JP3403980B2 - 野球用グラブ - Google Patents

野球用グラブ

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    • A63B71/08Body-protectors for players or sportsmen, i.e. body-protecting accessories affording protection of body parts against blows or collisions
    • A63B71/14Body-protectors for players or sportsmen, i.e. body-protecting accessories affording protection of body parts against blows or collisions for the hands, e.g. baseball, boxing or golfing gloves
    • A63B71/141Body-protectors for players or sportsmen, i.e. body-protecting accessories affording protection of body parts against blows or collisions for the hands, e.g. baseball, boxing or golfing gloves in the form of gloves
    • A63B71/143Baseball or hockey gloves
    • AHUMAN NECESSITIES
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  • General Health & Medical Sciences (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、野球用捕球具(以
下、単に「グラブ」と称する)に関し、より特定的に
は、グラブの親指袋の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のグラブは、図13(a)〜(d)
に示すように、まず5本の略指型形状を有する受球面皮
16と、それぞれ5本の指袋を形成するように複数の皮
革から成るパーツを縫製して仕上げた背面皮15とを縫
製する。この受球面皮16と背面皮15の周縁を、両者
とも銀面側が内側になるように、手口挿入部を除いて縫
製した後、銀面側が表側となるように表裏をひっくり返
す。これが表部材となる。
【0003】次に、該表部材よりも小さく裁断した5本
の略指型形状を有する手掌皮18と、それぞれ5本の指
袋を形成するように複数の皮革から成るパーツを縫製し
て仕上げた手甲皮17とを、これも両者の銀面側が内側
になるように、手口挿入部を除いて周縁を縫製する。こ
れが裏部材となる。
【0004】上記表部材の所要部に、フェルト等で作ら
れた芯体やその他の衝撃吸収体、ワックス等を挿入した
り、オイルを含浸させた後、上記裏部材を挿入し、表部
材と裏部材の手口挿入部を皮紐で結合する。
【0005】さらに、親指袋と人差し指袋の間に、別体
に形成した球受部(ウェブ部)を、これも皮紐で結合し
て、最終的に野球用グラブとして仕上げる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、グラブで捕
球する際には、親指袋に挿入した親指と他の指とでボー
ルを挟むように握る。
【0007】しかしながら、親指袋の裏部材の挿入口は
広く、かつ滑りやすいので、これを改良するために、実
公昭59−9668号や実公平6−1171号の考案が
なされている。
【0008】これらの考案では、親指袋の裏部材の指挿
入部に、親指を固定するための親指掛けを設けている。
それにより、親指の力を比較的効率よく伝達することが
できる。図14に、親指掛け19を有する従来のグラブ
の一例を示す。
【0009】しかしながら、親指掛け19を設けた上記
のグラブには、次のような問題があった。すなわち、使
用する各人の親指の形状や長さが異なるために、親指掛
けがうまく親指の形状と合わないことが多かった。その
ため、使用者が違和感を感じることが少なくなかった。
【0010】それに加え、手の力の弱い子供において
は、握力がそれほど強くないので、親指掛けに親指を固
定しただけでは、未だグラブを屈曲するには力不足で、
ボールを捕球するときに完全にグラブを閉じることがで
きず、捕球が確実にできないという問題点もあった。
【0011】本発明は、上記のような課題を解決するた
めになされたものである。本発明の目的は、製造上の手
間を従来とできるだけ変わらないようにしながら、親指
袋に挿入した親指を容易にグラブの屈曲方向に固定で
