JP6120709B2 - ハニカム触媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、ハニカム触媒体に関する。更に詳しくは、本発明は、機械的強度が高く、排ガス浄化性能に優れ、圧力損失が小さいハニカム触媒体に関する。
従来、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等には、これらから排出される排ガスに含有されるNO等を浄化しつつ、微粒子状物質を捕集するため、ハニカム触媒体が使用されている。このハニカム触媒体は、炭化珪素、コージェライト等からなるハニカム形状のハニカム構造体に、ゼオライトなどの触媒が担持されたものである。
そして、上記ハニカム触媒体は、排ガスと触媒との接触面積を大きくするため、ハニカム構造体のセルを区画形成する隔壁の表面や隔壁内に形成された気孔の表面にゼオライトなどの触媒が担持されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平09−094434号公報
上記ハニカム触媒体において、隔壁の気孔の表面に触媒を担持させることと、排ガスの浄化時における圧力損失の増大を回避することの両方を満たすには、隔壁の気孔率を大きくする必要がある。しかし、隔壁の気孔率を大きくすると、ハニカム構造体の機械的強度が十分に得られず、このハニカム構造体に触媒を担持させて得られるハニカム触媒体ついても、十分な機械的強度が得られないという問題がある。また、隔壁の気孔率が大きすぎると、触媒を担持させていない状態において、粒子状物質(Particle number(PN))の規制値(「Euro VI:6×1011」など)を満たすことが困難である。即ち、粒子状物質を十分に捕集することができないおそれがある。更に、隔壁の気孔率を大きくすれば、触媒を担持させる際に気孔内に触媒(触媒を含むスラリー)が進入し易くなるが、気孔の表面に触媒を確実に担持させることが容易でなくなってしまう。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。その課題とするところは、機械的強度が高く、排ガス浄化性能に優れ、圧力損失が小さいハニカム触媒体を提供する。
本発明によれば、以下に示す、ハニカム触媒体が提供される。
[1] 流入側端面から流出側端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、前記流出側端面における所定のセルの開口部に配設されて、前記流入側端面が開口し且つ前記流出側端面が封止された流入セルを形成する流出側目封止部と、前記流入側端面における残余のセルの開口部に配設されて、前記流出側端面が開口し且つ前記流入側端面が封止された流出セルを形成する流入側目封止部と、前記隔壁の前記流出セル側の表面に形成され、前記排ガスを浄化する触媒を有する多孔質の触媒層と、を備え、前記ハニカム構造体は、前記流入セルと前記流出セルとが、前記隔壁を隔てて交互に配置されたものであるとともに、前記複数のセルは、前記流出セルの前記セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積が、前記流入セルの前記セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されたものであり、前記ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が25〜55%であり、前記触媒層は、前記隔壁の前記流入セル側の表面に形成されず、更に、前記触媒層は、前記隔壁内の気孔の表面に形成されないか、或いは、前記隔壁内の気孔の表面に形成される場合であっても、前記セルの延びる方向に平行な断面において前記隔壁内の気孔の表面に形成された前記触媒層の総面積が、前記隔壁内における気孔の総面積の5%以下であり、前記流入セルの前記開口面積に対する、前記触媒層が形成された後の前記流出セルの前記開口面積が、95〜125%であるハニカム触媒体。
[2] 前記触媒層の気孔率が20〜80%である前記[1]に記載のハニカム触媒体。
[3] 前記触媒層が形成される前において、前記流入セルの前記開口面積に対する、前記流出セルの前記開口面積が、1.01〜2.5倍である前記[1]または[2]に記載のハニカム触媒体。
] 前記触媒層が形成された後の前記流出セルの開口面積と前記流入セルの開口面積とが、同等である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
] 前記隔壁の厚さが、102〜254μmである前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
] 前記触媒層の厚さが、20〜300μmである前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
本発明のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率が25〜55%であるため、機械的強度が高い。また、本発明のハニカム触媒体は、排ガスを浄化する触媒を有する多孔質の触媒層が形成されているため、排ガス浄化性能に優れる。更に、本発明のハニカム触媒体は、触媒層が、隔壁内の気孔の表面には形成されない。或いは、本発明のハニカム触媒体は、隔壁内の気孔の表面に形成される場合であっても、セルの延びる方向に平行な断面において隔壁内の気孔の表面に形成された触媒層の総面積が、隔壁内における気孔の総面積の5%以下である。そのため、本発明のハニカム触媒体は、触媒を気孔の表面に担持させることに起因して排ガスの流路が狭くなることを回避することができるので、圧力損失が小さい。また、本発明のハニカム触媒体は、複数のセルにおいて、流出セル(触媒層が形成される前の流出セル)の、セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積が、流入セルの、セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されている。そのため、流出セル内に触媒層を形成しても圧力損失が増大し難いので、流出セルの表面(流出セル内)に、NOなどを浄化するのに十分な触媒層を形成することができる。その結果、排ガスの優れた浄化性能を確保することが可能となる。
