JP6687900B2 - 直噴エンジンの冷却装置 - Google Patents
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Description
このような課題を鑑みて、インジェクタに供給される燃料を冷却する対策が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術では、各気筒のインジェクタに燃料を分配・供給するデリバリパイプにウォータジャケットを設け、ウォータポンプから供給される冷却水をウォータジャケットに流通させるようにして燃料クーラを構成している。そして、この燃料クーラによりデリバリパイプ内の燃料を冷却することでインジェクタの温度上昇の抑制を図っている。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料を冷却してインジェクタの温度上昇を抑制する燃料クーラに冷却水を過不足なく供給し、これにより燃料の冷却を最適化して不適切な燃料温度に起因する種々の不具合を未然に防止することができる直噴エンジンの冷却装置を提供することにある。
その他の態様として、前記流量調整手段が、前記燃料クーラに供給される冷却水を吐出するウォータポンプまたは該ウォータポンプから吐出された冷却水の流量を制御する流量制御弁の少なくとも一方であり、前記冷却制御手段が、前記燃料クーラへの要求放熱量に基づき前記ウォータポンプの回転速度または前記流量制御弁の開度を制御することが好ましい(請求項2)。
その他の態様として、前記直噴エンジンにはターボチャージャの水冷式インタクーラが備えられ、前記流量調整手段が、冷却水を吐出するウォータポンプ、及び該ウォータポンプから吐出された冷却水を前記燃料クーラ側と前記インタクーラ側とに任意の比率で分配可能な流量制御弁であり、前記冷却制御手段が、前記燃料クーラ及び前記インタクーラに要求される放熱量に基づき、前記ウォータポンプの回転速度及び前記流量制御弁による冷却水の分配比率を制御することが好ましい(請求項3)。
その他の態様として、前記冷却制御手段が、前記インジェクタに供給される燃料の温度が予め設定された第1の判定値以下の場合、または前記インジェクタの燃料噴射量が予め設定された第2の判定値を超えている場合の何れかに該当するときに、前記流量調整手段により前記燃料クーラへの冷却水の供給を中止することが好ましい(請求項5)。
図1は本実施形態の冷却装置が適用された直噴ガソリンエンジンを示す全体構成図である。
本実施形態の直噴エンジン1(以下、単にエンジンという)は、走行用動力源として図示しない車両に搭載されている。エンジン1のシリンダブロック2に形成された各気筒のシリンダ3内にはピストン4が配設され、クランク軸5の回転に応じて各ピストン4がシリンダ3内で摺動する。クランク軸5の回転に同期して各気筒の吸気弁6及び排気弁7が駆動され、これにより吸気ポート8及び排気ポート9が所定クランク角で開閉される。
また、各気筒の排気ポート9には排気マニホールド24を介して排気通路25の上流端が接続され、排気通路25にはターボチャージャ21のタービン21b、触媒装置26及び図示しない消音器が設けられている。
一方、本実施形態の冷却装置は、インジェクタ11に供給される燃料、インタクーラ22、ターボチャージャ21の軸受け部21cを冷却の対象としており、それらの冷却のために冷却水を循環させる冷却回路28(以下、補機冷却回路という)を備えている。なお、この補機冷却回路28は、エンジン1を冷却するためにラジエータとの間で冷却水を循環させる周知のエンジン冷却回路とは別系統で形成されたものである。
インタクーラ22は水冷式として構成されており、補機冷却回路28を経てインタクーラ22内を流通する冷却水により、同じくインタクーラ22内を別経路で流通する吸気が冷却される。なお、エンジン停止中にはインタクーラ22内での吸気の流通が中断されるため、その冷却は不要になる。
補機冷却回路28のラジエータ31は、例えばエンジン冷却回路のラジエータと共に車両のエンジンルーム内に設置されており、走行風やファンの送風により内部を流通する冷却水を外気に放熱させるようになっている。
また流量制御弁37がインタクーラ位置にある場合、冷却水は第1水路32及び第4水路35を経てインタクーラ22に供給されて吸気を冷却し、第5水路36及び第2水路33を経てターボチャージャ21の軸受け部21cを冷却し、その後に第3水路34を経てラジエータ31に戻される。
ECU41は、各センサからの検出情報に基づき点火時期や燃料噴射量等を決定し、決定した目標値に基づいてイグナイタやインジェクタを駆動制御してエンジン1を運転する。
またECU41は、エンジン1の運転状態に応じて補機冷却回路28を循環する冷却水を燃料クーラ29、インタクーラ22及びターボチャージャ21の軸受け部21cに適宜流通させて冷却する。
まず冷却が必要なデバイスは、エンジン1の運転中とアイドルストップ制御による自動停止中とで相違する。
