JP4020121B2 - 野球用グラブ - Google Patents

Description

本発明は、捕球時に親指がボールから受ける衝撃力や走者へのタッチプレー時の走者から受ける力を確実に吸収することができ、しかも違和感のない状態で使用できる野球用グラブに関する。

上記野球用グラブは、一般的に外皮となるグラブ本体内に、内皮となる指袋を備えさせて、捕球時のボールからの衝撃力やタッチプレー時の走者から受ける力をある程度指袋にて吸収することができるようにしているが、ボールの速度や走者からの力の大きさによってはそれらを十分吸収することができない。そこで、平板状のクッション材を親指袋以外の指袋の内部に備えさせて、捕球時のボールからの衝撃力やタッチプレー時の走者からの反力を吸収することができるようにしている（例えば、特許文献１参照。）。
特開平１０−１１３４１６号公報（図１、図２、図７参照）

しかしながら、上記特許文献１の野球用グラブのクッション材は、親指以外の指袋に対して備えさせるものであり、特に走者へのタッチプレー時において最もスパイクされやすい親指袋には、親指を保護してスパイクから受ける衝撃力を十分に吸収することができるクッション材を備えていないため、親指を傷めてしまうこともあった。
又、親指袋の内部には、親指を所定位置で受け止めてその位置に規制するための親指掛け部材を備えていることから、親指袋に親指を挿入している状態において、その親指掛け部材の端部などが親指に接触してしまうため、違和感を受けるものになり、改善の余地があった。

本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、捕球時に親指がボールから受ける衝撃力や走者へのタッチプレー時の走者から受ける力を確実に吸収することができ、しかも違和感のない状態で使用できる野球用グラブを提供することができるようにする点にある。

本発明は、前述の課題解決のために、グラブ本体内に内装用の親指袋を備え、前記親指袋の内部に親指掛け部材を備えさせてなる野球用グラブにおいて、皮革又は布からなる２枚のシート材の間にスポンジ又はフェルトからなるクッション材を挟み込んで一体化したものを用い、前記親指袋の内部空間の、前記親指掛け部材が備えられた空間に、該親指袋内に入り込む親指を覆うためのほぼ筒状に構成された軟質部材を、それの長さ方向の寸法が該親指掛け部材と同等又はそれよりも長い寸法となるように設定して親指掛け部材の内側に備えさせたことを特徴としている。
ほぼ筒状に構成され、かつ、長さ方向の寸法を親指掛け部材と同等又はそれよりも長い寸法に設定した軟質部材を親指袋の内部に備えさせることによって、親指袋に挿入した親指のほぼ全周を覆うことができるから、親指掛け部材の端部が親指に接触することがないだけでなく、捕球時においてボールから受ける衝撃力や走者へのタッチプレー時の走者から受ける力が親指に対してどの角度から作用しても、それらの力を確実に吸収して和らげることができる。前記ほぼ筒状とは、完全な筒状となっている状態の他、筒状に近い状態、つまり周方向において端部同士が多少の隙間が発生している状態のものも含むものとする。この多少の隙間とは、親指を軟質部材にて覆ったときに親指袋や親指掛け部材に接触することがない程度の隙間とする。又、親指を挿入する一端のみが開口され、他端は閉じた軟質部材であってもよい。また、前記野球用グラブとしては、５本指袋を備える一般的なグラブ（硬式用、軟式用、ソフトボール用などを含むグラブ）の他、親指と他の４本の指が全て入る指袋からなる２本指袋からなるグラブなど、親指袋を備えているものであれば、指袋の数には限定されないものとする。

前記ほぼ筒状の軟質部材に親指を挿入した状態において親指の腹側に接触する該軟質部材の親指挿入始端部分を外側に折り返してもよい。

前記親指袋が、少なくとも２枚のシート状部材を縫い合わせる又は接着剤にて接合して袋状に構成してなり、前記一方のシート状部材から他方のシート状部材を通してから前記グラブ本体に貫通させることにより該親指袋を該グラブ本体に固定するための紐に前記親指掛け部材を固定してもよい。

ほぼ筒状に構成され、かつ、長さ方向の寸法を親指掛け部材と同等又はそれよりも長い寸法に設定した軟質部材を親指袋の内部に備えさせることによって、親指袋に挿入した親指のほぼ全周を覆うことができるから、親指袋内に備えさせた親指掛け部材の端部が親指に接触することがないだけでなく、捕球時にボールから受ける衝撃力や走者へのタッチプレー時の走者から受ける力が親指に対してどの角度から作用しても、それらの力を確実に吸収して和らげることができ、良好に使用することができる野球用グラブ及び野球用グラブの衝撃吸収材を提供することができる。

