JP6683209B2 - ウインチドラム及びこれを備えたクレーン - Google Patents

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Description

本発明は、クレーン等に使用されるロープ巻き取り用のウインチドラムに関する。
従来、クレーン等に使用されるロープ巻き取り用のウインチドラムとしては、例えば特許文献1に開示されているウインチドラムが知られている。
特許文献1に記載のウインチドラムは、ロープが多層に巻き取られる巻胴と、この巻胴における幅方向の両端にそれぞれ設けられた一対のフランジとを備える。このウインチドラムでは、巻胴の外周面にロープ溝が設けられている。また、各フランジの内面には、ロープキックと称されるロープガイド部が内側に出っ張るように設けられている。このようなウインチドラムでは、まず、第1層のロープがロープ溝に入り込むことによって整然と巻き取られる。そして、第2層以上の上層のロープは、その下層のロープの上に順に巻き取られていく。
実開平6−23995号公報
ところで、ロープによって吊り荷を吊り上げる際には、ロープは、吊り荷を吊り上げていないときに比べて径が小さくなる。また、ロープの径は、通常の経年摩耗などによっても減少することがある。これらのようにロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなると、次のような問題が生じる。
すなわち、理想的な寸法に比べてロープの径が小さくなると、例えば第2層においては、最終列のロープとフランジの内面との間の隙間が大きくなる。このため、第3層の第1列のロープは、ロープガイド部の稜線部に対向する位置にあるときに、下層(第2層)のロープの真上に位置することができず、フランジの内面側にずれた位置に存在することになる。このように第3層の第1列のロープが、第2層の最終列のロープに対して、フランジの内面側にずれた位置にある場合には、ロープガイド部が設けられている位置において、第3層の第1列のロープは、第2層の最終列のロープを乗り越えることができない。したがって、第3層の第1列のロープは、適正な位置、すなわち第2層の最終列を乗り越えた位置に移動することができない。その結果、第3層において、第1列のロープと第2列のロープとの間に大きな隙間が形成されてしまうことがある。
このような隙間が形成された状態のままロープの巻き取りが進むと、上層のロープが上記のような隙間に落ち込んでロープが乱巻きの状態になることがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープを整然と巻き取ることができるウインチドラム及びこれを備えたクレーンを提供することを目的とする。
(1)本発明は、ロープを巻き取る巻取回転方向及びその反対方向に回転軸回りに回転可能なウインチドラムに関するものである。前記ウインチドラムは、前記ロープが複数層に巻き取られる巻胴と、前記巻胴の幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを備える。前記巻胴の外周面には、前記外周面の周方向に平行な平行溝を有する第1平行部と、前記周方向に対して傾斜した傾斜溝を有する第1交差部と、前記周方向に平行な平行溝を有する第2平行部と、前記周方向に対して傾斜した傾斜溝を有する第2交差部とが前記周方向に沿ってこの順に形成されている。各フランジの内面には、前記第1交差部において下層のロープに対して上層のロープが交差するように当該上層のロープを案内するロープガイド部が設けられている。前記ロープガイド部は、前記ロープの巻き取り時において前記ロープが対向する第1傾斜面と、前記第1傾斜面に対して前記巻取回転方向の反対方向に隣接し、前記ロープの巻き取り時において前記ロープが対向する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の境界に位置してそれぞれの内側辺を構成する稜線部とを有する。前記第1傾斜面は、前記稜線部に対して前記巻取回転方向に位置する外側辺を有し、前記第1傾斜面の前記外側辺から前記稜線部に向かうにつれて前記巻胴の前記幅方向内側に位置するように前記内面に対して傾斜する形状を有する。前記第2傾斜面は、前記稜線部に対して前記巻取回転方向の反対方向に位置する外側辺を有し、前記第2傾斜面の前記外側辺から前記稜線部に向かうにつれて前記巻胴の前記幅方向内側に位置するように前記内面に対して傾斜する形状を有する。前記稜線部は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有する。前記稜線部は、前記内端から前記外端に向かうにつれて、前記回転軸と前記内端とを通る直線である基準線に対して、前記巻取回転方向の反対方向に変位する形状を有する。
本発明のウインチドラムによれば、稜線部は、その内端から外端に向かうにつれて、回転軸と前記内端とを通る直線である基準線に対して、巻取回転方向の反対方向に変位する形状を有しているので、上層のロープがロープガイド部の稜線部に対向する位置を、巻取回転方向の反対方向にずらすことができる。これにより、ロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープを整然と巻き取ることができる。
(2)前記ウインチドラムにおいて、前記稜線部は、前記基準線に対して前記巻取回転方向の反対方向に傾斜する形状を有しているのが好ましい。
この構成では、ロープガイド部の稜線部の位置が前記基準線の位置に対して巻取回転方向の反対方向にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、上の層になればなるほど最終列のロープとフランジの内面との隙間が累積されて大きくなる場合であっても、その累積される隙間の大きさに応じて上述のずれる長さを大きくすることができる。これにより、隙間が大きくなる上の層においても、第1列のロープが下層の最終列のロープを乗り越えて適正な位置に配置されるので、ロープを整然と巻き取ることができる。
(3)前記ウインチドラムにおいて、前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有し、前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記第2傾斜面の前記外側辺の前記外端と前記基準線との距離が前記第2傾斜面の前記外側辺の前記内端と前記基準線との距離よりも大きくなるように、前記基準線に対して前記巻取回転方向の反対方向に傾斜する形状を有しているのが好ましい。
この構成では、第2傾斜面の外側辺の位置が前記基準線の位置に対して巻取回転方向の反対方向にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、上の層になればなるほど、基準線から巻取回転方向の反対方向によりずれた位置において、第2傾斜面に係るロープガイド部の厚みを持たせることができる。このような厚みが付与されることにより、次のような利点がある。すなわち、上の層になればなるほど最終列のロープとフランジの内面との隙間が累積されて大きくなることに起因して、上の層になればなるほど上層の第1列のロープが下層の最終列のロープを乗り越えにくくなる傾向にある。このような場合であっても、本構成では、上の層になればなるほど、基準線から巻取回転方向の反対方向によりずれた位置において、第2傾斜面に係るロープガイド部の厚みを持たせているので、その付与された厚みによって上層の第1列のロープが下層の最終列のロープをより乗り越えやすくなる。また、このように付与された厚みは、下層の最終列のロープを乗り越えた上層の第1列のロープが、当該下層のロープを逆方向に乗り越えて再びフランジの内面側に戻ってくるという動きを規制する役割も果たす。
