以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における粒子分析システム100の概略構成図である。粒子分析システム100は、互いに異なる計測機構を有する粒子計測装置110および粒子分析装置120を備えている。粒子分析システム100は、試料ガス中に浮遊する粒子であるエアロゾルを多角的に分析する複合分析装置であってよい。本例の粒子分析システム100は、システム制御部400を更に備える。
粒子計測装置110は、試料ガス中に照射したレーザ光の散乱光を用いて試料ガス中の粒子の濃度を計測する。本明細書において粒子の濃度の計測とは、粒子の濃度を導出できる情報を取得することを指す。例えば、粒子の数を計測することで、粒子の濃度を導出してよい。一方、粒子分析装置120は、試料ガスの流路において試料ガス中の粒子を捕集した上で、当該捕集した粒子を脱離させる。粒子分析装置120は、当該脱離成分を分析することによって試料ガス中の粒子の量を計測する。試料ガスは、大気であってもよく、車両などの排気ガスであってもよい。
システム制御部400は、各種のデータおよび信号を処理し、種々の制御を実行するコンピュータであってよい。システム制御部400は、粒子分析システム100の制御および測定結果の処理を実行する。システム制御部400は、一体のコンピュータが粒子計測装置110および粒子分析装置120によって兼用されてよく、粒子計測装置110および粒子分析装置120のそれぞれに独立したコンピュータが割り当てられてもよい。
粒子分析システム100は、導入配管である流路L0を備える。流路L0の一端は、試料ガス源10に接続される。試料ガス源10は、計測対象となる大気または排気ガスの試料導入口であってよい。流路L0の他端側は、分岐点12において第1流路L1と第2流路L2とに分岐してよい。粒子分析システム100は、流路L0を有さずに、第1流路L1と第2流路L2とが試料ガス源10に直接接続されていてもよい。
粒子計測装置110および粒子分析装置120は、一つの筐体に配置されてもよく、別々の筐体に配置されて、それぞれ独立して処理を行ってもよい。また、本例と異なり、粒子計測装置110および粒子分析装置120は、粒子分析システム100を構成せずに、それぞれ単独の装置として用いられてもよい。以下、粒子計測装置110と粒子分析装置120とに分けて説明する。
<粒子計測装置>
図2は、第1実施形態における粒子計測装置110を示す図である。粒子計測装置110は、希釈部150、粒子計測部200、および第1制御部160を備える。希釈部150は、希釈ガスで試料ガスを希釈して粒子計測部200に供給する。粒子計測部200は、試料ガス中の粒子によって散乱されたレーザ光、すなわち散乱光に基づいて、試料ガス中の粒子の濃度を計測する。第1制御部160は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、希釈部150における希釈率を制御する。
本例の希釈部150は、第1調整部20および粒子計測部用流量調整部30を有する。第1調整部20は、希釈ガス流量調整部22、浄化部24、および希釈ガス源26を有してよい。本例の粒子計測装置110は、試料ガス流路L11、希釈ガス流路L12、および供給流路L13を有する。試料ガス流路L11は、希釈されていない試料ガスが流れる流路である。試料ガス流路L11は、直線状に延びている。本明細書において、試料ガス流路L11は、試料ガス源10から合流点28までの流路、粒子計測装置110の筐体端から合流点28までの流路、または粒子計測部用流量調整部30から合流点28までの流路であってよい。
本例では、試料ガス流路L11は、粒子計測部用流量調整部30に接続され、他端が合流点28に接続される。希釈ガス流路L12は、一端が希釈ガス源26に接続され、他端が試料ガス流路L11との合流点28に接続される。供給流路L13は、一端が合流点28に接続され、他端が粒子計測部200に接続される。
粒子計測部用流量調整部30は、試料ガス流路L11に設けられてよい。本例の粒子計測部用流量調整部30は、試料ガス源10から供給される試料ガスの流量A1を計測し、流量A1を調整する。本明細書において単に流量と称した場合、特に説明が無ければ、単位時間当たりの流量を指す。粒子計測部用流量調整部30は、流量センサ、流量制御バルブ、および制御回路部を含んでよい。具体的には、粒子計測部用流量調整部30は、マスフローコントローラ、またはニードル弁付き流量計であってよい。粒子計測部用流量調整部30には制御回路部を通じて流量設定値が入力される。粒子計測部用流量調整部30は、流量制御バルブのバルブ開度を連続的に調整して、流量の実測値が流量設定値となるように制御してよい。
但し、本例と異なり、粒子計測部用流量調整部30は、粒子計測部200の下流側に設けられて、粒子計測部200から排出される排出ガスの流量A3を計測し、流量A3を調整してもよい。この場合には、試料ガス源10から合流点28までの間に、粒子計測部用流量調整部30が介在しないので、試料ガス源10から合流点28までの流路を直線状に形成しやすくなる。
希釈ガスは、例えば、粒子を予め定められた量以上に含まない清浄な希釈空気である。希釈ガス源26は、例えば圧縮空気源である。圧縮空気源は、コンプレッサであってよい。合流点28において、試料ガス源10からの試料ガスと希釈ガス源26からの希釈ガスとが混合される。したがって、合流点28の下流においては希釈ガスによって希釈された試料ガスが流れる。希釈ガスによって希釈された試料ガスは粒子計測部200に導入される。
第1調整部20は、希釈ガス流路L12に設けられる。希釈ガス流量調整部22は、希釈ガス源26から供給される希釈ガスの流量A2を計測し、流量A2を調整する。希釈ガス流量調整部22は、流量の調整対象のガスが希釈ガスであることを除いて、粒子計測部用流量調整部30と同様の構成を有してよい。希釈ガス流量調整部22は、流量設定値が入力されてよい。希釈ガス流量調整部22は、希釈ガスの流量A2を実測してよい。
浄化部24は、希釈ガス内の粒子を除去して希釈ガスを浄化するためのフィルタを有する。本例では、浄化部24が希釈ガス流量調整部22の上流に設けられているが、本例と異なり、希釈ガス流量調整部22の下流側に設けられてもよい。希釈ガス内の粒子を除去することによって、希釈ガス内の粒子の影響による測定誤差を防止することができる。希釈ガス源26によって供給される希釈ガスが予め定められた基準以上に清浄である場合には、浄化部24を省略してもよい。
本例では、第1制御部160が、粒子計測部200における計測結果に応じて試料ガスの希釈率を変更してよい。例えば第1制御部160は、試料ガス中の粒子濃度がより高い場合に、試料ガスの流量に対する希釈ガスの流量を相対的に大きくさせて、希釈率をより高くする。本例の希釈部150は、粒子計測部用流量調整部30と希釈ガス流量調整部22とによって流量A1および流量A2を変更する。これにより、希釈部150は、第1制御部160によって設定された希釈率となるように、希釈ガスで試料ガスを希釈して粒子計測部200に供給する。但し、本例と異なり、希釈部150は、流量A1、流量A2、および流量A3のうちの1つ以上を変更することによって希釈してもよい。
本例の粒子計測装置110は、排出ガス流路L14および第1吸引部32を備える。第1吸引部32は、排出ガス流路L14を介して粒子計測部200に接続されてよい。第1吸引部32は、粒子計測部200で測定を終えたガスである排出ガスを系外に排出する。第1吸引部32は、真空ポンプである。
第1制御部160は、各種のデータおよび信号を処理し、種々の制御を実行するコンピュータであってよい。システム制御部400を第1制御部160として用いてもよい。第1制御部160は、分散して配置されたマイクロコンピュータなどを含んでいてもよい。第1制御部160は、図2に破線で示したように、希釈ガス流量調整部22、粒子計測部用流量調整部30、および粒子計測部200の各部と通信可能に接続されてよい。第1制御部160は、図1で示された粒子分析装置120と通信可能に接続されていてよい。第1制御部160は、希釈ガス流量調整部22および粒子計測部用流量調整部30から流量の実測値を読み込んでもよい。