本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 本発明のハニカム触媒体の一実施形態の流出側端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。 本発明のハニカム触媒体の一実施形態のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
[1]ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体の一実施形態は、図1〜図3に示すハニカム触媒体100を挙げることができる。ハニカム触媒体100は、流入側端面11から流出側端面12まで延びる排ガスの流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム構造体10を備える。また、ハニカム触媒体100は、ハニカム構造体10の隔壁1の流出セル2b側の表面に形成され、排ガスを浄化する触媒を有する多孔質の触媒層5を備える。また、ハニカム構造体10は、流出側端面12における所定のセル2の開口部に配設されて、流入側端面11が開口し且つ流出側端面12が封止された流入セル2aを形成する流出側目封止部8aを備える。また、ハニカム構造体10は、流入側端面11における残余のセル2の開口部に配設されて、流出側端面12が開口し且つ流入側端面11が封止された流出セル2bを形成する流入側目封止部8bを備える。また、ハニカム構造体10は、流入セル2aと流出セル2bとが、隔壁1を隔てて交互に配置されたものである。更に、ハニカム構造体10の複数のセル2は、流出セル2bのセル2の延びる方向に垂直な断面における開口面積が、流入セル2aのセル2の延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されたものである。そして、ハニカム構造体10の隔壁1の気孔率は25〜55%である。ハニカム触媒体100は、触媒層5が、隔壁1内の気孔の表面には形成されない。或いは、ハニカム触媒体100は、隔壁1内の気孔の表面に形成される場合であっても、セル2の延びる方向に平行な断面において隔壁1内の気孔の表面に形成された触媒層5の総面積が、隔壁1内における気孔の総面積の5%以下である。
このようなハニカム触媒体100は、隔壁1の気孔率が25〜55%であるため、機械的強度が高い。また、ハニカム触媒体100は、排ガスを浄化する触媒を有する多孔質の触媒層5が形成されているため、排ガス浄化性能に優れる。更に、ハニカム触媒体100は、触媒層5が、隔壁1内の気孔の表面に形成されない。或いは、ハニカム触媒体100は、隔壁1内の気孔の表面に形成される場合であっても、セル2の延びる方向に平行な断面において隔壁1内の気孔の表面に形成された触媒層5の総面積が、隔壁1内における気孔の総面積の5%以下である。そのため、触媒を気孔の表面に担持させることに起因して排ガスの流路が狭くなくことを回避することができるので、ハニカム触媒体100は圧力損失が小さい。
なお、図1は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の流出側端面の一部を拡大して模式的に示す平面図である。図3は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
本発明のハニカム触媒体は、排ガスの浄化を行う部分(即ち、触媒)と、機械的強度を維持可能な強度を有し、且つPNの排出規制値を満たし得るフィルターとしての機能を有する部分(即ち、ハニカム構造体)と、に役割を分担したものである。即ち、本発明のハニカム触媒体は、PNを捕集するフィルターとしての機能を有する部分(隔壁)と、この隔壁とは別に、排ガスの浄化を行う部分(触媒層)とを設けることにより、機械的強度、排ガス浄化性能に優れ、圧力損失が小さいという効果を奏する。
具体的には、本発明のハニカム触媒体は、ハニカム構造体の隔壁が低気孔率(25〜55%)であるため、キャニング時に掛かる圧力に対しても十分な機械的強度を有する。また、低気孔率(25〜55%)であるため、隔壁の厚さを薄く(102〜254μm程度)することもできる。そして、ハニカム構造体の隔壁は、低気孔率(25〜55%)であるため、排ガス中のPNを確実に捕集することができる。
更に、本発明のハニカム触媒体は、触媒層が、隔壁内の気孔の表面には形成されない。或いは、本発明のハニカム触媒体は、隔壁内の気孔の表面に形成される場合であっても、セルの延びる方向に平行な断面において隔壁内の気孔の表面に形成された触媒層の総面積が、隔壁内における気孔の総面積の5%以下である。即ち、本発明のハニカム触媒体は、隔壁内の気孔の表面に実質的に触媒が担持されない(触媒層が形成されない)ものである。そのため、触媒を気孔の表面に担持させることに起因して排ガスの流路が狭くなくことを回避することができるので、本発明のハニカム触媒体は圧力損失が小さい。なお、セルの延びる方向に平行な断面において、隔壁内の気孔の総面積における「隔壁内の気孔の表面に形成された触媒層の総面積」の割合は、以下のように算出した値である。即ち、セルの延びる方向に平行な断面における隔壁の任意の複数(例えば10箇所)の画像を撮影し、撮影された画像を画像解析し、画像中の気孔及び触媒層の面積を測定することにより算出した値である。上記画像の範囲(大きさ)は、500μm×500μmの範囲とする。
また、本発明のハニカム触媒体は、複数のセルにおいて、流出セル(触媒層が形成される前の流出セル)の、セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積が、流入セルの、セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されている。そのため、流出セル内に触媒層を形成しても圧力損失が増大し難いので、流出セルの表面(流出セル内)に、NOなどを浄化するのに十分な触媒層を形成することができる。その結果、排ガスの優れた浄化性能を確保することが可能となる。即ち、流入セルの上記開口面積と流出セルの上記開口面積とが同じであると、流出セル側の隔壁の表面に触媒層を形成した際、触媒層の分だけ流出セル側の上記開口面積が小さくなってしまう。そのため、圧力損失の増大を抑制するためには触媒層を薄くするなどの方法を採用する必要がある。しかし、触媒層を薄くすると、排ガスの浄化性能が低下してしまうなどの問題がある。従って、上記構成とすることにより、圧力損失の増大を防止しつつ、排ガスの優れた浄化性能を確保することが可能となる。