(4)前記ウインチドラムにおいて、前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記回転軸を通る直線上に位置しているのが好ましい。
この構成では、第2傾斜面の外側辺が回転軸を通る直線上に位置しているので、基準線に対する当該外側辺の角度は、何れの層においても一定となる。これにより、ロープが巻胴に多層に巻かれる場合であっても、層間で巻き取り状態にばらつきが生じにくくなる。
(5)前記ウインチドラムにおいて、前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有し、前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記第1傾斜面の前記外側辺の前記外端と前記基準線との距離が前記第1傾斜面の前記外側辺の前記内端と前記基準線との距離よりも大きくなるように、前記基準線に対して前記巻取回転方向に傾斜する形状を有しているのが好ましい。
この構成では、第1傾斜面の外側辺の位置が前記基準線の位置に対して巻取回転方向にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、この構成では、第1傾斜面の外側辺が前記基準線に平行である場合に比べて、フランジの内面に対する第1傾斜面の傾斜角度は、上の層になればなるほど小さくなる。クレーン等に用いられるロープは通常ある程度の剛性があってしなやかさはあまりないので、本構成のように傾斜角度を小さくできれば、上層の第1列のロープが第1傾斜面に沿って案内される際に、当該上層のロープを少しずつ曲げて下層の最終列のロープに対して円滑にクロスオーバーさせることができる。したがって、本構成では、上の層になればなるほどロープを円滑にクロスオーバーさせることができるので、最終列のロープとフランジの内面との隙間が累積されて大きくなる傾向にある上の方の層においても、第1列のロープが下層の最終列のロープを乗り越えて適正な位置に配置されやすくなる。
(6)前記ウインチドラムにおいて、前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記回転軸を通る直線上に位置していてもよい。
この構成では、第1傾斜面の外側辺が回転軸を通る直線上に位置しているので、基準線に対する第1傾斜面の外側辺の角度は、何れの層においても一定となる。これにより、ロープが巻胴に多層に巻かれる場合であっても、層間で巻き取り状態にばらつきが生じにくくなる。また、第1傾斜面の外側辺が回転軸を通る直線上に位置しているだけでなく、第2傾斜面の外側辺も回転軸を通る直線上に位置している場合には、巻胴の外周面の全周に対する第1交差部の割合が何れの層においても一定となる。これにより、ロープが巻胴に多層に巻かれる場合に、層間で巻き取り状態にばらつきがさらに生じにくくなる。
(7)本発明のクレーンは、下部走行体と、この下部走行体の上に旋回可能に配置される上部旋回体とを備え、前記上部旋回体には、上述のウインチドラムが搭載されている。
本発明のクレーンでは、ロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープを整然と巻き取ることができる。
本発明によれば、ロープの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープを整然と巻き取ることができる。
本発明の実施形態に係るクレーンを示す側面図である。 本発明の実施形態に係るウインチドラムを示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係るウインチドラムを示す平面図である。 第1実施形態に係るウインチドラムの巻胴の外周面に設けられたロープ溝の配置を説明するためのウインチドラムの展開図である。 図3におけるウインチドラムのV−V線断面図である。 第1実施形態に係るウインチドラムのフランジに設けられたロープガイド部の特徴を説明するための図であり、上側の図は、図5におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、下側の図は、図5におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。 第1実施形態に係るウインチドラムを示す平面図であって、ロープの減径に起因してロープとフランジとの間に隙間が生じている状態を示す図である。 図7の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。 本発明の第2実施形態に係るウインチドラムを示す断面図である。 第2実施形態に係るウインチドラムのフランジに設けられたロープガイド部の特徴を説明するための図であり、上側の図は、図9におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、下側の図は、図9におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。 本発明の第3実施形態に係るウインチドラムを示す断面図である。 第3実施形態に係るウインチドラムのフランジに設けられたロープガイド部の特徴を説明するための図であり、上側の図は、図11におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、下側の図は、図11におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。 本発明の第4実施形態に係るウインチドラムを示す断面図である。 第4実施形態に係るウインチドラムのフランジに設けられたロープガイド部の特徴を説明するための図であり、上側の図は、図13におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、中央の図は、図13におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、下側の図は、図13におけるC−C線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。 比較例に係るウインチドラムを示す平面図である。 図15におけるXVI−XVI線断面図である。 図16におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図である。 図15の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図である。 図15の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図である。 図15の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。 比較例に係るウインチドラムを示す平面図であって、ロープの減径に起因してロープとフランジとの間に隙間が生じている状態を示す図である。 図21の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図である。 図21の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[クレーン]
