JP6687902B2 - 直噴エンジンの冷却装置 - Google Patents

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Description

本発明は、直噴エンジンの冷却装置に係り、詳しくは筒内噴射インジェクタに供給される燃料を冷却する燃料クーラ、及び吸気を冷却するインタクーラ及びターボチャージャを冷却するターボ冷却通路を備えた直噴エンジンの冷却装置に関する。
筒内に燃料を噴射する直噴エンジンでは、筒内に臨むようにインジェクタが配置されていることから、筒内の燃焼熱がインジェクタに直接的に伝達される。このためインジェクタが温度上昇してソレノイドの磁界再現性が低下し、燃料噴射量に誤差が生じて気筒間の空燃比にバラツキが生じるという課題がある。
その対策として、例えば特許文献1には、各気筒のインジェクタに燃料を分配・供給するデリバリパイプに燃料クーラを設け、ウォータポンプから冷却水を燃料クーラに供給してデリバリパイプ内の燃料を冷却し、これによりインジェクタの温度上昇を抑制する技術が提案されている。
ところで、ターボチャージャを備えた直噴エンジンでは、水冷式のインタクーラが設けられる場合があり、このような直噴エンジンに上記した特許文献1の燃料クーラを適用した場合、燃料クーラに加えてインタクーラにも冷却水を供給する必要が生じる。またターボチャージャの中には、例えば軸受け部の焼付き防止等のために冷却作用を奏するターボ冷却通路を備えたものも存在し、その場合にはターボ冷却通路にも冷却水を供給する必要がある。
複数の冷却対象に冷却水を分配する技術として、例えば特許文献2に記載のものを挙げることができる。当該特許文献2の技術は、エンジンのノッキング抑制等のために排ガスをEGRガスとして吸気側に環流させるEGR装置に関するものである。冷却水が供給されるEGRクーラによりEGRガスは冷却され、EGRクーラを流通後の冷却水はターボチャージャに供給されて冷却作用を奏する。
そして特許文献2の技術では、ターボチャージャの過給圧が高い状況ではEGRガスの環流が困難になるという不具合を鑑みて、エンジンの吸気ポートにインポート冷却水通路を形成している。EGR領域の外部の高負荷域では、切換弁の切換によりEGRクーラを迂回して冷却水をインポート冷却水通路に流通させ、吸気ポートの冷却により吸気温度を低下させてノッキング抑制を図っている。
特開平5−202821号公報 特開2012−189063号公報
特許文献2の技術では、冷却対象としてEGRクーラ、インポート冷却水通路及びターボチャージャを備えているが、これらの3種の冷却対象は冷却を要する状況が異なる。しかしながら、特許文献2の技術は、EGRガスの環流状況に応じて冷却水の経路を切り換えているだけであり、それぞれの冷却対象の冷却の必要性を配慮したものではない。よって、従来から個々の冷却対象に対する冷却の必要性を反映し、何れの冷却対象に対しても適切に冷却可能な対策が要望されていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料クーラ、インタクーラ及びターボ冷却通路に対する個々の冷却の必要性を反映した冷却制御を実行し、これにより何れの冷却対象も適切に冷却することができる直噴エンジンの冷却装置を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明の直噴エンジンの冷却装置は、筒内に燃料を噴射するインジェクタの燃料経路に配設され、冷却水の流通により前記インジェクタに供給される燃料を冷却する燃料クーラと、吸気を加圧するターボチャージャの吸気通路に配設され、冷却水の流通によりターボチャージャからの吸気を冷却するインタクーラと、前記燃料クーラを流通後の冷却水及び前記インタクーラを流通後の冷却水が供給され、該冷却水の流通により前記ターボチャージャを冷却するターボ冷却通路と、
ウォータポンプから吐出された冷却水を前記燃料クーラと前記インタクーラとに任意に分配可能な流路切換手段と、前記ターボチャージャの温度に基づき前記流路切換手段を駆動して、前記燃料クーラ側と前記インタクーラ側との冷却水の分配比率を制御する冷却制御手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
このように構成した直噴エンジンの冷却装置によれば、ターボチャージャの温度に基づき流路切換手段が駆動され、燃料クーラ側とインタクーラ側との冷却水の分配比率が制御される。例えば、ターボチャージャの温度が高くてターボ冷却通路による冷却を要する場合にはターボチャージャが優先して冷却され、ターボチャージャの温度が低くて冷却を要しない場合には燃料クーラ及びインタクーラが優先して冷却されるように、冷却水の分配比率が制御される。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、前記ターボチャージャのタービン温度が予め設定された第1の判定値を超え、且つ前記直噴エンジンが運転中であるときに、前記燃料クーラ側への分配比率を増加させることが好ましい(請求項2)。
この態様によれば、タービン温度が第1の判定値を超え、且つ直噴エンジンが運転中であるときに、燃料クーラ側への分配比率が増加される。結果として、主に燃料クーラ経由でターボ冷却通路に供給される冷却水によりターボチャージャが冷却される。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、前記ターボチャージャのタービン温度が予め設定された第1の判定値を超え、且つ前記直噴エンジンが停止中であるときに、前記インタクーラ側への分配比率を増加させることが好ましい(請求項3)。
この態様によれば、タービン温度が第1の判定値を超え、且つ直噴エンジンが停止中であるときに、インタクーラ側への分配比率が増加される。結果として、主にインタクーラ経由でターボ冷却通路に供給される冷却水によりターボチャージャが冷却される。
