JP6683274B2 - 固形薬剤の製造方法、インクジェット用インクセット - Google Patents

固形薬剤の製造方法、インクジェット用インクセット Download PDF

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Description

本発明は、表面に着色部を有する固形薬剤の製造方法、当該着色部形成用のインクジェット用インク組成物、インクジェットインクセット、及び、表面に着色部を有する固形薬剤に関するものである。
固形薬剤の多くは、有効成分の吸収や安定性などを考慮して設計されており、その形状は類似している。そのため、包装容器から取り出した固形薬剤は、その種類を判別することが困難となる場合があった。従来、固形薬剤の名称や略号等を刻印する手法が用いられていたが、刻印部分も元の固形薬剤と同一の色味であるため、識別力が不十分な場合があった。また、固形薬剤の名称の他に、製造日やロット番号など多くの情報を記載したいとの要請から、固形薬剤の表面にインクを用いて印刷することが検討されている。
特許文献1には、特定の錠剤の表面に、識別性を高めるための情報が印刷されたインクの乾燥被膜を有する錠剤として、特定の錠剤の表面に、乾燥時のインクの乾燥被膜の硬度が、鉛筆硬度で2B〜4Hであるインクで印刷してなる錠剤が開示されている。
特許文献2には、口腔内崩壊性錠剤に印刷しても、印刷した部分の色移りが生じず、口腔内崩壊性が損なわれず、また、印刷した口腔内崩壊性錠剤を高湿保存しても、印刷した部分がにじまず、耐候性に優れた、可食性インクジェット用インク組成物として、合成色素のアルミニウムレーキである食用色素と、特定の食品結着剤と、水溶性溶剤と、水からなる口腔内崩壊性錠剤用インクジェット用インク組成物が開示されている。
国際公開第2014/014010号パンフレット 特開2012−111824号公報
固形薬剤上にインクジェットインク方式でインク組成物を付着させた場合、当該インク組成物は固形薬剤表面上で流動し、或いは、拡散して、滲みやすいという問題があった。一方、滲みを防止する観点から、インクの粘度を高くした場合には、インクジェットノズルが詰まり易いという問題があった。例えば特許文献1では、比較的ノズル径の大きな40μmのインクジェットノズルを有するインクジェットプリンタが用いられている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、固形薬剤表面における滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤の製造方法、固形薬剤の表面における滲みが抑制されるインクジェット用インク組成物、並びに、インクジェットインクセット、及び、滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法は、
表面の少なくとも一部に着色部を有する固形薬剤の製造方法であって、
可食性色材と、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有するインクジェット用インク組成物を、インクジェット法により固形薬剤表面に付着する工程を有することを特徴とする。
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法においては、前記インクジェット用インク組成物の粘度が20cP以下であることが、インクジェットノズルの詰まりを抑制し、また、高精細な着色部が得られる点から好ましい。
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法においては、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質、及び、前記可食性物質のうち、一方がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であり、他方が酸性基を有する多糖類であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
また、本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法においては、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質、及び、前記可食性物質のうち、一方がアルギン酸ナトリウムであり、他方がカルシウム塩であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法は、
表面の少なくとも一部に着色部を有する固形薬剤の製造方法であって、
第1の可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第1のインク組成物を、固形薬剤表面にインクジェット法により付着する工程と、
第2の可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第2のインク組成物を、前記第1のインク組成物が付着した前記固形薬剤表面に、インクジェット法により付着する工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法においては、前記第1のインク組成物の粘度、及び、前記第2のインク組成物の粘度が、それぞれ20cP以下であることが、インクジェットノズルの詰まりを抑制し、また、高精細な着色部が得られる点から好ましい。
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法においては、前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であり、他方が酸性基を有する多糖類であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法においては、前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がアルギン酸ナトリウムであり、他方がカルシウム塩であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
