JP6686587B2 - 電池用包装材料、その製造方法及び電池 - Google Patents
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Description
本発明は、電池用包装材料、その製造方法及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されている。これらの電池において、電極、電解質などにより構成される電池素子は、包装材料などにより封止される必要がある。電池用包装材料としては、金属製の包装材料が多用されている。
近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パーソナルコンピュータ、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、多様な形状を有する電池が求められている。また、電池には、薄型化、軽量化なども求められている。しかしながら、従来多用されている金属製の包装材料では、電池形状の多様化に追従することが困難である。また、金属製であるため、包装材料の軽量化にも限界がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/金属層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。
例えば、特許文献1には、外側層としての2軸延伸ポリアミドフィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む電池ケース用包材が開示されている。
また、特許文献2には、基材層、接着剤層、腐食防止処理層を設けたアルミニウム箔層、接着性樹脂層、接着性樹脂層の前記基材層との反対側に設けられたシーラント層とが順次積層され、接着性樹脂層が酸変性ポリオレフィン樹脂とエラストマーとを含んだリチウムイオン電池用外装材が開示されている。
しかしながら、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特許文献2に開示されたような電池用包装材料では、電池用包装材料を電池に適用した場合、絶縁性及び耐久性が低下する場合があるという課題が見出された。
そこで、本発明者がさらに鋭意検討を重ねた結果、電池の製造工程において、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、熱融着性樹脂層の表面に付着する場合があり、電池素子を電池用包装材料でヒートシールする際の熱と圧力によって、熱融着性樹脂層の異物が付着した部分が薄肉になる場合があることが明らかとなった。例えば、熱融着性樹脂層同士がヒートシールされる部分などにおいて、熱融着性樹脂層が薄肉になると、電池用包装材料の絶縁性及び耐久性が不十分となる場合があるという問題がある。
さらに、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物は、導電性を有する。電極タブと熱融着性樹脂層との間に導電性の異物が存在する場合には、ヒートシール時の熱と圧力によって、異物が熱融着性樹脂層を貫通すると、電極タブと電池用包装材料の金属層とが電気的に接続されて短絡するおそれがある。
本発明は、これらの問題に鑑みなされた発明である。すなわち、本発明は、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、熱融着性樹脂層同士の界面や電極タブと熱融着性樹脂層との間などのヒートシールされる部分に存在する場合にも、高い絶縁性及び耐久性を有する電池用包装材料を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電池用包装材料を、少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体とし、接着層が、融点が50〜120℃の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50〜2000のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有していることにより、絶縁性及び耐久性の高い電池包装用材料が得られることを見出した。また、本発明者は、電池用包装材料を、少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体とし、接着層が酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、電池用包装材料の端部の接着層表面にプローブを設置し、プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、プローブの位置が初期値よりも低下しないものについても、絶縁性及び耐久性に優れていることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の電池用包装材料、その製造方法、及び電池を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、酸変性ポリオレフィンと、エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しない、電池用包装材料。
項2. 熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、140℃から220℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量が、80℃から120℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量よりも大きい、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、電池用包装材料。
項5. 前記接着層の固形分量が、0.5g/m2以上10g/m2以下の範囲にある、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記接着層の厚みが、0.6μm以上9μm以下の範囲にある、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記接着層において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、エポキシ樹脂が0.5質量部以上20質量部以下含まれる、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記接着層の溶融温度が、180℃以上260℃以下の範囲にある、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 前記熱融着性樹脂層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲にある、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
項10. 前記熱融着性樹脂層の表面は、微細な凹凸が形成されている、項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