その他の態様として、前記流路切換手段から前記燃料クーラを経て前記ターボ冷却通路に至るまでの経路が、前記流路切換手段から前記インタクーラを経て前記ターボ冷却通路に至るまでの経路に比して、内容積が小さく且つ流通抵抗が低く設定されていることが好ましい(請求項4)。
この態様によれば、タービン温度が第1の判定値を超え、且つ直噴エンジンが運転中であるときには、タービンのハウジングが過熱する可能性有りと見なせ、冷却の緊急性が極めて高い。このとき冷却水は内容積が小さく且つ流通抵抗が低い燃料クーラ側の経路を流通するため、ターボ冷却通路が最大限の冷却能力を発揮してハウジングの温度上昇が迅速に抑制される。
また、タービン温度が第1の判定値を超え、且つ直噴エンジンが停止中であるときには、ターボチャージャの軸受け部が焼付く可能性有りと見なせるが、ハウジングの過熱に比較して冷却の緊急性は相対的に高くない。このとき冷却水は内容積が大きく且つ流通抵抗が高いインタクーラ側の経路を流通するため、ターボ冷却通路が適度な冷却能力を発揮し、エンジンの過冷却を防止しつつ軸受け部の温度上昇が抑制される。
その他の態様として、前記インタクーラ内で生成された凝縮水の量を算出する凝縮水量算出手段をさらに備え、前記冷却制御手段が、前記ターボチャージャのコンプレッサ入口温度が予め設定された第2の判定値以下であり、且つ前記直噴エンジンの冷却水温が予め設定された第3の判定値以下であるときに、前記凝縮水量算出手段により算出された凝縮水量に基づき、前記流路切換手段による冷却水の分配比率を制御することが好ましい(請求項5)。
この態様によれば、コンプレッサ温度が第2の判定値以下、且つ直噴エンジンの冷却水温が第3の判定値以下のときに、インタクーラ内の凝縮水量に基づき冷却水の分配比率が制御される。インタクーラ内に溜まった凝縮水は、エンジンの運転領域の急変により一気に筒内に導入されてトラブルを引き起こす場合があるが、この凝縮水量に応じてインタクーラに対する冷却が最適制御され、凝縮水に起因するトラブルが防止される。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、前記凝縮水量算出手段により算出された凝縮水量が予め設定された第4の判定値以下のときに、前記燃料クーラ側への分配比率を増加させることが好ましい(請求項6)。
この態様によれば、凝縮水量が第4の判定値以下のときには、インタクーラ内の凝縮水に起因するトラブルの可能性が低いと見なせ、一方で、コンプレッサ温度が第2の判定値以下、且つ直噴エンジンの冷却水温が第3の判定値以下であるため、燃料の気化不良によるエンジンの燃焼状態の悪化が懸念される。燃料クーラ側への分配比率が増加されることにより冷却水が受ける流通抵抗が増加し、これにより燃料クーラに供給される冷却水が温度上昇し、燃料温度も上昇するため気化を促進可能となる。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、外気温が予め設定された第5の判定値以下のときに、前記ウォータポンプの回転速度を増加させることが好ましい(請求項7)。
この態様によれば、外気温が第5の判定値以下まで低下する極寒環境では、燃料の気化不良が一層顕著になるが、それに応じてウォータポンプの回転速度が増加されるため、冷却水と共に燃料温度が上昇して気化が促進される。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、前記直噴エンジンの冷却水温が前記第3の判定値を超えたときに、前記ウォータポンプを停止させることが好ましい(請求項8)。
この態様によれば、ウォータポンプの停止により、燃料クーラ、インタクーラ及びターボ冷却通路への冷却水の供給が中止されるため、エンジンの暖機が促進されると共に、インタクーラでの吸気冷却に起因する新たな凝縮水の生成が抑制される。
その他の態様として、前記直噴エンジンの運転状態に基づき、前記燃料の冷却のために前記燃料クーラに要求される放熱量、及び前記吸気の冷却のために前記インタクーラに要求される放熱量をそれぞれ算出する放熱量算出手段をさらに備え、前記冷却制御手段が、前記直噴エンジンが温態、且つ前記タービン温度が前記第1の判定値以下であるときに、前記放熱量算出手段により算出された燃料クーラ及びインタクーラに対する要求放熱量に基づき、前記流路切換手段による冷却水の分配比率を制御することが好ましい(請求項9)。
この態様によれば、直噴エンジンが温態、且つタービン温度が第1の判定値以下のときには、例えばタービンのハウジングの過熱や軸受け部の焼付き等が発生する可能性が低くいと見なせ、燃料クーラ及びインタクーラの要求放熱量に基づく冷却水の分配比率の制御により、それぞれの冷却を適切に実行可能となる。
本発明の直噴エンジンの冷却装置によれば、燃料クーラ、インタクーラ及びターボ冷却通路に対する個々の冷却の必要性を反映した冷却制御を実行し、これにより何れの冷却対象も適切に冷却することができる。
実施形態の冷却装置が適用された直噴ガソリンエンジンを示す全体構成図である。 ECUが実行する冷態モード冷却制御ルーチンを示すフローチャートである。 ECUが実行する温態モード冷却制御ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明を直噴ガソリンエンジンの冷却装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の冷却装置が適用された直噴ガソリンエンジンを示す全体構成図である。
本実施形態の直噴エンジン1(以下、単にエンジンという)は、走行用動力源として図示しない車両に搭載されている。エンジン1のシリンダブロック2に形成された各気筒のシリンダ3内にはピストン4が配設され、クランク軸5の回転に応じて各ピストン4がシリンダ3内で摺動する。クランク軸5の回転に同期して各気筒の吸気弁6及び排気弁7が駆動され、これにより吸気ポート8及び排気ポート9が所定クランク角で開閉される。