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン100の概略を示す側面図である。図1に示すように、クレーン100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に配置された上部旋回体102とを備える。
上部旋回体102は、下部走行体101上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム103と、旋回フレーム103の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム104と、ブーム104の先端からロープR(ワイヤロープ)を介して吊り下げられたフック105と、ウインチ装置107とを備える。
ウインチ装置107は、フック105に繋がるロープRの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、フック105に吊作業のための昇降動作を行わせる装置である。ウインチ装置107は、ウインチドラム1と、油圧モータ、減速機などの図略の駆動源とを備えている。ウインチ装置107の配置位置は、例えば、旋回フレーム103におけるブーム104の取り付け部位の後方である。
図2は、本発明の実施形態に係るウインチドラム1を示す斜視図である。図2に示すように、ウインチドラム1は、ロープRが多層に巻き取られる巻胴2と、この巻胴2における幅方向W(図3参照)の両端にそれぞれ設けられた一対のフランジ3(第1のフランジ3A及び第2のフランジ3B)とを備える。ウインチドラム1は、ロープRの巻き取り又は繰り出しのために、前記駆動源によって回転軸Kの回りに回転する。ウインチドラム1は、クレーン100の車幅方向と回転軸Kとが一致するように、旋回フレーム103に支持されている。
ロープRは、巻胴2から引き出されてブーム104の先端を経由し、そのブーム104の先端から垂下されてフック105を吊り下げている。ウインチドラム1は、回転軸K回りの一方の回転方向である巻取回転方向D1に回転することにより、ロープRを巻胴2に巻き取り、それによってフック105を上昇させる。また、ウインチドラム1は、巻取回転方向D1とその反対方向D2(繰り出し回転方向D2)に回転することにより、ロープRを繰り出し、それによってフック105を降下させる。
[ウインチドラム]
以下、本発明の第1〜第4実施形態に係るウインチドラム1について詳細に説明するが、それに先だって、比較例に係るウインチドラム及びその問題点について説明する。
比較例に係るウインチドラムは、図15に示すように、ロープRが多層に巻き取られる巻胴202と、この巻胴202における幅方向の両端にそれぞれ設けられた一対のフランジ203(第1のフランジ203A及び第2のフランジ203B)と、を備える。このウインチドラムでは、巻胴202の外周面にロープ溝204が設けられている。
また、図15、図16及び図17に示すように、各フランジ203の内面203Sには、ロープキックと称されるロープガイド部205が内側に出っ張るように設けられている。図18は、図15の位置P1におけるロープの配列状態を示す概略図であり、図19は、図15の位置P2におけるロープの配列状態を示す概略図であり、図20は、図15の位置P3におけるロープの配列状態を示す概略図である。
図19に示すL1は、第1のフランジ203Aと第2のフランジ203Bの内面間寸法(ガイド部間寸法)であって、第1のロープガイド部205Aの稜線部250及び第2のロープガイド部205Bの稜線部250が存在する部分のガイド部間寸法を示している。このガイド部間寸法L1は、各層のロープ列数にロープ直径を乗じて求められる寸法に設定されている。 従って、ロープRは、ロープガイド部205の稜線部250が存在する部分では、図19に示すように上下層のロープ同士が上下方向に重なった状態となる。その一方で、図18及び図20に示すように、ロープガイド部205以外の部分では下層ロープの谷間に上層ロープが位置する状態となる。
このようなウインチドラムでは、まず、ロープRのうち、第1層のロープR1〜R5がロープ溝204に入り込むことによって整然と巻き取られる。そして、第2層の第1列にあるロープR6は、図18に示すように第1層のロープR5よりもフランジ203B寄りの位置から、図19に示すようにロープガイド部205Bに案内されてロープR5の真上に移動し、さらに、ロープガイド部205Bに案内されることにより、図20に示すように第1層のロープR4とロープR5によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第2層のロープR6〜R10が整然と巻き取られる。そして、第3層の第1列にあるロープR11は、ロープR6の場合と同様にロープガイド部205Aに案内されて、図18に示す位置から図20に示す位置、すなわち、第2層のロープR9とロープR10によって形成される谷間の真上に移動する。
ところで、ロープRによって吊り荷を吊り上げる際には、ロープRは、吊り荷を吊り上げていないときに比べて径が小さくなる。また、ロープRの径は、通常の経年摩耗などによっても減少することがある。さらに、ウインチドラムの寸法公差、ロープの寸法公差などにより、ロープRの径がガイド部間寸法L1に対して相対的に小さくなる場合もある。これらのようにロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなると、次のような問題が生じる。
すなわち、理想的な寸法に比べてロープRの径が小さくなると、図21及び図22に示すように、例えば第2層のロープR6〜R10は、図15に示す理想的な状態に比べて、フランジ203B側に位置することになる。その結果、第2層の最終列(第5列)のロープR10とフランジ203Aとの間の隙間G1が大きくなる。このため、第3層の第1列のロープR11は、図21及び図22に示すようにロープガイド部205の稜線部250に対向する位置にあるときに、下層(第2層)のロープR10の真上に位置することができず、フランジ203A側にずれた位置に存在することになる。図22に示すように、ロープR11が、ロープR10に対して、フランジ203A側にずれた位置にある場合には、ロープガイド部205Aは、第3層のロープR11を、第2層のロープR10を乗り越えさせることができず、したがって、第3層のロープR11は、適正な位置、すなわち第2層のロープR9とロープR10によって形成される谷間の真上の位置に移動することができない。その結果、図23に示すように、第3層において、第1列のロープR11と第2列のロープR12との間に大きな隙間G2が形成されてしまうことがある。
このような隙間G2が形成された状態のままロープRの巻き取りが進むと、上層のロープRが上記の隙間G2に落ち込んでロープが乱巻きの状態になることがある。また、第3層の第1列のロープR11が、図21に示す位置、すなわち第2層の最終列のロープR10の真上ではなくフランジ203A側にずれた位置にある状態から、このロープR11に力が加わることによって、ロープR11が、図15に示すような位置、すなわち第2層の最終列のロープR10をロープR9側に乗り越えた位置に移動する際には非常に大きな音が発生することがある。