またエンジン1の自動停止中には、依然として燃料クーラ29による燃料の冷却は必要であるが、インタクーラ22については吸気が流通しなくなるため冷却が不要となる。その反面、ターボチャージャ21の軸受け部21cへのエンジンオイルの供給及びコンプレッサ21aの吸気流通が中止されるため、冷却水による冷却が必要になる。
一方、各デバイスへの要求放熱量は以下の観点に基づき算出され、この要求放熱量を達成可能な冷却水の流通量に基づきウォータポンプ38及び流量制御弁37が制御される。
但し、エンジン1の運転中には、筒内への燃料噴射により相対的に高温の燃料がデリバリパイプ13内から流出し、新たにデリバリパイプ13内に相対的に低温の燃料が流入する。結果としてデリバリパイプ13内の燃料から熱が奪われる現象が発生し、その温度低下分だけ要求放熱量が低減される。
Qa={C1×(Tfd―Tfdtgt)×C2×Vd}−C2×q×(Tfd−Tft) ……(1)
ここに、C1は定数、Tfdは燃料温度センサ44により検出されるデリバリパイプ13内の燃料温度、Tfdtgtは燃料の目標温度、C2は燃料比熱、Vdはデリバリパイプ13の内容積、qはインジェクタ11の噴射量、Tftは燃料タンク内の燃料温度である。なお、タンク内燃料温度Tftの検出には燃料タンク内にセンサを追加する必要があるため、簡易的に吸気温度センサ42により検出される吸気温度Ta(即ち外気温)を適用してもよい。
Qa=C1×(Tfd―Tfdtgt)×C2×Vd ……(2)
なお、インジェクタ11の噴射量qは次式(3)で表される。
ここに、C3は定数、Pfdは燃圧センサ45により検出されるデリバリパイプ13内の燃圧、PwはECU41がエンジン制御でインジェクタ11を駆動する際の噴射パルスである。
また、インタクーラ22への要求放熱量Qbは、次式(4)で表される。
ここに、C4は定数、TbはIC下流温度センサ47により検出されるIC下流温度Tb、Tbtgtは目標下流温度、Gaは吸気量センサ43により検出される吸気量である。
なお、目標下流温度Tbtgtは、エンジン制御でインタクーラ22への冷却水の流通量を制御するときのIC下流温度Tbの目標値であるが、これに限るものではなく、予め設定された固定値としてもよい。
Qc=C5×(To―Totgt) ……(5)
ここに、C5は定数、Toは油温センサ46により検出されるターボチャージャ21の出口油温、Totgtは目標油温である。
このようにして各デバイス毎に算出された要求放熱量Qa,Qb,Qcに基づき、それぞれのデバイスに流通させるべき冷却水量を特定でき、その流通量を達成すべくウォータポンプ38の回転速度及び流量制御弁37の開度が制御される。
まず、エンジン1の運転中に実行される冷却制御について述べる。
図2はエンジン1の運転中にECU41が実行するエンジン運転時冷却制御ルーチンを示すフローチャートであり、ECU41はエンジン1の運転中に当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
ステップS3では、デリバリパイプ13内の燃料温度Tfdが予め設定された判定値Tfd0(第1の判定値)を超えている(Tfd>Tfd0)か否かを判定する。ステップS3の処理は、燃料クーラ29による燃料の冷却が必要であるか否かを見極めることを目的とする。ステップS3の判定がYesのときには燃料クーラ29による冷却が必要と見なし、ステップS4に移行する。
一方、上記ステップS2の判定がYesの場合にはインタクーラ22による吸気の冷却に余裕がないと見なせるため、全ての冷却水をインタクーラ22の冷却に費やすべく、ステップS8に移行する。
また、上記ステップS4の判定がYesの場合には、筒内への燃料噴射によるデリバリパイプ13内の燃料の温度低下が著しくて燃料クーラ29による冷却が不要と見なせることから、ステップS8に移行する。
よって、上記ステップS2〜4の何れの場合も、燃料クーラ29には冷却水が供給されずに燃料クーラ29による燃料の冷却は実行されない。ウォータポンプ38からはインタクーラ22の必要冷却水量に相当する冷却水が吐出され、その冷却水がインタクーラ22のみに供給されてエンジン1への吸気の冷却に利用される。これにより、ウォータポンプ38を駆動するモータの電力消費の増大が防止される。
図3はエンジン1の自動停止中にECU41が実行するエンジン停止時冷却制御ルーチンを示すフローチャートであり、ECU41はエンジン1の自動停止中に当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
以上がエンジン1の自動停止中の基本的な制御内容であり、このときには燃料クーラ29及びターボチャージャ21の軸受け部21cの冷却が必要であるとの観点の下に、両者29,21cの冷却のために必要な冷却水量がステップS14での駆動デューティの設定に基づきウォータポンプ38から吐出されると共に、ステップS11の流量制御弁37の開度設定に基づき燃料クーラ29側のみに冷却水が分配される。