エンジン1の各気筒には筒内に臨むように点火プラグ10及びインジェクタ11が配設され、点火プラグ10はイグナイタ12の駆動により点火されるようになっている。各気筒のインジェクタ11は共通のデリバリパイプ13に接続され、デリバリパイプ13内には燃料経路14を経て高圧ポンプ15により加圧された燃料(ガソリン)が供給され、その燃料がデリバリパイプ13から各気筒のインジェクタ11に分配・供給される。
各気筒の吸気ポート8には吸気マニホールド17を介してサージタンク18が接続され、サージタンク18には吸気通路19の下流端が接続されている。吸気通路19には上流側よりエアクリーナ20、ターボチャージャ21のコンプレッサ21a、インタクーラ22、スロットル弁23が設けられている。
また、各気筒の排気ポート9には排気マニホールド24を介して排気通路25の上流端が接続され、排気通路25にはターボチャージャ21のタービン21b、触媒装置26及び図示しない消音器が設けられている。
エンジン1の運転中には、エアクリーナ20から吸気通路19内に導入された吸気がターボチャージャ21のコンプレッサ21aにより加圧され、インタクーラ22により冷却された後にスロットル弁23により流量調整され、さらにサージタンク18を経て吸気マニホールド17により各気筒に分配されて吸気弁6の開弁に伴いエンジン1の筒内に導入される。筒内で吸気中には所定クランク角でインジェクタ11から燃料が噴射されて点火プラグ10により点火され、発生した燃焼圧によりピストン4を介してクランク軸5が回転駆動される。
各気筒の筒内で燃焼後の排ガスは排気弁7の開弁に伴い排気ポート9に排出されて排気マニホールド24により集合され、排気通路25に案内されてターボチャージャ21のタービン21bを駆動した後に触媒装置26及び消音器を経て外部に排出される。
一方、本実施形態の冷却装置は、インジェクタ11に供給される燃料、インタクーラ22、ターボチャージャ21の軸受け部21cを冷却の対象としており、それらの冷却のために冷却水を循環させる冷却回路28(以下、補機冷却回路という)を備えている。なお、この補機冷却回路28は、エンジン1を冷却するためにラジエータとの間で冷却水を循環させる周知のエンジン冷却回路とは別系統で形成されたものである。
インジェクタ11への燃料の冷却は、[背景技術]で述べたように、筒内からの受熱によるインジェクタ11の温度上昇の抑制を目的としており、そのために、各気筒のインジェクタ11に燃料を分配・供給するデリバリパイプ13には燃料クーラ29が設けられている。燃料クーラ29のウォータジャケット29aはデリバリパイプ13の周囲を取り囲むように形成され、上記した補機冷却回路28を経てウォータジャケット29a内を流通する冷却水によりデリバリパイプ13内の燃料が冷却される。そして、冷却後の燃料がインジェクタ11を経て筒内に噴射されることにより、インジェクタ11の温度上昇の抑制作用が奏される。
燃料クーラ29による燃料の冷却は、筒内で燃焼が生起されるエンジン1の運転中は無論必要であり、後述するアイドルストップ制御でのエンジン1の自動停止中にも、エンジン1からの受熱でデリバリパイプ13内の燃料が温度上昇することから冷却が必要になる。
インタクーラ22は水冷式として構成されており、補機冷却回路28を経てインタクーラ22内を流通する冷却水により、同じくインタクーラ22内を別経路で流通する吸気が冷却される。なお、エンジン停止中にはインタクーラ22内での吸気の流通が中断されるため、その冷却は不要になる。
周知のように、ターボチャージャ21のコンプレッサ21aとタービン21bとは軸受け部21cにより同軸上で回転可能に支持され、エンジン運転中にはエンジンオイルの供給により軸受け部21cが潤滑及び冷却される。本実施形態のターボチャージャ21は、さらに冷却水を利用した冷却機能を備えており、そのために軸受け部21cの特に温度上昇が著しいタービン21b寄りには、軸受け部21cの周囲を取り囲むようにターボ冷却通路27が形成されている。このターボ冷却通路27に補機冷却回路28を経た冷却水が流通することにより軸受け部21cやタービン21b等が冷却される。
ターボ冷却通路27によるターボチャージャ21の冷却は、エンジン停止中とエンジン運転中の何れでも要求される。エンジン停止中の冷却は、エンジンオイルの供給が中止されたときの軸受け部21cの焼付き防止を目的とする。このため、軸受け部21cの冷却はエンジン停止直後に要求される。
また、エンジン運転中の冷却は、タービン21bのハウジングの耐熱温度を超えた過熱防止を目的とする。このため、特に排気温度の上昇が著しいエンジン1の高負荷域において、冷却水によるハウジングの冷却が必要になる。
以上の燃料クーラ29、インタクーラ22及びターボ冷却通路27に対し、状況に応じて適宜冷却水を流通させるように補機冷却回路28が形成されており、以下、その構成について説明する。
補機冷却回路28のラジエータ31は、例えばエンジン冷却回路のラジエータと共に車両のエンジンルーム内に設置されており、走行風やファンの送風により内部を流通する冷却水を外気に放熱させるようになっている。
補機冷却回路28は、ラジエータ31の出口と燃料クーラ29とを接続する第1水路32、燃料クーラ29とターボ冷却通路27とを接続する第2水路33、ターボ冷却通路27とラジエータ31の入口とを接続する第3水路34、第1水路32の途中箇所に介装された流量制御弁37(流路切換手段)とインタクーラ22とを接続する第4水路35、及びインタクーラ22と第2水路33の途中箇所とを接続する第5水路36から構成されている。なお、第2水路33上には逆止弁39が介装され、ターボチャージャ21側から燃料クーラ29側への冷却水の逆流が防止されている。
