以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[実施形態1]
(塗布装置)
本発明の実施形態に係る塗布装置について説明する。
図1は塗布装置の全体構成を示す概略図である。また、図2は塗布装置の塗布部の細部を示す概略図である。
この塗布装置は、様々な機能性フィルムを製造するための装置である。
塗布装置100は、図1に示すように、塗布液を貯めておく貯留部201および202と、貯留部201および202から供給される塗布液を基材20上に同時重層塗布するダイコーター120(塗布部)と、貯留部201および202からの塗布液をダイコーター120へ配給する塗布液供給系150と、基材20を搬送する搬送系110とを有する。
貯留部201および202は、塗布液をダイコーター120へ安定供給するために一時的に貯めておくための設備である。塗布液は様々な成分が混合されている。それら成分の混合、調製は別の場所(装置)で行われている。塗布液に使用する材料などの詳細は後述するが、その粘度は、10〜400mPa・s程度である。このような粘度範囲の塗布液とすることで、複数の層が混ざり合うことなく一度に塗布することができる。すなわち同時重層塗布を行うことができるのである。
この貯留部201および202では、成分調製が完了した塗布液を貯めておくことで、ダイコーター120へ安定供給できるようにしている。この貯留部201および202の詳細は後述する。
ダイコーター120は、スライド型であり、機能性フィルムの各層に対応する塗布層を同時重層塗布する。このためにダイコーター120は、長方形状のバー130が順に重ねられた積層体122を有する。
バー130は、フロントバー132、複数の中間バー134およびバックバー136から構成される。フロントバー132は、積層体122の最下層を占めているバー130であり、基材20の近傍に位置決めされる。バックバー136は、積層体122の最上層を占めているバー130である。中間バー134は、フロントバー132とバックバー136との間に位置する中間層を占めているバー130である。なお、塗布幅方向は、搬送方向(図中矢印F)と直交している。
バー130は、図2に示されるように、基端部140、ポケット部143および先端部146を有する。
基端部140は、塗布液供給系150と連通している貫通孔142を有する。貫通孔142は、基端部140の塗布幅方向中央に位置し、基端部140の端面からポケット部143に向かって延長している。
基端部140の厚みt1は、先端部146の厚みt2より大きく設定されている。したがって、バー130が積層されると、基端部140は、隣接する別のバー130の基端部140と当接する。一方、先端部146と隣接する別のバー130の先端部146との間には、厚みt1−t2となるスリット(隙間)148が形成される。
スリット148は、塗布液が通過する通路として機能する。塗布液は、このスリット148の先端から吐出され、先端部146の端面147を流下する。したがって、端面147は、塗布液が流下するスライド面として機能する。スリット148の設置数は、機能性フィルムの層数に一致しており、機能性フィルムの層数に応じて、中間バー134の数が調整されることになる。
ポケット部143は、バー130の塗布幅方向に延長して形成される凹部144を有する。凹部144は、スリット148および貫通孔142に連通している塗布液溜まり部である。ポケット部143は、塗布液を塗布幅方向に均等に広げて、スリット148に安定的に供給するために使用される。
塗布液供給系150は、ダイコーター120(積層体122のバー130)の貫通孔142に連通している配管系152、154を有する。配管系152は、送液装置156を介し、貯留部201に接続されている。配管系154は、送液装置158を介し、貯留部202に接続されている。
配管系152および154は、その経路中に、たとえば濾過装置、流量計等を適宜配置することも可能である(いずれも不図示)。濾過装置は、塗布液に混入した異物や塗布液成分の凝集体等を除去するために使用される。流量計は、配管系を通過する塗布液の流量を計測するために使用される。流量計は、たとえば、フラップ式、熱線式、カルマン渦式、負圧感知方式を適用することが可能である。流量計に加えて、あるいは流量計の替わりに、塗布液の圧力を計測する圧力計を配置することも可能である。
塗布液が水系の場合は、経路中にさらに分散装置を配置することが好ましい。分散装置は、塗布液に分散処理(せん断処理を含む)を施すことにより、水溶性高分子の分子間および分子内の末端基による結合(ファンデルワールス結合等)を切断し、分子どうしの絡み合いを解消し、塗布液の物性を調整するために使用される。分散装置は、たとえば、マイルダー分散機、圧力式ホモジナイザー、高速回転せん断型ホモジナイザーである。
塗布液は、ポケット部143の凹部144において塗布幅方向に均等に広げられて、スリット148に導入される。スリット148を通過した塗布液は、図2に示されるように、バー130の先端部146の端面147を流下し、下方に位置する別のバー130の先端部146の端面147を流下する塗布液と順次重なる。そして、流下する塗布液は、フロントバー132のスリット148を通過した塗布液と重なった時点において、機能性フィルムの層数に一致する層から構成されることになる。
