以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
(1)ハニカムフィルタ(第一実施形態):
図1〜図6に示すように、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態は、ハニカム構造部4と、外周壁3と、目封止部5と、を備えたハニカムフィルタ100である。ここで、図1は、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、図1に示すハニカムフィルタの流出端面を模式的に示す平面図である。図4は、図2のA−A’断面を模式的に示す、断面図である。図5は、図3のB−B’断面を模式的に示す、断面図である。図6は、図5のC−C’断面を模式的に示す、断面図である。
ハニカム構造部4は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。外周壁3は、ハニカム構造部4を囲繞するように配設されたものである。目封止部5は、複数のセル2のそれぞれにおいて、各セル2のいずれか一方の開口部に配設されたものである。ここで、ハニカム構造部4の流出端面12側の開口部に目封止部5が配設されたセル2を、流入セル2aとする。また、ハニカム構造部4の流入端面11側の開口部に目封止部5が配設されたセル2を、流出セル2bとする。
ハニカムフィルタ100においては、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、流入セル2aと流出セル2bとが隣り合うように配置されている。更に、流入セル2a及び流出セル2bは、それぞれ列状に配置されている。例えば、図2〜図4においては、複数の流入セル2aが紙面の横方向に配列している。そして、上記した横方向に配列した各流入セル2aと、横長形状の流出セル2bとが、紙面の縦方向において、隔壁1を挟んで隣り合うように配置されている。以下、本明細書では、流入セル2a及び流出セル2bが列状に配置される状態において、各列の延びる方向を「横方向」といい、また、各列の延びる方向に直交する方向を「縦方向」ということがある。
図2〜図4に示すハニカムフィルタ100においては、列方向に延びるように配設された隔壁1により、「流入セル2aの列」と「流出セル2bの列」とが区画されている。そして、「流入セル2aの列」については、列方向と直交する方向に延びるように配設された隔壁1により、更に、流入セル2aの列が区画され、複数の流入セル2aが配列している。一方、流出セル2bは、1つの列に対して、横長形状の流出セル2bが1つ存在するものである。即ち、図2〜図4に示すように、「流出セル2bの列」については、列方向と直交する方向に延びるように配設された隔壁1が存在せずに、1つの列に対して、横長形状の流出セル2bが1つ存在するものとなっている。上記のように、1つの列に対して、横長形状の流出セル2bが1つ存在する場合も、流出セル2bは、列状に配置されているといえる。
本実施形態のハニカムフィルタ100は、流出セル2b内の空間と外周壁3の外側の外部空間とを、セル2の延びる方向に直交する方向に連通する連通孔7を有する点に、特徴的な構成を見出すことができる。この連通孔7は、外周壁3の側面に開口しており、流出セル2b内に流入した排ガス等の流体を、セル2の延びる方向に直交する方向に排出するための流路となっている。したがって、ハニカムフィルタ100は、流出セル2bに流入した排ガス等の流体を、上記連通孔7から、当該外周壁3の外側の外部空間に排出可能に構成されており、従来のハニカムフィルタに比して、省スペース化を実現することできるという効果を奏する。このように構成されたハニカムフィルタ100によれば、自動車などのような設置スペースに制約がある状況下においても、ハニカムフィルタ100を設置するスペースの確保が容易となる。
ハニカムフィルタ100においては、ハニカム構造部4に形成されている全ての流出セル2bが、連通孔7を介して、外周壁3の外側の外部空間と連通していることが好ましい。即ち、ハニカムフィルタ100は、流出セル2bの列の数と同数以上の連通孔7を有することが好ましい。更に、図1及び図6等に示すように、流出セル2bの列の両端側に連通孔7を有する場合には、流出セル2bの列の数の2倍以上の連通孔7を有することが好ましい。また、図6に示すように、1つの列に対して、横長形状の流出セル2bが1つ存在する場合は、外周壁3を貫通するような連通孔7によって、流出セル2b内の空間と外周壁3の外側の外部空間とを連通することができる。また、1つの列に対して、流出セル2bが2つ以上存在する場合は、流出セル2b同士を区画する隔壁1に対しても連通孔7(図示せず)を形成することが好ましい。このように構成することによって、1つの列に対して、流出セル2bが2つ以上配列する場合であっても、流出セル2b内の空間と外周壁3の外側の外部空間とを、連通孔7によって連通することができる。
