以下、本発明に係る実施例について説明する。図1は本実施例の洗濯乾燥機20の筺体の一部を切断して内部構造を示す斜視図、図2は本実施例の洗濯乾燥機20の内部構造を示す側面図、図3は本実施例の洗濯乾燥機20のヒートポンプ装置1の構成を示す模式図である。
本実施の形態例の洗濯乾燥機20において、外槽101は洗濯乾燥機筺体100のベース105上にサスペンション104により弾性支持されている。外槽101の内側には前面が開放され、回転自在に軸支持された回転ドラム103が配置され、回転ドラム103は外槽101の背面に設けられた駆動モータ107の駆動力により回転する。洗濯乾燥機20の前面側には開口部106が形成され、開口部106を開閉するドア111が設けられている。ユーザは、開口部106から、衣類200を回転ドラム103内部に投入し、洗濯乾燥が終了した衣類200を取り出すことが出来る。
外槽101の上部には、洗濯乾燥機20の前面から見て左側前方に洗剤投入手段108が設けられ、左側後方には、給水ユニット112が設置されている。また、外槽101上部には乾燥手段の構成要素であるリントフィルタ90、送風ファン8が設置されている。送風ファン8は、遠心式の多翼ファンあるいはターボ送風機である。また、外槽101を構成する外槽前面カバー102の右側上部には、回転ドラム103内への循環空気の吹出口14が設置されている。 外槽101の背面部には、循環空気を回転ドラム103から排出する排出口15を備え、排出口15は排気ダクト73によりフィルタケース91に接続されている。外槽101とダクト等の接続は、運転時の振動の伝達を抑制するためにゴム製のジャバラ等を介して接続している。
次にヒートポンプ装置1の構成と動作について説明する。図3は本発明の一実施形態例に係わるヒートポンプ装置の構成を示す模式図で、ヒートポンプ装置1の冷媒回路16の構成と循環風路17の構成を示している。図3に示すように、ヒートポンプ装置1は、圧縮機2と、空気への放熱用熱交換器(凝縮器3)、減圧装置5(膨張弁等)と、空気の除湿用熱交換器(蒸発器4)とを備え、これらの機器を冷媒配管6により順次接続してなる冷媒回路16を、樹脂製のケーシング18内に収納したものである。冷媒は図中R1で示した矢印の方向に、圧縮機2、凝縮器3、減圧装置5、蒸発器4の順に流れ、再度圧縮機2に戻る。
ヒートポンプ装置1を構成する蒸発器4、凝縮器3は空気と熱交換を行うため、一般的に積層したアルミフィンに伝熱管を貫通するように取り付けたクロスフィンチューブ式の熱交換器が用いられることが多い。以降、凝縮器3と蒸発器4を合わせて熱交換器と呼ぶ。
ヒートポンプ装置1のケーシング18は、下部ケーシング(図示せず)と上部ケーシング(図示せず)に分離可能な構成である。熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)は側面側に流れる空気を阻害するように、上部ケーシングと下部ケーシングの間に挟み込むように設置され、空気の循環風路17を形成する。
圧縮機2は防振ゴム等を介して、下部ケーシングに設置される。冷媒配管6は、圧縮機2の回転振動の伝搬により破断することを防ぐため、蛇行した状態で放熱用の凝縮器3と除湿用の蒸発器4のそれぞれと接続されている。
圧縮機2は、制御が可能な圧縮機を用い、例としては、ピストン式、ロータリー式、スクロール式等を用いることができ、インバータ制御により、低速から高速まで回転速度が可変である。
また、冷媒が液相で圧縮機2に戻ると、圧縮機2の摺動面での潤滑不良により信頼性を低下させることがある。これを抑止するために、冷媒の吸入側にアキュムレータ(図示せず)を設けるとよい。
圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器3へ流入し、循環空気に放熱することにより凝縮して液化する。液化した冷媒は、所定の開度に調整された膨張弁(減圧装置5)により減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、蒸発器4へ流入する。そして循環空気から吸熱することにより蒸発して気化する。気化した冷媒は、圧縮機2に吸入され、圧縮機2により再び圧縮され高温高圧のガス冷媒となる。このようにしてヒートポンプ装置1が形成される。
前記の冷媒回路16内には冷媒が封入され、冷媒として例えば、HFC単一冷媒、HFC混合冷媒、HFO−1234yf、HFO−1234ze、自然冷媒(例えばCO2冷媒)等を用いることができる。
