以下、降圧回路を確実に始動できる電源装置及びこの電源装置を備えた照明装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
[第1の実施形態]
はじめに、第1の実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る照明装置1及びその電源装置10の回路図である。なお、図1では、実施形態の説明に必要な回路部品だけを示しており、説明に拘わらない回路部品については図示を省略している。
照明装置1は、電源装置10と光源ユニット20とを含む。光源ユニット20は、複数の発光ダイオードを直列に接続してなり、電源装置10の出力端子OUT1,OUT2間に着脱自在に接続される。なお、光源ユニット20において、発光素子である発光ダイオードの数は任意である。発光ダイオードは、1つのみ設けられていてもよい。また、図1に示すような発光ダイオードの直列回路が、複数並列に接続されていてもよい。また発光ダイオードに代えて、例えば有機EL(electroluminescence)等の別の種類の発光デバイスを設けていてもよい。
電源装置10は、整流回路11と、昇圧チョッパ型の力率改善回路12と、降圧チョッパ型の降圧回路13と、始動回路15と、制御回路14とを含む。電源装置10は、負荷として接続される光源ユニット20に直流電力を供給する直流電源装置である。すなわち電源装置10は、入力端子IN1,IN2の間に接続された商用交流電源30の交流電圧、例えばAC100Vを整流回路11で全波整流する。そして電源装置10は、この全波整流された電圧を力率改善回路12で昇圧して所定の直流電圧を得、この直流電圧を降圧回路13で目標電圧まで降圧して、その直流電流を光源ユニット20に供給する。
整流回路11は、ダイオードブリッジ回路DBとコンデンサC1とを含む。ダイオードブリッジ回路DBは、一対の入力端子及び出力端子を有する。ダイオードブリッジ回路DBは、各入力端子をそれぞれ電源装置10の入力端子IN1,IN2に接続する。ダイオードブリッジ回路DBは、一方の出力端子を力率改善回路12のトランスTに接続し、他方の出力端子をアースEに接続する。さらにダイオードブリッジ回路DBは、一対の出力端子間にコンデンサC1を接続する。かかる接続により、整流回路11は、商用交流電源30の交流電圧をダイオードブリッジ回路DBで全波整流し、コンデンサC1で平滑する。そして整流回路11は、平滑された全波整流電圧を力率改善回路12に出力する。
力率改善回路12は、トランスTと、スイッチング素子Q1と、電解コンデンサC3と、逆流防止用のダイオードD1と、抵抗R6とを含む。トランスTは、一次巻線e1と、第1の二次巻線e21と、第2の二次巻線e22とからなる。トランスTは、一次巻線e1の一端をコンデンサC1の正極側端子に接続し、他端をダイオードD1のアノードに接続する。トランスTは、第1の二次巻線e21の一端を制御回路14のGND(グランド)端子に接続し、他端を抵抗R3を介して制御回路14のZCD端子に接続する。トランスTは、第2の二次巻線e22の一端を制御回路14のVS端子に接続し、他端をコンデンサC2とダイオードD4との直列回路を介して制御回路14のVB端子に接続する。トランスTの一次巻線e1は、昇圧チョッパ型の力率改善回路12において、インダクタとして作用する。
スイッチング素子Q1は、例えばNチャンネルの電界効果トランジスタ(FET)である。スイッチング素子Q1は、ドレイン端子をトランスTとダイオードD1との接続点に接続し、ソース端子を抵抗R6を介してアースEに接続し、ゲート端子を制御回路14のGD端子に接続する。かかる接続により、スイッチング素子Q1は、ゲート端子に印加されるゲート信号がオンすると導通し、コンデンサC1、トランスTの一次巻線e1、スイッチング素子Q1及び抵抗R6の閉回路を形成する。スイッチング素子Q1は、ゲート端子に印加されるゲート信号がオフすると開放し、上記閉回路を遮断する。スイッチング素子Q1は、昇圧チョッパ型の力率改善回路12において、入力電圧をチョッピングするためのスイッチング素子として作用する。
