JP5400927B2 - 野球またはソフトボール用捕球具 - Google Patents

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Description

本発明は、野球またはソフトボール用捕球具に関し、より特定的には、装着者の手掌側を覆う受球面部の表面上に樹脂層を形成した野球またはソフトボール用捕球具に関する。
従来から、捕球の際のボールの脱落を抑制するために、捕球面全面上に合成樹脂製の被膜を形成した捕球具は知られている。このような捕球具は、たとえば特公昭60−39362号公報や特公平1−45389号公報等に記載されている。
また、打球等を確実に捕球できるように捕球面に弾性材からなる滑り止め体を設けた野球用グローブが実開昭63−186474号公報に記載され、ボールの取りこぼしを防止すべく受球面皮の表面に該受球面皮とは異なる材料で構成される突出部を設けた捕球具が特開2006−239402号公報に記載されている。
特公昭60−39362号公報 特公平1−45389号公報 実開昭63−186474号公報 特開2006−239402号公報
上記特公昭60−39362号公報や特公平1−45389号公報に記載された捕球具では、捕球面全面上に合成樹脂製の被膜を形成しているので、捕球具全体が硬くなり、捕球時にボールを上手く掴むことが困難となる。また、これらの文献に記載の捕球具では、捕球時に合成樹脂製の被膜をボールに沿うように変形させることが困難であることから、「受球面部の表面上に選択的に形成された樹脂層をボールに沿うように変形させて捕球時の捕球具内でのボールの滑りを抑制する」という技術思想は、特公昭60−39362号公報や特公平1−45389号公報には全く記載されていないといえる。
他方、実開昭63−186474号公報に記載の滑り止め体は捕球面の小孔内に設けられているので、ボールを捕球した際にボールと滑り止め体との接触面積が小さくなる。そのため、やはり捕球時のボールの滑りを効果的に抑制することができないという問題が生じる。当該文献に記載の滑り止め体も、その形状等に鑑み、捕球時にボールに沿うように変形させることが困難であるといえる。したがって、実開昭63−186474号公報にも、「受球面部の表面上に選択的に形成された樹脂層をボールに沿うように変形させて捕球時の捕球具内でのボールの滑りを抑制する」という技術思想は記載されていない。
特開2006−239402号公報に記載の捕球具の場合も、突出部とボールとの接触面積自体は比較的小さいものである。そのため、設計時に予定された速度で装着者が捕球具を閉じることができれば、ボールの取りこぼしを回避できるとともに捕球時のボールの滑りをも抑制できる。しかし、装着者による捕球具の開閉速度には当然ながらばらつきが存在するので、この開閉速度が設計時に予定された値よりも小さい場合には、やはり捕球時の捕球具内でのボールの滑りを効果的に抑制することができないという問題が生じる。また、上記突出部は、捕球具を閉じる時間を短縮してボールの取りこぼしを防止するために設けられたものであり、突出部をボールに沿うように変形させて捕球時のボールの滑りを抑制するものではない。したがって、この文献にもやはり「受球面部の表面上に選択的に形成された樹脂層をボールに沿うように変形させて捕球時の捕球具内でのボールの滑りを抑制する」という技術思想は記載されているとはいえない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、捕球時にボールに沿うように樹脂層を変形可能とすることでボールの滑りを効果的に抑制するとともに、捕球時の開閉操作をも容易に行うことが可能となる野球またはソフトボール用捕球具を提供することを目的とする。
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、1つの局面では、装着した際に装着者の手掌側を覆いボールを受ける受球面を含む受球面部と、受球面部の表面上に選択的に形成されボールを捕球した際にボールの表面に沿うように変形可能な第1と第2樹脂層(樹脂部)と、装着者の手の甲側を覆う背面部とを備える。