本実施形態のハニカムフィルタ100において、流入セル2aとは、流入端面11側が開口しており、流入端面11側から流体の流入が可能に構成されたセル2のことを意味している。一方で、流出セル2bについては、図1〜図6に示すように、流出端面12側が開口しているセル2であってもよいし、流出端面12側の開口部にも、更に目封止部5が配設されたセル2であってもよい。即ち、流出セル2bは、流出端面12側が開口しているセル2、又は、流入端面11及び流出端面12の両方が目封止部5によって目封止されているセル2である。流入端面11及び流出端面12の両方が目封止部5によって目封止されている流出セル2bにおいては、連通孔7により、当該流出セル2b内に流入した流体の排出が可能である。
上記したように、本実施形態のハニカムフィルタにおいては、連通孔により外周壁の外部空間と連通した流出セルのうちの一部又は全部が、同一列上に存在する流出セルの流出端面側の開口部に、更に目封止部5が配設されていてもよい。このように構成されたハニカムフィルタにおいては、流出セル内に流入した流体を、連通孔によって優先的に排出することができる。なお、流入端面及び流出端面の両方が目封止部によって目封止されている構成については、後述する第二実施形態にて更に詳しく説明する。
本実施形態のハニカムフィルタにおいては、列方向における1個の流入セルの幅と、列方向における1個の流出セルの幅とが異なっていてもよい。流出セルの幅を流入セルの幅よりも大きくすることで、流出セルにおける流路抵抗を低減させ、連通孔7からの流出を促進させることができる、という利点がある。逆に、流入セルの幅を流出セルの幅よりも大きくすることで、ススなどが堆積した場合の圧力損失を低減することができる、という利点がある。例えば、列方向における1個の流入セルの幅と、列方向における1個の流出セルの幅とを比較した場合に、いずれか一方が少なくとも1.1倍であることが好ましく、1.2倍〜2.0倍であることが更に好ましく、1.3倍〜1.8倍であることが特に好ましい。
列方向における1個の流入セルの開口幅は、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.1〜3.5mmであることが更に好ましく、1.2〜3.0mmであることが特に好ましい。列方向における1個の流入セルの開口幅が、4.0mmを超えると、ハニカムフィルタの強度が不足することがある。列方向における1個の流入セルの開口幅が、1.0mm未満であると、ハニカムフィルタの圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生することがある。
流入セルの列の幅、及び流出セルの列の開口幅については、例えば、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.1〜3.5mmであることが更に好ましく、1.2〜3.0mmであることが特に好ましい。流入セルの列の開口幅、及び流出セルの列の開口幅を、以下、単に「セル列の幅」ということがある。セル列の幅が、4.0mmを超えると、ハニカムフィルタの強度が不足することがある。セル列の幅が、1.0mm未満であると、ハニカムフィルタの圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生することがある。
各セルを区画形成する隔壁の厚さは、0.15〜0.6mmであることが好ましく、0.2〜0.55mmであることが更に好ましく、0.3〜0.5mmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが0.15mm未満であると、ハニカムフィルタの十分な強度を維持することができなくなることがある。隔壁の厚さが0.6mmを超えると、ハニカムフィルタの圧力損失が増大してしまう。このため、ハニカムフィルタを車両に搭載した際に、排気抵抗が高くなり燃費の悪化を引き起こしてしまう。隔壁の厚さは、ハニカムフィルタの断面の形状を、走査型電子顕微鏡によって観測することにより測定した値である。
列方向と直交する方向に配設された隔壁の厚さと、当該列方向と平行に配設された隔壁の厚さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する面において、列方向と直交する方向に配設された隔壁のうちの少なくとも一部の隔壁の厚さが、当該列方向と平行に配設された隔壁の厚さよりも厚くなるように構成されていてもよい。
ハニカム構造部の隔壁の気孔率が、25〜75%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましく、35〜65%であることが特に好ましい。隔壁の気孔率が25%未満であると、ハニカムフィルタの圧力損失が増大することがある。隔壁の気孔率が75%を超えると、ハニカムフィルタの機械的強度が不十分となり、排ガス浄化装置に用いられる缶体内にハニカムフィルタを収納する際に、ハニカムフィルタを十分な把持力で保持することが困難となる。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。