項11. 正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項12. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体を得る積層工程を備え、
前記接着層の形成に、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を用い、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しないものを前記接着層として用いる電池用包装材料の製造方法。
項1. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、酸変性ポリオレフィンと、エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しない、電池用包装材料。
項2. 熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、140℃から220℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量が、80℃から120℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量よりも大きい、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、電池用包装材料。
項5. 前記接着層の固形分量が、0.5g/m2以上10g/m2以下の範囲にある、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記接着層の厚みが、0.6μm以上9μm以下の範囲にある、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記接着層において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、エポキシ樹脂が0.5質量部以上20質量部以下含まれる、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記接着層の溶融温度が、180℃以上260℃以下の範囲にある、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 前記熱融着性樹脂層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲にある、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
項10. 前記熱融着性樹脂層の表面は、微細な凹凸が形成されている、項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
項11. 正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項12. 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体を得る積層工程を備え、
前記接着層の形成に、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を用い、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しないものを前記接着層として用いる電池用包装材料の製造方法。
本発明の電池用包装材料によれば、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、熱融着性樹脂層同士の界面や電極タブと熱融着性樹脂層との間などのヒートシールされる部分に存在する場合にも、絶縁性及び耐久性が高い電池用包装材料を提供することができる。すなわち、本発明の電池用包装材料によって電池素子を封止することにより、電池の絶縁性及び耐久性を高めることができる。
本発明の第1の実施態様において、電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体からなり、前記接着層が、融点が50〜120℃の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50〜2000のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有していることを特徴とする。また、本発明の第2の実施態様において、電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体からなり、前記接着層が、酸変性ポリオレフィンと、エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しないことを特徴とする。以下、図1から図3を参照しながら、本発明の電池用包装材料、その製造方法、及び電池素子が本発明の電池用包装材料により封止された本発明の電池について詳述する。なお、以下の記載において、第1の実施態様と第2の実施態様とで共通しない内容については明示し、特に断りのない場合には、共通する内容である。
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、接着層4、及び熱融着性樹脂層5をこの順に備えた積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層5は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層5同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層3、接着層4、及び熱融着性樹脂層5をこの順に備えた積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層5は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層5同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
本発明の電池用包装材料は、図2に示すように、基材層1と金属層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着剤層2が設けられていてもよい。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造、ナイロンフィルムを複数層積層させた多層構造、ポリエステルフィルムを複数層積層させた多層構造などが挙げられる。基材層1が多層構造である場合、2軸延伸ナイロンフィルムと2軸延伸ポリエステルフィルムの積層体、2軸延伸ナイロンフィルムを複数積層させた積層体、2軸延伸ポリエステルフィルムを複数積層させた積層体が好ましい。例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂を積層する構成、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成、またはポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを積層する構成、ナイロンとナイロンを積層する構成、またはポリエチレンテレフタレートとナイロンを積層する構成にすることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂が最外層に位置するように基材層1を積層することが好ましい。基材層1を多層構造とする場合、各層の厚みとして、好ましくは4μm以上25μm以下が挙げられる。