上記第1と第2樹脂層は、たとえば線状に形成された線状樹脂層や、面状に形成された面状樹脂層を含むものであってもよい。また、上記第1と第2樹脂層間に第3樹脂層を備えるものであってもよい。この場合、第3樹脂層は、第1と第2樹脂層を接続するものであってもよいが、第3樹脂層によって第1と第2樹脂層間を接続しなくてもよい。また、上記第1から第3樹脂層間あるいは第1から第3樹脂層の少なくとも1つに樹脂層の変形を許容あるいは促進可能となるスリットや薄肉部等を設けてもよい。
上記第1、第2および第3樹脂層の少なくとも1つは、周縁部に、平坦な上面を有する平坦部を含むものであってもよい。また、平坦部にスリットや薄肉部等を設けることで複数に分割あるいは区画してもよい。
また、上記第1および第2樹脂層の厚みと、第3樹脂層の厚みとを異ならせてもよい。捕球具の多くは、装着者の親指とそれ以外の指とをそれぞれ受け入れる複数の指袋を含むが、第3樹脂層の厚みを、第1および第2樹脂層の厚みよりも厚くした場合、少なくとも1つの上記指袋の付根部に第3樹脂層を配置することが考えられる。また、受球面の周囲に第3樹脂層を配置してもよい。
他方、各樹脂層の材質については、たとえば上記第1と第2樹脂層の材質を同一のものとしてもよいが、異ならせてもよい。また、第1および第2樹脂層の材質と、上記第3樹脂層の材質とを異ならせてもよい。
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、他の局面では、装着した際に装着者の手掌側を覆いボールを受ける受球面を含む受球面部と、受球面部の表面全体にわたって形成され受球面部の一部表面を露出させ捕球時にボールを把持する際に要する力を低減可能な開口部を有する樹脂層と、装着者の手の甲側を覆う背面部とを備える。
上記樹脂層は、開口部の両側に位置する第1と第2樹脂層を含むものであってもよい。この第1と第2樹脂層は、好ましくは、開口部側の側面に平坦面を有する。捕球具は、通常は装着者の親指とそれ以外の指とをそれぞれ受け入れる複数の指袋を有するが、上記樹脂層に厚肉部と薄肉部とを設け、指袋の付根部に厚肉部を配置するようにしてもよい。また、受球面の周囲に厚肉部を配置してもよい。
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、さらに他の局面では、装着した際に装着者の手掌側を覆いボールを受ける受球面を含む受球面部と、受球面部の表面上に形成された第1樹脂パターンと、受球面部の表面上に第1樹脂パターンと間隔をあけて形成された第2樹脂パターンと、第1と第2樹脂パターン間に形成され第1と第2樹脂パターンの少なくとも一方の捕球時の過度の変形を抑制可能な補助樹脂パターンと、装着者の手の甲側を覆う背面部とを備える。
上記補助樹脂パターンは、第1と第2樹脂パターンの一方と接続されてもよい。この場合に、第1と第2樹脂パターンの他方と補助樹脂パターンとの間にスリットや薄肉部等を設けてもよい。上記各樹脂パターンは、同じ材質の樹脂で構成してもよいが、異なる樹脂で構成してもよい。
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具は、さらに他の局面では、装着した際に装着者の手掌側を覆いボールを受ける受球面を含む受球面部と、受球面部の表面全体にわたって形成されたメッシュ状の樹脂層と、装着者の手の甲側を覆う背面部とを備える。ここで、メッシュ状の樹脂層とは、本願明細書では、「規則的もしくは不規則な複数の開口部を全体にわたって有する樹脂層」のことをいう。
上記受球面部の表層部は、天然皮革、人工皮革、合成皮革、不織布のいずれかで構成すればよい。また、受球面部の表層部は、平滑ではない状態にすることが好ましい。たとえば、受球面部の表層部に粗面化処理を施して微小な凹凸を形成することが考えられる。
本発明に係る野球またはソフトボール用捕球具では、受球面部の表面上に選択的に樹脂層を形成しているので、捕球具の開閉時の樹脂層による抵抗を低減して開閉操作を容易に行うことができることに加え、捕球時にボールに沿うように受球面部表面上の樹脂層を容易に変形させることもできる。その結果、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制することができ、かつ操作性にも優れた捕球具が得られる。