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態に係るウインチドラム1を示す平面図である。図4は、第1実施形態に係るウインチドラム1のロープ溝4の配置を説明するためのウインチドラム1の展開図である。本実施形態に係るウインチドラム1は、いわゆるリーバス式のウインチドラムである。図3及び図4に示すように、ウインチドラム1では、巻胴2の外周面20にロープ溝4が設けられている。ロープRのうち、第1層のロープR1〜R5は、ロープ溝4に入り込むことにより、整然と巻き取られる。
図4に示すように、溝4は、第1平行部S1に設けられた平行溝4と、第1交差部T1に設けられた傾斜溝4と、第2平行部S2に設けられた平行溝4と、第2交差部T2に設けられた傾斜溝4とを含む。第1平行部S1、第1交差部T1、第2平行部S2及び第2交差部T2は、巻胴2の外周面20においてその周方向にこの順に並んでいる。
第1平行部S1の平行溝4及び第2平行部S2の平行溝4は、巻胴2の外周面20の周方向に平行な溝である。第1交差部T1における傾斜溝4及び第2交差部T2における傾斜溝4は、巻胴2の外周面20の周方向に対して傾斜した溝である。これらの交差部T1,T2の傾斜溝4は、同じ方向に傾斜している。
具体的に、第1交差部T1における傾斜溝4は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、第1層のロープRが傾斜溝4に入り込むことにより、ロープRの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけフランジ3B側に移動させる。同様に、第2交差部T2における傾斜溝4は、ロープRが巻胴2に巻き取られるときに、第1層のロープRが傾斜溝4に入り込むことにより、ロープRの位置を1/2ピッチ(おおよそロープRの半径)だけフランジ3B側に移動させる。したがって、ロープRが巻胴2を一周することにより、ロープRの位置は、1ピッチ(おおよそロープRの直径)だけフランジ3B側に移動することになる。
また、図4に示すように、第2交差部T2における最終列4Eは、ロープRの巻き取り時には溝4の幅が1ピッチから1/2ピッチまで減少するように構成されている。したがって、第1層の最終列4Eの溝4に入り込んでいたロープRは、巻き取りが進むにつれて最終列4Eの溝4に入らなくなり、第2層の第1列に押し上げられる。
上層のロープ(例えば図3における第3層のロープR12)は、平面視したときに、第1平行部S1において、ロープR12の下層にあって互いに隣り合う2つのロープ(例えば図3における第2層のロープR9とロープR10)と平行であり、これらのロープR9,R10によって形成される谷間の真上に位置する。また、上層のロープ(例えば図3における第3層のロープR12)は、平面視したときに、第2平行部S2において、ロープR12の下層にあって互いに隣り合う2つのロープ(例えば図3における第2層のロープR8とロープR9)と平行であり、これらのロープR8,9によって形成される谷間の真上に位置する。すなわち、第1平行部S1及び第2平行部S2においては、上層のロープRは、その直下の下層のロープRに対して1/2ピッチだけずれた位置にある。
上層のロープ(例えば図3における第3層のロープR12)は、平面視したときに、第1交差部T1において、下層のロープ(例えば図3における第2層のロープR9)と交差する。同様に、上層のロープは、平面視したときに、第2交差部T2において、下層のロープと交差する。
第1平行部S1は、周方向において、巻胴2の外周面20のうちの1/3を占める領域に設けられている。第2平行部S2は、周方向において、巻胴2の外周面20のうちの他の1/3を占める領域に設けられている。第1交差部T1は、周方向において、巻胴2の外周面20のうちの1/6を占める領域に設けられている。第2交差部T2は、周方向において、巻胴2の外周面20のうちの他の1/6を占める領域に設けられている。
言い換えると、巻胴2の外周面20における回転軸Kに垂直な断面において、第1平行部S1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度であり、第2平行部S2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は120度である。また、第1交差部T1の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度であり、第2交差部T2の周方向の両端と回転軸Kとを結ぶ中心角は60度である。ただし、平行部S1,S2及び交差部T1,T2が設けられる範囲は、上記の具体例に限定されるものではない。
図3に示すように、ウインチドラム1において、第1のフランジ3Aの内面3Sには、ロープキックと称されるロープガイド部5(第1のロープガイド部5A)が内側、すなわち第2のフランジ3B側に突出して設けられている。第2のフランジ3Bの内面3Sには、同様のロープガイド部5(第2のロープガイド部5B)が内側、すなわち第1のフランジ3A側に突出して設けられている。各ロープガイド部5の断面は三角形状を呈している。図4に示すように、ロープガイド部5は、第1交差部T1にのみ設けられており、第2交差部T2、第1平行部S1及び第2平行部S2には設けられていない。
第1のロープガイド部5Aと第2のロープガイド部5Bは、第1のフランジ3Aと第2のフランジ3Bとの中央に位置する平面であって回転軸Kに垂直な平面に関して、面対称となるように形成されている。したがって、以下では、主に、第1のロープガイド部5Aについて説明する。
図5は、図3におけるウインチドラム1のV−V線断面図である。図6は、第1実施形態に係るウインチドラム1のフランジ3に設けられたロープガイド部5の特徴を説明するための図である。図6における上側の図は、図5におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジ3を示す断面図であり、図6における下側の図は、図5におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジ3を示す平面図である。
図5に示すように、ロープガイド部5は、巻胴2の外周面20からフランジ3の外周30まで連続的に設けられている。ただし、ロープガイド部5は、ロープRが多層に巻き取られたときにロープRが存在する位置に設けられていればよい。したがって、ロープガイド部5は、例えば、巻胴2の外周面20よりも径方向外側の位置と、フランジ3の外周30よりも径方向内側の位置との間にのみ設けられていてもよい。
図3及び図5に示すように、ロープガイド部5は、第1傾斜面51と、第2傾斜面52とを有する。第1傾斜面51及び第2傾斜面52は、周方向に並んでいる。第1傾斜面51と第2傾斜面52とは、稜線部50において互いの内側辺同士が接続されている。第1傾斜面51は、稜線部50よりも巻取回転方向D1にあり、第2傾斜面52は、稜線部50よりも巻取回転方向D1の反対方向D2にある。第1傾斜面51は、ロープRの巻き取り時においてロープRが対向する面である。第2傾斜面52は、第1傾斜面51に対して巻取回転方向D1の反対方向D2に隣接し、ロープRの巻き取り時において第1傾斜面51よりも後にロープRが対向する面である。
第1傾斜面51は、稜線部50に対して巻取回転方向D1に位置する外側辺53を有する。当該外側辺53は、巻胴2の外周面20側に位置する内端53Eと、内端53Eよりもフランジ3の外周30側に位置する外端53Fとを有する。外側辺53は、フランジ3の内面3Sと同一平面上にある。フランジ3の内面3Sは、回転軸Kに垂直な平面と平行である。一方、第1傾斜面51は、回転軸Kに垂直な平面に対して傾斜している。具体的には、第1のフランジ3Aの第1のロープガイド部5Aにおける第1傾斜面51は、外側辺53から稜線部50に向かうにつれて、巻胴2の幅方向Wの内側(第2のフランジ3B側)に位置するように、フランジ3の内面3S(回転軸Kに垂直な平面)に対して傾斜している。第2のロープガイド部5Bにおける第1傾斜面51は、外側辺53から稜線部50に向かうにつれて、巻胴2の幅方向Wの内側(第1のフランジ3A側)に位置するように、フランジ3の内面3S(回転軸Kに垂直な平面)に対して傾斜している。