第1制御部160は、希釈部150における希釈率と、粒子計測部200によって計測された粒子の濃度とから、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度を算出する濃度算出部として機能してよい。粒子計測部200に導入される希釈後の試料ガスは、排出ガスの流量A3と等しく、流量A1と流量A2の和となる。したがって、粒子計測部200には、エアロゾル試料としての試料ガスが希釈率E=A3/A1=(A1+A2)/A1に希釈されて導入される。したがって、濃度算出部は、取得した濃度計測値S1に希釈率Eを乗じて、希釈されていない元々の試料ガス中の粒子の濃度を算出してよい。すなわち、希釈率Eは、希釈されていない元々の試料ガス中の粒子の濃度を算出するための補正値となる。補正値は、希釈率Eそのものであってよく、希釈率Eの関数であってもよい。当該関数は、1次関数に限定されない。第1制御部160は、希釈率Eの各値に応じた補正値のテーブルを予め記憶してよい。
本例の粒子計測装置110によれば、試料ガス中の粒子濃度に応じて試料ガスを希釈するので、試料ガス中の粒子が凝集することを抑制できる。このため、精度よく粒子濃度を測定することができる。また、粒子計測部200等の内部が測定対象の粒子で汚染されることを抑制できる。
図3は、粒子計測部200の一例を示す概略構成図である。本例では、粒子計測部200は、遮光容器202、射出ノズル204、回収ノズル208、レーザ照射部213、コリメートレンズ214、反射ミラー215、および受光部218を備える。遮光容器202は、壁部によって囲まれた容器であってよい。遮光容器202は、外部から遮光された領域を提供する。射出ノズル204は、遮光容器202の壁部の一部を貫通するように配置されている。射出ノズル204の先端には、ガスを射出する射出口206が設けられる。
射出ノズル204は、合流点28から供給流路L13を通じて導入される希釈済みの試料ガスを射出口206から射出してよい。回収ノズル208は、射出ノズル204と対向する位置において遮光容器202の壁部の一部を貫通するように配置されている。回収ノズル208の先端には、希釈済みの試料ガスを吸入して回収する回収口210が設けられる。回収ノズル208は、その回収口210が射出ノズル204の射出口206に対向するように配置される。回収ノズル208の他端は、排出ガス流路L14を介して第1吸引部32に接続されてよい。
射出ノズル204および回収ノズル208は、図2に示される場合に限られない。射出ノズル204および回収ノズル208は、それぞれが2重のノズル構造を有していてもよい。射出ノズル204は、被計測粒子を含む試料ガスを吐出するとともに、その外側を清浄なシースエアで包み込むことによって、試料ガスをビーム状に形成してよい。この場合、回収ノズル208は、試料ガスとシースエアとを分離して回収してよい。
レーザ照射部213の照射口と受光部218とは遮光容器202内に設けられる。レーザ照射部213は、射出ノズル204と回収ノズル208との間の粒子計測領域212に向けてレーザ光216を照射する。受光部218は、レーザ光216が計測対象の粒子にあたって生じる散乱光220を受光する。受光部218は、散乱光220の受光強度に応じて電気信号を出力する。受光部218は、受光した散乱光220をパルス状の電気信号に変換する光電変換素子を含んでよい。
粒子計測部200は、散乱光220を用いて粒子の濃度を測定するのみならず、白熱光検出処理を実行してもよい。粒子中に含まれるブラックカーボンがレーザ光216によって昇華するときに出る輻射光(白熱光)の強度によりブラックカーボンの粒子径が決定できる。
次に、試料ガス中の粒子の濃度が粒子計測部200に及ぼす影響について説明する。図4は、受光部218による出力信号の一例を示す図である。図4の上段、中段、および下段は、それぞれ低濃度、中濃度、および高濃度のときの出力信号を示す。図4において、横軸は時間であり、縦軸が出力電圧値(波高値)を示す。本例の受光部218は、一つの粒子に対応して一つのパルス波形を出力する。したがって、受光部218によって出力されるパルス波形の数が粒子の数に対応する。
一方、出力信号値、すなわちパルス波形の波高値が粒子径に対応する。そして、出力信号数と出力信号値とに基づいて、粒子の濃度が算出される。具体的には、出力信号数と波高値とを乗じて、予め定められた時間にわたって積算することで、粒子の質量濃度(μg/m3)が算出される。
しかしながら、図4の下段に示されるとおり、試料ガス中の粒子の濃度が高くなると、受光部218による出力信号が飽和してしまい、パルス波形の出力信号を検出することができない状況が発生し得る。出力信号が飽和している期間は、粒子を計数することができない。したがって、実際の粒子の濃度に対して、見かけ上、粒子の濃度が低く示される場合があり、誤差要因となり得る。このような受光部218による出力信号が飽和する原因の一つとして、粒子の凝集の影響が考えられる。
図5は、粒子の濃度と凝集化の関係を模式的に示す図である。図5に示されるとおり、試料ガス中の粒子の濃度が高くなると、試料ガス中の複数の粒子が凝集しやすくなる。具体的には、硝酸塩、硫酸塩、および煤(ブラックカーボン)などを成分として含む粒子であるエアロゾルを例にとると、濃度が高くなるにつれて、複数のエアロゾル同士が凝集し、粒子径が大きくなったエアロゾルとなる。
粒子の高濃度化により粒子が凝集して粒子径が大きくなると、エアロゾルによって生じる散乱光220が強くなる。この結果、強い散乱光220を受けた受光部218による出力信号が一時的に飽和する。出力信号が一時的に飽和している間、パルス波形の出力信号を検出することができない状況が発生し得る。
そこで、本実施形態の粒子計測装置110では、第1制御部160が、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、希釈部150における希釈率を制御する。図6は、第1実施形態の粒子計測装置110において希釈率を制御するフローチャートである。図6に示される処理では、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が、予め定められた複数の閾値と比較される。本例では、複数の閾値として、第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3(第1設定値d1<第2設定値d2<第3設定値d3)の3つの値を設定する。しかし、複数の閾値の個数は、3つの場合に限られない。
第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3に対応して、希釈率Eとして、第1値E1、第2値E2、および第3値E3(第1値<第2値<第3値)が設定されてよい。試料ガスの粒子の濃度が高くなるについて、希釈率Eが高くなる。なお、本明細書では希釈率Eは、試料ガス流量A1/(試料ガス流量A1+希釈ガス流量A2)であるので、希釈率Eが高くなることは、希釈ガスの占める割合が高くなることを意味する。
本例では、希釈されていない試料ガス中における粒子の濃度の閾値である第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3として、100μg/m3、500μg/m3、および1000μg/m3が予め定められている。本例では、希釈率Eの第1値E1が1(希釈ガス:試料ガス=0:100)であり、第2値E2が10(希釈ガス:試料ガス=10:90)であり、第3値E3が約33(希釈ガス:試料ガス=3:97)である。但し、各値は、これらの値に限られるものではない。