ハニカム構造部の材料が、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ、炭化珪素−コージェライト系複合材料、チタン酸アルミニウム、及びチタン酸アルミニウム−コージェライト系複合材料から構成される材料群より選択される少なくとも一種の材料を含むことが好ましい。そして、ハニカム構造部の材料が、上記材料群より選択される少なくとも一種の材料を、30質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことが更に好ましく、50質量%以上含むことが特に好ましい。
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状は、特に限定されない。但し、流入セル及び流出セルが、それぞれ一列に配列可能な形状であることが好ましい。流入セルは、セルの形状が四角形であることが好ましい。流出セルは、流入セルのセル形状よりも、列に延びる方向に横広の四角形であることが好ましい。
ハニカムフィルタの全体形状については特に制限はない。本実施形態のハニカムフィルタの全体形状は、流入端面及び流出端面の形状が、円形、又は楕円形であることが好ましく、特に、円形であることが好ましい。また、ハニカムフィルタの大きさは、特に限定されないが、流入端面から流出端面までの長さが、100〜400mmであることが好ましい。また、ハニカムフィルタの全体形状が円柱状の場合、それぞれの端面の直径が、100〜400mmであることが好ましい。
連通孔は、ハニカム構造部のセルの延びる方向の中央部分よりも流出端面側寄りに形成されていることが好ましい。このように構成されることにより、ハニカムフィルタの浄化性能を良好に発現させることができる。なお、連通孔は、ハニカム構造部のセルの延びる方向の長さに対して、流入端面から50〜100%の範囲に形成されていることがより好ましく、55〜90%の範囲に形成されていることが更に好ましく、60〜80%の範囲に形成されていることが特に好ましい。
連通孔の開口部分の大きさについては特に制限はない。「連通孔の開口部分の大きさ」とは、外周壁の側面に開口する、1つの連通孔の開口部分の大きさのことをいう。例えば、連通孔の開口部分の大きさは、連通孔が形成された流出セルと隣り合う流入セルの総開口面積の1〜50%であることが好ましい。
本実施形態のハニカムフィルタは、内燃機関の排ガス浄化用のフィルタとして好適に用いることができる。また、本実施形態のハニカムフィルタは、ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されたものであってもよい。
(2)ハニカムフィルタ(第二実施形態):
次に、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態について説明する。本実施形態のハニカムフィルタは、図7及び図8に示すようなハニカムフィルタ200である。ここで、図7は、本発明のハニカムフィルタの第二実施形態の流出端面を模式的に示す平面図である。図8は、図7のD−D’断面を模式的に示す、断面図である。
図7及び図8に示すハニカムフィルタ200は、柱状のハニカム構造部4と、外周壁3と、目封止部5とを備えたものである。そして、ハニカムフィルタ200は、以下に説明するような目封止部5を更に備えること以外は、図1〜図6に示す第一実施形態のハニカムフィルタ100と同様に構成されている。図7及び図8に示すハニカムフィルタ200は、連通孔7により外周壁3の外部空間と連通した流出セル2bの流出端面側の開口部に配設された目封止部5を更に備えたものである。
図7及び図8に示すハニカムフィルタ200においては、流出セル2bが、流入端面11及び流出端面12の両方が目封止部5によって目封止されているセル2となっている。このように構成されたハニカムフィルタ200は、流出セル2b内に流入した全ての流体を、外周壁3の側面に開口した連通孔7から排出することができる。このように構成することによって、ハニカムフィルタ200の流出端面12側において、排ガスを排出するための配管の取り回しが不要となり、ハニカムフィルタ200の設置スペースをより小さくすることができる。
(3)ハニカムフィルタ(第三実施形態):
次に、本発明のハニカムフィルタの第三実施形態について説明する。本実施形態のハニカムフィルタは、図9〜図12に示すようなハニカムフィルタ300である。ここで、図9は、本発明のハニカムフィルタの第三実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図10は、図9に示すハニカムフィルタの流出端面を模式的に示す平面図である。図11は、図10のE−E’断面を模式的に示す、断面図である。図12は、図11のF−F’断面を模式的に示す、断面図である。