第1水路32の流量制御弁37よりラジエータ31側には、図示しないモータにより駆動される電動式のウォータポンプ38が介装され、このウォータポンプ38から吐出された冷却水が補機冷却回路28内を循環する。モータのデューティ制御によりウォータポンプ38の回転速度が増減し、それに応じてウォータポンプ38からの冷却水の吐出量、ひいては補機冷却回路28内での冷却水の循環量を任意に調整可能となっている。
流量制御弁37は、ウォータポンプ38からの冷却水を燃料クーラ29側とインタクーラ22側とに任意の比率(100:0〜0:100)で分配可能な機能を有する。以下の説明では、燃料クーラ29及びインタクーラ22の両方に冷却水を供給するときの流量制御弁37の開度を中間位置、燃料クーラ29のみに冷却水を供給するときの開度を燃料クーラ位置(100:0)、インタクーラ22のみに冷却水を供給するときの開度をインタクーラ位置(0:100)と表現する。
なお、流量制御弁37の設置箇所及び機能は上記に限るものではなく、例えば第1水路32と第4水路35との分岐箇所より燃料クーラ29側及びインタクーラ22側のそれぞれの下流側に、各水路32,35の開度を調整可能な流量制御弁(流路切換手段)を介装してもよい。この場合でも、双方の流量制御弁の開度に応じて燃料クーラ29及びインタクーラ22への冷却水の分配比率を任意に調整可能となる。
以上の補機冷却回路28の構成により、ウォータポンプ38から吐出された冷却水は第1水路32を経て流量制御弁37に流入する。流量制御弁37が中間位置にある場合、冷却水は燃料クーラ29側及びインタクーラ22側の両方に所定比率で分配され、第1水路32を経て燃料クーラ29に供給されると共に、第4水路35を経てインタクーラ22に供給される。
燃料クーラ29のウォータジャケット29a内で燃料を冷却した後の冷却水は第2水路33を流通し、一方、インタクーラ22内で吸気を冷却した後の冷却水は第5水路36を流通し、互いに合流した後にターボ冷却通路27に流入する。ターボ冷却通路27でターボチャージャ21を冷却した後の冷却水は第3水路34を経てラジエータ31に戻され、外気への放熱により温度低下した後に再びウォータポンプ38から吐出され、以降は同様の循環を補機冷却回路28内で繰り返す。
また流量制御弁37が燃料クーラ位置にある場合、冷却水は第1水路32を経て燃料クーラ29に供給されて燃料を冷却し、第2水路33を経てターボ冷却通路27を冷却し、その後に第3水路34を経てラジエータ31に流入する。
また流量制御弁37がインタクーラ位置にある場合、冷却水は第1水路32及び第4水路35を経てインタクーラ22に供給されて吸気を冷却し、第5水路36及び第2水路33を経てターボ冷却通路27を冷却し、その後に第3水路34を経てラジエータ31に戻される。
以上の説明から明らかなように、ターボチャージャ21の冷却を要する場合には、冷却水を燃料クーラ29経由で供給することも、インタクーラ22経由で供給することも可能である。そして、燃料クーラ29とインタクーラ22との構造上の相違や水路の取回しの相違等に起因して、双方間でターボ冷却通路27までの経路の内容積及び冷却水の流通抵抗(以下、これらを経路特性と総称する)が相違する。そこで本実施形態では、このような双方の経路特性の相違を利用して、ターボチャージャ21の冷却の目的(軸受け部21cの焼付き防止またはタービン21bのハウジングの過熱防止)に応じてターボ冷却通路27に冷却水を供給する経路を切り換えている。
具体的な経路の切換制御については後述するが、ここでは、燃料クーラ29側とインタクーラ22側との経路特性の相違について説明する。
燃料クーラ29に比較してインタクーラ22は相対的に大型であると共に、その内部の経路が複雑である。このため燃料クーラ29に比較してインタクーラ22は内容積が大きく、且つ冷却水が内部を流通する際の抵抗が高い。このため、流量制御弁37から燃料クーラ29を経てターボ冷却通路27に至るまでの経路(燃料クーラ29を含めた第1,2水路32,33)は、流量制御弁37からインタクーラ22を経てターボ冷却通路27に至るまでの経路(インタクーラ22を含めた第4,5,2水路35,36,33)に比して、内容積が小さく且つ流通抵抗が低くなっている。
このため、ターボチャージャ21の迅速な冷却が要求される場合には燃料クーラ29側の経路を経て冷却水を供給する方が好適であり、相対的に冷却の緊急性が低い場合にはインタクーラ22側の経路を経て冷却水を供給する方が好適である。
一方、車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU41(エンジン制御ユニット)が設置されており、エンジン1の総合的な制御を行う。
ECU41の入力側には、ターボチャージャ21に供給される吸気温度であるTC上流温度Taを検出するTC上流温度センサ42、インタクーラを流通後の吸気量であるIC下流吸気量Gaを検出するIC下流吸気量センサ43、デリバリパイプ13内の燃料温度Tfdを検出する燃料温度センサ44、デリバリパイプ13内の燃圧Pfdを検出する燃圧センサ45、ターボチャージャ21の出口油温Toを検出する油温センサ46、及びインタクーラを流通後の吸気温度であるIC下流温度Tbを検出するIC下流温度センサ47、ターボチャージャ21に供給される吸気量であるTC上流吸気量Gbを検出するTC上流吸気量センサ48、インタクーラ22に導入される吸気温度であるIC上流温度Tcを検出するIC上流温度センサ49、同じくインタクーラ22に導入される吸気湿度であるIC上流湿度Hcを検出するIC上流湿度センサ50、同じくインタクーラ22に導入される吸気圧であるIC上流圧PcをIC上流圧力センサ51、エンジン1の冷却水温Twを検出する水温センサ52等の各種センサ類が接続されている。
また、ECU41の出力側には、インジェクタ11、点火プラグ10のイグナイタ12、補機冷却回路28の流量制御弁37及びウォータポンプ38等の各種デバイス類が接続されている。
ECU41は、各センサからの検出情報に基づき点火時期や燃料噴射量等を決定し、決定した目標値に基づいてイグナイタやインジェクタを駆動制御してエンジン1を運転する。
