以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
(実施の形態1)
図1〜図5を参照して、本発明の一実施の形態における第1手袋1の構成について説明する。図1および図2に示されるように、本実施の形態における第1手袋1は、打撃具200を把持する装着者の利き手に装着される手袋である。本実施の形態における第1手袋1としてゴルフ用手袋が例示されている。また、打撃具200としてゴルフクラブが例示されている。なお、図2に示される第2手袋2は、利き手に第1手袋1を装着した装着者の反対の手に装着される手袋である。第2手袋2については、後述する実施の形態2において説明する。
第1手袋1は、装着者の一方の手(利き手)を受け入れ可能に構成されている。この一方の手は、ゴルフクラブのグリップ201のヘッド側に配置される。装着者は、この一方の手に第1手袋1をはめた状態でゴルフクラブのグリップ201を把持する。この第1手袋1は、右打者用の手袋であって、右打者の右手に装着される右手用の手袋である。なお、本実施の形態における第1手袋1は右打者用の手袋に限定されず、左打者用の手袋であってもよい。左打者用の手袋は、右打者用の手袋とは鏡面対象となるように構成されている。また、本実施の形態における第1手袋1は、ゴルフ用手袋に限定されず、野球用手袋などのスポーツ用手袋であってもよい。
第1手袋1は、第1親指部10Aと、第1人差し指部10Bと、第1中指部10Cと、第1薬指部10Dと、第1小指部10Eと、第1手掌部12と、第1滑り止め部材20とを主に備えている。第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eは、装着者の手の親指、人差し指、中指、薬指および小指をそれぞれ受け入れ可能に構成されている。
第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eは、装着者の手の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの全体を収容するように構成されている。第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eは互いに独立している。第1手掌部12は、装着者の手の手掌を受け入れ可能に構成されている。第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10D、第1小指部10Eおよび第1手掌部12の材料は、たとえば人工皮革または合成皮革である。
第1滑り止め部材20は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eならびに第1手掌部12の少なくともいずれかの表面に配置されている。図1および図3に示されるように、第1滑り止め部材20は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eならびに第1手掌部12の少なくともいずれかの表面から、表面に対して直交方向に突出するように構成されている。図3においては、第1滑り止め部材20の一例として、人差し指滑り止め部22が示されている。図3および図4に示されるように、第1滑り止め部材20の幅方向の断面は、矩形状に構成されている。また矩形状の角部が面取りされた断面形状や、矩形の上辺が凸アール状に盛り上がった断面形状でもよい。
第1滑り止め部材20は、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、薬指滑り止め部24、および手掌滑り止め部25を含む。親指滑り止め部21は、第1親指部10Aの腹側の表面に配置されている。人差し指滑り止め部22は、第1人差し指部10Bの腹側の表面に配置されている。中指滑り止め部23は、第1中指部10Cの腹側の表面に配置されている。薬指滑り止め部24は、第1薬指部10Dの腹側の表面に配置されている。手掌滑り止め部25は、第1手掌部12の表面に配置されている。平面視において、手掌滑り止め部25は、第1手掌部12の中央よりも、第1人差し指部10B、第1中指部10C、および第1薬指部10D側に配置されている。なお、各指部の腹側の表面とは、装着者が握ったときに各指部において凹状となる面であり、打撃具に接触可能な面を意味する。第1手掌部12の表面とは、装着者が握ったときに第1手掌部12において凹状となる面であり、打撃具に接触可能な面を意味する。
親指滑り止め部21の延在方向は、第1親指部10Aの中心線と交差する方向に沿っている。親指滑り止め部21の延在方向は、第1親指部10Aの幅方向に沿っている。親指滑り止め部21の延在方向とは、親指滑り止め部21の平面形状の長手方向に沿った方向を意味する。第1親指部10Aの中心線とは、第1親指部10Aの図心を通り、装着者の親指の付け根から先端に向かう方向に延びる線を意味する。第1手袋1の第1滑り止め部材20は、4つ以上の親指滑り止め部21を含んでいてもよい。この場合、各親指滑り止め部21は、装着者に装着されたときに装着者の親指の第1関節に相当する位置を跨って、第1親指部10Aの上記中心線に沿った方向に互いに間隔を隔てて配置されている。なお、本実施の形態では、複数の親指滑り止め部21が設けられているが、親指滑り止め部21は1つであってもよい。
人差し指滑り止め部22の延在方向は、第1人差し指部10Bの中心線に沿っている。人差し指滑り止め部22の延在方向とは、人差し指滑り止め部22の平面形状の長手方向に沿った方向を意味する。第1人差し指部10Bの中心線とは、第1人差し指部10Bの図心を通り、装着者の人差し指の付け根から先端に向かう方向に延びる線を意味する。人差し指滑り止め部22は、装着者に装着されたときに装着者の人差し指の付け根(第3関節)に相当する位置から第2関節に相当する位置を跨って第1関節に相当する位置まで、延在している。
このように、第1手袋1では、親指滑り止め部21の延在方向が第1親指部10Aの中心線に対して成す角度が、人差し指滑り止め部22の延在方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度と異なる。
中指滑り止め部23の延在方向は、第1中指部10Cの中心線に沿っている。中指滑り止め部23の延在方向とは、中指滑り止め部23の平面形状の長手方向に沿った方向を意味する。第1中指部10Cの中心線とは、第1中指部10Cの図心を通り、装着者の中指の付け根から先端に向かう方向に延びる線を意味する。中指滑り止め部23は、装着者に装着されたときに装着者の中指の付け根(第3関節)に相当する位置から第2関節に相当する位置を跨って第1関節に相当する位置まで、延在している。
薬指滑り止め部24の延在方向は、第1薬指部10Dの中心線に沿っている。薬の延在方向とは、薬の平面形状の長手方向に沿った方向を意味する。第1薬指部10Dの中心線とは、第1薬指部10Dの図心を通り、装着者の中指の付け根から先端に向かう方向に延びる線を意味する。薬指滑り止め部24は、装着者に装着されたときに装着者の薬指の付け根(第3関節)に相当する位置から第2関節に相当する位置を跨って第1関節に相当する位置まで、延在している。
