(実施形態)
本実施形態の非接触給電装置は、負荷に対し非接触で給電を行う。非接触給電装置は、非接触給電装置が有する一次側コイル(給電側コイル)と負荷が有する二次側コイル(受電側コイル)とが電磁界結合(電界結合と磁界結合との少なくとも一方)された状態で、一次側コイルから二次側コイルへ電力の伝達を行う。これにより、非接触給電装置は、負荷への給電を行う。この種の非接触給電装置は、負荷に備わっている非接触受電装置と共に非接触電力伝送システムを構成する。
<非接触電力伝送システムの概要>
まず、非接触電力伝送システムの概要について、図1を参照して説明する。
本実施形態の非接触電力伝送システム1は、一次側コイルL1を有する非接触給電装置2と、二次側コイルL2を有する非接触受電装置3とを備えている。非接触受電装置3は、非接触給電装置2から非接触で出力電力が供給されるように構成されている。ここで、出力電力は、非接触給電装置2から出力される電力であって、一次側コイルL1に交流電圧が印加されることにより一次側コイルL1から二次側コイルL2に非接触で伝送(供給)される電力である。一次側コイルL1および二次側コイルL2は、平面上において導線が渦巻き状に巻かれたスパイラル型のコイルである。
本実施形態では、負荷としての電動車両に非接触受電装置3が搭載されている場合を例に説明する。電動車両は、蓄電池4を備え、蓄電池4に蓄積された電気エネルギーを用いて走行する車両である。電動車両に搭載された非接触受電装置3は、蓄電池4の充電装置として用いられる。なお、ここでは電動機で生じる駆動力によって走行する電気自動車を電動車両の例として説明するが、電動車両は電気自動車に限らず、例えば二輪車(電動バイク)、電動自転車などであってもよい。
非接触給電装置2は、商用電源(系統電源)や、太陽光発電設備等の発電設備から供給される電力を、非接触受電装置3に供給することで、電動車両の蓄電池4を充電する。非接触給電装置2に供給される電力は、交流電力と直流電力とのいずれであってもよいが、本実施形態では、非接触給電装置2が直流電源5に電気的に接続され、非接触給電装置2に直流電力が供給される場合を例に説明する。なお、非接触給電装置2に交流電力が供給される場合、非接触給電装置2には交流を直流に変換するAC/DCコンバータ、あるいは整流器が設けられる。
非接触給電装置2は、例えば商業施設や公共施設、あるいは集合住宅などの駐車場に設置される。非接触給電装置2は、少なくとも一次側コイルL1が床あるいは地面に設置されており、一次側コイルL1上に駐車された電動車両の非接触受電装置3に対して非接触で電力を供給する。このとき、非接触受電装置3の二次側コイルL2は、一次側コイルL1の上方に位置することで、一次側コイルL1と電磁界結合(電界結合と磁界結合との少なくとも一方)されている。そのため、一次側コイルL1からの出力電力が二次側コイルL2へ伝達(送電)されることになる。なお、一次側コイルL1は、床あるいは地面から露出するように設置される構成に限らず、床あるいは地面に埋め込まれるように設置されていてもよい。また、非接触給電装置2の設置場所は、上述の駐車場に限定されず、道路などの他の場所であってもよい。
非接触受電装置3は、二次側コイルL2と、一対の二次側コンデンサC21,C22と、整流回路31と、平滑コンデンサC2とを有している。整流回路31は、一対の交流入力点と、一対の直流出力点とを有するダイオードブリッジからなる。二次側コイルL2の一端は、第1の二次側コンデンサC21を介して整流回路31の一方の交流入力点に電気的に接続され、二次側コイルL2の他端は、第2の二次側コンデンサC22を介して整流回路31の他方の交流入力点に電気的に接続されている。平滑コンデンサC2は、整流回路31の一対の直流出力点間に電気的に接続されている。さらに、平滑コンデンサC2の両端は一対の出力端子T21,T22に電気的に接続されている。一対の出力端子T21,T22には、蓄電池4が電気的に接続されている。
これにより、非接触受電装置3は、非接触給電装置2の一次側コイルL1からの出力電力を二次側コイルL2で受ける。この結果、二次側コイルL2の両端間に発生する交流電圧を、非接触受電装置3は、整流回路31にて整流し、さらに平滑コンデンサC2にて平滑して直流電圧を得る。非接触受電装置3は、このようにして得られる直流電圧を、一対の出力端子T21,T22から蓄電池4に出力(印加)する。
ここで、本実施形態においては、非接触給電装置2は、一次側コイルL1と共に共振回路(以下、「一次側共振回路」という)を構成する電力補正回路22、および一対の一次側コンデンサC11,C12を備えている。また、非接触受電装置3では、二次側コイルL2は一対の二次側コンデンサC21,C22と共に共振回路(以下、「二次側共振回路」という)を構成している。そして、本実施形態の非接触電力伝送システム1は、一次側共振回路と二次側共振回路とを共鳴させることにより電力の伝送を行う磁界共鳴方式(磁気共鳴方式)を採用している。すなわち、非接触電力伝送システム1は、一次側共振回路と二次側共振回路とで共振周波数を一致させることにより、一次側コイルL1と二次側コイルL2とが比較的離れた状態でも、非接触給電装置2の出力電力を高効率で伝送可能である。
<非接触給電装置の概要>
次に、非接触給電装置の概要について、図1を参照して説明する。
本実施形態の非接触給電装置2は、一次側コイルL1に加えて、インバータ回路21と、電力補正回路22と、制御回路23とをさらに備えている。
インバータ回路21は、一対の入力点211,212と一対の出力点213,214との間に電気的に接続された複数(ここでは4つ)の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を有している。インバータ回路21は、複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点211,212に印加される直流電圧を交流電圧に変換して一対の出力点213,214から出力する。
一次側コイルL1は、一対の出力点213,214間に電気的に接続され、交流電圧が印加されることにより二次側コイルL2に非接触で出力電力を供給する。