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば2μm以上5以下μm程度が挙げられる。
基材層1の厚みについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、4μm以上50μm以下程度、好ましくは10μm以上35μm以下程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1と金属層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1と金属層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着剤層2の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1μm以上10μm以下程度、好ましくは2μm以上5μm以下程度が挙げられる。
[金属層3]
電池用包装材料において、金属層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、金属層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160 A8021H−O、JIS H4160 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
電池用包装材料において、金属層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装材料の製造時に、金属層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160 A8021H−O、JIS H4160 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
金属層3の厚みは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10μm以上50μm以下程度、好ましくは10μm以上35μm以下程度とすることができる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)から(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)から(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1から4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1から4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)から(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)から(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500以上100万以下であることが好ましく、1000以上2万以下程度であることがより好ましい。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、金属層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、リン化合物がリン換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg以上約200mg以下、好ましくは約5.0mg以上150mg以下の割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70℃以上200℃以下程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層に化成処理を施す前に、予め金属層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[接着層4]
本発明において、接着層4は、電池用包装材料の絶縁性及び耐久性を高めるために、金属層3と熱融着性樹脂層5との間に設けられる層である。
本発明において、接着層4は、電池用包装材料の絶縁性及び耐久性を高めるために、金属層3と熱融着性樹脂層5との間に設けられる層である。
第1の実施態様において、接着層4は、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有している。接着層4は、当該樹脂組成物により形成されていることが好ましい。接着層4は、アンチブロッキング剤(シリカなど)などの添加剤を含んでいてもよく、添加剤等は、樹脂組成物に含まれていてもよい。なお、接着層4に含まれる樹脂組成物においては、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンが主剤、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂が硬化剤として機能しており、電池用包装材料において、当該樹脂組成物は硬化物となっている。また、第2の実施態様において、接着層4は、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有している。第2の実施態様の接着層4に含まれる樹脂組成物においては、酸変性ポリオレフィンが主剤、エポキシ樹脂が硬化剤として機能しており、電池用包装材料において、当該樹脂組成物は硬化物となっている。第2の実施態様においても、酸変性ポリオレフィンの融点は50℃以上120℃以下であることが好ましく、エポキシ樹脂の重量平均分子量は50〜2000であることが好ましい。
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定においては、例えば図4の概念図に示すように、まず、電池用包装材料の端部の接着層4表面に熱機械分析装置のプローブ10を設置する(図4の測定開始A)。このときの端部は、電池用包装材料の中心部を通るように厚み方向に切断して得られた、接着層4の断面が露出した部分である。切断は、市販品の回転式ミクロトームなどを用いて行うことができる。なお、電解質などが封入された電池に使用されている電池用包装材料について、変位量測定を行う場合には、電池用包装材料の熱溶着性樹脂層が互いに熱融着されている部分について、測定を行う。熱機械分析装置としては、加熱機構付きのカンチレバーを取り付けられる原子間力顕微鏡を使用することができ、プローブ10の先端半径は30nm以下、プローブ10にかかる荷重は偏差(Deflection)−4V、昇温速度5℃/分とする。次に、この状態でプローブを加熱すると、プローブからの熱により図4のBのように、接着層4表面が膨張して、プローブ10が押し上げられ、プローブ10の位置が初期値(プローブの温度が40℃である時の位置)よりも上昇する。さらに加熱温度が上昇すると、接着層4が軟化し、図4のCのように、プローブ10接着層4に突き刺さり、プローブ10の位置が下がる。なお、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定においては、測定対象となる電池用包装材料は室温(25℃)下にあり、40℃に加熱されたプローブを接着層4表面に設置して、測定を開始する。