き、手の握力の弱い子供でもボールを捕球するときに完
全にグラブを閉じることができ、捕球が確実に行える野
球用グラブを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る野球用グラ
ブは、1つの局面では、親指袋(2)を備え、該親指袋
(2)の背面皮(15)に、親指(6)の指先部を背面
皮(15)上に出すとともに親指(6)の付根を背面皮
(15)で覆うための切り込み部(3)を設け、切り込
み部(3)は、親指袋(2)の外側端から内側に延在す
。なお、本願明細書における野球の概念には、ソフト
ボールも含まれる。また、本願明細書における野球用グ
ラブの概念には、キャッチャーミットやファーストミッ
トも含まれる。本発明に係る野球用グラブは、他の局面
では、親指袋(2)を備え、該親指袋(2)の背面皮
(15)に、親指(6)の指先部を背面皮(15)上に
出すとともに親指(6)の付根を背面皮(15)で覆う
ための切り込み部(3)を設け、背面皮(15)上に出
した指先部を覆う親指保護部材(4)を、背面皮(1
5)上に取付け、切り込み部(3)の長さ(L)は、親
指保護部材(4)の最大幅(W1)より大きい。 背面皮
(15)上に出した親指(6)は親指保護部材(4)に
カバーされるので、ランナーと交錯した場合でも、けが
をするようなことがなくなる。また、親指保護部材
(4)は、親指(6)を所望の位置(たとえば力を加え
易い位置)に固定するとともに親指(6)が必要以上に
動くのを抑え、親指(6)の力を確実に親指袋(2)に
伝える役割も果たす。
【0013】上記のように親指袋(2)の背面皮(1
5)に親指(6)の指先部を背面皮(15)上に出すた
めの切り込み部(3)を設けることにより、従来例より
も少ない力で野球用グラブを閉じることができる。以
下、その理由について、図11及び図12を用いて説明
する。これらの図に示されるように、本発明に係る野球
用グラブを使用した場合の各指にかかる力(特に図11
において最も右側の3つの四角形参照)が、従来の野球
用グラブを使用した場合の各指にかかる力(特に図12
において最も右側の3つの四角形参照)よりも小さくな
っている。つまり、本発明によれば、従来例よりも小さ
い力で野球用グラブを屈曲させることができる。
【0014】上記指先部は、親指(6)の先端側に位置
し背面皮(15)に力を加えることができる部分のこと
を称する。該指先部には、たとえば親指(6)の第1関
節から指先までの部分が含まれる。
【0015】本願の発明者は、本発明に係るグラブを閉
じる際に親指(6)の第1関節より先の部分を非常によ
く使用していることを知得した。親指(6)の第1関節
付近より先の部分を背面皮(15)上に出すことによ
り、親指袋(2)に拘束されることなく親指(6)の指
先部を自由に動かすことができ、親指袋(2)に力を加
える際に余分な力が不要となる。その結果、小さい力で
グラブを閉じることができる。
【0016】親指(6)の第1関節よりも付根側の部分
を背面皮(15)で覆うことが好ましい。
【0017】それにより、親指(6)の指先部の自由度
を確保しつつ親指(6)の付根部分のみを所望の位置に
固定することができる。その結果、親指(6)から親指
袋(2)に安定して力を加えることができ、親指(6)
からの力を確実かつ効率的にグラブに伝達することがで
きる。
【0018】上記切り込み部(3)の長さ(L)は、長
いことが好ましい。たとえば、切り込み部(3)の長さ
(L)は、親指袋(2)の長手方向中央部の幅(W)以
上であり、親指袋(2)の最大幅以下であってもよい。
【0019】グラブを閉じる際には、切り込み部(3)
よりも親指袋(2)の先端側に位置する背面皮(15)
は、親指(6)に押圧されてグラブの内方に移動する。
他方、切り込み部(3)よりも手口挿入部(26)側に
位置する背面皮(15)は、移動しない。そこで、切り
込み部(3)の長さ(L)を長くすることにより、グラ
ブを閉じる際に、先端側に位置する背面皮(15)と手
口挿入部(26)側に位置する背面皮(15)との間に
たとえば図4に示すように大きな段差を形成することが
できる。つまり、グラブを閉じる際における手口挿入部
(26)側に位置する背面皮(15)による先端側に位
置する背面皮(15)に対する拘束力を低減することが
できる。それにより、先端側に位置する背面皮(15)
を内方に移動させる際の抵抗を減じることができ、グラ
ブを閉じるために必要な力を低減することができる。
【0020】また、切り込み部(3)の長さ(L)を長
くすることにより、使用する人の手の大きさの違いに柔
軟に対応することもできる。すなわち、切り込み部
(3)のどの位置からも親指(6)を自由に出すことが
でき、その人の手の形や大きさに合った位置で背面皮
(15)に力を付与することができる。
【0021】上記の切り込み部(3)は、親指袋(2)