電力補正回路22は、出力点213と一次側コイルL1との間に電気的に接続され、調整用コンデンサC1および複数(ここでは4つ)の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を有している。電力補正回路22は、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のスイッチングにより、調整用コンデンサC1の充電時間および放電時間を調整する。そして、電力補正回路22は、調整用コンデンサC1の充電時間および放電時間を調整することによって、インバータ回路21の出力電圧に対する一次側コイルL1に流れる電流の位相差(電圧電流位相差であり、以降、VI位相差と呼ぶ)φを調節することができる。これにより、一次共振回路から二次共振回路へ伝達される出力電力の大きさが調節される。
なお、調整用コンデンサC1の容量は、一次側コンデンサC11,C12の各容量に比べて十分に大きい。一例として、調整用コンデンサC1の容量はμFオーダー、一次側コンデンサC11,C12の各容量はnFオーダーに設定される。
制御回路23は、「周波数制御」と「位相差制御」との2つの方法で、出力電力の大きさを調節するように構成されている。制御回路23は、第1駆動信号にて複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を制御し、第2駆動信号にて複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を制御する。
そして、制御回路23は、第1駆動信号の周波数を調整することで、変換用スイッチ素子Q1〜Q4の動作周波数を制御する周波数制御を行う。この周波数制御時において、制御回路23は、電力補正回路22の全ての調整用スイッチ素子Q5〜Q8をオン状態に固定することで、電力補正回路22を短絡状態としておく。
また、制御回路23は、第1駆動信号に対する第2駆動信号の位相の遅れである駆動位相差θを調節することで、位相差制御を行う。この位相差制御時において、制御回路23は、インバータ回路21および電力補正回路22の各動作周波数を同一に設定する。
なお、本実施形態でいう「入力点」や「出力点」は、電線等を接続するための部品(端子)として実体を有しなくてもよく、例えば電子部品のリードや、回路基板に含まれる導体の一部であってもよい。
<回路構成>
次に、本実施形態の非接触給電装置2の具体的な回路構成について、図1を参照して説明する。
本実施形態の非接触給電装置2は、一対の入力端子T11,T12を備えている。一対の入力端子T11,T12には、直流電源5が電気的に接続されている。
インバータ回路21は、4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4がフルブリッジ接続されたフルブリッジインバータ回路である。つまり、インバータ回路21は、一対の入力点211,212間に電気的に並列に接続された第1アームと第2アームとを有し、これら第1アームおよび第2アームが4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4にて構成されている。第1アームは(第1の)変換用スイッチ素子Q1と(第2の)変換用スイッチ素子Q2との直列回路からなり、第2アームは(第3の)変換用スイッチ素子Q3と(第4の)変換用スイッチ素子Q4との直列回路からなる。第1アームの中点(変換用スイッチ素子Q1,Q2の接続点)および第2アームの中点(変換用スイッチ素子Q3,Q4の接続点)は、一対の出力点213,214となる。本実施形態では、4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4は、それぞれnチャネルのデプレション型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
さらに詳しく説明すると、一対の入力点211,212は、第1の入力点211が直流電源5の正極側となり、第2の入力点212が直流電源5の負極側となるように、一対の入力端子T11,T12に電気的に接続されている。第1の入力点211には、変換用スイッチ素子Q1,Q3のドレインが電気的に接続されている。また、第2の入力点212には、変換用スイッチ素子Q2,Q4のソースが電気的に接続されている。そして、変換用スイッチ素子Q1のソースと変換用スイッチ素子Q2のドレインとの接続点が、インバータ回路21の第1の出力点213となる。また、変換用スイッチ素子Q3のソースと変換用スイッチ素子Q4のドレインとの接続点が、インバータ回路21の第2の出力点214となる。
4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4の各々のドレインおよびソース間には、4つのダイオードD1〜D4が4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4と一対一に対応するように電気的に接続されている。各ダイオードD1〜D4は、各変換用スイッチ素子Q1〜Q4のドレイン側をカソードとする向きで接続されている。ここでは、各ダイオードD1〜D4は各変換用スイッチ素子Q1〜Q4の寄生ダイオードである。
電力補正回路22は、調整用コンデンサC1と、4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8とを有している。電力補正回路22は、インバータ回路21の一対の出力点213,214間において電気的に並列に接続された第3アームと第4アームとを有し、これら第3アームおよび第4アームが4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8にて構成されている。第3アームは(第1の)調整用スイッチ素子Q5と(第3の)調整用スイッチ素子Q7との直列回路からなり、第4アームは(第2の)調整用スイッチ素子Q6と(第4の)調整用スイッチ素子Q8との直列回路からなる。第3アームの中点(調整用スイッチ素子Q5,Q7の接続点)と、第4アームの中点(調整用スイッチ素子Q6,Q8の接続点)との間には、調整用コンデンサC1が電気的に接続されている。本実施形態では、4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8は、それぞれnチャネルのデプレション型MOSFETである。