第1、第2の実施形態の電池用包装材料においては、絶縁性及び耐久性をより一層高める観点から、プローブを40℃から220℃まで加熱(さらに好ましくは40℃から250℃まで加熱)した際に、接着層4表面に設置したプローブ10の位置が初期値(プローブの温度が40℃である時の位置)よりも低下しないことが好ましく、160℃から200℃まで加熱した際に、接着層4表面に設置したプローブ10の位置が低下しないことがより好ましい。電池用包装材料の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして電池素子を封止する工程は、通常、160℃から200℃程度に加熱して行われる。このため、プローブを160℃から200℃まで加熱した際に、接着層4表面に設置したプローブ10の位置が低下しない電池用包装材料は、特に高い絶縁性及び耐久性を発揮することができる。
また、同様の観点から、熱機械分析装置を用いたプローブ10の変位量測定において、電池用包装材料の端部の接着層4表面にプローブ10を設置し、プローブを40℃から220℃まで加熱(さらに好ましくは40℃から250℃まで加熱)した際に、140℃から220℃まで加熱した際のプローブ10の位置の上昇量が、80℃から120℃まで加熱した際のプローブ10の位置の上昇量よりも大きいことが好ましい。
前述の通り、電池の製造工程において、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、熱融着性樹脂層の表面に付着する場合があり、これによって、熱融着性樹脂層に薄肉部分や貫通孔が生じ、絶縁性が低下する虞がある。これに対して、本発明の第1の実施形態の電池用包装材料においては、金属層3と熱融着性樹脂層5とを接着する接着層4が、上記特定組成の樹脂組成物を有しているため、例えば、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、熱融着性樹脂層同士の界面や電極タブと熱融着性樹脂層との間などのヒートシールされる部分に存在する場合にも、電池用包装材料の絶縁性や耐久性が高められている。
また、本発明の第2の実施形態の電池用包装材料においては、接着層4は、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、かつ、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、電池用包装材料の端部の接着層表面にプローブを設置し、プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、プローブの位置が初期値よりも低下しないことから、第1の実施形態と同様、電池用包装材料の絶縁性や耐久性が高められている。
第1、第2の実施態様において、酸変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたポリオレフィンを用いることが好ましい。さらに、酸変性ポリオレフィンは、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性されていてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性された変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとを併用して、ポリオレフィンを酸変性することにより得られるものである。本発明において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」または「メタアクリル酸エステル」を意味する。酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性されるポリオレフィンは、少なくともモノマー単位としてオレフィンを含む樹脂であれば特に限定されない。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方により構成することができ、ポリプロピレンにより構成することが好ましい。ポリエチレンは、例えば、ホモポリエチレン及びエチレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。ポリプロピレンは、例えば、ホモポリプロピレン及びプロピレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。プロピレンコポリマーとしては、エチレン−プロピレンコポリマー、プロピレン−ブテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマーなどのプロピレンと他のオレフィンとのコポリマーなどが挙げられる。ポリプロピレンに含まれるプロピレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下程度とすることがより好ましい。また、ポリエチレンに含まれるエチレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下程度とすることがより好ましい。エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーは、それぞれ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。また、エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーは、それぞれ、結晶性、非晶性のいずれであってもよく、これらの共重合物または混合物であってもよい。ポリオレフィンは、1種類のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよいし、2種類以上のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、酸無水物としては、上記例示した不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましく、無水マレイン酸および無水イタコン酸がより好ましい。酸変性ポリオレフィンは、1種類の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよいし、2種類以上の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数が1から30のアルコールとのエステル化物、好ましくは(メタ)アクリル酸と炭素数が1から20のアルコールとのエステル化物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。ポリオレフィンの変性において、(メタ)アクリル酸エステルは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
