JP6678358B2 - 骨格形成剤、これを用いた電極及び電極の製造方法 - Google Patents

骨格形成剤、これを用いた電極及び電極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池の電極における活物質層の骨格形成に用いる骨格形成剤、これを用いた電極及び電極の製造方法に関する。
二次電池の利用分野は、電子機器から自動車、大型蓄電システムなどへと展開しており、その市場規模は10兆円以上の産業に成長することが期待される。とりわけ、スマートフォン、タブレット型端末などの情報通信機器が、めざましい普及を遂げ、全世界の普及率は3割を超えた。
加えて、二次電池は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等をはじめとする次世代自動車の電源へと応用範囲も広がっている。また、二次電池は、2011年の東日本大震災を契機に、家庭用バックアップ電源、自然エネルギーの蓄電、負荷平準化などに用いられるようになり、二次電池の用途は拡大しつつある。このように、二次電池は、省エネルギー技術や新エネルギー技術の導入においても不可欠な存在である。
従来、二次電池は、ニッケル−カドニウム電池やニッケル−水素電池などのアルカリ二次電池が主流であったが、小型、軽量、高電圧、メモリー効果なしという特徴から、非水電解質二次電池、特にリチウム二次電池(リチウムイオン電池)の使用が増大している。非水電解質二次電池は、正極、負極、セパレータ、電解液または電解質、電槽(収納ケース)から構成される。
正極や負極などの電極は、活物質、導電助剤、有機高分子バインダおよび集電体から構成される。一般的に、電極は、活物質、導電助剤、有機バインダを溶媒に混合してスラリー状にし、これを集電体上に塗工し、乾燥後、ロールプレスなどで圧延することによって製造される。
電極を乾燥した後に圧延するのは、電極の活物質層、すなわち活物質、導電助剤、バインダからなる塗布層の体積を収縮させることで、導電助剤や集電体との接触面積を増大させるためである。これにより、活物質層の電子伝導ネットワークを強固に構築し、電子伝導性を向上させる。
バインダは、活物質と活物質、活物質と導電助剤、活物質と集電体、導電助剤と集電体などを結着するために用いられている。バインダは、溶媒に溶かし液体状のものを用いる「溶液型」と、固形分を溶媒中に分散させて用いる「分散型(エマルジョン・ラテックス型)」と、バインダ前駆体を熱や光で反応させて用いる「反応型」とに大別することができる。
また、バインダは、溶媒種によって水系と有機溶媒系に分けることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)は溶解型のバインダであり、電極スラリー作製時には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒が使用される。スチレンブタジエンゴム(SBR)は分散型のバインダであり、水中にSBR微粒子を分散して用いられる。ポリイミド(PI)は反応型のバインダであり、PI前駆体をNMPなどの溶媒に溶解又は分散させ、加熱処理することでイミド化と架橋反応を進めて強靱なPIを得る。
バインダの分子量や置換基などによっても異なるが、溶解型のバインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)などがある。また、分散型のバインダには、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ウレタンゴム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ニトロセルロースなどがある。反応型のバインダには、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)などがある。
また、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)をはじめとする有機溶媒系バインダは、環境に悪影響を及ぼす可能性があるとされているため、電極乾燥時には回収することが求められており、電極製造コストを上昇させる原因になっている。また、有機溶媒系バインダは、高温の電解液中で膨潤して電極抵抗を増大させるため、高温環境下では使用しにくい。
水系の溶解型バインダは、耐酸化特性又は耐還元特性に劣り、繰り返しの充放電によって徐々に分解されるものが多く、十分な寿命特性が得られない。また、イオン伝導性が低いため、出力特性に欠ける。分散型バインダは、水を溶媒に使用できる長所を有するが、酸やアルカリの度合い(pH)、水分濃度または環境温度によって分散安定性が損なわれやすく、電極スラリーの混合中に偏析、凝集、沈殿などを起こしやすい。また、水中に分散したバインダ微粒子は、1〜800nmの粒径で、乾燥により水分を気化させると粒子同士が融着してフィルム化する。このフィルムは、電気伝導性とイオン伝導性がないため、わずかな使用量の違いで電池の出力特性や寿命特性に大きな影響を及ぼす。
上記のような、溶解型や分散型のバインダでは、硫黄(S)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)などの充放電に伴って激しい体積変化を起こす活物質と組み合わせた場合、安定した寿命特性が得られず、数サイクル程度で充放電容量が半分以下となる。
一方、反応型バインダは、耐熱性、結着性、耐薬品性の全てにおいて優れている。特にPIは、高い耐熱性と結着性を示し、体積変化の大きい活物質であっても、安定した寿命特性を得ることができ、高温の電解液中でもバインダが膨潤しにくい。
非特許文献1によれば、PIと高強度な集電体と組み合わせることで、集電体の劣化を防ぎ、さらなる寿命特性を改善できることが開示されている。
特許文献1によれば、正極と負極にPIを用いたLiFePO4/SiO系リチウムイオン二次電池が、120℃の高温でも安定に充放電することが可能であることが開示されている。一方、PIを用いると集電体との結着性に優れるので、体積変化の大きい活物質と組み合わせた場合、初期の充放電で集電体にしわや亀裂等を生じることがある。そのため、集電体に機械的強度が高い鉄箔やステンレス箔を用いる必要がある。
上記有機バインダの他、非水電解質二次電池の分野ではほとんど報告例がないが、特許文献2乃至4に、二次電池電極に無機バインダを用いた技術が開示されている。特許文献2には、無機バインダを含む非晶質炭素材料、導電剤、バインダおよび溶媒が含まれ、粘度が2000mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲である非水電解質二次電池用電極合剤、電極および非水電解質二次電池が提案されている。また、無機バインダが含まれることで、バインダの分解反応を抑制できる場合があると示されている。
特許文献3および特許文献4には、無機バインダを用いて、物理的、化学的に安定なリチウムイオン電池が提供されている。一方、前述したように、一般的に電極は、活物質層(活物質、導電助剤、バインダからなる層)と集電体から構成されるが、活物質層上に活物質層とは異なる層を設ける場合もある。
例えば、特許文献5では、金属または半金属酸化物を主体とした層と少なくとも1層の水不溶性の粒子を含む補助層とを有する電極シートを用いた非水二次電池が提案されている。電極シートに設けられる補助層は、水不溶性の導電性粒子と結着剤から構成され、さらに実質的に導電性を持たない粒子を混合してもよいとされる。実質的に導電性を持たない粒子は、酸化物であり、酸性にもアルカリ性にも溶解する化合物を含む酸化物が好ましいとされる。なお、補助層に用いられる結着剤は、電極合剤を形成するときに用いる結着剤を用いることができると示されている。
かかる二次電池は、円筒型、角型、ラミネート型などの種々の形状の電池が広く普及している。そして、比較的小容量の電池には、耐圧性や封口の容易さの点から円筒型が採用され、比較的大容量の電池には、取扱いの容易性から角型が採用されている。
また、二次電池の電極構造に着目すれば、大別して、積層タイプと捲回タイプの2つのタイプが使用されている。すなわち積層タイプの電池は、正極と負極がセパレータを介して交互に積層された電極群が電池ケースに収納されている。積層タイプの電池の多くは、角型の電池ケースを有している。一方、捲回タイプの電池は、正極と負極がセパレータを挟みつつ渦巻状に巻き取られた状態で電池ケースに収納されている。捲回タイプの電池ケースは円筒型や角型のものがある。
特許5728721 特許5293020 特開平11−144736 特開平10−523411 国際公開第1996/027910
向井孝志ら、リチウムイオン電池活物質の開発と電極材料技術、サイエンス&テクノロジー株式会社、pp.269−311(2014)、ISBN:978−4−86428−089−1 柳田昌宏ら、第83回電気化学会講演要旨集、1T28、(2016)
上述したように、非特許文献1や特許文献1は、集電体に薄い銅箔などを用いた場合、しわや亀裂等が発生するため、電極として成立しない(図19参照)。一方、集電体に高強度の鉄箔やステンレス箔を用いれば、集電体が薄くてもしわや亀裂等の発生を起こしにくくすることはできる。しかし、集電体が非常に高強度で優れた靱性を有するので、電極の打ち抜き工程が困難であり、切断時に活物質層が脱落したり、切断面にバリが生じたりする。
また、PIは、あまりにも耐薬品性に優れているため、ほとんど全ての有機溶媒に溶けない。したがって、電極スラリーの作製には、PI前駆体であるポリアミック酸(ポリアミド酸)などをNMPに溶解して用い、200℃以上で加熱処理し、イミド化反応(脱水環化反応)を進めてPIを得る。そして、イミド化反応後に、更に高い温度で熱処理することで架橋反応を起こし、機械的強度の高いPIが得られる。電極寿命の観点からは、熱処理温度は、PIが炭化しない程度まで高い温度で熱処理することが好ましい。しかし、200℃以上の熱処理は、電極の柔軟性が低下して取扱いが困難となるだけでなく、活物質や集電体表面の酸化が避けられず、不可逆容量の原因にもなる。また、高い温度での熱処理は、電極製造時における消費電力の上昇も招く。
一部、イミド化させてPIにした状態で溶媒中に分散したPIバインダも存在するが、スラリーへの添加時に予めイミド化してあるものを用いると、密着強度が劣った電極となり、寿命特性に劣る。また、PIをはじめとする反応型バインダの多くは、初期充電時にアルカリ金属イオンを吸蔵するが、放電時には取り出せず、不可逆容量の原因となる。例えば、分子構造にもよるが、PIは、500〜1000mAh/gもの不可逆容量を有する。そのため、反応型バインダを使用した電極は、初期充放電効率が低く、電池容量が大きく低下することとなる。
ところで、電池の安全性を確認するために、釘刺し試験が行われている。満充電の電池に釘を刺すと、公称容量1Ahクラスの電池であっても600℃を超える発熱が観測されることがある。非特許文献1には、Si系活物質を用いた電池が、電池の釘刺し安全性に大きく改善されることが示されている。また、Si系負極と耐熱性不織布セパレータを用いた電池は、安全性がさらに改善されることが示されている。
非特許文献2では、この現象について検討されており、電極の活物質層の電子伝導性が高いと釘刺し時の電池及び釘の発熱温度は高くなり、電極活物質層の電子伝導性が低いと釘刺し時の電池及び釘の発熱温度も低くなるという結果が示されている。すなわち、電極活物質層の電子伝導性が電池の釘刺し安全性に大きく寄与する。活物質層の電子伝導性が高いと、釘を介して流れる電流値が大きくなり、釘と電池の発熱量も増大し、電子伝導性が低いと、釘を介して流れる電流値が小さくなり、単位時間当たりの発熱量が少なくなる。
合金系の活物質は、アルカリ金属と合金化すると電子伝導性を向上させる。例えば、放電状態のSiは半導体であり、電子伝導率が低い状態にあるが、充電状態のLixSi合金(0<x≦4.4)は導体であり、電子伝導率が高い状態となる。すなわち、Si系負極では、内部短絡によって短絡部分のSi系活物質が脱リチウム化し、電極の電子伝導率が急激に低下し、電流を遮断することで、電池の温度上昇を抑制できるものと考えられる。
しかし、活物質層中における導電助剤量が多い電極や、導電性の高い材料を活物質に被覆あるいは複合化したような材料を用いた電極では、活物質層の電子伝導性が高くなり、たとえSi系材料を用いたとしても、上記のような電流遮断機構が機能しにくく、電池の温度上昇を十分に抑制できない。そのため、安全性を重視した電池を設計するには、活物質層の導電性の低い電極を用いらなければならなかった。逆にいえば、安全性を重視した電極組成では、電子伝導性が低いため、低出力な電池になる可能性が高い。
活物質層の電子伝導性の低い電極を用いた電池であっても、内部短絡時の一瞬の発熱をなくすことはできないので、この発熱でバインダが炭化すると、電極の電子伝導性が高くなり、安全性は損なわれることになる。いくら耐熱性に優れる有機系の反応型バインダであっても、耐熱温度は400℃程度が限界であり、内部短絡による温度上昇がバインダの耐熱温度を超えると炭化するので、炭化しないバインダが求められている。
また、活物質においては、一般的に、体積変化の小さい材料が良好な寿命特性を示すことが知られている。例えば、Siの充電反応(Si+4.4Li++4.4e-→Li4.4Si)では約4倍の体積変化を生じ、SiOの充電反応(SiO+8.4Li++8.4e-→Li4.4Si+Li4SiO4)では初期のLi4SiO4生成のための体積変化を除けば、約2.7倍の体積変化であるため、SiOはSiと比べて優れた寿命特性を示す。
他の例としては、Siとアルミナを混合して用いた負極では、純Si負極と比べて、Si比が低下するにつれて、容量は低下するが、寿命特性は改善される傾向にある。アルミナはLiと不活性で充放電反応に寄与しないが、Siの体積変化の緩衝材になり、電極全体の体積変化を小さくすることができる。
例えば、Si負極の充電反応は、下記の式1の反応により、充電前と比べて約4倍の体積変化が起こり、電極バインダにかかるストレスも約4倍となる。
Si+4.4Li++4.4e-→Li4.4Si ・・・・(式1)
Siと等モル量のAl23を加えた負極であれば、Al23がLiと不活性であるので、マクロ的視点では式(2)のような充電反応となる。このような電極であれば、純Siの電極と比べて電極の体積変化が半分になるので、電極バインダにかかるストレスも半分になる。したがって、Siよりも体積変化の小さな材料を混合した電極は、Si比は低下するにつれて、容量は低下するが、寿命特性は改善される傾向にあると予想される。
0.5Si+0.5Al23+2.2Li++2.2e-
→0.5Li4.4Si+0.5Al23 ・・・・(式2)
しかし、実際の寿命特性では、若干の寿命改善効果はあるものの、各サイクルにおけるSiの劣化率はあまり変わらない結果となる。これは、ミクロ的視点では、Si粒子自体の体積変化は約4倍であるので、電極バインダにかかるストレスは式1と変わらず、結局、結着部に応力が集中するためである。特に、電極材料同士や電極材料と集電体がバインダで点接着されている電極だと、接着部が体積変化による応力を集中的に受け、結着性が失われて、電極の導電ネットワークが破壊されやすい。
一方、バインダが面接着だと、結着部は応力を均一に分散するので、導電ネットワークは破壊されにくくなるが、バインダがイオンの動きを阻害するので、出力特性が低下する。バインダの種類にもよるが、点接着は、バインダ量が少ない場合に起こりやすく、面接着は、バインダ量が多い場合に起こりやすい。
数あるバインダの中で、合金系活物質を安定に充放電できるバインダとしては、PIのような反応型に限られているのが現状である。ただし、反応型バインダは、スラリーの製造時に有機溶媒を使用し、熱処理工程は200℃以上が必要で、得られる電極にはバインダ由来の不可逆容量が大きく、安全性に関しても限界があった。
また、反応型バインダだけでは、十分な寿命特性を発揮しにくく、SiOや高強度集電体箔などと組み合わせる必要があった。有機物は、融点は低く、有機溶媒に溶けやすく、可燃性であるが、無機物は、融点は高く、有機溶媒には溶けにくく、不燃性であり、且つ熱伝導度が高いことが知られている。したがって、無機物で構成されるバインダを用いることができれば、耐熱性が高く、耐電解液性と放熱性に優れた電極が得られる可能性が高い。
ただ、従来多くの無機バインダは非水電解質二次電池電極用に適合されていない。無機バインダは、ケイ酸塩系、リン酸塩系、ゾル系、セメント系の4種類に大別することができる。このうち、本発明者らは、金属、酸化物、およびカーボンのすべてに対して強い結着性と、1000℃以上の耐熱性を有するケイ酸塩系とリン酸塩系、特に、アルカリ金属ケイ酸塩系に注目した。
ケイ酸塩系とは、アルカリ金属ケイ酸塩のほか、グアニジン化合物のケイ酸塩、アンモニウム化合物のケイ酸塩であってもよい。ケイ酸塩塩系無機バインダは、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有するケイ素(Si)と酸素(O)を主たる分子骨格とする化合物であり、炭素を主体とした骨格を有する有機バインダとは異なる(図21a参照)。