の外側端から内側に延在する。
【0022】それにより、切り込み部(3)の長さ
(L)を長く確保することができ、上述の効果を期待で
きる。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】また、切り込み部(3)の長さ(L)を長
く確保することにより、上述の効果に加え、使用する人
の手の大きさや形が異なっても親指保護部材(4)で規
定される空間内に容易に親指(6)を挿入することがで
きる。
【0027】親指保護部材(4)は、好ましくは、親指
袋(2)の長手方向の中心線(2a)よりも内側寄りに
配置される。
【0028】グラブは、ボールを広い範囲で捕球できる
ように手よりもかなり大きく作製されている。他方、一
旦捕球したボールは、手でしっかりと握るようにした方
がよい。それにより、落球を回避することができる。そ
こで、親指保護部材(4)を上記の位置に設けることに
より、ポケット部分で確実に捕球することができるばか
りでなく、捕球されたボールを手でしっかりと握ること
ができる。その結果、タッチプレー等の激しいプレーの
場合でも、落球を回避することができる。
【0029】親指保護部材(4)の長手方向の先端部
は、好ましくは、親指袋(2)の中心線(2a)よりも
内側(ウェブ部(24)側)に位置する。この場合、親
指保護部材(4)は、親指袋(2)の中心線(2a)に
対しグラブのウェブ部(24)側に向かって所定角度だ
け傾いた方向に延在する。
【0030】上記のような方向に親指保護部材(4)を
延在させることにより、親指(6)をウェブ部(24)
側に導くことができ、捕球されたボールを手でしっかり
と握ることができる。
【0031】親指保護部材(4)の先端部を、好ましく
は、背面皮(15)から解放する。親指保護部材(4)
の先端部を背面皮(15)に固定していると、親指保護
部材(4)を背面皮(15)とともにグラブの内方に移
動させる際の抵抗となり得る。そこで、親指保護部材
(4)の先端部を背面皮(15)から解放することによ
り、かかる抵抗を除去することができる。このことも、
グラブを閉じるために必要な力を低減することに寄与し
得る。
【0032】親指保護部材(4)における手口挿入部
(26)側の端部が切り込み部(3)を覆うことが好ま
しい。
【0033】このように親指保護部材(4)の下端を延
長することにより、たとえばタッチプレーの際に親指
(6)を曲げたときでも、親指(6)の背面が露出する
のを回避することができる。それにより、タッチプレー
等における衝撃を緩和することができる。
【0034】背面皮(15)と親指保護部材(4)によ
り、指先部を動かすことができる状態で該指先部を収納
する空間が形成されることが好ましい。
【0035】それにより、親指(6)を上記の空間内で
自由に動かすことができ、背面皮(15)に所望の力を
付与することができる。
【0036】切り込み部(3)から出した親指(6)の
腹側が当たる背面皮(15)上に滑り止め部材(5)を
取付けることが好ましい。
【0037】グラブを閉じるときには、主に親指(6)
の指先部で親指袋(2)をグラブの内方に押圧する。し
たがって、指先部が親指袋(2)に対し滑らないことが
好ましい。そこで、上記のように滑り止め部材(5)を
取付けることにより、触感が良くなるとともに、親指袋
(2)に対する指先部の滑りをも抑えることができる。
それにより、親指(6)の力を確実に親指袋(2)に伝
えることができる。
【0038】滑り止め部材(5)は、好ましくは、エン
ボス加工を施した人工皮革あるいは合成皮革により構成
される。
【0039】それにより、指先部と滑り止め部材(5)
間の摩擦抵抗を大きくすることができ、指先部と滑り止
め部材(5)間の密着性を向上させることができる。滑
り止め部材(5)に粘着加工を施した場合には、さらに
密着性を向上させることができる。また、人工皮革や合
成皮革を使用することにより、天然皮革を使用した場合
と比較して耐摩耗性が向上するばかりでなく型崩れをも
抑制することができる。それにより、指先部と滑り止め
部材(5)間の高い密着性を長期間持続させることがで
きる。
【0040】野球用グラブは、該グラブ内に手を挿入す
るための手口挿入部(26)を備える。親指袋(2)の
背面皮(15)は、好ましくは、切り込み部(3)より
も親指袋(2)の先端側に位置する第1背面皮(15
a)と、切り込み部(3)よりも手口挿入部(26)側
に位置する第2背面皮(15b)とを含む。第1および
第2背面皮(15a,15b)は、切り込み部(3)を
形成する第1および第2折返し部(22a,22b)を
それぞれ有し、該第1および第2折返し部(22a,2
2b)間に切り込み部(3)が形成される。第1および
第2背面皮(15a,15b)における第1および第2
折返し部(22a,22b)と隣合う部分(23a,2
3b)が重ね合わされた状態で互いに縫い付けられる上