本発明に係るインクジェット用インク組成物は、
固形薬剤表面印刷用のインク組成物であって、
可食性色材と、ゼラチン、たんぱく質分解物、酸性基を有する多糖類、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウム塩から選択される1種以上を含む可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有することを特徴とする。
本発明に係るインクジェット用インク組成物は、粘度が20cP以下であることが、インクジェットノズルの詰まりを抑制し、また、高精細な着色部が得られる点から好ましい。
本発明に係るインクジェット用インクセットは、
固形薬剤表面印刷用のインクセットであって、
第1の可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第1のインク組成物と、
第2の可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第2のインク組成物とを備える、インクジェット用インクセット。
本発明に係るインクジェット用インクセットにおいては、前記第1のインク組成物の粘度、及び、前記第2のインク組成物の粘度が、それぞれ20cP以下であることが、インクジェットノズルの詰まりを抑制し、また、高精細な着色部が得られる点から好ましい。
本発明に係るインクジェット用インクセットにおいては、前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であり、他方が酸性基を有する多糖類であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
また、本発明に係るインクジェット用インクセットにおいては、前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がアルギン酸ナトリウムであり、他方がカルシウム塩であることが、固形薬剤の表面における滲みを抑制する点から好ましい。
本発明に係る固形薬剤は、表面の少なくとも一部に、
アルギン酸ナトリウムのゲル化物、又は、ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物と酸性基を有する多糖類との会合体と、
可食性色材とを含有する着色部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、固形薬剤表面における滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤の製造方法、固形薬剤の表面における滲みが抑制されるインクジェット用インク組成物、並びに、インクジェットインクセット、及び、滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤を提供することができる。
以下、本発明に係る固形薬剤の製造方法、インクジェット用インク組成物、インクジェットインクセット、及び、固形薬剤について、上記第1の固形薬剤の製造方法及びインクジェット用インク組成物、上記第2の固形薬剤の製造方法及びインクジェットインクセット、固形薬剤、の順に説明する。
A.第1の固形薬剤の製造方法
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法は、
表面の少なくとも一部に着色部を有する固形薬剤の製造方法であって、
可食性色材と、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有するインクジェット用インク組成物を、インクジェット法により固形薬剤表面に付着する工程を有することを特徴とする。
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法によれば、固形薬剤表面における滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤を得ることができる。
本発明の第1の固形薬剤の製造方法に用いられるインクジェット用インク組成物は、固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質(以下、「特定の可食性物質」ということがある。)を含有する。このようなインクジェット用インク組成物が固形薬剤表面に付着すると、当該固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用により、前記特定の可食性物質がゲル化又はイオン会合化し、当該可食性物質の流動性が低下する。当該可食性物質の流動性低下に伴い、インク組成物中の可食性色材も固形薬剤表面に定着するものと推定される。また、本発明において上記の相互作用は、インク組成物中の溶媒が蒸発する前に、短時間で生じるものと推定される。そのため、本発明の製造方法によれば、比較的流動性が高く、乾燥時間がかかる水などを溶媒として含んでいた場合であって、当該溶媒が固形薬剤表面で拡散した場合であっても、溶媒のみが拡散して、可食性色材は拡散しにくいため、着色部の滲みが生じ難いものと推定される。
以上のことから、本発明の第1の固形薬剤の製造方法によれば、固形薬剤表面における滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤を得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、可食性色材の固形薬剤内部への浸透も抑制されるため、着色部における色濃度を高め、視認性に優れた着色部を得ることができる。
更に、本発明の製造方法によれば、粘度の低いインク組成物を用いることが可能となるため、例えば300dpi以上、更には600dpi以上の高精細な印刷が可能となり、インクジェットノズルの詰まりも抑制される。