手掌滑り止め部25の延在方向は、第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向に沿って第1人差し指部10B側から第1小指部10E側に向けて延在している。第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向は、装着者が手袋を装着したときの第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向を意味する。具体的には、第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向は、装着者が手袋を装着し、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eを閉じたときの第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向を意味する。
図2および図3に示されるように、第1滑り止め部材20は、装着者が打撃具を握ってスイングしたときに第1親指部10A,第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1手掌部12の表面に作用するせん断力の方向に対して交差する方向に延在している。つまり、第1滑り止め部材20は、せん断力の方向を横切る方向に配置されている。このせん断力は、スイングしたときに遠心力によってグリップに作用する力により表面の面内に沿って作用する力である。図2では、このせん断力の方向が矢印で示されている。このせん断力の方向は、各指部および第1手掌部12の全体におけるせん断力の方向を示している。この全体のせん断力は右回りとなる。図2に示されるように、第1親指部10Aの表面に作用するせん断力の方向が第1親指部10Aの中心線に対して成す角度は、第1人差し指部10Bの表面に作用するせん断力の方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度と異なる。なお、ここでは右打者の左手用の手袋に作用するせん断力の方向を示している。左打者の右手用の手袋であれば全体のせん断力の方向は逆向き、つまり左回りとなる。
なお、平面視において、人差し指滑り止め部22の延在方向は、第1人差し指部10Bの中心線に対し交差していてもよい。平面視において、人差し指滑り止め部22の延在方向は、第1人差し指部10Bの中心線に対し、第1親指部10A側に傾けられていてもよい。このときの人差し指滑り止め部22の延在方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度は、90度未満である。
同様に、中指滑り止め部23の延在方向は、第1中指部10Cの中心線に対し交差していてもよい。薬指滑り止め部24の延在方向は、第1薬指部10Dの中心線に対し交差していてもよい。平面視において、中指滑り止め部23および薬指滑り止め部24の各延在方向は、第1中指部10Cおよび第1薬指部10Dの各中心線に対し、第1親指部10A側に傾けられていてもよい。
また、人差し指滑り止め部22の延在方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度は、中指滑り止め部23の延在方向が第1中指部10Cの中心線に対して成す角度、および薬指滑り止め部24の延在方向が第1薬指部10Dの中心線に対して成す角度と異なっていてもよい。
図2および図5を参照して、第1滑り止め部材20の配置について、装着者の右手101の骨との対応を用いて説明する。図5では、装着者の右手101を手掌101A側から見た場合の右手101の外観および骨格が示されている。
図5に示されるように、人差し指101B2、中指101B3、薬指101B4、小指101B5のそれぞれにおいては、指先側から順に末節骨111、中節骨112、基節骨113、中手骨114が配列されている。末節骨111と中節骨112とは互いに遠位指節間関節121を介して接続されている。中節骨112と基節骨113とは近位指節間関節122を介して接続されている。基節骨113と中手骨114とは中手指節関節123を介して接続されている。中手骨114の基節骨113側の端部には膨出部114Aが配置されている。親指101B1においては、指先側から順に末節骨111、基節骨113、中手骨114が配列されている。親指101B1においては、末節骨111と基節骨113とは第1指節間関節124を介して接続されており、基節骨113と中手骨114とは中手指節関節123を介して接続されている。
親指滑り止め部21は親指101B1における末節骨111から基節骨113に跨って配置されている。好ましくは、末節骨111の先端から基節骨113の根元部に跨って配置されている。人差し指滑り止め部22は人差し指101B2における中節骨112から基節骨113に跨って配置されている。好ましくは、中節骨112の先端から基節骨113の根元部に跨って配置されている。中指滑り止め部23は中指101B3における中節骨112から基節骨113に跨って配置されている。好ましくは、中節骨112の根元部から基節骨113の根元部に跨って配置されている。薬指滑り止め部24は薬指101B4における中節骨112から基節骨113に跨って配置されている。好ましくは、中節骨112の根元部から基節骨113の根元部に跨って配置されている。
手掌滑り止め部25は手掌101A側において人差し指101B2の中手骨114の膨出部114A、中指101B3の中手骨114の膨出部114A、および薬指101B4の中手骨114の膨出部114Aに跨って配置されている。
なお、本実施の形態に係る第1手袋1の第1滑り止め部材20は、第1小指部10Eの腹側の表面、および第1手掌部12において装着者の子指の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分の表面には配置されていない。
第1滑り止め部材20は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eならびに第1手掌部12の少なくともいずれかの表面の面内方向において波形に構成されている。つまり、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、薬指滑り止め部24は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eのそれぞれの腹側の表面の面内において波形に構成されている。手掌滑り止め部25は、第1手掌部12の表面の面内方向において波形に構成されている。波の形状は正弦波や三角波とすることができる。
平面視において、手掌滑り止め部25の最大幅は、例えば親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、および薬指滑り止め部24の各最大幅以上であり、好ましくは各最大幅超えである。人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、および薬指滑り止め部24の各最大幅は、例えば親指滑り止め部21の最大幅以上であり、好ましくは親指滑り止め部21の最大幅超えである。なお、第1滑り止め部材20の各最大幅は、第1滑り止め部材20の延在方向に垂直な方向の長さを意味する。平面形状が波形状の場合、平面視における手掌滑り止め部25の最大幅は手掌滑り止め部25の振幅に等しい。
第1滑り止め部材20は、延在方向において太さが変化するように構成されている。第1滑り止め部材20の延在方向において、第1滑り止め部材20の中央部の太さは第1滑り止め部材20の両端部の太さよりも太くなっている。第1滑り止め部材20の延在方向の太さとは、延在方向に垂直であって各表面に沿った方向の第1滑り止め部材20の長さであり、図3においてWで示される。
