JP6678917B2 - 洗浄方法 - Google Patents
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Description
前記洗浄剤は、粉末として炭酸カルシウム粉末を使用しているから、モルタル壁面など表面が微細な凹凸である洗浄対象物に対しても高い洗浄効果が得られる上、洗浄対象物を損傷させることがほとんどない。
前記洗浄剤が、前記増粘剤を0.1重量部〜1重量部含有することで、洗浄剤のチクソトロピー性が向上し、洗浄対象物に噴射された洗浄剤は、洗浄対象物の表面により安定に付着した状態で維持される。
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄剤の主成分は、水と、炭酸カルシウム粉末と、洗浄剤にチクソトロピー性を付与する増粘剤である。以下、洗浄剤の各成分及びその含有量について説明する。
洗浄剤における炭酸カルシウム粉末の含有量は、水100重量部に対して5重量部〜10重量部である。炭酸カルシウム粉末の含有量が水100重量部に対して5重量部未満の場合は、洗浄対象物に向かって、以下に詳述する高温の蒸気とともに洗浄剤を噴射しただけでは十分な洗浄効果が得られない可能性がある。一方、炭酸カルシウム粉末の含有量が10重量部を越えた場合、洗浄力は炭酸カルシウム粉末が10重量部の場合とほとんど変わらず、炭酸カルシウム粉末含有量の増加に伴う洗浄効果の向上は得難い。その上、表面が放射性物質によって汚染された洗浄対象物の除染に使用した場合、放射性汚染物として排出される炭酸カルシウム粉末の量が過大になるという問題がある。
洗浄剤における増粘剤の含有量は、水100重量部に対して0.05重量部〜1重量部である。
増粘剤の含有量が水100重量部に対して0.05重量部未満の場合は、洗浄装置においてポンプで洗浄剤を送液する際に、炭酸カルシウム粉末がポンプの内部で沈降する可能性がある。一方、炭酸カルシウム粉末の含有量が水100重量部に対して10重量部と高濃度の場合においても、増粘剤が水100重量部に対して1重量部配合されていれば、炭酸カルシウム粉末の沈降を抑えるには十分であるから、増粘剤を、水100重量部に対して1重量部を越えて配合する意味はないと考えられる。
このような増粘剤としては、例えばキサンタンガム、トラガント末、グアーガム、スピノガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびカルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
これらの増粘剤のうちでは、降伏値が高い点、剪断速度に対する粘度の変化を示す粘度曲線の傾きが急である点、換言すれば洗浄対象物に付着した状態においては流動性が低く、壁等に付着した場合においても流れ落ちることがないにも拘わらず、洗浄剤と蒸気とを洗浄対象物に噴射する洗浄装置における送液時には高い流動性を示す点、および天然物由来であり環境適合性が高い点、および洗浄剤を調製する際のpH調整が不要である点からキサンタンガムが最も好ましい。
洗浄剤の製造方法としては、例えば、水を撹拌しながら増粘剤を少量ずつ添加し、分散溶解した後、得られた増粘剤の水溶液に対し、炭酸カルシウム粉末を徐々に添加し、分散する方法、炭酸カルシウム粉末と増粘剤とを混合し、混合物を得た後、得られた混合物を、水に、水を撹拌しながら少量ずつ徐々に添加し、均一分散する方法等が挙げられる。
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄装置1は、蒸気(スチーム)を用いた装置であり、図1に示すように、噴射口10Aを有するノズル10と、ノズル10に高温の蒸気を供給するためのスチーマー11と、ノズル10における噴射口10Aの中央に開口する噴射管12と、を備えている。また、噴射管12に供給される洗浄剤を貯蔵する洗浄剤タンク13と、洗浄剤タンク13と噴射管12とを接続する接続管路14と、接続管路14に介装された加圧ポンプ15と、を備えている。