蒸発器4は回転ドラム103内の衣類200から蒸発した水分を含んだ高湿の空気を除湿冷却し、凝縮器3では蒸発器4で吸熱した熱量と圧縮機2の熱量を循環空気に放熱する。一般的にフィンチューブ式熱交換は積層したアルミフィンの表面にスリットを切り起こすことや、折り目を加工すること、フィンピッチを縮めること等で伝熱面積を増加させ、空気流に対する前縁効果により伝熱性能を向上させている。
乾燥運転時には蒸発器4は循環空気の露点温度以下となるように制御されるため、蒸発器4を構成するフィンの表面には、循環空気中の水分が結露して付着する。このため、アルミフィンの表面には親水性処理等の表面処理が施され、フィン表面に結露した水分を流し落としやすくする構成となっている。
ヒートポンプ装置1は、外槽101の下部、洗濯乾燥機筺体100の後方のベース105上に設置してある。循環空気は回転ドラム103から排出口15を経て排出され、リントフィルタ90通過後、外槽101上部から下部に向かって入口側流路70を経由してヒートポンプ装置1に流入する。ヒートポンプ装置1において除湿及び加熱された循環空気は、外槽101下部から上部に向かって循環空気が流れる出口側流路71から、送風ファン入口ダクト72を通り、送風ファン8に接続され、外槽101の前面上部に設けた吹出し口14により回転ドラム103内に吹き込まれる。
ヒートポンプ装置1は、冷媒の温度を検知するための、冷媒温度センサ(例えばT1、T2、T3)を備えている。冷媒温度検知手段を配置した例として、図2では、圧縮機2の吐出側には冷媒温度センサT1、膨張弁等の減圧装置5の入口側には冷媒温度センサT2、圧縮機2の吸込側には冷媒温度センサT3を示している。これらの冷媒温度センサの検出値は、冷凍サイクルにおける運転状態を把握するために用いられる。冷媒温度センサは、前述した3箇所設置例の他にも熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)の出入口(図示せず)などに設置され、検出量により冷凍サイクルの状態を表すモリエル線図を推定し、冷凍サイクルの制御が行われている。本実施例の冷媒回路16では冷媒温度センサT1、T2、T3で冷凍サイクルの性能を推定しているが、圧力センサを取り付けた構成としてもよい。
さらに、洗濯乾燥機20は循環空気や洗濯乾燥機20の周囲の空気の温度及び湿度を検知するために、温度湿度センサ(例えばTH1、TH2、TH3)を備えている。空気の温度及び湿度の検知手段を配置した例として、図2では、回転ドラム103出口に温度湿度センサTH2を配置し、回転ドラム103入口には温湿度センサTH1を配置し、吸気風路12の入口には温湿度センサTH3を配置している。通常、温度湿度センサTH2はヒートポンプ装置1の入口での循環空気の温度及び湿度の値として、温度湿度センサTH1はヒートポンプ装置1の出口での循環空気の温度及び湿度の値として、温度湿度センサTH3は洗濯乾燥機20外部の空気の温度及び湿度の値として用いることがある。前述の温度湿度センサの計測値により、循環風路17内の空気の温度及び湿度の変化を検知して、乾燥運転時の衣類200の乾燥の進行度合いを推測する。また、衣類200の乾燥終了の判定には、温度湿度センサの検出値に加えて、洗濯乾燥運転時の衣類200の量や質を判定するセンサの出力値等が利用される。
本実施の形態における洗濯乾燥機20は、ユーザの選択により、衣類200を短時間で乾燥させる時短乾燥コースと、消費電力量を抑えた省エネルギー乾燥コースを選ぶことが可能である。図5に本発明の一実施形態例に係わる洗濯乾燥機20の洗濯乾燥運転のフローを示す。図5(A)は省エネルギー乾燥コースの運転フローを示し、図5(B)は本実施の形態の時短乾燥コース1の運転フローを示し、図5(C)はバスタオル等の乾き難い衣類あるいは、負荷容量の大きい場合の時短乾燥コース2の運転フローを示している。
時短乾燥運転は、乾燥工程に要する時間を短縮するために省エネルギー乾燥運転時と比較して、高温かつ大風量の循環空気を循環させ、回転ドラム内103内の衣類200に含まれる水分を速やかに衣類200から蒸発させ、衣類から蒸発した水分を含んで多湿となった循環空気をヒートポンプ装置1の蒸発器4で効果的に除湿する乾燥サイクルを繰り返す。