記のように親指袋(2)の背面皮(15)が第1および
第2背面皮(15a,15b)を有することにより、こ
れらを選択的に縫い付けるだけで切り込み部(3)を形
成することができる。より詳しくは、たとえば第1およ
び第2背面皮(15a,15b)の一端をそれぞれ選択
的に折返して第1および第2折返し部(22a,22
b)を形成した後に、第1および第2折返し部(22
a,22b)と隣合う部分(23a,23b)同士を縫
い付けるだけで切り込み部(3)を形成することができ
る。よって、切り込み部(3)の形成を容易に行なえ
る。また、第1および第2折返し部(22a,22b)
と隣合う部分(23a,23b)を重ね合わせた状態で
第1および第2背面皮(15a,15b)を縫着してい
るので、第1および第2折返し部(22a,22b)間
に高低差を生じさせることができ、切り込み部(3)に
おいて若干の段差を当初から形成することができる。特
に、第2背面皮(15b)を第1背面皮(15a)上に
重ねることにより、第1折返し部(22a)を第2折返
し部(22b)よりも低くすることができる。それによ
り、切り込み部(3)から親指(6)を容易に背面皮
(15)上に出すことができる。さらに、第1および第
2背面皮(15a,15b)を重ね合わせて縫着するこ
とにより、該重ね合わせ部の強度を高めることもでき
る。
【0041】
【発明の実施の形態】本発明以前に、主として人差し指
を野球用グラブの背面皮上に出すことができるようにし
た野球用グラブは、米国特許第3602915号や同3
721996号に開示されている。
【0042】しかし、これらの発明は、あくまでも親指
以外の指(finger)を背面皮上に出すことを目的
としており、親指(thumb)を背面皮上に出すこと
は意図していない。
【0043】しかも、野球用グラブの背面皮上に親指以
外の指を出すことはファッション的な要素が強く、これ
によって得られる大きなメリットはない。
【0044】逆に、指を出すことによって、ゴロを捕球
する際に地面と指が接触してけがをしたり、ランナーと
の交錯プレーの時にスパイクで指を蹴られたりするおそ
れがあり、余り好ましいものではなかった。
【0045】ところが、本発明のように、親指袋に挿入
する親指を背面皮上に出すようにすると、親指の力を確
実に親指袋に伝えることができて、容易に野球用グラブ
を屈曲できるので、手の握力の弱い子供でもボールを捕
球するときに完全に野球用グラブを閉じることができ、
捕球を確実に行えることがわかった。
【0046】かかる事実を、図11および図12を用い
て説明する。図11および図12は、ニッタ株式会社の
グローブスキャンシステムを利用し、本発明の野球用グ
ラブの場合と、従来の親指袋構造を持つ野球用グラブの
場合において、それぞれの野球用グラブを屈曲する(閉
じる)際に必要な各指の力を測定した結果を示す図であ
る。
【0047】なお、図11は本発明の野球用グラブの測
定結果を示し、図12は従来の野球用グラブの測定結果
を示す。
【0048】まず、これらの図の見方を説明する。両図
とも左手(右利きの場合に野球用グラブをする方の手)
のデータを表わしており、図の右から左に親指、人差し
指、中指、薬指および小指のデータを表わし、図の下か
ら上に手の掌から指先にいたる各指のデータを示してい
る。
【0049】より詳しくは、各図において、上下方向に
並ぶ5列の複数の四角形により各指の先端から根元にか
かる力が表されている。すなわち、5列の複数の四角形
が、ほぼ左手の各指に対応すると考えればよい。そし
て、各指の腹部にかかる力が色の濃淡と線の種類とで示
されている。色が濃くなるほどかかっている力が大き
く、細い横線はかかっている力が小さい。
【0050】従来の野球用グラブでは、図12の通り、
ほぼ指全体に力がかかっているが、特に、親指の全域、
人差し指、中指、薬指の先端部に大きな力がかかってい
ることがわかる。これらのデータから、野球用グラブを
屈曲するのに、親指や他の指の指先に大きな力が必要な
ことがわかる。
【0051】他方、本発明の野球用グラブでは、図11
の通り、図12に示す従来品と比較すると全体に力のか
かり方が少なく(指全体にかかる力の平均値が、従来品
は52g/cm2であるのに対し、本発明品は42g/cm2であ
る)、人差し指や中指には力がかかっていない部分も認
められ、かつ、親指全体にかかる力も小さい。これは、
野球用グラブを少ない力で屈曲させることができるとい
うことを意味している。
【0052】また、本発明品では、親指の指先部分に特
に大きな力がかかっている。これは、従来の親指掛けの
場合とは異なり、親指の指先に大きな力を加えることが
できることを表わしている。なお、右手の場合も、上記
の左手の場合と同様の結果が得られるものと推察され
る。
【0053】次に、図1〜図10を用いて、本発明に係
る野球用グラブの具体的形状例について説明する。図1