[固形薬剤]
本発明において「固形薬剤」とは、印字可能な面を有する固形の薬剤のことをいう。印字可能な面を有する固形の薬剤とは、特に限定されるものではないが、例えば、10mm以上の表面積を有する固形の薬剤とすることができる。また、固形薬剤の表面は、平面であっても曲面を有していてもよく、更に、平坦面に限られず、凹凸を有していてもよく、表面近傍が空隙を有するものであってもよい。
また、本発明において「固形薬剤表面又はその近傍」とは、固形薬剤の最表面のみならず、可食性色材が定着したときに視認可能な深さまでを含むものである。視認可能な深さとは、特に限定されるものではないが、例えば、固形薬剤の表面から100nmの深さまでの範囲とすることができる。
本発明に係る第1の固形薬剤の製造方法における固形薬剤の形状は、印字可能な表面を有していればよく、経口摂取される固形薬剤は、薬剤中の有効成分の吸収や品質の安定性などを考慮して設計されるものであり、本発明との関係で特に限定されるものではなく、従来公知の形状とすることができる。固形薬剤の形状は、具体的には、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、トローチ剤等が挙げられ、錠剤、丸剤、トローチ剤等は、更にコーティング層を有するコーティング剤であってもよく、コーティング層を有しない素錠であってもよい。
本発明の製造方法によれば、後述するインクジェット用インク組成物中の特定の可食性物質が固形薬剤表面においてゲル化又はイオン会合化するため、可食性色材が薬剤表面に定着して着色部のにじみが抑制される。特に本発明の製造方法は、固形薬剤として空隙を有する素錠等を用いた場合であっても着色部のにじみが生じ難い。可食性物質のゲル化物又はイオン会合体が空隙を塞ぐことにより可食性色材のにじみが抑制されるものと推定される。なお、固形薬剤が空隙を有する場合、滲みの抑制の点から、下記式(1)で表される空隙率が、30%以下であることが好ましく、1〜25%であることがより好ましく、5〜20%であることが更により好ましい。
式(1):空隙率 = {V−(W/ρ)}/V ×100(%)
(式(1)中、Vは固形薬剤の体積、Wは固形薬剤の質量、ρは固形薬剤を構成する粉体の比重を表す。)
固形薬剤は、通常、少なくとも薬理活性物質(有効成分)を含有し、必要に応じて、更に、医薬品に使用が認められている種々の可食性の添加剤を含有するものである。理活性成分は、特に限定されるものではなく、固形薬剤の用途に応じて適宜選択されるものである。また必要に応じて用いられる添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、緩衝剤(pH調整剤)、矯味剤、着香剤、着色剤等が挙げられる。また、本発明において固形薬剤は、コーティング層を有するコーティング剤であってもよく、カプセル剤であってもよい。
本発明において固形薬剤が上記素剤である場合、固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質は、薬理活性成分及び必要に応じて用いられる添加剤である。
また、本発明において固形薬剤が前記コーティング剤である場合、固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質は、コーティング層を構成する物質である。また、本発明において固形薬剤が前記カプセル剤である場合、固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質はカプセルを構成する物質である。
固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質は、後述するインクジェット用インク組成物中の特定の可食性物質と相互作用して、当該特定の可食性物質をゲル化又はイオン会合化させ得る物質を含んでいればよく、当該可食性物質と相互作用し得る物質は、後述するインクジェット用インク組成物中の特定の可食性物質との関係で適宜選択すればよいものである。通常は、薬剤中の有効成分の吸収や品質の安定性などを考慮して固形薬剤表面の物質が予め選択されており、これに応じて後述するインクジェット用インク組成物中の特定の可食性物質を選択するのが好ましい。
固形薬剤の賦形剤は、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、シュクロース、タクチトール、トレハロース、マルトース、サッカロース、ブドウ糖、パラチニット、パラチノース、イソマルトオリゴ糖、果糖、麦芽糖、白糖、乳糖等の糖類;ソルビートル、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール類;コーンスターチ等のデンプン類などの多糖類や、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機酸化合物、ポリビニルアルコール類等が挙げられ、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、後述するインクジェット用インク組成物中の可食性物質とゲル化又はイオン会合化する点から、酸性基を有する多糖類、又は、カルシウムを含有する無機酸化合物を含有することが好ましい。
固形薬剤中の賦形剤は、薬剤の目的に応じて、適宜調製するものであるが、固形薬剤中、通常、0.1〜70質量%であり、1〜60質量%含有することが好ましく、5〜50質量%含有することがより好ましい。
固形薬剤の結合剤は、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、アガロース、アラビアゴム等の多糖類や、ゼラチン等を含むものが挙げられる。
固形薬剤中の結合剤の含有割合は、薬剤の目的に応じて、適宜調製するものであるが、固形薬剤中、通常、0.1〜50質量%であり、1〜40質量%含有することが好ましく、5〜30質量%含有することがより好ましい。
固形薬剤がコーティングされている場合、当該コーティングとして、白糖、セルロース、デンプン等の多糖類が挙げられる。