酸変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸またはその酸無水物の割合は、それぞれ、0.1質量%以上30質量%程度であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下程度であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
また、酸変性ポリオレフィン中における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、0.1質量%以上40質量%程度であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下程度であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ、6000以上200000以下程度であることが好ましく、8000以上150000以下程度であることがより好ましい。なお、本発明において、酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。また、酸変性ポリオレフィンの融点は、50℃以上120℃以下程度であることが好ましく、50℃以上100℃以下程度であることがより好ましい。なお、本発明において、酸変性ポリオレフィンの融点とは、示差走査熱量測定における吸熱ピーク温度をいう。
酸変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法は、特に限定されず、例えば不飽和カルボン酸またはその酸無水物や、(メタ)アクリル酸エステルがポリオレフィンと共重合されていればよい。このような共重合としては、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられ、好ましくはグラフト共重合が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。本発明の第1の実施形態において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、50以上2000以下の範囲にあればよい。第1、2の実施形態において、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより一層高める観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは100以上1000以下程度、より好ましくは200以上800以下程度が挙げられる。なお、本発明において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層4における、エポキシ樹脂の割合としては、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下の範囲にあることが好ましく、1質量部以上10質量部以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
また、接着層4の溶融温度としては、好ましくは180〜260℃程度、より好ましくは200〜240℃程度が挙げられる。なお、接着層4の溶融温度は、JIS K7196:2012「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」の規定に準拠した方法で測定された値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定された値である。なお、針入温度を溶融温度とした。
接着層4の固形分量としては、特に制限されないが、絶縁性及び耐久性をより一層高める観点からは、好ましくは0.5〜10g/m2程度、より好ましくは0.8〜5.2g/m2程度が挙げられる。また、同様の観点から、接着層4の厚みとしては、好ましくは0.6μm以上11μm以下、より好ましくは0.9μm以上5.8μm以下が挙げられる。
[熱融着性樹脂層5]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層5は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層5は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
熱融着性樹脂層5に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。
ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、上記のポリオレフィンをカルボン酸等でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリオレフィン;更に好ましくはプロピレンコポリマーが挙げられる。プロピレンコポリマーとしては、エチレン−プロピレンコポリマー、プロピレン−ブテンコポリマー、エチレン−プロピレン−ブテンコポリマーなどのプロピレンと他のオレフィンとのコポリマーなどが挙げられる。ポリプロピレンに含まれるプロピレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上〜100モル%以下程度とすることがより好ましい。また、ポリエチレンに含まれるエチレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下程度とすることがより好ましい。エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーは、それぞれ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよく、ランダムプロピレンコポリマーが好ましい。
熱融着性樹脂層5は、ポリプロピレンを有することが好ましく、ポリプロピレンにより形成された層を有することが好ましい。熱融着性樹脂層5は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層5は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
熱融着性樹脂層5が複数層により形成されている場合、熱融着性樹脂層5の最内層(金属層3とは反対側)は、ドライラミネーション法または押出成形により形成された層であることが好ましい。これにより、絶縁性及び成形性をより一層向上させることができる。
熱融着性樹脂層5の表面(最内層側の表面)は、微細な凹凸が形成されていることが好ましい。これにより、成形性をより一層向上させることができる。なお、熱融着性樹脂層5の表面に微細な凹凸を形成する方法としては、後述の表面被覆層で例示するマット化剤を熱融着性樹脂層5に添加する方法、表面に凹凸を有する冷却ロールを当接させ賦型する方法などが挙げられる。微細な凹凸としては、好ましくは、熱融着性樹脂層5の表面の十点平均粗さが、0.3μm以上35μm以下、より好ましくは0.3μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上2μm以下が挙げられる。なお、十点平均粗さは、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法において、キーエンス製レーザー顕微鏡VK−9710を用い、対物レンズ50倍、カットオフなしの測定条件で測定した値である。