本発明の実施の形態1における野球またはソフトボール用捕球具の正面図である。 図1に示す捕球具の受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 図2のIII−III線に沿う断面構造を模式的に示す図である。 実施の形態1の変形例の野球またはソフトボール用捕球具を示す正面図である。 図4に示す捕球具の受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 本発明の実施の形態2における野球またはソフトボール用捕球具の受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 実施の形態2の変形例の捕球具における受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 本発明の実施の形態3における野球またはソフトボール用捕球具の受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 実施の形態3の変形例の捕球具における受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 図1に示す捕球具の変形例における野球またはソフトボール用捕球具の正面図である。 図10に示す捕球具の受球面部材を展開した状態を示す平面図である。 図11のXII−XII線に沿う断面構造を模式的に示す図である。
以下、図1〜図9を用いて本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における野球またはソフトボール用捕球具の正面図である。図1に示す本実施の形態1では、捕球具として野球またはソフトボール用グラブを例示しているが、ボールを捕えることができるものであれば、キャッチャーミットやファーストミットのようなグラブ以外の捕球具にも本発明を適用可能である。
本実施の形態1の野球またはソフトボール用捕球具1は、たとえば外皮と、外皮内に挿入される内皮とを備える。しかし、内皮を省略し、外皮のみで捕球具本体を構成することも可能である。
外皮は、捕球具を装着した際に装着者(使用者)の手掌側を覆いボールを受ける受球面を含む受球面部材と、捕球具を装着した際に装着者の手甲側を覆う背面部を含む背面部材とを備え、天然皮革、人工皮革、合成皮革、不織布またはこれらと等価な素材で構成することができる。
外皮は、図1の例では、受球面部材8と背面部材とを縫着して形成され、装着者の親指を受け入れる親指袋2と、装着者の人差し指を受け入れる人差し指袋4と、親指袋2と人差し指袋4との間に設けられるウェブ部3と、装着者の中指を受け入れる中指袋5と、装着者の薬指を受け入れる薬指袋6と、装着者の小指を受け入れる小指袋7とを有する。
内皮は、受球面部材側に位置する手掌部材と背面部材側に位置する手甲部材とを縫着して形成される。手掌部材や手甲部材も、外皮の場合と同様に、天然皮革、人工皮革、合成皮革、不織布またはこれらと等価な素材で構成可能である。また内皮も、外皮と同様に、親指袋と、人差し指袋と、中指袋と、薬指袋と、小指袋とを有する。これらの指袋は、それぞれ外皮における対応の指袋、すなわち外皮の親指袋2、人差し指袋4、中指袋5、薬指袋6、小指袋7内にそれぞれ挿入される。受球面部材8と手掌部材との間に芯材を設置してもよい。芯材は、フェルトなどの素材で構成することができる。
上記の内皮を外皮内に挿入し、受球面部材8と手掌部材との間に芯材を設置し、内皮と外皮の所要部を縫合して皮紐で締結することにより、本実施の形態1に係る捕球具1を作製することができる。
図1に示すように、本実施の形態1における捕球具1では、受球面部材8の表面であって受球面を含む側の表面である受球面部8a上に選択的に樹脂層を形成している。この樹脂層は、たとえば注型成型のような樹脂成型法により形成可能である。後述する実施の形態においても同様である。他方、受球面部8aの表層部は、平滑ではない状態にすることが好ましい。たとえば、受球面部8aの表層部に粗面化処理を施して微小な凹凸を形成したり、表層部を軟化させたり、粗面化層や軟化層を別途形成すること等が考えられる。