さらに詳しく説明すると、インバータ回路21の第1の出力点213には、第1の一次側コンデンサC11を介して、調整用スイッチ素子Q5のソースおよび調整用スイッチ素子Q6のドレインが電気的に接続されている。また、第2の出力点214には、第2の一次側コンデンサC12および一次側コイルL1を介して、調整用スイッチ素子Q7のソースおよび調整用スイッチ素子Q8のドレインが電気的に接続されている。そして、調整用コンデンサC1の一端は、調整用スイッチ素子Q5のドレインと調整用スイッチ素子Q7のドレインとの接続点に電気的に接続されている。調整用コンデンサC1の他端は、調整用スイッチ素子Q6のソースと調整用スイッチ素子Q8のソースとの接続点に電気的に接続されている。
4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8の各々のドレインおよびソース間には、4つのダイオードD5〜D8が4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8と一対一に対応するように電気的に接続されている。各ダイオードD5〜D8は、各調整用スイッチ素子Q5〜Q8のドレイン側をカソードとする向きで接続されている。ここでは、各ダイオードD5〜D8は各調整用スイッチ素子Q5〜Q8の寄生ダイオードである。
制御回路23は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成として備えている。マイコンは、マイコンのメモリに記録されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、制御回路23としての機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。上記プログラムは、非接触給電装置2に用いられるコンピュータ(ここではマイコン)を、制御回路23(後述する開始角演算部231、補正演算部232、制御部233)として機能させるためのプログラムである。
本実施形態では、制御回路23は、制御部233を備えている。
制御部233は、インバータ回路21の各変換用スイッチ素子Q1〜Q4のオンオフを切り替えるための第1駆動信号G1〜G4を出力する。4つの第1駆動信号G1〜G4は、4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4に一対一に対応する。ここでは、制御部233は、第1駆動信号G1〜G4を、それぞれ対応する変換用スイッチ素子Q1〜Q4のゲートに出力することで、対応する変換用スイッチ素子Q1〜Q4の制御を行っている。
また、制御部233は、電力補正回路22の4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8の各々のオンオフを切り替えるための第2駆動信号G5〜G8を出力する。4つの第2駆動信号G5〜G8は、4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8に一対一に対応する。ここでは、制御部233は、第2駆動信号G5〜G8を、それぞれ対応する調整用スイッチ素子Q5〜Q8のゲートに出力することで、対応する調整用スイッチ素子Q5〜Q8の制御を行っている。
なお、本実施形態では、制御回路23の制御部233が、変換用スイッチ素子Q1〜Q4および調整用スイッチ素子Q5〜Q8の各々のゲートに対し、第1駆動信号G1〜G4および第2駆動信号G5〜G8を直接出力しているが、この構成に限らない。例えば、非接触給電装置2は駆動回路をさらに備え、駆動回路が、制御回路23の制御部233からの第1駆動信号G1〜G4および第2駆動信号G5〜G8を受けて、変換用スイッチ素子Q1〜Q4および調整用スイッチ素子Q5〜Q8を駆動してもよい。
一次側コイルL1は、インバータ回路21の一対の出力点213,214の間において、一対の一次側コンデンサC11,C12および電力補正回路22と電気的に直列に接続されている。一次側コイルL1の一端は、電力補正回路22および第1の一次側コンデンサC11を介して、インバータ回路21の第1の出力点213に電気的に接続されている。一次側コイルL1の他端は、第2の一次側コンデンサC12を介して、インバータ回路21の第2の出力点214に電気的に接続されている。
本実施形態の非接触給電装置2は、一次側コイルL1に流れる電流の大きさを計測値として計測する計測部24をさらに備えている。一次側コイルL1と第2の一次側コンデンサC12との間には、例えば変流器からなる電流センサ25が設けられている。計測部24は、電流センサ25の出力を受けて、一次側コイルL1に流れる電流の大きさ(瞬時値および実効値)を、計測値として計測する。計測部24は、計測値を制御回路23に出力するように構成されている。制御回路23は、計測部24で計測された計測値を用いて、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさ、一次側コイルL1に流れる電流の位相を監視する。
<基本動作>
次に、本実施形態の非接触給電装置2の基本動作について、図1および図2を参照して説明する。図2では、横軸を時間軸として、上から順に第1駆動信号「G1,G4」、「G2,G3」、第2駆動信号「G5,G8」、「G6,G7」の信号波形を表している。なお、図2中の「オン」、「オフ」は、対応するスイッチ素子(変換用スイッチ素子、調整用スイッチ素子)のオン、オフを表している。
(1)電力補正回路なし