ダイオードD1は、アノードをトランスTとスイッチング素子Q1との接続点に接続し、カソードを電解コンデンサC3の正極側端子に接続する。電解コンデンサC3の負極側端子は、アースEに接続されている。電解コンデンサC3の両端子は、力率改善回路12の出力端子となる。かかる接続により、スイッチング素子Q1のドレイン端子とソース端子との間に、ダイオードD1と電解コンデンサC3との直列回路が形成される。その結果、電解コンデンサC3は、スイッチング素子Q1が遮断状態にあるとき整流回路11の出力電圧によって充電され、導通状態にあるとき放電する。かくして力率改善回路12は、整流回路11で整流された電圧をスイッチング素子Q1のスイッチング動作により昇圧し、所定の直流電圧を得て、降圧回路13に出力する。ここに、トランスTの一次巻線e1とスイッチング素子Q1と電解コンデンサC3とは、昇圧チョッパ回路を形成する。
降圧回路13は、スイッチング素子Q2と、インダクタL1、L2と、コンデンサC4と、回生用のダイオードD2と、抵抗R7とを含む。スイッチング素子Q2は、例えばNチャンネルの電界効果トランジスタ(FET)である。スイッチング素子Q2は、ドレイン端子を力率改善回路12の一方の出力端子である電解コンデンサC3の正極側端子に接続し、ソース端子をインダクタL1の一端に接続し、ゲート端子を制御回路14のHO端子に接続する。インダクタL1の他端は、電源装置10の一方の出力端子OUT1に接続されている。このように降圧回路13は、スイッチング素子Q2がインダクタL1よりも高電位側(ハイサイド)に接続された、いわゆるハイサイド型として構成されている。
かかる接続により、スイッチング素子Q2は、ゲート端子に印加されるゲート信号がオンすると導通し、力率改善回路12の出力電流をインダクタL1に導く。スイッチング素子Q21は、ゲート端子に印加されるゲート信号がオフすると開放し、力率改善回路12の出力電流を遮断する。
インダクタL1は、スイッチング素子Q2がオンして直流電圧が印加されているときそのエネルギーを蓄え、スイッチング素子Q2がオフして直流電圧が印加されなくなったならば、蓄えたエネルギーを放出する。
コンデンサC4は、正極側端子をインダクタL1と電源装置10の一方の出力端子OUT1との接続点に接続し、負極側端子を電源装置10の他方の出力端子OUT2に接続する。またコンデンサC4は、抵抗R7を介して負極側端子C4をアースEに接続する。かくして降圧回路13は、力率改善回路12から出力される直流電圧を降圧し、その直流電流を出力端子OUT1,OUT2間に接続された負荷、本実施形態では光源ユニット20に供給する。ここに、スイッチング素子Q2とインダクタL1とコンデンサC4とは、降圧チョッパ回路を形成する。スイッチング素子Q2は、降圧チョッパ回路において、入力電圧をチョッピングするためのスイッチング素子として作用する。
降圧回路13において、ダイオードD2は、アノードを、抵抗R7とアースEとの接続点に接続し、カソードをインダクタL2の一方の端子に接続する。インダクタL2は、他方の端子をスイッチング素子Q2のソース端子とインダクタL1との接続点に接続する。かかる接続により、スイッチング素子Q2がオフしたときにインダクタL1から放出されるエネルギーにより、インダクタL1、コンデンサC4、抵抗R7、ダイオードD2及びインダクタL2による閉ループ内を回生電流が流れる。回生電流が流れると、スイッチング素子Q2のソース電位がグランド電位となる。
始動回路15は、ダイオードD5とスイッチング素子Q3とを含む。ダイオードD5は、アノードをスイッチング素子Q2のソース端子に接続し、カソードを制御回路14のVS端子に接続する。
スイッチング素子Q3は、例えばNチャンネルの電界効果トランジスタ(FET)である。スイッチング素子Q3は、ドレイン端子をダイオードD5のカソードに接続し、ソース端子をアースEに接続し、ゲート端子を制御回路14のSC端子に接続する。かかる接続により、スイッチング素子Q3は、ゲート端子に印加されるゲート信号がオンすると導通し、スイッチング素子Q2のソース電位をグランド電位まで落とす。また、ダイオードD5は、スイッチング素子Q3を通ってスイッチング素子Q2の出力端子に流れる電流を制限する。ここにスイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q2の出力端子とグランド電位の端子との間にダイオードD2と並列に接続されるスイッチ手段を構成する。