図9〜図12に示すハニカムフィルタ300は、柱状のハニカム構造部4と、外周壁3と、目封止部5とを備えたものである。ハニカム構造部4は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。外周壁3は、ハニカム構造部4を囲繞するように配設されたものである。目封止部5は、複数のセル2のそれぞれにおいて、各セル2のいずれか一方の開口部に配設されたものである。
ハニカムフィルタ300においても、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、流入セル2aと流出セル2bとが隣り合うように配置されている。更に、流入セル2a及び流出セル2bは、それぞれ列状に配置されている。
ハニカムフィルタ300においては、図9〜図12に示すように、列方向と直交する方向に延びるように配設された隔壁1aが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面を縦断するように配置されている。したがって、ハニカムフィルタ300においては、流出セル2bの列が、上記隔壁1aによって更に区画され、1つの列内において、複数の流出セル2bが配列するように構成されている。
ハニカムフィルタ300は、流出セル2b内の空間と、外周壁3の外側の外部空間とを、セル2の延びる方向に直交する方向に連通する連通孔7を有する。この連通孔7は、外周壁3の側面に開口しており、流出セル2b内に流入した排ガス等の流体を、セル2の延びる方向に直交する方向に排出するための流路となっている。
ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、列方向と直交する方向に配設された隔壁1aのうちの少なくとも一部の隔壁1aの厚さが、当該列方向と平行に配設された隔壁1の厚さよりも厚くなっていることが好ましい。特に、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、当該面を縦断するように配設された隔壁1aの厚さが、当該面を横断するように配設された隔壁1の厚さよりも厚くなっていることがより好ましい。このように構成することにより、ハニカムフィルタ300の強度、特に、列方向と直交する方向における圧縮強度を良好に向上させることができる。
ハニカムフィルタ300は、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、当該面を縦断するように配設された3つの隔壁1aにより、当該面が横方向に4分割されている。そして、図11及び図12に示すように、当該面を縦断するように配設された3つの隔壁1aのうちの中央に位置する隔壁1aは、当該面の中央にて、流出セル2bを2つに区画している。当該面を縦断するように配設された3つの隔壁1aのうちの両側の2つの隔壁1aは、外周寄りの流出セル2bと中央寄りの流出セル2bとを区画しつつ、その隔壁1aの一部に、当該隔壁1aが区画する2つの流出セル2b相互間を連通する連通孔7を有している。そして、ハニカムフィルタ300においては、外周寄りの流出セル2bが、外周壁3に形成された連通孔7を介して、外周壁3の外側の外部空間と連通している。このため、ハニカムフィルタ300は、外周壁3に開口している連通孔から、流出セル2b内に流入した排ガス等の流体を排出することができる。
ここで、本実施形態のハニカムフィルタ300において、列方向と直交する方向に配設された隔壁1aの厚さを「隔壁1aの厚さLa」とし、列方向と平行に配設された隔壁1の厚さを「隔壁1の厚さLb」とする。隔壁1aの厚さLaは、隔壁1の厚さLbの1.1〜10倍であることが好ましく、1.5〜8.0倍であることが更に好ましく、2.0〜5.0倍であることが特に好ましい。隔壁1aの厚さLaが、隔壁1の厚さLbの1.1倍未満であると、列方向と直交する方向に対しての機械的強度向上効果が十分に発現しないことがある。一方、隔壁1aの厚さLaが、隔壁1の厚さLbの10倍を超えると、流出セル2bの容積が減少し、ハニカムフィルタ200の圧力損失が増大することがある。
ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面を縦断するように配設された隔壁1aは、図9〜図12に示すような3つの隔壁1aに限定されることはなく、その数を適宜増減することができる。この際、流出セル2bは、1つの列において、当該面の中央にて2つに区画され、更に、2つに区画された流出セル2bは、連通孔7を有する隔壁1aによって複数個に区画されていることが好ましい。
(4)ハニカムフィルタ(第四実施形態):