ここではまず、電力補正回路22がない場合、つまり一対の出力点213,214間に、一次側コイルL1および一対の一次側コンデンサC11,C12のみが電気的に接続されている場合を想定し、非接触給電装置2の動作を説明する。このときの非接触給電装置2の動作は、図1の回路構成において、電力補正回路22が動作を停止している場合、つまり電力補正回路22の全ての調整用スイッチ素子Q5〜Q8がオンに固定されている場合の非接触給電装置2の動作と等価である。この電力補正回路22が動作を停止している状態は、電力補正回路22の短絡状態に相当する。
制御回路23の制御部233は、図2に示すように、変換用スイッチ素子Q1,Q4に対応する第1駆動信号G1,G4と、変換用スイッチ素子Q2,Q3に対応する第1駆動信号G2,G3として、互いに逆位相(位相差180度)の信号を発生する。これにより、インバータ回路21においては、第1の変換用スイッチ素子Q1および第4の変換用スイッチ素子Q4のペアと、第2の変換用スイッチ素子Q2および第3の変換用スイッチ素子Q3のペアとが交互にオンするように制御される。
その結果、インバータ回路21の一対の出力点213,214間には、周期的に極性(正・負)が反転する電圧(交流電圧)が発生する。要するに、インバータ回路21は、複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点211,212に印加される直流電圧を交流電圧に変換して一対の出力点213,214から出力する。以下では、インバータ回路21の出力電圧について、一対の出力点213,214のうちの第1の出力点213が高電位となる電圧を「正極性」といい、第2の出力点214が高電位となる電圧を「負極性」という。つまり、インバータ回路21の出力電圧は、変換用スイッチ素子Q1,Q4がオンの状態で正極性となり、変換用スイッチ素子Q2,Q3がオンの状態で負極性となる。
このように、インバータ回路21が一対の出力点213,214から交流電圧を出力することで、一対の出力点213,214間に電気的に接続された一次側コイルL1に交流電流が流れ、一次側コイルL1が磁界を発生する。これにより、非接触給電装置2は、非接触受電装置3の二次側コイルL2に対し、一次側コイルL1から非接触で出力電力を供給することができる。
ところで、電力補正回路22がない場合、本実施形態の非接触給電装置2では、一次側コイルL1は一対の一次側コンデンサC11,C12と共に一次側共振回路を構成する。そのため、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさは、インバータ回路21の動作周波数(つまり第1駆動信号G1〜G4の周波数)に応じて変化する。そして、インバータ回路21の動作周波数が一次側共振回路の共振周波数の近傍に達したときに、出力電力の大きさはピークに達する。
ここにおいて、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係が変化して、一次側コイルL1と二次側コイルL2との間の結合係数が変化すると、非接触給電装置2の出力電力の周波数特性(以下、「共振特性」という)が変化する。図3は、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係が変化した場合の、非接触給電装置2の共振特性の変化を示している。なお、図3では、横軸を周波数(インバータ回路21の動作周波数)、縦軸を非接触給電装置2の出力電力として、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係が異なる場合の非接触給電装置2の共振特性を「X1」、「X2」で示している。
ここで、図3に示すように、インバータ回路21の動作周波数として使用可能な周波数帯域(以下、「許可周波数帯F1」という)が制限されていると仮定する。許可周波数帯F1は、例えば電波法などの法律により規定される。この場合、許可周波数帯F1の下限値fmin未満、および上限値fmaxを超えるような周波数については、インバータ回路21の動作周波数として使用することはできない。こうした場合において、非接触給電装置2の共振特性が、例えば図3に「X1」で示すような状態にあれば、インバータ回路21の動作周波数をどう調整しても、非接触給電装置2の出力電力が必要な大きさ(以下、「目標値」という)とならない可能性がある。
例えば図4Aに示すように、一次側共振回路の共振周波数fr0が許可周波数帯F1から外れていると、非接触給電装置2の出力電力の大きさがピークに届かず、結果的に、目標値P1に対して出力電力が不足する可能性がある。また、例えば図4Bに示すように、一次側共振回路の共振周波数fr0が許可周波数帯F1内にある場合でも、非接触給電装置2の出力電力のピークが目標値P1に届かず、結果的に、目標値P1に対して出力電力が不足する可能性がある。つまり、図4Aや図4Bの例では、ハッチング(斜線)部分の高さに相当する電力が、目標値P1に対して不足することになる。
そこで、本実施形態の非接触給電装置2は、電力補正回路22を備えることにより、調整用コンデンサC1の充電時間および放電時間を調整して、目標値P1を満たすように出力電力の大きさを補正する機能を有している。
(2)電力補正回路あり
次に、図1に示すように電力補正回路22がある場合における、非接触給電装置2の動作を説明する。電力補正回路22がある場合とは、一対の出力点213,214間に、一次側コイルL1、一対の一次側コンデンサC11,C12、および電力補正回路22の調整用コンデンサC1が電気的に接続されている場合である。
制御回路23の制御部233は、図2に示すように、調整用スイッチ素子Q6,Q7に対応する第2駆動信号G6,G7と、調整用スイッチ素子Q5,Q8に対応する第2駆動信号G5,G8として、互いに逆位相(位相差180度)の信号を発生する。これにより、電力補正回路22においては、第2の調整用スイッチ素子Q6および第3の調整用スイッチ素子Q7のペアと、第1の調整用スイッチ素子Q5および第4の調整用スイッチ素子Q8のペアとが交互にオンするように制御される。本実施形態では、制御回路23の制御部233は、位相差制御の実行時において、第1駆動信号G1〜G4および第2駆動信号G5〜G8の各周波数を同一周波数としている。