第1制御部160は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度計測値を取得する(ステップS101)。測定開始の時点では、試料ガスの濃度の範囲が不明である。したがって、第1制御部160は、希釈部150に対して、希釈しないように指示してよい。この場合は、試料ガスが希釈されずに粒子計測部200に導入される。粒子計測部200は、希釈されていない試料ガスについて粒子の濃度を計測する。粒子計測部200によって計測された濃度計測値が取得される。試料ガスが希釈されていない場合は、濃度(パーティクル値)は、濃度計測値であるパーティクル検出値(生データ)自体であってよい。
第1制御部160は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1以下であるかを判断する(ステップS102)。希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1以下である場合には(ステップS102:YES)、第1制御部160は、希釈率を第1値E1に設定する(ステップS103)。本例では、第1値E1が1(希釈ガス:試料ガス=0:100)である。
さらに、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1より大きく(ステップS102:NO)、かつ第2設定値d2以下である場合には(ステップS104:YES)、第1制御部160は、希釈率を第2値E2に設定する(ステップS105)。さらに、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第2設定値d2より大きく、かつ第3設定値d3以下である場合には(ステップS106:YES)、第1制御部160は、希釈率を第3値d3に設定する(ステップS107)。
一方、第1制御部160は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第3設定値d3より高い場合には(ステップS106:NO)、試料ガスを粒子計測部200に供給せず、希釈ガスのみを粒子計測部200に供給するように制御してよい(ステップS108)。さらに、計測限界濃度を超えたことに伴うエラーを発報して、処理を終了してもよい(ステップS109)。ステップS108およびステップS109の処理により、計測限界を超える濃度のガスによって装置内部が汚染されることを可能な限り抑制することができる。
一方、計測限界濃度を超えない範囲では、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、高く設定された希釈率(ステップS103、ステップS105、ステップS107)になるように、希釈部150は、試料ガスを希釈して、粒子計測部200に供給する。粒子計測部200は、希釈された試料ガス中の粒子の濃度を計測する。第1制御部160は、粒子計測部200から濃度計測値を取得する(ステップS110)。
第1制御部160は、希釈部150における希釈率と、粒子計測部200によって計測された粒子の濃度計測値とから、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度を算出する(ステップS111)。具体的には、ステップS110で取得した濃度計測値(パーティクル検出値)に希釈率E(補正値)を乗じて、希釈されていない元々の試料ガス中の粒子の濃度(パーティクル値)を算出してよい。以下、処理は、ステップS102以下に戻る。ステップS111で算出された希釈前の濃度を、各設定値d1、d2、d3と比較し、上述したような処理を繰り返してよい。なお、ステップS102からステップS107の段階は、試料ガス中の粒子の濃度を計測する粒子計測方法において、試料ガス中の粒子の濃度に応じた希釈率で、試料ガスを希釈ガスで希釈する段階の一例を示す。また、ステップS110は、希釈ガスで希釈された試料ガス中の粒子によって散乱されたレーザ光、すなわち散乱光220に基づいて、試料ガス中の粒子の濃度を計測する計測段階の一例を示す。
以上の処理によれば、第1制御部160は、粒子の濃度、すなわち粒子による汚染度に応じて希釈率を変更する。したがって、粒子の濃度が高い場合にも、計測精度を保つことができる。ユーザが希釈率を設定する必要がなく、粒子の濃度が変化した場合には、変化した粒子濃度に適した希釈率が設定される。
また、本実施形態の粒子計測装置110によれば、自装置内の粒子計測部200による計測結果を利用して、希釈率を変更することができる。したがって、外部機器による濃度の別途の計測をしなくてもよい。但し、第1制御部160は、粒子計測装置110以外の他の装置によって計測された濃度に応じて、試料ガスの希釈率を変更してもよい。第1制御部160は、粒子分析装置120からの計測結果に応じて、試料ガスの希釈率を変更してよい。
第1制御部160は、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、希釈率を高くする。したがって、粒子の凝集が抑制され、計測精度への影響を与える大きさの粒子径を持つ粒子の発生を抑制できる。この結果、試料ガス中の粒子の濃度が高くなっても、計測精度を維持できる。また、試料ガスに希釈ガスを混合する合流点28までの間の試料ガス流路L11は、供給流路L13に比べて距離が短く、直線状に延びているので、希釈される前の過程における試料ガス中の粒子の凝集を軽減することができる。
図7は、第2実施形態の粒子計測装置110において希釈率を制御する処理を示すフローチャートである。本例の粒子計測装置110において、第1制御部160は、第1実施形態の場合と異なり、希釈後の試料ガス中の粒子の濃度に応じて希釈率を制御する。
本例の粒子計測装置110では、粒子の凝集が抑制されて計測精度を保つことができる粒子の濃度計測値の設定範囲が定められている。そして、粒子計測部200に導入される試料ガス中の濃度計測値を当該設定範囲に保つように希釈率を変更する。具体的には、試料ガス中の濃度計測値が設定範囲の上限を超える場合には、希釈率を引き上げる一方、試料ガス中の濃度計測値が設定範囲の下限を下回る場合には、希釈率を引き下げる。本例の粒子計測装置110は、第1制御部160による希釈率の制御を除いて、第1実施形態と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材については同じ符号を用いて説明する。
第1制御部160は、粒子の濃度計測値を取得する(ステップS201)。粒子計測部200は、希釈された試料ガス中の粒子の濃度計測値を計測する。なお、測定の開始時は、設定すべき希釈率が不明であるので、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度計測値を計測してもよく、予め定められた初期値の希釈率となるように希釈された試料ガス中の粒子の濃度計測値を計測してもよい。
第1制御部160は、試料ガス中の粒子の濃度計測値が予め定められた計測限界値より高い場合には(ステップS202:YES)、試料ガスを粒子計測部200に供給せず、希釈ガスのみを粒子計測部200に供給するように制御してよい(ステップS203)。さらに、第1制御部160は、計測限界濃度を超えたことに伴うエラーを発報して、処理を終了してもよい(ステップS204)。これらの処理により、計測限界を超える濃度のガスによって装置内部が汚染されることを可能な限り抑制することができる。
試料ガス中の粒子の濃度計測値が予め定められた計測限界値以下である場合には(ステップS202:NO)、第1制御部160は、現在の希釈率で希釈されている試料ガス中の濃度計測値が、予め定められた範囲内であるかを判断する。具体的には、濃度計測値が設定範囲上限より高いか判断するとともに(ステップS205)、濃度計測値が設定範囲下限より低いか判断する(ステップS210)。
試料ガス中の濃度計測値が設定範囲上限より高い場合(ステップS205:YES)、希釈率の引き上げ限界に達していない限り(ステップS206:NO)、第1制御部160は、現在の希釈率から更に希釈率を引き上げる(ステップS207)。次いで、再びステップS201に戻って、新たに濃度計測値が計測される。希釈率の引き上げ限界に達する場合には(ステップS206:YES)、計測限界濃度を超えた場合と同様に処理してよい(ステップS208およびステップS209)。