またECU41は、アイドルストップ制御を実行する。周知のように当該制御は、信号待ちなどの車両の一時停止時にブレーキ操作などの所定の停止条件が成立するとエンジン1を自動停止させ、ブレーキ操作の中止などの所定の始動条件が成立するとエンジン1を自動始動するものである。
またECU41は、エンジン1の運転状態に応じて補機冷却回路28を循環する冷却水を燃料クーラ29、インタクーラ22及びターボ冷却通路27に適宜流通させて冷却する。
そして、以上のように本実施形態の冷却装置では、流量制御弁37の開度に応じて冷却水を燃料クーラ29及びインタクーラ22に分配すると共に、それぞれを流通後の冷却水をターボ冷却通路27に供給しており、同様に3種の冷却対象を冷却する特許文献2の冷却装置では、個々の冷却の必要性を配慮していないため適切な冷却制御が望めないという問題があった。
このような冷却装置に対する要望を鑑みて、本実施形態では、ターボチャージャ21の温度に基づき流量制御弁37による冷却水の燃料クーラ29側とインタクーラ22側との分配比率を制御することにより不具合の解消も図っており、以下、そのためにECU41が実行する制御について説明する。
図2はECU41が実行する冷態モード冷却制御ルーチンを示すフローチャート、図3は同じくECU41が実行する温態モード冷却制御ルーチンを示すフローチャートである。これらの処理を実行するときのECU41が本発明の冷却制御手段として機能し、ECU41は車両のイグニションスイッチがONされているときに、これらのルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まず図2のステップS1で、ターボチャージャ21のコンプレッサ21aの入口温度Tcomp(コンプレッサ21a自体の温度と相関し、本発明の「ターボチャージャの温度」及び「コンプレッサ温度」に相当)が予め設定された判定値Tcomp0(第2の判定値)以下であるか否かを判定する。本実施形態では、TC上流温度センサ42により検出される吸気温度Taを入口温度Tcompと見なしているが、これに限るものではなく、例えばコンプレッサ21aの温度自体を検出してもよい。外気温が低いとインタクーラ22内に生成された凝縮水が蒸発せずに液体のまま滞留し易くなるため、そのような環境の判定を目的としてステップS1が設定されている。
ステップS1の判定がYes(肯定)のときにはステップS2に移行し、エンジン冷却水温Twが予め設定された判定値Tw1(第3の判定値であり、例えば40℃)以下であるか否かを判定する。
ステップS2の判定がYesのときにはターボチャージャ21の温度が低く且つエンジン冷態であることを意味し、以下、このような条件に対応する冷態モード冷却制御が図2のルーチンに基づき実行される。
まずステップS3で、吸気温度Ta(外気温)が予め設定された判定値Ta0(第5の判定値であり、例えば−5℃)以下であるか否かを判定し、判定がYesのとき、即ち極寒環境であるときにはステップS4に移行する。ステップS4では、インタクーラ22内に生成されている凝縮水の量Wcondeが予め設定された判定値Wconde0(第4の判定値)以下であるか否かを判定する。
インタクーラ22内に溜まった凝縮水は、エンジン1の運転領域の急変により一気に筒内に導入されてトラブルを引き起こすため、凝縮水量Wcondeを常に低レベルに保つことが望ましい。極寒環境では、インタクーラ22内の凝縮水が凍結している場合があり、このような状況でインタクーラ22に供給された冷却水は、冷却作用とは逆の凝縮水の融解作用を奏する。インタクーラ22内に多量の凝縮水が溜まっている場合には、急激な融解により一気に筒内に導入されるため、この現象が生じる下限付近の凝縮水量Wcondeとして判定値Wconde0が定められている。
よって、ステップS4の判定がYesのときには、インタクーラ22内の凝縮水に起因する上記トラブルの可能性が低いと見なし、ステップS5に移行する。ステップS5ではウォータポンプ38の駆動デューティを最大に設定し、続くステップS6で流量制御弁37の開度を燃料クーラ位置に設定した後、一旦ルーチンを終了する。
なお、ステップS5では駆動デューティを最大に設定する代わりに、判定値Ta0に対して吸気温度Taが低いほど駆動デューティを増加させるようにしてもよい。
ステップS4の凝縮水量Wcondeは、以下の手順により推定される(凝縮水量算出手段)。
基本的にインタクーラ22内で生成される凝縮水量Wcondeは、EGRの影響を受けないEGR率=0の条件下では、インタクーラ22に供給される吸気中の総水蒸気Avaporから、インタクーラ22内の飽和水蒸気量Bvaporを減算して算出できる。
吸気中の総水蒸気Avaporは、インタクーラ22に導入される吸気量、及び吸気温度及び吸気湿度に基づき算出可能である。また、インタクーラ22内の飽和水蒸気量Bvaporは、インタクーラ22に導入される冷却水温度、冷却水の目標温度、及びインタクーラ22に導入される吸気圧に基づき算出可能である。
このためECU41は、TC上流吸気量センサ48により検出されるTC上流吸気量Gb、IC上流温度センサ49により検出されるIC上流温度Tc、及びIC上流湿度センサ50により検出されるIC上流湿度Hcに基づき、吸気中の総水蒸気Avaporを算出する。
また、TC上流吸気量Gbから推定したインタクーラ22に導入される冷却水温度、冷却水温度の制御で設定されている冷却水の目標温度、及びIC上流圧力センサ51により検出されるIC上流圧Pcに基づき、インタクーラ22内の飽和水蒸気量Bvaporを算出する。なお、インタクーラ22に導入される冷却水温度はセンサにより実測してもよい。そして、求めた総水蒸気Avaporから飽和水蒸気量Bvaporを減算して凝縮水量Wcondeを算出し、算出した凝縮水量Wcondeを上記したステップS4の処理に適用する。
ステップS4,5の処理の趣旨は以下のとおりである。