上記のように受球面部8a上に選択的に樹脂層を形成することにより、捕球具1の開閉時の樹脂層による抵抗を低減して開閉操作を容易に行うことができることに加え、捕球時にボールに沿うように受球面部8aの表面上の樹脂層を変形させることができる。その結果、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制することができ、かつ操作性にも優れた捕球具が得られる。
図2に、受球面部材8を展開した状態の平面図を示す。図2に示す例では、受球面部8aの表面上に、間隔をあけて複数の樹脂層を形成している。より詳しくは、受球面部8aの中央に位置する受球面上にメッシュ状の樹脂層9を形成するとともに、この中央の樹脂層9と間隔をあけてその両側にさらにメッシュ状の樹脂層9を形成している。また、この中央の樹脂層9と隣り合う位置に、幅の狭い線状パターンである細幅樹脂層(補助樹脂パターン)12と、幅の広い面状パターンである広幅樹脂層10とを形成し、これらのさらに外側に、メッシュ状の樹脂層9を介在して、細幅樹脂層12および広幅樹脂層10を形成している。
樹脂層9は、たとえば0.5mm〜1.5mm程度の厚みのウレタン樹脂のような熱硬化性樹脂で構成することができ、受球面部8aの表面を露出させる開口部9aを有している。このように開口部9aを設けることで、樹脂層9を曲げ易くすることができる。それにより、捕球具1の開閉操作の際に要する力を低減することができ、捕球時にボールを把持するために必要な力を低減することができる。
なお、上述の効果を顕著なものとするという観点からは、樹脂層9を軟質の材料で構成したり、樹脂層9の厚みを薄くすることが好ましい。それにより、捕球時にボールに沿うように樹脂層9を格段に容易に変形させることができるばかりでなく、捕球具1の開閉操作の際に要する力をも効果的に低減することができる。
図1や図2の例では、開口部9aの形状は6角形であるが、円形や、6角形以外の多角形等任意の開口部形状を採用可能である。また、開口部9aの数、大きさ等についても任意に設定可能である。
他方、受球面部8aからの樹脂層9の剥離強度を確保するには、図2に示すように、受球面部8aの表面の広い範囲にわたって樹脂層9を密着形成すればよい。それにより、樹脂層9と受球面部8aとの接触面積を確保することができ、受球面部8aからの樹脂層9の剥離強度を確保することができる。また、広い範囲にわたって樹脂層9を形成することにより、捕球時のボールから受ける衝撃を分散することもでき、この点からも、受球面部8aからの樹脂層9の剥離強度を確保することができる。
樹脂層9は、図1や図2に示すように、開口部9aの両側に位置する1組の細い線状樹脂パターンと、この1組の線状樹脂パターンを接続(連結)する接続樹脂パターンとを備えるものであると見ることもできる。このように1組の線状樹脂パターンを接続樹脂パターンで接続することにより、樹脂層9と受球面部8aとの密着面積を増大することができるばかりでなく、樹脂層9に剥離が生じる場合の起点となり得る箇所を減少することができ、剥離強度を向上することができる。
しかし、接続樹脂パターンを省略したり、接続樹脂パターンにスリット(間隙)を設ける等して、上記1組の線状樹脂パターンを互いに分離するようにしてもよい。この場合には、樹脂層9をさらに曲げ(変形)易くすることができ、捕球具1の操作性をさらに向上することができる。
また、樹脂層9は、受球面部8aの表面上の広い範囲にわたって変形可能に形成することが好ましい。それにより、捕球した際にボールに沿って樹脂層9を変形させ、樹脂層9でボールを包み込むようにすることも可能となる。それにより、捕球時のボールと樹脂層9との接触面積を増大することができ、捕球時のボールの滑りをより効果的に抑制することができる。
樹脂層9と、細幅樹脂層12と、広幅樹脂層10とは、互いに接続してもよいが、互いの間に各樹脂層の変形を許容するスリット(間隙)や薄肉部を設けてもよい。たとえば、樹脂層9と細幅樹脂層12との間と、細幅樹脂層12と広幅樹脂層10との間の少なくとも1箇所にスリット(間隙)や薄肉部等を設けることが考えられる。それにより、スリット(間隙)や薄肉部を設けた箇所で樹脂層あるいは捕球具を曲げ易くすることができる。