希釈率を高くしすぎると、十分な計測精度が保てない。したがって、予め希釈率の引き上げ限界を定めて第1制御部160内などに記憶しておくことができる。また、希釈率の引き上げ幅についての情報または算出式についても第1制御部160内などに予め記憶しておくことができる。
試料ガス中の濃度計測値が設定範囲下限より低い場合(ステップS210:YES)、現在が希釈中であれば(ステップS213:YES)、第1制御部160は、希釈率を引き下げて(ステップS214)、再びステップS201に戻って新たに濃度計測値を計測する。なお、希釈率を引き下げる処理には、希釈率が1(希釈ガス:試料ガス=0:100)の場合、すなわち、元々の試料ガスを希釈しないようにする場合が含まれてよい。
試料ガス中の濃度計測値が設定範囲内に含まれる場合には(ステップS205:NO、ステップS210:NO)、特に希釈率を変更する必要がない。したがって、第1制御部160は、今回の濃度計測値と、希釈部150における希釈率とから、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度を算出してよい(ステップS211)。以下、処理は、ステップS201以下に戻る。
本実施形態の粒子計測装置110による処理によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第1制御部160は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、希釈部150における希釈率を制御することになるが、このとき希釈前の濃度および希釈後の濃度のどちらかに応じて希釈部150における希釈率を制御してもよい。
図8は、第3実施形態の粒子計測装置110において希釈率を制御する処理を示すフローチャートである。本例の粒子計測装置110は、第1制御部160による希釈率の制御を除いて、第2実施形態の場合と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材については同じ符号を用いて説明する。
本例の第1制御部160による希釈率の制御は、図7のステップS205の判断処理に代えてステップS305の判断処理を実行することを除いて、図7における処理と同様である。したがって、ステップS305の処理以外の処理についての説明は省略する。第1制御部160は、図8のステップS305において、受光部218の出力信号が飽和しているかを判断する。受光部218の出力信号が飽和しているか否かは、図4に示される出力信号波形から判断してよい。
例えば、第1制御部160は、受光部218の出力信号が飽和電圧を予め定められた時間にわたって維持している場合に、受光部218の出力信号が飽和していると判断する。あるいは、第1制御部160は、パルス波形の出力信号を検出することができない状況が予め定められた時間にわたって発生した場合に、受光部218の出力信号が飽和していると判断してもよい。但し、判断方法はこれらの場合に限定されない。
受光部218の出力信号が飽和している場合には(ステップS305:YES)、希釈率の引き上げ限界に達していない限り(ステップS306:NO)、第1制御部160は、現在の希釈率から更に希釈率を引き上げる(ステップS307)。次いで、ステップS301からステップS307の処理に戻って、新たに濃度計測値が計測される。ステップS301からステップS307の処理によれば、第1制御部160は、受光部218の出力信号が飽和している場合には、受光部218の出力信号が飽和していない状態となるまで(ステップS305:NO)、希釈率を高くする(ステップS307)。
本実施形態の粒子計測装置110によれば、受光部218の出力が飽和状態となることを防止し、粒子を検出できずに見かけ上の粒子の濃度が低く検出されてしまうことを防止することができる。
図9は、第4実施形態における粒子計測装置110を示す図である。本例の粒子計測装置110は、分級部42、凝集促進部44、微小粒子用流量調整部46、および流路切換部48を有することを除いて、図2に示された第1実施形態の粒子計測装置110と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材については同じ符号を用いて説明する。
本例の粒子計測装置110は、本来であれば粒子計測部200において検出可能な粒子径に満たない微小粒子をあえて凝集させて粒子径を大きくすることによって検出するものである。粒子の濃度が高くなると粒子の凝集が促進されることを利用してよい。分級部42は、予め定められた粒子径以上の粒子を除去した試料ガスを凝集促進部44に供給する粒子分級部である。分級部42は、例えばバーチャルインパクタ、またはフィルタなど種々の構成を有する。
凝集促進部44は、試料ガス中の粒子同士が凝集することを促す。本例では、凝集促進部44は、分級部42を通過した試料ガス中の粒子同士が凝集することを促す。凝集促進部44は、例えば、ラビリンス構造、加熱部、または加湿部を有する。ラビリンス構造は、比較的狭くて曲がりくねった流路を有する。ラビリンス構造における流路は、流路L11よりも狭くてよい。ラビリング構造を試料ガスが流れることによって、試料ガス中の粒子同士が凝集しやすくなる。加熱部を有する場合は、粒子同士の接触する確率が高くなり、凝集しやすくなる。加湿部を有する場合は、水蒸気を媒介として粒子同士が凝集しやすくなる。
微小粒子用流量調整部46は、凝集促進部44によって粒子同士の凝集が促進された試料ガスの流量を調整する。微小粒子用流量調整部46は、粒子計測部用流量調整部30と同様の構成を有してよい。凝集促進部44によって粒子同士の凝集が促進された試料ガスは、微小粒子用流量調整部46によって流量が制御されて、粒子計測部200に導入される。流路切換部48は、凝集促進部44を経る流路と、凝集促進部44を経ない流路とを切り換える。流路切換部48は、第1制御部160によって制御されてよい。
第1制御部160は、粒子計測部200において検出可能な粒子径に満たない微小粒子の濃度を検出したい場合、流路切換部48に対して、凝集促進部44を経る流路に切り換えるように指示する。粒子計測部200において検出可能な粒子径に満たない微小粒子は、分級部42を通過する。分級部42を通過した微小粒子は、凝集促進部44によって凝集が促進される。その結果、粒子計測部200で計測可能な粒子径まで大きくなり、粒子計測部に供給される。
流路切換部48は、凝集促進部44を経ない供給流路L13に切り換えることができる。この場合は、第1から第3実施形態と同様に粒子の濃度を計測することができる。本例では、凝集促進部44を経て導入される試料ガスは希釈しなくてよい。これにより、凝集が促進される。但し、この場合に限られず、凝集促進部44を経る流路を流れる試料ガスについても希釈してもよい。しかし、この場合は、凝集促進部44を経ない流路を流れる試料ガスより希釈率を低くしてよい。
<粒子分析装置>
粒子分析装置120の実施形態について説明する。図10は、第1実施形態における粒子分析装置120を示す図である。粒子分析装置120は、分析部300および抑制部60を備える。また、粒子分析装置120は、分析部用流量調整部51を有していてもよい。分析部用流量調整部51は、試料ガスの単位時間当たりの流量を制御する。例えば、分析部用流量調整部51は、単位時間当たりの流量を設定値に制御する絞り弁であるオリフィスである。
分析部用流量調整部51としてオリフィスのように動力源を有しない制御部を使用する場合には、オリフィスの直後に圧力計測部52を配置してよい。圧力計測部52による指示値が電気的に読み込まれて、分析部用流量調整部51における試料ガスの単位時間当たりの流量に換算される。
分析部300は、試料ガス中の粒子を捕集して、捕集された粒子を脱離させて脱離成分を生じさせ、脱離成分を分析して粒子の量を計測する。抑制部60は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、分析部300における粒子の捕集量を抑制する。抑制部60は、流路開閉部62と第2制御部170とを有してよい。本明細書において、「脱離」には、気化、昇華、または反応させることが含まれる。