は、本発明の野球用グラブ1を親指袋2の背面皮15側
から見た図である。
【0054】背面皮15には、切り込み部3が設けら
れ、親指袋2に挿入する親指6の指先部を背面皮15上
に出すことができる。より詳しくは、図1に示すよう
に、親指6の第1関節から指先までの部分を背面皮15
上に出すことができる。
【0055】本願発明者は、本発明に係るグラブを閉じ
る際に親指6の第1関節より先の部分を非常によく使用
していることを知得した。そこで、親指6の第1関節よ
り先の部分を背面皮15上に出すこととした。それによ
り、親指袋2に拘束されることなく親指6の指先部を自
由に動かすことができ、親指袋2に力を加える際に余分
な力が不要となる。その結果、より小さい力でグラブを
閉じることができる。
【0056】他方、親指6の第1関節よりも付根側の部
分は背面皮15で覆われる。それにより、親指6の指先
部の自由度を確保しつつ親指6の付根部分のみを背面皮
15で固定することができる。その結果、親指6から親
指袋2に安定して力を加えることができる。
【0057】図1の実施例では、切り込み部3はスリッ
ト状となっている。しかし、親指6を背面皮15上に出
すことができるものであれば、切り込み部3の形状は任
意に選択可能である。
【0058】上述のように背面皮15の親指袋2相当部
分に、スリット状等の切り込み部3を設けるのみである
から、製造上の手間は従来とほとんど変わることがな
い。この点に関しては後に詳述する。
【0059】また、余分な部品を必要とすることもない
から、製造が容易であるばかりでなく、製造コストが極
端に上がるようなことがない。
【0060】図2は、図1の野球用グラブ1に、背面皮
15上に出した親指6をカバーする親指保護部材4を背
面皮15上に取付けた実施例を示す図である。
【0061】かかる実施例では、背面皮15上に出した
親指6は、親指保護部材4でカバーされるので、ランナ
ーと交錯したような場合でも、スパイクされることによ
ってけがをするようなことがなくなる。
【0062】また、図2に示すように、切り込み部3の
長さLは、長い方が好ましい。たとえば、切り込み部3
の長さLは、親指袋2の長手方向中央部の幅W以上、親
指袋2の最大幅以下とする。このように切り込み部3の
長さLを長くすることにより、図4に示すように、グラ
ブ1を閉じた際に切り込み部3において大きな段差を形
成することができる。
【0063】つまり、グラブ1を閉じる際における手口
挿入部(26)側に位置する背面皮15による親指袋2
の先端側に位置する背面皮15に対する拘束力を低減す
ることができる。それにより、先端側に位置する背面皮
15をグラブ1の内方(グラブ1を閉じる方向)に移動
させる際の抵抗を減じることができ、グラブ1を閉じる
ために必要な力を低減することができる。
【0064】また、切り込み部3の長さLを長くするこ
とにより、使用する人の手の大きさや形の違いに柔軟に
対応することもできる。すなわち、切り込み部3のどの
位置からも親指6を自由に出すことができ、その人の手
の形や大きさに合った位置で背面皮15に力を付与する
ことができる。
【0065】図1および図2に示すように、切り込み部
3を、親指袋2の外側端(図1および図2における右
端)から内側に延在させている。それにより、切り込み
部3の長さを長く確保することができる。
【0066】親指保護部材4は、親指6を所望の位置
(たとえば親指袋2に力を加え易い位置)に固定すると
ともに親指6が必要以上に動くのを抑え、親指6の力を
確実に親指袋2に伝える役割も果たす。親指保護部材4
の周縁部は選択的に背面皮15に縫い付けられる。親指
保護部材4と背面皮15とにより、親指6の指先部を自
由に動かすことができる状態で親指6の指先部を収容す
る空間が形成される。
【0067】切り込み部3の長さLは、親指保護部材4
の最大幅W1よりも大きいことが好ましい。それによ
り、使用する人の手の大きさや形が異なっても親指保護
部材4内に容易に親指6を挿入することができる。図2
に示すように親指保護部材4の下端を広げることによ
り、さらに容易に親指保護部材4内に親指6を挿入する
ことができる。
【0068】また、親指保護部材4は、親指袋2の長手
方向の中心線2aよりも内側寄りに配置される。それに
より、ポケット部分で確実に捕球することができるばか
りでなく、捕球されたボールを手でしっかりと握ること
ができる。その結果、タッチプレー等の激しいプレーの
場合でも、落球を回避することができる。
【0069】図2に示すように、親指保護部材4の長手
方向の先端部は、親指袋2の中心線2aよりも内側(ウ
ェブ部24側)に位置する。そして、親指保護部材4
は、親指袋2の中心線2aに対しグラブ1のウェブ部2
4側に向かって所定角度(たとえば5度以上30度以
下、さらに好ましくは、15度以上20度以下)だけ傾