洗濯乾燥機20における洗濯運転の運転フローは、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の工程を順に進行する。また、乾燥工程の終了後には、回転ドラム103内の衣類200にしわがつくことを抑止するために、回転ドラム103を低速で回転させて衣類200を撹拌する工程が追加されることがある。また、図5(A)、図5(B)、図5(C)には洗濯乾燥機20の運転フローに加え、ヒートポンプ装置1の運転フロー、開閉機構7の開放のタイミングを合わせて示している。
通常、脱水工程での回転ドラム103の回転数は、衣類200の重量や材質等の検知結果によって決定され、衣類200を高速脱水することにより衣類200が含有する水分量を減らすことができ、省エネルギー乾燥運転時は消費電力量を低減し、時短乾燥運転時は乾燥運転時間を短縮する。また、回転ドラム103が高速で回転することにより駆動モータ107が発熱し、衣類200や回転ドラム103の内部を含めた循環風路17内の空気を間接的に加熱する。このため、循環風路17内部に設置された熱交換器(蒸発器4、凝縮器)内部の冷媒が温められる。
図5(A)の省エネルギー乾燥コースでは、洗濯乾燥機20の運転フローに対して、ヒートポンプ装置1の運転は、概ね脱水工程終了後に開始され、乾燥工程の終了すなわち、衣類200の乾燥判定がなされるまで運転が継続される。この時、送風ファン8及び圧縮機2は、それぞれファンA、圧縮機Aの運転条件で運転され、回転数は、消費電力量の増大を抑えた条件で運転されるため、洗濯乾燥消費電力量は衣類200の重量に対して最適な値となるように制御される。
図5(B)の時短乾燥コース1では、洗濯乾燥機20の運転フローに対して、ヒートポンプ装置1の運転は、脱水工程の開始とほぼ同時に運転が開始され、図5(A)の省エネルギー乾燥コースと同様に乾燥工程の終了まで運転が継続される。ヒートポンプ装置1の運転終了判定は、一定時間経過後に終了とする、或いは衣類200の乾燥判定の結果により終了するように制御可能である。乾燥終了判定の制御には、洗濯乾燥運転時の衣類200の量や質を判定するセンサの出力値や、循環空気や周囲空気の温度及び湿度を検知する温度湿度センサTH1、TH2、TH3の出力値が利用される。ヒートポンプ装置1の運転フローにおいて、送風ファン8及び圧縮機2は、それぞれファンB、圧縮機Bの運転条件で運転され、送風ファン8及び圧縮機2は、省エネルギー運転と比較して、高い回転数で運転される。このような制御により、循環空気の風量と吹出し温度を増加させることが可能になる。さらにドラム回転工程では、送風ファン8はファンCの条件で運転される。
上述のようにヒートポンプ装置1の運転を行うと、以下のような効果を得ることができる。即ち、脱水工程時にヒートポンプ装置1の運転を開始すると、圧縮機2の発熱と駆動モータ107の発熱で、循環風路17内の空気を加熱するため、冷凍サイクルを構成する熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)や冷媒配管6内の冷媒を温めることができる。これにより、ヒートポンプ装置1を暖機する効果を得るため洗濯乾燥機20の運転フローが乾燥工程に入った時に、冷凍サイクルを速やかに所定の温度条件設定することができ、乾燥時間を短縮することができる。また、脱水工程で送風ファン8を運転して、ドラム内に循環空気を送ることにより、脱水の遠心力で回転ドラム103内面に張り付いた衣類200をほぐす効果や、衣類200の温度を上昇させる効果がある。
さらに、乾燥工程終了時にヒートポンプ装置1の運転フローのうち、送風ファン8及び圧縮機2のそれぞれ、ファンB及び圧縮機Bの条件での運転を停止して、開閉機構7を開とし、送風ファン8をファンCの条件で運転を開始すると、送風ファン8及び圧縮機2を、それぞれファンB及び圧縮機Bの条件で運転して高い温度となった循環風路17内や、回転ドラム内103内の空気の温度を下げ、さらには回転ドラム103内に残った空気の絶対湿度を下げることができるため、乾燥の乾きむらを抑制し、衣類200が湿った状態になることを防ぐため、乾燥の仕上がり性を向上することができる。また、循環負路17内の空気や衣類200の温度を低くすることができるため、衣類200を取り出しやすくする効果を得る。
また、ファンB及び圧縮機Bの運転条件は、省エネルギー運転と比較して除湿及び加熱能力を増加させた運転条件であるが、送風ファン8及び圧縮機2の回転数を一定として運転することに限定されるものではなく、回転数は乾燥工程の進行に伴い適宜変更してもよい。