次に、本発明のハニカムフィルタの第四実施形態について説明する。本実施形態のハニカムフィルタは、図17〜図20に示すようなハニカムフィルタ400である。ここで、図17は、本発明のハニカムフィルタの第四実施形態の流入端面を模式的に示す平面図である。図18は、図17に示すハニカムフィルタの流出端面を模式的に示す平面図である。図19は、図17に示すハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。図20は、図19に示すハニカムフィルタの一部を拡大した拡大断面図である。
図17〜図20に示すように、ハニカムフィルタ400は、柱状のハニカム構造部24と、外周壁23と、目封止部25とを備えたものである。そして、本実施形態のハニカムフィルタ400においては、ハニカム構造部24が、複数個のハニカムセグメント24aと、接合層29と、から構成されたセグメント構造を有している。
ハニカムセグメント24aは、図13〜図16に示すように、流体の流路となる複数のセル22を区画形成する多孔質の隔壁21を有する柱状のものである。図13は、本発明のハニカムフィルタの第四実施形態に用いられるハニカムセグメントを模式的に示す斜視図である。図14は、図13に示すハニカムセグメントの流入端面を模式的に示す平面図である。図15は、図13に示すハニカムセグメントの流出端面を模式的に示す平面図である。図16は、図13に示すハニカムセグメントのセルの延びる方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
図13〜図16に示すように、目封止部25は、ハニカムセグメント24aに形成された複数のセル22のそれぞれにおいて、各セル22のいずれか一方の開口部に配設されたものである。ここで、ハニカムセグメント24aの流出端面32側の開口部に目封止部25が配設されたセル22を、流入セル22aとする。また、ハニカムセグメント24aの流入端面31側の開口部に目封止部25が配設されたセル22を、流出セル22bとする。
ハニカムセグメント24aのセル22の延びる方向に直交する面において、流入セル22aと流出セル22bとが隣り合うように配置されている。更に、流入セル22a及び流出セル22bは、それぞれ列状に配置されている。例えば、図13〜図16においては、複数の流入セル22aが紙面の横方向に配列している。そして、上記した横方向に配列した各流入セル22aと、横長形状の流出セル22bとが、紙面の縦方向において、隔壁21を挟んで隣り合うように配置されている。なお、ハニカムセグメント24aの流入セル22a及び流出セル22bの位置関係は、第一実施形態のハニカムフィルタにおける好適例と同様に構成されていることが好ましい。
ハニカムセグメント24aは、流出セル22b内の空間とハニカムセグメント24aの外部の空間とを、セル22の延びる方向に直交する方向に連通する第二連通孔28を有している。第二連通孔28は、ハニカムセグメント24aの流出セル22b内に流入した流体を、セル22の延びる方向に直交する方向に排出するための流路となる。
図17〜図20に示すハニカムフィルタ400においては、上記のように構成されたハニカムセグメント24aの複数個が、接合層29を介して相互に接合されることにより、1つのハニカム構造部24が形成されている。接合層29は、複数個のハニカムセグメント24aの側面26(図13参照)同士を接合するものであり、例えば、セラミック材料を含む接合材によって形成されたものを挙げることができる。以下、複数個のハニカムセグメント24aが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造部24を、「セグメント構造のハニカム構造部24」ということがある。
本実施形態のハニカムフィルタ400においては、複数個のハニカムセグメント24aを接合する接合層29も、第二連通孔28を有している。接合層29における第二連通孔28は、接合層29によって接合された2つのハニカムセグメント24aの相互間で、流出セル22b内に流入した流体を移動させるための流路となる。
ハニカムフィルタ400の外周壁23は、セグメント構造のハニカム構造部24の外周を囲繞するように配設されたものである。外周壁23は、例えば、セグメント構造のハニカム構造部24の側面にセラミック材料を含む外周コート材を塗工することによって作製された外周コート層を挙げることができる。
ハニカムフィルタ400は、各ハニカムセグメント24aの流出セル22b内の空間と外周壁23の外側の外部空間とを、セル22の延びる方向に直交する方向に連通する連通孔27を有する。即ち、ハニカムフィルタ400においては、セグメント構造のハニカム構造部24の外周を囲繞するように配設された外周壁23に、連通孔27が形成されている。そして、この連通孔27によって、各ハニカムセグメント24aの流出セル22b内の空間と、外周壁23の外側の外部空間と、が連通している。したがって、このように構成されたハニカムフィルタ400においても、第一実施形態のハニカムフィルタ100(図1参照)と同様の作用効果を得ることができる。