また、シロキサン結合中のSiサイトの一部が、Al、Zr、Ti、Mg、Mo、Sr、Ca、Zn、Ba、B、W、Ta、Ce、Hf、Yなどの遷移金属元素で置換されていてもよい。
ケイ酸塩には、オルトケイ酸塩(A4SiO4)、メタケイ酸塩(A2SiO3)、ピロケイ酸塩(A6Si27)、二ケイ酸塩(A2Si25)、四ケイ酸塩(A2Si49)などの多ケイ酸塩や、A2Si25、A2Si37、A2Si49などの多くの種類が存在し、これらは水和物であってもよい。また、それらの構造については、結晶性ケイ酸塩と非結晶性ケイ酸塩に大別することができる(A=アルカリ金属元素または、グアニジン化合物、アンモニウム化合物)。このような、ケイ酸塩は、ケイ酸塩中のAの割合が増すにつれて、融点が低下する傾向にあり、同時に水への溶解性を示すことになる。
工業的には、ケイ酸塩は、ケイ酸塩中のAの割合が連続的に変化させることができ、任意の塩が調整可能であり、ケイ酸塩の一般的な分子式は、A2O・nSiO2なる形式で表される。
この分子骨格の違いにより、有機バインダよりも、高い耐熱性と耐酸化性を示し、防火剤、防水剤、漂白剤、洗剤、石鹸、コーティング剤、シーリング剤、土木地盤強化剤などの様々な分野で応用されているが、非水電解質二次電池の分野では、ほとんど報告例がない。
リン酸塩系とは、リン酸アルミニウム塩のほか、リン酸マグネシウム塩、リン酸カルシウム塩であってもよい。
リン酸系無機バインダは、加熱によりヒドロキシル基から水がとれてリンと酸素の間に共有結合を生じ、脱水縮合反応が起こる。この脱水縮合反応は、遷移金属(M)を中心とした1つの分子につき、最大6箇所反応でき、3次元的に高分子化したリン酸遷移金属が得られる。すなわち、アルミノリン酸結合を有するリン(P)と酸素(O)、遷移金属(M)を主たる分子骨格とする化合物であり、炭素を主体とした骨格を有する有機バインダとは異なる(図21b参照)。
また、遷移金属サイトの一部が、Al、Mg、Ca、Cu、Fe、Ba,Ti、Mn、Mo、Mg、Si、Sr、Ca、Zn、Ba、B、W、Ta、Ce、Hf、Yなどの遷移金属元素で置換されていてもよい。
具体的には、リン酸アルミニウム塩には、第一リン酸アルミニウム塩(Al(H2PO43)、リン酸水素アルミニウム塩(Al2(H2PO43)、メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)がある。リン酸マグネシウム塩には、第一リン酸マグネシウム塩(Mg(H2PO43)、リン酸水素マグネシウム塩(MgHPO4)、メタリン酸マグネシウム(Mg(PO32)がある。リン酸カルシウム塩には、第一リン酸カルシウム塩(Ca(H2PO43)、リン酸水素カルシウム塩(CaHPO4)、リン酸三カルシウム塩(Ca3(H2PO42)、メタリン酸カルシウム(Ca(PO32)があり、これらは水和物であってもよい。それらの構造については、結晶性リン酸塩と非結晶性リン酸塩に大別することができる。
工業的には、リン酸塩は、リン酸塩中のMとPの割合が連続的に変化させることができ、任意の塩が調整可能であり、リン酸塩の一般的な分子式は、M・nHxPO4なる形式で表される(M=Alまたは、Mg、Ca)。
ゾル系とは、酸化物微粒子が水に分散したコロイド溶液である。酸化物の粒径は、10nm以上200nm以下であり、その表面にはヒドロキシル基が存在する。例えば、酸化物がSiO2である場合、脱水縮合により、シロキサン結合を形成するが、このシロキサン結合は、酸化物の粒子内部で形成されるため、ケイ酸系塩と比較すると結着力が弱い。また、pH管理が重要で、安定にゾル状態を維持しにくい問題がある。本発明においては、ゾル系は、活物質層内に浸透しにくいため、骨格形成剤としての使用は好ましくない。
特許文献2は、バインダに無機バインダが含まれることで、バインダの分解反応を抑制できる場合があると示されている。これは、炭素材料(グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンなど)が、0.1V(vs.Li+/Li)付近に充放電プラトー電位が あり、電極が強い還元力をもつため、耐還元性に優れる無機バインダで分解反応を抑制しているものと思われる。
しかし、合金系材料は、炭素材料の充放電プラトー電位よりも高く、炭素系電極よりも還元力が弱いため、バインダの分解反応はあまり起こらない。そのため、バインダの分解反応を抑制しても合金系電極の寿命特性は大きく改善されない。
また、特許文献2には、無機バインダは無機粒子を含み、無機粒子の粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上50nm以下、さらにより好ましくは1nm以上10nm以下である、と示されている。このような粒径とすることにより、電極合剤の分散性、接着力ともにより優れるバインダを得ることができると記載されている。
無機粒子は、炭素材料と比べて、比重が大きいため、無機粒子の粒径が大きくなるにつれて、粒子の沈殿速度が増加し、分散性と接着力が低下する。そのため、100nm以下の粒子を用いることが有効である。しかし、電極塗工後の乾燥時に、100nm以下の粒子が、気化した水分の逃げ道を防ぎ、塗膜が発泡し、集電体との結着性が低下したり、均一な電極が得られにくいという課題がある。また、このような電極は、柔軟性に優れた有機バインダを含まないため、脆く、電極を折り曲げたりすると破損する。そのため、捲回タイプの電池には適さない。
一方、合金系活物質は、従来の炭素系活物質よりも高容量であることが知られている。例えば、Siが2800〜4000mAh/g、SiOが1300〜2000mAh/g、Snが700〜1000mAh/g、Sが800〜1500mAh/gもの高い電気容量が示される。そのため、少しの誤差であっても電極容量に大きなばらつきが生じ、寿命特性や出力特性を悪化させることがある。また、電極スラリーの粘度調整は、溶媒の使用量によって劇的に変化するため、制御が難しい。
特許文献3および、特許文献4には、無機バインダを用いて、物理的、化学的に安定なリチウムイオン電池が提供されている。電極の実施例は、黒鉛負極(黒鉛アノード)とLiCoO2正極(LiCoO2カソード)の記載がある。黒鉛負極では、1.0gの水酸化リチウム、23.4gの無機バインダ(ポリケイ酸リチウム)および45.0gの黒鉛粉末から構成されている。
したがって、活物質、導電助剤およびバインダの固形分合計を100質量%とした場合、活物質が64.8質量%で、無機バインダが33.7質量%となる。
LiCoO2正極では、1.0gの水酸化リチウム、1.9gの黒鉛粉末、2.9gのC−100カーボンブラック、24gの無機バインダ(ポリケイ酸リチウム)および85.6gの黒鉛粉末からなる構成されている。
したがって、活物質、導電助剤およびバインダの固形分合計を100質量%とした場合、活物質が74.2質量%で無機バインダが20.8質量.%となる。なお、特許文献3および特許文献4では、無機バインダは、無機粒子に関する記載はなく、実施例からも無機粒子は含まれていない。
上記した特許文献2乃至4は、いずれも従来の有機バインダでは実現しづらかったバインダの分解反応や電解液による膨潤を改善しようとするものである。活物質としてSi系やSn系などの合金材料と電解液で膨潤しにくいバインダを用いることで、電極の使用温度を拡大し、且つ、高容量化を実現できそうである。
しかし、ケイ酸塩系のバインダは強アルカリ性であり、リン酸塩系のバインダでは強酸性であるため、電極スラリー作製時の合金系活物質が溶解し、水素ガスを発生させてスラリーを発泡させる。特に、電極乾燥時には高温になるため、水素ガスの発生量が増大し、均一な電極製造すらままならない。また、アルカリや酸に耐性のない集電体を用いると集電体が劣化する。
例えば、Si活物質とアルカリ金属ケイ酸塩系とが接触すると、Si+2OH-+H2O→SiO32-+2H2↑の反応が起こる。そのため、耐アルカリ性又は耐酸性の活物質、すなわち炭素系材料しか選択肢がないのが現状である。また、電極の構成要素のひとつであるバインダは、活物質と活物質、活物質と導電助剤、活物質と集電体、導電助剤と集電体とを結着するために用いられているが、現行の電池は、PVdFまたはSBR等の有機バインダを採用しているので、活物質、導電助剤、集電体等の無機材料と比べてその熱伝導度は小さく、熱を伝え難い。また、ケイ酸塩系やリン酸塩系の無機バインダは、従来の有機バインダと比べて、比重が大きいため、電極作製時に使用されるバインダ量が、活物質、導電助剤およびバインダの固形分合計を100質量%とした場合、20質量%以上でないと十分な結着力を示さない。特に体積変化の大きい材料を用いる場合は、30〜70質量%必要になる。そのため、電極の活物質の割合が減り、電極エネルギー密度が低下する。
上記の通り、本願の発明者らは、当初ケイ酸塩系やリン酸塩系のバインダの適用について検討を重ねたが、ケイ酸塩系やリン酸塩系をバインダとして適用した場合、現状では多くの課題を含み、実用的な電極として成立しないことがわかった。そこで、発明者らは、ケイ酸塩系やリン酸塩系をバインダとしてではなく、電極に適用できるよう研究を重ね、本発明をするに至った。本発明は、上述した従来の問題点や、発明者らが新たに発見した問題点を解決することができる。
本発明に係る骨格形成剤は、非水電解質二次電池の電極に用いられる骨格形成剤であって、成分にシロキサン結合を有するケイ酸塩、又は、成分にアルミノリン酸結合を有するリン酸塩を含むことを特徴とする。この構成によれば、ケイ酸塩、又は、リン酸塩を含む骨格形成剤を電極に用いることで、耐熱性に優れ高強度で、サイクル寿命特性が向上した電極とできる。
また、この骨格形成剤、前記ケイ酸塩は、一般式A2O・nSiO2で表される結晶または非晶質構造であり、Aは、Li、Na、K、トリエタノールアンモニウム基、テトラメタノールアンモニウム基、テトラエタノールアンモニウム基、グラニジン基の少なくともいずれか1種であり、nは、0.5以上5.0以下である。
好ましくは、この骨格形成剤は、前記一般式のAが、LiまたはNaであり、nが、1.6以上3.9以下で、より好ましくは、2.0以上3.5以下である。Aは、骨格形成の機械強度と結着性、耐摩耗性に優れるという観点から、Naが好ましい。なお、Liは、イオン伝導性が高い骨格形成体が得られるため電池の入出力特性に優れる。ただ、NaであってもSiO2の数nが、5.0を超えると、活物質層やセパレータとの結着性に劣り、充放電時における電極の体積変化や、釘刺し試験などの外的要因で、剥離と亀裂が著しく発生しやすい。また、粘度が低くなりすぎて、後に述べるセラミックスとの分散性安定性が低下する。
逆に、nが0.5未満では、粘性が高いため、電極活物質層やセパレータに対して、骨格形成剤が浸透または塗布しにくくなる。また、セラミックスとの混練を行う際に、発熱量が大きくなる。
ケイ酸塩は、非晶質であることが好ましい。非晶質のケイ酸塩であれば、結晶のように特定方向に割れることがないため、電極の寿命特性が改善される。加えて、フッ酸に対する耐性が向上するため、フッ酸由来の電極崩壊が起こりにくくすることができる。
通常、非晶質の固体は、無秩序な分子配列から成り、区別できる結晶格子を所有しない。また、非晶質の固体の溶解性は結晶形の形態より高く、一定の融点を有しない。従って、粉末X線回折(XRD)パターンにおいて明確なピークが無いこと、示差熱分析(DTA)曲線や示差走査熱量分析(DSC)曲線の融解吸熱ピークが無いことが、非晶質形態であることを示している。
すなわち、非晶質のケイ酸塩は、XRDにおいて、結晶質形態の特長であるシャープなピークが無く、Cu−Kα線による15°〜40°の範囲内の回折角(2θ)に典型的な幅広いブロードなピーク、いわゆるhaloパターンを示す。より詳しくは、本質的に、図17と同一のXRDパターンを示す。
ただ、XRDでhaloパターンが得られたとしても、そのすべてが非晶質とは限らない。しかし、それは、式3に示すシェラー式より、結晶粒が5nm未満の限定された条件だけである。すなわち、結晶粒が5nm以上の場合は、回折線が幅広く非晶質と似たパターンにはならない。
D(Å)=0.9λ/(β×cosθ) ・・・・(式3)
(式中、Dは結晶粒の大きさ、λはX線管球の波長、βは結晶粒の大きさによる回折線の拡がり、θは回折角を示す)
また、非晶質から結晶状態に変化する場合には、大きな発熱が起こるので、これを測定することによってケイ酸塩の結晶状態を判断することも可能である。非晶質のケイ酸塩は、電極を10℃/h以上の昇温速度で、80℃以上600℃以下の温度で熱処理することで得ることができる。
好ましくは、この骨格形成剤は、前記ケイ酸塩の固形分濃度が0.1質量%以上30質量%以下である。より好ましくは、0.1質量%以上15質量%以下である。
また、この骨格形成剤は、さらに界面活性剤を含み、前記界面活性剤が0.001質量%以上5.0質量%以下である。この構成によれば、骨格形成剤の活物質層への親液性が向上し、骨格形成剤が活物質層に均一に浸透する。よって、活物質層内に均一な骨格が形成され、サイクル寿命特性がさらに向上する。0.001質量%未満では、グラファイトやハードカーボン、導電助剤などのカーボン系材料が多く含まれる活物質層に対して、骨格形成剤が浸透しにくく、5質量%を超えると、脱泡剤が必要になり、脱泡剤がないと活物質層の表面が発泡して強固な骨格形成がされにくい。
また、この骨格形成剤は、さらに、耐アルカリ性の無機粒子を含む。この構成によれば、骨格形成剤を電極に塗工したとき、電極の活物質層の表面に無機粒子が積層して、活物質層が無機粒子の層で覆われ、また活物質層内にも無機粒子が入り込む。
これにより、活物質層に強固な骨格を形成することができるとともに、乾燥時の剥離やクラックの発生を抑制することができ、また、無機粒子同士の間隙により空孔が形成されて良好な電解液との親液性が得られる。また、無機粒子の層によって耐熱性に優れた高強度で耐摩耗性に優れた電極になる。また、無機粒子の層がセパレータの代わりとなり、別途セパレータを用いずに、電池を構成することが可能となる。
好ましくは、この骨格形成剤は、前記ケイ酸塩及び前記耐アルカリ性の無機粒子を含む固形分の合計を100質量%とした場合に、前記ケイ酸塩が5質量%以上80質量%以下であり、前記耐アルカリ性の無機粒子が20質量%以上95質量%以下であり、前記耐アルカリ性の無機粒子のメディアン径(D50)が0.2μm以上20μm以下である。
ここで、メディアン径(D50)とは、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定法における体積基準の粒子径を意味する。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定法とは、粒子に対してレーザー光を当てたときに粒子サイズによって回折散乱光の光強度分布が異なる現象を利用して粒子サイズを測定する方法である。
骨格形成剤に、上記の耐アルカリ性の無機粒子が含まれることで、高温で乾燥した際に、骨格形成剤が発泡しにくくなる。骨格形成剤が発泡すると、活物質層やセパレータとの結着性が低下して、十分な強度が得られにくくなる。
前記耐アルカリ性の無機粒子のメディアン径(D50)を0.2μm以上20μm以下とした理由は、無機粒子同士の間隙により空孔が形成され、良好な電解液との親液性が得られるためであり、電池の出力特性の観点からは、0.25μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。
無機粒子の粒径がこの範囲よりも大きいと、チクソトロピー性が低くなりダイラタンシー性を示す傾向となり、骨格形成剤に無機粒子を加えた際の分散安定性が低下する。逆に、粒径がこの範囲よりも小さいと、2μmを超える厚みの骨格を形成する場合、乾燥時に気化した水分の逃げ道がなくなり、塗膜が発泡し、集電体との結着性が低下するばかりか、均一な電極が得られにくい。
前記の無機粒子が耐アルカリ性を必要とする理由は、ケイ酸塩が強いアルカリ性を示すためである(pH12以上)。また、この骨格形成剤は、前記耐アルカリ性に加えて、電解液への耐溶解性に優れる無機粒子であることが望ましい。
このような条件を満たす無機粒子は、例えば、Al、Zr、Ti、Si、Mg、Mo、Sr、Ca、Zn、Ba、B、W、Ta、Ce、HfおよびYよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素の酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸化合物、硫酸化合物などがあげられる。このうち、さらに電池の充電や放電時における酸化分解や還元分解しにくく、不可逆容量の少ない材料であるという観点から、Al23、ZrO2、TiO2、SiO2、CaO、MgO、CeO、Y23、AlN、WC、SiC、B4C、BN、TaC、TiC、TiB2、HfB2、Si34、TiN、CaCO3、MgSO4、Al2(SO43、CaSO4、ZrSiO4を含有することが好ましい。