また、熱融着性樹脂層5の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、絶縁性及び耐久性をより一層高める観点からは、例えば、10μm以上40μm以下、好ましくは15μm以上40μm以下が挙げられる。
[表面被覆層]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1の金属層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層(図示しない)を設けてもよい。表面被覆層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1の金属層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層(図示しない)を設けてもよい。表面被覆層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
表面被覆層は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層には、マット化剤を配合してもよい。
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm以上5μm以下程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
表面被覆層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
表面被覆層の厚みとしては、表面被覆層としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5μm以下10μm以下程度、好ましくは1μm以下5μm以下程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1と、金属層3と、接着層4と、熱融着性樹脂層5とをこの順に備えた積層体を得る積層工程を備え、接着層4を、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50から2000のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物により形成する方法を採用することができる。すなわち、接着層4として、「2.電池用包装材料を形成する各層」の欄で説明したものを用いて、各層を積層することにより、本発明の電池用包装材料を製造することができる。
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1と、金属層3と、接着層4と、熱融着性樹脂層5とをこの順に備えた積層体を得る積層工程を備え、接着層4を、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50から2000のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物により形成する方法を採用することができる。すなわち、接着層4として、「2.電池用包装材料を形成する各層」の欄で説明したものを用いて、各層を積層することにより、本発明の電池用包装材料を製造することができる。
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、金属層3をこの順に備えた積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの金属層3上に、接着層4と熱融着性樹脂層5を積層させる。金属層3上に接着層4と熱融着性樹脂層5を積層させる場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層3上に、接着層4及び熱融着性樹脂層5を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層4と熱融着性樹脂層5が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、接着層4を形成させるための上記樹脂組成物を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該熱融着性樹脂層を積層させて接着層4を硬化させるドライラミネーション法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層5との間に、溶融させた接着層4を流し込みながら、接着層4を介して積層体Aと熱融着性樹脂層5を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。これらの方法のなかでも、(3)の方法が好ましい。(3)の方法を採用する場合、接着層4を形成する上記の樹脂組成物を金属層3の上に積層した後、60〜120℃の温度で乾燥させることが好ましい。熱融着性樹脂層を複数層とする場合、当該熱融着性樹脂層の最内層を、ドライラミネーション法または押出成形により形成された層とすることが好ましい。
表面被覆層を設ける場合には、基材層1の金属層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、必要に応じて表面が化成処理された金属層3、接着層4、熱融着性樹脂層5をこの順に備えた積層体が形成されるが、接着剤層2及び必要に応じて設けられる接着層4の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃以上250℃以下で1分間から5分間が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。接着層の溶融温度は、JIS K7196:2012の規定に準拠し、TMAの針入モードによる針入温度であり、装置として、EXSTAR6000を用いた。また、接着層の主剤の融点は、JIS K7121:2012の規定に準拠し、示差走査熱量計を用いて測定した。
<実施例1から12及び比較例1から17>
基材層としてのナイロンフィルム(厚み25μm)の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚み35μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着剤層(厚み3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着剤層と基材層を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層と接着剤層と金属層の積層体を作成した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