図3に、図2のIII−III線に沿う断面構造を模式的に示す。図3に示すように、本実施の形態1では、細幅樹脂層12と広幅樹脂層10との間にスリット(間隙)13を設けている。また、広幅樹脂層10の中央部に凸部11を設けている。このように広幅樹脂層10に凸部11を設けるとともに、細幅樹脂層12と広幅樹脂層10との間にスリット13を設けることで、捕球時にボールが凸部11に当たった際の凸部11や広幅樹脂層10のような大きな樹脂パターンのある程度の変形を許容して周縁部での応力集中の程度を低減する一方で、これらの過度の変形をも抑制することができる。その結果、受球面部8aからの凸部11および広幅樹脂層10の剥離強度を向上することができる。つまり、細幅樹脂層12は、凸部11および広幅樹脂層10を補助することが可能な補助樹脂パターンとして機能する。なお、細幅樹脂層12および樹脂層9の肉厚は、たとえば0.5mm〜1.5mm程度でよく、広幅樹脂層10の肉厚は、たとえば細幅樹脂層12および樹脂層9の肉厚以上の値、具体的には1.5mm〜3.0mm程度でよい。また、凸部11の肉厚は、たとえば細幅樹脂層12、広幅樹脂層10および樹脂層9の肉厚よりも大きい値、具体的には6.0mm〜9.0mm程度でよい。
図3に示すように、細幅樹脂層12の一方側は樹脂層9と接続され、細幅樹脂層12の他方側に上述のスリット13を設けている。また、細幅樹脂層12は、厚肉部である凸部11および広幅樹脂層10を取り囲むように形成されており、細幅樹脂層12の周囲には薄肉部である樹脂層9が形成されている。
樹脂層9、細幅樹脂層12、広幅樹脂層10は、同一の材料で形成してもよいが、異なる材料で形成してもよい。たとえば、樹脂層9、細幅樹脂層12、広幅樹脂層10を、ラバー、シリコン、PVC(ポリ塩化ビニル)、熱硬化ポリウレタン、ウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体)のいずれか一種以上で構成することが考えられる。
また、図3の例では、広幅樹脂層10と凸部11を同一の材料で形成しているが、これらを異なる材料で形成してもよい。たとえば、相対的に厚肉部である凸部11を、相対的に薄肉部である凸部11以外の広幅樹脂層10よりも硬度の低い材料で形成することが考えられる。つまり、樹脂層において、捕球時にボールと接触する可能性の高い部分の硬度を、ボールと接触する可能性の低い部分の硬度よりも低くすることが考えられる。それにより、ボールを掴むようにして捕球し易くなる。これとは反対に、樹脂層において、捕球時にボールと接触する可能性の高い部分の硬度を、ボールと接触する可能性の低い部分の硬度よりも高くすることも考えられる。この場合には、ボールを捕球した際の衝撃を効果的に緩和することができる。
樹脂層9、細幅樹脂層12、広幅樹脂層10の厚みについては、これらの厚みを等しくしてもよいが、これらの厚みを異ならせてもよい。たとえば、樹脂層9を細幅樹脂層12や広幅樹脂層10よりも薄くし、細幅樹脂層12を広幅樹脂層10よりも薄くすることが考えられる。さらに、樹脂層9、細幅樹脂層12、広幅樹脂層10自体の厚みを変化させることも考えられる。
図2の例では、樹脂層9と細幅樹脂層12の厚みをほぼ一定とする一方で、広幅樹脂層10の厚みを変化させているが、樹脂層9や細幅樹脂層12の厚みを変化させてもよい。各樹脂層の厚みを変化させる手法としては、たとえば各樹脂層の表面に凹凸部を設けることが考えられる。図2の例では、広幅樹脂層10に凸部11を設けることで、広幅樹脂層10の厚みを変化させている。
図3に示すように、広幅樹脂層10は、その周縁部に、平坦な上面を有する平坦部を有する。図3の例では、平坦部は一体に形成されているが、この平坦部にスリット(間隙)や薄肉部等を設けることで複数に分割または区画してもよい。それにより、スリット等の数を増やすことができ、樹脂層を曲げ変形し易くなって捕球具1の開閉操作が容易となるばかりでなく、受球面部8aからの凸部11および広幅樹脂層10の剥離強度をさらに向上することもできる。
図3の例では、上記平坦部と細幅樹脂層12の厚みをほぼ等しくする一方で、樹脂層9の厚みを、細幅樹脂層12や広幅樹脂層10の厚みよりも薄くしている。なお、樹脂層9や細幅樹脂層12は、平坦な上面を有する平坦部で構成されている。また、細幅樹脂層12や広幅樹脂層10は、スリット13側の側面に平坦面を有する。