制御回路14は、アナログICである。制御回路14は、GND端子、VDC端子、VCC端子、GD端子、HO端子、SC端子、MULT端子、ZCD端子、VFB端子、VS端子、VB端子、CS端子、OCP端子及びABN端子を有する。なお、制御回路14が他の端子を有してもよいことは言うまでもないことである。
GND端子は、アースEに接続される。
VDC端子は、ダイオードD1のカソードに接続される。この接続により、VDC端子には、力率改善回路12に入力される高電圧の全波整流電圧が印加される。制御回路14は、VDC端子に印加される高電圧から回路動作電圧、例えば+18Vを生成するための回路を有する。回路動作電圧は、VCC端子から各回路に出力される。
GD端子は、スイッチング素子Q1のゲート端子に接続される。制御回路14は、スイッチング素子Q1のゲート信号を生成する回路を有する。そして制御回路14は、GD端子からスイッチング素子Q1のゲート端子にゲートオンまたはゲートオフのゲート信号を出力する。
HO端子は、スイッチング素子Q2のゲート端子に接続される。制御回路14は、スイッチング素子Q2のゲート信号を生成する回路を有する。そして制御回路14は、HO端子からスイッチング素子Q2のゲート端子にゲートオンまたはゲートオフのゲート信号を出力する。
SC端子は、スイッチング素子Q3のゲート端子に接続される。制御回路14は、スイッチング素子Q3のゲート信号を生成する回路を有する。そして制御回路14は、SC端子からスイッチング素子Q3のゲート端子にゲートオンまたはゲートオフのゲート信号を出力する。
MULT端子は、分圧抵抗R1,R2の中点に接続される。分圧抵抗R1,R2は、コンデンサC1の両端子間に接続される。制御回路14は、MULT端子に入力される信号から力率改善回路12に入力される電流信号のエンベロープ波形を生成する回路を有する。
ZCD端子は、抵抗R3を介して第1の二次巻線e21の出力側に接続される。制御回路14は、ZCD端子に入力される信号から一次巻線e1を流れる電流、いわゆるインダクタ電流を検出する回路を有する。
VFB端子は、分圧抵抗R4,R5の中点に接続される。分圧抵抗R4,R5は、電解コンデンサC3の両端子間に接続される。制御回路14は、VFB端子に印加される電圧から力率改善回路12の出力電圧を検出する回路を有する。
VS端子はノードn1に接続され、VB端子はノードn2に接続される。ノードn1には、第2の二次巻線e22の入力側が接続される。またノードn1には、逆極性のダイオードD5を介してスイッチング素子Q2のソース端子が接続される。ノードn2には、逆極性のダイオードD4及びコンデンサC2の直列回路を介して第2の二次巻線e22の出力側が接続される。またノードn2には、逆極性のダイオードD3を介してVCC端子が接続される。さらに、ノードn1とノードn2との間にコンデンサC6が接続される。制御回路14は、VS端子に印加される電圧から、ノードn1の電位を検出する回路を有する。また制御回路14は、VB端子に印加される電圧から、ノードn2の電位を検出する回路を有する。
ノードn1の電位は、スイッチング素子Q2のソース端子側のノードn3の電位と等しい。そしてこの電位は、コンデンサC6の負極側電位となる。スイッチング素子Q2のソース端子は、インダクタL2とダイオードD2とを直列に介してアースに接続されている。したがって、スイッチング素子Q2がオフしておりかつ回生電流が生じていない状態では、ノードn3の電位はグランド電位でない状態、いわゆる浮遊状態(不定)にある。
ノードn2の電位は、コンデンサC6の正極側端子の電位と等しい。コンデンサC6は、ノードn1の電位を基準に、VCC端子から印加される回路動作電圧及び第2の二次巻線e22に励起される二次電圧によって充電される。ノードn2の電位は、コンデンサC6の充電度合いによって可変する。
CS端子は、抵抗R8を介してスイッチング素子Q1のソース端子に接続される。制御回路14は、CS端子に入力される信号からスイッチング素子Q1を流れる電流、いわゆるスイッチング電流を検出する回路を有する。