第1滑り止め部材20は粘弾性体により構成されている。粘弾性体の材料は、たとえばシリコンなどである。粘弾性体の硬度は、たとえばJISA30程度である。第1滑り止め部材20の高さは、たとえば1.0mm以下であり、0.4mm以上0.6mm以下が好ましい。また高さは各部位毎に高さを変えて摩擦力を調整することができる。第1滑り止め部材20が配置された領域の全体の領域に対する占有割合は、たとえば5%以上50%以下である。
上記では、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eが、装着者の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの全体を収容するように構成されている場合について説明した。しかしながら、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eは、装着者の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの少なくとも根元部を収容していればよい。
次に、本実施の形態における第1手袋1の作用効果について説明する。
本発明者らは、利き手に第1手袋1を装着した装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに、第1親指部10Aおよび第1人差し指部10Bの表面には第1手袋1の他の部分よりも強いせん断応力が作用すること、および第1親指部10Aの表面に作用するせん断力の方向が第1親指部10Aの中心線に対して成す角度が、第1人差し指部10Bの表面に作用するせん断力の方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度と異なることを確認した(詳細は後述する)。
本実施の形態の第1手袋1では、親指滑り止め部21の延在方向が第1親指部10Aの中心線に対して成す角度が、人差し指滑り止め部22の延在方向が第1人差し指部10Bの中心線に対して成す角度と異なる。このため、親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22の各延在方向を、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1親指部10Aおよび第1人差し指部10Bの各表面に作用するせん断力に対し交差するように配置することができる。これにより、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20を備えていない手袋と比べて、大きな滑り止め効果を得ることができる。
上記第1手袋1では、親指滑り止め部21の延在方向が第1親指部10Aの幅方向に沿っており、人差し指滑り止め部22の延在方向が第1人差し指部10Bの中心線に沿っている。このため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1親指部10Aおよび第1人差し指部10Bの各表面に作用するせん断力に対し垂直に親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22をそれぞれ配置することができる。これにより、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20を備えていない手袋と比べて、より大きな滑り止め効果を得ることができる。
さらに、本発明者らは、上記スイング時に、第1親指部10Aおよび第1人差し指部10Bに次いで、第1手掌部12において装着者に装着されたときに装着者の人差し指の中手骨の膨出部と重なる部分の表面に、強いせん断力が作用すること、上記スイング時に第1手掌部12において装着者に装着されたときに装着者の人差し指の中手骨の膨出部と重なる部分の表面に作用するせん断力の方向は第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向と交差する方向に沿っていること、利き手に装着される第1手袋1の表面に作用するせん断力は第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向において第1人差し指部10Bから第1小指部10E側に向かうにつれて弱くなること、第1中指部10Cおよび第1薬指部10Dの各表面に作用するせん断力の方向は第1中指部10Cおよび第1薬指部10Dの各中心線と交差する方向に沿っていることを確認した。
上記第1手袋1では、第1滑り止め部材20は、第1手掌部12の表面に配置された手掌滑り止め部25をさらに含む。手掌滑り止め部25は、装着者に装着されたときに装着者の人差し指の中手骨の膨出部と重なるように配置されている。手掌滑り止め部25は、第1人差し指部10Bと第1中指部10Cとが並ぶ方向に沿って第1人差し指部10B側から第1小指部10E側に向けて延在している。そのため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1手掌部12において人差し指の中手骨の膨出部と重なる部分に作用するせん断力に対し垂直に手掌滑り止め部25を配置することができる。これにより、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20を備えていない手袋と比べて、より大きな滑り止め効果を得ることができる。
上記第1手袋1では、第1滑り止め部材20は、第1中指部10Cの腹側の表面に配置された中指滑り止め部23をさらに含む。中指滑り止め部23は、第1中指部10Cの付け根から先端に向けて延在している。手掌滑り止め部25は、装着者に装着されたときに装着者の人差し指の中手骨の膨出部および中指の中手骨の膨出部と重なるように配置されている。そのため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1中指部10Cの表面に作用するせん断力に対し垂直に中指滑り止め部23を配置することができる。さらに、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1手掌部12において人差し指および中指の各中手骨の膨出部と重なる部分に作用するせん断力に対し垂直に手掌滑り止め部25を配置することができる。これにより、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20を備えていない手袋と比べて、より大きな滑り止め効果を得ることができる。
上記第1手袋1では、第1滑り止め部材20は、第1薬指部10Dの腹側の表面に配置された薬指滑り止め部24をさらに含む。薬指滑り止め部24は、第1薬指部10Dの付け根から先端に向けて延在している。手掌滑り止め部25は、装着者に装着されたときに装着者の人差し指の中手骨の膨出部、中指の中手骨の膨出部、および薬指の中手骨の膨出部と重なるように配置されている。そのため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1薬指部10Dの表面に作用するせん断力に対し垂直に薬指滑り止め部24を配置することができる。さらに、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1手掌部12において人差し指、中指および薬指の各中手骨の膨出部と重なる部分に作用するせん断力に対し垂直に手掌滑り止め部25を配置することができる。これにより、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20を備えていない手袋と比べて、より大きな滑り止め効果を得ることができる。