また、ハニカム触媒体を再生するため、ハニカム触媒体内に堆積したススを燃焼させることがあるが、この場合、ハニカム触媒体内でススが高温になる。そして、このとき、高温のススと触媒(触媒層)が接触していると、触媒が劣化してしまう(具体的には、高温のススにより触媒が変性してしまう)おそれがある。ここで、本発明のハニカム触媒体においては、ススは、流入セル内に留まり、ススと触媒との間には、これらを隔てる隔壁が存在する。このように本発明のハニカム触媒体は、ススと触媒とが直接接触しないように隔離させることができる。本発明のハニカム触媒体は、上記のようにススと触媒とを隔離させているため、高温になったススの熱が触媒に直接伝わることを防止することができる。従って、ススが燃焼する際の高温の熱により触媒が劣化してしまうことを防止することができる。
[1−1]ハニカム構造体:
ハニカム触媒体100において、ハニカム構造体10の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の角柱状等が好ましい。図1に示すハニカム構造体10は、円筒形状の場合の例を示している。
ハニカム構造体は、流出セルと流入セルとが、隔壁を隔てて交互に配置されたものである。そして、ハニカム構造は、どちらか一方の端部が目封止部(流出側目封止部、流入側目封止部)によって封止されている。例えば、図1に示すハニカム触媒体100は、流出セル2bと流入セル2aとが、隔壁1を隔てて交互に配置されたものである。このように構成されることにより、流出セル2bに流入した流体が、隔壁1及び触媒層5を通過して流入セル2a内に流入し、流出側端面12側の開口部から流出される。そして、排ガスは、隔壁1内を通過する際にPNが捕集され、触媒層5を通過する際にNOなどを含む排ガスが浄化される。
流出セル2bのセル2の延びる方向に垂直な断面における開口面積が、流入セル2aのセル2の延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されている。このように流出セルと流入セルを構成することにより、圧力損失の増大などの問題を生じさせることなく、隔壁の流出セル側の表面に触媒層を形成することができる。そして、このような条件を満たす限り、セルの形状は特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形形等の多角形形状とすることができる。特に、流出セルの形状を八角形として、流入セルの形状を四角形とすることが好ましい。このような場合、所望の量の触媒を担持させ易い。
触媒層が形成される前(触媒担持前)の流出セルの開口面積は、流入セルの開口面積の1.01〜2.5倍であることが好ましく、1.2〜2.5倍であることが更に好ましく、1.4〜2.5倍であることが特に好ましい。流出セルの開口面積の大きさが流入セルの開口面積に対して上記範囲であると、触媒層を形成させた後に圧力損失が増大することを防ぐことができる。上記下限値未満であると、触媒層を担持させたときに流出セルの流路が狭まり、圧力損失が増大するおそれがある。上記上限値超であると、流入セルの開口面積が相対的に小さくなりすぎるため、流入セルの流路が狭まり、圧力損失が増大するおそれがある。なお、触媒層は、後述するように、触媒層が形成された後の流出セルの開口面積に対する、流入セルの開口面積が95〜125%となるように形成されるものである。なお、流出セル及び流入セルの開口面積は、以下のように測定した値である。即ち、まず、ハニカム触媒体を、セルの延びる方向に直交する方向に切断する。次に、この切断した断面において、任意の複数(例えば10箇所)の画像を撮影し、撮影された画像を画像解析し、触媒担持前における開口部の割合(面積の割合)と、隔壁及び目封止部の割合(面積の合計の割合)の合計の比率から開口率を算出した。上記画像の範囲は、3mm×3mmの範囲とする。触媒担持後においては開口部の割合と、隔壁及び目封止部に加え、触媒の割合の合計の比率から開口率を算出した。
隔壁1の気孔率は、上述したように、25〜55%であり、30〜50%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率を上記範囲とすることにより、ハニカム触媒体100の機械的強度を維持しつつ、この隔壁がフィルターとして機能してPNを捕集することができる。隔壁1の気孔率が25%より小さいと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなる。隔壁1の気孔率が55%より大きいと、ハニカム触媒体100の機械的強度を十分に維持することができない。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメーターによって測定した値で、加圧した際に気孔内に入った水銀の量から算出した値である。
隔壁1の厚さは、102〜254μmであることが好ましく、102〜203μmであることが更に好ましく、102〜152μmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さを上記範囲とすることにより、ハニカム触媒体100の機械的強度を十分に維持しつつ、圧力損失の増大が抑制されたハニカム触媒体100を得ることができる。隔壁1の厚さが102μmより薄いと、ハニカム触媒体100の機械的強度が十分に得られないおそれがある。隔壁1の厚さが254μmより厚いと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなることがある。上記隔壁1の厚さは、流入セルと流出セルとを区画する部分における隔壁の厚さのことである。「隔壁1の厚さ」は、隔壁1の、セル2の延びる方向に垂直な断面における厚さのことである。
ハニカム構造体10を構成する隔壁1の厚さは、基本的に均一なものとする。「基本的に均一」とは、成形時の変形等により、僅かに隔壁の厚さに差異が生じた場合を除き、隔壁の厚さが均一であることを意味する。即ち、本発明のハニカム触媒体においては、意図的に隔壁の厚さに差異を生じさせることはなく、上記断面において、隔壁の厚さは均一なものとする。例えば、ハニカム構造体を押出成形する口金(金型)のスリットを、スライサー加工により製造した場合に、上記均一な厚さの隔壁が実現されることになる。