OCP端子は、抵抗R9を介して、降圧回路13におけるコンデンサC4の負極側端子に接続される。制御回路14は、OCP端子に入力される信号から光源ユニット20に流れ込む電流、いわゆる負荷電流を検出する回路を有する。
ABN端子は、分圧抵抗R10,R11の中点に接続される。分圧抵抗R10,R11は、降圧回路13におけるコンデンサC4の正極側端子と制御回路14のGND端子との間に接続される。さらに、正極側端子に接続される一方の抵抗R10に対して並列に、コンデンサC7と抵抗R12との直列回路(微分回路)が接続される。制御回路14は、ABN端子に入力される信号から降圧回路13に生じた電圧の変化量を検出する回路を有する。
しかして制御回路14は、定常時、力率改善回路12に対しては、電流臨界制御によりスイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。すなわち制御回路14は、スイッチング素子Q1がオフしている状態では、ZCD端子を介して検出されるインダクタ電流がゼロになる毎に、GD端子からゲートオン信号を出力する。このゲートオン信号により、スイッチング素子Q1はオン(導通状態)になる。スイッチング素子Q1がオンしている状態では、制御回路14は、インダクタ電流のピーク波形が、MULT端子を介して検出されるエンベロープ波形を追従するタイミングで、GD端子からゲートオフ信号を出力する。このゲートオフ信号により、スイッチング素子Q1はオフ(開放状態)になる。
制御回路14は、定常時、降圧回路13に対しては、OCP端子を介して検出される負荷電流が、所定の目標値となるようにフィードバックをかけてスイッチング素子Q2のスイッチング動作を制御する。すなわち制御回路14は、HO端子から所定のタイミングでゲートオン信号またはゲートオフ信号を交互に出力する。このとき制御回路14は、VS端子を介して検出されるノードn1の電位を基準に、ゲートオン信号とゲートオフ信号の信号レベルを決定する。かくして降圧回路13においては、ブートストラップ動作によってスイッチング素子Q2がスイッチングを行う。
この他、制御回路14は、ABN端子を介して検出される電圧の変化量が所定レベルを超えた場合、スイッチング素子Q2のスイッチング動作を停止させる保護回路を有する。例えば、点灯中の光源ユニット20が取り外された場合、瞬間的に電圧が変化する。この急峻な電圧変化に対して、制御回路14は、スイッチング素子Q2のスイッチング動作を停止させるので、急峻な電圧変化により回路部品が破壊されるのを防止することができる。
図2は、制御回路14の主要な動作シーケンスを示す流れ図である。以下、図1及び図2を用いて、電源装置10及びこの電源装置10を備えた照明装置1の作用について説明する。
商用交流電源30が投入される前、電源装置10では、各スイッチング素子Q1,Q2,Q3はいずれもオフ状態である。商用交流電源30が投入されると、電源装置10では、商用交流電源30の交流電圧例えばAC100ボルトが整流回路11で全波整流され、全波整流電圧に変換される。この全波整流電圧は、コンデンサC1の両端子間に印加され、力率改善回路12への入力電圧となる。この入力電圧は、制御回路14のVDC端子に印加される。VDC端子に入力電圧が印加されると、制御回路14の内部で回路動作電圧が生成され、VCC端子から各回路に回路動作電圧が出力される。回路動作電圧が出力されると、制御回路14は、図2に示す手順の動作を開始する。
先ず制御回路14は、SC端子から始動回路15のスイッチング素子Q3に対してゲートオン信号を出力する(ステップS1)。この信号出力により、スイッチング素子Q3がオンする。
スイッチング素子Q3がオンすると、ノードn1の電位がグランド電位となる。このため、コンデンサC6は、VCC端子から出力される回路動作電圧によって充電される。
次に制御回路14は、力率改善回路12におけるスイッチング素子Q1のスイッチング動作を開始させる(ステップS2)。すなわち制御回路14は、GD端子から力率改善回路12のスイッチング素子Q1に対してゲートオン信号を出力する。この信号出力により、スイッチング素子Q1がオンし、力率改善回路12が起動する。力率改善回路12が起動したならば、制御回路14は、前述した電流臨界制御によりスイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。