さらに、第1手袋1では、第1滑り止め部材20は、第1小指部10Eの腹側の表面、および第1手掌部12において装着者の子指の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分の表面には配置されていない。そのため、第1手袋1は、ゴルフ用途に好適である。
具体的には、ゴルフのグリップは他のスポーツとは異なり、一般的にオーバーラッピンググリップやインターロッキンググリップと言われるように、グリップ時に利き手の小指を利き手と反対の手の人差し指の上に重ねたり、指きりげんまをするように絡めたりするのが一般的であり、ほとんどのゴルファーがどちらかの方法を選択している。そのため、例えば滑り止め部材が第1小指部10Eの腹側の表面および手掌部において装着者の子指の中手骨の膨出部と重なる部分の表面に配置されている手袋を装着してゴルフクラブを握った場合、装着者は違和感を覚えることがある。
これに対し、上記第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20が装着者の利き手とは反対の手に装着される後述する第2手袋2と重ならないように配置されている。そのため、第1手袋1によれば、利き手に装着される手袋であってその全面に渡って滑り止め部材が配置されている手袋と比べて、第1滑り止め部材20によって装着者が感じる違和感を小さくすることができる。
上記第1手袋1では、第1滑り止め部材20は、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに各指部および第1手掌部12の表面に作用するせん断力の方向に対して交差する方向に延在している。このため、第1滑り止め部材20は、上記スイング時にグリップ201との間に大きな摩擦力を生じさせることができる。
(実施の形態2)
次に、図6を参照して、実施の形態2に係る一対の手袋3について説明する。一対の手袋3は、実施の形態1に係る第1手袋1と、第1手袋1とは反対の手に装着される第2手袋2とを備えている。つまり、第2手袋2は、打撃具200を把持する装着者の利き手とは反対の手に装着される手袋である。本実施の形態では第2手袋2としてゴルフ用手袋が例示されている。また、打撃具200としてゴルフクラブが例示されている。
第2手袋2は、装着者の利き手とは反対の手を受け入れ可能に構成されている。この一方の手は、ゴルフクラブのグリップ201の根元側に位置する。装着者は、利き手に上記第1手袋1を装着し利き手とは反対の手に第2手袋2を装着した状態で、ゴルフクラブのグリップ201を把持する。図6に示される第2手袋2は、右打者用の手袋であって、右打者の左手に装着される左手用の手袋である。なお、本実施の形態における第2手袋2は右打者用の手袋に限定されず、左打者用の手袋であってもよい。左打者用の手袋は、右打者用の手袋とは鏡面対象となるように構成されている。また、本実施の形態における第2手袋2は、ゴルフ用手袋に限定されず、野球用手袋などのスポーツ用手袋であってもよい。
第2手袋2は、第2親指部11Aと、第2人差し指部11Bと、第2中指部11Cと、第2薬指部11Dと、第2小指部11Eと、第2手掌部13と、第2滑り止め部材30とを主に備えている。第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eは、装着者の手の親指、人差し指、中指、薬指および小指をそれぞれ受け入れ可能に構成されている。
第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eは、装着者の手の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの全体を収容するように構成されている。第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eは互いに独立している。第2手掌部13は、装着者の手の手掌を受け入れ可能に構成されている。第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11D、第2小指部11Eおよび第2手掌部13の材料は、たとえば人工皮革または合成皮革である。
第2滑り止め部材30は、第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eならびに第2手掌部13の少なくともいずれかの表面に配置されている。第2滑り止め部材30は、第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eならびに第2手掌部13の少なくともいずれかの表面から、表面に対して直交方向に突出するように構成されている。
第2滑り止め部材30は、第2手掌部13の表面に配置された第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dを含んでいる。なお、第2手掌部13の第2滑り止め部材30は、4つ以上の滑り止め部を含んでいてもよい。
図2および図6に示されるように、第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bのそれぞれは、装着者が打撃具を握ったときに第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eと対向する領域に配置されている。つまり、第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bのそれぞれは、装着者が打撃具を握ったときに第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eによって覆われる。第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bのそれぞれは、装着者が打撃具を握ったときに第2人差し指部11Bおよび第2中指部11Cと対向する領域に配置されていない。つまり、第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bのそれぞれは、装着者が打撃具を握ったときに第2人差し指部11Bおよび第2中指部11Cによって覆われない。
第1滑り止め部31aは、第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向に沿って第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて延在している。第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向は、装着者が手袋を装着したときの第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向を意味する。具体的には、第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向は、装着者が手袋を装着し、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eを閉じたときの第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向を意味する。第1滑り止め部31aは、第2手掌部13に配置された第2滑り止め部材30のうちで最も第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eの近くに配置されている。
