JP6683393B2 - 車両の衝撃緩和機構 - Google Patents
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Description
また、乗員室には、乗員が着座するシートとともに、シートベルト、エアバッグなどの乗員保護装置が用いられる(特許文献3)。衝突時にシートベルトはロックされ、エアバッグは展開され、これにより乗員が大きく前へ移動したり、乗員の上体が大きく前へ倒れたりすることを抑制できる。
これらの機構により、衝突時の乗員の安全性を高めている。
たとえば高い速度で車両が追突する場合、シートベルトなどが適切に作動したとしても、乗員には、上体を大きく前へ倒す力が作用する。前へ倒れる上体には、シートベルトが強く押し付けられることになる。
前記車体に設けられ、傾いた前記骨格部材と接触して前記骨格部材の傾斜を規制する規制部材と、を有し、
前記傾斜機構は、前記骨格部材の先端および前記接触部材についての前記骨格部材との接触面が、衝突の際に互いに圧接されることにより前記骨格部材の先端を相対的に上方に移動させて前記骨格部材を傾斜させ、前記骨格部材の衝撃入力側を反対側より上げるように傾ける。
特に、本発明では、シートのたとえば背もたれといった一部を倒すのではなく、車両全体を倒している。その結果、シート全体を傾けてシート上の着座状態が衝突前の状態から変化しないようにできる。また、シートに着座した乗員とシートベルトまたはエアバッグとの相対位置も変化しないので、これらの装置による保護性能を損なうこともない。その結果、車両を傾けなかった場合と同等の性能を得ることができる。
自動車1は、車両の一例である。
モノコック構造の車体2では、前室3において、乗員室4の前壁であるトーボード11から前へ向かって、一対のフロントサイドフレーム12が略水平に伸在する。前後方向に延在するフロントサイドフレーム12の前側の先端には、クラッシュボックス13が連結される。一対のクラッシュボックス13の前側の先端には、フロントバンパービーム14が取り付けられる。フロントバンパービーム14の前側には、車体2の前壁を構成するフロントバンパーフェイス15が配置される。フロントバンパーフェイス15は、フロントバンパービーム14に対して取り付けられても、フロントバンパービーム14と一体化して形成されてもよい。
また、後室5において、乗員室4の後壁から後へ向かって一対のリアサイドフレームが略水平に伸在する。リアサイドフレームの後端の先端には、リアクラッシュボックスが連結される。一対のリアクラッシュボックスの後側の先端には、リアバンパービームが取り付けられる。リアバンパービームの後側には、車体2の後壁を構成するリアバンパーフェイスが配置される。リアバンパーフェイスは、リアバンパービームに対して取り付けられても、リアバンパービームと一体化して形成されてもよい。
このような骨格構造を有する車体2では、たとえば車体2が他の車体100に追突する場合、フロントバンパーフェイス15が他の車体100と接触する。そして、追突の衝撃荷重の入力の程度に応じて、フロントバンパービーム14、一対のクラッシュボックス13、一対のフロントサイドフレーム12が、その順番で圧縮変形する。このように車体2の骨格部材が先端からの衝突荷重の入力により軸方向に沿って圧縮変形することにより、衝撃を吸収する。その結果、乗員室4に変形が及び難くなる。
これらの仕組みにより、車両は、乗員を保護する。
しかしながら、衝突時の乗員保護機能は、これで十分ということにはならない。
たとえば高い速度で車両が追突する場合、シートベルト22などが適切に作動したとしても、乗員には、上体を大きく前へ倒す力が作用する。前へ倒れる上体には、シートベルト22が強く押し付けられることになる。
このように自動車1といった車両では、衝突の際に乗員に作用する力を弱めて、乗員の保護レベルを更に改善することが求められている。
図2には、フロントサイドフレーム12、クラッシュボックス13、フロントバンパービーム14、フロントバンパーフェイス15、が図示されている。
フロントサイドフレーム12の前側の先端には、クラッシュボックス13が連結される。フロントサイドフレーム12とクラッシュボックス13とは、たとえばねじ止めにより連結されてよい。
クラッシュボックス13は、たとえば金属材料または樹脂材料からなる。クラッシュボックス13は、フロントサイドフレーム12より圧縮され易く形成されてよい。本実施形態のクラッシュボックス13は、フロントサイドフレーム12より上下に長くなるように、縦長の略立方体形状を有する。
クラッシュボックス13の先端には、フロントバンパービーム14が連結される。クラッシュボックス13とフロントバンパービーム14とは、たとえばねじ止めにより連結されてよい。
フロントバンパービーム14は、たとえば樹脂材料からなる。フロントバンパービーム14は、一対のクラッシュボックス13と連結される一対の取付部36と、車幅方向に延在して一対の取付部36が両端近傍に設けられるビーム本体37と、を有する。本実施形態において、取付部36は、クラッシュボックス13と同じ高さの略立方体形状を有する。
フロントバンパービーム14の前側には、フロントバンパーフェイス15が位置する。フロントバンパーフェイス15は、車体2の前壁を構成する板状の樹脂部品である。
具体的には、フロントサイドフレーム12の軸方向に沿って一直線状に配列されるフロントサイドフレーム12の先端およびクラッシュボックス13についての後側の接触面41が、共に前上がりに傾斜して形成される。フロントサイドフレーム12およびクラッシュボックス13の軸方向に対して垂直な方向ではなく、軸方向に対して90°より小さい角度を成すように傾斜して形成される。前上がりに傾斜して形成されたフロントサイドフレーム12の先端は、前上がりに傾斜して形成されたクラッシュボックス13の後側の接触面41と向かい合わせに配置され、接触面41と全体的に接触している。