基材層としてのナイロンフィルム(厚み25μm)の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚み35μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着剤層(厚み3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着剤層と基材層を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層と接着剤層と金属層の積層体を作成した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
次に、得られた積層体の金属層の他方の面に、表1に記載の主剤と硬化剤を含む樹脂組成物を、表1に記載の塗布量(乾燥質量)となるように塗布し、80℃で60秒乾燥させて接着層を形成した。次に、接着層の上から、ポリプロピレンフィルム(厚み35μm)をドライラミネーション法により積層し、熱融着性樹脂層を形成した。以上の工程により、実施例1から12及び比較例1から16では、基材層、接着剤層、金属層、接着層、熱融着性樹脂層をこの順に備えた積層体を得た。比較例17では、金属層の上に、ポリプロピレンを押出成形して、基材層、接着剤層、金属層、熱融着性樹脂層をこの順に備えた積層体を得た。得られた各積層体を、それぞれ70℃下で24時間エージングして、実施例1から12及び比較例1から17の電池用包装材料を得た。なお、塗布量と密度から換算した接着層の厚みを表1に示す。
<耐久性評価>
上記で得られた各電池用包装材料をそれぞれ、図5の模式図に示すように、60mm(MD方向、縦方向)×150mm(TD方向、横方向)に裁断した(図5(a))。次に、裁断した電池用包装材料をTD方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにした(図5(b))。次に、TD方向の対向する1辺Eと、MD方向の1辺Fを熱溶着(熱溶着部分Sの幅7mm)し、TD方向の1辺が開口する袋状の電池用包装材料を作製した(図5(c)開口部G)。なお、熱溶着の条件は、温度190℃、面圧1.0MPa、加熱・加圧時間3秒とした。次に、図5(d)のように、開口部Gから3gの電解液Hを注入した。次に、開口部Gを7mm幅で、上記と同じ条件で熱溶着した(図5(e))。なお、電解液Hは、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウムを混合して得られたものである。次に、電池用包装材料の開口部Gが位置していた部分を上向きにして(図5(e)の状態)、85℃の恒温層内に24時間静置した。
上記で得られた各電池用包装材料をそれぞれ、図5の模式図に示すように、60mm(MD方向、縦方向)×150mm(TD方向、横方向)に裁断した(図5(a))。次に、裁断した電池用包装材料をTD方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにした(図5(b))。次に、TD方向の対向する1辺Eと、MD方向の1辺Fを熱溶着(熱溶着部分Sの幅7mm)し、TD方向の1辺が開口する袋状の電池用包装材料を作製した(図5(c)開口部G)。なお、熱溶着の条件は、温度190℃、面圧1.0MPa、加熱・加圧時間3秒とした。次に、図5(d)のように、開口部Gから3gの電解液Hを注入した。次に、開口部Gを7mm幅で、上記と同じ条件で熱溶着した(図5(e))。なお、電解液Hは、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウムを混合して得られたものである。次に、電池用包装材料の開口部Gが位置していた部分を上向きにして(図5(e)の状態)、85℃の恒温層内に24時間静置した。
次に、各電池用包装材料を恒温層から取り出して、図5(f)に示すように、電解液Hを注入した側を切り取り(図5(f)の破線の位置)、電池用包装材料を開封して電解液Hを取り出した(図5(g))。次に、電池用包装材料のTD方向の幅W15mmの部分を短冊状に切り取り(図5(h)の破線部)、試験片Tを得た(図5(I))。得られた試験片Tの熱融着性樹脂層と金属層間を剥離させ、熱融着性樹脂層と金属層とを引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−50D)を用いて、50mm/分の速度で引張り、試験片の剥離強度(N/15mm)を測定した(耐久性試験後の剥離強度)。一方、実施例1から12及び比較例1から17で得られた電池用包装材料を15mm巾に切り取った試験片Tについて、同様にして剥離強度を測定した(耐久性試験前の剥離強度)。結果を表1に示す。なお、熱融着性樹脂層と金属層間を剥離させた際、これらの層の間に位置する接着層は、熱融着性樹脂層と金属層のいずれか一方又は両層に積層された状態となる。
<異物噛み込みに対する絶縁性評価>
図6の模式図に示すように、上記で得られた各電池用包装材料を60mm(横方向)×150mm(縦方向)のサイズに切り取り試験片を得た(図6(a))。次に、この試験片を短辺同士が対向するように折り返し、試験片の熱融着性樹脂層の表面が互いに対向するように配置した。次に、互いに対向する熱融着性樹脂層の表面の間に25μmφのワイヤーMを挿入した(図6(b))。次に、この状態で電池用包装材料の長さ方向に直交する方向に上下共に7mm幅の平板状熱板からなるヒートシール機で熱融着性樹脂層同士をヒートシールした(図6(c)、熱溶着部分S)。このとき、ワイヤーMが位置している部分の上からヒートシールを行い、熱融着性樹脂層をワイヤーMに熱融着させた。次に、テスターのプラス極をワイヤーMに、マイナス極を片側の電池包装材料にそれぞれ接続した。このとき、テスターのマイナス極については、ワニ口クリップを電気用包装材料の基材層側からアルミニウム層に到達するように挟み込み、テスターのマイナス極とアルミニウム箔とを電気的に接続させた。次に、テスター間に100Vの電圧をかけ、短絡するまでの時間(秒)を測定した。結果を表1に示す。
図6の模式図に示すように、上記で得られた各電池用包装材料を60mm(横方向)×150mm(縦方向)のサイズに切り取り試験片を得た(図6(a))。次に、この試験片を短辺同士が対向するように折り返し、試験片の熱融着性樹脂層の表面が互いに対向するように配置した。次に、互いに対向する熱融着性樹脂層の表面の間に25μmφのワイヤーMを挿入した(図6(b))。次に、この状態で電池用包装材料の長さ方向に直交する方向に上下共に7mm幅の平板状熱板からなるヒートシール機で熱融着性樹脂層同士をヒートシールした(図6(c)、熱溶着部分S)。このとき、ワイヤーMが位置している部分の上からヒートシールを行い、熱融着性樹脂層をワイヤーMに熱融着させた。次に、テスターのプラス極をワイヤーMに、マイナス極を片側の電池包装材料にそれぞれ接続した。このとき、テスターのマイナス極については、ワニ口クリップを電気用包装材料の基材層側からアルミニウム層に到達するように挟み込み、テスターのマイナス極とアルミニウム箔とを電気的に接続させた。次に、テスター間に100Vの電圧をかけ、短絡するまでの時間(秒)を測定した。結果を表1に示す。