流路開閉部62は、分析部300の上流側の流路に配置される。本例では、分析部用流量調整部51が流路開閉部62の上流に設けられている。但し、分析部用流量調整部51は、流路開閉部62の下流に設けられてもよい。あるいは、流路開閉部62が分析部用流量調整部51の機能を更に有していてもよい。分析部300の排出口には、排出流路を介して第2吸引部54が接続される。第2吸引部54は、分析部300からの排出流路を介して排出ガスを吸引して系外に排出する。第2吸引部54は、真空ポンプである。
流路開閉部62は、開状態と閉状態とを切り替えて分析部300への試料ガスの導入時間を調整する。流路開閉部62が流路を閉状態に制御すると、分析部300へ試料ガスが導入されず、流路開閉部62が流路を開状態に制御すると、分析部300へ試料ガスが導入される。流路開閉部62は、電動弁であってよく、例えば、電動アクチュエータ式ボールパルプである。しかし、流路開閉部62は、試料ガスの分析部300への導入の有無を制御できるものであれば、特に限定されない。
第2制御部170は、各種のデータおよび信号を処理し、種々の制御を実行するコンピュータであってよい。システム制御部400を第2制御部170として用いてもよい。第2制御部170は、分散して配置されたマイクロコンピュータなどを含んでいてもよい。第2制御部170は、図10に破線で示したように、圧力計測部52、流路開閉部62、および分析部300の各部と通信可能に接続されてよい。第2制御部170は、図1で示された粒子計測装置110と通信可能に接続されていてよい。第2制御部170は、圧力計測部52からの圧力の実測値を読み込み、圧力の実測値から圧力計測部52での流量を算出してもよい。
第2制御部170は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、流路開閉部62における開状態の時間を制御する。これにより、本例では、抑制部60は、試料ガスを分析部300に導入する導入時間を試料ガス中の粒子の濃度に応じて変更する。特に、第2制御部170は、分析部300による計測結果に応じて、流路開閉部62における開状態の時間を制御してよい。この場合、抑制部60は、分析部300による計測結果に応じて、導入時間を変更する。例えば、抑制部60は、試料ガス中の粒子濃度がより高い場合に、導入時間をより短くすることで、分析部300における粒子の捕集量を抑制する。
本例の粒子分析装置によれば、試料ガス中の粒子濃度に応じて、分析部における粒子の捕集量を抑制するので、残渣の発生を抑制できる。計測時にゼロ点が安定するとともに、残渣ガスの影響を軽減して、精度よく粒子濃度を測定することができる。
図11は、分析部300の一例を示す概略構成図である。本例では、分析部300は、減圧容器302を有する。減圧容器302は、外部に対して減圧された領域を提供するための減圧チャンバであってよい。減圧容器302は、隔壁によって複数の減圧容器303、減圧容器304、および減圧容器305に区切られていてよい。本例の減圧容器303、304、および305は、それぞれ第2吸引部54によって減圧されるようになっている。第2吸引部54は、減圧容器302内の減圧状態を保つための真空ポンプである。
分析部300は、粒子線生成部310および捕集体320を有する。粒子線生成部310は、試料ガス中の粒子の粒子線316を射出する。粒子線生成部310は、例えばエアロダイナミックレンズである。粒子線生成部310は、減圧容器302の壁部の一部に設けられる。粒子線生成部310は、減圧容器302の気密性を保ちつつ減圧容器302の壁部を貫通する。粒子線生成部310は、管状構造体の内側に立設する複数の絞り機構である複数のオリフィス312を備えてよい。粒子線生成部310の一端には、粒子線射出口314が設けられている。粒子線生成部310の他端は、流路開閉部62に接続されてよい。
本発明において、「試料ガス中の粒子の粒子線316」とは、固体または液体で構成された粒子の空力学的特性を利用して、粒子が浮遊した試料ガスから、各粒子が試料ガス中で同じような飛行・移動特性を持つようにビーム状に離隔濃縮された粒子の粒子線316である。減圧容器302内外の圧力差によって、試料ガスが粒子線生成部310に流入する。粒子線生成部310内を試料ガスが通り抜けるときは、媒質である気体は拡散しながら移動するので、オリフィス312によって直線的な移動が妨げられる。
一方、固体または液体で構成された粒子は、直進性が気体分子に比べて高いので、初段のオリフィス312を通過した粒子の移動が2段目以降のオリフィス312により大きく妨げられることがない。したがって、各粒子がビーム状に収束しつつ、粒子線射出口314を通って、減圧雰囲気側に粒子の粒子線316として射出される。
捕集体320は、粒子線316中の粒子を捕集する。捕集体320は、粒子線316が照射される捕集面322を有する。捕集体320は、捕集面322から予め定められた厚さの部分までは少なくともメッシュ状構造を有している。メッシュ状構造の捕集体320において捕集面322側から投影したときの面積空隙率が、80%以上99%の範囲であってよい。捕集体320は、粒子線316が射出される位置に配置される。本実施形態では、粒子線生成部310の粒子線射出口314から射出された粒子線316が減圧容器302内で予め定められた距離を飛行して到達する位置に、捕集体320が配置されてよい。
減圧環境によって減圧容器302内では気相成分が減っているので、粒子が捕集体320に当たったときの気流による乱れが抑制されている。粒子線316中の粒子が捕集体320の空隙に獲捕されつつ運動エネルギーが弱まる。捕集体320は、捕集面322が粒子線生成部310の粒子線射出口314に対して、傾けて対向するように配されてよい。これにより、捕集体320に跳ね返されて捕集できない確率を低減することができ、より効率的に粒子線316中の粒子を捕集することができる。
分析部300は、更に、エネルギー線照射部330および分析器340を有する。エネルギー線照射部330は、捕集体320に向けてエネルギー線331を照射して、捕集体320に捕集された粒子を気化、昇華、または反応させて脱離成分を生じさせる。エネルギー線331は、照射口332から照射され、減圧容器302の壁部等の一部に設けられた透光窓334を通過して減圧容器302内の捕集体320に到達する。エネルギー線331は、捕集体320の予め定められた範囲に照射される。
エネルギー線331は、捕集体320に捕集された粒子を脱離させて脱離成分を生じさせるものであればよく、特に制限されない。エネルギー線331は、例えば、赤外レーザの供給器、可視レーザの供給器、紫外レーザの供給器、X線の供給器、およびイオンビームの供給器により供給されるエネルギー線である。生じた脱離成分は、導管を介して、分析器340に導入されてよい。
分析器340は、脱離成分を分析して粒子の量を計測する。分析器340は、質量分析計または分光分析装置であってよい。分析器340は、分析強度に応じて分析信号を出力する。分析器340の導入口には、回収筒部342の一端が連結されている。脱離成分が、回収筒部342を通じて回収されて、分析器340内に導入される。
分析器340は、電気信号として受信された分析信号に基づいて演算し、粒子の量を導出してよい。分析器340は、粒子の成分及び成分別の量を導出してよい。分析信号から粒子の成分及び成分別の量を導出は、従来の質量分析計などと同様であるので詳しい説明を省略する。本例の分析部300によれば、エアロゾル試料中の粒子を予め定められた領域に集中的に捕集して、それにエネルギー線331を照射して生じさせた脱離成分を分析するので、効率的でしかも感度良く、粒子の成分及びその量を分析することが可能である。