そして、塗布液は、最下層のバー130であるフロントバー132から離間し、基材20に流下し、同時重層塗布されて塗膜40を形成する。
必要に応じ、同時重層塗布の直後に、塗布液の粘性を高める(増粘させる)増粘工程を配置し、層間混合を抑制することも可能である。塗布後塗布液の増粘は、冷却、液体窒素による瞬間凍結乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が適用される。たとえば、スライド面を流れる塗布液に対し冷却風を吹きつけることによって塗布液を冷却したり、冷却されたバックロール112と基材20とが接触することによって、基材20上の塗布液を間接的に冷却したり、スライド面を流れる塗布液に対し熱風を吹きつけあるいは赤外線ヒータにより加熱することによって塗布液を乾燥したり、バックロール112の直後に加熱/減圧乾燥ゾーンを設けることにより、塗布液を乾燥したりすることによって、塗布液の粘性を高める(増粘させる)ことが可能である。
搬送系110は、バックロール112を有する。バックロール112は、基材20の内側に配置され、回転駆動されることによって、基材20を搬送するように構成されている。搬送速度は、たとえば、1〜500m/minである。なお、矢印Fは、基材20の搬送方向を示している。また、バックロール112の近傍には、基材20を吸引し、その形状の歪みを矯正する減圧機構を配置してもよい。これによりダイコーター120と基材20との間のクリアランス精度を向上させることができる。
搬送系110の下流には、図示しない乾燥装置が設けられている。塗布液および基材20は、塗布時に昇温されているため、基材20に塗布された塗布液は、一旦1〜15℃に冷却され、その後、10℃以上(たとえば、湿球温度5〜50℃かつ塗布面温度10〜50℃)で乾燥される。この乾燥装置によって塗膜40を乾燥させることで、基材20上に被覆層30が形成された機能性フィルムが出来上がる。
次に、貯留部201および202について説明する。
図3は実施形態1の貯留部201の構成を説明するための概略正面図である。図4は実施形態1の貯留部201の構成を説明するための概略上面図(上から見た図)である。
ここでは貯留部201を例に説明する。本実施形態では貯留部202も貯留部201と全く同じ構成としている。なお、貯留部201と202とを別々の構成としてもよいが、通常は同じ構成とすることで装置構成が複雑化せずメンテナンス作業が容易になる。
この貯留部201は、図3および4に示すように、塗布液300を貯留するための容器210と、容器210内に配置されている回転翼211と、容器210内に塗布液300を供給する第1配管212と、第1配管212から吐出された塗布液300を受けて容器210内に出する第2配管213とを有する。また、配管系152に接続された取液管214が容器210内に入っている。取液管214の液取り入れ口は容器210内の底に近い位置に設けられており、液面が低下しても空気を取り込んでしまわないようにしている。
容器210は底がなだらかな断面円弧となって円筒形状である。このような形状は、回転翼211によって内部の塗布液300を流動させやすくするため好ましいものである。容器210の容量(貯留量)は、少なくとも外部から塗布液300が供給されない間、ダイコーター120が所望する長さだけ連続塗布できる量を貯めておけることが望ましい。このため容器210の容量は、製造する機能性フィルムにおける塗布液300の塗布量、連続塗布時間、塗布液300の供給時間間隔などの要因によって様々であり、適宜設定すればよい。たとえば、光学反射フィルムの製造においては、容器210の大きさが直径500mm×高さ約300mmの円筒形で、容量約60リットル程度のものが使用されている。
回転翼211は、容器210内の塗布液300を撹拌する。回転翼211は、塗布液300を撹拌することで、塗布液300の粘度上昇を抑える働きがある。回転翼211はモーター215に接続されている。モーター215には必要に応じてギアやベルトなど(いずれも不図示)が取り付けられていてもよい。回転翼211はモーター215によって一定方向に回転する。モーター215は制御装置216(制御部)によって回転速度(単位時間当たりの回転数)が制御されている。また、本実施形態では、制御装置216は第1配管212からの塗布液300の供給量も制御している。
第1配管212は、外部から供給される塗布液300を容器210内に吐出する。第1配管212の出口212aは容器210内に設けられている。
第2配管213は、第1配管212の出口212aを覆う開口部213aを有する。第2配管213は第1配管212の出口212aから吐出された塗布液300を開口部213aから受け入れて上方に出す。このため第2配管213の出口213bは、上を向いて開口している。また、図4に示すように、第2配管213の開口部213aは、回転翼211によって流動している塗布液300を受け入れる方向を向いている(図4中の容器210内の複数の矢印が流動方向である)。
ここで、第1配管212と第2配管213の接続部分の詳細を説明する。
図5は正面(図3と同じ方向)から見た第1配管212と第2配管213の接続部分を示す概略図である。図6は図3における矢印A方向から見た第1配管212と第2配管213の接続部分を示す概略図である。