また、クラッシュボックス13と連結されるフロントサイドフレーム12は、クラッシュボックス13の下部に連結される。これにより、クラッシュボックス13の接触面41は、フロントサイドフレーム12の上に突出する。
図3および図4は、図2の車体2が他の車体100または構造体に追突する際の、車体変形の一例を示す説明図である。
この際、フロントサイドフレーム12の先端、およびクラッシュボックス13についての後側の接触面41は、共に前上がりに傾斜して形成されているので、フロントサイドフレーム12は、前へ移動しようとする力が作用することにより、クラッシュボックス13の傾斜面に沿って斜め上方向へずれようとする。このずれによるせん断力により、フロントサイドフレーム12とクラッシュボックス13とを連結していたネジが破断する。また、ネジが破断し始めると、フロントサイドフレーム12は、その先端の傾斜とクラッシュボックス13の後側の傾斜面の傾斜にしたがって、クラッシュボックス13の傾斜面に沿って斜め上方向へ移動し始める。
その後、図4(A)に示すように、上側へ移動したフロントサイドフレーム12は、クラッシュボックス13の傾斜面の上縁から後へ突出している規制部材51に当たり、上への移動が抑制される。フロントサイドフレーム12の先端は、規制部材51に当接した傾斜状態で、クラッシュボックス13に対して上下左右にずれ難い仮固定状態(仮に一体化した状態)になる。フロントサイドフレーム12は、前上がりに傾斜した状態で、クラッシュボックス13に対してずれないように規制される。
次に、図4(B)に示すように、追突した車体2が更に前へ移動すると、傾斜したフロントサイドフレーム12が軸方向に沿って圧縮変形し始める。
図5(A)は、衝突前の車体2がほぼ水平である通常状態である。
図5(B)は、衝突直後の車体2がほぼ水平である通常状態である。
図5(C)は、フロントサイドフレーム12が変形し始めた後の車体2が前上がりに傾いた傾斜状態である。
その結果、追突中に、車体2に対して固定されているシート21、およびシート21に着座している乗員も前上がりに傾く。このように追突中に乗員室4およびシート21の全体が前上がりに傾くことにより、シート21に着座している乗員の上体には後へ倒れようとする力が作用する。また、実際に乗員の上体には後へ倒れる。それゆえ、本実施形態では、衝突中に、シート21に着座した乗員に対して、衝突入力側の反対側へ若干倒す力を作用させることができる。そして、衝突の際にシート21に着座した乗員が衝突入力側の反対側へ若干倒れることにより、乗員を衝突入力側へ倒そうとする力の一部を相殺できる。たとえば高い速度で車両が追突して乗員の上体に対して大きく前へ倒す力が作用したとしても、その一部を相殺して、前へ倒れる上体がシートベルト22に対して強く押し付けられ難くなる。その結果、乗員の保護レベルを高めることができる。
特に、本実施形態では、シート21のたとえば背もたれといった一部を倒すのではなく、車両全体を倒している。その結果、シート21全体を傾けてシート21上の着座状態が衝突前の状態から変化しないようにできる。また、シート21に着座した乗員とシートベルト22またはエアバッグ35との相対位置も変化しないので、これらの装置による保護性能を損なうこともない。その結果、車両を傾けなかった場合と同等の性能を得ることができる。
この他にもたとえば、傾斜面等は、たとえばクラッシュボックス13とフロントバンパービーム14との接触部分に設けても、フロントバンパービーム14とフロントバンパーフェイス15との接触部分に設けてもよい。
図6において、クラッシュボックス13とフロントバンパービーム14との接触面41は、軸方向に対して前上がりに傾斜している。
また、車両の他の骨格部材の連結部分、たとえばリアサイドフレームの後側の先端とリアクラッシュボックスの接触面とに設けてもよい。この場合、衝突の際にリアサイドフレームが後上がりに傾斜し、乗員の上体を後へ倒す力の一部を相殺することができる。
2…車体
11…トーボード
12…フロントサイドフレーム(骨格部材)
13…クラッシュボックス(接触部材)
14…フロントバンパービーム
15…フロントバンパーフェイス
21…シート
22…シートベルト
35…エアバッグ
41…接触面(傾斜機構)
51…規制部材
100…他の車体
Claims (2)
- 乗員が着座するシートが設けられる車体と、
前記車体に設けられ、先端からの衝突入力により軸方向に沿って圧縮変形される前記車体の骨格部材と、
衝突の際に衝撃入力側が反対側より上がるように前記車体の前記骨格部材を傾ける傾斜機構と、
前記骨格部材の先端と隣接するように前記車体に設けられ、衝突の際に前記車体の衝突面と一体化した状態で前記骨格部材の先端と接触する接触部材と、
前記車体に設けられ、傾いた前記骨格部材と接触して前記骨格部材の傾斜を規制する規制部材と、
を有し、
前記傾斜機構は、
前記骨格部材の先端および前記接触部材についての前記骨格部材との接触面が、衝突の際に互いに圧接されることにより前記骨格部材の先端を相対的に上方に移動させて前記骨格部材を傾斜させ、前記骨格部材の衝撃入力側を反対側より上げるように傾ける、
車両の衝撃緩和機構。 - 前記規制部材は、前記接触部材の前記接触面の上側に、前記接触部材と一体的に設けられる、
請求項1記載の車両の衝撃緩和機構。
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