軟質部材を、皮革又は合成皮革あるいは布からなるシート材の２枚の間にスポンジ又はフェルトからなるクッション材を挟み込んで一体化したものから構成することによって、例えば一枚の皮革又は合成皮革あるいは布のみで構成した場合に比べてクッション性を高めることができ、捕球時に親指がボールから受ける衝撃力や走者へのタッチプレー時の走者から受ける力をより吸収することができるだけでなく、優れた使用感にすることができる。

ほぼ筒状の軟質部材に親指を挿入した状態において親指の腹側に接触する軟質部材の親指挿入始端部分を外側に折り返すことによって、親指の腹側に接触する軟質部材の親指挿入始端を丸くすることができ、違和感無く使用することができる。

図１及び図２に、野球用グラブが示されており、この野球用グラブは、捕球面を構成しかつグラブ本体を構成する外装用袋１と、この外装用袋１に内装されてグラブの形を保持したり整えたりするための図５（ａ），（ｂ）で示している内装袋（図では親指の部分のみ示している）２とからなっている。前記外装用袋１及び内装袋２のそれぞれは、一般に天然皮革、合成皮革、人工皮革、これらとほぼ同質の素材から構成することが望ましいが、他の素材から構成することもできる。又、前記外装用袋１は、図に示される形状及び構成に限定されるものではない。つまり、図では５本指の外装用袋１からなっているが、２本又は３本の指袋から構成したものの他、図に示される通常のグラブ以外の例えばキャッチャーミットやファーストミットなどから構成してもよい。又、図では、左手に装着するグラブであるが、右手に装着するグラブにも本発明は適用できる。

図５（ａ），（ｂ）に示すように、前記外装用袋１の一部を構成する外装用親指袋３に内装される前記内装袋２の一部を構成する親指袋４は、平板状の捕球面部５Ａと平板状の５本の指部とが一枚の天然皮革、合成皮革などから作製された第１シート状部材５の捕球面部５Ａと、この捕球面部５Ａから延びた親指部５Ｂと、この親指部５Ｂの先端に延設さ
れ、かつ、天然皮革、合成皮革から作製された平板状の補助用の先端部５ｂと、前記捕球面部５Ａの一部、親指部５Ｂ、先端部５ｂに重ね合わせて縫着することにより袋状に構成するための一枚の天然皮革、合成皮革、人工皮革などから作製された平板状の第２シート状部材６とからなっているが、材質及び形状あるいは具体的構成は、他の構成であってもよい。

図５（ａ），（ｂ）に示すように、前記内装用親指袋４の内部空間の人差し指袋側で、かつ、親指挿入方向始端側に、挿入された親指の腹側に接当して親指をその位置に接当規制するための板状でほぼ矩形状の親指掛け部材７を備えている。この親指掛け部材７は、天然皮革、合成皮革、人工皮革や布、あるいは軟質樹脂などで構成することができる。そして、第１シート状部材５の捕球面部５Ａの補給面側に一端が縫着された３本の紐（天然皮革、合成皮革、人工皮革や布などからなっている）８の他端を該捕球面部５Ａに貫通させてから、前記親指掛け部材７に貫通させ、次に第２シート状部材６に貫通させてから外装用袋１に縛って固定するようになっているが、親指掛け部材７を紐のみから構成してもよいし、紐とは無関係な状態で内装用親指袋４内に固定してもよい。また、図５（ａ）では、３本の紐８を親指掛け部材７に貫通させた状態で両者を縫着（接着剤でもよい）により固定しているが、３本の紐８を親指掛け部材７に貫通させないで、両者を当て付けた状態で縫着（接着剤でもよい）により固定してもよい。

前記内装用親指袋４の内部空間の、親指掛け部材７が備えられた部分に、該親指袋４内に入り込む親指９を覆うための筒状に構成された衝撃吸収部材としての軟質部材１０を備えさせている。その軟質部材１０の長さ方向の寸法を、前記親指掛け部材７よりも長い寸法となるように設定している（場合によっては親指掛け部材７と同じ長さに設定してもよい）。従って、親指を内装用親指袋４に入れると、図１及び図３に示すように、軟質部材１０にて親指Ｈが覆われた状態になり、親指掛け部材７の端が親指Ｈに接触することは勿論のこと、内装用親指袋４にどの方向から衝撃力が作用しても、これを軟質部材１０にて確実に吸収することができるようになっている。