図5(C)に示したバスタオル等の乾き難い衣類あるいは、負荷容量の大きい場合の時短乾燥コース2では、図5(B)の時短乾燥コース1と同様に、洗濯乾燥機20の運転フローに対して、ヒートポンプ装置1の運転は、脱水工程の開始から同時に、送風ファン8及び圧縮機2をファンB、圧縮機Bの運転条件で運転を開始し、一定時間経過後に送風ファン8及び圧縮機2をそれぞれファンC、圧縮機Cの運転条件に切り替えるように制御される。図5(B)に示した時短乾燥コース1と同様に、送風ファン8及び圧縮機2をそれぞれファンB、圧縮機Bの運転条件で運転すると、送風ファン8及び圧縮機2は、省エネルギー運転と比較して、高い回転数で運転される。このような制御により、循環空気の風量と吹出し温度を増加させることが可能になる。また、送風ファン8及び圧縮機2のファンC、圧縮機Cの運転条件では、送風ファン8及び圧縮機2のファンB、圧縮機Bの運転条件と比較して、低い回転数での運転制御が行われる。
上述のような運転を行うことで、図5(B)の時短乾燥コース1と同様に、脱水工程時にヒートポンプ装置1の運転を開始すると、圧縮機2の発熱と駆動モータ107の発熱で、循環風路17内の空気を加熱するため、冷凍サイクルを構成する熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)や冷媒配管6内の冷媒を温めることができる。これにより、ヒートポンプ装置1を暖機する効果を得るため洗濯乾燥機20の運転フローが乾燥工程に入った時に、冷凍サイクルを速やかに所定の温度条件設定することができ、乾燥時間を短縮することができる。
さらに、乾燥工程終了時にヒートポンプ装置1の運転フローのうち、送風ファン8及び圧縮機2の、ファンB及び圧縮機Bの条件での運転を停止して、開閉機構7を開とし、送風ファン8及び圧縮機2をそれぞれファンC及び圧縮機Cの条件で運転すると、ファンB及び圧縮機Bの条件での乾燥運転により高い温度となった循環風路17内や、回転ドラム内103内の空気の温度を下げることができる。さらに、時短乾燥運転の終了時よりも低い空気温度、及び湿度条件でヒートポンプ装置1の運転を行うため、冷凍サイクルの凝縮温度及び蒸発温度が下がり、回転ドラム103内の衣類200を省エネルギー運転と同レベルの温度で除湿することが可能となる。即ち、回転ドラム103内に残った空気の絶対湿度を下げることができるため、乾燥の乾きむらを抑制し、衣類200が湿った状態になることを防ぐため、乾燥の仕上がり性を向上することができる。また、衣類200の温度を低くすることができるため、衣類200が回転ドラム103から取出しやすくなる効果を得る。また、衣類200が乾きやすい衣類の組み合わせや、負荷容量が軽い場合には、図5(B)の時短乾燥コース1よりも、乾燥運転時間を短くすることができる。
本実施の形態における洗濯乾燥機20において、排水弁109は以下のように制御される。脱水工程時には、排水弁109は開放状態で、衣類200から脱水された水分と回転ドラム103内の高湿の空気は排水ホース110から洗濯乾燥機20外部へ排出される。脱水工程と同時にヒートポンプ装置1を運転することにより、送風ファン8により排水ホース110からの回転ドラム103内の空気の排出に加えて、蒸発器4で循環空気を除湿することが可能となる。上述のような運転より、乾燥運転開始時から循環空気中の水分を効率よく除去することが可能となり、乾燥運転時の時間短縮が可能となり、消費電力量の大幅な増大を抑える効果を得ることができる。
乾燥工程では、排水弁109は閉状態に制御されため、循環空気は、外部に排出されることなく、回転、ドラム103、排出口15、排気ダクト73、リントフィルタ90、入口側風路70、ヒートポンプ装置1、出口側風路71、送風ファン8、吹出しダクト74、吹出口14で構成される流路を循環する。衣類200から蒸発した水分と回転ドラム103内の高湿の空気はヒートポンプ装置1に送られ、蒸発器4のフィン表面で結露して除湿される。除湿後の空気は凝縮器3で加熱され、送風ファン8により、回転ドラム103内に送られる。衣類200から移動した水分を含んだ循環空気は再度ヒートポンプ装置1で除湿される。このように、ヒートポンプ装置1を用いた洗濯乾燥機では、乾燥運転時間の循環空気中の水分を効率よく除去することが可能となり、乾燥運転時の時間短縮が可能となり、消費電力量の大幅な増大を抑える効果を得ることができる。