第2滑り止め部31bは、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eのそれぞれから第1滑り止め部31aよりも離れて配置されている。具体的には、第2滑り止め部31bは、装着者が第2手袋2を装着して手を開いたとき、すなわち第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eを伸ばしたときに、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eのそれぞれから第1滑り止め部31aよりも離れて配置されている。
第2滑り止め部31bは、第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて第1滑り止め部31aとの間隔が広がるように延在している部分を含んでいる。つまり、第1滑り止め部31aと第2滑り止め部31bとは、第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて互いに間隔が広がるように配置されている。第2薬指部11D側の端部における第1滑り止め部31aと第2滑り止め部31bとの間隔よりも第2小指部11E側の端部における第1滑り止め部31aと第2滑り止め部31bとの間隔が広がっている。第2薬指部11D側の端部から第2小指部11E側の端部に至るまでの途中で第1滑り止め部31aと第2滑り止め部31bとの間隔が部分的に狭くなっていても第2小指部11E側の端部における第1滑り止め部31aと第2滑り止め部31bとの間隔が広がっていればよい。
第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれは、第2手掌部13において装着者の手掌の小指球に相当する位置に配置されている。第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれは、装着者が打撃具を握ったときに第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eと対向する領域に配置されていない。
第3滑り止め部31cは、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eのそれぞれから第2滑り止め部31bよりも離れて配置されている。第3滑り止め部31cは、第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて第2滑り止め部31bとの間隔が広がるように延在している部分を含んでいる。
第4滑り止め部31dは、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eのそれぞれから第3滑り止め部31cよりも離れて配置されている。第4滑り止め部31dは、第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて第3滑り止め部31cとの間隔が広がるように延在している部分を含んでいる。
第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの中心線と第2薬指部11Dの中心線とのなす角度は、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dの順に大きくなっている。
第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの中心線は、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの図心を通って長手方向に延在する中心線を意味する。
第2薬指部11Dの中心線は、装着者が第2手袋2を装着したときの第2薬指部11Dの中心線を意味する。具体的には、第2薬指部11Dの中心線は、装着者が第2手袋2を装着し、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eを閉じたときの第2薬指部11Dの中心線を意味する。
本実施の形態では、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれは、一方端と他方端とをつなぐ仮想の線に沿って長手方向を有している。第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの全長(長手方向の長さ)は、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dの順に長くなっていてもよい。
第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの太さは、それぞれ均一であってもよい。第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの太さは、同じであってもよい。また、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dのそれぞれの太さは、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dの順に太くなっていてもよい。
本実施の形態2では、第2滑り止め部材30は、第2薬指滑り止め部32aおよび小指滑り止め部32bを備えている。第2薬指滑り止め部32aは、第2薬指部11Dにおける腹側の表面において第2薬指部11Dの付け根から先端に向けて延在するように構成されている。第2薬指滑り止め部32aは薬指の第1関節および第2関節に相当する位置に跨って薬指の延在する方向に延在している。小指滑り止め部32bは、第2小指部11Eにおける腹側の表面において第2小指部11Eの付け根から先端に向けて延在するように構成されている。小指滑り止め部32bは小指の第1関節および第2関節に相当する位置に跨って小指の延在する方向に延在している。なお、第2滑り止め部材30は、第2薬指滑り止め部32aおよび小指滑り止め部32bの少なくともいずれかを備えていればよい。
また、本実施の形態では、第2滑り止め部材30は、第2親指滑り止め部33を備えている。第2親指滑り止め部33は、第2親指部11Aにおける腹側の表面において第2親指部11Aの幅方向に延在するように構成されている。複数の第2親指滑り止め部33は、親指の第1関節に相当する位置を跨って親指の延在する方向に並んで配置している。本実施の形態では、複数の第2親指滑り止め部33が設けられているが、第2親指滑り止め部33は1つであってもよい。
第2滑り止め部材30は、第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eならびに第2手掌部13の少なくともいずれかの表面の面内方向において波形に構成されている。つまり、第1滑り止め部31a、第2滑り止め部31b、第3滑り止め部31cおよび第4滑り止め部31dは、第2手掌部13の表面の面内方向において波形に構成されている。第2薬指滑り止め部32a、小指滑り止め部32bおよび第2親指滑り止め部33のそれぞれは、第2薬指部11D、第2小指部11Eおよび第2親指部11Aのそれぞれの表面の面内において波形に構成されている。波の形状は正弦波や三角波とすることができる。
図2に示されるように、第2滑り止め部材30は、装着者が打撃具を握ってスイングしたときに第2薬指部11D、第2小指部11Eおよび第2手掌部13表面に作用するせん断力の方向に対して交差する方向に延在している。つまり、第2滑り止め部材30は、せん断力の方向を横切る方向に配置されている。