(5)ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本発明のハニカムフィルタを製造する方法について説明する。
まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を作製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。
次に、作製した坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び最外周に配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を得る。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが形成されたものを用いることができる。特に、本発明のハニカムフィルタを製造する際には、押出成形用の口金として、流入セル及び流出セルの形状が、所望の形状となるようなスリットが形成された口金を用いることが好ましい。
なお、セグメント構造のハニカム構造部を備えたハニカムフィルタを製造する場合には、押出成形によって、複数個のハニカムセグメント用のハニカム成形体を作製する。
押出成形によって得られたハニカム成形体には、その外周面に開口を有する連通孔が形成されていない。このため、以下に説明する乾燥工程や焼成工程を行った後に、適宜、孔開け加工等の公知加工技術を用いて連通孔を形成することが好ましい。
次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
次に、ハニカム成形体に形成されたセルの開口部を目封止することで目封止部を形成する。具体的には、ハニカム成形体の一方の端面全域を覆うようにフィルムを被せ、当該フィルムの、流出セルとなるセルの開口部に該当する箇所に孔を開ける。次に、ハニカム成形体のフィルムを施した側の端部を、セラミック材料を含有するスラリー状の目封止材料に浸漬することによって、流出セルとなるセルの開口部に、目封止材料を充填する。ハニカム成形体の一方の端面は、最終的に得られるハニカムフィルタにおいて、流入端面とする。次に、ハニカム成形体の他方の端面全域を覆うようにフィルムを被せ、当該フィルムの、流入セルとなるセルの開口部に該当する箇所に孔を開ける。次に、ハニカム成形体のフィルムを施した側の端部を、セラミック材料を含有するスラリー状の目封止材料に浸漬することによって、流入セルとなるセルの開口部に、目封止材料を充填する。ハニカム成形体の他方の端面は、最終的に得られるハニカムフィルタにおいて、流出端面となる。本発明のハニカムフィルタを製造する際には、流入セル及び流出セルのそれぞれが、一の方向に列状に配置されるように目封止部を形成する。この際、流入セルの列と、流出セルの列とが、隔壁を隔てて、列方向と直交する方向に隣り合うようにする。
次に、得られたハニカム成形体を焼成する焼成工程を行うことにより、ハニカム焼成体を得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
次に、得られたハニカム焼成体の外周壁の側面から、流出セルまで貫通する孔を穿孔する。このようにして外周壁に穿孔された孔が、本発明のハニカムフィルタにおける連通孔となる。流出セルまで貫通する孔を穿孔する方法については特に制限はなく、例えば、ハンドグラインダーや超音波カッターによって行うことができる。
また、流入セルの列方向において、複数個の流入セルが縦方向に延びる隔壁によって区画されている場合には、流入セル同士を縦方向に区画する隔壁に対しても、ハニカム焼成体の外周壁の側面から孔を穿孔することが好ましい。このように穿孔した孔が、例えば、図11に示すハニカムフィルタ300における、2つの流出セル2b相互間を連通する連通孔7となる。
流出セルまで貫通する孔を穿孔する工程は、ハニカム成形体を焼成する焼成工程の前に行ってもよい。即ち、ハニカム成形体を乾燥した乾燥体に対して、当該乾燥体の外周壁の側面から、流出セルまで貫通する孔を穿孔し、連通孔を形成してもよい。
セグメント構造のハニカム構造部を備えたハニカムフィルタを製造する場合には、連通孔を形成したハニカム焼成体を1つのハニカムセグメントとする。そして、複数個のハニカムセグメントの側面に、セラミック原料を含む接合材を塗工し、複数個のハニカムセグメントを相互に接合することによって、セグメント構造のハニカム構造部を作製する。ハニカムセグメントの側面に接合材を塗工する際には、ハニカムセグメントの側面に開口する第二連通孔の開口部を避けるように接合材を塗工することで、接合材によって形成される接合層に対しても、第二連通孔を簡便に形成することができる。このようにして得られたセグメント構造のハニカム構造部の側面に、従来公知の方法により外周コート材を塗工し、ハニカムフィルタの外周壁となる外周コート層を作製する。そして、この外周コート層に対して、第二連通孔が形成されている箇所に孔を穿孔することで、ハニカムフィルタの連通孔を形成する。