表1に示されるように、金属層と熱融着性樹脂層との間に配される接着層が、融点が50℃から120℃の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50から2000のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物により形成されている実施例1から12の電池用包装材料においては、耐久性及び絶縁性に優れていることが分かる。一方、酸変性ポリオレフィンの融点が50℃から120℃の範囲外である比較例1から4、エポキシ樹脂の重量平均分子量が50から2000の範囲外である比較例5から8、硬化剤としてエポキシ樹脂を使用していない比較例9から12、酸変性ポリオレフィンを使用しなかった比較例13から16、さらには、接着層を設けなかった比較例17においては、それぞれ、実施例1から12に比して絶縁性が低く、耐久性についても低いものが多数あった。
<熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定>
実施例10及び比較例11で得られた各電池用包装材料の端部の接着層表面にプローブを設置し、プローブを40℃から250℃まで加熱(昇温速度5℃/分、プローブの先端半径は30nm以下、プローブにかかる荷重は偏差(Deflection)−4V)して、プローブの変位量を測定した。加熱温度とプローブの位置の変位との関係を示すグラフをそれぞれ、図7(実施例10)、図8(比較例11)に示す。測定条件の詳細は以下の通りである。熱機械分析装置としては、ANALYSIS INSTRUMENTS社製のafm plusシステムを用い、プローブとしてはカンチレバーThermaLeverを用いた。キャリブレーションには、付属の試料3種(ポリカプロラクタム(融点55℃)、ポリエチレン(融点116℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点235℃))を用い、印加電圧0.1−10V、速度0.2V/秒、偏差(Deflection)−4Vとした。
実施例10及び比較例11で得られた各電池用包装材料の端部の接着層表面にプローブを設置し、プローブを40℃から250℃まで加熱(昇温速度5℃/分、プローブの先端半径は30nm以下、プローブにかかる荷重は偏差(Deflection)−4V)して、プローブの変位量を測定した。加熱温度とプローブの位置の変位との関係を示すグラフをそれぞれ、図7(実施例10)、図8(比較例11)に示す。測定条件の詳細は以下の通りである。熱機械分析装置としては、ANALYSIS INSTRUMENTS社製のafm plusシステムを用い、プローブとしてはカンチレバーThermaLeverを用いた。キャリブレーションには、付属の試料3種(ポリカプロラクタム(融点55℃)、ポリエチレン(融点116℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点235℃))を用い、印加電圧0.1−10V、速度0.2V/秒、偏差(Deflection)−4Vとした。
図7に示すように、実施例10で得られた電池用包装材料では、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、プローブの位置が初期値よりも低下していないことが分かる。さらに、実施例10では、140℃から220℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量が、80℃から120℃まで加熱した際のプローブの位置の上昇量よりも大きいことが分かる。一方、図8に示すように、比較例11で得られた電池用包装材料では、熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、プローブの位置が初期値よりも低下していることが分かる。
1…基材層
2…接着剤層
3…金属層
4…接着層
5…熱融着性樹脂層
10…プローブ
2…接着剤層
3…金属層
4…接着層
5…熱融着性樹脂層
10…プローブ
Claims (12)
- 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、酸変性ポリオレフィンと、エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有しており、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しない、電池用包装材料。 - 熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、140℃から220℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量が、80℃から120℃まで加熱した際の前記プローブの位置の上昇量よりも大きい、請求項1に記載の電池用包装材料。
- 前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
- 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体からなり、
前記接着層が、融点が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を有する、電池用包装材料。 - 前記接着層の固形分量が、0.5g/m2以上10g/m2以下の範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 前記接着層の厚みが、0.6μm以上11μm以下の範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 前記接着層において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、エポキシ樹脂が0.5質量部以上20質量部以下含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 前記接着層の溶融温度が、180℃以上260℃以下の範囲にある、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 前記熱融着性樹脂層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲にある、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 前記熱融着性樹脂層の表面は、微細な凹凸が形成されている、請求項1〜9のいずれかに記載の電池用包装材料。
- 正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
- 少なくとも、基材層と、金属層と、接着層と、熱融着性樹脂層とがこの順に備えた積層体を得る積層工程を備え、
前記接着層の形成に、酸変性ポリオレフィンとエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物を用い、
熱機械分析装置を用いたプローブの変位量測定において、前記電池用包装材料の端部の前記接着層表面に前記プローブを設置し、前記プローブを40℃から220℃まで加熱した際に、前記プローブの位置が初期値よりも低下しないものを前記接着層として用いる電池用包装材料の製造方法。
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