隔壁1の平均細孔径は、6〜19μmであることが好ましく、7〜16μmであることが更に好ましい。隔壁1の平均細孔径を上記範囲とすることにより、圧力損失の増大を抑制しつつ、この隔壁1がフィルターとして機能してPNを捕集することができる。隔壁1の平均細孔径が6μmより小さいと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなり過ぎることがある。隔壁1の平均細孔径が19μmより大きいと、触媒担持なしでの捕集性能が不十分になる可能性がある。また、隔壁によってPNが捕集され難くなり、フィルターとしての機能が得られ難くなるおそれがある。また、PNが触媒層で捕集されることがあり、触媒による浄化効率が低下するおそれがある。隔壁の平均細孔径は、水銀ポロシメーターによって測定した値で、加圧した際に気孔内に入った水銀の量から算出した値である。
ハニカム構造体10のセル密度は、31〜62個/cmであることが好ましく、39〜54個/cmであることが更に好ましい。セル密度が上記範囲であると、ハニカム触媒体100の機械的強度を十分に保ちつつ、圧力損失の増大を抑制することができる。セル密度が31個/cmより小さいと、ハニカム触媒体100の機械的強度が十分に得られないおそれがある。セル密度が62個/cmより大きいと、圧力損失が高くなり過ぎるおそれがある。
隔壁1の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、炭化珪素が特に好ましい。
目封止部(流入側目封止部8b及び流出側目封止部8a)の材料としては、隔壁1の材料と同じものを挙げることができ、隔壁1の材料と同じものを用いることが好ましい。
[1−2]触媒層:
触媒層5は、隔壁1の流出セル2b側の表面に形成され、排ガスを浄化する触媒を有する多孔質のものである。そして、この触媒層5は、隔壁1内の気孔の表面に形成されない。或いは、触媒層5が隔壁1内の気孔の表面に形成される場合であっても、セルの延びる方向に平行な断面において隔壁1内の気孔の表面に形成された触媒層5の総面積が、隔壁1内における気孔の総面積の5%以下である。このように、本発明のハニカム触媒体は、隔壁内の気孔の表面に触媒層を形成しないか、或いは、隔壁内の気孔の表面に触媒層が形成されたとしても極少量である。そのため、触媒を気孔の表面に担持させることに起因して排ガスの流路が狭くなくことを回避することができる。従って、圧力損失の増大を抑制することができる。
なお、隔壁内の気孔の表面に触媒層が形成される場合であっても、触媒層の全部が、隔壁の、流出セル側の表面から、隔壁の厚さの10%までの領域内に形成されていることが好ましい。上記領域を越えて触媒層が形成されると、ハニカム触媒体の圧力損失が増大するおそれがある。
触媒層5の気孔率は、20〜80%であることが好ましく、25〜75%であることが更に好ましく、30〜70%であることが特に好ましい。触媒層5の気孔率を上記範囲とすることにより、圧力損失の増大を抑制しつつ、排ガスの浄化性能を良好に維持できるという利点がある。触媒層5の気孔率が20%より小さいと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなるおそれがある。触媒層5の気孔率が80%より大きいと、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。触媒層の気孔率は、上記流出セル及び流入セルの開口面積の測定と同様の画像解析によって測定した値である。
触媒層5の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、50〜300μmであることが更に好ましく、100〜300μmであることが特に好ましい。触媒層5の厚さを上記範囲とすることにより、排ガスの浄化性能を良好に維持しつつ、圧力損失が増大し難い。触媒層5の厚さが20μmより薄いと、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。触媒層5の厚さが300μmより厚いと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなることがある。上記触媒層5の厚さは、触媒層5の、セル2の延びる方向に垂直な断面における厚さのことであり、最も厚い部分の厚さのことである。
なお、触媒層の厚さは、上記範囲とすることが好ましいが、ハニカム触媒体の用途などによって適宜設定することができ、触媒層が形成された後の流出セルの開口面積と流入セルの開口面積とが、同等となるように決定することが好ましい。
触媒層5の平均細孔径は、1〜15μmであることが好ましく、1〜13μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。触媒層5の平均細孔径を上記範囲とすることにより、圧力損失の増大を抑制しつつ、触媒の剥離を抑制することができる。触媒層5の平均細孔径が1μmより小さいと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなることがある。触媒層5の平均細孔径が15μmより大きいと、触媒が基材から剥離するおそれがある。触媒層の平均細孔径は、上記と同様の画像解析によって測定した値である。
触媒層を構成する触媒としては、ゼオライト、V、CeO、ZrOなどを挙げることができる。触媒としてゼオライトを用いることにより、排ガス中のNOを良好に浄化することができる。ゼオライトの中でも、Feゼオライト、Cuゼオライトなどを用いることが好ましい。
触媒の担持量は、10〜300g/lであることが好ましく、50〜300g/lであることが更に好ましく、100〜300g/lであることが特に好ましい。触媒の担持量を上記範囲とすることにより、必要な浄化性能を達成することができるとともに、圧力損失の増大を抑えることができる。触媒の担持量が10g/lより小さいと、必要な浄化性能を達成できない可能性がある。触媒の担持量が300g/lより大きいと、触媒層により流出セルの開口面積が小さくなることによって、圧力損失が大きくなるおそれがある。触媒の担持量は、触媒担持前後のハニカム触媒体の質量を測定し、測定された質量の差から算出した値である。