前記軟質部材１０は、図３及び図４（ａ），（ｂ）に示すように、天然皮革、合成皮革、人工皮革や布などからなる２枚のシート状の部材１０Ａ，１０Ｂの間にスポンジ又はフェルトからなるクッション材１０Ｃを挟み込んで外周縁を縫着（接着剤でもよい）により一体化している。そして、前記３層からなる軟質部材１０の両端を重ね合わせて縫着又は接着剤により連結することで筒状に構成している。このようにシート状の部材１０Ａ，１０Ｂにてクッション材１０Ｃを挟み込むことによって、親指との摩擦による軟質部材１０の耐久性を高めることができるが、一枚のクッション性を有する部材から構成してもよい。前記のように構成された筒状の軟質部材１０を内装用親指袋４に挿入する又は内装用親指袋４を作製するときに軟質部材１０を挟み込んでそれら両者の特定箇所を縫着又は接着剤により装着固定することができるようにしている。前記軟質部材１０は、外装用袋１の外形に合わせて外装用袋１からはみ出すことがないようにするために、２つの段部１０Ｄや円弧部１０Ｅを備えさせたほぼ扇形状に構成して、親指挿入方向先端側ほど内径が小さくなる形状にすることで、親指を差し込み易くしているが、矩形状や多角形状などであってもよい。尚、ここでは筒状のものを示しているが、場合によっては繋ぎ合わせて筒状にしないで繋ぎ合わせる両端同士に多少の隙間が発生している状態で軟質部材１０を外装用袋１に備えさせてもよい。又、軟質部材１０を発泡性合成樹脂などで作製する場合には、両端を繋ぎ合わせる必要がなく、筒状の状態で形成することができる。尚、軟質部材１０の厚みや大きさは、親指を良好に覆うことができるものであればどのように設定しても構わない。例えば、図６に示すように、軟質部材１０の親指Ｈの挿入方向終端部からさらに円弧状に延びる２つの円弧部１０Ｇを備えさせて、筒状の軟質部材１０の長手方向の寸法をさらに長くしてもよい。前記軟質部材１０の親指Ｈの挿入方向終端部を縫着又は接着剤にて閉じたもので実施しても構わない。

前記筒状の軟質部材１０に親指を挿入した状態において親指の腹側に接触する軟質部材１０の親指挿入始端部分を外側に折り返している。つまり、軟質部材１０の一方のシート状部材１０Ａを他方のシート状部材１０Ｂよりも少し大きな外形寸法とすることによって、大きなシート状部材（内側に位置する）１０Ａのはみ出した端部を小さなシート状部材１０Ｂの外面側に折り込むことで親指挿入始端部分、前記円弧部１０Ｅを角の取れた湾曲部とすることができ、その親指挿入始端部分１０Ｅに親指の腹側が接触しても違和感がないようにすることができる。前記親指の背側（爪側）が接触する側の親指挿入始端部分１０Ｆは、前記のように湾曲部にしていないのは、外装用袋１の端部に備えた湾曲部１Ｋの手前で湾曲部に連なるように位置することから、親指挿入始端部分１０Ｆに親指Ｈの背側（爪側）が接触することがないため、前記のような湾曲部を備えさせる必要がないのである。

野球用グラブの側面図である。 野球用グラブの底面図である。 軟質部材を捕球面側から見た図である。 （ａ）は軟質部材の斜視図、（ｂ）は軟質部材の断面図である。 （ａ）は親指掛け部材の取り付け部を示す内装袋の一部省略した展開図、（ｂ）は内装袋の斜視図である。 別の軟質部材の斜視図である。

符号の説明

１ 外装用袋
１Ｋ 湾曲部
２ 内装袋
３ 外装用親指袋
４ 内装用親指袋
５ シート状部材
５Ｂ 親指部
５ｂ 先端部
５Ａ 捕球面部
６ シート状部材
７ 親指掛け部材
８ 紐
９ 親指
１０Ｃ クッション材
１０Ａ シート状部材
１０Ｂ シート状部材
１０Ｆ 親指挿入始端部分
１０Ｄ 段部
１０ 軟質部材
１０Ｅ 親指挿入始端部分（円弧部）
Ｈ 親指

Claims (3)

1. グラブ本体内に内装用の親指袋を備え、前記親指袋の内部に親指掛け部材を備えさせてなる野球用グラブにおいて、皮革又は布からなる２枚のシート材の間にスポンジ又はフェルトからなるクッション材を挟み込んで一体化したものを用い、前記親指袋の内部空間の、前記親指掛け部材が備えられた空間に、該親指袋内に入り込む親指を覆うためのほぼ筒状に構成された軟質部材を、それの長さ方向の寸法が該親指掛け部材と同等又はそれよりも長い寸法となるように設定して親指掛け部材の内側に備えさせたことを特徴とする野球用グラブ。
2. 前記ほぼ筒状の軟質部材に親指を挿入した状態において親指の腹側に接触する該軟質部材の親指挿入始端部分を外側に折り返してなる請求項１記載の野球用グラブ。
3. 前記親指袋が、少なくとも２枚のシート状部材を縫い合わせる又は接着剤にて接合して袋状に構成してなり、前記一方のシート状部材から他方のシート状部材を通してから前記グラブ本体に貫通させることにより該親指袋を該グラブ本体に固定するための紐に前記親指掛け部材を固定してなる請求項１記載の野球用グラブ。

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