図2における符号16は、スチームクリーナーの先端スリーブであるストレートノズルを表す。図2に示すようにスチームクリーナーの先端スリーブ16先端部に、洗浄剤を供給する噴射管12と噴出口10Aとを一体的に備える噴射用のノズル10を嵌合して噴射装置として用いる。
ノズル10の先端スリーブ16と嵌合する部分の内周面に弾力性のあるテーパー筒状層、例えばポリウレタン層を形成することで、スチームクリーナーの先端スリーブ16であるストレートノズルと洗浄剤を噴射するノズル10とが密着する。
スチームクリーナーから負圧で吸引される高温の蒸気は、噴射口10Aに直交する側面に接続された噴射管12から供給される洗浄剤とノズル10内の空隙部にて混合され、高温の蒸気と洗浄剤とが洗浄対象物に噴射される。
本発明の洗浄方法は、水と、水100重量部に対して0.05重量部〜1重量部の、洗浄剤にチクソトロピー性を付与する増粘剤と、5重量部〜10重量部の炭酸カルシウム粉末と、を含有する洗浄剤を、高温の蒸気とともに、洗浄対象物に向かって噴射することを含む。
洗浄剤を高温の蒸気とともに洗浄対象物に向かって噴射すると、洗浄対象物表面に高温の蒸気と共に高温の洗浄剤が付着することになる。このとき、洗浄剤が高温であることで、洗浄対象物に付着した汚れが洗浄対象物表面から浮きやすくなり、その結果、高温の蒸気を用いない場合に比較して、汚れが除去し易くなるものと考えられる。
増粘剤は、洗浄剤にチクソトロピー性を付与するため、水100重量部に対して増粘剤を0.05重量部〜0.8重量部含有することで、洗浄剤の飛散が抑制され、洗浄剤が洗浄対象物表面に付着して留まるか、洗浄対象物表面上を流下する。通常の汚れ、例えば、家屋の外壁面に付着した土などの汚れを本発明の洗浄方法により洗浄する場合には、洗浄対象物の表面に付着した汚れを含む洗浄剤を回収するか、又は、洗浄対象物の下方にて汚れを含む洗浄剤を回収することもできるし、洗浄剤をそのまま廃棄することもできる。
以下、本実施形態における洗浄対象物表面に付着した洗浄剤の回収及び処理方法について説明する。
本発明の洗浄剤は増粘剤を含有するためチクソトロピー性を有する。本発明の洗浄方法において、洗浄対象物表面に洗浄剤を付着させ、洗浄剤を回収しようとする場合には、洗浄剤に含まれる増粘剤の種類、含有量等を調整することで、得られる洗浄剤が洗浄対象物に向かって蒸気とともに噴射された場合に飛散したり流下したりすることなく、洗浄対象物の表面に留まった状態とすることができる。したがって、洗浄対象物表面に付着した洗浄後の洗浄剤は、フローリング用の掃除機やスクイージーなどを用いて容易に回収できる。
まず、洗浄対象物表面の洗浄剤を回収し、回収した洗浄剤を水で希釈する。これによって洗浄剤中の増粘剤は水で希釈されて増粘性を失い、増粘剤の濃度が低下して洗浄剤中の炭酸カルシウム粉末が沈降する。洗浄剤を希釈する際に加える水の量は、洗浄剤の炭酸カルシウム粉末が沈降する程度に増粘剤の濃度が低下するだけの量とすることができる。水の量は、洗浄剤中の増粘剤の種類および量にもよるが、通常は、回収した洗浄剤に対して重量で2〜3倍程度である。
増粘剤としてキサンタンガムを用い、炭酸カルシウム粉末の量を水100重量部に対して5重量部とした場合、および10重量部とした場合について、キサンタンガムの配合量と炭酸カルシウム粉末の分散安定性との関係について調べた。