図2に示すように、受球面部材8は、親指袋2の一部を構成する親指部2aと、人差し指袋4の一部を構成する人差し指部4aと、中指袋5の一部を構成する中指部5aと、薬指袋6の一部を構成する薬指部6aと、小指袋7の一部を構成する小指部7aとを有する。そして、各指部2a,4a,5a,6a,7aの付根部あるいはその近傍に、厚肉部である細幅樹脂層12と広幅樹脂層10とを配置している。
なお、親指部2aと人差し指部4aと中指部5aと薬指部6aと小指部7aの少なくとも1つの指部の付根部あるいはその近傍に、樹脂層の厚肉部を配置すればよい。また、受球面の周囲に、樹脂層の厚肉部を配置してもよい。
それにより、捕球時に、厚肉部でボールを掴むあるいは包み込むようにしてボールを容易に捕球することができる。また、捕球時のボールの滑りをも効果的に抑制することができる。このとき、厚肉部の周囲に薄肉部である樹脂層9が存在するので、捕球時に、薄肉部である樹脂層9が形成されている部分で捕球具1を容易に曲げ変形させて捕球具1を開閉操作することができ、さらに薄肉部である樹脂層9をもボールに接触させることができる。したがって、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制しながら、捕球具1の操作性をも向上することができる。
図4と図5に、上述の実施の形態1における捕球具1の変形例を示す。なお、図4と図5では、図示の便宜上、メッシュ状の樹脂層9の開口部9aを黒色で着色している。
図4と図5に示すように、略矩形の開口部9aを樹脂層9の全体にわたって設けてもよい。また、受球面の中央部を中心とする同心円上に位置するように開口部9aを配置してもよい。
さらに、図4と図5に示す例では、受球面部材8の親指部2aと、人差し指部4aと、中指部5aと、薬指部6aと、小指部7aとに、それぞれ厚肉部である凸部11および広幅樹脂層10を形成している。凸部11および広幅樹脂層10は、上記各指部2a,4a,5a,6a,7aの長手方向に延在するように形成されている。
各広幅樹脂層10にはそれぞれ2つの凸部11が設けられており、一方の凸部11は、各指部2a,4a,5a,6a,7aの付根部あるいはその近傍に配置され、他方の凸部11は、各指部2a,4a,5a,6a,7aの先端部あるいはその近傍に配置されている。
図4と図5に示すように、各指部2a,4a,5a,6a,7aに設けた凸部11および広幅樹脂層10の両側には、薄肉部である樹脂層9が配置されている。つまり、各指部2a,4a,5a,6a,7aの幅方向に配置された1組の樹脂層9が、厚肉部である凸部11および広幅樹脂層10を介して接続されている。また、親指部2aと小指部7aとの間に位置する受球面部8aの周縁部にも、凸部11および広幅樹脂層10を形成している。これ以外の構成については、上述の実施の形態1の場合と基本的に同様である。
本変形例の場合も、樹脂層9に開口部9aを設けているので、捕球時に樹脂層9を曲げ易くすることができ、捕球具1の開閉操作の際に要する力を低減することができる。したがって、捕球具の開閉操作を容易に行なうことができる。
また、受球面部8aの表面上の広い範囲にわたって厚みの薄い樹脂層9を形成するとともに、この樹脂層9と隣り合う位置に厚い凸部11および広幅樹脂層10を形成しているので、捕球時に、凸部11や広幅樹脂層10をボールに接触させることができることに加えて、薄肉部である樹脂層9をもボールに接触させることができる。それにより、捕球時におけるボールと樹脂層との接触面積をも確保することができ、捕球時における捕球具内でのボールの滑りをも効果的に抑制することができる。さらに、捕球時に、凸部11や広幅樹脂層10のような厚肉部でボールを掴むようにして捕球することもできるので、容易に捕球することもできる。
以上より、本変形例の捕球具によれば、捕球時の捕球具内におけるボールの滑りを効果的に抑制しながら捕球具の操作性をも向上することができ、さらにボールを掴むようにして容易に捕球することもできる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2とその変形例について図6と図7を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2における補球具の受球面部材8を示す平面図であり、図7は、本実施の形態2の変形例における補球具の受球面部材8を示す平面図である。