また、循環風路17から洗濯乾燥機20外部へ排気する空気の露点温度が洗濯乾燥機20外の外気温度よりも高い場合には、循環風路17からの排気を、排水弁109を開として、排水ホース110から洗濯乾燥機20外部へ排出すればよい。上述のような制御により、循環空気と洗濯乾燥機20外部の空気の露点温度差による結露は排水ホース110内において生じるため、洗濯乾燥機20を設置した周囲環境で生じることを抑制することができる。
本実施の形態の洗濯乾燥機20は、循環空気や周囲空気の温度及び湿度を検知する温度湿度センサTH1、TH2、TH3を備えている。図6は、本実施の形態の洗濯乾燥機20の乾燥運転時の絶対湿度の時間的変化を示したもので、横軸には乾燥運転時間、縦軸は絶対湿度を示している。これらの値は、循環空気や周囲空気の温度及び湿度を検知する温度湿度センサTH1、TH2、TH3の出力値を持ち用いて算出される。
図6(A)は省エネルギー乾燥運転条件で、図中にはヒートポンプ装置入口の絶対湿度HA1、ヒートポンプ装置出口の絶対湿度HA2、周囲空気の絶対湿度H3の乾燥運転時間に対する変化を示している。図6(B)は時短乾燥運転条件で、図中にはヒートポンプ装置入口の絶対湿度HB1、ヒートポンプ装置出口の絶対湿度HB2、周囲空気の絶対湿度H3の乾燥運転時間に対する変化を示している。絶対湿度は、乾燥空気1kg当たりに含まれる水蒸気量として表し、実際に、循環風路17や回転ドラム103内に存在する水分とみなすことができる。
乾燥工程は、凝縮器3で加熱した空気を回転ドラム103内の衣類200に吹き付けて、衣類200に含まれる水分を蒸発させる。衣類200から蒸発した水分を含んだ循環空気は蒸発器4で除湿され、凝縮器3で再び加熱されて、回転ドラム103内の衣類200を乾燥させる。このような工程を繰り返すことで、乾燥工程は進行する。絶対湿度の乾燥時間に対する変化は、乾燥の開始から乾燥工程の進行に伴って増加し、乾燥工程の後半では減少に転じる。これは、乾燥工程の前半では、衣類200からの水分の蒸発量が多いこと、乾燥工程の後半では衣類200からの水分の蒸発量が減るためである。
図6(A)の省エネルギー乾燥条件において、絶対湿度の乾燥運転時間に対する変化は乾燥運転時間TAの間で、上述のような傾向を示す。図6(B)の時短乾燥条件では、循環空気による加熱量が、省エネルギー条件に対して大きいため、上述の傾向が顕著に表れている。さらに、乾燥運転時間TBでのヒートポンプ装置出口の絶対湿度HB2は、省エネルギー乾燥条件のヒートポンプ装置出口の絶対湿度HA2と比較して高い値を示しており、時短乾燥運転終了時に回転ドラム103内に残留している水分量が多いことが分かる。
そこで、本実施の形態における洗濯乾燥機20は、ヒートポンプ装置1の運転開始から一定時間経過後に、循環風路17に設けた開閉機構7を開とする。開閉機構7を開くタイミングは、図5(B)に示した時短乾燥コース1では、乾燥工程の終了時、即ち送風ファン8及び圧縮機2のファンB、圧縮機Bの条件での運転終了時である。図6(B)に示したように時短乾燥終了時の回転ドラム103内部の絶対湿度はヒートポンプ装置入口の絶対湿度HB1と同等とみなすことができるため、周囲空気の絶対湿度H3との間に差が生じていることが分かる。ヒートポンプ装置1の運転が停止すると、回転ドラム103内の空気中の水分は、時間とともに凝縮して衣類200に付着して衣類200を再度湿った状態にして、乾燥の仕上がり性を低下させるが、上述の条件で開閉機構7の制御を行うと、ファンCの運転により循環空気と洗濯乾燥機20の機外の空気が置換されるため、回転ドラム103内の絶対湿度が下がり、衣類200の仕上がり性の低下を抑制することができる。
また、図5(C)に示した時短乾燥コース2は、送風ファン8及び圧縮機2のファンB、圧縮機Bの条件での運転終了時に開閉機構7を開とし、送風ファン8及び圧縮機2をファンC、圧縮機Cの条件としてヒートポンプ装置1を再度運転している。換気により循環空気の温度が下がった状態でヒートポンプ装置1を運転すると、回転ドラム103内の空気の除湿を進めるのみならず、送風ファン8及び圧縮機2をファンB、圧縮機Bの運転条件で運転した時短乾燥時と比較して凝縮温度が低い条件で回転ドラム103内へ空気を吹き出すことが可能となり、回転ドラム103内部を冷却する効果を得ることができる。