図5に示すように、第2配管213の開口部213aは、第1配管212の出口212aと同じ位置、または第1配管212の出口212aよりも上流側に位置する(上流側とは第1配管内を流れてくる塗布液の流れの方向の上流側であり、図5中の矢印Cが上流方向を示している)。ただし第2配管213の開口部213aは、既に説明したように、回転翼211によって流動している塗布液300を受け入れる方向を向いている。したがって第2配管213の開口部213aの位置は、第1配管212の出口212aより上流側と言っても流動している塗布液300が入り込む方向を向いた位置ということになる。本実施形態1においては、第1配管212が水平方向となっている部分に第2配管213の開口部213aが位置することになる。これにより第1配管212の出口212aが第2配管213によって覆われることになる。
第2配管213の出口213bは上を向いている。これは基本的に塗布液300中に気泡が混入している場合に、その気泡が浮力によって上昇し上に抜けるようにしているためである。
図6に示すように、第2配管213の開口部内径D2は、第1配管212の出口外径D1より大きい。このため第1配管212の外壁と第2配管213の内壁の間に隙間217ができる。図6では、第2配管213の開口部内径D2は第1配管の出口外径D1の3倍となっている。したがって、隙間217の大きさはD2−D1となる。本実施形態1では、この隙間217は第1配管の出口全周にわたり開いている。この隙間217から流動している塗布液300が第2配管213に入ることになる。第2配管213の開口部内径D2は、第1配管の出口外径D1の1.1〜3倍程度であることが好ましい。このような関係とすることで、第1配管212から出てきた塗布液300を確実に第2配管213内に流れ込ませることができるとともに、流動している塗布液300も第2配管213内に流れ込ませることができる。
各配管の具体例としては、たとえば、上記した光学反射フィルムを製造する際に用いる容器210の容量であれば、第1配管212は外径(直径)20〜60mm(管肉厚2〜5mm程度)で、管全長に渡り同じ外径のものが使用される。このため第1配管の出口外径D1も外径(直径)20〜60mm程度である。したがって、第2配管213は内径(直径)22mm〜180mm程度のものを使用することが好ましいものとなる。第2配管213も管全長に渡り同じ内径のものが使用される。このため第2配管213の開口部内径D2も22mm〜180mm程度となる。このような太さとすることで、光学反射フィルムを製造する際の塗布液300においても、第1配管212から第2配管213内に流れ込ませることができるとともに流動している塗布液300も第2配管213へ流れ込ませることができる。なお、このような各配管の太さはあくまでも、一例であり、本発明がこのような配管の太さに限定されるものではない。
第2配管213の開口部213aは、回転翼211の下端211aよりも上に位置するように設けることが好ましい。回転翼211は、本実施形態1では水平に回転するように配置されている(モーターの回転軸が垂直)。しかも、塗布液量が減った時でも極力塗布液を流動させ続けるために、回転翼211は容器210の底に近い位置に設けられている。このため回転翼211が回転すると、回転翼211よりも上の方で流動する部分が多くなる。このため、第2配管213の開口部213aを回転翼211の最下部よりも上に位置するようにすることで、確実に流動している塗布液300を第2配管213内に流れ込ませることができる。
このように構成された貯留部201は、第1配管212の出口212aから吐出された塗布液300が第2配管213に入る。したがって、第1配管212から供給された塗布液300中に気泡が混入していた場合は、第2配管213が気泡ごと塗布液300を取り込む。このため回転翼211で撹拌されている塗布液300内でも、第1配管212から塗布液300を吐出させたときに気泡が容器210内で拡散してしまうことがない。
そして第2配管213の開口部213aからは、さらに流動している塗布液300が流れ込んでいる。第1配管212の出口212aから吐出された塗布液300の速度(「第1配管出口速度」という)より、回転翼211によって流動している塗布液300の速度(「流動速度」という)が速いことが好ましい。すなわち、第1配管出口速度≦流動速度である。これにより第1配管212から第2配管213に入った塗布液300は、流動している塗布液300によって加速されて上方に押し出されて行くことになる。このとき、第1配管212から供給された塗布液300中に気泡が混入していた場合、そのような気泡も第2配管213内で加速されて、より速く上方へ抜けて行くのである。
第1配管出口速度と流動速度の具体例を説明する。たとえば機能性フィルムとして光学反射フィルムを製造する場合、貯留部201へ供給する塗布液300の量から、第1配管出口速度は、約75〜400mm/secである。一方、回転翼211による流動速度は、第1配管出口速度の1.1〜3倍程度とすることが好ましい。このため回転翼211による流動速度が100%のまま第2配管の隙間217に入り込むことを想定し、かつ回転翼211による吐出流(吐出流量460/min)を貯留部201(φ500mm)全面の流れとして見た場合、最小となる流動速度は約40mm/sec、最大となる流動速度は約1200mm/secということになる。