加えて、電池の不可逆容量の少ない材料であるという観点から、Al23、ZrO2、TiO2、SiO2、MgO、CeO、Y23、WC、SiC、B4C、TaC、TiC、Si34、TiN、CaCO3、MgSO4、CaSO4、ZrSiO4を含有することが好ましい。これらの材料であれば、乾燥時に生じるケイ酸塩の大きな体積収縮を抑制する効果と、低温で乾燥しても十分な強度を有することが可能となる。
一方、リン酸塩は、一般式M・nHxPO4で表される結晶または非晶質構造であり、Mは、Al、Ca、Mgの少なくともいずれか1種であり、xは、0以上2以下であり、nは、0.5以上5以下である。
Mは、骨格形成の機械強度と結着性、耐摩耗性に優れるという観点から、Alが好ましい。xは、骨格形成の結着性に優れるという観点から、1〜2が好ましく、より好ましくは2である。nは、骨格形成の機械強度と結着性、耐摩耗性に優れるという観点から、0.5〜5.0が好ましく、より好ましくは2.5〜3.5である。リン酸塩も、ケイ酸塩の場合と同様、非晶質であることが好ましい。
好ましくは、この骨格形成剤は、前記リン酸塩の固形分濃度が0.1質量%以上30質量%以下である。より好ましくは、0.1質量%以上15質量%以下である。
また、この骨格形成剤は、界面活性剤を含み、前記界面活性剤が0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
また、この骨格形成剤は、さらに、耐酸性の無機粒子を含むことが好ましい。この構成によれば、骨格形成剤を電極に塗工したとき、電極の活物質層の表面に無機粒子が積層して、活物質層が無機粒子の層で覆われ、また活物質層内にも無機粒子が入り込む。
これにより、活物質層に強固な骨格を形成することができるとともに、乾燥時の剥離やクラックの発生を抑制することができ、また、無機粒子同士の間隙により空孔が形成されて良好な電解液との親液性が得られる。また、無機粒子の層によって耐熱性に優れた高強度で耐摩耗性に優れた電極になる。また、無機粒子の層がセパレータの代わりとなり、別途セパレータを用いずに、電池を構成することが可能となる。
好ましくは、この骨格形成剤は、前記リン酸塩及び前記耐酸性の無機粒子を含む固形分の合計を100質量%とした場合に、前記リン酸塩が5質量%以上80質量%以下であり、前記耐酸性の無機粒子が20質量%以上95質量%以下であり、前記耐酸性の無機粒子のメディアン径(D50)が0.2μm以上20μm以下である。
骨格形成剤に、上記の耐酸性の無機粒子が含まれることで、高温で乾燥した際に、骨格形成剤が発泡しにくくなる。骨格形成剤が発泡すると、活物質層やセパレータとの結着性が低下して、十分な強度が得られにくくなる。前記耐酸性の無機粒子のメディアン径(D50)は、0.2μm以上20μm以下であることが好ましい。
前記の無機粒子が耐酸性を必要とする理由は、リン酸塩が強い酸性(pH1〜2)を示すためである。また、この骨格形成剤は、前記耐酸性に加えて、電解液への耐溶解性に優れる無機粒子であることが望ましい。
このような条件を満たす無機粒子は、例えば、Al、Zr、Ti、Si、Mo、Sr、Ba、B、W、Ta、Ce、HfおよびYよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素の酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、炭酸化合物、硫酸化合物などがあげられる。このうち、さらに電池の充電や放電時における酸化分解や還元分解しにくく、不可逆容量の少ない材料であるという観点から、Al23、ZrO2、TiO2、SiO2、CeO、Y23、WC、SiC、B4C、BN、TaC、TiC、TiB2、HfB2、Si34、TiN、ZrSiO4を含有することが好ましい。
加えて、電池の不可逆容量の少ない材料であるという観点から、Al23、ZrO2、TiO2、SiO2、CeO、Y23、WC、SiC、B4C、BN、TaC、TiC、Si34、TiN、ZrSiO4を含有することが好ましい。これらの材料であれば、乾燥時に生じるリン酸塩の大きな体積収縮を抑制する効果と、低温で乾燥しても十分な強度を有することが可能となる。
ケイ酸塩系とリン酸塩系では、電池寿命と入出力特性、不可逆容量、耐吸湿性、耐熱性などの観点から、ケイ酸塩系が好ましい。
本発明に係る電極は、非水電解質二次電池用の電極であって、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の骨格形成剤が、少なくとも活物質層の表面に存在していることを特徴とする。この構成によれば、ケイ酸塩又はリン酸塩を含む骨格形成剤が電極の骨格を構成し、耐熱性に優れ高強度で、サイクル寿命特性が向上した電極となる。また、ケイ酸塩又はリン酸塩を含むバインダを用いた場合は電極として成り立たないところ、骨格形成剤を活物質層の表面につけることで、サイクル寿命特性に優れた電極とできる。
ここで、非水電解質二次電池とは、水を主成分としない電解質を用いた二次電池であり、例えばリチウム二次電池(リチウムイオン電池)、ナトリウム電池(ナトリウムイオン電池)、カリウム電池(カリウムイオン電池)などがある。また、電極は、非水電解質二次電池に用いられる電極であれば特に限定されず、また、電極の材質や形状も特に限定されない。
また、電極には負極と正極がある。まず、負極について、負極に用いる負極活物質は、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)を可逆的に吸蔵・放出することが可能な材料であれば特に限定されない。例えば、Li、Na、K、C、Mg、Al、Si、P、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Pb及びBiよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素、これらの元素を用いた合金、複合化物、酸化物、カルコゲン化物又はハロゲン化物であればよい。
放電プラトーの領域が0〜1V(vs.Li+/Li)の範囲内に観測できる観点から、Li、Na、K、C、Mg、Al、Si、Ti、Zn、Ge、Fe、Mn、Ag、Cu、In、Sn及びPbよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素、これらの元素を用いた同素体、合金又は酸化物が好ましい。
さらにエネルギー密度の観点から、元素としては、Al、Si、Zn、Ge、Ag、Sn等が好ましく、合金としては、Si−Al、Al−Zn、Si−Mg、Si−La、Al−Ge、Si−Ge、Si−Ag、Si−Sn、Si−Ti、Si−Y、Si−Cr、Si−Ni、Si−Zr、Si−V、Si−Nb、Si−Mo、Zn−Sn、Ge−Ag、Ge−Sn、Ge−Sb、Ag−Sn、Ag−Ge、Sn−Sb等の各組み合わせ等が好ましく、酸化物としては、Fe23、CuO、MnO2、NiO、Li4Ti512、H2Ti1225、Na2Ti37等が好ましい。合金としては、全率固溶型合金、共晶合金、亜共晶合金、過共晶合金、包晶型合金であってもよい。また、活物質粒子表面に電子伝導性に優れた材料やセラミックスでコーティングしてもよい。なお、これらのリチウムを可逆的に吸蔵・放出することが可能な材料を、2種以上使用してもよい。
活物質粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円状、切子状、帯状、ファイバー状、フレーク状、ドーナツ状、中空状であってもよい。アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)を可逆的に吸蔵・放出することが可能な材料は、初期の充電の過程でアルカリ金属イオンを吸蔵・放出することができる物質と固体電解質に分解する化合物がより好ましい。
固体電解質は、イオン伝導性を有する物質であれば特に限定されないが、LiαXβYγで示される固体電解質であることが好ましい。ここに式中、0<α≦4、0≦β≦2、0≦γ≦5である。固体電解質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な材料のバッファー材にもなる。
Xは、例えば、Si、Ti、Mg、Ca、Al、V、Ge、Zr、Mo、Niのいずれか一種以上であり、Yは、O、S、F、Cl、Br、I、P、B23、C24、CO3、PO4、S、CF3SO3、SO3のいずれか一種以上である。より具体的には、例えば、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li3N、LiPON、Li224、Li2CO3、LiAlCl4、Li2O、Li2S、LiSO4、Li2SO4、Li3PO4、Li3VO4、Li4GeO4、Li2Si25、Li2SiO3、Li4SiO4、Li4ZrO4、LiMoO4、LiAlF4、Li3Ni2、LiBF4、LiCF3SO3、NaF、NaCl、NaBr、NaI、Na3N、NaPON、Na224、Na2CO3、NaAlCl4、Na2O、Na2S、NaSO4、Na2SO4、Na3PO4、Na3VO4、Na4GeO4、Na2Si25、Na2SiO3、Na4SiO4、Na4ZrO4、NaMoO4、NaAlF4、Na3Ni2、NaBF4、NaCF3SO3、KF、KCl、KBr、KI、K3N、KPON、K224、K2CO3、KAlCl4、K2O、K2S、KSO4、K2SO4、K3PO4、K3VO4、K4GeO4、K2Si25、K2SiO3、K4SiO4、K4ZrO4、KMoO4、KAlF4、K3Ni2、KBF4、KCF3SO3等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。
アルカリ金属イオンを吸蔵・放出することができる物質と固体電解質に分解する化合物としては、例えば、SiO、GeO、GeS、GeS2、SnO、SnO2、SnC24、SnO-P25、SnO-B23、SnS、SnS2、Sb23、SnF2、SnCl2、SnI2、SnI4等が挙げられ、これらを2種以上使用してもよい。但し、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出することができる物質と固体電解質に分解する化合物は、電池を組む前に、予めプリドープ処理を行わないと電池容量が極端に低下するためプリドープ処理することが好ましい。
プリドープの方法については、特許文献(特開2015−088437)や非特許文献(「リチウム二次電池部材の測定・分析データ集」第3章、第30節、pp.200−205、技術情報協会)にも記載されているように、電気化学的手法、アルカリ金属貼り付け法、メカニカル的手法などの公知の方法が使用できる。理由は定かではないが、本発明において、骨格形成を施す電極は、Si、Si合金、Si複合化物、Si酸化物、あるいは、これらいずれか一種以上を含む混合物であると特に顕著なサイクル寿命改善効果が発揮される。
活物質の粒子径としては、粒径の小さな活物質粉末を用いると、粒子の崩壊が低減され、電極の寿命特性が改善される傾向にある。また、比表面積が増大して、出力特性が向上される傾向にある。例えば、非特許文献(レアメタルフリー二次電池の最新技術動向,第3章第1節第4項,PP.125−135,シーエムシー出版,2013年)によれば、活物質の粒径が小さくなると初期の放電容量が増加し、サイクル寿命も改善されることが記載されており、活物質粒径は、初期の充放電効率とサイクル寿命とに相関があることがわかる。
ただ、ナノオーダーの活物質は、取り扱いが難しいため、造粒して用いることが好ましい。例えば、特許第5525003号には、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、ポリアクリル酸のいずれか一つ以上の造粒用結着剤を用いたナノ造粒体を用いた負極が示されている。ナノオーダーの活物質を造粒することで、負極活物質の膨張収縮により銅箔に付与される応力が緩和され、銅箔の変形を防ぐことができる。
一方、本発明の骨格形成剤を、上述した負極活物質の造粒用結着剤として用いることも考えられる。その場合、活物質の一次粒子は、メディアン径(D50)0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、造粒後の活物質粒子(二次粒子)は、メディアン径(D50)1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
また、活物質の造粒方法としては、公知の造粒方法が適用可能であり、例えば、流動層造粒法、撹拌造粒法、転動式造粒法、スプレードライ法、押し出し造粒法、転動造粒法、及びコーティング造粒法が挙げられる。このうち、スプレードライ法と流動層造粒法が特に好ましい。
スプレードライ法では、例えば、骨格形成剤に活物質を分散させた懸濁液を、50〜300℃に加温した温室に上方より、1〜30mL/min、空気圧0.01〜5MPaで噴霧することで、凝集粒をつくり、これを乾燥させることにより造粒物を得る。
流動層造粒法では、例えば、粉体原料を流動層造粒装置に入れ、下方から50〜300℃に加温した温風を送り込むことで、粉体原料(造粒物前駆体)を流動させて混合し、この混合粉体原料に骨格形成剤を溶解した水を上方よりノズル噴霧し、粉体表面に均一に骨格形成剤を1〜30mL/min、空気圧0.01〜5MPaで噴霧することで、凝集粒をつくり、これを乾燥させることにより造粒物を得る。
しかし、SiやSnなどの耐アルカリ性に乏しい活物質を用いる場合は、骨格形成剤と反応して水素ガスを発生させ、負極として成り立たない可能性が高い。そこで、本発明の骨格形成剤を用いる場合、予め造粒用有機バインダにより造粒した二次粒子に対して、骨格形成剤を噴霧し、造粒物に骨格を形成させることで水素ガスの発生を極力少なくすることができると思われる。
また、造粒用有機バインダとしては、公知のものが使用できる。例えば、正極や負極に用いられるバインダであってもよいが、造粒体の化学安定性、耐熱性、耐還元性などの観点から、ポリベンゾイミダゾール、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、セルロースナノファイバー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドが好ましい。
造粒用バインダの量としては、活物質粒子を結着しうる量であれば特に限定されないが、造粒体に対して、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましい。造粒体は、活物質粒子と造粒用バインダの他に、必要に応じて電子伝導性を付与するための導電助剤を含有させてもよい。骨格形成剤は、造粒体に対して、0.2〜30質量%の範囲内で含まれていることが好ましい。このようにして得られた造粒体は、サイクル寿命特性が改善されるだけでなく、スラリーの塗工性が改善する。
負極用導電助剤は、電子伝導性を有していれば、特に制限はなく、上述した金属、炭素材料、導電性高分子、導電性ガラス等を用いることができる。具体的にはアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、ファーネスブラック(FB)、サーマルブラック、ランプブラック、チェンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、カーボンブラック(CB)、カーボンファイバー(例えば、登録商標であるVGCFという名称の気相成長炭素繊維)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、グラッシーカーボン、アモルファスカーボンなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いてもよい。
負極に含有される活物質、バインダ、導電助剤の合計を100質量%とした場合、導電助剤が0〜20質量%含有されていることが好ましい。つまり、導電助剤は必要に応じて含有される。20質量%を超える場合は、電池としての活物質の割合が少ないため、電極容量密度が低くなりやすい。