そして、本実施形態の非接触給電装置2では、電力補正回路22が調整用コンデンサC1の充電時間および放電時間を調整することで、インバータ回路21のVI位相差φを調節することができる。その結果、非接触給電装置2の出力電力が目標値P1に対して不足するような場合、電力補正回路22にて、目標値P1を満たすように出力電力の大きさを補正することが可能である。
ところで、本実施形態では、上述したように、変換用スイッチ素子Q1,Q4に対応する第1駆動信号G1,G4と、変換用スイッチ素子Q2,Q3に対応する第1駆動信号G2,G3とは互いに逆位相(位相差180度)の信号になる。また、調整用スイッチ素子Q6,Q7に対応する第2駆動信号G6,G7と、調整用スイッチ素子Q5,Q8に対応する第2駆動信号G5,G8とは互いに逆位相(位相差180度)の信号になる。
ここにおいて、本実施形態でいう第1駆動信号と第2駆動信号との駆動位相差θは、第1駆動信号G1,G4に対する第2駆動信号G6,G7の位相の遅れ、あるいは第1駆動信号G2,G3に対する第2駆動信号G5,G8の位相の遅れである(図2参照)。すなわち、第1駆動信号G1,G4に対する第2駆動信号G6,G7の位相の遅れと、第1駆動信号G1,G4に対する第2駆動信号G5,G8の位相の遅れとでは180度の開きがあるため、いずれの位相の遅れを駆動位相差θとするかで駆動位相差θの値が異なる。そこで、本実施形態では、第1駆動信号G1,G4に対する第2駆動信号G6,G7の位相の遅れ、あるいは第1駆動信号G2,G3に対する第2駆動信号G5,G8の位相の遅れを駆動位相差θと定義する。なお、駆動位相差θが第1位相差に相当する。
<遅相モード>
次に、遅相モードについて説明する。遅相モードとは、インバータ回路21の出力において、電圧位相に対して電流位相が遅れ位相(遅相)になるモードである。
(1)電力補正回路なし
ここではまず、上記「基本動作」の欄と同様に、電力補正回路22がない場合、つまり一対の出力点213,214間に、一次側コイルL1および一対の一次側コンデンサC11,C12のみが電気的に接続されている場合について説明する。
この場合、インバータ回路21は、例えばインバータ回路21の動作周波数と一次側共振回路の共振周波数との関係に応じて遅相モードで動作する。
遅相モードは、インバータ回路21の出力電流(一次側コイルL1を流れる電流)の位相が、インバータ回路21の出力電圧の位相よりも遅れた状態で、インバータ回路21が動作するモードである。つまり、遅相モードでは、電圧位相に対して電流位相が遅れ位相(遅相)になる。遅相モードでは、インバータ回路21のスイッチング動作はソフトスイッチングになる。したがって、遅相モードでは、変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチング損失を低減でき、また、変換用スイッチ素子Q1〜Q4にストレスが加わりにくい。一方、インバータ回路21の出力電流の位相が、インバータ回路21の出力電圧の位相よりも進んだ状態でインバータ回路21が動作する進相モードでは、変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチング損失が増大しやすい。また、進相モードでは、変換用スイッチ素子Q1〜Q4にストレスが加わりやすい。そのため、インバータ回路21は、進相モードよりも遅相モードで動作することが好ましい。本実施形態では、インバータ回路21は、遅相モードで動作するよう制御されている。このとき、VI位相差φ(インバータ回路21の出力電圧に対する一次側コイルL1に流れる電流の位相差)は、0度〜90度の範囲内の値となる。なお、VI位相差φが第2位相差に相当する。
(2)電力補正回路あり
次に、電力補正回路22がある場合、つまり一対の出力点213,214間に、一次側コイルL1、一対の一次側コンデンサC11,C12、および電力補正回路22が電気的に接続されている場合について説明する。
電力補正回路22は、インバータ回路21と同様に、進相モードと遅相モードとのいずれかの動作モードで動作することが可能である。しかしながら、電力補正回路22も、進相モードでなく遅相モードで動作することが好ましい。そこで、本実施形態では、電力補正回路22は、インバータ回路21と同様に、遅相モードで動作するように構成される。
また、電力補正回路22がある場合には、インバータ回路21および電力補正回路22の各動作モード(遅相モード、進相モード)は、第1駆動信号G1〜G4と第2駆動信号G5〜G8との駆動位相差θに応じて変化することが確認されている。さらに、インバータ回路21の動作モードと駆動位相差θとの関係は、電力補正回路22がない状態、つまり上記「(1)電力補正回路なし」で説明した条件下における、インバータ回路21の動作モード(初期モード)によって変化する。言い換えれば、インバータ回路21の動作周波数と一次側共振回路の共振周波数との関係で決まるインバータ回路21の動作モードである初期モードが遅相モードか進相モードかによって、インバータ回路21の動作モードと駆動位相差θとの関係は変化する。
図5は、電力補正回路22がない状態でインバータ回路21が遅相モードにある場合の、非接触給電装置2の出力電力の駆動位相差θに対する特性(位相差特性)を示している。つまり、図5は初期モードが遅相モードにある場合の出力電力の駆動位相差θに対する特性を示している。図5では、横軸を第1駆動信号G1〜G4と第2駆動信号G5〜G8との駆動位相差θ、縦軸を非接触給電装置2の出力電力とする。
そして、電力補正回路22がない状態でインバータ回路21が遅相モード(以下、「初期遅相」という)にある場合においては、非接触給電装置2の出力電力は、例えば図5に示すように駆動位相差θに応じて変化する。図5の例では、非接触給電装置2の出力電力は、駆動位相差θが270度のときに極大かつ最大となり、駆動位相差θが180度のときに極小かつ最小となるように駆動位相差θによって変化する。そのため、初期モードが遅相モードとなる「初期遅相」の場合においては、インバータ回路21および電力補正回路22のそれぞれの動作モード(遅相モード、進相モード)と駆動位相差θの各区分との関係は表1のようになる。