また、固形薬剤がカプセル剤の場合、薬理活性成分を含む組成物を液状、懸濁状、半固形状、粉末状、顆粒状などの形でカプセルに充填するか、又は、カプセル基材で被包成型して製造されたものであって、当該カプセルは、一般にゼラチンを含有するものである。
本発明において固形薬剤は、当該固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質として、ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物、酸性基を有する多糖類、アルギン酸ナトリウム、又は、カルシウム塩を有することが好ましい。
なお、カルシウム塩は、上記賦型剤成分として含有する物の他、カルシウム製剤のように、これ自体が有効成分であるものであってもよい。
固形薬剤中のゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物、酸性基を有する多糖類、アルギン酸ナトリウム、又は、カルシウム塩の含有割合は、滲みを抑制する点から、固形薬剤全量100質量部に対して1〜80質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
[インクジェット用インク組成物]
本発明の第1の固形薬剤の製造方法において、インクジェット用インク組成物は、可食性色材と、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する。当該インクジェット用インク組成物は、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質を含有するため、当該可食性物質が前記固形薬剤表面においてゲル化し、又はイオン会合化することにより流動性が低下して、滲みの抑制された着色部を得ることができる。
本発明のインクジェット用インク組成物は、少なくとも可食性色材と、可食性物質と、溶媒とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよい。以下、このようなインクジェット用インク組成物の各成分について順に説明する。
(可食性色材)
本発明において可食性色材は、経口摂取が可能な従来公知の色材の中から、所望の色味に応じて、適宜選択して用いることができる。可食性色材としては、食品又は食品添加物として用いられる物質であることが好ましい。具体例としては、ベニコウジ色素、クチナシ色素、コチニール色素、ラック色素、ビートレッド、アントシアニン色素、ベニバナ色素、トウガラシ色素、アナトー色素、マリーゴールド色素、カロテン色素、ウコン色素、カラメル色素等の天然色素や、食用赤色2号3号、40号、102号、106号;食用青色1号、2号;食用黄色4号、5号;食用緑色3号等の合成着色料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。可食性色材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
インクジェット用インク組成物中の可食性色材の含有割合は、所望の発色が可能となるように適宜調整すればよく、特に限定されないが、発色性の点から、インク組成物中の溶媒を含む全量100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
(可食性物質)
本発明において用いられるインクジェット用インク組成物は、前記固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る可食性物質を含有する。当該可食性物質は、前記固形薬剤の表面又はその近傍に含まれる物質に応じて適宜選択して用いられる。以下、固形薬剤表面又はその近傍に含まれる物質と当該可食性物質との好ましい組合せについて説明する。
(1)固形薬剤表面又はその近傍がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む場合は、前記可食性物質として、酸性基を有する多糖類を用いること好ましい。ゼラチン又はたんぱく質分解物が有するアミノ基と、当該多糖類が有する酸性基とがイオン会合することにより流動性が低下するからである。
本発明において多糖類とは、少なくとも2個以上の単糖がグリコシド結合により糖鎖を形成した化合物をいう。また、本発明において酸性基を有する多糖類とは、前記糖鎖中に1個以上酸性基を有する多糖類をいう。当該酸性基の具体例としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びこれらの塩が挙げられる。
本発明において酸性基を有する多糖類は、多糖類の糖鎖中に酸性基を有する単糖(糖酸)を含むものであってもよく、多糖類中の水酸基、アルデヒド基、又はケトン基が酸性基に置換された多糖類誘導体であってもよい。
酸性基を有する多糖類の具体例としては、リボン酸、アラビノン酸、キシロン酸、リキソン酸、アロン酸、アルトロン酸、グルコン酸、マンノン酸、グロン酸、イドン酸、ガラクトン酸、タロン酸等のアルドン酸類;グルクロン酸、イズロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等のウロン酸類;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において用いられる酸性基を有する多糖類は、2%水溶液としたときのpHが6以下であることが好ましい。当該pHが6以下であることにより、ゼラチン等が有するアミノ基とのイオン会合が進みやすく、滲みがより抑制されるからである。
また、本発明において用いられる酸性基を有する多糖類の分子量は特に限定されないが、数平均分子量が10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上500,000以下であることが好ましい。数平均分子量が10,000以上であることにより、イオン会合後の流動性がより低下しやすく、滲みがより抑制されやすい。一方、数平均分子量が500,000以下であることにより、インクジェットノズルの詰まりが抑制されてより高精細な着色部を形成することができる。