キサンタンガムの配合量は、水100重量部に対して0.05重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、および0.6重量部とした。なお、下記表1における炭酸カルシウム粉末、及びキサンタンガムの配合量は、それぞれ水100重量部に対する重量比で表した。
炭酸カルシウム粉末の分散安定性については、洗浄剤を調製後、3時間、及び24時間静置した後の炭酸カルシウム粉末の沈降の有無を目視で調べることにより評価した。
なお、キサンタンガムとしては、DSP五協フード&ケミカル株式会社製のエコーガム・ケルトロールF(商品名)を用い、炭酸カルシウム粉末としては、株式会社ニッチツ製NSK−100(商品名)を用いた。NSK−100は、最大粒径200μm、最小粒径1μmの炭酸カルシウム粉末の混合物であり、粒径の中央値は100μmである。結果を表1に示す。
○:洗浄液には沈殿物がなく、炭酸カルシウム粉末の分散安定性が良好である
△:洗浄液中に炭酸カルシウム粉末が分散しているが、容器の底部に目視で確認できる沈殿がある
×炭酸カルシウム粉末は殆ど沈殿している。
また、本発明の洗浄方法では、蒸気と洗浄剤とを洗浄対象物表面に噴射する際に、洗浄剤を噴射管へポンプで圧送したり、洗浄剤タンク内を撹拌したりするなどの手段により、洗浄剤中における炭酸カルシウム粉末の分散性を向上させることができる。このため、実施例1におけるいずれの洗浄剤も、本発明の洗浄方法に好適に用いることができる。
実施例1の結果に基づき、水100重量部に対し炭酸カルシウム粉末を5重量部、キサンタンガムを0.1重量部配合して洗浄剤を調製した。次いで、この洗浄剤を本発明の洗浄装置によって蒸気とともに浴室天井に向けて噴射した。その結果、浴室天井に洗浄剤の大部分が付着した。付着した洗浄剤を雑巾で拭き取って除去した。
結果を図3に示す。図3に示すように、浴室天井には黒っぽい汚れが付着していたが、本発明の洗浄装置によって洗浄した領域は、洗浄剤を拭き取ったことで、洗浄剤と共に、目視にて確認できる汚れは、完全除去されることが確認された。
実施例1の結果に基づき、水100重量部に対し炭酸カルシウム粉末を5重量部、キサンタンガムを0.6重量部配合して洗浄剤を調製した。
次いで、この洗浄剤を本発明の洗浄装置によって110℃の蒸気とともに垂直なモルタル壁の表面に噴射した。噴射後、壁の表面を観察したところ、噴射された洗浄剤の大部分は壁の表面に付着し、飛散、或は、壁面表面を流下したものは少ないことが確認された。
壁面に付着した洗浄剤をシリコーンゴム製のスクイージーを用いて回収した。スクイージーで洗浄剤を回収した後の壁表面は、洗浄剤と共に汚れが除去され、目視による汚れの残存がないことが確認された。
実施例2〜3の結果より、洗浄対象物に付着した洗浄剤を、雑巾、スクイージー等により除去することで、汚れは洗浄剤と共に除去され、本発明の洗浄方法によれれば、洗浄対象物の汚れが簡易な方法で効率よく除されたことが分かる。
10、18 ノズル
10A 噴射口
11 スチーマー
12 噴射管
13、13A 洗浄剤タンク
14 接続管路
15 加圧ポンプ
16 スチームクリーナーの先端スリーブ
20 ノズル固定用部材
Claims (2)
- 水と、水100重量部に対して0.4重量部〜1重量部の、洗浄剤にチクソトロピー性を付与する増粘剤であるキサンタンガムと、水100重量部に対して5重量部〜10重量部の、平均粒径が1μm〜100μmの炭酸カルシウム粉末と、を含有する洗浄剤を、高温の蒸気とともに洗浄対象物に向かって噴射する洗浄方法。
- 前記洗浄対象物は、表面が放射性物質によって汚染された洗浄対象物であり、洗浄対象物の表面に向かって、前記洗浄剤を高温の蒸気とともに噴射して、前記洗浄対象物の表面の放射性物質を除去する、請求項1に記載の洗浄方法。
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