要するに、「初期遅相」の場合にあっては、インバータ回路21が遅相モードで動作するのは、第1区分Z1〜第4区分Z4のうち、駆動位相差θが0度〜180度、270度〜360度となる第1区分Z1、第2区分Z2、および第4区分Z4の3区分である。また、「初期遅相」の場合において、電力補正回路22が遅相モードで動作するのは、第1区分Z1〜第4区分Z4のうち、駆動位相差θが0度〜90度、180度〜360度となる第1区分Z1、第3区分Z3、および第4区分Z4の3区分である。つまり、「初期遅相」の場合に、インバータ回路21と電力補正回路22とのいずれもが遅相モードで動作するのは、第1区分Z1〜第4区分Z4のうち、駆動位相差θが0度〜90度、270度〜360度となる第1区分Z1、および第4区分Z4の2区分である。
しかし、第1区分Z1においては駆動位相差θが変化しても出力電力の大きさは殆ど変化しないため、第1区分Z1および第4区分Z4の2区分のうち、駆動位相差θの調節により出力電力の大きさが調節可能であるのは第4区分Z4のみである。そのため、位相差制御による駆動位相差θの調整範囲は、第4区分Z4の270度〜360度の範囲であることが好ましい。これにより、制御回路23が駆動位相差θを調整して、非接触給電装置2の出力電力の大きさが調節されたとしても、インバータ回路21および電力補正回路22の両方が遅相モードで動作することができる。
<出力電力制御>
次に、本実施形態の非接触給電装置2において、出力電力の大きさを調節する「出力電力制御」の動作について説明する。
(1)周波数制御および位相差制御
本実施形態では、制御回路23の制御部233は、第1駆動信号G1〜G4および第2駆動信号G5〜G8の周波数を調節する「周波数制御」と、駆動位相差θを調節する「位相差制御」との2つの方法で、出力電力の大きさを調節するように構成されている。
本実施形態では、制御回路23の制御部233は、まず第1駆動信号G1〜G4の周波数を調節することにより出力電力の大きさを調節する周波数制御を行う。
周波数制御では、制御部233は、第1駆動信号G1〜G4の周波数を調節することにより出力電力の大きさを調節する。つまり、上記「基本動作」の「(1)電力補正回路なし」の欄で説明したように、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさは、インバータ回路21の動作周波数(つまり第1駆動信号G1〜G4の周波数)に応じて変化する(図3参照)。そのため、周波数制御では、制御回路23の制御部233は、第1駆動信号G1〜G4の周波数を調節することで、インバータ回路21の動作周波数を調節し、出力電力の大きさを調節する。言い換えると、制御部233は、周波数制御において、VI位相差φを制御して出力電力の大きさを調節することができる。このとき、制御部233は、調整用スイッチ素子Q5〜Q8をオン状態に制御しており、電力補正回路22は短絡状態となっている。
ここで、インバータ回路21の動作周波数として使用可能な周波数帯域(許可周波数帯F1)が制限されている場合には、周波数制御で調節可能な周波数は、この許可周波数帯F1内に限定される。
そして、周波数制御にて調節後の出力電力の大きさが、周波数制御による出力電力のピーク値に達すると、制御回路23は以下に説明する位相差制御を行う。つまり、周波数制御だけでは目標値に対して出力電力が不足する可能性がある場合、制御回路23は位相差制御で不足分を補う。
制御回路23は、開始角演算部231を有している。開始角演算部231は、周波数制御による出力電力のピーク値に達したときのVI位相差φsに応じて、電力制御開始角θsを算出する。ここで、電力制御開始角θsは、第4区分Z4内において、第2駆動信号の1周期において調整用コンデンサC1が充電される時間と調整用コンデンサC1が放電される時間とが等しくなる駆動位相差θである。すなわち、電力制御開始角θsとは、駆動位相差θを360度から徐々に小さくしていった場合に、調整用コンデンサC1に電荷が蓄積され始める駆動位相差θに相当する。
また、制御回路23は、計測部24の計測値を取得して、一次側コイルL1に流れる電流を監視でき、この一次側コイルL1に流れる電流と第1駆動信号との位相差から、VI位相差φsを求めることができる。
制御部233は、電力制御開始角θsから第4区分Z4の下限値の270度までの範囲で駆動位相差θを調節することにより、出力電力の大きさを調節する。
したがって、下記の[式1]が成立する。
360(度)−電力制御開始角θs+VI位相差φs=90(度) [式1]
すなわち、電力制御開始角θsは、下記の[式2]で表される。
電力制御開始角θs=VI位相差φs+270(度) [式2]
制御部233は、位相差制御において、電力制御開始角θsを初期値とし、電力制御開始角θsから270度までの範囲で駆動位相差θを調節することにより、非接触給電装置2の出力電力の大きさを調節することができる。言い換えると、制御部233は、位相差制御においても、VI位相差φを制御して出力電力の大きさを調節することができる。つまり、図5から明らかなように、非接触給電装置2の出力電力は駆動位相差θに応じて変化するので、制御部233が駆動位相差θを調節することで出力電力の大きさの調節が可能となる。
しかしながら、駆動位相差θを電力制御開始角θsから徐々に小さくして、出力電力を目標値に徐々に近づける方法は、出力電力が目標値に達するまでに時間がかかり、目標値に対する出力電力の応答性、追従性がよくない。
そこで、制御回路23は、補正演算部232をさらに備える。補正演算部232は、制御部233がインバータ回路21に対して周波数制御を行っているときに、VI位相差φ、および一次側コイルL1に流れる電流の大きさを監視することで、VI位相差φと出力電力との対応関係を推定することができる。たとえば、制御部233は、VI位相差φの変化に対する出力電力の変化の履歴に対して線形予測法などを適用することによって、予め決められたVI位相差φの所定範囲に亘る出力電力を推定することができる。推定結果は、制御回路23のメモリに格納される。VI位相差φと出力電力との対応関係は、一例として、VI位相差φの減少分に比例して、出力電力が増加していく。すなわち、VI位相差φが小さくなるに従って、出力電力が線形的に増加していく。