次に、試料ガス中の粒子の濃度が分析部300に及ぼす影響について説明する。試料ガス中の粒子の濃度が高くなると、捕集体320に捕集される粒子の量が増加する。捕集される量が予め定められた量より多いと、エネルギー線331を照射しても、捕集体320上のすべての粒子が脱離することができず、残渣が発生し得る。その結果、分析部300でのゼロ点検出時、安定的にゼロ点を示すことができず、オフセットが生じてしまう。また、残渣が脱離することによって正しい計測値を算出することができない場合がある。
そこで、本実施形態の粒子分析装置120では、抑制部60が、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、分析部300における粒子の捕集量を抑制する。図12は、第1実施形態の粒子分析装置120における捕集量抑制処理を示すフローチャートである。図12に示される処理では、試料ガス中の粒子の濃度を、予め定められた複数の閾値と比較する。本例では、複数の閾値として、第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3(第1設定値d1<第2設定値d2<第3設定値d3)の3つの値を設定する。しかし、複数の閾値の個数は、3つの場合に限られない。
第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3に対応して、導入時間t1、導入時間t2、および導入時間t3(t1>t2>t3)が設定されてよい。試料ガスの粒子の濃度が高くなるにつれて、導入時間が短く設定されてよい。
本例では、試料ガス中における粒子の濃度の閾値である第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3として、100μg/m3、500μg/m3、および1000μg/m3が予め定められている。本例では、導入時間t1が180秒であり、導入時間t2が60秒であり、導入時間t3が15秒である。但し、各値は、これらの値に限定されるものではない。
第2制御部170は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度計測値を取得する(ステップS401)。測定開始の時点では、試料ガスの濃度の範囲が不明である。したがって、第2制御部170は、予め定められた導入時間tを設定してよい。第2制御部170は、圧力計測部52の計測値から換算された試料ガスの流量Aを取得してよい。第2制御部170は、流路開閉部62による開状態の時間tを取得する。第2制御部170は、試料ガスの導入量A・tを算出する。なお、本実施形態では、試料ガスが希釈されていない場合は、濃度計測値であるパーティクル検出値が、濃度(パーティクル値)を意味する。
第2制御部170は、流路を開状態とすべき時間についての指令を流路開閉部62に送信する場合は、流路開閉部62における開閉動作の追従性によっては、第2制御部170は、取得した流量Aと、指令された開状態の時間tとを用いて導入量A・tを算出してもよい。分析部300では、試料ガス中の粒子の量を計測する。具体的には、試料ガス中の成分別の質量を計測してよい。粒子の質量の計測値をSとすると、それを導入量A・tで除した値S/(A・t)が粒子の成分別の濃度計測値(μg/m3)となる。粒子がエアロゾルの場合、硫酸塩、硝酸塩、およびブラックカーボンといった成分別の濃度計測値を算出してよい。これら成分別の濃度計測値(μg/m3)を合算して粒子全体の濃度計測値(μg/m3)を算出してよい。第2制御部170は、このように試料ガス中の粒子の濃度計測値を取得してよい。
第2制御部170は、試料ガス中の粒子の濃度計測値が第1設定値d1以下であるかを判断する(ステップS402)。試料ガス中の粒子の濃度計測値が第1設定値d1以下である場合には(ステップS402:YES)、第2制御部170は、導入時間t1を設定する(ステップS403)。設定された導入時間t1が流路開閉部62に指示される。流路開閉部62は、指示された導入時間t1の間、流路を開状態とする。本例では、導入時間t1が180秒である。
試料ガス中の濃度計測値が第1設定値d1より大きく(ステップS402:NO)、かつ第2設定値d2以下である場合には(ステップS404:YES)、第2制御部170は、導入時間t2を設定する(ステップS405)。設定された導入時間t2が流路開閉部62に指示される。本例では、導入時間t2が60秒である。
試料ガス中の濃度計測値が第2設定値d2より大きく(ステップS404:NO)、かつ第3設定値d3以下である場合には(ステップS406:YES)、第2制御部170は、導入時間t3を設定する(ステップS407)。設定された導入時間t3が流路開閉部62に指示される。本例では、導入時間t3が15秒である。
第2制御部170は、試料ガス中の粒子の濃度計測値が第3設定値d3より高い場合には(ステップS406:NO)、試料ガスを粒子分析部300に供給せず、希釈ガスのみを粒子分析部300に供給するように制御してよい(ステップS408)。ステップS408およびステップS409の処理により、計測限界を超える濃度のガスによって装置内部が汚染されることを可能な限り抑制することができる。また、導入時間が一定の時間以下になると、試料ガスが粒子分析部300に導入されないまま途中でロスすることがあり、誤差が大きくなる。したがって、導入時間をあまりに短くすることは望ましくない。
一方、計測限界濃度を超えない範囲では、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、短く設定された導入時間(ステップS403、ステップS405、ステップS407)を適用することによって、抑制部60が、分析部300における粒子の捕集量を抑制する。捕集量が抑制された条件下で、分析部300は、試料ガス中の粒子の量を計測する。第2制御部170は、分析部300による粒子の質量の計測値をSを導入量A・tで除した値S/(A・t)を粒子の濃度計測値(μg/m3)として算出する(ステップS410)。
以下、処理は、ステップS402以下に戻る。ステップS410で算出された濃度計測値を、各設定値d1、d2、d3と比較し、上述したような処理を繰り返してよい。すなわち、抑制部60は、前回の分析部300での試料ガス中の濃度の計測結果(ステップS410)に基づいて、今回の導入時間を変更してよい。ステップS401およびステップS410は、試料ガス中の粒子を捕集して、捕集された粒子を脱離させて脱離成分を生じさせ、脱離成分を分析して粒子の量を計測する分析段階の一例を示す。ステップS402からステップS407の処理は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて、分析段階における粒子の捕集量を抑制する抑制段階の一例を示す。
以上の処理によれば、抑制部60は、粒子の濃度、すなわち粒子による汚染度に応じて、分析部300における粒子の捕集量を抑制する。その結果、粒子分析装置120によるゼロ点検出時に、安定的にゼロ点を表示できる。また、残渣ガスの影響を軽減して、計測精度を高めることができる。
また、本実施形態の粒子分析装置120によれば、自装置内の分析部300による計測結果を利用して、捕集量を抑制することができる。したがって、外部機器による濃度の別途の計測をしなくてもよい。但し、抑制部60は、粒子分析装置120以外の他の装置によって計測された粒子の濃度に応じて、試料ガスの導入時間を変更してもよい。抑制部60は、図3に示される粒子計測部200によって計測された粒子の濃度に応じて、導入時間を変更してもよい。この場合、粒子計測部200が粒子分析装置120の構成要素としても機能する。粒子計測部200は、試料ガス中の粒子によって散乱されたレーザ光、すなわち散乱光220に基づいて、試料ガス中の粒子の濃度を計測する。
抑制部60は、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、導入時間を短くする。したがって、残渣の発生が抑制できる。この結果、試料ガス中の粒子の濃度が高くなっても、計測精度を維持できる。