なお、本実施形態ではアイドルストップ制御によるエンジン1の自動停止中に冷却制御を実行したが、これに限るものではなく、通常のエンジン停止時に当該冷却制御を実行してもよい。この場合でもターボチャージャ21の軸受け部21cの焼付き防止が必要であり、また、エンジン停止から時間を経ずに始動した場合、エンジン停止中に燃料を冷却しておけば、上記と同じく、その後のエンジン始動後にインジェクタ11の温度上昇を抑制できる。そしてエンジン停止中に冷却不要になれば、ステップS17の処理に基づきウォータポンプ38が停止されるため、何ら問題は生じない。
またエンジン1の運転中において、デリバリパイプ13内の燃料温度Tfdが判定値Tfd0以下の場合には、燃料クーラ29による燃料の冷却が不要と見なし(ステップS3)、インジェクタ11の噴射量qが判定値q0を超えている場合には、筒内への燃料噴射によるデリバリパイプ13内の燃料の温度低下が著しくて燃料クーラ29による冷却が不要と見なし(ステップS4)、何れの場合も燃料クーラ29への冷却水の供給を中止している(ステップS8)。よって、ウォータポンプ38を駆動するモータの電力消費の増大を防止することができる。
また上記実施形態では、インジェクタ11に供給される燃料、インタクーラ22、ターボチャージャ21の軸受け部21cを冷却対象としたが、これに限るものではない。例えば、本発明をターボチャージャ21を備えない直噴エンジン1に適用した上で、そのデリバリパイプ13に設けた燃料クーラ29のみを冷却対象として上記実施形態の制御を実行してもよい。
11 インジェクタ
14 燃料経路
21 ターボチャージャ
22 インタクーラ
29 燃料クーラ
37 流量制御弁(流量調整手段)
38 ウォータポンプ(流量調整手段)
41 ECU(放熱量算出手段、冷却制御手段、アイドルストップ制御手段)
Claims (5)
- 筒内に燃料を噴射するインジェクタの燃料経路に配設され、冷却水の流通により前記インジェクタに供給される燃料を冷却する燃料クーラと、
前記燃料クーラに供給される冷却水の流量を調整可能な流量調整手段と、
直噴エンジンの運転状態に基づき前記インジェクタに供給される燃料の冷却のために前記燃料クーラに要求される放熱量を算出する放熱量算出手段と、
前記放熱量算出手段により算出された要求放熱量に基づき前記流量調整手段を制御する冷却制御手段と
を備え、
前記放熱量算出手段は、前記直噴エンジンの停止中に、前記インジェクタに供給される燃料が有する実熱量と予め設定された目標温度時の燃料の熱量との差に基づき、前記燃料クーラへの要求放熱量を算出し、前記直噴エンジンの運転中には、前記実熱量と前記目標温度時の熱量との差から筒内への燃料噴射により奪われる熱量を減算して、前記燃料クーラへの要求放熱量を算出する
ことを特徴とする直噴エンジンの冷却装置。 - 前記流量調整手段は、前記燃料クーラに供給される冷却水を吐出するウォータポンプまたは該ウォータポンプから吐出された冷却水の流量を制御する流量制御弁の少なくとも一方であり、
前記冷却制御手段は、前記燃料クーラへの要求放熱量に基づき前記ウォータポンプの回転速度または前記流量制御弁の開度を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の直噴エンジンの冷却装置。 - 前記直噴エンジンにはターボチャージャのコンプレッサにより加圧された吸気を冷却するための水冷式インタクーラが備えられ、
前記放熱量算出手段は、吸気の冷却のために前記水冷式インタクーラに要求される放熱量を算出し、
前記流量調整手段は、冷却水を吐出するウォータポンプ、及び該ウォータポンプから吐出された冷却水を前記燃料クーラ側と前記水冷式インタクーラ側とに任意の比率で分配可能な流量制御弁であり、
前記冷却制御手段は、前記燃料クーラ及び前記インタクーラに要求される放熱量に基づき、前記ウォータポンプの回転速度及び前記流量制御弁による冷却水の分配比率を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の直噴エンジンの冷却装置。 - 所定の停止条件の成立に基づき前記直噴エンジンを自動停止させ、その後に所定の始動条件の成立に基づき前記直噴エンジンを自動始動するアイドルストップ制御手段をさらに備え、
前記放熱量算出手段は、前記アイドルストップ制御手段による前記直噴エンジンの自動停止中に、前記実熱量と前記目標温度時の熱量との差に基づき前記燃料クーラへの要求放熱量を算出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の直噴エンジンの冷却装置。 - 前記冷却制御手段は、前記インジェクタに供給される燃料の温度が予め設定された第1の判定値以下の場合、または前記インジェクタの燃料噴射量が予め設定された第2の判定値を超えている場合の何れかに該当するときに、前記流量調整手段により前記燃料クーラへの冷却水の供給を中止する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の直噴エンジンの冷却装置。
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