そして、補正演算部232は、VI位相差φと出力電力との対応関係を参照して、出力電力が目標値になるVI位相差φを、指示位相差φmとして求める。補正演算部232は、現在のVI位相差φ(駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φ)と指示位相差φmとの差分[φ−φm]を位相補正量として導出する。指示位相差φmは、第3位相差に相当する。
ここで、出力電力が目標値に等しくなる駆動位相差θを目標位相差θmとすると、目標位相差θmは、下記の[式3]に従って求められる。
θm=θs−[φ−φm] [式3]
そして、制御部233は、駆動位相差θを、電力制御開始角θsから位相補正量[φ−φm]だけ小さくすることで、駆動位相差θを目標位相差θmに調節し、出力電力の大きさを目標値に調節することができる。このとき、VI位相差φは、指示位相差φmに調節されている。
したがって、本実施形態の位相差制御は、駆動位相差θを電力制御開始角θsから徐々に小さくして、出力電力を目標値に徐々に近づける方法に比べて、出力電力が目標値に達するまでに時間が短縮される。すなわち、本実施形態の位相差制御によって、目標値に対する出力電力の応答性、追従性が向上する。
また、周波数制御のみで出力電力の大きさが目標値に達する場合は、制御回路23は、電力補正回路22を停止させて短絡状態としているので、電力補正回路22による効率(電力変換効率)の低下を避けることができる。
なお、本実施形態において位相差制御時におけるインバータ回路21および電力補正回路22の各動作周波数は、周波数制御にて調節後のインバータ回路21の動作周波数(周波数制御によって最大出力が得られる動作周波数)と同値である。要するに、位相差制御を行っている間、制御部233は、周波数制御で調節された最終的な動作周波数を維持している。
(2)位相差制御による出力電力制御の原理
以下、制御回路23が位相差制御にて駆動位相差θを調節することにより、非接触給電装置2の出力電力の大きさが調節される原理について、図6A〜図8を参照して説明する。
位相差制御では、制御回路23は、駆動位相差θを調節することにより、調整用コンデンサC1の充電と放電とのバランスを変化させ、インバータ回路21のVI位相差φを変化させる。そして、非接触給電装置2の出力電力は、インバータ回路21のVI位相差φによって調節される。
ここにおいて、調整用コンデンサC1が充電されるか放電されるかは、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のオンオフ、およびインバータ回路21の出力電流の向きによって決まる。インバータ回路21の出力電流は、一次側コイルL1を流れる電流であるから、以下「一次側電流I1」ともいう。第1の出力点213から、一次側コンデンサC11、電力補正回路22、一次側コイルL1、および一次側コンデンサC12を通って第2の出力点214に流れる一次側電流I1の向き、つまり図1に矢印で示す一次側電流I1の向きを、「正方向」という。第2の出力点214から、一次側コンデンサC12、一次側コイルL1、電力補正回路22、および一次側コンデンサC11を通って第1の出力点213に流れる一次側電流I1の向き、つまり図1に矢印で示す一次側電流I1とは逆の向きを、「負方向」という。
図6A〜6Dは、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のオンオフと、一次側電流I1の向きとの組み合わせパターンを示している。図6A〜6D中、太線矢印は電流経路を表し、点線の丸印が付された調整用スイッチ素子はオン状態の素子を表している。
図6Aは、電力補正回路22の状態として、調整用スイッチ素子Q6,Q7がオン、調整用スイッチ素子Q5,Q8がオフであって、負方向の一次側電流I1が流れている状態(以下、「第1充電モード」という)を表している。図6Bは、電力補正回路22の状態として、調整用スイッチ素子Q6,Q7がオン、調整用スイッチ素子Q5,Q8がオフであって、正方向の一次側電流I1が流れている状態(以下、「第1放電モード」という)を表している。図6Cは、電力補正回路22の状態として、調整用スイッチ素子Q5,Q8がオン、調整用スイッチ素子Q6,Q7がオフであって、正方向の一次側電流I1が流れている状態(以下、「第2充電モード」という)を表している。図6Dは、電力補正回路22の状態として、調整用スイッチ素子Q5,Q8がオン、調整用スイッチ素子Q6,Q7がオフであって、負方向の一次側電流I1が流れている状態(以下、「第2放電モード」という)を表している。図6Aに示す第1充電モード、および図6Cに示す第2充電モードにおいて、調整用コンデンサC1は充電される。一方、図6Bに示す第1放電モード、および図6Dに示す第2放電モードで、調整用コンデンサC1は放電される。
そして、駆動位相差θが電力制御開始角θsに等しい場合、上述の第1充電モードの期間および第1放電モードの期間の各時間長が等しくなる。また、駆動位相差θが電力制御開始角θsに等しい場合、上述の第2充電モードの期間および第2放電モードの期間の各時間長が等しくなる。したがって、駆動位相差θが電力制御開始角θsに等しい場合、第2駆動信号の1周期において、調整用コンデンサC1には電荷が蓄積されない。
次に、図7および図8を参照して、駆動位相差θと、調整用コンデンサC1の充電および放電のバランスとの関係について説明する。図7および図8ではいずれも、横軸を時間軸として、上から順に第1駆動信号「G1,G4」、一次側電流「I1」、2種類の第2駆動信号「G6,G7」の波形を表している。ここでいう2種類の第2駆動信号は互いに駆動位相差θが異なっている。なお、図7および図8中の「オン」、「オフ」は、対応するスイッチ素子(変換用スイッチ素子、調整用スイッチ素子)のオン、オフを表している。