スイッチング素子Q1がスイッチング動作を開始すると、力率改善回路12からの出力電圧は徐々に上昇する。また、スイッチング素子Q1がオンである場合にトランスTの一次巻線e1に電流が生じることで、第1及び第2の二次巻線e21,e22に電圧が誘起される。そして第2の二次巻線e22に誘起された電圧が、コンデンサC2及びダイオードD4で整流された上でコンデンサC6へと印加されることで、コンデンサC6がさらに充電される。
ここで、図2では省略するが、制御回路14は、VFB端子に印加される電圧、つまりは力率改善回路12からの出力電圧を監視している。そしてこの出力電圧が、目標電圧よりも大きく設定された保護閾値電圧未満の場合、制御回路14は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を継続させる。これに対し、出力電圧が保護閾値電圧を超えた場合には、制御回路14は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を停止させる。
スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止すると、トランスTの一次巻線e1に電流が流れないため、第2の二次巻線e22に誘起された電圧でのコンデンサC6の充電は行われなくなる。しかしながらコンデンサC6は、前述したようにVCC端子から出力される回路動作電圧では充電されている。
なお、力率改善回路12からの出力電圧が保護閾値電圧を超えた場合、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止するため、力率改善回路12からの出力電圧は低下する。そして、出力電圧が保護閾値電圧よりも低い再開閾値電圧以下になると、制御回路14は、電流臨界制御によるスイッチング素子Q1のスイッチング制御を再開する。
因みに、保護閾値と再開閾値との電圧値は、再開閾値が保護閾値以下であれば任意である。電源装置10または照明装置1を設計する段階で各閾値の電圧値が制御回路14に設定される。
次に制御回路14は、降圧回路13におけるスイッチング素子Q2のスイッチング動作を開始させる(ステップS3)。すなわち制御回路14は、HO端子から降圧回路13のスイッチング素子Q2に対してゲートオン信号を出力する。スイッチング素子Q2に対してゲートオン信号を出力する前、降圧回路13は動作を停止しているから、スイッチング素子Q2はオフ状態であり、回生電流も生じていない。このため、スイッチング素子Q3がオフ状態にあるならば、スイッチング素子Q2のソース電位、すなわちVS端子の電位は不定となっている。しかしながら、ステップS1の処理でスイッチング素子Q3がオンしているため、スイッチング素子Q2のソース電位はグランド電位まで降下している。したがって、グランド電位に対して既定の電位差を持つ電位をゲートに生じさせれば、スイッチング素子Q2をオンできる。
この既定の電位差を持つ電位は、VCC端子から出力される回路動作電圧であれば十分である。そして、この時点では、力率改善回路12が動作しているか否かに拘わらず、コンデンサC6は、少なくとも回路動作電圧で充電されている。そこで制御回路14は、BS端子の電位とVB端子との電位を基準にするゲートオン、オフ信号を生成し、スイッチング素子Q2のゲート端子に印加する。これにより、スイッチング素子Q2は起動する。
スイッチング素子Q2が起動すると、制御回路14は、SC端子から始動回路15のスイッチング素子Q3に対してゲートオフ信号を出力する(ステップS4)。この信号出力により、スイッチング素子Q3がオフする。
その後、制御回路14は、定電流制御を行う(ステップS5)。すなわち制御回路14は、OCP端子に入力される負荷電流が目標の定電流となるように、スイッチング素子Q2に対するゲート信号の周波数及びデューティ比を調整する。