図6に示すように、本実施の形態2では、受球面部8aの表面上全体にわたってメッシュ状の薄い樹脂層9のみを形成し、上述の細幅樹脂層12や凸部11や広幅樹脂層10を省略している。本実施の形態2の場合、樹脂層9を軟質の樹脂で形成し、樹脂層9の全体にわたって開口部9aを設け、樹脂層9の厚みを0.5mm〜1.5mm程度に薄くすることが好ましい。
本実施の形態2の場合も、樹脂層9に開口部9aを設けているので、捕球時に樹脂層9とともに捕球具1を曲げ易くすることができる。それにより、捕球具1の開閉操作の際に要する力を低減することができ、捕球時にボールを把持する際に要する力を低減することができる。
また、受球面部8aの表面上の広い範囲にわたって厚みの薄い樹脂層9を形成しているので、捕球時にボールに沿って樹脂層9を容易に変形させることができ、樹脂層9でボールを包み込むようにしてボールを捕球することができる。その結果、捕球時のボールと樹脂層9との接触面積を大きくすることができ、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制することができる。したがって、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制しながら、捕球具の操作性をも向上することができる。
図7に示すように、格子状の樹脂パターンで樹脂層9を形成してもよい。この場合も、図6に示す場合と同様の効果を得ることができる。また、不規則な形状の開口部9aを樹脂層9の全体にわたって設けることも考えられる。この場合には、たとえば開口部9aの大きさにより樹脂層9の曲げ(変形)し易さの程度を制御することができる。
なお、本実施の形態2において、開口部9aの形状や大きさは任意に変更可能である。たとえば、複数の開口部9a同士を連結し、比較的大きな開口部9aを設けてもよい。また、親指部2a、人差し指部4a、中指部5a、薬指部6a、小指部7aの少なくとも1つの指部の付根部あるいはその近傍に、各指部の幅方向に延びる細長い開口部9aを設けることも考えられる。それにより、さらに容易に樹脂層9を変形させることができる。ただし、受球面部8aへの樹脂層9の密着強度を確保するという観点からは、開口部9aを極端に大きくしない方がよいと考えられる。
他方、樹脂層9の厚みを変化させることも考えられる。たとえば、親指部2a、人差し指部4a、中指部5a、薬指部6a、小指部7aの少なくとも1つの指部の付根部あるいはその近傍に位置する樹脂層9の厚みを、それ以外の樹脂層9の厚みよりも厚くすることが考えられる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3とその変形例について図8と図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態3における補球具の受球面部材8を示す平面図であり、図9は、本実施の形態3の変形例における補球具の受球面部材8を示す平面図である。
図8に示すように、本実施の形態3では、受球面部8aの表面上に間隔をあけて広幅樹脂層10を形成している。そして、広幅樹脂層10の両側に細幅樹脂層12を形成している。なお、広幅樹脂層10に、実施の形態1の場合と同様の凸部11を設ける等して、広幅樹脂層10の厚みを変化させてもよい。
広幅樹脂層10と細幅樹脂層12の厚み、材質、硬度等の諸特性を同一のものとしてもよいが、異ならせてもよい。たとえば、広幅樹脂層10を細幅樹脂層12よりも厚くしてもよく、広幅樹脂層10を細幅樹脂層12よりも薄くしてもよい。また広幅樹脂層10を細幅樹脂層12よりも高い硬度の材質で構成してもよく、広幅樹脂層10を細幅樹脂層12よりも低い硬度の材質で構成してもよい。
図8の例では、広幅樹脂層10と細幅樹脂層12は、親指部2a、人差し指部4a、中指部5a、薬指部6a、小指部7aの付根部近傍から、各指部の先端近傍に向かって互いに間隔をあけて複数箇所に形成されているが、各指部2a,4a,5a,6a,7aの少なくとも1つに対し広幅樹脂層10や細幅樹脂層12を設けてもよい。また、広幅樹脂層10と細幅樹脂層12は、受球面の中央部の両側に配置されているが、受球面を取り囲むように広幅樹脂層10や細幅樹脂層12を形成してもよい。さらに、広幅樹脂層10や細幅樹脂層12の形状は任意に選択可能であり、図8に示すように広幅樹脂層10を帯状パターンとしてもよいが、たとえば矩形の面状パターンとすることもできる。この場合、広幅樹脂層10を取り囲むように細幅樹脂層12を形成することも考えられる。