本発明において用いられる酸性基を有する多糖類は、中でも、食品中に増粘安定剤として使用される増粘多糖類の中から、酸性基を有する増粘多糖類を選択して用いることが好ましい。
酸性基を有する増粘多糖類の具体例としては、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアゴム、アルギン酸、ヘミセルロース等が挙げられる。着色部のにじみを抑制する点から特にアラビアゴムを含むことが好ましい。酸性基を有する多糖類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
インクジェット用インク組成物中の酸性基を有する多糖類の含有割合は、インク組成物中の溶媒を含む全量100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましい。酸性基を有する多糖類の含有割合が上記下限値以上であれば、着色部のにじみがより抑制される。また、酸性基を有する多糖類の含有割合を上記上限値以下とすることにより、インクの粘度を低下することができ、インクジェットノズルにおける目詰まりを抑制し、より高精細な印刷をすることができる。
(2)固形薬剤表面又はその近傍が酸性基を有する多糖類を含む場合は、前記可食性物質が、ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。ゼラチン又はたんぱく質分解物と、酸性基を有する多糖類とがイオン会合することにより流動性が低下するからである。
本発明においてゼラチンとは、コラーゲンを水と煮沸して水溶性とした蛋白質変性物をいう。本発明においてゼラチンの平均分子量は特に限定されないが、通常100,000以上である。ゼラチンとしては、好ましくは天然由来のゼラチンが用いられる。天然由来のゼラチンは、牛、豚、魚類などを始めとする各種の動物種の皮膚、骨、腱などの身体のあらゆる部位から採取できるコラーゲン、あるいはコラーゲンとして用いられている物質から、アルカリ加水分解、酸加水分解、および酵素分解等の種々の処理によって変性させて得ることができる。
また、本発明においてたんぱく質分解物とは、たんぱく質を分解して得られた、アミノ酸とたんぱく質との混合物をいう。たんぱく質の分解方法は特に限定されず、塩酸分解法、酵素分解法、熱水抽出法のいずれであってもよいが、クロロプロパノール類の発生を抑制する点から、酵素分解法又は熱水抽出法により得られたたんぱく質分解物であることが好ましい。
インクジェット用インク組成物中のゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物の合計の含有割合は、インク組成物中の溶媒を含む全量100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましい。ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物の合計の含有割合が上記下限値以上であれば、着色部のにじみがより抑制される。また、ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物の合計の含有割合を上記上限値以下とすることにより、インクの粘度を低下することができ、インクジェットノズルにおける目詰まりを抑制し、より高精細な印刷をすることができる。
(3)固形薬剤表面又はその近傍がアルギン酸ナトリウムを含む場合は、前記可食性物質が、カルシウム塩を含むことが好ましい。固形薬剤表面又はその近傍に存在するアルギン酸ナトリウムが、カルシウムイオンによってゲル化することにより、インク組成物の流動性が低下して着色部の滲みが抑制されるからである。
インクジェット用インク組成物中のカルシウム塩は、特に限定されないが、食品中、又はカルシウム製剤として用いられるカルシウム塩であることが好ましい。このようなカルシウム塩の具体例としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カルシウム塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
インクジェット用インク組成物中のカルシウム塩の含有割合は、インク組成物中の溶媒を含む全量100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましい。カルシウム塩の含有割合が上記下限値以上であれば、着色部のにじみがより抑制される。また、カルシウム塩の含有割合を上記上限値以下とすることにより、インクの粘度を低下することができ、インクジェットノズルにおける目詰まりを抑制し、より高精細な印刷をすることができる。
(4)固形薬剤表面又はその近傍がカルシウム塩を含む場合は、前記可食性物質が、アルギン酸ナトリウムを含むことが好ましい。固形薬剤表面又はその近傍に存在するアルギン酸ナトリウムが、カルシウムイオンによってゲル化することにより、インク組成物の流動性が低下して着色部の滲みが抑制されるからである。
インクジェット用インク組成物中のアルギン酸ナトリウムの含有割合は、インク組成物中の溶媒を含む全量100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましい。アルギン酸ナトリウムの含有割合が上記下限値以上であれば、着色部のにじみがより抑制される。また、アルギン酸ナトリウムの含有割合を上記上限値以下とすることにより、インクの粘度を低下することができ、インクジェットノズルにおける目詰まりを抑制し、より高精細な印刷をすることができる。
(水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒)
本発明においてインクジェット用インク組成物は、前記可食性色材、及び前記可食性物質を均一に溶解又は分散し、インクジェットインク用に適した粘度のインクとするために水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒を含有する。