また、時短乾燥運転を行うと、圧縮機2の入力が増大する可能性があるが、図6に示したような循環空気の湿度の変化から、衣類200の乾燥状態を推定することができるため、乾燥運転時間の最適値を決定し、消費電力量の大幅な増大や、衣類200への過大な加熱を抑制することが可能となる。
また、乾燥終了の判定方法としては、ヒートポンプ装置出口の絶対湿度HA2(あるいはHB2)と、ヒートポンプ装置入口の絶対湿度HA1(あるいはHB1)の差が一定値以下になること、ヒートポンプ装置入口の絶対湿度HA1、HB1の値、あるいはヒートポンプ装置出口の絶対湿度HA2、HB2の値が所定の値以下になること、周囲の空気の絶対湿度H3との差一定値以下になること等が挙げられる。乾燥終了の判定を適切に行うことで、乾燥時間の短縮や、乾燥仕上がり性の向上、消費電力量の適正化ができる。
本実施の形態における洗濯乾燥機20を図3に示す。図3では模式的に循環風路17及びヒートポンプ装置1を洗濯乾燥機筺体100の外に示しているが、実際には、ヒートポンプ装置1は洗濯乾燥機筺体100の下部後方、あるいは上部後方に配置した構成となっている。本構成では、ケーシング18の蒸発器4の上流側に排気風路11が設けられ、吸気風路12は蒸発器4から凝縮器3へ至る流路の途中に設けられている。また、排気風路11および吸気風路12には、開閉機構7を備えている。
洗濯乾燥機20の機外の空気の温湿度が循環空気の温湿度よりも低い場合、排気風路11の開閉機構7を開として蒸発器4の上流側で排気を行うことにより、循環空気の絶対湿度を効果的に下げることが可能となる。また、吸気風路12の開閉機構7を開とすれば凝縮器3の上流側で吸気を行うため、低温の空気が凝縮器を通過することになり、凝縮圧力を下げることができ、圧縮機2の消費電力を低下させ省エネルギー化を図ることができる。
また、別の構成として、排気風路11及び開閉機構7をケーシング18の上面に設け、吸気風路12及び開閉機構7をケーシング18の下面に設けた構成とする。このような構成であれば、排気風路11の開閉機構7から排気された空気が吸気風路12を通って循環風路17内に再度流入することを防ぐことができる。洗濯乾燥機筺体100の下部のベース105は開口部が多く、洗濯乾燥機20の周囲空気と連通しているため、吸気風路12及び開閉機構7をケーシングの下面付近に設ければ、外気を取り込みやすく、循環風路17内の空気の温湿度を速やかに低下させる効果を得る。
加熱能力を増加させて乾燥時間を短縮するためには冷媒循環量を増加させ、冷媒循環量に応じて循環風量を大としてヒートポンプ装置1を運転する必要がある。このような運転では、圧縮機2を駆動する消費電力が増加することにより、冷凍サイクルへの入熱量と、冷凍サイクルの構成要素からの放熱量の差分が冷凍サイクルに蓄熱されるため、冷凍サイクルの圧力が上昇していくことになる。この時、冷凍サイクルの運転点を保持するための方法のひとつとして、循環空気を循環風路17外へ排気することが考えられるが、上述のような構成とすることで、圧縮機2の入力の増加を抑制した乾燥運転を行うことが可能となるため、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
本実施の形態における洗濯乾燥機20を図4に示す。図4では模式的に循環風路17及びヒートポンプ装置1を洗濯乾燥機筺体100の外に示しているが、実際には、ヒートポンプ装置1は洗濯乾燥機筺体100の下部後方あるいは上部後方に配置した構成となっている。本構成では、ケーシング18内の蒸発器4から凝縮器3へ至る流路の途中に循環風路17内外へ連通した連通風路10を備えている。連通風路10は、排気風路11、開閉機構7、吸気風路12、及び開閉機構7で構成されており、排気風路11の出口側には、送風装置である排気ファン9が備えてある。したがって、排気ファン9を運転することで、送風ファン8の運転状態に関わらず循環風路17内の高温高湿の循環空気を排気することができるため、循環空気の換気を効率よく行うことができる。
また、蒸発器4では、回転ドラム内103の衣類200から蒸発した水分を含んだ高湿度の循環空気と冷媒の熱交換を行って、循環空気から熱を吸熱し、蒸発器4で得た熱量を凝縮器3での循環空気の加熱のエネルギーとして使用している。連通通路10は蒸発器4から凝縮器3へ至る循環風路17の途中に設けられているため、循環風路17外へ排気される循環空気の一部は、蒸発器4を通過した後に排気風路11を通り、循環風路17外へ排出される構成となっている。上述のような構成とすることで、蒸発器4での吸熱量を減じることなく乾燥運転を行うことが可能となるため、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