触媒の密度は、0.5〜2.0g/mlであることが好ましく、0.75〜1.5g/mlであることが更に好ましい。触媒の密度を上記範囲とすることにより、圧力損失の増大を抑制しつつ、排ガスの浄化性能を良好に維持できるという利点がある。触媒の密度が0.5g/mlより小さいと、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。触媒の密度が2.0g/mlより大きいと、ハニカム触媒体100の圧力損失が高くなるおそれがある。触媒の密度は、触媒担持量と触媒気孔率から算出した値である。
ハニカム触媒体100は、触媒層5が形成された後の流出セル2bの開口面積(即ち、流出セル2bの開口面積から触媒層5の面積を差し引いた面積)に対する、流入セル2aの開口面積が、95〜125%であることが好ましい。そして、触媒層5が形成された後の流出セル2bの開口面積は、95〜115%であることが更に好ましく、95〜105%であることが特に好ましい。更に、触媒層が形成された後の流出セルの開口面積と流入セルの開口面積とが、同等であることが最も好ましい。ここで、本明細書において「同等」とは、触媒層5が形成された後の流出セル2bの開口面積に対する、流入セル2aの開口面積が、95〜105%となることを意味する。なお、本明細書において「開口面積」は、流出セル2bのセル2の延びる方向に垂直な断面における開口面積のことである。上記「触媒層が形成された後の流出セルの開口面積」が流入セル2aの開口面積の95〜125%であると、ハニカム触媒体の圧力損失を更に抑制することができる。上記下限値未満であると、流入セルの表面積が小さくなるため、即ち、フィルターとして機能する部分が少なくなるため、ハニカム触媒体にススが堆積した時の圧力損失が増大するおそれがある。上記上限値超であると、流出セルの開口面積が小さくなりすぎるため、エンジンの運転初期における圧力損失(初期圧力損失)が増大するおそれがある。
ハニカム触媒体100は、セル2の延びる方向の長さLが76.2〜304.8mmであることが好ましい。また、ハニカム触媒体100は、セル2の延びる方向に直交する断面における直径Dが100.0〜304.8mmであることが好ましい。
ハニカム触媒体100は、上記長さL/上記直径Dの値が0.5〜2.5であることが好ましく、0.5〜1.8であることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、圧力損失の上昇を抑えつつ、スス再生時の熱応力に耐えることができる。
[2]ハニカム触媒体の製造方法:
本発明のハニカム触媒体の製造方法について説明する。まず、ハニカム構造体を作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、ハニカム成形体を作製する(成形工程)。作製するハニカム成形体は、セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積が異なる2種類のセル(流出セルと流入セル)が、隔壁を隔てて交互に形成されたものとする。各セルの形状や大きさ(断面積)等は、上述したハニカム構造体にて説明したセルの好ましい例に準じて適宜決定することができる。なお、必要に応じてハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得ることもできる。
次に、得られたハニカム成形体(または、必要に応じて行われた乾燥後のハニカム乾燥体)を焼成してハニカム構造体を作製する(ハニカム構造体作製工程)。
次に、ハニカム成形体の一方の端部(流入側端部)における流出セルと流入セルを含む所定のセルの開口部、及び他方の端部(流出側端部)における流出セルと流入セルを含む残余のセルの開口部に目封止を施す。このようにして、流入側目封止部及び流出側目封止部を形成する(目封止工程)。このようにして目封止ハニカム構造体を得ることができる。
次に、得られた目封止ハニカム構造体の流出セル内のみに、触媒を含有する触媒スラリーを流し込み、隔壁の表面に触媒スラリーからなる触媒コート層を形成する。その後、この触媒コート層を乾燥させて、隔壁の流出セル側の表面に触媒層を形成する。このようにして、ハニカム触媒体を製造することができる。以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
[2−1]成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカム成形体を形成する。
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、炭化珪素(SiC)、炭化珪素(SiC)を骨材としてかつ珪素(Si)を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、チタン酸アルミニウムなどを挙げることができる。そして、炭化珪素(SiC)、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。なお、「コージェライト化原料」とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状(円柱状)、中心軸に直交する断面が楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の筒形状(柱状)等を挙げることができる。作製しようとするハニカム構造体が、複数のハニカムセグメントが接合されて形成されたものである場合には、ハニカム成形体の形状は、中心軸に直交する断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の筒形状(柱状)であることが好ましい。これらを組み合わせて1つのハニカム構造体を構成することが容易になるためである。
また、上述したように、成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
[2−2]ハニカム構造体作製工程:
次に、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る。なお、ハニカム成形体の焼成は、ハニカム成形体に目封止部を配設した後に行ってもよい。