第1配管出口速度の調整は塗布液300の供給量によって制御可能である。また流動速度は回転翼211の回転速度によって制御可能である。このため制御装置216は、第1配管出口速度≦流動速度となるように、第1配管212からの塗布液300の供給量と、回転翼211の回転速度の両方、またはいずれか一方を制御する。たとえば、容器210内の塗布液量が少なく供給量を上げる場合は、第1配管出口速度も上がってしまうので、回転翼211の回転速度も上げる。ただし、回転翼211の回転速度には限界がある。このため回転翼211の回転速度の限界値に近づいてしまう場合は、制御装置216は塗布液300の供給量を下げる。逆に供給量が少ない場合はそれに合わせて回転翼211の回転速度を下げてもよい。
なお、第1配管212からの塗布液300の供給量と回転翼211の回転速度は、いずれか一方だけを制御装置216で制御するようにしてもよい。たとえば第1配管212からの塗布液300の供給量を一定として、制御装置216は回転翼211の回転速度のみ制御するようにしてもよい。逆に回転翼211の回転速度を一定として、制御装置216は第1配管212からの塗布液300の供給量のみを制御するようにしてもよい。これらの場合も、もちろん第1配管出口速度≦流動速度となるように、いずれか一方を制御装置216によって制御する。さらには、第1配管出口速度≦流動速度となるように、塗布液供給量および回転速度を常に一定としておいてもよい。
このような本実施形態1の貯留部201を従来技術(特許文献1)と比較する。従来技術では塗布液300を供給する配管を屈曲させて上に向けて塗布液300を出すようにしている。したがって、従来技術では塗布液300中に気泡が混入していた場合、気泡に加わる速度は配管出口速度のみということになる。
一方、実施形態1では、第2配管213の開口部213aで、第1配管212から供給された塗布液300を受け入れるとともに、流動している塗布液300も受け入れている。このため第2配管213に入った塗布液300は流動している塗布液300に押されて加速されることになる。このため塗布液300中に気泡がある場合、その気泡は従来技術よりも速く押し上げられることになる。
また、実施形態1では、従来技術のように第1配管212をU字状に曲げて上を向かせる必要がない。このため実施形態1では、第1配管212の出口212aを取液管214の液取り入れ口と同程度の高さに配置することができる。通常、塗布装置100による塗布動作中は容器210内の塗布液量が取液管214の液取り入れ口よりも下回らないように制御している。したがって、第1配管212からの塗布液300の供給を停止した状態で、仮に第1配管212内が負圧となったとしても、第1配管212の出口212aから空気を吸い込んでしまうことを極力少なくすることができる。なお、容器210内の塗布液量が少なくなった場合に第2配管213の出口213bが空気中に出ることがある。このような場合でも第1配管212と第2配管213の接続部は塗布液300中にある。このような場合に、仮に第1配管212内が負圧になったとしても、塗布液300中に開口部213aがあるため、第1配管212内の負圧が第2配管213内まで伝わってしまうことはない。したがって、第2配管213の出口213bが空気中に出たとしても、そこから第1配管212にまで空気を吸い込んでしまうことはない。
本実施形態1によれば以下の効果を奏する。
このように本実施形態1によれば、第1配管212の出口を第2配管213で覆うことで、第1配管212からの気泡の拡散を抑えることができる。また、貯留部201は、第1配管212から塗布液300を供給した際に、仮に気泡が混入していたとしても、そのような気泡はいち早く抜くことができる。したがって、本実施形態1の塗布装置100を用いて製造した機能性フィルムにおいては、気泡混入に起因した外観の低下を抑えることができる。
[実施形態2]
実施形態2は貯留部201の構成が実施形態1と異なる。したがって、貯留部201以外の構成は実施形態1と同じであるので、それらの説明は省略する。また実施形態1で説明したものと同じ部材については同じ符号を付しそれらの説明は省略する。
図7は実施形態2の構成を説明するための概略正面図である。図8は実施形態2の構成を説明するための概略上面図(上から見た図)である。また、図9は図7における矢印A方向から見た第1配管212と第2配管223の接続部分を示す概略図である。
図7〜9に示すように、実施形態2においては、第2配管223が第1配管212の出口212aを覆うが、開口部223aの隙間227が第1配管全周ではなく一部に設けられている。この一部の隙間227を含む部分の開口部223aの内径D2は、実施形態1同様に、第1配管212の外径D1の1.1〜3倍程度とすることが好ましい。なお、第2配管223の開口部223aの位置、第1配管出口速度と流動速度の関係などは実施形態1と同じである。また、第2配管223の出口223bは実施形態1同様に上を向いている。