負極用バインダは、通常用いられているもの、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キタンサンガム、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アミン、ポリアクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、塩化ビニール、シリコーンゴム、ニトリルゴム、シアノアクリレート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ラテックス、ポリウレタン、シリル化ウレタン、ニトロセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリスチレン、クロロプロピレン、レゾルシノール樹脂、ポリアロマティック、変性シリコーン、メタクリル樹脂、ポリブテン、ブチルゴム、2−プロペン酸、シアノアクリル酸、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルオリゴマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アルギン酸、デンプン、うるし、ショ糖、にかわ、ガゼイン、セルロースナノファイバー等の有機材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの有機バインダと無機バインダを混合したものでもよい。無機バインダは、ケイ酸塩系、リン酸塩系、ゾル系、セメント系などでよい。例えば、リチウムケイ酸塩、ナトリウムケイ酸塩、カリウムケイ酸塩、セシウムケイ酸塩、グアニジンケイ酸塩、アンモニウムケイ酸塩、ケイフッ化塩、ホウ酸塩、リチウムアルミン酸塩、ナトリウムアルミン酸塩、カリウムアルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アンモニウムミョウバン、リチウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、カリウムミョウバン、クロムミョウバン、鉄ミョウバン、マンガンミョウバン、硫酸ニッケルアンモニウム、珪藻土、ポリジルコノキサン、ポリタンタロキサン、ムライト、ホワイトカーボン、シリカゾル、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、ヒュームドアルミナ、ジルコニアゾル、コロイダルジルコニア、ヒュームドジルコニア、マグネシアゾル、コロイダルマグネシア、ヒュームドマグネシア、カルシアゾル、コロイダルカルシア、ヒュームドカルシア、チタニアゾル、コロイダルチタニア、ヒュームドチタニア、ゼオライト、シリコアルミノフォスフェートゼオライト、セピオライト、モンモリナイト、カオリン、サポナイト、リン酸アルミニウム塩、リン酸マグネシウム塩、リン酸カルシウム塩、リン酸鉄塩、リン酸銅塩、リン酸亜鉛塩、リン酸チタン塩、リン酸マンガン塩、リン酸バリウム塩、リン酸スズ塩、低融点ガラス、しっくい、せっこう、マグネシウムセメント、リサージセメント、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、リン酸セメント、コンクリート、固体電解質等の無機材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このうち、結着性および耐電解液溶出性、耐酸化還元性、エネルギー密度などの観点から、リチウムケイ酸塩、ナトリウムケイ酸塩、カリウムケイ酸塩、グアニジンケイ酸塩、アンモニウムケイ酸塩、ケイフッ化塩、アルミノケイ酸塩、リン酸アルミニウム塩、リン酸マグネシウム塩、リン酸カルシウム塩の無機材料が好ましい。
ただ、無機バインダで負極を製造すると、無機バインダの比重が大きいため、重さ当たりの電極エネルギー密度が低くなる傾向がある。また、酸やアルカリの強い無機バインダでは、SiやSnなどの耐薬品性に乏しい活物質が含まれるとスラリーの混合中に水素ガスが発生し、電極塗工が困難になるばかりか、加熱乾燥の工程で発泡し均一な電極が製造できない。また、耐薬品性に乏しい集電体を用いると集電体が劣化する。
負極用バインダは、従来、合金系の負極活物質を用いる場合、充放電に伴う活物質の体積変化を抑制し、電池のサイクル寿命特性を向上させる観点から、例えば、PIが好ましいとされていたが、本発明においては、骨格形成剤で体積変化を抑制することが可能であるため、上述した通常用いられているものすべてが使用可能となる。
負極に含有される活物質、バインダ、導電助剤の合計を100質量%とした場合、バインダが0.1〜60質量%含有されていることが好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。
バインダが0.1質量%未満であると電極の機械強度が低いため、骨格形成する際に、活物質が脱落しやすく、電池のサイクル寿命特性が悪くなることがある。一方、60質量%を超える場合は、イオン伝導性が低く、また電気抵抗が高くなり、また、電池としての活物質の割合が少ないため、電極容量密度が低くなりやすい。
負極に用いられる集電体は、電子伝導性を有し、保持した負極活物質に通電し得る材料であれば特に限定されない。例えば、C、Ti、Cr、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Al、Au等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。上記の導電性物質以外のものを用いる場合、例えば、鉄にCuやNiを被覆したような異種金属の多層構造体であってもよい。
電気伝導性が高く、電解液中の安定性がよい観点から、集電体としてはC、Ti、Cr、Au、Fe、Cu、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに耐還元性と材料コストの観点からC、Cu、Ni、ステンレス鋼等が好ましい。なお、集電基材に鉄を用いる場合は、集電基材表面の酸化を防ぐため、NiやCuで被覆されたものであることが好ましい。また、従来の合金系負極は充放電に伴う負極材料の体積変化が大きいため、集電基材はステンレス鋼または鉄が好ましいとされていたが、本発明においては、骨格形成剤で集電体にかかる応力を緩和することが可能であるため、上述した通常用いられているものすべてが使用可能となる。
集電体の形状には、線状、棒状、板状、箔状、多孔状があり、このうち充填密度を高めることができることと、骨格形成剤が活物質層に浸透しやすいことから多孔状であってもよい。多孔状には、メッシュ、織布、不織布、エンボス体、パンチング体、エキスパンド、又は発泡体などが挙げられ、このうち、集電基材の形状は、出力特性が良好なことからエンボス体または発泡体が好ましい。
次に、正極について正極に用いる活物質は、非水電解質二次電池で用いられる正極活物質であれば特に限定されない。アルカリ金属遷移金属酸化物系、バナジウム系、硫黄系、固溶体系(リチウム過剰系、ナトリウム過剰系、カリウム過剰系)、カーボン系、有機物系、等を含む公知の電極が用いられる。
アルカリ金属遷移金属酸化物系には、例えば、LiCoO2、Li0.9Na0.1CoO2、LiNiO2、LiNi0.5Co0.52、LiNi0.33Mn0.33Co0.332、LiNi0.5Mn0.2Co0.32、LiNi0.6Mn0.2Co0.22、LiNi0.8Mn0.1Co0.12、Li(Ni,Co,Al)O2、LiMnO2、LiMn24、LiFePO4、LiFe0.5Mn0.5PO4、LiMnPO4、Li2MnSiO4、Li2FeSiO4、Li2(Mn,Fe)SiO4、Li2CoSiO4、Li2MgSiO4、Li2CaSiO4、Li2ZnSiO4、LiNb25、LiNbO2、LiFeO2、LiMgO2、LiCaO2、LiTiO2、LiTiS2、LiCrO2、LiRuO2、LiCuO2、LiZnO2、LiMoO2、LiMoS2、LiTaO2、LiWO2、NaCoO2、NaNiO2、NaNi0.33Mn0.33Co0.332、NaMnO2、NaMn24、NaFePO4、NaFe0.5Mn0.5PO4、NaMnPO4、Na2MnSiO4、Na2FeSiO4、Na2(Mn,Fe)SiO4、Na2CoSiO4、Na2MgSiO4、Na2CaSiO4、Na2ZnSiO4、NaNb25、NaNbO2、NaFeO2、NaMgO2、NaCaO2、NaTiO2、NaTiS2、NaCrO2、NaRuO2、NaCuO2、NaZnO2、NaMoO2、NaMoS2、NaTaO2、NaWO2、KCoO2、KNiO2、KNi0.33Mn0.33Co0.332、KMnO2、KMn24、KFePO4、KFe0.5Mn0.5PO4、KMnPO4、K2MnSiO4、K2FeSiO4、K2(Mn,Fe)SiO4、K2CoSiO4、K2MgSiO4、K2CaSiO4、K2ZnSiO4、KNb25、KNbO2、KFeO2、KMgO2、KCaO2、KTiO2、KTiS2、KCrO2、KRuO2、KCuO2、KZnO2、KMoO2、KMoS2、KTaO2、KWO2等が挙げられる。
バナジウム系には、例えば、LiV25、LiVO2、Li3VO4、Li32(PO43、NaV25、NaVO2、Na3VO4、Na32(PO43、KV25、KVO2、K3VO4、K32(PO43等が挙げられる。硫黄系には、例えば、硫黄、硫化カーボン、ポリスルフィド、ポリ硫化カーボン、硫黄変性ポリアクリルニトリル、ジスルフィド化合物、硫黄変性ゴム、硫黄変性ピッチ、硫黄変性アントラセン、硫化金属等が挙げられる。固溶体系には、例えば、Li2MnO3−LiNiO2、Li2MnO3−LiMnO2、Li2MnO3−LiCoO2、Li2MnO3−Li(Ni,Mn)O2、Li2MnO3−Li(Ni,Co)O2、Li2MnO3−Li(Mn,Co)O2、Li2MnO3−Li(Ni,Mn,Co)O2、Na2MnO3−NaNiO2、Na2MnO3−NaMnO2、Na2MnO3−NaCoO2、Na2MnO3−Na(Ni,Mn)O2、Na2MnO3−Na(Ni,Co)O2、Na2MnO3−Na(Mn,Co)O2、Na2MnO3−Na(Ni,Mn,Co)O2、K2MnO3−KNiO2、K2MnO3−KMnO2、K2MnO3−KCoO2、K2MnO3−K(Ni,Mn)O2、K2MnO3−K(Ni,Co)O2、K2MnO3−K(Mn,Co)O2、K2MnO3−K(Ni,Mn,Co)O2、等が挙げられる。
カーボン系には、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、グラッシーカーボンなどが挙げられる。有機系には、ルベアン酸、テトラシアノキノジメタン、トリキノキサリニレン、フェナジンジオキシド、トリオキソトリアンギュレン、インディゴカルミン、ニトロニルニトロキシドラジカル化合物、ラジアレン系化合物、脂肪族環状ニトロキシルラジカル類、ベンゾキノン類等が挙げられる。
上記した正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、エネルギー密度の観点から、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiFePO4、LiFe0.5Mn0.5PO4、LiMnPO4、LiNi0.33Mn0.33Co0.332、LiNi0.5Mn0.2Co0.32、、LiNi0.6Mn0.2Co0.22、、LiNi0.8Mn0.1Co0.12、Li(Ni,Co,Al)O2、固溶体系、バナジウム系、硫黄系が好ましい。活物質粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円状、切子状、帯状、ファイバー状、フレーク状、ドーナツ状、中空状であってもよい。
一方、負極の場合と同様、本発明の骨格形成剤を、上述した正極活物質の造粒用結着剤として用いることも考えられる。その場合、活物質の一次粒子はメディアン径(D50)0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、造粒後の活物質粒子(二次粒子)は、メディアン径(D50)1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。活物質の造粒方法としては、負極活物質の造粒方法と実質同様であり、公知の造粒方法が適用可能である。
また、導電助剤は、電子伝導性を有していれば特に制限はなく、例えば、金属、炭素材料、導電性高分子、導電性ガラス等が挙げられるが、高い電子伝導性と耐酸化性の観点から、炭素材料が好ましい。具体的にはアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、ファーネスブラック(FB)、サーマルブラック、ランプブラック、チェンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、カーボンブラック(CB)、カーボンファイバー(例えば、登録商標であるVGCFという名称の気相成長炭素繊維)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、グラッシーカーボン、アモルファスカーボンなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いてもよい。
前記正極に含有される活物質、バインダ、導電助剤の合計を100質量%とした場合、導電助剤が0〜20質量%含有されていることが好ましい。つまり、導電助剤は必要に応じて含有される。20質量%を超える場合は、電池としての活物質の割合が少ないため、電極容量密度が低くなりやすい。
正極用バインダは、通常用いられているもの、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キタンサンガム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アミン、ポリアクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、塩化ビニール、シリコーンゴム、ニトリルゴム、シアノアクリレート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ラテックス、ポリウレタン、シリル化ウレタン、ニトロセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリスチレン、クロロプロピレン、レゾルシノール樹脂、ポリアロマティック、変性シリコーン、メタクリル樹脂、ポリブテン、ブチルゴム、2−プロペン酸、シアノアクリル酸、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルオリゴマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリアセタール、アルギン酸、デンプン、ショ糖、うるし、にかわ、ガゼイン、セルロースナノファイバー等の有機材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの有機バインダと無機バインダを混合したものでもよい。
無機バインダは、例えば、ケイ酸塩系、リン酸塩系、ゾル系、セメント系などでよい。ただ、無機バインダだけで正極を製造すると、無機バインダの比重が大きいため、重さ当たりの電極エネルギー密度が低くなる傾向がある。
正極用バインダは、従来、硫黄系やバナジウム系、固溶体系の正極活物質を用いる場合、充放電に伴う活物質の体積変化を抑制し、電池のサイクル寿命特性を向上させる観点から、高結着性のバインダが好ましいとされていたが、本発明においては、骨格形成剤で体積変化を抑制することが可能であるため、上述した通常用いられているものすべてが使用可能となる。
正極に含有される活物質、バインダ、導電助剤の合計を100質量%とした場合、バインダが0.1〜60質量%含有されていることが好ましい。バインダが0.1質量%未満であると電極の機械強度が低いため、骨格形成する際に、活物質が脱落しやすく、電池のサイクル寿命特性が悪くなることがある。一方、60質量%を超える場合は、イオン伝導性が低く、また電気抵抗が高くなり、また、電池としての活物質の割合が少ないため、電極容量密度が低くなりやすい。
正極に用いられる集電体は、電子伝導性を有し、保持した正極活物質に通電し得る材料であれば特に限定されない。例えば、C、Ti、Cr、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。上記の導電性物質以外のものを用いる場合、例えば、鉄にAlを被覆したような異種金属の多層構造体であってもよい。電気伝導性が高く、電解液中の安定性がよい観点から、集電体としてはC、Ti、Cr、Au、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに耐酸化性と材料コストの観点からC、Al、ステンレス鋼等が好ましい。より好ましくは、炭素被覆されたAl、炭素被覆されたステンレス鋼が好ましい。
集電体の形状には、線状、棒状、板状、箔状、多孔状があり、このうち充填密度を高めることができることと、骨格形成剤が活物質層に浸透しやすいことから多孔状であってもよい。多孔状には、メッシュ、織布、不織布、エンボス体、パンチング体、エキスパンド、又は発泡体などが挙げられ、このうち、集電基材の形状は、出力特性が良好なことからエンボス体、または発泡体が好ましい。
また、この電極は、非水電解質二次電池用の電極であって、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の骨格形成剤が、少なくとも活物質層内に存在する。この構成によれば、電極に骨格形成剤を塗布等することによって、活物質層に骨格形成剤が浸透し、活物質層内に強固な骨格を形成する。これにより、電極の体積変化を緩和し、電極表面の絶縁性が向上する。
また、この電極は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の骨格形成剤が、活物質層内に存在し、前記活物質層内において、活物質同士の間に隙間が存在する。この構成によれば、電極に骨格形成剤を塗布等することによって、活物質層に骨格形成剤が浸透するため、活物質層内において活物質同士の隙間が完全に骨格形成剤で満たされず、活物質同士の隙間が残存する。これにより、充放電時の活物質の膨張収縮を許容し、電極の集電体のしわや亀裂等の発生を抑制する。