いた方向に延在する。それにより、親指6をウェブ部2
4側に導くことができ、捕球されたボールを握り易い位
置に親指6を固定することができる。その結果、捕球さ
れたボールを手でしっかりと握ることができる。
【0070】親指保護部材4の先端部は、図2では背面
皮15に縫い付けられている。しかし、親指保護部材4
の先端部を背面皮15から解放してもよい。
【0071】親指保護部材4における手口挿入部26側
の端部は、図2に示すように、切り込み部3を覆う。こ
のように親指保護部材4の下端を延長することにより、
たとえばタッチプレーの際に親指6を曲げたときでも、
親指6の背面が露出するのを回避することができる。そ
れにより、タッチプレー等における衝撃を緩和すること
ができる。
【0072】図3は、図2の100−100線に沿う断
面図であり、親指保護部材4の内側で、背面皮15上に
出した親指6の腹側が当たる背面皮15上に、切り込み
部3近傍から指先側にかけて、滑り止め部材5を貼着し
た状態を示している。
【0073】グラブを閉じるときには、主に親指6の指
先部で親指袋2をグラブの内方に押圧する。したがっ
て、指先部が親指袋2に対し滑らないことが好ましい。
そこで、上記のように滑り止め部材5を取付けることに
より、触感が良くなるとともに、親指袋2に対する指先
部の滑りをも抑えることができる。それにより、親指6
の力を確実に親指袋2に伝えることができる。
【0074】滑り止め部材5は、好ましくは、エンボス
加工を施した人工皮革あるいは合成皮革により構成され
る。
【0075】それにより、指先部と滑り止め部材5間の
摩擦抵抗を増大させることができ、指先部と滑り止め部
材5間の密着性を向上させることができる。滑り止め部
材5に粘着加工を施した場合には、さらに密着性を向上
させることができる。
【0076】また、人工皮革や合成皮革を使用すること
により、天然皮革を使用した場合と比較して耐摩耗性が
向上するばかりでなく型崩れをも抑制することができ
る。それにより、指先部と滑り止め部材5間の高い密着
性を長期間持続させることができる。
【0077】なお、図3において、16は受球面皮を示
し、17は手甲皮を示し、18は手掌皮を示し、20は
芯体を示している。
【0078】図2〜図4の実施例では、親指保護部材4
と滑り止め部材5を両方とも設けているが、好みに応じ
てどちらか一方のみを設けてもよい。
【0079】次に、図5および図6を用いて、さらに他
の実施の形態について説明する。図5に示すように、グ
ラブ1は、該グラブ1内に手を挿入するための第1開口
(手口挿入部)26と、手の甲を選択的に露出させる第
2開口27とを備える。親指袋2の背面皮15は、切り
込み部3よりも親指袋2の先端側に位置する第1背面皮
15aと、切り込み部3よりも手口挿入部26側に位置
し第1背面皮15aと別部材である第2背面皮15bと
を含む。第1背面皮15a上に親指6の指先部が出さ
れ、第2背面皮15bにより親指6の付根部が覆われ
る。
【0080】第1および第2背面皮15a,15b間に
切り込み部3が形成され、切り込み部3と第2開口27
間に位置する第1および第2背面皮15a,15bが互
いに縫着される。この縫着部28および切り込み部3
は、同一直線上に位置し、ともに第2開口27に向けて
延在する。
【0081】上記のように親指袋2の背面皮15が第1
および第2背面皮15a,15bを有することにより、
これらを選択的に縫い付けるだけで切り込み部3を形成
することができる。それにより、切り込み部3の形成を
容易に行なえる。
【0082】また、切り込み部3を第2開口27に向け
て延在させることにより、前述の実施の形態の場合より
も切り込み部3の内側端部(図5における左側端部)を
手口挿入部26側に近づけることができる。それによ
り、図5に示すように、切り込み部3を親指6の長手方
向と略直交する方向に延在させることができ、上述の実
施の形態の場合よりも切り込み部3から親指が出しやす
くなる。
【0083】さらに、親指保護部材4の先端部を背面皮
15から離隔させている。このように親指保護部材4の
先端部を背面皮15から解放することにより、親指保護
部材4を背面皮15とともにグラブ1の内方に移動させ
る際の抵抗を低減することができる。このことも、グラ
ブ1を閉じるために必要な力を低減することに寄与し得
る。なお、図6に、図5における200−200線に沿
って見た断面図を示す。
【0084】次に、図7〜図10を用いて、さらに他の
実施の形態について説明する。本実施の形態では、グラ
ブ1の手口挿入部に取付けられ手をグラブ1に固定する
締付部材(ベルト)25を有するタイプのグラブに本発
明を適用している。図8は、図7における300−30
0線に沿って見た断面図を示し、図9および図10は、
第1および第2背面皮15a,15bの形状例を示す斜
視図である。
【0085】図7および図8に示すように、第1および