第2傾斜面52は、稜線部50に対して巻取回転方向D1の反対方向D2に位置する外側辺54を有する。第2傾斜面52の外側辺54は、巻胴2の外周面20側に位置する内端54Eと、内端54Eよりもフランジ3の外周30側に位置する外端54Fとを有する。外側辺54は、フランジ3の内面3Sと同一平面上にある。
第2傾斜面52は、回転軸Kに垂直な平面に対して傾斜している。具体的には、第1のフランジ3Aの第1のロープガイド部5Aにおける第2傾斜面52は、外側辺54から稜線部50に向かうにつれて、巻胴2の幅方向Wの内側(第2のフランジ3B側)に位置するように、フランジ3の内面3S(回転軸Kに垂直な平面)に対して傾斜している。第2のフランジ3Bの第2のロープガイド部5Bにおける第2傾斜面52は、外側辺54から稜線部50に向かうにつれて、巻胴2の幅方向Wの内側(第1のフランジ3A側)に位置するように、フランジ3の内面3S(回転軸Kに垂直な平面)に対して傾斜している。
稜線部50は、巻胴2の外周面20とフランジ3の外周30との間において、フランジ3の外周30よりも巻胴2の外周面20に近い位置から巻胴2の外周面20よりもフランジ3の外周30に近い位置まで延びている。図5に示す具体例では、稜線部50は、巻胴2の外周面20からフランジ3の外周30まで設けられている。ただし、稜線部50は、ロープRが多層に巻き取られたときにロープRが存在する位置に設けられていればよく、必ずしもフランジ3の外周30の位置にまで設けられていなくてもよい。
稜線部50は、巻胴2の外周面20側の内端50Eと、フランジ3の外周30側の外端50Fとを有する。ここで、図5に示す一点鎖線C1は、回転軸Kと稜線部50の内端50Eとを通り、ウインチドラム1の径方向に平行な直線である。この一点鎖線C1を以下では、基準線C1と呼ぶ。また、図4及び図5に示すように、第1実施形態では、基準線C1は、巻胴2の周方向における第1交差部T1の中央を通る直線である。
稜線部50は、その内端50Eから外端50Fに向かうにつれて、基準線C1に対して、巻取回転方向D1の反対方向D2に変位する形状を有する。図5に示す第1実施形態では、稜線部50は直線である。
図5に示すようにフランジ3Aを回転軸Kの方向に見たときの基準線C1に対する稜線部50の傾斜角度θ1は、特に限定されるものではないが、好ましくは10°〜20°の範囲にあるのがよく、より好ましくは12°〜18°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは14°〜16°の範囲にあるのがよい。傾斜角度θ1が10°未満である場合には、ロープRの減径時におけるロープRの巻き取り状態を改善する効果が十分でないことがある。一方、傾斜角度θ1が20°を超える場合には、ロープガイド部5の稜線部50がロープRを押すタイミングのずれが大きくなりすぎる場合がある。
第1傾斜面51は、平面であってもよく、曲面であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。同様に、第2傾斜面52は、平面であってもよく、曲面であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。各ロープガイド部5は、単一の稜線部50のみを有し、複数の稜線部を有していない。稜線部50は、基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対方向D2にのみ設けられている。
図5及び図6に示す第1実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53は、基準線C1に対して巻取回転方向D1にずれた位置にあり、基準線C1と平行な直線である。また、第2傾斜面52の外側辺54は、基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対方向D2にずれた位置にあり、基準線C1と平行な直線である。図5に示す回転軸Kの方向にフランジ3を見たときに、基準線C1は、第1傾斜面51の外側辺53と第2傾斜面52の外側辺54の中央に位置している。
図3に示すL1は、第1のフランジ3Aと第2のフランジ3Bの内面間寸法(ガイド部間寸法)である。具体的には、L1は、第1のロープガイド部5Aの稜線部50及び第2のロープガイド部5Bの稜線部50が存在する部分におけるガイド部間寸法を示している。このガイド部間寸法L1は、各層のロープ列数にロープ直径を乗じて求められる寸法に設定されている。 従って、ロープRは、ロープガイド部5の稜線部50が存在する部分では、図3に示すように上下層のロープ同士が上下方向にほぼ重なった状態となる一方で、第1平行部S1及び第2平行部S2に対応する部分では下層ロープの谷間に上層ロープが位置する状態となる。
図3は、ロープRの径が上記のような設計通りの理想的な寸法である場合を示している。かかる場合、ロープRは、ウインチドラム1によって次のように巻き取られる。まず、ロープRのうち、第1層のロープR1〜R5がロープ溝4に入り込むことによって整然と巻き取られる。そして、第2層の第1列にあるロープR6は、第1層のロープR5よりもフランジ3B寄りの位置から、ロープガイド部5Bに案内されてロープR5の真上に移動し、さらに、ロープガイド部5Bに案内されて第1層のロープR4(図3において図示省略)とロープR5によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第2層のロープR6〜R10が整然と巻き取られる。そして、第3層の第1列にあるロープR11は、ロープR6の場合と同様に、ロープガイド部5Aに案内されて、第2層のロープR9とロープR10によって形成される谷間の真上に移動する。このようにして第3層のロープR11〜R15が整然と巻き取られる。
図7は、第1実施形態に係るウインチドラム1を示す平面図である。図7は、ロープRの減径に起因してロープRとフランジ3Aとの間に隙間G1が生じている状態を示す図である。図3に示すようにロープRの径が理想的な寸法である場合に比べて、図7に示すようにロープRの径が小さくなると、例えば第2層のロープR6〜R10は、フランジ3B側に位置することになる。その結果、第2層の最終列(第5列)のロープR10とフランジ3Aとの間の隙間G1が大きくなる。
このため、仮に、図16に示す比較例に係るウインチドラムのように、ロープガイド部205の稜線部250が、回転軸Kを通る直線であってウインチドラム1の径方向に平行な直線上にある場合、すなわち基準線C1上に位置する場合には、図21及び図22に示すように、第3層の第1列のロープR11は、ロープガイド部205の稜線部250に対向する位置においても、下層(第2層)のロープR10の真上に位置することができず、フランジ203A側にずれた位置に存在することになる。その結果、図23に示すように、第3層の第1列のロープR11と第2列のロープR12との間には大きな隙間G2が形成されてしまう。