また、この電極は、前記ケイ酸塩系骨格形成剤の層の表面に、前記耐アルカリ性の無機粒子を含む層を有する。この構成によれば、無機粒子の層を備えることで、強固な骨格を形成することができるとともに、乾燥時の剥離やクラックの発生を抑制することができる。また、無機粒子の層がセパレータの代わりとなり、別途セパレータを用いずに、電池を構成することも可能となる。なお、骨格形成剤がリン酸塩系である場合は、耐酸性の無機粒子を含む層とする。
好ましくは、この電極は、片面塗工された電極の単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.01mg/cm2以上3mg/cm2以下である、あるいは、両面塗工された電極の単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.02mg/cm2以上6mg/cm2以下である。より好ましくは、片面塗工された電極の単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.05mg/cm2以上3mg/cm2以下である、あるいは、両面塗工された電極の単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.1mg/cm2以上6mg/cm2以下である。
また、この電極は、アルカリ金属と合金化が可能な活物質又はアルカリ金属イオンを吸蔵することが可能な活物質と、有機バインダ及び前記骨格形成剤を備える。
好ましくは、この電極は、活物質、導電助剤、バインダおよび骨格形成剤の固形分合計を100質量%とした場合、骨格形成剤が0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは、0.5質量%以上10質量%以下である。
本発明に係るセパレータは、非水電解質二次電池用のセパレータであって、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の骨格形成剤が、少なくとも表面に存在していることを特徴とする。
この構成によれば、高強度で耐熱性に優れ、サイクル寿命特性が向上したセパレータとなる。ここで、セパレータは、非水電解質二次電池に一般に用いられるものが使用できる。また、セパレータの材質としては、特に限定されない。短絡時の局所的な発熱で、メルトダウンしないようにセラミックス層がコートまたは充填されているセパレータであってもよい。また、セパレータの形状は、微多孔膜、織布、不織布、圧粉体が挙げられ、形状は特に限定されない。
セパレータに骨格形成剤を塗布することで、短絡時の局所的な発熱で、セパレータ基材がメルトダウンして電池の短絡を抑制することができる。また、電池を充電した際に、正極側のセパレータの酸化を抑制することができるため、電池の自己放電を抑制する。加えて、セパレータの耐熱性が向上するため、釘刺しや過充電の安全性が改善される。
また、ケイ酸塩系骨格形成剤には、耐アルカリ性を有するセラミックスなどの無機粒子が含まれていてもよい。その場合、セラミックスの粒径が、0.2〜20μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.25〜10μmの範囲内である。ただし、リン酸塩系では、耐酸性を有するセラミックスなどの無機粒子が含まれていてもよい。その場合もケイ酸塩系と同様である。
その他、既存のセラミックスコートセパレータのセラミックス層に対して、骨格形成剤を塗布・充填し、耐熱性を向上させたセパレータであってもよい。
セパレータの空隙率は、30%以上であるものが好ましく、アルカリ金属イオン伝導性と耐デンドライト特性の観点から、40%以上90%以下であることがより好ましい。また、ガーレー試験法によって得られる透気度が3000秒/100cc以下であることが好ましい。ここで、空隙率はセパレータの見掛け密度と構成材料の固形分の真密度から、空隙率(%)=100−(セパレータの見掛け密度/材料固形分の真密度)×100、の式により算出した値である。また、ガーレー透気度とは、JIS P 8117に規定されたガーレー試験機法による透気抵抗度である。
好ましくは、このセパレータは、片面塗工されたセパレータの単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.01mg/cm2以上3mg/cm2以下である、あるいは、両面塗工されたセパレータの単位面積当たりの前記骨格形成剤が、0.02mg/cm2以上6mg/cm2以下である。
本発明に係る電極の製造方法は、非水電解質二次電池の電極の製造方法であって、成分にシロキサン結合を有するケイ酸塩を含む骨格形成剤または、リン酸塩を含む骨格形成剤を、前記電極の活物質層の表面につける工程Aと、前記電極を乾燥する工程Bと、を備える。この構成によれば、骨格形成剤を電極の製造に用いることで、耐熱性に優れ高強度で、サイクル寿命特性が向上した電極を製造できる。
また、この電極の製造方法は、前記工程Aにおいて、前記活物質層の表面から内部に前記骨格形成剤が浸透する。
また、この電極の製造方法は、前記工程Aは、前記骨格形成剤を入れた槽に、前記電極を含浸する工程である。
好ましくは、この電極の製造方法は、前記骨格形成剤におけるケイ酸塩またはリン酸塩、の固形分濃度が、0.1乃至30質量部であり、前記工程Bは、60℃以上の温度で熱処理する工程である。60℃未満で乾燥すると、電極やセパレータとの結着強度が低く、またこれらの水分を十分に除去できないため、電池を組んだ際に安定した寿命特性が得られにくくなる。
ここで、電極の製造方法は、例えば、活物質と、バインダと、必要に応じて添加される導電助剤とを混合しスラリー化したものを集電体に塗布し、仮乾燥させた後、骨格形成剤が溶解した水を活物質層に充填し、60℃以上で熱処理を行うことで電極を得る。すなわち、スラリー塗工法により得られた電極を骨格形成剤を活物質層に充填し、熱処理することで電極を得る。仮乾燥は、スラリー内の溶媒が揮発除去できる方法であれば特に限定されないが、例えば、大気中50〜200℃の温度雰囲気下で熱処理を行う方法を挙げることができる。
また、この熱処理は、温度が高温になれば、熱処理時間が短くすることができることと、骨格形成剤の強度が向上することから、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、望ましくは110℃以上である。なお、熱処理の上限温度としては、集電体が溶融しなければ特に限定されず、例えば、銅の融点である約1000℃まで上昇させてもよい。従来の電極であれば、電極用バインダが炭化したり、集電体が軟化することがあったため、上限温度は1000℃よりもはるかに低く見積もられていたが、本発明においては、骨格形成剤が優れた耐熱性を示し、集電体の強度よりも強固であることから、温度の上限は1000℃である。
また、熱処理の時間は、0.5〜100時間保持することによって行うことができる。熱処理の雰囲気は、大気中であってもかまわないが、集電体の酸化を防ぐため、非酸化雰囲気下で処理することが好ましい。非酸化雰囲気下とは、酸素ガスの存在量が空気中よりも少ない環境を意味する。例えば、減圧環境、真空環境、水素ガス雰囲気、チッ素ガス雰囲気、希ガス雰囲気などであってもよい。
また、不可逆容量のある材料を用いた電極の場合は、リチウムドープにより、不可逆容量をキャンセルしていることが好ましい。リチウムドープの方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)電極集電体上の活物質層がない部分に金属リチウムを貼り付け、注液することでローカルセルを形成し、電極活物質中にリチウムをドープする方法、(ii)電極集電体上の活物質層上に金属リチウムを貼り付け、注液することで強制短絡させ、電極活物質中にリチウムをドープする方法、(iii)活物質層上に蒸着やスパッタにより金属リチウムを成膜し、固相反応で電極活物質中にリチウムをドープする方法、(iv)電池構成前の電極に、電解液中で電気化学的にリチウムをドープする方法、(v)活物質粉末に金属リチウムを加え混合処理することで、活物質中にリチウムをドープする方法等が挙げられる。
その他、電極の製造方法としては、例えば、活物質あるいは活物質前駆体を化学めっき法やスパッタリング法、蒸着法、ガスデポジション法などを用いて、集電体上に活物質層を形成して一体化する方法などとしてもよいが、骨格形成剤の親液性と電極製造コストの観点から、スラリー塗工法が好ましい。
本発明に係る電池は、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の電極、又は、請求項14に記載のセパレータ、を備えることを特徴とする。この構成によれば、サイクル寿命特性に優れ、安全性の良好な電池とすることができる。
例えば、上記の電極(正極又は負極)を用いた電池であれば、正極と負極とをセパレータを介して接合され、電解液内に浸漬した状態で密閉化された電池構造が考えられる。なお、電池の構造はこれに限られず、積層式電池、捲回式電池などの既存の電池形態や構造等に適用可能である。
また、この電池に用いる電解質は、正極から負極、または負極から正極にアルカリ金属イオンを移動させることのできる液体または固体であればよく、公知の非水電解質二次電池に用いられる電解質と同じものが使用可能である。例えば、電解液、ゲル電解質、固体電解質、イオン性液体、溶融塩があげられる。ここで、電解液とは、電解質が溶媒に溶けた状態のものをいう。
電解質としては、アルカリ金属イオンを含有する必要があることから、その電解質塩としては、非水電解質二次電池で用いられるものであれば特に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好適である。このアルカリ金属塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO4)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiN(SO2CF32)、リチウムビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド(LiN(SO2252)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBC48)、、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム及びトリフルオロメタンスルホン酸イミドナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、過塩素酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム及びトリフルオロメタンスルホン酸イミドカリウムなどからなる群より選択される少なくとも1種以上を用いることができる。
電解質の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、メチル−γ−ブチロラクトン、メチルラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン(DOL)、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、フラン、ジメチルフラン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラハイドロフラン(MeTHF)、テトラヒドロプラン(THP)、ジオキサン(DIOX)、クラウンエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルフルオロアセテート、エチルトリフルオロアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチル酪酸プロピル、酢酸ビニル、シアノ酢酸メチル、γ−バレロラクトン、σ−バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ウンデカラクトン、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、トリ−n−プロピルフォスフェート、トリオクチルホスファート、リン酸トリフェニル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレンジアミン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、ジメチルサルフェート、ジメチルサルファイト、ジプロピルサルファイト、エチレンサルファイト、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン、メチルスルホラン、メタンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、プロパンスルホン、ブタンスルホン、ジメチルスルホキシド、ジフェニルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、アセトニトリル、プロパンニトリル、アジポニトリル、バレロニトリル、グルタニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、イソブチロニトリル、ビフェニル、無水コハク酸、t−ブチルベンゼン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ベンゾトリアゾール、チオフェン、トルエン、メチルエチルケトン、ベンゼン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(EVC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンサルファイト(ES)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
イオン性液体や溶融塩は、カチオン(陽イオン)の種類でピリジン系、脂環族アミン系、脂肪族アミン系などに類別される。これに組み合わせるアニオン(陰イオン)の種類を選択することで、多様なイオン性液体又は溶融塩を合成できる。カチオンには、イミダゾリウム塩類・ピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系イオン、無機系イオンなど、アニオンの採用例としては、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系などがある。
イオン性液体や溶融塩は、例えば、イミダゾリニウム等のカチオンと、Br-、Cl-、BF4 -、PF6 -、(CF3SO22-、CF3SO3 -、FeCl4 -等のアニオンと組み合わせて構成するような公知の合成方法で得ることができる。イオン性液体や溶融塩であれば、電解質を加えなくても電解液として機能することができる。
本発明に係る電気機器は、請求項19に記載の電池を備えることを特徴とする。
電気機器としては、例えば、アイロン、泡だて器、一体型パソコン、衣類乾燥機、医療機器、インターホン、ウェアラブル端末、映像機器、エアコン、エアサーキュレーター、園芸機械、オートバイ、オーブン、音楽プレーヤー、音楽レコーダー、温風ヒーター、おもちゃ類、カーコンポ、懐中電灯、拡声器、カーナビ、カセットコンロ、家庭用蓄電池、介護機械、加湿器、乾燥機、給油機、給水器、吸引機、金庫、グルーガン、携帯電話、携帯情報機器、空気清浄器、空調服、ゲーム機、蛍光灯、毛玉取り機、コードレス電話、コーヒーメーカー、コーヒーウォーマー、氷かき機、こたつ、コピー機、散髪器具、シェーバー、芝刈り機、自動車、照明器具、除湿器、シーラー、シュレッダー、自動体外式除細動器、炊飯器、ステレオ、ストーブ、スピーカー、ズボンプレッサー、スマートフォン、精米機、洗濯機、洗浄機能付便座、センサー、扇風機、潜水艦、送風機、掃除機、タブレット、体脂肪計、釣り具、デジタルカメラ、テレビ、テレビ受像機、テレビゲーム、ディスプレイ、ディスクチェンジャー、デスクトップ型パソコン、鉄道、テレビ、電気カーペット、電気スタンド、電気ストーブ、電気ポット、電気毛布、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電気自動車、電気うき、電動歯ブラシ、電話機、電動自転車、電撃殺虫器、電磁調理器、電子手帳、電子楽器、電子錠、電子カード、電子レンジ、電子蚊取り、電子たばこ、電話、トースター、ドライヤー、トランシーバー、時計、ドローン、生ごみ処理機、ノートパソコン、白熱電球、はんだごて、パネルヒーター、ハロゲンヒーター、発酵機、パン焼き機、ハイブリッド自動車、パソコン、パソコン周辺機器、バリカン、パネルヒーター、ビデオカメラ、ビデオデッキ、飛行機、非常用電灯、非常用蓄電池、船、美容機器、プリンター、複写機、粉砕機、噴霧器、ファクシミリ、フォークリフト、プラグインハイブリッド自動車、プロジェクタ、ヘアドライア、ヘアーアイロン、ヘッドホン、防災機器、防犯機器、ホームシアター、ホットサンドメーカー、ホットプレート、ポンプ、芳香機、マッサージ機、ミキサー、ミル、ムービープレーヤー、モニター、もちつき機、湯沸かし器、床暖房パネル、ラジオ、ラジオカセット、ランタン、ラジコン、ラミネーター、リモコン、レンジ、冷水器、冷蔵庫、冷風機、冷風扇、冷房機器、ロボット、ワープロ、GPS、などが挙げられる。