また、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、炭化珪素(SiC)を使用している場合には、焼成温度は、1200〜1500℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、1〜5時間が好ましい。また、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
なお、ハニカム触媒体が複数個のハニカムセグメントからなる場合、複数のハニカム成形体または焼成後のハニカム成形体を、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合材によって接合する。接合材としては、従来公知の接合材を用いることができる。
[2−3]目封止工程:
次に、ハニカム構造体の所定のセルの流出側端面における開口部と残余のセルの流入側端面における開口部とに、目封止材料を充填して、流入側目封止部と流出側目封止部を形成する。
ハニカム構造体に目封止材料を充填する際には、まず、一方の端部側に目封止材料を充填し、その後、他方の端部側に目封止材料を充填する。一方の端部側に目封止材料を充填する方法としては、以下のマスキング工程と圧入工程とを有する方法を挙げることができる。マスキング工程は、ハニカム構造体の一方の端面(例えば、流入側端面)にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカム構造体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム構造体のセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカム構造体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
次に、ハニカム構造体に充填された目封止材料を乾燥させて、目封止部を形成し、目封止ハニカム構造体を得る。なお、ハニカム構造体の両端部に目封止材料を充填した後に、目封止材料を乾燥させてもよいし、ハニカム構造体の一方の端部に充填した目封止材料を乾燥させた後に、他方の端部に目封止材料を充填し、その後、他方の端部に充填した目封止材料を乾燥させてもよい。更に、目封止材料を、より確実に固定化する目的で、焼成してもよい。また、乾燥前のハニカム成形体又は乾燥後のハニカム成形体に目封止材料を充填し、乾燥前のハニカム成形体又は乾燥後のハニカム成形体と共に、目封止材料を焼成してもよい。
[2−4]触媒担持工程:
次に、得られた目封止ハニカム構造体の流出セル内のみに、触媒を含有する触媒スラリーを流し込み、隔壁の表面に触媒スラリーからなる触媒コート層を形成する。なお、この触媒スラリーは、粘度が高い程、隔壁の気孔内には容易に進入できない。そのため、触媒コート層は、隔壁の表面のみに形成される。その後、この触媒コート層を乾燥させて、隔壁の流出セル側の表面に触媒層を形成する。以上のようにして、ハニカム触媒体を製造することができる。
触媒コート層の乾燥条件としては、例えば、400〜600℃で1〜10時間とすることができる。
触媒スラリーの粘度は、例えば、1.5〜2.5Pa・sとすることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ハニカムセグメント原料として、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これに造孔剤として澱粉、発泡樹脂を加え、さらにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を作製した。この坏土を押出成形して16個のハニカムセグメント成形体を得た。このハニカムセグメント成形体は、セルの延びる方向に垂直な断面において、隔壁を隔てて八角形のセル(流出セル)と四角形のセル(流入セル)が交互に形成されたものであった。
得られたハニカムセグメント成形体を乾燥させた後、大気雰囲気中400℃で脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気下、1450℃で焼成した。このようにしてハニカムセグメントを得た。
また、ハニカムセグメント成形体の全体形状は、正四角柱状であった。
次に、ハニカムセグメント成形体の端面(流入側端面及び流出側端面)にマスクを施した。このとき、マスクを施したセルとマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。具体的には、孔が形成されていないマスクを端面に施し、このマスクの、目封止部を形成すべきセルを塞いでいる部分に孔を開けた。そして、マスクを施した側の端部を目封止スラリー(目封止材料)に浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。これにより、所定のセルの流入側端面における開口部及び残余のセルの流出側端面における開口部に目封止スラリーが配設された目封止ハニカムセグメント成形体を得た。目封止スラリーとしては、ハニカムセグメント原料と同様の材料を含むものを用いた。
次に、目封止ハニカムセグメント成形体について、450℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に、1425℃で7時間加熱することにより焼成を行い、目封止ハニカムセグメントを得た。目封止ハニカムセグメントは、隔壁厚さが152μmであった。また、目封止ハニカムセグメントは、端面の1辺が36mm、セルの延びる方向における長さが152.4mmであった。目封止ハニカムセグメントは、隔壁の気孔率が40%であった。隔壁の平均細孔径が10μmであった。セル密度が47個/cmであった。
次に、これらの目封止ハニカムセグメントを、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合材によって接合した。具体的には、まず、1つの目封止ハニカムセグメントの側面に結合材組成物を塗工して接合材層を形成し、この接合材層の上に別の目封止ハニカムセグメントを載置した。この工程を繰り返して縦4個×横4個のハニカムセグメント接合体を得た。そして、このハニカムセグメント接合体の外周を円筒状となるように切削した後、この外周にコーティング材を塗布し、700℃で2時間乾燥硬化させた。このようにして目封止ハニカム構造体を得た。得られた目封止ハニカム構造体の流入セルの開口面積は4683mmであり、流出セルの開口面積は6998mmであった。また、触媒層が形成される前の流出セルの開口面積に対する、流入セルの開口面積(表1中、「触媒担持前の開口比率(%)」と記す)が、66.9%であった。測定結果を表1に示す。