このとき、降圧回路13を動作させるための電力は、ブートストラップ方式によって得られる。つまり、スイッチング素子Q2がオン、オフを繰り返す中でスイッチング素子Q2がオフとなると、コイルL1の回生電流が、コンデンサC4、抵抗器R7、ダイオードD2及びコイルL2を介して流れる。これにより、スイッチング素子Q2のソース電位、、つまりはVS端子の電位がグランド電位付近まで低下する。一方でVB端子とVS端子との間の電圧は、スイッチング素子Q1がオフであるならば、Vcc端子から出力される回路動作電圧となる。またスイッチング素子Q1がオンであるならば、VB端子とVS端子との間の電圧は、回路動作電圧に、第2の二次巻線e2からコンデンサC2及びダイオードD4を介して供給される電圧を足し合わせた電圧となる。このため、VB端子の電位がVS端子の電位よりも大きくなり、コンデンサC6は充電される。そしてこの充電により、VB端子とVS端子との間の電圧は、スイッチング素子Q2をスイッチング動作させるのに十分な電圧となる。制御回路14は、VB端子とVS端子との間の電圧を用いてゲートオン、オフ信号を生成することにより、スイッチング素子Q2のスイッチング動作を制御する。
以上説明したように、本実施形態の電源装置10は、降圧回路13におけるスイッチング素子Q2の出力端子からグランドへと電流が流れるのを阻止するように、スイッチング素子Q2の出力端子に接続されたダイオードに対して並列に、スイッチ手段としてのスイッチング素子Q3を接続してなる。そして制御回路14が、スイッチング素子Q2のスイッチング制御を開始する前にスイッチング素子Q3を導通状態にし、スイッチング素子Q2のスイッチング制御を開始したならばスイッチング素子Q3を開放状態にするようにした。したがって、スイッチング素子Q2のスイッチング制御を開始する前にスイッチング素子Q2のソース電位がグランド電位のレベルまで下降するので、たとえ力率改善回路12からの出力電圧が保護閾値電圧を超えてスイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止しても、スイッチング素子Q2を安定に始動することができる。
スイッチング素子Q2を始動できれば、以後、降圧回路13では、ブートストラップ動作により降圧チョッパの動作が継続される。一方、力率改善回路12においても、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止したことにより、出力電圧が低下する。そして出力電圧が再開閾値電圧以下になると、力率改善回路12に対しては電流臨界制御によるスイッチング素子Q1のスイッチング制御が再開される。したがって電源装置10は、降圧チョッパの動作を確実に始動することができる。したがってこの電源装置10を照明装置1の動作電源として適用することで、照明装置1の信頼性を高めることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について、図3を用いて説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の電源装置10において、降圧回路13の構成の一部を変更する。図3は、第2の実施形態における降圧回路13の概略を示す回路図である。なお、図1に示す部位と共通する部分には同一符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
図1と図3とを比較すれば明らかなように、第2の実施形態では、ダイオードD2を、寄生ダイオードを有したスイッチ手段であるスイッチング素子Q4に置換する。具体的には、電界効果トランジスタ(FET)をスイッチング素子Q4として用いる。スイッチング素子Q4はNチャンネルのものであり、ドレイン端子をインダクタL2を介してスイッチング素子Q2のソース端子に接続し、ソース端子をグランド端子と抵抗R7との接続点に接続し、ゲート端子を制御回路14のHO端子に接続する。第1の実施形態において、スイッチング素子Q3とダイオードD5とで構成した始動回路15は省略する。
そして制御回路14は、第1の実施形態においてスイッチング素子Q3をオンしたステップS1のタイミングで、スイッチング素子Q4をオンする。また制御回路14は、第1の実施形態においてスイッチング素子Q3をオフしたステップS4のタイミングで、スイッチング素子Q4をオフする。