このように隙間227を第1配管212の周囲に沿った一部とすることでも、流動している塗布液300が隙間227により第2配管223に入ることになる。このため、実施形態1同様に、流動している塗布液300が第1配管212から吐出されて第2配管223に入った塗布液300を押すことになる。このとき第1配管212からきた塗布液300中に気泡が混入している場合は、その気泡をいち速く押し上げて抜くことができる。もちろん、第1配管212の出口212aは第2配管223によって覆われている。このため、第1配管212の出口212aから吐出された塗布液300は、第2配管223内に入るので、気泡が混入していても容器210内の塗布液300中に拡散されてしまうことがない。
なお、実施形態2では第1配管212と第2配管223の接続部においては、開口部223aの隙間227を除く部分(第1配管212と第2配管223がくっついている部分)は、同径であってもよい。そのような形状としても、実施形態1同様、第1配管212からの塗布液300の供給を停止した場合に、仮に第1配管212内が負圧になっても、空気が第1配管212内に入り込むのを抑えることができる。
本実施形態2によれば以下の効果を奏する。
本実施形態2の貯留部201は、実施形態1同様に、第1配管212から塗布液300を供給した際に、仮に気泡が混入していたとしても、そのような気泡はいち早く抜くことができる。このため、本実施形態2の塗布装置100を用いて製造した機能性フィルムにおいては、気泡混入に起因した外観の低下を抑えることができる。
また、この実施形態2では、第2配管223の開口部223aの隙間227を一部分としたので、第2配管223がコンパクトになり、貯留部201の容器210が小さい場合でも、容器210内部に第1配管212と第2配管223を設置しやすい。
[実施形態3]
実施形態3は貯留部201の構成が実施形態1と異なる。したがって、貯留部201以外の構成は実施形態1と同じであるので、それらの説明は省略する。また実施形態1で説明したものと同じ部材については同じ符号を付しそれらの説明は省略する。
図10は実施形態3の構成を説明するための概略正面図である。図11は図10中の矢印B方向から見た概略側面図である(ただし取液管214および配管系152は省略した)。
図10および11に示すように、実施形態3においては、回転翼231が垂直に回転するように配置されている(モーターの回転軸が水平となる)。ただし、塗布動作中に回転翼231が液面より上に出ることのない位置に設けられている。
このように回転翼231が垂直に回転する(図11中の矢印s1、s2)と、塗布液300は、回転翼231の一方の側s1は下から上へ、他方の側s2は上から下へ流動することになる。
そこで、実施形態3では、このような塗布液300の流動方向に合わせて、第1配管232および第2配管233を下から上へ流動するs1の側に設けている。
第1配管232は、U字状に屈曲しており、出口232aが上を向くように設けられている。第2配管233は、入り口となる開口部233aが第1配管232の出口232aを覆うように下を向き、出口233bが上を向くように設けられている。
このように実施形態3は、回転翼231の回転方向、すなわち、塗布液300が流動する方向に合わせて第2配管233の開口部233aを下に向けている。このため、開口部233aから流動している塗布液300が第2配管233に入ることになる。したがって、実施形態1同様に、流動している塗布液300が第1配管232から吐出されて第2配管233に入った塗布液300を押すことになる。このとき第1配管232からきた塗布液300中に気泡が混入している場合は、その気泡をいち速く押し上げ、抜くことができる。もちろん、第1配管232の出口232aは第2配管233によって覆われている。このため、第1配管の出口232aから吐出された塗布液300は、第2配管233内に入るので、気泡が混入していても容器210内の塗布液300中に拡散されてしまうことがない。
この実施形態3のように、第2配管233の開口部233aの向きを回転翼231によって流動している塗布液300の流動方向に合わせることで、塗布液300の様々な流動のさせ方に対応することができる。たとえば、回転翼231の配置が完全な水平(実施形態1または2)や垂直ではなく、そのほかの角度で傾いて設けられている場合にも対応することができる。つまり回転翼231の傾きに合わせて、第2配管233の開口部233aが流動する塗布液300を受け入れる方向となるように第2配管233を設置する。ただし、回転翼231の回転方向と第2配管233の開口部233aの向きを完全に一致させる必要はなく、開口部233aの隙間が、流動する塗布液300を受け入れる方向を向いていればよい。
本実施形態3によれば以下の効果を奏する。
本実施形態3の貯留部201は、実施形態1同様に、第1配管232から塗布液300を供給した際に、仮に気泡が混入していたとしても、そのような気泡はいち早く抜くことができる。このため、本実施形態3の塗布装置100を用いて製造した機能性フィルムにおいては、気泡混入に起因した外観の低下を抑えることができる。
また、この実施形態3では、第2配管233の開口部233aの向きを回転翼231の回転方向に合わせることにしたので、容器210内で流動させる塗布液300の向きに対応することができる。特に、第1配管232がU字状で出口が上を向いている場合は、それに直管形状の第2配管233をかぶせるだけで、気泡の拡散防止効果や、いち速く気泡を抜く効果を得られる。
[機能性フィルム]