一方、第1実施形態では、図5に示すように、ロープガイド部5の稜線部50は、基準線C1に対して、稜線部50の内端50Eから外端50Fに向かうにつれて、巻取回転方向D1の反対方向D2に傾斜する形状を有している。したがって、図7に示すように、第2層の最終列のロープR10とフランジ3Aとの間の隙間G1が大きくなっていたとしても、第3層の第1列のロープR11は、ロープガイド部5の稜線部50に対応する位置において、下層のロープR10のほぼ真上に位置することができる。なぜなら、リーバス式のウインチドラム1における第1交差部T1においては、下層のロープR10は、第1傾斜面51の外側辺53側の位置から第2傾斜面52の外側辺54側に向かうにつれて第1のフランジ3Aの内面3Sに近づくように配置されるからである。
したがって、第1実施形態では、第3層の第1列のロープR11は、ロープガイド部5Aによる案内効果を効果的に得ることができるため、図7に示すように、第2層のロープR10を乗り越えて第2層のロープR9とロープR10によって形成される谷間の真上に移動することができる。これにより、ロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、図23に示す比較例に係るウインチドラムのように第3層の第1列のロープR11と第2列のロープR12との間に大きな隙間G2が形成されるといった問題が生じるのを抑制することができる。
また、第1実施形態において稜線部50を基準線C1に対して傾斜させているもう一つの理由は、ロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなることに起因したロープRとフランジ3との間の隙間G1が、上の層にいくほど累積されていくという問題があり、その問題を解消するためである。すなわち、リーバス式のウインチドラム1においては、上層のロープRは、基本的に、下層における隣り合う2つのロープRの間の谷間をレールとして巻き取られる。このため、上層のロープRの配列状態は、下層のロープRの配列状態にある程度影響を受けることになる。したがって、ある層において最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの間に隙間G1が形成されるような配列状態が形成されると、その上層においては下層の配列状態の影響を受け、さらにその上層においては下の2層の配列状態の影響を受けるというように、上の層になるほど最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの隙間が累積されていく。したがって、上の層になるほど最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの隙間G1が大きくなる傾向にある。
このような隙間G1の累積という問題を解決するために、本実施形態では、稜線部50が、内端50Eから外端50Fに向かうにつれて、基準線C1に対して、巻取回転方向D1の反対方向D2に傾斜する形状を有するという構成を採用している。これにより、ロープガイド部5の稜線部50の位置が基準線C1の位置に対して巻取回転方向D1の反対方向D2にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、上の層になればなるほど最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの隙間G1が累積されて大きくなる場合であっても、その累積される隙間G1の大きさに応じて上述のずれる長さを大きくすることができる。これにより、隙間G1が大きくなる上の層においても、第1列のロープRが下層の最終列のロープRを乗り越えて適正な位置に配置されるので、ロープRを整然と巻き取ることができる。その結果、第1実施形態では、図8に示すようにロープRを整然と巻き取ることができる。
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係るウインチドラム1を示す断面図である。図10は、第2実施形態に係るウインチドラム1のフランジ3に設けられたロープガイド部5の特徴を説明するための図である。図10における上側の図は、図9におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、図10における下側の図は、図9におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。
第2実施形態に係るウインチドラム1は、ロープガイド部5の構成が第1実施形態とは異なっており、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。したがって、以下では、主として第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図9及び図10に示すように、第2実施形態に係るロープガイド部5では、第2傾斜面52の外側辺54が、第1実施形態のように基準線C1と平行な直線ではなく、基準線C1に対して傾斜している点が第1実施形態と異なっている。
図9に示すように、第2実施形態では、第2傾斜面52の外側辺54は、巻胴2側に位置する内端54Eと、内端54Eよりもフランジ3の外周30側に位置する外端54Fとを有する。第2傾斜面52の外側辺54は、第2傾斜面52の外端54Fと基準線C1との距離が第2傾斜面52の内端54Eと基準線C1との距離よりも大きくなるように、基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対方向D2に傾斜する形状を有している。第2傾斜面52の外側辺54は、回転軸Kを通ってウインチドラム1の径方向に平行な直線C2(一点鎖線C2)上にある。
図9に示すようにフランジ3Aを回転軸Kの方向に見たときの基準線C1に対する外側辺54の傾斜角度θ2、すなわち、基準線C1に対する直線C2の傾斜角度θ2は、特に限定されるものではないが、好ましくは25°〜35°の範囲にあるのがよく、より好ましくは27.5°〜32.5°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは29°〜31°の範囲にあるのがよい。傾斜角度θ2が25°未満である場合には、ロープRの減径時におけるロープRの巻き取り状態を改善する効果が十分でないことがある。一方、傾斜角度θ2が35°を超える場合には、ロープガイド部5の稜線部50がロープRを押すタイミングのずれが大きくなりすぎる場合がある。
第2実施形態では、第2傾斜面52の外側辺54の位置が基準線C1の位置に対して巻取回転方向D1の反対方向D2にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、図6に示す第1実施形態のように外側辺54が基準線C1に平行である場合に比べて、図10に示す第2実施形態では、上の層になればなるほど、基準線C1から巻取回転方向D1の反対方向D2によりずれた位置において、第2傾斜面52に係るロープガイド部5の厚みを持たせることができる。このような厚みが付与されることにより、次のような利点がある。
すなわち、上の層になればなるほど最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの隙間G1が累積されて大きくなることに起因して、上の層になればなるほど上層の第1列のロープRが下層の最終列のロープRを乗り越えにくくなる傾向にある。このような場合であっても、第2実施形態では、上の層になればなるほど、基準線C1から巻取回転方向D1の反対方向D2によりずれた位置において、第2傾斜面52に係るロープガイド部5の厚みを持たせているので、その付与された厚みによって上層の第1列のロープRが下層の最終列のロープRをより乗り越えやすくなる。また、このように付与された厚みは、下層の最終列のロープRを乗り越えた上層の第1列のロープRが、当該下層のロープRを逆方向に乗り越えて再びフランジ3の内面3S側に戻ってくるという動きを規制する役割も果たす。