本発明に係る骨格形成剤は、これを電極に用いることで、バインダとして用いる場合と異なり、しわや亀裂等の発生を抑制できる。また、従来よりも良好な寿命特性が得られる。また、活物質層の電子伝導性が高い場合も、内部短絡による発熱を低くできる。
本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤を塗工した電極の断面を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤の塗工の一例を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極の製造工程の一例を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極のサイクル寿命特性を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極の骨格密度と放電容量の関係を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極のサイクル寿命特性を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極の骨格密度と放電容量の関係を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる電極のサイクル寿命特性を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる界面活性剤を含む骨格形成剤を適用した電極のサイクル寿命特性を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤を塗工した電極と塗工していない電極のサイクル寿命特性を比較した図である。 本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤を塗工した電極と塗工していない電極のサイクル寿命特性を比較した図である。 本発明の一実施形態にかかる無機粒子を含む骨格形成剤を塗工した電極の断面を示す図である。 本発明の一実施形態にかかるセパレータを用いない電池の初期充放電曲線を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤を適用したSi造粒体のSEM像を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる各レートにおける充放電曲線を示す図である。 本発明の一実施形態にかかる骨格形成剤を塗工した電極と塗工していない電極を比較した剥離試験の結果を示す図である。 ケイ酸塩(Na2O・nSiO2)粉末のX線回折(XRD)パターンを示 す図である。 アルカリ金属ケイ酸塩(Li0.05Na1.95O・2.8SiO2)をバイン ダとして含む参考例の電極のサイクル寿命特性と200サイクル後の電極を示す図である。 従来のSi負極における集電体を示す写真の写しである。 骨格形成剤を被覆含浸した電極と被覆含浸しない電極を比較したグロー放電発光分光分析結果を示す図である。 ケイ酸塩系の分子式と、リン酸塩系の分子式を示す図である。
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。特に、本実施形態においては、リチウム二次電池(リチウムイオン電池)の電極を例に説明するが、本発明はこれに限られない。また、骨格形成剤として、主に、Na2O・3SiO2を含むアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を例に説明するが、これに限られない。
―第1実施形態―
[1.電極の製造方法]
まず、本実施形態の一例として、リチウム二次電池の電極の製造方法について説明する。なお、電極には負極と正極があるが、負極と正極は主に集電体及び活物質が異なるのみで製造方法は同様である。よって、負極の製造方法について説明し、正極の製造方法は適宜省略する。
負極は、銅箔に電極材料を塗布して製造する。まず、例えば薄さ10μmの圧延銅箔を製造し、あらかじめロール状に巻き取られた銅箔を準備する。また、負極の電極材料は、炭素前駆体を焼成して黒鉛化した人造グラファイトをバインダや導電助剤などと混ぜ合わせてペースト状にする。本実施形態においては、一例としてバインダにPVdFを用い、導電助剤にアセチレンブラック(AB)を用いる。そして、銅箔の表面に電極材料を塗工し、乾燥後、調圧処理して負極本体が完成する。
また、正極は、アルミニウム箔に電極材料を塗布して製造する。なお、正極の電極材料は、リチウム−遷移金属酸化物をバインダや導電助剤などと混ぜ合わせてペースト状にする。本実施形態においては、一例としてバインダにPVdFを用い、導電助剤にABを用いる。以下、正極本体と負極本体をあわせて電極本体と称し、銅箔とアルミニウム箔をあわせて集電体と称し、集電体に塗工された電極材料を活物質層と称する場合がある。
一方、本実施形態においては、電極本体に用いる骨格形成剤をあらかじめ準備する。骨格形成剤は、シロキサン結合を有するアルカリ金属ケイ酸塩であるNa2O・3SiO2を乾式又は湿式により精製し、これを加水調整して製造する。例えば、乾式では下記の式4、湿式では下記の式5による。また、このとき、界面活性剤を混合する。本実施形態の骨格形成剤の一例として、骨格形成剤中のNa2O・3SiO2の固形分濃度が5質量%であり、界面活性剤が0.04質量%である。
Na2CO3+3SiO2→Na2O・3SiO2+CO2↑ ・・・・(式4)
2NaOH+3SiO2→Na2O・3SiO2+H2O ・・・・(式5)
そして、各電極本体の表面にそれぞれ骨格形成剤を塗工して、活物質層をコーティングする。骨格形成剤の塗工方法は、骨格形成剤を貯留した槽に電極本体を含浸する方法、電極本体の表面に骨格形成剤を滴下や塗布する方法、スプレー塗工、スクリーン印刷、カーテン法、スピンコート、グラビアコート、ダイコートなどにより行う。電極本体の表面に塗工された骨格形成剤は、活物質層の内部に浸透し、活物質や導電助剤の隙間などに入り込む。そして、電極本体を110℃〜160℃の温風、加熱等により乾燥し、骨格形成剤を硬化させる。これにより、骨格形成剤が活物質層の骨格を形成する。
最後に、各電極本体、すなわち負極本体と正極本体をそれぞれ所望のサイズに切断して、骨格形成を施した電極が完成する。
また、上記した電極の製造方法は、製造装置により実現することができる。ロール状に巻き取られた集電体を送出し、活物質層塗工装置において集電体に電極材料が塗工され、第1の乾燥装置において電極材料が温風により乾燥され、骨格形成剤塗工装置において骨格形成剤が電極本体の表面に塗工され、第2の乾燥装置において骨格形成剤が温風により乾燥され硬化され、再度ロール状に巻き取られる。最後に、ロール状に巻き取られた電極を所望のサイズに裁断する。
上記した電極の製造方法によれば、高強度で耐熱性に優れ、サイクル寿命特性が向上した電極を連続的に製造できる。また、シロキサン結合を有するケイ酸塩をバインダとして用いず、骨格形成剤として用いることで、銅箔にしわや亀裂等が発生せず、活物質層のひび割れや反り、発生したガスによる膨張も生じず、電極として用いることができる。
また、上記により得られた正極と負極を、セパレータを介してと接合し、電解液内に浸漬した状態で密閉化して、リチウム二次電池とできる。この構造のリチウム二次電池によれば、安全性の良好なリチウム二次電池として機能することができる。リチウム二次電池の構造としては、特に限定されず、積層式電池、捲回式電池などの既存の電池形態や構造に適用可能である。
[2.電極の構成]
上記の製造工程により製造された非水電解質二次電池用の負極は、銅箔の集電体と、その表面に活物質、導電助剤、バインダを含む活物質層とを備える。また、活物質層の表面は硬化した骨格形成剤によりコーティングされ、活物質層の内部にも硬化した骨格形成剤が存在している。また、活物質層の内部の骨格形成剤は、活物質と導電助剤とバインダを覆うようにこれらの隙間に存在している。また、活物質層の骨格形成剤の密度は一例として0.7mg/cm2であり、0.1mg〜3mg/cm2の範囲内にすることが好ましい。
また、正極は、アルミニウム箔の集電体と、その表面に活物質、導電助剤、バインダを含む活物質層とを備える。また、活物質層の表面は硬化した骨格形成剤によりコーティングされ、活物質層の内部にも硬化した骨格形成剤が存在している。また、活物質層の内部の骨格形成剤は、活物質と導電助剤とバインダを覆うようにこれら隙間に存在している。また、活物質層の骨格形成剤の密度は一例として0.5mg/cm2であり、0.1mg〜3mg/cm2とすることが好ましい。
本実施形態の電極は、高強度で耐熱性に優れ、サイクル寿命特性が向上する。また、後述する釘刺し試験結果に示すとおり、釘刺し安全性も向上する。また、骨格形成剤が塗布や含浸によって電極の表面から塗工されているので、活物質層の内部において骨格形成剤が活物質と導電助剤とバインダを覆うように隙間に存在することとなる。すなわち、骨格形成剤をバインダに混練して用いる場合は活物質層の内部に略隙間なく骨格形成剤が存在するところ、本実施形態の電極では、活物質層の内部に一定の隙間が存在することとなる。これにより、電極の膨張収縮を許容し、集電体のしわや亀裂等の発生を抑制できる。
[3.骨格形成剤の構成]
上記したように本実施形態の骨格形成剤は、シロキサン結合を有するアルカリ金属ケイ酸塩であるNa2O・3SiO2の固形分濃度が7.5質量%であり、界面活性剤が0.09質量%で、残りは水である。なお、界面活性剤は必須ではないが、活物質層への親液性が向上し、骨格形成剤が活物質層に均一に浸透する。
また、本実施形態の骨格形成剤は、ケイ酸塩として、アルカリ金属ケイ酸ナトリウムNa2O・3SiO2を用いているが、これに限られず、Naにかえて、Li、K、トリエタノールアンモニウム基、テトラメタノールアンモニウム基、テトラエタノールアンモニウム基、グラニジン基としてもよい。
なお、Naを用いているのは、Naが高強度で、サイクル寿命特性に優れているためである。また、NaとLiを併用することも可能であり、Liを用いることで、イオン伝導性が向上する。この場合、Li<Naとすることが好ましく、このようにすれば、一定の強度を保持し、イオン伝導性が良好な骨格形成剤となる。より具体的には、NaとLiの合計を100モル%とした場合、Naが51〜99%、Liが1〜49%の範囲内であることが好ましく、Naが70〜98%、Liが2〜30%の範囲内であることがより好ましい。
また、本実施形態の骨格形成剤は、SiO2の係数を3としているが、これに限られず、0.5以上5.0以下としてもよく、好ましくは、2.0以上4.5以下で、さらに好ましくは、2.2以上3.8以下ある。
また、本実施形態の骨格形成剤は、既存の電極のコーティングに用いることもできる。このようにすれば、高強度で耐熱性に優れ、サイクル寿命特性が向上した電極となる。
また、本実施形態の骨格形成剤は、セパレータの表面にコーティングして用いることもできる。このようにすれば、高強度で耐熱性に優れ、サイクル寿命特性が向上したセパレータとなる。
[4.実施例]
以下、本実施形態において、骨格形成剤の固形分濃度や骨格密度など種々変更した実施例、それらの試験、結果及び効果について説明する。
<Na2O・nSiO2におけるn数と骨格密度の検討>
(実施例1〜18および比較例1)
電極活物質にSi−C造粒体を用い、0.2C−rate、カットオフ電位0.01V〜1.2V(vs.Li+/Li)、30℃の条件のもと、骨格形成剤のNa2O・nSiO2の固形分濃度を0質量%〜20質量%、nの値を2.0、2.5、3.0に変化させた場合のサイクル寿命特性についての試験である。Si−C造粒体(D50=9.8μm)は、Si(D50=1.1μm)と人造黒鉛(D50=1μm)(Si:人造黒鉛=29:71質量%)および、造粒助剤からなる懸濁液を送液速度6g/min、噴霧圧0.1MPa、乾燥温度80〜180℃の条件でスプレードライすることで作製された。
造粒助剤は、ポリビニルアルコール(PVA、ポバール1400)を用いた。PVAは、Si、人造黒鉛、およびPVAからなる固形分100質量%に対して、1質量%含まれている。なお、D50の値は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定法によるメディアン径を示している。
試験電極(1.4mAh/cm2)は、Si−C造粒体、AB、気相成長炭素繊維(VGCF)、銅フレーク、PVdFからなるスラリー(固形分比:85:3:1:1:10質量%)を銅箔に塗工調圧し、所定の骨格形成剤が溶解した水溶液中に浸漬後、160℃で熱処理することで作製された。対極は、金属リチウム箔を用いた。セパレータは、ガラス不織布(東洋露紙株式会社製、GA−100)とポリエチレン(PE)微多孔膜(20μm)を用いた。電解液は、1.0M LiPF6/(EC:DEC=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%)を用いた。
表1に、実施例1〜18および比較例1の骨格形成剤の固形分濃度、Na2O・nSiO2のnの値をそれぞれ示す。なお、無機骨格形成剤は、Na2CO3、およびSiO2からなる混合体を下記表1に示す組成になるように調合し、1000℃以上に加熱溶融して冷却後、水に溶解させて作製した。
図4は、実施例1〜18および比較例1のサイクル寿命特性を示すグラフである。図4から明らかなように、骨格形成剤を塗布した負極(実施例1〜18)は、塗布していない負極(比較例1)と比べて、寿命特性が大きく改善されている。このうち、Na2O・nSiO2の固形分濃度は、2〜10質量%の範囲内が特に優れたサイクル寿命特性を示した。Na2O・nSiO2におけるnの値は、3.0が特に優れたサイクル寿命特性を示した。
図5は、実施例1〜18および比較例1の骨格形成体の密度(骨格密度)と各サイクル時における放電容量の関係を示すグラフである。図5から明らかなように、活物質として、Si−C造粒体(Si:人造黒鉛=29:71質量%)を用いた電極においては、骨格密度が0.04〜3.15mg/cm2の場合に十分な放電容量を得られることがわかる。より好ましくは、骨格密度が0.1〜2.5mg/cm2である。
(実施例19〜36および比較例2)
実施例19〜36および比較例2は、活物質として、Si−C造粒体の組成が、Si:人造黒鉛=29:71質量%から、46:54質量%に代え、試験電極の容量密度を1.2mAh/cm2した他、先の試験(実施例1〜18および比較例1)と同様である。表2に、実施例19〜36および比較例2の骨格形成剤の固形分濃度、Na2O・nSiO2のnの値をそれぞれ示す。
図6は、実施例19〜36および比較例2のサイクル寿命特性を示すグラフである。図6から明らかなように、骨格形成剤を塗布した負極(実施例19〜36)は、塗布していない負極(比較例2)と比べて、寿命特性が大きく改善されている。このうち、Na2O・nSiO2の固形分濃度は、2〜10質量%の範囲内が特に優れたサイクル寿命特性を示した。Na2O・nSiO2におけるnの値は、3.0が特に優れたサイクル寿命特性を示した。
図7は、実施例19〜36および比較例2の骨格形成体の密度(骨格密度)のと各サイクル時における放電容量の関係を示すグラフである。図7から明らかなように、活物質として、Si−C造粒体(Si:人造黒鉛=46:54質量%)を用いた電極においては、骨格密度が0.03〜3.45mg/cm2の場合に十分な放電容量を得られることがわかる。より好ましくは、骨格密度が0.1〜2.5mg/cm2である。
(実施例37〜40および比較例3)
実施例37〜40は、活物質がSi(D50=1.1μm)、骨格形成剤がLi0.05Na1.95O・3SiO2、試験電極の容量密度が3.0mAh/cm2にし、充放電試験は、0.1C−rate、カットオフ電位0.01V〜1.4V(vs.Li+/Li)の条件にした他、先の試験(実施例1〜18および比較例1)と同様である。表3に、実施例37〜40および比較例3の骨格形成剤の固形分濃度、電極の骨格密度をそれぞれ示す。なお、無機骨格形成剤は、Li2CO3、Na2CO3、およびSiO2からなる混合体を表3に示す組成になるように調合し、1000℃以上に加熱溶融して冷却後、水に溶解させて作製した。
図8は、実施例37〜40および比較例3のサイクル寿命特性を示すグラフである。図8から明らかなように、骨格形成剤を塗布した負極(実施例37〜40)は、初回の放電容量が1800mAh/gを超えているが、塗布していない負極(比較例3)では、放電容量は56.7mAh/gであった。骨格形成剤を塗布した負極(実施例37〜40)と塗布していない負極(比較例3)を比較してわかるように、飛躍的なサイクル寿命特性の改善が示された。このうち、Li0.05Na1.95O・3SiO2の固形分濃度は、0.5〜2.5質量%の範囲内が特に優れたサイクル寿命特性を示した。活物質として、Siを用いた電極においては、骨格密度が0.12〜0.90mg/cm2の場合に2000mAh/gを超える放電容量が得られることがわかった。