次に、上記各実施形態の塗布装置100を用いた機能性フィルムの製造方法について説明する。
上記塗布装置100を用いて製造される機能性フィルムは、たとえば、光学反射フィルムである。図12は上記塗布装置100を用いて製造された光学反射フィルムの構造を示す断面図である。
この光学反射フィルム10は、基材20上に被覆層30が塗布されている。被覆層30は重層塗布膜であり、高屈折率層32および低屈折率層34が交互に重層塗布されたものである。この被覆層30は、上述した塗布装置100によって基材20上に塗布された塗膜40である。
その製造方法は、搬送系110によって搬送(移動)している基材20上に、あらかじめ決められた被覆層30の積層数となるようにバー130が積層されたダイコーター120から複数の塗布液300を塗布する。
被覆層30の積層数は、生産性の観点から、好ましくは200層以下であり、より好ましくは100層以下であり、さらに好ましくは50層以下である。1層あたりの厚さは、1〜1000nmである。なお、「高屈折率層」および「低屈折率層」は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方および低い方をそれぞれ意味する。
本実施形態では、被覆層30における基材20に隣接する最下層および外部に露出している最上層は、低屈折率層34から構成される。最下層と最上層との間に位置する中間層においては、高屈折率層32と低屈折率層34とが交互に配置されている。
基材20は、被覆層30が配置される帯状支持体である。基材20の厚さは、たとえば、5〜500μmである。
基材20に適用される材料は、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルイミド等である。
光学反射フィルム10の被覆層30を形成するための塗布液300は、従来公知の材料を用いることができる。たとえば、金属酸化物材料、水溶性高分子、その他の添加剤およびこれらの組み合わせ等などが挙げられる。より具体的にはたとえば、高屈折率材料としてTiO2、ZrO2、Ta2O5等が挙げられ、低屈折率材料としてSiO2、MgF2等が挙げられる。
光学反射フィルム10においては、基材20上に被覆層30として、第1の水溶性高分子および第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層32、ならびに第2の水溶性高分子および第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層34が交互に積層されてなる。
かかる形態では、たとえば、国際公開第2013/054912号、特開2013−148849号公報、特開2013−142089号などに記載されるのと同様の材料などが使用される。
具体的には、たとえば第1の水溶性高分子および第2の水溶性高分子は、有機溶剤を用いない水系塗布が可能である。このため環境負荷が少ない。また、柔軟性が高いため、屈曲時の膜の耐久性が向上する。水溶性高分子としては、たとえば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、もしくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、もしくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩などの合成水溶性高分子;ゼラチン、増粘多糖類などの天然水溶性高分子などが挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、製造時のハンドリングと膜の柔軟性の点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類およびそれを含有する共重合体、ゼラチン、増粘多糖類(特にセルロース類)が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。ポリビニルアルコールの具体的例示としては、国際公開第2013−054912号の[0075]〜[0079]の記載のものが挙げられる。
また、ポリビニルアルコールを硬化させるための硬化剤を使用してもよい。適用可能な硬化剤としては、たとえば、ホウ酸およびその塩が好ましい。その他の硬化剤の具体例としては、国際公開第2013−054912号の[0091]〜[0096]に記載のものが挙げられる。
たとえば、被覆層30としては、高屈折率層32および低屈折率層34のいずれもが金属酸化物粒子を含むものとすることができる。すなわち、高屈折率層32は第1の水溶性高分子に加えて第1の金属酸化物粒子を含み、低屈折率層34は第2の水溶性高分子に加えて第2の金属酸化物粒子を含む。ここで、第1および第2の金属酸化物粒子は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
金属酸化物粒子は、平均粒径が好ましい順に100nm以下、1〜50nm、4〜40nmであることが好ましい。ここで、平均粒径は、一次平均粒径を指す。金属酸化物粒子の平均粒径は、金属酸化物粒子が被覆処理されている場合(たとえば、シリカ付着酸化チタン等)、金属酸化物粒子の平均粒径とは母体(シリカ付着酸化チタンの場合は、処理前の酸化チタン)の平均粒径を指すものとする。
各屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、屈折率層の全質量に対して、20〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。
低屈折率層34においては、金属酸化物粒子として二酸化ケイ素(シリカ)を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
高屈折率層32に含有される金属酸化物としては、透明でより屈折率の高い高屈折率層32を形成するために、チタン、ジルコニア等の高屈折率金属酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子であることが好ましく、ルチル型(正方晶形)酸化チタン微粒子であることがより好ましい。
また、酸化チタン粒子としては、水系の酸化チタンゾルの表面を変性して分散状態を安定にしたものを用いてもよい。
酸化チタンゾルとしては、特開2008−266043号公報に記載の、酸化チタンゾル粒子を核とし、そのまわりにケイ素、スズおよびアンチモンの各水和酸化物よりなる複数の被覆層を有し、アンチモンの水和酸化物が最外側被覆層である透明酸化チタンゾルを用いてもよい。また、酸化チタンゾルとしては、国際公開2009/044879号に記載の、酸化チタン−酸化スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン複合コロイド粒子を核として、酸性酸化物のコロイド粒子により粒子表面が被覆された酸性酸化物被覆酸化チタン−酸化スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン複合コロイド粒子、ならびにこれらの複合コロイド粒子が分散されたゾルを用いてもよい。
また、高屈折率層32に含まれる金属酸化物粒子としては、公知の方法で製造されたコアシェル粒子を用いることもできる。水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、従来公知のいずれの方法も用いることができ、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
さらに、酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆してもよい。ここで、「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素の水和酸化物が付着されている状態を意味する。すなわち、金属酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよく、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。被覆された酸化チタン粒子の屈折率が含ケイ素の水和酸化物の被覆量により制御される観点から、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されることが好ましい。本明細書における「含ケイ素の水和酸化物」とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれでもよいが、シラノール基を有することが好ましい。特に、含ケイ素の水和酸化物としてはシリカの水和物が好ましく、シリカの水和物で被覆した酸化チタンを、以下、シリカ付着酸化チタンと称するシリカコート酸化チタン、シリカ変性酸化チタンともいう)。
含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子の酸化チタンはルチル型であってもアナターゼ型であってもよい。含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子は、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたルチル型の酸化チタン粒子がより好ましい。これは、ルチル型の酸化チタン粒子が、アナターゼ型の酸化チタン粒子より光触媒活性が低いため、高屈折率層32や隣接した低屈折率層34の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなるという理由からである。
含ケイ素の水和酸化物の被覆量は2〜30質量%、好ましくは3〜10質量%、より好ましくは4〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層32の所望の屈折率化が得られ、被覆量が2質量%以上であると粒子を安定に形成することができるからである。
酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆する方法としては、従来公知の方法により製造することができ、たとえば、特開平10−158015号公報(ルチル型酸化チタンへのSi/Al水和酸化物処理;チタン酸ケーキのアルカリ領域での解膠後酸化チタンの表面にケイ素および/またはアルミニウムの含水酸化物を析出させて表面処理する酸化チタンゾルの製造方法)、特開2000−204301号公報(ルチル型酸化チタンにSiとZrおよび/またはAlの酸化物との複合酸化物を被覆したゾル。水熱処理。)、特開2007−246351号公報(含水酸化チタンを解膠して得られる酸化チタンのヒドロゾルへ、安定剤として式R1 nSiX4−n(式中R1はC1−C8アルキル基、グリシジルオキシ置換C1−C8アルキル基またはC2−C8アルケニル基、Xはアルコキシ基、nは1または2である。)のオルガノアルコキシシランまたは酸化チタンに対して錯化作用を有する化合物を添加、アルカリ領域でケイ酸ナトリウムまたはシリカゾルの溶液へ添加・pH調整・熟成することにより、ケイ素の含水酸化物で被覆された酸化チタンヒドロゾルを製造する方法)等に記載された事項を参照にすることができる。
また、高屈折率層32および/または低屈折率層34は、さらに特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、および特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などを含んでもよい。
このような光学反射フィルム10は、幅広い分野に応用することができる。たとえば光学反射フィルム10が基体の少なくとも一方の面に設けられてなる光学反射体である。
光学反射体は、たとえば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備(基体)に光学反射フィルム10を貼り合せたものである。具体的には、たとえば熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。特に、光学反射フィルムが直接または接着剤を介して、ガラスまたはガラス代替樹脂等の基体に貼合されている部材には好適である。
基体の具体的な例としては、たとえば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
光学反射フィルム10と基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、光学反射フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、光学反射フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。さらに光学反射フィルムは、屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系およびエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合熱可塑性樹脂を使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、ポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等である。なお、粘着層や接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
光学反射フィルムとしては、たとえば可視光領域(波長380〜780nm)で透過率が高く、近赤外光領域(780〜2500nm)で反射率が高い光学特性を有する赤外遮熱フィルム(近赤外光反射フィルム)であり、建物の屋外の窓、自動車窓、農業用ビニールハウス等に配置され、熱線反射効果を付与するために使用される。
また光学反射フィルムに別の機能を有する層を塗布することで得られる。たとえば、基材20と被覆層30との間にガスバリア層や易接着層を配置したり、被覆層30の表面にハードコート層や耐摩耗性層を配置したりすることも可能である。
上記の光学反射フィルムは片面に塗布液300を塗布した例であるが、基材20の両面に塗布することも可能である。また、近赤外光反射フィルム以外の光線反射フィルム、たとえば、遠赤外線反射フィルムや紫外線反射フィルムなどにも適用できる。さらには、塗布液300は、高屈折率層32用および低屈折率層34用の塗布液300に限定されず、光線反射フィルム以外の積層フィルムの製造に適用することも可能である。
そして、このような光学反射フィルムにおいては、上述した各実施形態の塗布装置100を用いて製造することで、出来上がった光学反射フィルムに気泡が入ることを防止または抑えることができる。このため、気泡に起因した外観の低下、特に可視光の透過性の低下を抑えることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、塗布工程における同時重層塗布は、スライド型ダイコーターを利用する形態に限定されず、必要に応じ、エクストルージョン型ダイコーターやカーテン型ダイコーター等を適宜適用することが可能である。
また、実施形態では、第1配管出口速度と流動速度の関係は、第1配管出口速度≦流動速度であることが好ましものとして説明した。しかし本発明はこれに限定されない。つまち第1配管出口速度<流動速度でもよい。この場合でも、既に説明した通り、第1配管212から吐出された塗布液300に含まれている気泡の拡散を防止して、気泡が液取管に取り込まれてしまうのを抑えることができる。したがってこのような構成でも、外観故障の発生を抑えることができる。
また、上述の実施形態は、同時重層塗布を行う塗布装置であるが、本発明は単層の塗布装置であってもよい。
その他、本発明は特許請求の範囲で種々改変することができる。