不織布層構成繊維は融着不織布A層に進入)を製造した。この濾過材の物性は表1に示す通りであった。
(濾過材の評価)
(1)捕集効率、初期圧力損失及び100γ値の測定;
平板状の濾過材を、融着不織布A層を上流側として、有効間口面積0.04m2のホルダーにセットした後、粒径0.3〜0.5μmの大気塵(大気塵数:B)を濾過材の上流側に供給し、面風速10cm/sec.で空気を通過させた場合における、下流側における大気塵数(A)をパーティクルカウンタ(RION社製:形式KC−01C)で測定し、次式により捕集効率(=E、単位:%)を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
E=(1−A/B)×100
また、前記捕集効率の測定試験開始前、面風速10cm/sec.での初期圧力損失△P(単位:Pa)を測定した。この結果も表1に示す通りであった。
更に、前記捕集効率(E)と初期圧力損失ΔPとから、次式(但し「ln」は自然対数)に基いて100γ値を算出した。この結果も表1に示す通りであった。
100γ=[{−ln(1−E/100)}/ΔP]×100
(2)剛性の測定;
JIS L 1913:2010の6.7.4に規定するガーレ法によって、剛性を測定した。なお、試験片は30mm×40mmの大きさの長方形とし、30mmの辺をチャックに固定して測定した。なお、三層からなる濾過材の場合には、融着不織布A層側が振り子Bと当接するように、30mmの辺をチャックに固定し、二層からなる濾過材の場合には、摩擦帯電不織布層側が振り子Bと当接するように、30mmの辺をチャックに固定して測定した。これらの結果は表1に示す通りであった。
(3)毛羽立ちの評価;
JIS L 0849:2013の9.2[摩擦試験機II形(学振形)法]の乾燥試験に則り、試験片の中央部100mm間を、毎分30回の往復速度で、10回摩擦した。その後、目視により、次の基準にしたがって、毛羽立ちの程度を評価した。なお、三層からなる濾過材の場合には、融着不織A層側の毛羽立ちの程度を評価し、二層からなる濾過材の場合には、摩擦帯電不織布層側の毛羽立ちの程度を評価した。この結果は表1に示す通りであった。
(評価基準)
○:毛羽立った繊維がほとんど発生しておらず、毛羽立った繊維の絡んだ毛玉も発生していない。
△:引張ると脱離する毛羽立った繊維が発生しており、毛羽立った繊維の絡んだ毛玉が少し発生している。
×:引張ると容易に脱離する毛羽立った繊維が発生しており、毛羽立った繊維の絡んだ毛玉が多く発生している。
(4)難燃性の評価;
JACA No.11A−2003「空気清浄装置用ろ材の燃焼性試験難燃性試験」に規定する方法によって、5つの試験片について評価を行い、次の基準により難燃性を評価した。なお、試験片は150mm×50mmの長方形とし、融着不織布A層側に火があたるように設置して測定した。この結果は表1に示す通りであった。
○:着炎し、燃焼距離が25mmを超える試験片が0〜1片である。
△:着炎し、燃焼距離が25mmを超える試験片が2〜3片である。
×:着炎し、燃焼距離が25mmを超える試験片が4〜5片である。
以上の結果から、次のことが分かった。
(1)実施例1と比較例1との比較から、融着繊維の融着部が損傷していないと、剛性がより優れている。
(2)実施例1と比較例2との比較から、摩擦帯電後に熱処理をすることなく製造した濾過材は、捕集効率及び100γ値が高く、濾過性能に優れている。
(3)実施例1と実施例2との比較から、摩擦帯電に関与する繊維(実施例1、2の場合には、ポリプロピレン系繊維とアクリル系繊維)の総量が多い方が、より捕集効率が高い。また、融着不織布層の目付が高い方が、より剛性が高い。
(4)実施例1と実施例3との比較から、融着不織布層が限界酸素指数20以上の繊維を含み、摩擦帯電不織布層の目付の0.5倍以上の目付であると、難燃性に優れている。
(5)実施例1と実施例4との比較から、融着不織布層の構成繊維として、繊度15dtex以上の繊維を含んでいると、初期圧力損失が低く、100γ値が高い。また、限界酸素指数20以上の繊維量が多い方が難燃性に優れている。
(6)実施例1と実施例5との比較から、融着不織布層の総目付が同じであっても、両表面層が融着不織布層である方が、剛性が高い。また、両表面層が限界酸素指数20以上の繊維を含む融着不織布層である方が難燃性に優れている。
(7)実施例5と実施例6との比較から、二層構造の濾過材である場合、混在繊維ウエブ層側から気体を作用させた方が、捕集効率及び100γ値が高い。また、融着不織布層側から気体を作用させた方が、毛羽立ちがない。