図13は、第2実施形態の粒子分析装置120における捕集量抑制処理を示すフローチャートである。本例の粒子分析装置120は、分析部300による計測結果の平均を算出する算出部を有する。そして、算出部は、導入時間が短くなるほど、平均をとる回数を多くする。第2制御部170が算出部を兼ねている場合を例にとって説明する。具体的には、第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3に対応して、導入時間t1、導入時間t2、および導入時間t3(t1>t2>t3)が設定されており、平均をとる計測回数として計測回数n1、計測回数n2、および計測回数n3(n1<n2<n3)が設定されている。試料ガスの粒子の濃度が高くなるにつれて、導入時間が短く設定される。導入時間が短くなるほど、平均をとる計測回数を多くする。
図13において、ステップS501からステップS503、ステップS505、ステップS506、ステップS508、ステップS509、ステップS511、およびステップS512の処理は、図12におけるステップS401からステップS409の処理と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、第1実施形態と同様の部材については、同じ符号を用いて説明する。
第2制御部170は、試料ガス中の粒子の濃度計測値が第1設定値d1以下であるかを判断する(ステップS502)。試料ガス中の粒子の濃度計測値が第1設定値d1以下である場合には(ステップS502:YES)、第2制御部170は、導入時間t1を設定し(ステップS503)、平均をとる回数である計測回数をn1に設定する(ステップS504)。また、試料ガス中の粒子の濃度計測値が第1設定値d1より大きく(ステップS502:NO)、かつ第2設定値d2以下である場合には(ステップS505:YES)、第2制御部170は、導入時間t2を設定し(ステップS506)、かつ平均をとる回数である計測回数をn2に設定する(ステップS507)。
同様に、試料ガス中の粒子の濃度計測値が第2設定値d2より大きく(ステップS505:NO)、かつ第3設定値d3以下である場合には(ステップS508:YES)、第2制御部170は、導入時間t3を設定し(ステップS509)、かつ平均をとる回数である計測回数をn3に設定する(ステップS510)。
設定された導入時間において、分析部300は、試料ガス中の粒子の量を計測する。第2制御部170は、分析部300による粒子の質量の計測値Sを導入量A・tで除した値S/(A・t)を粒子の濃度計測値(μg/m3)として算出する。そして、設定された計測回数分の濃度計測値を算出する(ステップS513)。次いで、第2制御部170は、計数回数分の濃度計測値の平均値を算出する(ステップS514)。平均値が、最終的な濃度計測値として用いられる。
本実施形態の粒子分析装置120によれば、分析部300による計測結果の平均を算出する算出部を備える。算出部は、導入時間t1、t2、t3が短くなるほど、平均をとる計測回数を多くする。したがって、捕集時間が短くなることに伴う誤差を軽減することができる。
図14は、第3実施形態における粒子分析装置120を示す図である。本例の粒子分析装置120の抑制部60は、流路開閉部62および第2制御部170のみならず、希釈部70を有する。したがって、本例では、抑制部60は、試料ガス中の粒子の濃度に応じた希釈率となるように希釈ガスで試料ガスを希釈して分析部300に供給する。これらのことを除いて、本例の粒子分析装置120は、第1実施形態の粒子分析装置120と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材には、同じ符号を用いて説明する。
本例の抑制部60は、希釈部70を有する。希釈部70は、希釈ガス流量調整部72、浄化部74、および希釈ガス源76を有してよい。本例の粒子分析装置120は、試料ガス流路L21、希釈ガス流路L22、および供給流路L23を有する。試料ガス流路L21は、希釈されていない試料ガスが流れる流路である。希釈ガス流路L22は、一端が希釈ガス源76に接続され、他端が試料ガス流路L21との合流点78に接続される。供給流路L23は、一端が合流点78に接続され、他端が流路開閉部62を介して分析部300に接続されてよい。希釈部70によって希釈された試料ガスが流路開閉部62を介して分析部300に導入される。
希釈ガスは、例えば、粒子を予め定められた量以上に含まない清浄な希釈空気である。希釈ガス源76は、例えば圧縮空気源である。圧縮空気源は、コンプレッサであってよい。合流点78において、試料ガス源10からの試料ガスと希釈ガス源76からの希釈ガスとが混合される。したがって、合流点78の下流においては希釈ガスによって希釈された試料ガスが流れる。希釈ガスによって希釈された試料ガスは流路開閉部62を介して粒子計測部200に導入される。
希釈部70は、希釈ガス流路L22に設けられる。希釈ガス流量調整部72は、希釈ガス源76から供給される希釈ガスの流量A2を計測し、流量A2を調整する。希釈ガス流量調整部72は、具体的には、マスフローコントローラ、またはニードル弁付き流量計であってよい。希釈ガス流量調整部72は、流量設定値が入力されてよい。希釈ガス流量調整部72は、希釈ガスの流量A2を実測してよい。浄化部74は、希釈ガス内の粒子を除去して希釈ガスを浄化するためのフィルタを有する。
本例では、第2制御部170が、粒子分析部300における計測結果に応じて試料ガスの希釈率を変更してよい。例えば第2制御部170は、試料ガス中の粒子濃度がより高い場合に、試料ガスの流量に対する希釈ガスの流量を相対的に大きくさせて、希釈率をより高くする。第2制御部170からの指示を受けて希釈ガス流量調整部72は、流量A2を変更する。これにより、抑制部60は、第2制御部170が設定した希釈率となるように、希釈ガスで試料ガスを希釈して分析部300に供給する。但し、本例と異なり、抑制部60は、流量A1、流量A2、および流量A3のうちの1つ以上を変更することによって希釈してもよい。
第2制御部170は、図14に破線で示したように、圧力計測部52、流路開閉部62、分析部300、および希釈ガス流量調整部72の各部と通信可能に接続されてよい。第2制御部170は、図1で示された粒子計測装置110と通信可能に接続されていてよい。第2制御部170は、圧力計測部52からの圧力の実測値を読み込み、圧力の実測値から圧力計測部52での流量を算出してもよい。第2制御部170は、希釈ガス流量調整部72から流量の実測値を読み込んでよい。
本例では、流路開閉部62は、導入時間が一定となるようにしてよい。但し、処理はこの場合に限られず、抑制部60は、試料ガス中の粒子の濃度に応じて希釈率および導入時間の双方を変更してもよい。具体的には、抑制部60は、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、希釈率を高くするとともに、導入時間を短くしてよい。
図15は、第3実施形態の粒子分析装置120における捕集量抑制処理を示すフローチャートである。図15に示される処理では、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度を、予め定められた複数の閾値と比較する。本例では、複数の閾値として、第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3(第1設定値d1<第2設定値d2<第3設定値d3)の3つの値を設定する。しかし、複数の閾値の個数は、3つの場合に限られない。
第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3に対応して、希釈率Eとして、第1値E1、第2値E2、および第3値E3(第1値<第2値<第3値)が設定されてよい。試料ガスの粒子の濃度が高くなるについて、希釈率Eが高くなる。なお、本明細書では希釈率Eは、試料ガス流量A1/(試料ガス流量A1+希釈ガス流量A2)であるので、希釈率Eが高くなることは、希釈ガスの占める割合が高くなることを意味する。