次に、実施例37〜40と比較例3の充放電後(20サイクル後)の電池を解体し、試験電極を観察したところ、比較例3は活物質層が集電体から剥離しているのに対して、実施例37〜40は集電体から剥離しておらず、また集電体にシワや亀裂はみられなかった。この結果から、骨格形成剤を被覆充填した電極は、活物質層と集電体との密着性が改善され電極性能が向上したことが明らかになった。
<界面活性剤の検討>
(実施例41および実施例42)
実施例41は、電極活物質として、Si−C造粒体(Si:人造黒鉛=29:71質量%)を用い、骨格形成剤として、Na2O・nSiO2の固形分濃度を6質量%、nの値を2.5、骨格密度を0.84mg/cm2に調整した他の条件は実施例10と同様である。
実施例42は、骨格形成剤として、非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)を0.05質量%加えた他の条件は実施例41と同様である。
図9は、骨格形成剤に界面活性剤が添加されていない電極(実施例41)および骨格形成剤に界面活性剤が添加された電極(実施例42)のサイクル寿命特性を比較して示すグラフである。図9から明らかなように、界面活性剤を加えることでサイクル寿命特性が向上することがわかる。これは、界面活性剤により骨格形成剤の活物質層への親液性が向上し、活物質層に均一な骨格が形成されるためである。また、本実施形態の界面活性剤は、非イオン系界面活性剤を用いているが、これに限られず、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤としてもよい。
<釘刺し安全性>
(実施例43および比較例4)
骨格形成剤を用いた負極を適用した電池の安全性について試験を行った。試験方法は、電池モデルに釘を刺して、電池モデルの発煙や発火の状態について検討する釘刺し試験による。試験には、アルミラミネートケーシングに、負極、セパレータ、正極を複数積層して、電解液を封入した1.1Ahの電池モデルを用いた。正極(4.2mAh/cm2)は、LiNi0.33Co0.33Mn0.332とAB、PVdFからなるスラリーをアルミニウム箔(20μm)に塗工調圧後、160℃で熱処理することで作製された。負極(4.6mAh/cm2)は、人造黒鉛(D50=20μm)とAB、アクリル系バインダからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工調圧後、160℃で熱処理することで作製された。
実施例43は、図2に示すように、負極を骨格形成剤が溶解した水溶液に浸漬後、150℃で熱処理することで作製された。骨格形成剤は、Na2O・3SiO2、非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)からなる水溶液で、Na2O・3SiO2の固形分濃度が6質量%、界面活性剤の固形分濃度が0.05質量%のものを用いた。電極の骨格密度は、片面当たり0.9mg/cm2である。本試験においては、正極と負極は、両面塗工して作製されているため、両面の骨格密度は、1.8mg/cm2となる。また、骨格形成剤を塗布しなかった負極を用いた電池を比較例4とした。
電解液は、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。セパレータは、ポリプロピレン(PP)微多孔膜(23μm)を用いた。釘刺試験は、この電池モデルを0.1C−rateで4.2Vまで充電した後、25℃環境下で電池の中央に鉄釘(φ3mm、丸型)を速度1mm/secで貫通するまで突き刺し、電池電圧と釘温度、ケーシングの温度を測定した。
骨格形成剤のない負極を用いた従来の電池モデル(比較例4)は、釘刺しを行った時、電池電圧が0Vまで低下し、大量の煙が発生した。これは、電池モデルの内部で短絡が起こった際の発熱で、セパレータがメルトダウンしたためである。
一方、骨格形成剤を使用した人造黒鉛負極を用いた電池モデル(実施例43)は、釘刺しを行った時も、3V以上の電圧を維持し、煙の発生はなく、ケーシングや釘の温度も50℃以下で、短絡による発熱がほとんど生じなかった。これは、負極の活物質層の内部に存在する骨格が、活物質等をコーティングして電子の移動を遮り、短絡を抑制するためだと思われる。
<電極剥離試験>
(実施例43および比較例4)
実施例43および比較例4の電池で使用した負極の剥離試験を行った。剥離試験は、JIS K685に準拠し、負極の活物質層に粘着テープ(Scotch,No.845,Book Tape)を1kgローラーで圧着し、25℃環境下で引張り速度300mm/min、角度180°の条件で評価した。図16に、剥離試験後の実施例43および比較例4の負極および粘着テープの写真を示す。図16から明らかなように、骨格形成剤を使用しなかった比較例4の負極は、粘着テープに剥離した活物質層が付着しているが、骨格形成剤を使用した実施例43の負極は、粘着テープに活物質層がほぼ付着していない。剥離強度が向上することが示された。
<負極活物質の検討>
(実施例44〜59および比較例5〜20)
表4に示した各種の負極活物質を用いて、骨格形成剤の有無における効果を比較した。実施例44〜59は、表4に示した負極活物質、AB、PVdFからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて骨格形成剤を活物質層に被覆含浸し、160℃で熱処理することで作製された。電極スラリーの固形分比は、電極活物質が88質量%、ABが4質量%、PVdFが8質量%とした。
骨格形成剤は、Li0.05Na1.95O・3SiO2と非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)からなる水溶液で、Li0.05Na1.95O・3SiO2の固形分濃度が7.5質量%、界面活性剤の固形分濃度が0.03質量%のものを用いた。本試験においては、試験極は、片面塗工して作製されている。
試験電池は、対極としてリチウム金属、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。セパレータは、ポリプロピレン(PP/PE/PP)三層微多孔膜(25μm)を用いた。充放電試験は、電流密度0.1mA/cm2、試験環境温度30℃とし、カットオフ電位、電極の活物質密度(片面)、電極厚み、骨格密度(片面)については、表4の通りである。
表5は、骨格形成を有する各電極(実施例44〜59)のサイクル寿命特性試験結果を示す表である。表6は、比較として骨格形成しなかった各電極(比較例5〜20)のサイクル寿命特性試験結果を示す表である。表5と表6を比較して明らかなように、活物質としてSi、SiO、Ge、In、Fe23を用いた電極は、骨格形成剤を用いることで、優れたサイクル寿命特性を示した。このうち、活物質としてSiを用いた電極(実施例56および比較例17)は、特に顕著な差が示された。これは、強固な骨格形成剤が活物質層に構築されたことで、体積変化に伴う電子導電ネットワークの破壊を抑制したものと思われる。
一方、Ag、Ag2O、Sb、Sb23、SnO2、CuO、NiO、人造黒鉛、Hard carbonでは、骨格形成剤の有無でサイクル寿命特性に大きな差は見られなかった。これらの活物質は、Si、SiO、Ge、In、Fe23と比べると、体積変化が小さいため、本試験条件においては明確な差が示されなかったものと思われる。
ただし、Snでは、骨格形成剤を用いるとサイクル寿命特性が悪化した。これは、Snが、骨格形成剤に足して溶解速度が速く、活物質の形状を維持できなかったため、容量劣化したものと思われる。
<Siとグラファイト混合比率の検討>
(実施例60〜63および比較例21〜24)
Si(1μm)と人造黒鉛(19μm)の混合物を負極活物質として用いた電極において、骨格形成の効果の有無を比較した。実施例60〜63は、表7に示した負極活物質、AB、PVdFからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて骨格形成剤を活物質層に被覆含浸し、160℃で熱処理することで作製された。
また、比較として、骨格形成剤を被覆含浸しなかった電極を作製した(比較例21〜24)。電極スラリーの固形分比は、電極活物質が88質量%、ABが4質量%、PVdFが8質量%とした。骨格形成剤は、Li0.05Na1.95O・3SiO2と非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)からなる水溶液で、Li0.05Na1.95O・3SiO2の固形分濃度が7.5質量%、界面活性剤の固形分濃度が0.03質量%のものを用いた。本試験においては、試験極は、片面塗工して作製されている。
試験電池は、対極としてリチウム金属、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。セパレータは、ポリプロピレン(PP/PE/PP)三層微多孔膜(25μm)を用いた。充放電試験は、電流密度0.1C−rate、試験環境温度30℃とし、カットオフ電位0.0〜1.4V(vs.Li+/Li)とした。骨格密度(片面)については、表8の通りである。試験電極の容量密度は3.0mAh/cm2とした。
図10は、骨格形成剤を塗布した実施例60〜63および骨格形成剤に塗布しなかった比較例21〜24のサイクル寿命特性を比較して示すグラフである。図10から明らかなように、負極中に含まれる活物質の総量を100質量%とした場合、Siが10質量%以下の電極(実施例60、実施例61、比較例21、比較例22)では、あまり大きな変化が見られなかったが、Si量が20質量%以上の電極(実施例62、実施例63、比較例23、比較例24)は、明らかに寿命特性が改善していることがわかる。特にSi量が50質量%の電極(実施例63と比較例24)では、骨格形成することで圧倒的な寿命特性の改善効果が示された。
<各種正極材料の検討>
各正極活物質を用いて、骨格形成剤の塗布量における効果を比較した。試験電極は、表9に示した正極活物質、AB、PVdFからなるスラリーをアルミニウム箔(20μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて骨格形成剤を活物質層に含浸し、170℃で熱処理することで作製された。電極スラリーの固形分比は、電極活物質が90質量%、ABが5質量%、PVdFが5質量%とした。
実施例64〜72で用いた骨格形成剤は、Na2O・2.8SiO2と非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)からなる水溶液で、Na2O・3SiO2の固形分濃度が5.5質量%、界面活性剤の固形分濃度が0.03質量%のものを用いた。
実施例73〜81で用いた骨格形成剤は、Na2O・2.8SiO2と非イオン系界面活性剤(登録商標:トリトンX−100)からなる水溶液で、Na2O・3SiO2の固形分濃度が1.1質量%、界面活性剤の固形分濃度が0.03質量%のものを用いた。
表9に、実施例64〜81の電極片面当たりの骨格密度、カットオフ電位をそれぞれ示す。ただし、実施例72および実施例81については、初回の充電のみ、4.6Vまで充電した。
本試験においては、試験極は、電極容量が2.0mAh/cm2となるように片面塗工して作製されている。試験電池は、対極としてリチウム金属、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%を用いた。セパレータは、ポリプロピレン(PP/PE/PP)三層微多孔膜(25μm)を用いた。充放電試験は、試験環境温度30℃、1〜10サイクルまで充放電レート0.1C−rateとした。
表10は、実施例64〜81のサイクル寿命特性試験結果を示す表である。表10から明らかなように、0.5mg/cm2を超える骨格密度を有する正極(実施例64〜72)は、0.5mg/cm2以下の骨格密度を有する正極(実施例73〜81)と比べて、放電容量が少ないことがわかる。正極においては、骨格密度(片面)は、0.5mg/cm2以下であることが好ましいことがわかった。
<正極の高温耐久性>
(実施例82〜84および比較例21〜23)
実施例82は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格密度が0.06mg/cm2に変更した他、実施例74と同様である。実施例83は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格密度が0.07mg/cm2に変更した他、実施例76と同様である。実施例84は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格密度が0.11mg/cm2に変更した他、実施例81と同様である。比較例21は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格形成体を設けなかった他、実施例74と同様である。比較例22は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格形成体を設けなかった他、実施例76と同様である。比較例23は、電極容量を1.0mAh/cm2、骨格形成体を設けなかった他、実施例81と同様である。
実施例82〜84および比較例21〜23の各正極を用いて、全電池を作製した。負極(2mAh/cm2)は、SiO、AB、ポリイミド(PI)からなるスラリーを銅箔(40μm)に塗工調圧後、300℃で熱処理することで作製された。負極スラリーの固形分比は、電極活物質が79質量%、ABが3質量%、PIが18質量%とした。なお、負極は、電池に組む前に、不可逆容量分のLiを電気化学的に補填している。
試験電池は、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。セパレータは、ガラス不織布(東洋露紙株式会社製、GA−100)を用いた。充放電試験は、試験環境温度80℃とし、電流密度0.1C−rateで10サイクル充放電を繰り返した後、1C−rateで30サイクル充放電した。カットオフ電位は、実施例82および比較例21が4.15V〜2.0V、実施例83および比較例22が4.15〜2.0V、実施例84および比較例23が4.25V〜2.0Vとした。
図11は、骨格形成剤を塗布した実施例82〜84および骨格形成剤を塗布しなかった比較例21〜23のサイクル寿命特性を比較して示すグラフである。図11から明らかなように、骨格形成剤を塗布した実施例82〜84は、比較例21〜23よりもサイクル寿命特性が改善されていることがわかる。PVdFバインダが、高温の電解液に曝されると電解液を吸って膨潤し、電極抵抗を増大させるが、耐膨潤性に優れる骨格形成剤を塗布した電極(実施例82〜84)にすることで、80℃もの高温の電解液中においてもバインダの膨潤を抑制したものと思われる。また、骨格形成剤が正極活物質層に塗布されたことで、電解液の分解も抑制され、サイクル寿命特性の改善効果に寄与したものと思われる。
[5.本実施形態の効果]
以上の本実施形態によれば、次の効果を奏する。A2O・3SiO2(A=Na、Li)を含む骨格形成剤を電極に用いることで、耐熱性に優れ高強度で、サイクル寿命特性が向上した電極となる。また、強靱な集電体を必須とせず、集電体にしわや亀裂等の発生を抑制できる。また、不可逆容量の大きなバインダを用いる必要がない。また、活物質層の電子伝導性が高くても、内部短絡による発熱を低くできる。また、1000℃を超える耐熱性を有し、骨格形成剤が炭化しない。体積変化の激しい合金系材料と接着強度の低いバインダを用いた電極であっても、良好な寿命特性が得られる。また、高温の電解液と接触しても活物質層の膨潤が少ない。
―第2実施形態―
[1.骨格形成剤と電極の構成]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態の違いは、主として骨格形成剤にセラミックスが含まれる点である。図12に、第2実施形態の電極断面イメージを示すが、第2実施形態の骨格形成剤は、耐アルカリ性に優れたセラミックス粉末あるいは固体電解質の粉末が含まれる。
図3に、製造工程の一例を示すが、第2実施形態の骨格形成剤を電極本体の表面に塗工することで、活物質層の表面に骨格形成剤中のアルミナが積層して電気的に絶縁のセラミックス層または固体電解質層が形成されるとともに、活物質層内に骨格形成剤が浸透する。
これにより、強固な骨格を形成することができるとともに、乾燥時の剥離やクラックの発生を抑制することができ、また、無機粒子同士の間隙により空孔が形成されて良好な電解液との親液性が得られる。また、セラミックス層がセパレータの代わりとなり、別途セパレータを用いずに、電池を構成することも可能となる。
[2.実施例]
次に、第2実施形態において、骨格形成剤の組成等、種々変更した実施例について説明する。