極寒環境ではインジェクタ11に供給される燃料も極低温であり、燃料の気化不良により筒内の燃焼状態が悪化してエンジン1の運転が不安定になるという問題が生じる。最大の駆動デューティによる駆動の結果、モータの排熱が増加し、モータと一体化されているウォータポンプ38が昇温されて内部を流通する冷却水が僅かではあるが昇温作用を受ける。また、ウォータポンプ38の回転速度と共に経路内での冷却水の流通速度が増加すると、冷却水が受ける流通抵抗も増加し、この通水抵抗の増加は冷却水を昇温する方向に作用する。
これらの現象が相俟って燃料クーラ29に供給される冷却水の温度が上昇し、デリバリパイプ13からインジェクタ11に供給される燃料の温度も上昇するため、筒内での燃料の気化を促進して燃料状態を改善でき、エンジン1の運転を安定化することができる。
また、ステップS3でYesの判定を下し、ステップS4でNoの判定を下した場合、即ち、極寒環境且つインタクーラ22内の凝縮水が多量である場合には、凝縮水に起因する上記トラブルの可能性有りと見なせる。このときにはステップS7に移行し、ウォータポンプ38の駆動デューティとして通常値を設定し、続くステップS8で流量制御弁37の開度をインタクーラ位置に設定した後にルーチンを終了する。
例えば、ステップS7の駆動デューティは、インタクーラ22に要求される放熱量Qbに基づき設定される。極寒環境ではインタクーラ22による吸気冷却をほとんど必要としないことから、要求放熱量Qbと共にウォータポンプ38の駆動デューティが低下方向に設定される。結果としてインタクーラ22への冷却水量が減少し、インタクーラ22内で凍結している凝縮水は徐々に融解して吸気と共にエンジン1の筒内に導入される。このようにインタクーラ22に対する冷却が最適制御されることにより凍結凝縮水を適切に処理できるため、凝縮水が一気に筒内に導入されたときのトラブルを未然に防止することができる。
なお、ステップS7の駆動デューティは、吸気温度Ta及び凝縮水量Wcondeに基づき設定してもよい。吸気温度Taが低く且つ凝縮水量Wcondeが多いほど、インタクーラ22内で凍結している凝縮水の量が多いと見なせるため、それに応じて凝縮水の急激な融解を抑制するために駆動デューティをより低下方向に設定すればよい。
また、ステップS3でNoの判定を下したときには、ステップS7に移行する。この場合には、極寒環境でないため燃料の気化不良は発生せず、その対策であるステップS5,6の処理は不要との観点に基づく。
一方、以上の処理を実行しつつエンジン1が運転されることにより、冷却水温Twは次第に上昇してステップS2の判定がNoになる。このときECU41はステップS9に移行し、ウォータポンプ38の駆動デューティを0に設定する。この時点では、燃料の気化促進のための昇温は不要であり、インタクーラ22内の凍結した凝縮水の処理も不要であるため、これらを目的とした冷却水の供給も不要となる。そして、ウォータポンプ38の停止により、燃料クーラ29、インタクーラ22及びターボ冷却通路27への冷却水の供給が中止されるため、エンジン1の暖機を促進できると共に、インタクーラ22での吸気冷却に起因する新たな凝縮水の生成を抑制することもできる。
続くステップS10では、水温センサ52により検出されたエンジン冷却水温Twが予め設定された判定値Tw2(例えば、第1の判定値Tw1より高温側の60℃)を超えているか否かを判定し、No(否定)のときにはステップS1に戻る。
冷却水温Twが上昇してステップS10の判定がYesになると、ECU41はステップS11で温態モード冷却制御を開始する。
まず、図3のステップS21でターボチャージャ21の出口油温To(本発明の「ターボチャージャの温度」及び「タービン温度」に相当)が予め設定された判定値To0(第1の判定値)を超えている(To>To0)か否かを判定し、続くステップS22では、直近の高負荷運転の積算時間Tloadが予め設定された判定値Tload0を超えている(Tload>Tload0)か否かを判定する。
ステップS21,22の処理は、ターボチャージャ21の冷却の要否判定を目的としており、ステップS21及びステップS22で共にYesの判定を下したときには、ターボチャージャ21の冷却を要すると見なしてステップS24に移行する。
ステップS24では、アイドルストップ制御によりエンジン1の自動停止中であるか否かを判定する。運転中であるとしてステップS24でNoの判定を下したときには、ステップS25に移行して流量制御弁37の開度を燃料クーラ位置に設定する。また自動停止中であるとしてステップS24でYesの判定を下したときには、ステップS26に移行して流量制御弁37の開度をインタクーラ位置に設定する。
なお、ステップS25,26では流量制御弁37の開度を何れか一方に完全に切り換えたが、例えばステップS25では燃料クーラ29への冷却水の分配比率を増加させ、ステップS26ではインタクーラ22への冷却水の分配比率を増加させてもよい。
ステップS21,22でターボチャージャ21の冷却を要すると判定し、ステップS24でエンジン運転中と判定した場合、タービン21bのハウジングが過熱していることが推測される。ハウジングは急激な温度上昇により耐熱温度を超えて破損に至るため、極めて迅速な冷却が必要となる。
このときにはステップS25の処理により、冷却水が燃料クーラ29経由でターボ冷却通路27に供給される。燃料クーラ29側の経路は内容積が小さく且つ流通抵抗が低いことから、流量制御弁37からの冷却水がターボ冷却通路27に到達するタイミングが早い上に、単位時間当たりに供給される冷却水量が多い。よって、ターボ冷却通路27は最大限の冷却能力を発揮してタービン21bのハウジングの温度上昇を迅速に抑制し、耐熱温度を超えた状態でのタービン21bの稼働を未然に回避することができる。
また、タービン21bのハウジングの過熱防止策として、空燃比のリッチ化によりエンジン1の排気温度を低下させる手法もあるが、燃費及び排ガス特性の悪化という弊害が生じる。冷却水を利用したターボチャージャ21の冷却では、このような弊害を生じないため、燃費及び排ガス特性面でも有利になる。