本実施の形態3の場合、受球面の中央部に広幅樹脂層10や細幅樹脂層12を形成していないため受球面の中央部に大きな開口部を設けたのと等価な状態となり、また複数の樹脂パターンを形成するようにしていることから、上述の各実施の形態の場合と同様に、やはり捕球時に樹脂層とともに捕球具を曲げ易くすることができる。したがって、捕球具1の開閉操作の際に要する力を低減することができ、捕球時にボールを把持する際に要する力を低減することができる。
また、広幅樹脂層10と細幅樹脂層12との間に境界部が存在するので、捕球時にボールに沿って広幅樹脂層10と細幅樹脂層12とを容易に変形させることができ、捕球時のボールと樹脂層との接触面積を確保することもできる。その結果、捕球時のボールの滑りをも効果的に抑制することができる。したがって、捕球時のボールの滑りを効果的に抑制しながら、捕球具の操作性をも向上することができる。
図9に示すように、広幅樹脂層10と細幅樹脂層12との間にスリット(間隙)13や薄肉部を設けることも可能である。この場合には、さらに広幅樹脂層10や細幅樹脂層12を容易に変形させることができるばかりでなく、広幅樹脂層10や細幅樹脂層12の剥離強度をも向上することができる。なお、スリット13や薄肉部は、広幅樹脂層10と細幅樹脂層12との間あるいは広幅樹脂層10内や細幅樹脂層12内に選択的に設けてもよい。
なお、上述の各実施の形態を適宜変形することも可能である。たとえば図10〜図13に示すように、図1〜図3に示す実施の形態から凸部11を省略することも可能である。また、図1〜図3に示す凸部11の形成位置も適宜変更可能である。たとえば凸部11を親指袋2にのみ設けてもよく、中指袋5、薬指袋6、小指袋7のいずれか1つまたは2つに設けてもよい。
以上のように、本発明の実施の形態について説明したが、上述の各実施の形態の構成を適宜組合せることも当初から予定されている。また、上述の各実施の形態の構成の一部を適宜省略することも可能である。
さらに、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 野球またはソフトボール用捕球具、2 親指袋、2a 親指部、3 ウェブ部、4
人差し指袋、4a 人差し指部、5 中指袋、5a 中指部、6 薬指袋、6a 薬指部、7 小指袋、7a 小指部、8 受球面部材、8a 受球面部、9 樹脂層、9a 開口部、10 太幅樹脂層、11 凸部、12 細幅樹脂層、13 スリット。

Claims (4)

  1. 装着した際に装着者の手掌側を覆い、ボールを受ける受球面を含む受球面部(8a)と、
    前記受球面部(8a)上に形成され、前記受球面部(8a)の一部表面を露出させ捕球時にボールを把持する際に要する力を低減可能なメッシュ状の薄肉樹脂層(9)と、
    前記受球面部(8a)上で前記薄肉樹脂層(9)と隣り合う位置に形成され、前記薄肉樹脂層(9)よりも厚みの大きい厚肉樹脂層(10,11,12)と、
    装着者の手の甲側を覆う背面部とを備えた、野球またはソフトボール用捕球具。
  2. 前記薄肉樹脂層(9)と前記厚肉樹脂層(10,11,12)との間に、間隙(13)を設けた、請求項1に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
  3. 前記厚肉樹脂層(10,11,12)は、相対的に細幅である細幅樹脂層(12)と、相対的に広幅である広幅樹脂層(11)とを含む、請求項1または請求項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
  4. 前記受球面部(8a)の表層部は、天然皮革、人工皮革、合成皮革、不織布のいずれかで構成される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の野球またはソフトボール用捕球具。
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