第2滑り止め部材30は粘弾性体により構成されている。粘弾性体の材料は、たとえばシリコンなどである。粘弾性体の硬度は、たとえばJISA30程度である。第2滑り止め部材30の高さは、たとえば1.0mm以下であり、0.4mm〜0.6mmが好ましい。また高さは各部位毎に高さを変えて摩擦力を調整することができる。第2滑り止め部材30が配置された領域の全体の領域に対する占有割合は、たとえば5%以上50%以下である。
上記では、第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eが、装着者の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの全体を収容するように構成されている場合について説明した。しかしながら、第2親指部11A、第2人差し指部11B、第2中指部11C、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eは、装着者の親指、人差し指、中指、薬指および小指のそれぞれの少なくとも根元部を収容していればよい。
第1滑り止め部材20の厚みは、第2滑り止め部材30の厚み以下とすることができる。好ましくは、第1滑り止め部材20の厚みは、第2滑り止め部材30の厚み未満とされる。
次に、実施の形態2に係る一対の手袋3の作用効果について説明する。
上述のように、第1手袋1によれば、第1滑り止め部材20が適切に配置されているため、大きな滑り止め効果を奏することができる。
さらに、第2手袋2によれば、第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bのそれぞれは、装着者がグリップ201を握ったときに第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eと対向する領域に配置されており、かつ第2人差し指部11Bおよび第2中指部11Cと対向する領域に配置されていない。これにより、装着者がグリップ201を握ったときに第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bによって装着者が感じる違和感を小さくすることができる。また、第1滑り止め部31aは、第2薬指部11Dと第2小指部11Eとが並ぶ方向に沿って第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて延在している。第2滑り止め部31bは、第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eのそれぞれから第1滑り止め部31aよりも離れて配置されており、かつ第2薬指部11D側から第2小指部11E側に向けて第1滑り止め部31aとの間隔が広がるように延在している部分を含んでいる。このため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第2手掌部13の表面に作用するせん断力に対し垂直に第1滑り止め部31aおよび第2滑り止め部31bをそれぞれ配置することができる。これにより、大きな滑り止め効果を得ることができる。
その結果、一対の手袋3によれば、大きな滑り止め効果を得ることが出来る。
上記第2手袋2においては、第2滑り止め部材30は、第2薬指滑り止め部32aおよび小指滑り止め部32bの少なくともいずれかを含んでいる。このため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第2薬指部11Dおよび第2小指部11Eの表面に作用するせん断力に対し垂直に第2薬指滑り止め部32aおよび小指滑り止め部32bの少なくともいずれかを配置することができる。これにより、大きな滑り止め効果を得ることができる。
上記第2手袋2においては、第2滑り止め部材30は、第2親指滑り止め部33を含んでいる。このため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第2親指部11Aの表面に作用するせん断力に対し垂直に第2親指滑り止め部33を配置することができる。これにより、大きな滑り止め効果を得ることができる。
上記第2手袋2においては、第2滑り止め部材30は、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに各指部および第2手掌部13の表面に作用するせん断力の方向に対して交差する方向に延在している。このため、当該せん断力に垂直に第2滑り止め部材30を配置することができる。
上記第2手袋2においては、第2滑り止め部材30は、各指部および第2手掌部13の表面の面内方向において波形に構成されている。このため、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに各指部および第2手掌部13の表面に作用するせん断力に対し垂直に滑り止め部材を配置することが容易である。
上記一対の手袋3では、第1手袋1の第1滑り止め部材20の厚みが、第2手袋2の第2滑り止め部材30の厚み未満とされ得る。上記スイング時において、第1手袋1の表面に作用するせん断応力は、第2手袋2の表面に作用するせん断応力と比べて、小さい。そのため、第1手袋1の第1滑り止め部材20の厚みを第2手袋2の第2滑り止め部材30の厚み未満としても、十分に大きい滑り止め効果を奏することができる。さらに、このような一対の手袋3は、ゴルフ用途に好適である。具体的には、上述のように第1手袋1の第1滑り止め部材20は第2手袋2と重ならない位置に配置されているものの、利き手とは反対の手に手袋を装着する習慣の無い装着者にとっては、該反対の手を素手としてグリップしていた時の感覚に対し違和感を覚えることがある。上記一対の手袋3によれば、第1滑り止め部材20の厚みが比較的薄くされることで上記のような装着者が感じる違和感を抑えながらも、素手でのグリップ時と比べて大きな滑り止め効果を奏することができる。
<変形例>
次に、実施の形態1,2における第1手袋1の各変形例について説明する。なお、特に言及しない限り、各変形例の第1手袋1は上記実施の形態1の第1手袋1と同様の構成を備えている。
図7に示されるように、本実施の形態の変形例1における第1手袋1は、図1に示される第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20として親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22のみを備えている点で異なっている。このような第1手袋1であっても、親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22が上記スイング時に第1手袋1において最も強いせん断力が作用する第1親指部10Aおよび第1人差し指部10Bに配置されており、かつ親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22の各延在方向が上記せん断力の方向と交差するように配置されている。そのため、図7に示される第1手袋1によれば、図7に示される第1滑り止め部材20を備えない手袋と比べて、大きな滑り止め効果を奏することができる。