加熱能力を増加させて乾燥時間を短縮するためには冷媒循環量を増加させ、冷媒循環量に応じて循環風量を大としてヒートポンプ装置1を運転する必要がある。このような運転では、圧縮機2を駆動する消費電力が増加することにより、冷凍サイクルへの入熱量と、冷凍サイクルの構成要素からの放熱量の差分が冷凍サイクルに蓄熱されるため、冷凍サイクルの圧力が上昇していくことになる。この時、冷凍サイクルの運転点を保持するための方法の一つとして、循環空気を循環風路17外へ排気することが考えられるが、上述のような構成とすることで、蒸発器4での吸熱量を減じることなく乾燥運転を行うことが可能となるため、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
また、洗濯乾燥機20の機外の空気の絶対湿度が循環空気の絶対湿度よりも高い場合、連通風路10を蒸発器4の上流側に設けて循環空気の吸排気を行う構成(図示せず)とすれば、洗濯乾燥機20外から循環風路17に導入した空気から、蒸発器4が吸熱した状態で乾燥運転を行うことが可能となるため、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
本実施例の洗濯乾燥機20は、制御装置13を備えている。制御装置13は、少なくとも洗濯運転、乾燥運転、あるいは洗濯乾燥運転の開始時に回転ドラム103内に投入された衣類200の容量のセンシングを行い、判定値に基づいて、投入する洗剤量、運転時間を決定し、表示部に表示するが、運転途中においても、再度容量のセンシングを行うことで、運転時間の見直しを行い、衣類200の容量に応じた最適な運転時間と運転工程を選択し、乾燥消費電力量の増大を抑制することが可能となる。
さらに、ヒートポンプ装置1は、熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)を流れる冷媒温度を検出するセンサを備えている。図4には冷媒配管6に冷媒温度センサT1、T2、T3を設置した一例を示している。通常、冷凍サイクルにおいては運転状態を把握するために、冷媒配管6や熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)に圧力センサや温度センサを設置している。一例として、冷媒温度センサは圧縮機2の吸込側、吐出側、熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)の出入口、膨張弁(減圧装置5)前などに設置され、検出量により冷凍サイクルの状態を表すモリエル線図を推定し、冷凍サイクルの制御が行われている。本実施例の冷媒回路16では冷媒温度センサT1、T2、T3で冷凍サイクルの性能を推定しているが、圧力センサを取り付けた構成としてもよい。温度データ及び圧力データを制御装置13で利用することが出来れば、冷凍サイクルのサイクル条件を時短乾燥運転に適した状態に制御可能となる。また、時短乾燥運転時の冷凍サイクル内への蓄熱量が適正値となるように、圧縮機2及び送風ファン8の回転数を制御し、減圧装置5(膨張弁)の開度を調整する。
また、乾燥工程が省エネルギー運転に設定されている場合は、制御装置13は冷凍サイクルの成績係数(COP)が最適となるように制御を行い、乾燥運転時の消費電力量を低減することが可能となる。
また、乾燥運転時の循環空気は、回転ドラム103から排出され、リントフィルタを90通過後、ヒートポンプ装置1により、除湿・加熱されて送風ファン8により再び回転ドラム103内に吹きこまれる。本実施例の洗濯乾燥機20は、上記の循環空気や周囲空気の状態をモニターするために、温度湿度センサTH1、TH2、TH3を備えている。乾燥運転時に回転ドラム103への吹出口14、回転ドラム103からの排出口15での温度及び湿度データを把握することにより、衣類200からの水分の概略の蒸発量を推定し、衣類200の乾燥状態を推測することで、乾燥運転時間を最適に設定し、乾燥時短運転を可能とする。また、省エネルギー乾燥運転時は、乾燥運転時間を最適に設定することが可能となるため、消費電力量を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