また、ステップS21,22でターボチャージャ21の冷却を要すると判定し、ステップS24でエンジン自動停止中と判定した場合、ターボチャージャ21の軸受け部21cの焼付きの可能性が推測される。このときの軸受け部21cは温度上昇を抑制するために冷却を要するものの、上記ハウジングの過熱に比べると冷却の緊急性はそれ程高くなく、また急激な冷却は却ってエンジン1の過冷却の要因になり得る。
このときにはステップS26の処理により、冷却水がインタクーラ22経由でターボ冷却通路27に供給される。燃料クーラ29側に比してインタクーラ22側の経路は内容積が大きく且つ流通抵抗が高いことから、相対的に流量制御弁37からの冷却水がターボ冷却通路27に到達するタイミングが遅い上に、単位時間当たりに供給される冷却水量が少ない。よって、ターボ冷却通路27が適度な冷却能力を発揮し、再始動時の暖機促進のためにエンジン1の過冷却を防止しつつ、軸受け部21cの温度上昇を抑制して焼付きを未然に防止することができる。
一方、ステップS21,22の何れかでNoの判定を下した場合、即ち、ターボチャージャ21の冷却が不要な場合には、ステップS23に移行して通常の冷却制御を実行した後にルーチンを終了する。
上記のように通常の冷却制御は要求放熱量に基づき実行され(放熱量算出手段)、主として燃料クーラ29及びインタクーラ22の冷却が対象となる。ターボチャージャ21の冷却に関しては、図3に基づき説明した温態モード冷却制御ルーチンによって適宜対処されるためである。
基本的に燃料クーラ29に要求される放熱量は、デリバリパイプ13内の燃料が有している実際の熱量と予め設定された目標温度時の燃料の熱量との乖離として表せ、燃料の冷却により要求放熱量が達成されることで乖離が解消される。
但し、エンジン1の運転中には、筒内への燃料噴射により相対的に高温の燃料がデリバリパイプ13内から流出し、新たにデリバリパイプ13内に相対的に低温の燃料が流入する。結果としてデリバリパイプ13内の燃料から熱が奪われる現象が発生し、その温度低下分だけ要求放熱量が低減される。
よって、エンジン運転中の燃料クーラ29への要求放熱量Qaは、次式(1)で表される。
Qa={C1×(Tfd―Tfdtgt)×C2×Vd}−C2×q×(Tfd−Tft) ……(1)
ここに、C1は定数、Tfdは燃料温度センサ44により検出されるデリバリパイプ13内の燃料温度、Tfdtgtは燃料の目標温度、C2は燃料比熱、Vdはデリバリパイプ13の内容積、qはインジェクタ11の噴射量、Tftは燃料タンク内の燃料温度である。なお、タンク内燃料温度Tftの検出には燃料タンク内にセンサを追加する必要があるため、簡易的にTC上流温度センサ42により検出される吸気温度Ta(即ち外気温)を適用してもよい。
また、上記のように筒内への燃料噴射が中止されるエンジン自動停止中には、デリバリパイプ13への燃料の出入りがないことから、燃料クーラ29への要求放熱量Qaは次式(2)で表される。
Qa=C1×(Tfd―Tfdtgt)×C2×Vd ……(2)
なお、インジェクタ11の噴射量qは次式(3)で表される。
q=C3×Pfd×Pw ……(3)
ここに、C3は定数、Pfdは燃圧センサ45により検出されるデリバリパイプ13内の燃圧、PwはECU41がエンジン制御でインジェクタ11を駆動する際の噴射パルスである。
また、インタクーラ22への要求放熱量Qbは、次式(4)で表される。
Qb=C4×(Tb―Tbtgt)×Ga ……(4)
ここに、C4は定数、TbはIC下流温度センサ47により検出されるIC下流温度Tb、Tbtgtは目標下流温度、GaはIC下流吸気量センサ43により検出される吸気量である。
なお、目標下流温度Tbtgtは、エンジン制御でインタクーラ22への冷却水の流通量を制御するときのIC下流温度Tbの目標値であるが、これに限るものではなく、予め設定された固定値としてもよい。
例えばエンジン1の運転中には、燃料クーラ29による燃料の冷却及びインタクーラ22による吸気の冷却が必要となる。そこで、それらのデバイスへの要求放熱量Qa,Qb(Qaは式(1)に基づく)を算出すると共に、要求放熱量Qa,Qbを達成するために燃料クーラ29及びインタクーラ22に供給すべき冷却水量(必要冷却水量)を算出する。そして、必要冷却水量を達成可能な駆動デューティでウォータポンプ38を駆動すると共に、双方の必要冷却水量の比率に対応するように流量制御弁37の開度を制御する。結果として、燃料クーラ29及びインタクーラ22により燃料及び吸気が適切に冷却される。
またエンジン1の自動停止中には、吸気の流通中止によりインタクーラ22の冷却が不要になる。そこで、燃料クーラ29への要求放熱量Qa(式(2)に基づく)を算出すると共に、要求放熱量Qaを達成するために燃料クーラ29に供給すべき必要冷却水量を算出する。そして、必要冷却水量を達成可能な駆動デューティでウォータポンプ38を駆動すると共に、流量制御弁37の開度を燃料クーラ位置に切り換える。結果として、燃料クーラ29により燃料が適切に冷却される。
以上のように本実施形態の直噴エンジン1の冷却装置によれば、コンプレッサ21aの入口温度Tcomp(ターボチャージャの温度)に基づき冷態モード冷却制御と温態モード冷却制御とを切り換え、冷態モード冷却制御では燃料クーラ29及びインタクーラ22の冷却制御を実行することにより、インジェクタ11に供給される燃料の気化促進とインタクーラ22内で凍結した凝縮水の処理とを達成し、温態モード冷却制御ではターボ冷却通路27の冷却制御を実行することにより、ターボチャージャ21の軸受け部21cの焼付き防止及びハウジングの過熱防止を達成している。