以上のような方法により、本発明のハニカムフィルタを製造することができる。ただし、本発明のハニカムフィルタを製造する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはない。
(実施例1)
炭化珪素粉末を80質量部と、Si粉末20質量部とを混合して、混合粉末を得た。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して円柱状の坏土を作製した。
次に、所定の形状の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が四角柱状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、図13〜図16に示すハニカムセグメント24aのように、その端面において、横方向に四角形のセル22が隣接するように配列したセル列と、横方向の一端から他端までが1つのセル22によって構成されたセル列と、を含むものであった。そして、上記した2種類のセル列は、縦方向に交互に配置されていた。実施例1においては、このようなハニカム成形体を、16個作製した。
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、「横方向に四角形のセルが隣接するように配列したセル列」が覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル列の開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム成形体の流出端面に、「横方向の一端から他端までが1つのセルによって構成されたセル列」が覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル列の開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。以下、「横方向に四角形のセルが隣接するように配列したセル列」を「流入セル列」ということがある。また、「横方向の一端から他端までが1つのセルによって構成されたセル列」を「流出セル列」ということがある。
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を脱脂し、焼成してハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。ハニカム焼成体は、全体形状が四角柱状であった。ハニカム焼成体の端面の形状は、一辺の長さが36mmの正方形であった。ハニカム焼成体のセルの延びる方向の長さは、152mmであった。ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、0.40mmであった。流入セル列の幅は、2.0mmであり、流出セル列の幅は、2.0mmであった。また、流入セル列は、列の延びる方向に2.0mmの開口幅で、縦方向の隔壁が配置されていた。
次に、得られたハニカム焼成体に、ハニカム焼成体の側面から流入セル列まで貫通する孔を穿孔した。孔を穿孔する位置は、ハニカム焼成体の流入端面から80mmの位置とした。孔の大きさは、幅1.5mmとして、セルの延びる方向の長さは、隣り合う流入セルの総開口面積の30%となるように調整した。「流入セル列まで貫通する孔」の穿孔は、ハニカム焼成体の全ての流入セル列に対して行った。
次に、得られた16個のハニカム焼成体を、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合材によって接合し、ハニカム接合体を作製した。ハニカム接合体は、その端面において、縦方向に4個、横方向に4個の合計16個のハニカム焼成体が配列するように接合して作製した。なお、ハニカム焼成体の側面に接合材を塗工する際には、上記した孔の開口部分を避けるようにして接合材を塗工し、当該孔の開口部分が接合材によって塞がれないようにした。
次に、ハニカム接合体の外周部を研削によって加工して、ハニカム接合体のセルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形にした。その後、研削加工したハニカム接合体の最外周に、セラミック原料を含む外周コート材を塗工した。その後、ハニカム焼成体に穿孔した孔の開口部分に該当する箇所の外周コート材を除去し、流入セルと外部空間とを連通する連通孔を形成した。
外周コート材を塗工したハニカム接合体を、600℃で熱処理して、実施例1のハニカムフィルタを作製した。実施例1のハニカムフィルタは、ハニカム接合体によって構成されたハニカム構造部と、外周コート材によって形成された外周壁と、を備えたものであった。
実施例1のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が41%であった。また、端面の直径が144mm、セルの延びる方向における長さが152mmであった。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