次に、得られた目封止ハニカム構造体の流出セル(八角形のセル)内のみに、触媒としてFeゼオライトを含む触媒スラリーを流し込み、隔壁の流出セル側の表面に触媒コート層を形成した。その後、450℃で2時間乾燥させてハニカム触媒体を作製した。
作製したハニカム触媒体は、触媒層が形成された後の流出セルの開口面積が4683mmであった。また、触媒層が形成された後の流出セルの開口面積に対する、流入セルの開口面積(表1中、「触媒担持後の開口比率(%)」と記す)は、100.0%であった。そして、作製したハニカム触媒体は、触媒層の厚さは134μmであった。触媒層の気孔率が68%であった。触媒層の平均細孔径が5μmであった。触媒の担持量が123.0g/lであった。触媒の密度が0.8g/mlであった。なお、ハニカム触媒体の全体における触媒層の全部が占める体積(表2中、「触媒層が占める体積」と記す)は、380.4mlであった。隔壁の気孔率は触媒層の気孔率に比して小であった。また、触媒層は、隔壁内の気孔の表面には形成されていなかった。即ち、隔壁内における気孔の総面積に対する、隔壁内の気孔の表面に形成された前記触媒層の総面積の割合は、0%であった(表2中、「気孔表面の触媒層の割合(%)」と記す)。測定結果を表1及び表2に示す。
作製したハニカム触媒体について、以下の各評価([機械的強度]、[触媒担持性能][初期圧力損失]、[スス(4g/l)付き後の圧力損失]、[捕集性能]、[NO浄化性能]、及び[総合評価])を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 0006120709
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[機械的強度]:
触媒を担持させる前の目封止ハニカム構造体について、以下のようにして機械的強度(A軸圧縮強度)を測定する(表3中、「機械的強度」と記す)。A軸圧縮強度とは、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(MPa)のことである。具体的には、上記目封止ハニカム構造体から直径25.4mm、高さ25.4mmのサンプル(小さなハニカム構造体)を切り出した。その後、このサンプル(小さなハニカム構造体)の流路方向に圧縮荷重を負荷した。そして、サンプルが破壊されたときの圧力を「A軸圧縮強度(機械的強度)」とした。
評価基準は、A軸圧縮強度が3.0MPa未満のときを「D」とし、3.0MPa以上で6.0MPa未満のときを「C」とし、6.0MPa以上で10.0MPa未満のときを「B」とし、10.0MPa以上のときを「A」とした。
[触媒担持性能]:
触媒を担持させたときの担持量を測定する。測定された担持量について以下の基準にて評価を行った。この評価は、浄化性能の性能について評価することができる。即ち、この評価の値が高いと、浄化性能が高いと判断することができる。
評価基準は、触媒の担持量が10g/l以下であるときを「D」とし、10g/l超で100g/l以下であるときを「C」とし、100g/l超で200g/l以下であるときを「B」とし、200g/l超であるときを「A」とした。
[初期圧力損失]:
触媒を担持させた目封止ハニカム触媒体について、以下のようにして初期圧力損失を測定する(表3中、「初期圧力損失」と記す)。なお、初期圧力損失とはスス堆積無しの条件にて測定した圧力損失とする。まず、目封止ハニカム触媒体の流入端面及び流出端面に差圧計を取り付ける。次に、室温にて大気圧下で10m/分の条件で上記目封止ハニカム触媒体内に空気を流し、流入端面側の空間と流出端面側の空間との差圧を測定する。このようにして、上記目封止ハニカム触媒体の初期圧力損失を測定する。その後、測定された圧力損失に基づいて以下の基準で評価を行った。
評価基準は、目封止ハニカム触媒体の初期圧力損失が4.50kPa未満であるときを「A」とし、4.50kPa以上で10.00kPa未満であるときを「B」とした。そして、上記初期圧力損失が10.00kPa以上で15.00kPa未満であるときを「C」とし、15.00kPa以上であるときを「D」とした。
[スス(4g/l)付き後の圧力損失]:
ススは軽油を燃焼させて擬似的にススを発生させる装置にて堆積させた。スス(4g/l)を堆積させたときの目封止ハニカム触媒体について、以下のようにして圧力損失を測定する。まず、目封止ハニカム触媒体の流入端面及び流出端面に差圧計を取り付ける。次に200℃にて大気圧下で2.27m/分の条件で上記目封止ハニカム触媒体内に空気を流し、流入端面側の空間と流出端面側の空間との差圧を測定する。このようにして、上記目封止ハニカム触媒体のスス(4g/l)付き後の圧力損失を測定する。その後、測定された圧力損失に基づいて以下の基準で評価を行った。
評価基準は、目封止ハニカム触媒体のスス(4g/l)付き後の圧力損失が20.00kPa未満であるときを「A」とし、20.00kPa以上で25.00kPa未満であるときを「B」とした。そして、上記スス(4g/l)付き後の圧力損失が25.00kPa以上で40.00kPa以下であるときを「C」とし、40.00kPa超であるときを「D」とした。
[捕集性能]:
触媒を担持させる前のものである目封止ハニカム構造体について、以下のようにして捕集性能を測定する。まず、排気量2.0リッターで4気筒のディーゼルエンジン搭載の車両を用いて(エンジンの排ガス路中に上記目封止ハニカム構造体を配置して)EUDCを3回行い、PN測定前の上記目封止ハニカム構造体の条件を統一させる。「EUDC」は、European Urban Driving Cycleの略である。次に、エンジンにてNEDC(New European Driving Cycle)を行い、上記目封止ハニカム構造体から流出したPNを、東京ダイレック社製のEECPCモデル3790にて測定する。「EECPC」は、Engine Exhaust Condensation Particle Counterの略である。エンジンから排出されるPNは5.0×1014であった。このようにして、上記目封止ハニカム構造体の捕集性能を測定する。測定した捕集性能について以下の基準で評価を行った。