第2背面皮15a,15bは、第1および第2折返し部
22a,22bをそれぞれ有する。この第1および第2
折返し部22a,22b間に、切り込み部3が形成され
る。第1背面皮15aにおける第1折返し部22aと隣
合う部分23aと、第2背面皮15bにおける第2折返
し部22bと隣合う部分23bとが重ね合わされた状態
で互いに縫い付けられる。
【0086】ここで、図9および図10を用いて、本発
明に係る切り込み部3の形成方法について説明する。
【0087】まず、図9に示す形状の第1および第2背
面皮15a,15bを作製する。このとき、第1および
第2背面皮15a,15bの一端近傍に、第1および第
2折返し部22a,22b形成用の切欠部21を形成す
る。この場合であれば、V形の切欠部21を設けてい
る。
【0088】次に、図10に示すように、第1および第
2背面皮15a,15bの一端をそれぞれ選択的に折返
して縫着し、第1および第2折返し部22a,22bを
形成する。それにより、この場合であれば第1背面皮1
5aに上記の隣合う部分(突出部)23aが形成され
る。なお、第2背面皮15b側に該突出部を形成しても
よい。
【0089】その後、第1折返し部22aと隣合う部分
(突出部)23a上に、第2折返し部22bと隣合う部
分23bを重ね合わせる。この状態で、重ね合わされた
部分同士を縫い付ける。それにより、第1および第2背
面皮15a,15b間の縫着部28とともに切り込み部
3を形成することができる。
【0090】上記のように第1および第2折返し部22
a,22bと隣合う部分23a,23b同士を重ね合わ
せた状態で第1および第2背面皮15a,15bを縫着
しているので、第1および第2折返し部22a,22b
の高さを異ならせることができる。この場合であれば、
第2背面皮15bを第1背面皮15a上に重ねているの
で、第2折返し部22bの高さを第1折返し部22aの
高さよりも若干高くすることができる。それにより、切
り込み部3において若干の段差を当初から形成すること
ができ、切り込み部3から親指6を容易に背面皮15上
に出すことができる。
【0091】また、第1および第2背面皮15a,15
bを重ね合わせて縫着することにより、該重ね合わせ部
の強度を高めることもできる。
【0092】なお、本発明は、親指を挿入する親指袋を
備えた野球用捕球具であれば図1ないし図8に示すタイ
プの野球用グラブ以外の野球用グラブ、たとえばキャッ
チャーミットやファーストミット等にも適用可能であ
る。
【0093】以上のように、この発明の実施の形態につ
いて説明を行ったが、今回開示した実施の形態はすべて
の点で例示であって制限的なものではないと考えられる
べきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって
示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での
全ての変更が含まれることが意図される。
【0094】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、小さい力で野球用グラブを閉じることができるの
で、握力の弱い子供が本発明のグラブを使用した場合に
おいても、確実にボールを捕球することができる。ま
た、従来のグラブのように、親指掛けを設けていないの
で、親指掛けが使用者の親指の形状等と合わず違和感を
感じることもない。さらに、製造上の手間もかからず、
製造に際し従来と比較して時間や費用がかかることもな
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の野球用グラブを、親指袋の背面皮側
から見た正面図である。
【図2】 本発明の他の実施例の正面図である。
【図3】 図2の100−100線に沿う断面図であ
る。
【図4】 図2に示す野球用グラブを閉じた状態を示す
正面図である。
【図5】 本発明のさらに他の実施例の正面図である。
【図6】 図5の200−200線に沿う断面図であ
る。
【図7】 本発明のさらに他の実施例の正面図である。
【図8】 図7の300−300線に沿う断面図であ
る。
【図9】 本発明に係る第1および第2背面皮の一例を
示す斜視図である。
【図10】 本発明に係る第1および第2背面皮の一端
を折り返した状態を示す斜視図である。
【図11】 本発明の親指袋構造を持つ野球用グラブを
屈曲する際に、各指にかかる力を表わした図である。
【図12】 従来の親指袋構造を持つ野球用グラブを屈
曲する際に、各指にかかる力を表わした図である。
【図13】 (a)〜(d)は、野球用グラブの各パー
ツの形状を示す図である。
【図14】 従来の親指掛け付野球用グラブを示す正面
図である。
【符号の説明】
1 野球用グラブ、2 親指袋、2a 中心線、3 切
り込み部、4 親指保護部材、5 滑り止め部材、6
親指、15 背面皮、15a 第1背面皮、15b 第