<Na2O・3SiO2とα−Al23の割合の検討>
(実施例85〜87および比較例23)
表11に、実施例85〜87で用いた骨格形成剤の固形分組成を示す。また、骨格形成剤としてポリイミド(PI)を用いた電極を作製した(比較例23)。α−Al23は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定法によるメディアン径(D50)が0.95μmの粉末を用いた。骨格形成剤の固形分濃度は、Na2O・3SiO2とα−Al23の固形分を100質量%とした場合、10質量%とした。
負極(4.0mAh/cm2)は、SiO、カーボンブラック(CB)、アクリル系バインダからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて表11に示す骨格形成剤を活物質層に被覆含浸し、160℃で熱処理することで作製された。電極の骨格密度は、片面当たり3.0mg/cm2である。負極スラリーの固形分比は、SiOが90質量%、CBが5質量%、アクリル系バインダが5質量%とした。なお、負極は、電池に組む前に、不可逆容量分のLiを電気化学的に補填している。
正極(2.0mAh/cm2)は、LiFePO4、CB、アクリル系バインダからなるスラリーをアルミニウム箔(20μm)に塗工調圧後、160℃で熱処理することで作製された。正極スラリーの固形分比は、LiFePO4が91質量%、CBが5質量%、アクリル系バインダが4質量%とした。試験電池は、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。
なお、本試験においては、セパレータを使用していない。充放電試験は、試験環境温度60℃とし、電流密度0.1C−rateで充放電した。カットオフ電位は、4.0V〜2.5Vとした。
図13に、実施例85〜87の試験電池の初期充放電曲線を示す。セパレータを用いずに電池として機能することがわかる。なお、比較例23は、電池試験は行っていない。その理由は、活物質層にPIをコーティングしたことで、電極抵抗が増大し、電気化学的にLiイオンをドープすることができなかったためである。
<耐アルカリ性セラミック粒子径の検討>
表12に示すように、α−Al23の粒子径を変えて、骨格形成剤を電極本体の表面に塗工乾燥し、塗工性、新液性、結着性、発泡状態、凝集状態、沈降状態を観察した。骨格形成剤としては、Li0.05Na1.95O・3SiO2とα−Al23からなる水溶液である。骨格形成剤の固形分濃度は、Li0.05Na1.95O・3SiO2とα−Al23の固形分を100質量%とした場合、25質量%含まれている。なお、表12に示した無機粒子の粒径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定法によるメディアン径(D50)を意味する。表12に示したように、第2実施形態において、セラミックスの粒子径は、0.2〜20μmの範囲内であることが好ましいことがわかる。
[3.本実施形態の効果]
以上の本実施形態によれば、次の効果を奏する。第1実施形態で用いた骨格形成剤と耐アルカリ性に優れた粉末(D50=0.2〜20μm)を電極表面に塗布することで、活物質層に強固な骨格を形成することができるとともに、乾燥時の剥離やクラックの発生を抑制することができ、また、無機粒子同士の間隙により空孔が形成されて良好な電解液との親液性が得られる。また、セラミックス層がセパレータの代わりとなり、別途セパレータを用いずに、電池を構成することが可能となる。
―その他の実施形態―
<活物質造粒体の骨格形成>
(実施例88〜93)
骨格形成剤を適用したSi造粒体の製造方法についての試験である。
Si造粒体は、Si(D50=1μm)とABおよびVGCFおよびPIからなるからなる懸濁液を送液速度5g/min、噴霧圧0.1MPa、乾燥温度80〜180℃の条件でスプレードライし、D50=5〜8μmとなるように作製した。懸濁液の固形分比は、表13に示す通りである。
次いで、骨格形成剤を適用したSi造粒体は、スプレードライで得られた造粒体を流動層内に移し、固形分濃度0.5質量%となるように調整した骨格形成剤(Li0.2Na1.8O・nSiO2)を用いて粒子コートして作製した。骨格形成剤は、スプレードライで得られた造粒体と骨格形成剤を100質量%とした場合、1質量%となるように調整した。
図14に、得られた骨格形成剤を適用したSi造粒体(実施例88〜93)のSEM像を示す。実施例88では、懸濁に含まれるPI量が少なく、球状に成形された造粒体が得られにくいが、PI量が増加するに従い球状の造粒体が得られやすいことがわかった。また、VGCFのようなファイバー状の粒子を加えるとウニ状の造粒体が形成されやすいことがわかった。
<リン酸アルミニウム系の骨格形成剤(実施例94)>
試験電極(4.0mAh/cm2)は、Si(1μm)、CB、PVdFバインダからなるスラリーを銅箔(40μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて骨格形成剤を活物質層に被覆含浸し、300℃で熱処理することで作製された。骨格形成剤としては、リン酸アルミニウム(Al23・3P25)を水に溶解させ、固形分5質量%となるように調整した。電極の骨格密度は、片面当たり2.0mg/cm2である。負極スラリーの固形分比は、Siが90質量%、CBが4質量%、PVdFバインダが8質量%とした。
試験電池は、金属Liを対極とし、電解液として、1M LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=50:50vol%,+ビニレンカーボネート1質量%を用いた。セパレータとしては、ガラス不織布(東洋露紙株式会社製、GA−100)を用いた。充放電試験は、試験環境温度30℃とし、電流密度0.1C−rate、0.5C−rate、1.0C−rateで充放電した。カットオフ電位は、1.0V〜0.01Vとした。図15に、実施例94の各レートにおける充放電曲線を示す。骨格形成剤にリン酸アルミニウム(Al23・3P25)を用いても、安定した可逆容量を示すことがわかった。
<バインダとしての評価>
(比較例24)
骨格形成剤をバインダとして用いた試験である。バインダとしては、アルカリ金属ケイ酸塩(Li0.05Na1.95O・2.8SiO2)の固形分濃度が40質量%となるように水を加えて調整した。試験負極(2mAh/cm2)は、Si(D50=1μm)とカーボンブラック、無機バインダからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工し、150℃で熱処理した。電極スラリーの固形分比は、Siが19質量%、CBが4質量%、バインダが76質量%とした。
(比較例25)
比較例25は、バインダとして、アルカリ金属ケイ酸塩から、第一リン酸アルミニウム塩(Al23・3P25)に変えた他、比較例24と同様である。なお、リン酸アルミニウム塩は、市販試薬(Aesar製)を用いた。
(参考例1)
バインダとして、アルカリ金属ケイ酸塩(Li0.05Na1.95O・2.8SiO2)とα−Al23(D50=3μm)を50:50質量%となるように混合し、この混合体の固形分濃度が40質量%となるように水を加えて調整した。その他の条件としては、比較例24と同様である。
(参考例2)
バインダとして、リン酸アルミニウム塩(Al23・3P25)とα−Al23(D50=3μm)を50:50質量%となるように混合し、この混合体の固形分濃度が40質量%となるように水を加えて調整した。その他の条件としては、比較例25と同様である。
比較例25は、スラリーの混合時にSiとアルカリ金属ケイ酸塩が反応して、水素ガスを発生しスラリーが発泡した。また、比較例25および比較例26は、80℃で仮乾燥を行うと、活物質層が膨張し、均一な電極が得られなかった。さらに、比較例25および比較例26の電極を150℃で熱処理したところ、活物質層が大きく体積収縮し、活物質層に亀裂が生じ、集電体から脱落した。
一方、参考例1は、スラリーの混合時にSiとアルカリ金属ケイ酸塩が反応して、水素ガスを発生しスラリーが発泡したが、80℃の仮乾燥で、活物質層が膨張することがなかった。さらに、この電極を150℃で熱処理したところ、比較例25と比べて、体積収縮が抑制され、活物質層の亀裂や集電体からの脱落現象がなくなった。
参考例2においては、スラリーの混合時に水素ガスを発生しないためスラリーが発泡することはなく,80℃の仮乾燥でも、活物質層が膨張することがなかった。さらに、この電極を150℃で熱処理したところ、比較例25と比べて、活物質層の亀裂や集電体からの脱落現象がなくなった。
比較例25および比較例26が、80℃で活物質層が膨張した理由は、スラリーを乾燥する際に、気化したガス(水蒸気)が活物質層内に閉じ込められ、活物質層が膨らんだからと思われる。さらに、150℃では、アルカリ金属ケイ酸塩やリン酸アルミニウム塩に由来する大きな体積収縮で、活物質層に亀裂が生じ、活物質層が集電体から脱落したものと思われる。
一方、参考例1と参考例2は、バインダとして、結着性のないAl23が含まれており、電極乾燥時においてAl23とAl23の粒子間からガスを排出し、活物質層が膨らまなかったものと思われる。さらに、150℃では、Al23がアルカリ金属ケイ酸塩やリン酸アルミニウム塩の体積収縮を抑制し、活物質層の亀裂や集電体からの脱落を防止したものと思われる。
これら現象は、例えば、餅を熱すると、中の水蒸気がお餅内に閉じ込められて膨張するが、小麦粉が主成分であるクッキーでは、小麦粉の隙間から水蒸気が離脱できるので、お餅のような膨張が起こりにくくなることと同じである。
参考例1および参考例2の電極を用いて、充放電試験を行った。電池は、電解液として、1M LiPF6/EC:DEC=50:50vol.%、+VC1質量%)、セパレータとして、ポリオレフィン微多孔膜(20μm)とガラス不織布(GA−100)を重ね合わせたもの、対極として金属Liを用いた半電池を作製した。充放電試験は、環境温度30℃、電流密度0.25C−rate、カットトオフ電位1.5V〜0.01Vとした。
初期充放電効率を比較すると、アルカリ金属ケイ酸塩系(参考例1)が71%、リン酸アルミニウム塩系(参考例2)が67%であり、アルカリ金属ケイ酸塩系の方が、初期充放電効率が良い結果となった。これは、アルカリ金属ケイ酸塩がリン酸アルミニウムよりも不可逆容量が小さいことを意味している。
図18に、参考例1のサイクル寿命特性と、200サイクル後の電極写真(集電体側)を示す。初期放電容量2609mAh/gに対して、100サイクル後の容量維持率は78%であった。活物質層中に強固な無機バインダ(アルカリ金属ケイ酸塩)の骨格が形成されたことで、Siの膨張収縮による導電ネットワークが破壊されにくくなり、優れた容量維持率を示したものと考えられる。薄い銅箔でも歪みを生じさせずに使用できた理由としては、無機バインダ(アルカリ金属ケイ酸塩)の強度が、銅よりも高いためと思われる。
<無機骨格形成剤の確認分析>
(参考例3)
骨格形成剤が電極に浸透しているかを確認した試験である。模擬電極は、Al23(D50=9μm)、AB、PVdFバインダからなるスラリーを銅箔(10μm)に塗工調圧後、スプレーガンを用いて骨格形成剤を活物質層に被覆含浸し、150℃で熱処理することで作製された。骨格形成剤としては、アルカリ金属ケイ酸塩(Na2O・3SiO)を水に溶解させ、固形分8質量%となるように調整した。なお、界面活性剤は加えていない。模擬電極スラリーの固形分比は、α−Al23が85質量%、CBが5質量%、PVdFバインダが10質量%とした。
(参考例4)
参考例4は、比較として、骨格形成剤を被覆含浸しなかった電極である他、参考例3と同じである。図20に、参考例3と参考例4のグロー放電発光分光分析(GDS)結果を示す。GDS測定条件としては、測定径4mmφ、Neガス圧力2000Paとした。測定波長はHでは121nm、Fでは685nm、Oでは130nm、Cでは156nm、Alでは396nm、Siでは251nmとした。横軸の時間は、スパッタ処理した時間で、活物質層の深さ方向(電極表面から集電体への方向)に相当する指標である。縦軸の強度は、発光強度で、元素の含有率に相当する指標である。図20から明らかなように、参考例4ではSiの存在が確認できないのに対して、参考例3は、Siの存在が表面から内部まで一定ではないものの、深層にSiが存在していることが確認できた。この結果から、骨格形成剤を電極表面に塗布することで、骨格形成剤が活物質層内部まで浸透しうることが証明された。
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、骨格形成剤のアルカリ金属ケイ酸塩の固形分濃度などの各種濃度や割合は、上記した実施形態の数値に限られない。また、上記した実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩としてA2O・3SiO2(A=Li、Na)LiやNaに限られず、またSiO2の係数も2〜3に限られない。また、骨格形成剤は、リン酸塩として第一リン酸アルミニウム(Al23・3P25)に限られず、またP25の係数も3に限られない。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。

Claims (14)

  1. アルカリ金属と合金化が可能な活物質又はアルカリ金属イオンを吸蔵することが可能な活物質と、バインダと、を含む非水電解質二次電池の電極における活物質層の骨格形成に用いる骨格形成剤であって、
    成分にシロキサン結合を有する非晶質のケイ酸塩、又は、アルミノリン酸結合を有する非晶質のリン酸塩を含む、骨格形成剤。
  2. さらに、界面活性剤を含む、
    請求項1に記載の骨格形成剤。
  3. 前記界面活性剤は、0.001質量%以上5.0質量%以下である、
    請求項2に記載の骨格形成剤。
  4. 前記ケイ酸塩は、
    一般式A2O・nSiO2で表される非晶質構造であり、
    Aは、Li、Na、K、トリエタノールアンモニウム基、テトラメタノールアンモニウム基、テトラエタノールアンモニウム基、グラニジン基の少なくともいずれか1種であり、
    nが、1.6以上3.9以下である、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の骨格形成剤。
  5. 前記一般式のAが、LiまたはNaであり、
    nが、2.0以上3.5以下である、
    請求項4に記載の骨格形成剤。
  6. 前記ケイ酸塩の固形分濃度が0.1質量%以上30質量%以下である、
    請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の骨格形成剤。
  7. さらに、耐アルカリ性又は耐酸性の無機粒子を含む、
    請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の骨格形成剤。
  8. 前記ケイ酸塩及び前記無機粒子を含む固形分の合計を100質量%とした場合に、
    前記ケイ酸塩が5質量%以上80質量%以下であり、
    前記無機粒子が20質量%以上95質量%以下であり、
    前記無機粒子のメディアン径が0.2μm以上20μm以下である、
    請求項7に記載の骨格形成剤。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の骨格形成材が、
    少なくとも活物質層の表面に存在する、電極。
  10. 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の骨格形成材が、
    少なくとも活物質層内に存在する、電極。
  11. 非水電解質二次電池の電極の製造方法であって、
    アルカリ金属と合金化が可能な活物質又はアルカリ金属イオンを吸蔵することが可能な活物質と、バインダと、導電助剤とを混練して活物質層となる電極材料を製造し、線状、棒状、板状、箔状、多孔状の集電体の表面に電極材料を塗工して電極を製造する工程を含み、
    成分にシロキサン結合を有する非晶質のケイ酸塩、又は、アルミノリン酸結合を有する非晶質のリン酸塩を含む骨格形成剤を、前記電極の活物質層の表面に塗工する工程Aと、前記電極を乾燥する工程Bと、を備える、
    電極の製造方法。
  12. 前記工程Aにおいて、前記活物質層の表面から内部に前記骨格形成剤が浸透する、
    請求項11に記載の電極の製造方法。
  13. 前記工程Aは、
    前記骨格形成剤を入れた槽に、前記電極を含浸する工程である、
    請求項11又は請求項12に記載の電極の製造方法。
  14. 前記骨格形成剤におけるケイ酸塩の固形分濃度が、0.1乃至30質量部であり、
    前記工程Bは、60℃以上の温度で熱処理する工程である、
    請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の電極の製造方法。

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