循環空気の温度データ及び湿度データからは、循環空気の露点温度を算出することができる。ヒートポンプ装置1の冷凍サイクルの運転条件として、循環空気のヒートポンプ装置1の入口での露点温度を把握して、蒸発器4を流れる冷媒温度が循環空気の露点温度以下となるように制御することで、除湿性能を向上させることが出来る。乾燥時短運転時は、凝縮器3の冷媒温度を高くして、空気を加熱する必要があるため、蒸発器4の温度を適正に保つことで凝縮器3での循環空気の加熱を効率よく行うことができる。
また、制御装置13は、衣類200の容量に基づいて決定された運転工程により、ヒートポンプ装置1の膨張弁等の減圧装置5の開度、圧縮機2の回転速度、送風ファン8の回転速度を制御する。乾燥運転時に衣類200から蒸発させるべき水分量は、衣類200の種類及びその重量と、脱水後の衣類200の重量から推定される。制御装置13は、推定された水分を衣類200から蒸発させるために、ヒートポンプ装置1の凝縮温度、及び蒸発温度及び冷媒の循環量を最適に制御する。このような制御を行うことで、乾燥時短運転においては、乾燥運転時間を短縮することができ、省エネルギー運転時には、乾燥時の消費電力量の増大を抑えた運転を行って、省エネルギー化を図る効果を得る。
さらに、図1および図2に示しているように、送風ファン8から回転ドラム103への吹出口14への風路の長さを短くすると、吹出口14から、高速、高風量の空気を衣類200に吹き付けることが可能となり、乾燥運転時に高い仕上がり性を得る効果がある。加えて、送風ファン8により昇圧された速い流速の空気が流れる風路を構成する吹出しダクト74から吹出口14までを短い風路にでき、圧力損失の増加を抑制可能である。このため、送風ファンモータ81の消費電力を低くできるので、乾燥運転時の消費電量を抑えた運転ができる。
ここで、吹出口14の位置は必ずしも前面側の上部でなくても良い。例えば、吹出口14を回転ドラム103の背面側に設けた場合には、吐出口14の面積を大きくし易いので、大風量での乾燥運転により乾燥性能を高めることが可能となる。また、回転ドラム103を斜めに配置する洗濯乾燥機の場合、衣類200は回転ドラム103の後方に集まり易いので、吐出口14を回転ドラム103の背面側にすることにより、衣類200の撹拌(入れ替わり)を促進する効果も得られる。ただし、吹出口14を背面側に設けた場合、スリット状やメッシュ状のカバー等を設置する必要があるため、吐出空気の抵抗になって衣類200に直接当たり難くなる。従って、衣類200に直接高速の風を吹き付けることを重視する場合は、吐出口14を回転ドラム103の前面側に設ける構成の方が望ましい。
また、循環空気の吹出口14を外槽前面カバー102に設け、循環空気の排出口15を、外槽101の背面部のいずれも回転ドラム103の回転軸よりも上方に設け、さらに排出口15の位置を、吹出口14の位置に対して回転ドラム103の回転中心軸に近い位置とする構成とする。
このような構成とすれば、吹出口14から回転ドラム103内へ流れる空気流は、洗濯乾燥機20の前面から見て左斜め下方に向かって吹出される。循環空気の排出口15をその対角となる背面側に設けることで、吹き込まれた空気が排出口15へショートカットして流れることは抑制される。上記の構成により、回転ドラム103内の衣類200に高速高圧空気を吹き付けることにより、乾燥時にしわの少ない、高い乾燥仕上り性を実現することが可能となる。また、衣類200と乾燥空気が直接当たりやすくなると、衣類200からの水分の蒸発が促進される。排出口15からは衣類200から蒸発した水分を含んだ空気をヒートポンプ装置1に導入しやすくなるため、乾燥効率を向上させた運転が可能となる。したがって、乾燥運転時の消費電力量を抑えて省エネルギー化を図ることができる。
なお、上記の各実施例では、ヒートポンプ装置1を洗濯乾燥機筺体100の下部に設置した例を用いて説明しているが、この構成に限定されるものではない。別の例として、洗濯乾燥機筺体100の上部に配置してもよい。また、ヒートポンプ装置1を構成する、蒸発器4、凝縮器3、減圧機構5を循環風路17内に配置して洗濯乾燥機筺体の上部に配置し、圧縮機2を冷媒配管で別置きとした構成であってもよい。
また、上記各実施例においては、適用装置として、ドラム式洗濯乾燥機を例として説明したが、乾燥方式にヒートポンプ装置1を用いた縦型の洗濯乾燥機についても適用可能である。