2背面皮、16 受球面皮、17 手甲皮、18 手掌
皮、20 芯体、21 切欠部、22a 第1折返し
部、22b 第2折返し部、23a,23b 隣合う部
分、24 ウェブ部、25 締付部材、26 第1開口
(手口挿入部)、27 第2開口、28 縫着部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−216218(JP,A) 実開 平3−5471(JP,U) 実開 昭56−36378(JP,U) 実開 昭59−79172(JP,U) 実開 平2−28278(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A63B 71/14

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親指袋(2)を備えた野球用グラブ
    (1)において、前記親指袋(2)の背面皮(15)
    に、親指(6)の指先部を前記背面皮(15)上に出す
    とともに前記親指(6)の付根を前記背面皮(15)で
    覆うための切り込み部(3)を設け 前記切り込み部(3)は、前記親指袋(2)の外側端か
    ら内側に延在する、 野球用グラブ。
  2. 【請求項2】 親指袋(2)を備えた野球用グラブ
    (1)において、前記親指袋(2)の背面皮(15)
    に、親指(6)の指先部を前記背面皮(15)上に出す
    とともに前記親指(6)の付根を前記背面皮(15)で
    覆うための切り込み部(3)を設け、 前記背面皮(15)上に出した前記指先部を覆う親指保
    護部材(4)が、前記背面皮(15)上に取付けられ、 前記切り込み部(3)の長さ(L)は、前記親指保護部
    材(4)の最大幅(W1)より大きい、 野球用グラブ。
  3. 【請求項3】 前記親指(6)の第1関節よりも付根側
    の部分を前記背面皮(15)で覆う、請求項1または2
    に記載の野球用グラブ。
  4. 【請求項4】 前記切り込み部(3)の長さ(L)は、
    前記親指袋(2)の長手方向中央部の幅(W)以上であ
    り、前記親指袋(2)の最大幅以下である、請求項1か
    ら3のいずれかに記載の野球用グラブ。
  5. 【請求項5】 前記野球用グラブは、前記親指袋(2)
    よりも内側にウェブ部(24)を備え、 前記親指保護部材(4)の長手方向の先端部は、前記親
    指袋(2)の中心線(2a)よりも内側に位置し、 前記親指保護部材(4)は、前記親指袋(2)の中心線
    (2a)に対し前記ウェブ部(24)側に向かって所定
    角度だけ傾いた方向に延在する、 請求項から4のいず
    れかに記載の野球用グラブ。
  6. 【請求項6】 前記親指保護部材(4)の先端部を前記
    背面皮(15)から解放した、請求項2から5のいずれ
    かに記載の野球用グラブ。
  7. 【請求項7】 前記親指保護部材(4)の端部が前記切
    り込み部(3)を覆う、請求項2から6のいずれかに記
    載の野球用グラブ。
  8. 【請求項8】 前記背面皮(15)と前記親指保護部材
    (4)により、前記指先部を動かすことができる状態で
    該指先部を収納する空間が形成される、請求項2から
    のいずれかに記載の野球用グラブ。
  9. 【請求項9】 前記切り込み部(3)から出した親指
    (6)の腹側が当たる前記背面皮(15)上に滑り止め
    部材(5)を取付けた、請求項から8のいずれかに記
    載の野球用グラブ。
  10. 【請求項10】 前記滑り止め部材(5)は、エンボス
    加工を施した人工皮革あるいは合成皮革により構成され
    る、請求項9記載の野球用グラブ。
  11. 【請求項11】 前記野球用グラブは、該野球用グラブ
    内に手を挿入するための手口挿入部(26)を備え、 前記親指袋(2)の背面皮(15)は、前記切り込み部
    (3)よりも前記親指袋(2)の先端側に位置する第1
    背面皮(15a)と、前記切り込み部(3)よりも前記
    手口挿入部(26)側に位置する第2背面皮(15b)
    とを含み、 前記第1および第2背面皮(15a,15b)は、第1
    および第2折返し部(22a,22b)をそれぞれ有
    し、 前記第1および第2折返し部(22a,22b)間に前
    記切り込み部(3)が形成され、 前記第1および第2背面皮(15a,15b)における
    前記第1および第2折返し部(22a,22b)と隣合
    う部分(23a,23b)が重ね合わされた状態で互い
    に縫い付けられる、 請求項から10のいずれかに記載
    の野球用グラブ。
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