実施例1のハニカムフィルタは、ハニカムフィルタの外周壁に開口した連通孔から、流出セル内の流体を排出可能に構成されたものあった。
(実施例2)
実施例1にて作製したハニカム成形体と同形状のハニカム成形体を16個作製した。得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
実施例2においては、以下の方法で、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法によって、16個のハニカムセグメントを用いてハニカムフィルタを作製した。まず、乾燥したハニカム成形体の流入端面に、「横方向に四角形のセルが隣接するように配列したセル列」が覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル列の開口部に目封止スラリーを充填した。次に、ハニカム成形体の流出端面について、マスクを施さず、ハニカム成形体の流出端面側の端部を、目封止スラリーに浸漬し、流出端面側の全てセル列の開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。
実施例2のハニカムフィルタは、流出端面側において、流入セル及び流出セルの開口部が全て目封止部によって目封止されたものであった。実施例2のハニカムフィルタは、ハニカムフィルタの外周壁に開口した連通孔から、流出セル内の流体を排出するように構成されたものあった。
(比較例1)
炭化珪素粉末を80質量部と、Si粉末20質量部とを混合して、混合粉末を得た。この混合粉末に、バインダ、造孔材、及び水を添加して、成形原料とした。次に、成形原料を混練して円柱状の坏土を作製した。
次に、所定の形状の口金を用いて坏土を押出成形し、端面における開口部の形状が四角形であるセルを複数有し、全体形状が四角柱状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、16個作製した。
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部を、目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を脱脂し、焼成してハニカム焼成体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。ハニカム焼成体は、全体形状が四角柱状であった。ハニカム焼成体の端面の形状は、一辺の長さが36mmの正方形であった。
次に、得られた16個のハニカム焼成体を、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合材によって接合し、ハニカム接合体を作製した。ハニカム接合体は、その端面において、縦方向に4個、横方向に4個の合計16個のハニカム焼成体が配列するように接合して作製した。
次に、ハニカム接合体の外周部を研削によって加工して、ハニカム接合体のセルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形にした。その後、研削加工したハニカム接合体の最外周に、セラミック原料を含む外周コート材を塗工した。次に、外周コート材を塗工したハニカム接合体を、600℃で熱処理して、比較例1のハニカムフィルタを作製した。
比較例1のハニカムフィルタは、隔壁の気孔率が41%であった。また、隔壁の厚さが、0.40mmであった。比較例1のハニカムフィルタは、セル密度が、24.8個/cm2であり、流入セルと流出セルとが隔壁を挟んで交互に配置されたものであった。比較例1のハニカムフィルタは、端面の直径が144mm、セルの延びる方向における長さが152mmであった。
(設置スペース評価)
比較例1のハニカムフィルタを、ディーゼルエンジンの排気管に接続して、排ガス中の粒子状物質を除去する浄化試験を行った。この際、比較例1のハニカムフィルタでは、ハニカムフィルタの下流側に配設される排気管の長さを200mm以上確保しないと、排気抵抗の増加が確認された。実施例1のハニカムフィルタについて、ハニカムフィルタの下流側に配設される排気管の長さを200mm確保した比較例1のハニカムフィルタと同程度の排気抵抗となるように、ハニカムフィルタの下流側に配設される排気管の長さを調整した。実施例1のハニカムフィルタは、比較例1のハニカムフィルタに比して、ハニカムフィルタの下流側に配設される排気管の長さを50%短くすることができた。更に、実施例2のハニカムフィルタは、ハニカムフィルタの下流側に排気管を設置する必要がなく、ハニカムフィルタの設置スペースを大幅に低減することができた。なお、実施例1、2及び比較例1のハニカムフィルタは、粒子状物質を捕集除去する浄化性能は、ほぼ同程度の性能を示すものであった。