本発明において溶媒は、固形薬剤の製造後においては通常残留しないものではあるが、当該固形薬剤が経口摂取される観点から、水及びエタノールから選択される1種以上であることが好ましい。
本発明において溶媒の含有割合は、固形薬剤上における滲みを抑制し、インクジェットノズルにおける目詰まりも抑制される点から、インクジェット用インク組成物全量100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。
(その他の成分)
本発明に用いられるインクジェット用インク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、その他の成分を含有してもよい。他の成分としては、食品添加物に指定されている種々の化合物が挙げられ、例えば、アスコルビン酸等の酸化防止剤、保存料、香料などが挙げられる。
本発明の第1の固形薬剤の製造方法によれば、着色部の滲みが抑制されるため、インクジェット用インク組成物の粘度を20cP(センチポイズ)以下とすることができ、1cP以上18cP以下が好ましい。粘度が20cP以下のインクジェット用インク組成物を用いることにより、例えば、600dpi以上の高精細な印刷が可能となり、固形薬剤の識別性を向上することができる。
本発明におけるインクジェット法は、従来公知の方式の中から、適宜選択して用いることができる。インクジェット法の具体例としては、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
本発明においてインクジェット法により吐出されるインクのインク滴量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。高精細な印刷物が得られる点からは、インク滴量が0.5〜30plであることが好ましく、1.0〜25plであることがより好ましい。
印刷後の着色部は、加熱乾燥してもよいが、固形薬剤の薬理活性物質の劣化を抑制する点からは、常温で乾燥することが好ましい。本発明の製造方法によれば、常温で乾燥しても、着色部のにじみが抑制された固形薬剤を得ることができる。
B.第2の固形薬剤の製造方法
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法は、
表面の少なくとも一部に着色部を有する固形薬剤の製造方法であって、
可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第1のインク組成物を、固形薬剤表面にインクジェット法により付着する工程と、
可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第2のインク組成物を、前記第1のインク組成物が付着した前記固形薬剤表面に、インクジェット法により付着する工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る第2の固形薬剤の製造方法によれば、固形薬剤に含まれる成分によらず、固形薬剤表面における滲みが抑制された着色部を有する固形薬剤を得ることができる。
本発明の第2の固形薬剤の製造方法においては、可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第1のインク組成物と、
可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第2のインク組成物とを組み合わせたインクジェットインクセットが用いられる。
上記第2の固形薬剤の製造方法においては、前記第1のインク組成物に含まれる前記第1の可食性物質と、前記第2のインク組成物に含まれる前記第2の可食性物質とが、相互作用によりゲル化又はイオン会合化するような2種類のインク組成物を組み合わせて用いる。そのため、固形薬剤に前記第1のインク組成物と、前記第2のインク組成物とを順次重ねて付着させることにより、前記第1の可食性物質と、前記第2の可食性物質の相互作用により、当該第1の可食性物質と第2の可食性物質の流動性が低下する。当該可食性物質の流動性低下に伴い、インク組成物中の可食性色材も固形薬剤表面に定着するものと推定される。また、本発明において上記の相互作用は、インク組成物中の溶媒が蒸発する前に、短時間で生じるものと推定される。そのため、本発明の製造方法によれば、比較的流動性が高く、乾燥時間がかかる水などを溶媒として含んでいた場合であって、当該溶媒が固形薬剤表面で拡散した場合であっても、溶媒のみが拡散して、可食性色材は拡散しにくいため、着色部の滲みが生じ難いものと推定される。また、当該第2の固形薬剤の製造方法は、固形薬剤の表面又はその近傍に含まれる物質との相互作用は不要なため、固形薬剤の種類によらず好適に用いることができる。
以下、第2の固形薬剤の製造方法について説明するが、固形薬剤については、第1の製造方法と同様のものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
[インクジェット用インクセット]
本発明の第2の固形薬剤においては、第1の可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第1のインク組成物と、
第2の可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第2のインク組成物とを備える、インクジェット用インクセットが用いられる。
本発明においては、第1のインク組成物に含まれる第1の可食性物質がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物である場合は、第2のインク組成物に含まれる第2の可食性物質がカルボキシル基及びカルボキシアルキル基より選択される1種以上の基を有する多糖類、又はその多糖類誘導体であることが好ましく、第1のインク組成物に含まれる第1の可食性物質がカルボキシル基及びカルボキシアルキル基より選択される1種以上の基を有する多糖類、又はその多糖類誘導体である場合は、第2のインク組成物に含まれる第2の可食性物質がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