スイッチング素子Q4がオンすると、スイッチング素子Q4のドレイン・ソース間が導通するため、スイッチング素子Q2のソース電位がグランド電位となる。したがって、ステップS3のタイミングにて、スイッチング素子Q2を確実に起動することができる。一方、スイッチング素子Q4がオフしても、スイッチング素子Q4はソース端子からドレイン端子の方向に電流を通り寄生ダイオードを有しているので、スイッチング素子Q2がオフしたことで発生する回生電流は、インダクタL1、コンデンサC4、抵抗R7、スイッチング素子Q4の寄生ダイオード、インダクタL2を通じて流れる。したがって降圧回路13では、ブートストラップ動作により定電流制御が行われる。かくして、第1の実施形態よりも少ない素子で、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
[第3実施形態]
次に、第3の実施形態について、図4を用いて説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態の電源装置10において、降圧回路13の構成の一部を変更する。図4は、第3の実施形態における降圧回路13の概略を示す回路図である。なお、図1に示す部位と共通する部分には同一符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
図1と図4とを比較すれば明らかなように、第3の実施形態では、スイッチング素子Q2のゲート端子とソース端子との間に抵抗R13を接続する。また、この抵抗R13と並列に、抵抗R14とフォトボルカプラ131の受光側素子との直列回路を接続する。さらに、抵抗R14に対しては、ダイオードD6と抵抗R15との直列回路を並列に接続する。一方、フォトボルカプラ131の発光側素子は、制御回路14のHO端子とGND端子との間に接続する。フォトボルカプラ131は、発光側素子に発光LEDを、受光側素子にフォトダイオードアレイをそれぞれ用いたフォトカプラの一種である。
そして制御回路14は、第1の実施形態においてスイッチング素子Q2をオンするステップS3のタイミングで、HO端子からゲートオン信号を出力し、フォトボルカプラ131の発光側素子を発光させる。発光側素子が発光すると、フォトボルカプラ131の受光側素子がその光を受光する。受光側素子が光を受光すると、起電力が発生し、この起電力でスイッチング素子Q2がオンする。かくして、スイッチング素子Q2はスイッチング動作を開始する。その後、HO端子からゲートオン,オフ信号を出力する毎にスイッチング素子Q2がスイッチング動作を繰り返す。かくして、降圧回路13では、ブートストラップ動作によって定電流制御が行われる。
第3の実施形態では、第1の実施形態において制御回路14が実行するステップS1及びS4の処理を省略できるので、制御を簡略化できるメリットがある。
[第4実施形態]
次に、第4の実施形態について、図5を用いて説明する。
第4の実施形態は、第1の実施形態の電源装置10において、降圧回路13の構成の一部を変更する。図5は、第4の実施形態における降圧回路13の概略を示す回路図である。なお、図1に示す部位と共通する部分には同一符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
図1と図5とを比較すれば明らかなように、第4の実施形態では、スイッチング素子Q2のゲート端子とドレイン端子との間にドロッバ132を接続する。ドロッバ132は、npn型バイポーラトランジスタTrと抵抗R16とによって構成される。ドロッバ132は、トランジスタTrのコレクタをスイッチング素子Q2のドレイン端子に接続し、エミッタをスイッチング素子Q2のゲート端子に接続し、ベースを抵抗R16を介してコンデンサC4の正極側端子に接続している。かかる接続により、ドロッバ132は、トランジスタTrのコレクタ・エミッタ間のドロップ電圧を、スイッチング素子Q2のゲートオンに必要な電圧まで降下させる。