評価基準は、捕集性能が1.0×1011未満であるときを「A」とし、1.0×1011以上で6.0×1011未満であるときを「B」とし、6.0×1011以上で1.0×1012未満であるときを「C」とし、1.0×1012以上であるときを「D」とした。
[NO浄化性能]:
NO浄化性能の評価は、排気量2.0リッターのディーゼルエンジンを用いて、エンジンの回転数を2500rpmとし、エンジンから排出されるNOに対して等量比1となるようにハニカム触媒体の流入端面に尿素を噴霧する。その後、ハニカム触媒体に流入するガスの温度が200℃であるときにハニカム触媒体から排出されるガス中のNO濃度を測定する。そして、エンジンから排出されるNO濃度に基づいて浄化性能を評価する。まず、エンジンの排ガス路中にハニカム触媒体を配置して、ハニカム触媒体の流出側のNOを測定する(「エイジング前のNO浄化性能」を測定する)。次に、このハニカム触媒体について、以下のようにして、エイジング後のNO浄化性能を測定する。まず、電気炉内にハニカム触媒体を入れ、電気炉内を、水10質量%、酸素10質量%の環境下で650℃に保ち、ハニカム触媒体を100時間加熱する。次に、エンジンを用いて(エンジンの排ガス路中にハニカム触媒体を配置して)、ハニカム触媒体の流出側のNOをHORIBA社製の「MEXA7500D」にて測定する。このようにして、ハニカム触媒体の「エイジング後のNO浄化性能」を測定する。測定した「エイジング後のNO浄化性能」について以下の基準で評価を行った。
評価基準は、エイジング前のNO浄化性能と比較してエイジング後のNO浄化性能が70%未満であるときを「D」とし、70%以上で80%未満であるときを「C」とした。そして、上記エイジング後のNO浄化性能が80%以上で90%未満であるときを「B」とし、90%以上で100%以下であるときを「A」とした。
[総合評価]:
上記各評価のうち「D」評価が1つ以上ある場合または「C」評価が2つ以上ある場合には「不合格」とし、これに該当しない場合には「合格」とした。
表3に示すように、本実施例のハニカム触媒体は、[触媒担持性能]が「B」であり、[初期圧力損失]が「B」であった。また、[スス(4g/l)付き後の圧力損失]が「B」であった。更に、[捕集性能]が「B」であり、[機械的強度]が「B」であり、[NO浄化性能]が「A」であった。そのため、[総合評価]が「合格」であった。
(実施例2〜13、比較例1〜5)
表1,表2に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてハニカム触媒体を作製した。作製したハニカム触媒体について、上記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1〜13のハニカム触媒体は、[総合評価]において「不合格」でなく、機械的強度が高く、排ガスの浄化性能に優れ、圧力損失が小さいものであることが確認できた。
本発明のハニカム触媒体は、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するフィルターとして好適に採用することができる。
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、5:触媒層、8a:流出側目封止部、8b:流入側目封止部、10:ハニカム構造体、11:流入側端面、12:流出側端面、100:ハニカム触媒体。

Claims (6)

  1. 流入側端面から流出側端面まで延びる排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、
    前記流出側端面における所定のセルの開口部に配設されて、前記流入側端面が開口し且つ前記流出側端面が封止された流入セルを形成する流出側目封止部と、
    前記流入側端面における残余のセルの開口部に配設されて、前記流出側端面が開口し且つ前記流入側端面が封止された流出セルを形成する流入側目封止部と、
    前記隔壁の前記流出セル側の表面に形成され、前記排ガスを浄化する触媒を有する多孔質の触媒層と、を備え、
    前記ハニカム構造体は、前記流入セルと前記流出セルとが、前記隔壁を隔てて交互に配置されたものであるとともに、前記複数のセルは、前記流出セルの前記セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積が、前記流入セルの前記セルの延びる方向に垂直な断面における開口面積よりも大きくなるように構成されたものであり、
    前記ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が25〜55%であり、
    前記触媒層は、前記隔壁の前記流入セル側の表面に形成されず、
    更に、前記触媒層は、前記隔壁内の気孔の表面に形成されないか、或いは、前記隔壁内の気孔の表面に形成される場合であっても、前記セルの延びる方向に平行な断面において前記隔壁内の気孔の表面に形成された前記触媒層の総面積が、前記隔壁内における気孔の総面積の5%以下であり、
    前記流入セルの前記開口面積に対する、前記触媒層が形成された後の前記流出セルの前記開口面積が、95〜125%であるハニカム触媒体。
  2. 前記触媒層の気孔率が20〜80%である請求項1に記載のハニカム触媒体。
  3. 前記触媒層が形成される前において、前記流入セルの前記開口面積に対する、前記流出セルの前記開口面積が、1.01〜2.5倍である請求項1または2に記載のハニカム触媒体。
  4. 前記触媒層が形成された後の前記流出セルの開口面積と前記流入セルの開口面積とが、同等である請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
  5. 前記隔壁の厚さが、102〜254μmである請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
  6. 前記触媒層の厚さが、20〜300μmである請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
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