図8に示されるように、本実施の形態の変形例2における第1手袋1は、図1に示される第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20として親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、および手掌滑り止め部25のみを備えている点で異なっている。手掌滑り止め部25は、少なくとも手掌101A側において人差し指101B2の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分に配置されている。手掌滑り止め部25は、中指101B3の中手骨114の膨出部114A、および薬指101B4の中手骨114の膨出部114Aに跨って配置されていなくてもよい。このような第1手袋1は、親指滑り止め部21および人差し指滑り止め部22に加えて、手掌滑り止め部25が上記スイング時に第1手袋1において比較的強いせん断力が作用する、第1手掌部12において人差し指101B2の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分に配置されており、かつ手掌滑り止め部25の各延在方向が上記せん断力の方向と交差するように配置されている。そのため、図8に示される第1手袋1によれば、図8に示される第1滑り止め部材20を備えない手袋と比べて、大きな滑り止め効果を奏することができる。
図9に示されるように、本実施の形態の変形例3における第1手袋1は、図1に示される第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20として親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、手掌滑り止め部25、および中指滑り止め部23のみを備えている点で異なっている。手掌滑り止め部25は、例えば手掌101A側において人差し指101B2および中指101B3の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分に配置されている。手掌滑り止め部25は、薬指101B4の中手骨114の膨出部114Aに跨って配置されていなくてもよい。
このような第1手袋1は、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22および手掌滑り止め部25に加えて、中指滑り止め部23が上記スイング時に第1手袋1において比較的強いせん断力が作用する、第1中指部10Cに配置されており、かつ中指滑り止め部23の各延在方向が上記せん断力の方向と交差するように配置されている。さらに、手掌滑り止め部25が中指101B3の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分にも配置されている。そのため、図9に示される第1手袋1によれば、図9に示される第1滑り止め部材20を備えない手袋と比べて、大きな滑り止め効果を奏することができる。
図10に示されるように、本実施の形態の変形例4における第1手袋1は、図1に示される第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、プリント部40をさらに備えている点で異なっている。プリント部40は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eのそれぞれの腹ならびに第1手掌部12の表面から、表面に直交する方向に突出するように構成されている。第1滑り止め部材20はプリント部40に重ねられるように配置されていてもよい。また第1滑り止め部材20はプリント部40に重ならないように配置されていてもよい。プリント部40の表面からの高さは、第1滑り止め部材20の表面からの高さよりも低くなっている。
プリント部40は、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、第1薬指部10Dおよび第1小指部10Eのそれぞれの腹ならびに第1手掌部12の全面に亘って設けられている。プリント部40は例えば格子状に構成されている。各格子は略正方形状に構成されている。
変形例4における第1手袋1においては、プリント部40によって摩擦力を向上させることができる。これにより、さらに大きな滑り止め効果を得ることができる。
図11に示されるように、本実施の形態の変形例5における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20の太さがその延在方向において略一定に構成されている点で異なる。第1滑り止め部材20の延在方向において、第1滑り止め部材20の中央部の太さは第1滑り止め部材20の両端部の太さと同等であってもよい。
図12に示されるように、本実施の形態の変形例6における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20が各表面の面内方向において全体として波形となるように互いに間隔をあけて配置された複数の構成部分20Xを含んでいる点で異なる。
構成部分20Xは、第1親指部10Aの幅方向の中央、第1人差し指部10Bの幅方向の中央、第1中指部10Cの幅方向の中央、および第1薬指部10Dの幅方向の中央のそれぞれには配置されていない。各指部の幅方向は、各指部の延在方向に直交する方向である。また、構成部分20Xは、第1手掌部12において各指の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分の幅方向の中央には配置されていない。第1手掌部12において各指の中手骨114の膨出部114Aと重なる部分の幅方向は、各指部の延在方向に沿った方向である。
本実施の形態の変形例6における第1手袋1においては、構成部分20Xは、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、および第1薬指部10Dのそれぞれの幅方向の中央は、それぞれの両側に比べて腹側に突出しているため摩擦力が高くなる。構成部分20Xが第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、および第1薬指部10Dの各幅方向の中央に配置されていないため、図12に示される第1手袋1を装着した装着者は違和感を覚えにくい。また、図12に示される第1手袋1では、第1親指部10A、第1人差し指部10B、第1中指部10C、および第1薬指部10Dの各々に生じる摩擦力が幅方向に均一化されている。
図13に示されるように、本実施の形態の変形例7における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、装着者の手の節を外して配置されている点で異なる。
親指滑り止め部21は、第1親指部10Aにおける親指の第1関節に相当する位置を外して配置されている。人差し指滑り止め部22は、第1人差し指部10Bにおける人差し指の第1関節および第2関節に相当する位置を外して配置されている。中指滑り止め部23は、第1中指部10Cにおける中指の第1関節および第2関節に相当する位置を外して配置されている。薬指滑り止め部24は、第1薬指部10Dにおける薬指の第1関節および第2関節に相当する位置を外して配置されている。
本実施の形態の変形例7における第1手袋1においては、第1滑り止め部材20が装着者の手の節を外して配置されているため、第1滑り止め部材20が装着者の手の節と重なるように配置されている第1手袋1と比べて、装着者がグリップ201を握ったときに第1滑り止め部材20によって装着者が感じる違和感を小さくすることができる。
図14に示されるように、本実施の形態の変形例8における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20の屈曲部の数が上記変形例1における第1滑り止め部材20の屈曲部の数よりも少なくなっており、第1滑り止め部材20の屈曲部間の距離が上記変形例1における第1滑り止め部材20の屈曲部間の距離よりも長くなっている点で異なっている。異なる観点から言えば、変形例8における第1滑り止め部材20の波形形状の波数は上記変形例1における第1滑り止め部材20の波形形状の波数よりも少ない。変形例8における第1滑り止め部材20の波形形状の波長は上記変形例1における第1滑り止め部材20の波形形状の波長よりも大きい。