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係るウインチドラム1を示す断面図である。図12は、第3実施形態に係るウインチドラム1のフランジ3に設けられたロープガイド部5の特徴を説明するための図である。図12における上側の図は、図11におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、図12における下側の図は、図11におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。
第3実施形態に係るウインチドラム1は、ロープガイド部5の構成が第1実施形態とは異なっており、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。したがって、以下では、主として第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図11及び図12に示すように、第3実施形態に係るロープガイド部5では、第1傾斜面51の外側辺53が、第1実施形態のように基準線C1と平行な直線ではなく、基準線C1に対して傾斜している点が第1実施形態と異なっており、また、第2傾斜面52の外側辺54が、第1実施形態のように基準線C1と平行な直線ではなく、基準線C1に対して傾斜している点が第1実施形態と異なっている。第3実施形態では、第2傾斜面52の外側辺54の特徴は、第2実施形態における第2傾斜面52の外側辺54と同様であるので、説明を省略する。
図11に示すように、第3実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53は、巻胴2側に位置する内端53Eと、内端53Eよりもフランジ3の外周30側に位置する外端53Fとを有する。第1傾斜面51の外側辺53は、第1傾斜面51の外端53Fと基準線C1との距離が第1傾斜面51の内端53Eと基準線C1との距離よりも大きくなるように、基準線C1に対して巻取回転方向D1に傾斜する形状を有している。外側辺53は、回転軸Kを通ってウインチドラム1の径方向に平行な直線C3(一点鎖線C3)上にある。
図11に示すように、フランジ3Aを回転軸Kの方向に見たときの基準線C1に対する外側辺53の傾斜角度θ3、すなわち、基準線C1に対する直線C3の傾斜角度θ3は、特に限定されるものではないが、好ましくは25°〜35°の範囲にあるのがよく、より好ましくは27.5°〜32.5°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは29°〜31°の範囲にあるのがよい。また、角度θ2と角度θ3の合計角度(θ2+θ3)は、好ましくは50°〜70°の範囲にあるのがよく、より好ましくは55°〜65°の範囲にあるのがよく、さらに好ましくは58°〜62°の範囲にあるのがよい。傾斜角度θ3が25°未満又は合計角度(θ2+θ3)が50°未満である場合には、ロープRの減径時におけるロープRの巻き取り状態を改善する効果が十分でないことがある。一方、傾斜角度θ3が35°を超える場合又は合計角度(θ2+θ3)が70°を超える場合には、ロープガイド部5の稜線部50がロープRを押すタイミングのずれが大きくなりすぎる場合がある。
第3実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53の位置が基準線C1の位置に対して巻取回転方向D1にずれる長さは、上の層になればなるほど大きくなる。したがって、この第3実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53が基準線C1に平行である場合に比べて、フランジ3の内面3Sに対する第1傾斜面51の傾斜角度θ4(図12参照)は、上の層になればなるほど小さくなる。クレーン100に用いられるロープRは通常ある程度の剛性があってしなやかさはあまりないので、傾斜角度θ4を小さくできれば、上層の第1列のロープRが第1傾斜面51に沿って案内される際に、当該上層のロープRを少しずつ曲げて下層の最終列のロープRに対して円滑にクロスオーバーさせることができる。したがって、第3実施形態では、上の層になればなるほどロープRを円滑にクロスオーバーさせることができるので、最終列のロープRとフランジ3の内面3Sとの隙間G1が累積されて大きくなる傾向にある上の方の層においても、第1列のロープRが下層の最終列のロープRを乗り越えて適正な位置に配置されやすくなる。
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態に係るウインチドラム1を示す断面図である。図14は、第4実施形態に係るウインチドラム1のフランジ3に設けられたロープガイド部5の特徴を説明するための図である。図14における上側の図は、図13におけるA−A線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、図14における中央の図は、図13におけるB−B線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す断面図であり、図14における下側の図は、図13におけるC−C線の位置で矢印の方向に見たときのフランジを示す平面図である。
第4実施形態に係るウインチドラム1は、ロープガイド部5の構成が第1実施形態とは異なっており、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。したがって、以下では、主として第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図13及び図14に示すように、第4実施形態に係るロープガイド部5では、稜線部50の構成が第1実施形態とは異なっている。また、第4実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53が、第1実施形態のように基準線C1と平行な直線ではなく、基準線C1に対して傾斜している点が第1実施形態と異なっており、また、第2傾斜面52の外側辺54が、第1実施形態のように基準線C1と平行な直線ではなく、基準線C1に対して傾斜している点が第1実施形態と異なっている。なお、第4実施形態では、第1傾斜面51の外側辺53の特徴は、第3実施形態における第1傾斜面51の外側辺53と同様であり、第2傾斜面52の外側辺54の特徴は、第2実施形態及び第3実施形態における第2傾斜面52の外側辺54と同様であるので、これらの説明を省略する。
図13及び図14に示すように第4実施形態に係るロープガイド部5の稜線部50は、その内端50Eから外端50Fに向かうにつれて、基準線C1に対して、巻取回転方向D1の反対方向D2に変位する形状を有する。具体的に、稜線部50は、第1稜線部50Aと、第2稜線部50Bとを有する。第1稜線部50Aは、巻胴2側に位置しており、第2稜線部50Bは、第1稜線部50Aよりもフランジ3の外周30側に位置している。第1稜線部50Aは、第1層のロープRに対応する位置に設けられており、第2稜線部50Bは、第2層以上のロープRに対応する位置に設けられている。