本例では、希釈されていない試料ガス中における粒子の濃度の閾値である第1設定値d1、第2設定値d2、および第3設定値d3として、100μg/m3、500μg/m3、および1000μg/m3が予め定められている。本例では、希釈率Eの第1値E1が1(希釈ガス:試料ガス=0:100)であり、第2値E2が10(希釈ガス:試料ガス=10:90)であり、第3値E3が約33(希釈ガス:試料ガス=3:97)である。但し、各値は、これらの値に限られるものではない。
第2制御部170は、希釈前の試料ガス中における粒子の濃度計測値を取得する(ステップS601)。測定開始の時点では、試料ガスの濃度の範囲が不明である。したがって、第2制御部170は、希釈部70に対して、希釈しないように指示してよい。この場合は、試料ガスが希釈されずに粒子分析部300に導入される。粒子分析部300は、希釈されていない試料ガスについて粒子の濃度計測値を計測する。粒子分析部300によって計測された濃度計測値が取得される。試料ガスが希釈されていない場合は、濃度(パーティクル値)は、濃度計測値であるパーティクル検出値(生データ)自体であってよい。
第2制御部170は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1以下であるかを判断する(ステップS602)。希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1以下である場合には(ステップS602:YES)、第2制御部170は、希釈率を第1値E1に設定する(ステップS603)。本例では、第1値E1が1(希釈ガス:試料ガス=0:100)である。
さらに、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第1設定値d1より大きく(ステップS602:NO)、かつ第2設定値d2以下である場合には(ステップS604:YES)、第2制御部170は、希釈率を第2値E2に設定する(ステップS605)。さらに、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第2設定値d2より大きく、かつ第3設定値d3以下である場合には(ステップS606:YES)、第2制御部170は、希釈率を第3値d3に設定する(ステップS607)。
一方、第2制御部170は、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度が第3設定値d3より高い場合には(ステップS606:NO)、試料ガスを分析部300に供給せず、希釈ガスのみを分析部300に供給するように制御してよい(ステップS608)。さらに、計測限界濃度を超えたことに伴うエラーを発報して、処理を終了してもよい(ステップS609)。ステップS608およびステップS609の処理により、計測限界を超える濃度のガスによって装置内部が汚染されることを可能な限り抑制することができる。
一方、計測限界濃度を超えない範囲では、試料ガス中の粒子の濃度が高くなるほど、高く設定された希釈率(ステップS603、ステップS605、ステップS607)になるように、希釈部70は、試料ガスを希釈して、分析部300に供給する。分析部300は、希釈された試料ガス中の粒子の濃度を計測する。第2制御部170は、分析部300から濃度計測値を取得する(ステップS610)。
第2制御部170は、希釈部70における希釈率と、分析部300によって計測された粒子の濃度計測値とから、希釈されていない試料ガス中の粒子の濃度を算出する(ステップS611)。具体的には、ステップS610で取得した濃度計測値(パーティクル検出値)に希釈率E(補正値)を乗じて、希釈されていない元々の試料ガス中の粒子の濃度(パーティクル値)を算出してよい。以下、処理は、ステップS602以下に戻る。ステップS611で算出された希釈前の濃度を、各設定値d1、d2、d3と比較し、上述したような処理を繰り返してよい。
以上の処理によっても、抑制部60は、粒子の濃度、すなわち粒子による汚染度に応じて、分析部300における粒子の捕集量を抑制することができる。したがって、第1実施形態の場合と同様の効果を達成できる。また、導入時間をあまりに短くする必要がないので、計測精度を維持しやすい。試料ガス中の粒子の濃度に応じて、導入時間と希釈率の双方を変更することもできる。
図16は、第4実施形態における粒子分析装置120を示す図である。本例の粒子分析装置120は、分級部82、凝集促進部84、微小粒子用流量調整部86、および流路切換部88を有することを除いて、図10に示された第1実施形態の粒子分析装置120と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材については同じ符号を用いて説明する。
本例の粒子分析装置120は、本来であれば分析部300において捕集しづらい微小粒子をあえて凝集させて粒子径を大きくすることによって捕集しやすくし検出するものである。粒子の濃度が高くなると粒子の凝集が促進されることを利用してよい。分級部82は、予め定められた粒子径以上の粒子を除去した試料ガスを凝集促進部84に供給する粒子分級部である。分級部82は、例えばバーチャルインパクタ、またはフィルタなど種々の構成を有する。
凝集促進部84は、試料ガス中の粒子同士が凝集することを促す。本例では、凝集促進部84は、分級部82を通過した試料ガス中の粒子同士が凝集することを促す。凝集促進部84は、例えば、ラビリンス構造、加熱部、および加湿部を有しる。ラビリンス構造は、比較的狭くて曲がりくねった流路を有する。ラビリンス構造における流路は、流路L21よりも狭くてよい。ラビリング構造を試料ガスが流れることによって、試料ガス中の粒子同士が凝集しやすくなる。加熱部を有する場合は、粒子同士の接触する確率が高くなり、凝集しやすくなる。加湿部を有する場合は、水蒸気を媒介として粒子同士が凝集しやすくなる。
微小粒子用流量調整部86は、凝集促進部84によって粒子同士の凝集が促進された試料ガスの流量を調整する。微小粒子用流量調整部86は、分析部用流量調整部51と同様の構成を有してよい。凝集促進部84によって粒子同士の凝集が促進された試料ガスは、微小粒子用流量調整部86によって流量が制御されて、分析部300に導入される。流路切換部88は、凝集促進部84を経る流路と、凝集促進部84を経ない流路とを切り換える。流路切換部88は、第2制御部170によって制御されてよい。
第2制御部170は、分析部300において検出可能な粒子径に満たない微小粒子の濃度を検出したい場合、流路切換部88に対して、凝集促進部84を経る流路に切り換えるように指示する。分析部300において検出可能な粒子径に満たない微小粒子は、分級部82を通過する。分級部82を通過した微小粒子は、凝集促進部84によって凝集が促進される。その結果、分析部300で計測可能な粒子径まで大きくなり、粒子計測部に供給される。
流路切換部88は、凝集促進部84を経ない供給流路に切り換えることができる。この場合は、第1から第3実施形態と同様に粒子の濃度を計測することができる。
図17は、第5実施形態における粒子分析装置120を示す図である。本例の粒子分析装置120は、分級部82、凝集促進部84、微小粒子用流量調整部86、および流路切換部88を有することを除いて、図14に示された第3実施形態における粒子分析装置120と同様である。また、分級部82、凝集促進部84、微小粒子用流量調整部86、および流路切換部88は、図16に示された第4実施形態における粒子分析装置120と同様である。したがって、繰り返しの説明を省略し、同様の部材については同じ符号を用いて説明する。
本例では、凝集促進部84を経て導入される試料ガスは希釈しなくてよい。これにより、凝集が促進される。但し、この場合に限られず、凝集促進部84を経る流路を流れる試料ガスについても希釈してもよい。しかし、この場合は、凝集促進部84を経ない流路を流れる試料ガスより希釈率を低くしてよい。本例の粒子分析装置120によっても、捕集しづらく計測しづらい微小な粒子径の粒子をあえて凝集させて粒子径の大きい粒子とすることにより、捕集しやすくすることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。