そして制御回路14は、第1の実施形態ではスイッチング素子Q2をオンするステップS3のタイミングで、図示しない制御信号をドロッバ132に与えて、ドロッバ132を動作させる。ドロッバが動作すると、スイッチング素子Q2のゲート端子にゲートオンに必要な電圧が印加されてスイッチング素子Q2がオンする。かくして、スイッチング素子Q2はスイッチング動作を開始する。スイッチング素子Q2がスイッチング動作を開始した後は、制御回路14は、ドロッバ132を動作させない。ドロッバ132を動作させなくても、降圧回路13では、ブートストラップ動作によって定電流制御が行われる。
第4の実施形態でも、第3の実施形態と同様に、制御回路14が実行するステップS1及びS4の処理を省略できるので、制御を簡略化できるメリットがある。
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
例えば第1の実施形態では、始動回路15を制御回路14の外部に形成した。他の実施形態としては、始動回路15を制御回路14の内部に形成してもよい。
スイッチ手段は、電界効果トランジスタに限定されるものではない。制御回路14からの信号により導通、非導通が切り換えられるものであればよい。
整流回路11、力率改善回路12及び降圧回路13の回路構成は、図1に示すものに限定されない。同様の機能を有する回路構成であればよい。また、降圧回路13に入力電圧を供給する回路は力率改善回路12に限定されるものではない。他の回路を介して入力電圧が印加される降圧回路13を備えた電源装置においても、第1乃至第4の実施形態の構成を適用することで、降圧チョッパの動作を確実に始動できる効果を奏する。
また前記実施形態では、保護回路は、出力電圧の変化量を用いて保護するものとしたが、変化量と併用して電圧値からも保護するようにしてもよい。また保護回路は、出力電圧を用いた保護回路でなく、出力電流を用いた保護回路であってもよい。図1において、制御回路14は、OCP端子を介して負荷電流を検出している。この負荷電流は、例えば抵抗R9が故障すると検知できなくなるため、制御回路14はより多くの負荷電流が流れるように、降圧回路13のスイッチング素子Q2をスイッチング動作させる。その結果、負荷電流が増加し過出力となって光源ユニット20が故障する場合がある。そこで、OCP端子を介して検出される負荷電流の値を、コンパレータにより所定の閾値と比較し、このしきい値を上回る時間が、所定の時定数で定められた時間よりも長くなった場合に、スイッチング素子Q2のスイッチング動作させる保護回路を設ける。この保護回路は、制御回路14の内部にあってもよいし、外部にあってもよい。
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]制御端子と出力端子との間の電位差により入力端子と出力端子との導通をオンまたはオフするスイッチング素子と、前記スイッチング素子の出力端子からグランドへと電流が流れるのを阻止するように、前記スイッチング素子の出力端子に接続されたダイオードとを備え、前記スイッチング素子のチョッピング動作により入力電圧を降圧する降圧チョッパ回路と;
前記ダイオードと並列に接続されるスイッチ手段と;
前記スイッチング素子のスイッチング制御を開始する前に前記スイッチ手段を導通状態にし、前記スイッチング素子のスイッチング制御を開始したならば前記スイッチ手段を開放状態にする制御回路と;
を具備する電源装置。
[C2]前記スイッチ手段を通って前記スイッチング素子の出力端子に流れる電流を阻止するように前記スイッチング素子の出力端子に接続されたダイオード;
をさらに具備するC1記載の電源装置。
[C3]制御端子と出力端子との間の電位差により入力端子と出力端子との導通をオンまたはオフするスイッチング素子を備え、前記スイッチング素子のチョッピング動作により入力電圧を降圧する降圧チョッパ回路と;
前記スイッチング素子の出力端子からグランドへと電流が流れるのを阻止するように寄生ダイオードを有して前記スイッチング素子の出力端子に接続されたスイッチ手段と;
前記スイッチング素子のスイッチング制御を開始する前に前記スイッチ手段を導通状態にし、前記スイッチング素子のスイッチング制御を開始したならば前記スイッチ手段を開放状態にする制御回路と;
を具備する電源装置。
[C4]C1乃至C3のうちいずれか1項に記載の電源装置と;
この電源装置の出力間に接続され、点灯制御される光源と、
を具備する照明装置。