図13に示すように、第1稜線部50Aは、フランジ3Aを回転軸Kの方向に見たときに、基準線C1上に位置している。第2稜線部50Bは、基準線C1に対して、巻取回転方向D1の反対方向D2にずれた位置にある。第1稜線部50A及び第2稜線部50Bは、ともに基準線C1と平行な方向に直線状に延びている。
第4実施形態では、第1傾斜面51は、その外側辺53と第1稜線部50Aとを周方向につなぐ面と、外側辺53と第2稜線部50Bとを周方向につなぐ面とを含む。また、第2傾斜面52は、その外側辺54と第1稜線部50Aとを周方向につなぐ面と、外側辺54と第2稜線部50Bとを周方向につなぐ面とを含む。
第4実施形態では、稜線部50のうち、第1稜線部50Aは、基準線C1上に位置しており、第2稜線部50Bは、基準線C1に対して巻取回転方向D1の反対方向D2にずれた位置にあるので、第2稜線部50BがロープRに対向する位置を、第1稜線部50AがロープRに対向する位置よりも、基準線C1の位置から巻取回転方向D1の反対方向D2にずらすことができる。すなわち、ロープRが第1稜線部50Aに対向した角度と同じ角度までウインチドラム1が回転した時点では、第2稜線部50Bが設けられた位置に対応する層のロープRは、まだ当該第2稜線部50Bに対向せず、その時点よりも遅れて第2稜線部50Bに対向する。したがって、第1実施形態において説明した理由と同様の理由により、ロープRの径が理想的な寸法に比べて小さくなる場合であっても、ロープRを整然と巻き取ることができる。
[その他の変形例]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
第2〜第4実施形態では、第2傾斜面の外側辺54が、回転軸Kを通ってウインチドラム1の径方向に平行な直線C2上にある場合を例示したが、これに限られない。外側辺54は、直線C2と平行でなくてもよい。
第3,第4実施形態では、第1傾斜面の外側辺53が、回転軸Kを通ってウインチドラム1の径方向に平行な直線C3上にある場合を例示したが、これに限られない。外側辺53は、直線C3と平行でなくてもよい。
また、第1傾斜面51の外側辺53及び第2傾斜面52の外側辺54の少なくとも一方は、曲線であってもよい。
また、稜線部50は、曲線であってもよく、複数の直線の組み合わせであってもよく、曲線と直線の組み合わせであってもよい。
前記実施形態では、基準線C1が、巻胴2の周方向における第1交差部T1の中央を通る直線である場合を例示したが、これに限られず、第1交差部T1の中央からずれた位置を通る直線であってもよい。
1 ウインチドラム
2 巻胴
20 巻胴の外周面
3 フランジ
3A 第1のフランジ
3B 第2のフランジ
3S フランジの内面
30 フランジの外周
4 ロープ溝
5 ロープガイド部
5A 第1のロープガイド部
5B 第2のロープガイド部
50 稜線部
50A 第1稜線部
50B 第2稜線部
50E 稜線部の内端
50F 稜線部の外端
51 第1傾斜面
52 第2傾斜面
53 第1傾斜面の端辺
53E 第1傾斜面の端辺の内端
53F 第1傾斜面の端辺の外端
54 第2傾斜面の端辺
54E 第2傾斜面の端辺の内端
54F 第2傾斜面の端辺の外端
100 クレーン
101 下部走行体
102 上部旋回体
C1 基準線
K ウインチドラムの回転軸(巻胴の回転軸)
R ロープ
W 巻胴の幅方向

Claims (7)

  1. ロープを巻き取る巻取回転方向及びその反対方向に回転軸回りに回転可能なウインチドラムであって、
    前記ロープが複数層に巻き取られる巻胴と、
    前記巻胴の幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを備え、
    前記巻胴の外周面には、前記外周面の周方向に平行な平行溝を有する第1平行部と、前記周方向に対して傾斜した傾斜溝を有する第1交差部と、前記周方向に平行な平行溝を有する第2平行部と、前記周方向に対して傾斜した傾斜溝を有する第2交差部とが前記周方向に沿ってこの順に形成され、
    各フランジの内面には、前記第1交差部において下層のロープに対して上層のロープが交差するように当該上層のロープを案内するロープガイド部が設けられ、
    前記ロープガイド部は、前記ロープの巻き取り時において前記ロープが対向する第1傾斜面と、前記第1傾斜面に対して前記巻取回転方向の反対方向に隣接し、前記ロープの巻き取り時において前記ロープが対向する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の境界に位置してそれぞれの内側辺を構成する稜線部とを有し、
    前記第1傾斜面は、前記稜線部に対して前記巻取回転方向に位置する外側辺を有し、前記第1傾斜面の前記外側辺から前記稜線部に向かうにつれて前記巻胴の前記幅方向内側に位置するように前記内面に対して傾斜する形状を有し、
    前記第2傾斜面は、前記稜線部に対して前記巻取回転方向の反対方向に位置する外側辺を有し、前記第2傾斜面の前記外側辺から前記稜線部に向かうにつれて前記巻胴の前記幅方向内側に位置するように前記内面に対して傾斜する形状を有し、
    前記稜線部は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有し、
    前記稜線部は、前記内端から前記外端に向かうにつれて、前記回転軸と前記内端とを通る直線である基準線に対して、前記巻取回転方向の反対方向に変位する形状を有する、ウインチドラム。
  2. 前記稜線部は、前記基準線に対して前記巻取回転方向の反対方向に傾斜する形状を有する、請求項1に記載のウインチドラム。
  3. 前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有し、
    前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記第2傾斜面の前記外側辺の前記外端と前記基準線との距離が前記第2傾斜面の前記外側辺の前記内端と前記基準線との距離よりも大きくなるように、前記基準線に対して前記巻取回転方向の反対方向に傾斜する形状を有する、請求項1又は2に記載のウインチドラム。
  4. 前記第2傾斜面の前記外側辺は、前記回転軸を通る直線上に位置している、請求項3に記載のウインチドラム。
  5. 前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記巻胴側に位置する内端と、前記内端よりも前記フランジの外周側に位置する外端とを有し、
    前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記第1傾斜面の前記外側辺の前記外端と前記基準線との距離が前記第1傾斜面の前記外側辺の前記内端と前記基準線との距離よりも大きくなるように、前記基準線に対して前記巻取回転方向に傾斜する形状を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載のウインチドラム。
  6. 前記第1傾斜面の前記外側辺は、前記回転軸を通る直線上に位置している、請求項5に記載のウインチドラム。
  7. 下部走行体と、この下部走行体の上に旋回可能に配置される上部旋回体とを備え、
    前記上部旋回体には、請求項1〜6の何れか1項に記載のウインチドラムが搭載されているクレーン。
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