また、第1のインク組成物に含まれる第1の可食性物質がアルギン酸ナトリウムである場合は、第2のインク組成物に含まれる第2のカルシウム塩であることが好ましく、第1のインク組成物に含まれる第1の可食性物質がカルシウム塩である場合、第2のインク組成物に含まれる第2の可食性物質がアルギン酸ナトリウムであることが好ましい。
このような前記第1のインク組成物、及び、前記第2のインク組成物中の各成分は、それぞれ、前記第1の固形薬剤の製造方法におけるインクジェットインク組成物と同様のものとすることができる。
本発明の第2の固形薬剤の製造方法によれば、着色部の滲みが抑制されるため、第1のインク組成物及び第2のインク組成物の各々の粘度を20cP以下とすることができ、好ましくは1cP以上18cP以下とすることができる。粘度が20cP以下のインクジェット用インク組成物を用いることにより、例えば、600dpi以上の高精細な印刷が可能となり、固形薬剤の識別性を向上することができる。
本発明におけるインクジェット法は、従来公知の方式の中から、適宜選択して用いることができる。インクジェット法の具体例としては、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
本発明においてインクジェット法により吐出されるインクのインク滴量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。高精細な印刷物が得られる点からは、インク滴量が0.5〜30plであることが好ましく、1.0〜25plであることがより好ましい。
本発明の第2の固形薬剤の製造方法は、第1のインク組成物を、固形薬剤表面に付着し、次いで、第2のインク組成物を、前記第1のインク組成物が付着した部分に重ねて付着するものである。
本発明においては、第1のインク組成物の付着後、当該第1のインク組成物を乾燥させる乾燥工程を有してもよく、乾燥せずに続けて第2のインク組成物を重ねて付着してもよい。また、第2のインク組成物の付着後、着色部を乾燥させる乾燥工程を有してもよい。
本発明の第1の製造方法及び第2の製造方法によれば、表面の少なくとも一部に、アルギン酸ナトリウムのゲル化物、又は、ゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物とカルボキシル基及びカルボキシアルキル基より選択される1種以上の基を有する多糖類、又はその多糖類誘導体との会合体と、可食性色材とを含有する着色部を備える固形薬剤を好適に得ることができる。当該製造方法により得られた固形薬剤は、着色部の滲みが抑制され視認性に優れた固形薬剤となる。
以下、実施例を用いてより具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に限定されるものではない。
[実施例1:着色部を有する固形薬剤の製造]
(1)インクセットの調製
昭和化学製アラビアゴム粉末の30質量%水溶液を調製し、これをクチナシ黄色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク黄に加え、アラビアゴムを2質量%含有する黄色インク組成物1(粘度:8〜9cP)を調製した。
これとは別に、ベニコウジ色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク赤に、ゼライス社製RMゼラチンを添加し、ゼラチンを2質量%含有する赤色インク組成物1(粘度:8〜9cP)を調製した。
上記黄色インク組成物1と、上記赤色インク組成物1を組合わせてインクセット1とした。
(2)着色部を有する固形薬剤の製造
ロート製薬社製鼻炎用内服口腔崩壊錠(トウモロコシデンプン、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、スクラロース等を含み、上記式(1)により得られた空隙率:23%)をバキュームステージで固定し、ベルトコンベアで搬送しながら、ニューマインド社製NE−54HPR高速インクジェットプリンターによりインクジェット印刷を行った。印刷は、600dpi相当となるように搬送速度を調製し、上記黄色インク組成物1、上記赤色インク組成物1の順に、直径0.5mmの円を重ね印刷し、着色部を有する固形薬剤1を得た。
[実施例2:着色部を有する固形薬剤の製造]
上記実施例1の(2)において、印刷順序を、赤色インク組成物1、黄色インク組成物1の順に変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、着色部を有する固形薬剤2を得た。
[実施例3:着色部を有する固形薬剤の製造]
(1)インクセットの調製
クチナシ黄色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク黄に、純性化学製低粘度アルギン酸ナトリウムを添加し、アルギン酸ナトリウムを2質量%含有する黄色インク組成物2(粘度:10〜12cP)を調製した。
これとは別に、ベニコウジ色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク赤に、純性化学製塩化カルシウムを添加し、塩化カルシウムを2質量%含有する赤色インク組成物2(粘度:6〜7cP)を調製した。
上記黄色インク組成物2と、上記赤色インク組成物2を組合わせてインクセット2とした。
(2)着色部を有する固形薬剤の製造
上記実施例1の(2)において、黄色インク組成物1、赤色インク組成物1、の代わりに、黄色インク組成物2、赤色インク組成物2にそれぞれ変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、着色部を有する固形薬剤を得た。
[比較例1]