このようにターボチャージャ21の温度が高くてターボ冷却通路27による冷却を要する場合には、ターボチャージャ21の冷却制御を優先して実行し、ターボチャージャ21の温度が低くて冷却を要しない場合には、インタクーラ22及びインタクーラ22の冷却制御を優先して実行している。このためインタクーラ22、インタクーラ22及びターボ冷却通路27に対する個々の冷却の必要性を反映した冷却制御を実現でき、何れの冷却対象も適切に冷却することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、直噴ガソリンエンジン1の冷却装置に具体化したが、エンジンの種別はこれに限ることはなく、例えばディーゼルエンジンに適用してもよい。
また上記実施形態では、燃料クーラ29をデリバリパイプ13に設けたが、これに限るものではなく、例えば高圧ポンプ15の入口側の燃料経路14に燃料クーラ29を配設して、高圧ポンプ15に流入する燃料を冷却するようにしてもよい。この場合でも上記実施形態の制御を実行すれば、同様の作用効果を得ることができる。
また上記実施形態では、アイドルストップ制御によるエンジン1の自動停止中に、流量制御弁37をインタクーラ位置に切り換えてターボチャージャ21の軸受け部21cの焼付き防止を図ったが(ステップS24,26)、これに限るものではなく、通常のエンジン停止時に当該冷却制御を実行してもよい。この場合でも、エンジン停止直後に軸受け部21cの焼付き防止のための冷却が必要なためである。
1 直噴エンジン
11 インジェクタ
14 燃料経路
19 吸気通路
21 ターボチャージャ(経路)
22 インタクーラ
27 ターボ冷却通路
29 燃料クーラ(経路)
32 第1水路(経路)
33 第2水路(経路)
35 第4水路(経路)
36 第5水路(経路)
37 流量制御弁(流路切換手段)
38 ウォータポンプ
41 ECU(冷却制御手段、凝縮水量算出手段、放熱量算出手段)

Claims (9)

  1. 筒内に燃料を噴射するインジェクタの燃料経路に配設され、冷却水の流通により前記インジェクタに供給される燃料を冷却する燃料クーラと、
    吸気を加圧するターボチャージャの吸気通路に配設され、冷却水の流通によりターボチャージャからの吸気を冷却するインタクーラと、
    前記燃料クーラを流通後の冷却水及び前記インタクーラを流通後の冷却水が供給され、該冷却水の流通により前記ターボチャージャを冷却するターボ冷却通路と、
    ウォータポンプから吐出された冷却水を前記燃料クーラと前記インタクーラとに任意に分配可能な流路切換手段と、
    前記ターボチャージャの温度に基づき前記流路切換手段を駆動して、前記燃料クーラ側と前記インタクーラ側との冷却水の分配比率を制御する冷却制御手段と
    を備えたことを特徴とする直噴エンジンの冷却装置。
  2. 前記冷却制御手段は、前記ターボチャージャのタービン温度が予め設定された第1の判定値を超え、且つ前記直噴エンジンが運転中であるときに、前記燃料クーラ側への分配比率を増加させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  3. 前記冷却制御手段は、前記ターボチャージャのタービン温度が予め設定された第1の判定値を超え、且つ前記直噴エンジンが停止中であるときに、前記インタクーラ側への分配比率を増加させる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  4. 前記流路切換手段から前記燃料クーラを経て前記ターボ冷却通路に至るまでの経路が、前記流路切換手段から前記インタクーラを経て前記ターボ冷却通路に至るまでの経路に比して、内容積が小さく且つ流通抵抗が低く設定されている
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  5. 前記インタクーラ内で生成された凝縮水の量を算出する凝縮水量算出手段をさらに備え、
    前記冷却制御手段は、前記ターボチャージャのコンプレッサ入口温度が予め設定された第2の判定値以下であり、且つ前記直噴エンジンの冷却水温が予め設定された第3の判定値以下であるときに、前記凝縮水量算出手段により算出された凝縮水量に基づき、前記流路切換手段による冷却水の分配比率を制御する
    ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  6. 前記冷却制御手段は、前記凝縮水量算出手段により算出された凝縮水量が予め設定された第4の判定値以下のときに、前記燃料クーラ側への分配比率を増加させる
    ことを特徴とする請求項5に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  7. 前記冷却制御手段は、外気温が予め設定された第5の判定値以下のときに、前記ウォータポンプの回転速度を増加させる
    ことを特徴とする請求項5または6に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  8. 前記冷却制御手段は、前記直噴エンジンの冷却水温が前記第3の判定値を超えたときに、前記ウォータポンプを停止させる
    ことを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載の直噴エンジンの冷却装置。
  9. 前記直噴エンジンの運転状態に基づき、前記燃料の冷却のために前記燃料クーラに要求される放熱量、及び前記吸気の冷却のために前記インタクーラに要求される放熱量をそれぞれ算出する放熱量算出手段をさらに備え、
    前記冷却制御手段は、前記直噴エンジンが温態、且つ前記タービン温度が前記第1の判定値以下であるときに、前記放熱量算出手段により算出された前記燃料クーラ及び前記インタクーラに対する要求放熱量に基づき、前記流路切換手段による冷却水の分配比率を制御する
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の直噴エンジンの冷却装置。
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