図15に示されるように、本実施の形態の変形例9における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20の上記最大幅が上記変形例1における第1滑り止め部材20の上記最大幅よりも小さくなっている点で異なっている。異なる観点から言えば、変形例9における第1滑り止め部材20の波形形状の振幅は、上記変形例1における第1滑り止め部材20の波形形状の振幅よりも小さい。
図16に示されるように、本実施の形態の変形例10における第1手袋1は、図10に示される上記の本実施の形態の変形例4における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、薬指滑り止め部24、および手掌滑り止め部25の少なくとも1つが複数並列して配置されている点で異なる。例えば、図16に示されるように、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、薬指滑り止め部24、および手掌滑り止め部25の各々が複数並列して配置されている。変形例10では、親指滑り止め部21、人差し指滑り止め部22、中指滑り止め部23、薬指滑り止め部24、および手掌滑り止め部25の各々の上記太さが、図1に示される第1手袋1におけるこれらの太さと比べて、細くされている。
図16では当該部分が3本で1組となるように構成されている。当該部分は2本で1組となるように構成されていてもよく、4本以上で1組となるように構成されていてもよい。複数の親指滑り止め部21は、例えば第1親指部10Aの上記延在方向に平行移動されたときに互いに重なるように配置されている。複数の人差し指滑り止め部22、複数の中指滑り止め部23、複数の薬指滑り止め部24の各々は、例えば各指部の上記幅方向に平行移動されたときに互いに重なるように配置されている。複数の手掌滑り止め部25は、例えば第1人差し指部10Bの延在方向に平行移動されたときに互いに重なるように配置されている。変形例10における第1滑り止め部材20の各1組の滑り止め部では、各波形形状の位相が、第1滑り止め部材20の延在方向においてずれないように配置されている。
図17に示されるように、本実施の形態の変形例11における第1手袋1は、図16に示される上記の本実施の形態の変形例10における第1手袋1と基本的に同様の構成を備えるが、第1滑り止め部材20の1組の3本の滑り止め部材20内で、各部分の波形形状の位相が互いにずれるように構成されている点で異なる。
上述した実施の形態1,2に係る第1手袋1と変形例1〜11に係る第1手袋1とは、第1滑り止め部材20の各延在方向を、装着者がグリップ201を握ってスイングしたときに第1手袋1の各表面に作用するせん断力に対し交差するように配置することができる点で共通している。そのため、上述した各第1手袋1は、大きな滑り止め効果を奏することができる。
なお、上記の本実施の形態および各変形例は適宜組み合わせることができる。各変形例を示す各図にはプリント部40が示されているが、各変形例においてプリント部40は省かれていてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明による手袋を構成するにあたり、以下の実験1,2を実施した。
(実験1)
スイング中に手にかかるせん断力を計測した。具体的には、1人の被験者が、利き手に上記第1手袋1を装着してゴルフクラブを握り、スイングしたときに第1手袋とグリップの間にかかるせん断力を計測した。ゴルフクラブは、美津濃株式会社製JPX E3ドライバーを用いた。被験者は、右打者である。ヘッドスピードは38.0m/sであった。
計測センサは、タッチエンス株式会社製3軸触覚センサ(TSSI OD10 C10)を用いた。定格荷重は圧力40Nおよびせん断力±8Nとした。3軸触覚センサをPC(パーソナルコンピュータ)に接続して、XYZ方向の時系列データを計測した。サンプリング時間は1/100秒とした。XYZ方向のうちXY方向の時系列データからせん断力を計測した。またXYZ方向のうちZ方向の時系列データから圧力を計測した。左手袋に3軸触覚センサを貼り付けてスイングしたときに手袋とグリップの間にかかるせん断力および圧力を計測した。データには10Hzのバターワースフィルターを適用した。せん断力および圧力は図18に示す16箇所で計測した。図18では、16箇所のうちせん断応力が所定の大きさ以上であった各点でのせん断力の向きおよび大きさが矢印の向きおよび大きさで示されている。
図18に示されるように、ゴルフのスイングの際の利き手に装着された第1手袋に作用するせん断応力は、第1親指部および第1人差し指部に最も強く作用し、第1中指部には第1親指部および第1人差し指部よりも弱く作用し、第1薬指部には第1中指部よりも弱く作用することが確認された。また、ゴルフのスイングの際の利き手に装着された第1手袋に作用するせん断応力は、第1手掌部にも作用することが確認された。
さらに、第1親指部に作用するせん断力は、第1親指部の上記延在方向に沿うように作用することが確認された。第1人差し指部に作用するせん断力は、第1人差し指部の上記延在方向に交差する方向に作用することが確認された。第1中指部に作用するせん断力は、第1中指部の上記延在方向に交差する方向に作用することが確認された。第1薬指部に作用するせん断力は、第1薬指部の上記延在方向に交差する方向に作用することが確認された。
(実験2)
1人の被験者が利き手とは反対の手に上記第2手袋を装着してゴルフクラブを握り、スイングしたときに第2手袋とグリップの間にかかるせん断力を計測した。ゴルフクラブは、美津濃株式会社製JPX E3ドライバーを用いた。被験者は、右打者である。ヘッドスピードは38.0m/sであった。
計測センサは、タッチエンス株式会社製3軸触覚センサ(TSSI OD10 C10)を用いた。定格荷重は圧力40Nおよびせん断力±8Nとした。3軸触覚センサをPC(パーソナルコンピュータ)に接続して、XYZ方向の時系列データを計測した。サンプリング時間は1/100秒とした。XYZ方向のうちXY方向の時系列データからせん断力を計測した。またXYZ方向のうちZ方向の時系列データから圧力を計測した。左手袋に3軸触覚センサを貼り付けてスイングしたときに手袋とグリップの間にかかるせん断力および圧力を計測した。データには10Hzのバターワースフィルターを適用した。せん断力および圧力は図19に示す16点で計測した。図19では、16箇所のうちせん断応力が所定の大きさ以上であった各点でのせん断力の向きおよび大きさが矢印の向きおよび大きさで示されている。
図19に示されるように、ゴルフのスイングの際に必要とされる薬指および小指から手掌の小指球に向けて大きなせん断力が作用することがわかった。また、薬指および小指から手掌の小指球に向けて右回りにせん断力が作用することがわかった。さらに、親指の付け根から先端に向けて大きさなせん断力が作用することがわかった。また、人差し指および中指の付け根に小指側に向けてせん断力が作用することがわかった。
また、手掌の薬指および小指側の先端部において圧力が大きくなることがわかった。さらに親指の先端部において圧力が大きくなることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。