上記実施例1の(2)において、実施例1の(1)で調製した黄色インク組成物1及び赤色インク組成物1の代わりに、それぞれアラビアゴムを含有しない黄色インク組成物と、ゼラチンを含有しない赤色インク組成物に変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、着色部を有する比較固形薬剤1を得た。
[比較例2]
(1)比較インクセットの調製
興洋化学社製セラックを水酸化ナトリウムで中和しながら溶解し、セラックの30質量%水溶液を得た。
クチナシ黄色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク黄に、及び、ベニコウジ色素を含有するニューマインド社製天然可食性インク赤に、それぞれ前記セラックの30質量%水溶液を添加し、セラックを2質量%含有する比較黄色インク組成物(粘度:25〜30cP)及び比較赤色インク組成物(粘度:25〜30cP)をそれぞれ得た。
(2)着色部を有する固形薬剤の製造
上記実施例1の(2)において、黄色インク組成物1、赤色インク組成物1の代わりに、比較黄色インク組成物、比較赤色インク組成物にそれぞれ変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、着色部を有する比較固形薬剤2を得た。
[実施例4:着色部を有する固形薬剤の製造]
上記実施例1の(2)においてロート製薬社製鼻炎用内服口腔崩壊錠の代わりに、第一三共ヘルスケア社製乗り物酔い用内服口腔崩壊錠(セルロース、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、L−フェニルアラニン化合物糖を含み、上記式(1)により得られた空隙率:8%)に変更した以外は、実施例1の(1)と同様にして、着色部を有する固形薬剤4を得た。
[実施例5:着色部を有する固形薬剤の製造]
上記実施例3の(2)においてロート製薬社製鼻炎用内服口腔崩壊錠の代わりに、第一三共ヘルスケア社製乗り物酔い用内服口腔崩壊錠に変更した以外は、実施例3の(1)と同様にして、着色部を有する固形薬剤5を得た。
[参考例6:着色部を有する固形薬剤の製造]
実施例1の(1)と同様にして、アラビアゴムを2質量%含有する黄色インク組成物1(粘度:8〜9cP)を調製した。
松屋社製食用ゼラチンカプセルをバキュームステージで固定し、ベルトコンベアで搬送しながら、ニューマインド社製NE−54HPR高速インクジェットプリンターによりインクジェット印刷を行った。印刷は、600dpi相当となるように搬送速度を調製し、上記黄色インク組成物1を、直径0.5mmの円を単色印刷し、着色部を有する固形薬剤6を得た。
<滲み評価>
上記実施例及び比較例で得られた着色部を有する固形薬剤について、それぞれ、印刷直後と、印刷後2分経過後の着色部の直径の変化を、1/10mm目盛つき15倍拡大鏡を用いて目視で観察した。
(滲み評価基準)
A:滲みが0.05mm未満であった。
B:滲みが0.05mm以上0.1mm未満であった。
C:滲みが0.1mm以上であった。
実施例1〜5、参考例6の着色部を有する固形薬剤は、いずれも滲みが0.05mm未満で、評価はAであり、滲みのない高精細な印刷が可能であることが明らかとなった。比較例1は、評価はBであり高精細な印刷をすることができなかった。また、比較例2では、安定的な吐出が得られず、部分的に大きなドットとして描画されるためインキが被着しない部分と被着して大きくにじむ部分で高解像度な描画はできず、評価はCであった。

Claims (8)

  1. 固形薬剤表面の少なくとも一部に着色部を有する固形薬剤の製造方法であって、
    第1の可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第1のインク組成物を、固形薬剤表面にインクジェット法により付着する工程と、
    第2の可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する第2のインク組成物を、前記第1のインク組成物が付着した前記固形薬剤表面に、インクジェット法により付着する工程とを有する、固形薬剤の製造方法。
  2. 前記第1のインク組成物の粘度、及び、前記第2のインク組成物の粘度が、それぞれ20cP以下である、請求項1に記載の固形薬剤の製造方法。
  3. 前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であり、他方が酸性基を有する多糖類である、請求項1又は2に記載の固形薬剤の製造方法。
  4. 前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がアルギン酸ナトリウムであり、他方がカルシウム塩である、請求項1又は2に記載の固形薬剤の製造方法。
  5. 固形薬剤表面印刷用のインクセットであって、
    第1の可食性色材と、第1の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第1のインク組成物と、
    第2の可食性色材と、前記第1の可食性物質との相互作用によりゲル化又はイオン会合化し得る第2の可食性物質と、水及び水性溶剤よりなる群から選択される1種以上を含む溶媒とを含有する、第2のインク組成物とを備える、インクジェット用インクセット。
  6. 前記第1のインク組成物の粘度、及び、前記第2のインク組成物の粘度が、それぞれ20cP以下である、請求項5に記載のインクジェット用インクセット。
  7. 前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がゼラチン及びたんぱく質分解物からなる群より選択される1種以上の化合物であり、他方が酸性基を有する多糖類である、請求項5又は6に記載のインクジェット用インクセット。
  8. 前記第1の可食性物質、及び前記第2の可食性物質のうち、一方がアルギン酸ナトリウムであり、他方がカルシウム塩である、請求項5又は6に記載のインクジェット用インクセット。
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