図7は、「初期遅相」の場合におけるVI位相差φが90度である場合を例示している。このとき、開始角演算部231は、上述の[式2]を用いて、電力制御開始角θs=360度(=90+270)を算出する。
図7では、2種類の第2駆動信号「G6,G7」の波形として、上から順に駆動位相差θが電力制御開始角θs(=360度)に等しいときの波形、駆動位相差θ=320度であるときの波形を表している。さらに、図7では、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=360度)に等しい場合について、第1充電モードの期間を「Tca1」、第1放電モードの期間を「Tda1」、第2充電モードの期間を「Tca2」、第2放電モードの期間を「Tda2」で表している。同様に、駆動位相差θが320度の場合について、第1充電モードの期間を「Tcb1」、第1放電モードの期間を「Tdb1」、第2充電モードの期間を「Tcb2」、第2放電モードの期間を「Tdb2」で表している。
図7から明らかなように、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=360度)に等しい場合、第2駆動信号の1周期において、調整用コンデンサC1が充電される時間と、調整用コンデンサC1が放電される時間とは等しくなる。つまり、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=360度)に等しい場合、「Tca1」および「Tca2」の合計と、「Tda1」および「Tda2」の合計とは、同じ時間長さになる。以下、第2駆動信号の1周期において、調整用コンデンサC1が充電される時間を「充電時間」という。また、第2駆動信号の1周期において、調整用コンデンサC1が放電される時間を「放電時間」という。なお、第2駆動信号の1周期において、調整用コンデンサC1の充電時間と調整用コンデンサC1の放電時間とが等しい状態とは、充電時間および放電時間の各時間長さの差が所定値以下に収まっている均衡状態に相当する。
一方、駆動位相差θが320度であれば、第2駆動信号の1周期において、充電時間が放電時間を上回る。つまり、駆動位相差θが320度であれば、「Tcb1」および「Tcb2」の合計は、「Tdb1」および「Tdb2」の合計よりも、長くなる。
上記より、駆動位相差θを電力制御開始角θs(=360度)から270度に近づくように徐々に変化させると、第2駆動信号の1周期において、充電時間と放電時間との均衡が破れ、徐々に、充電時間の占める割合が大きくなる。図7では、説明の便宜上、VI位相差φの変化についての表記は省略するが、実際には、駆動位相差θが変化すると、駆動位相差θの変化に伴ってVI位相差φも初期値(ここでは90度)から変化する。すなわち、充電時間が放電時間を上回ると、調整用コンデンサC1に電流が流れ込み、この電流位相が調整用コンデンサC1の両端電圧の位相に対して90度進むことになる。つまり、調整用コンデンサC1が進相コンデンサとして機能する。そして、調整用コンデンサC1に流れ込む電流によってVI位相差φが小さくなり、出力電力が増加する。つまり、駆動位相差θを電力制御開始角θsより小さくした場合、駆動位相差θの変化と同じ角度だけVI位相差φを小さく出来る(調整用コンデンサC1の電圧と電流との位相差を90度に維持するように作用するため)。結果的に、駆動位相差θが電力制御開始角θsから270度に近づくにつれて、非接触給電装置2の出力電力が、徐々に大きくなる。
このとき、駆動位相差θを電力制御開始角θsから小さくすれば、充電時間と放電時間との均衡が維持されるように、VI位相差φが小さくなる。つまり、駆動位相差θが電力制御開始角θs以下の領域でも、充電時間と放電時間とは均衡している。たとえば、充電時間が放電時間を上回る関係が維持されるとすれば、調整用コンデンサC1に電荷が充電され続ける状態になり、調整用コンデンサC1の電圧が無限大に発散してしまう。しかしながら、実際には、VI位相差φが小さくなると、充電時間と放電時間とが再び均衡して、調整用コンデンサC1の電圧は発散しない。
また、図8は、「初期遅相」の場合におけるVI位相差φが45度である場合を例示している。このとき、開始角演算部231は、上述の[式2]を用いて、電力制御開始角θs=315度(=45+270)を算出する。
図8では、2種類の第2駆動信号「G6,G7」の波形として、上から順に駆動位相差θが電力制御開始角θs(=315度)のときの波形、駆動位相差θが290度のときの波形を表している。さらに、図8では、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=315度)に等しい場合について、第1充電モードの期間を「Tca1」、第1放電モードの期間を「Tda1」、第2充電モードの期間を「Tca2」、第2放電モードの期間を「Tda2」で表している。同様に、駆動位相差θが290度の場合について、第1充電モードの期間を「Tcb1」、第1放電モードの期間を「Tdb1」、第2充電モードの期間を「Tcb2」、第2放電モードの期間を「Tdb2」で表している。
VI位相差φが45度であれば、図8から明らかなように、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=315度)に等しい場合に、第2駆動信号の1周期において、充電時間と放電時間とは等しくなる。つまり、駆動位相差θが電力制御開始角θs(=315度)に等しい場合に、「Tca1」および「Tca2」の合計と、「Tda1」および「Tda2」の合計とは、同じ時間長さになる。一方、駆動位相差θが290度であれば、第2駆動信号の1周期において、充電時間が放電時間を上回る。つまり、駆動位相差θが290度であれば、「Tcb1」および「Tcb2」の合計は、「Tdb1」および「Tdb2」の合計よりも、長くなる。
上記より、VI位相差φが90度の場合に限らず、「初期遅相」の場合には、駆動位相差θが電力制御開始角θsから270度に近づくように変化すると、第2駆動信号の1周期において、充電時間と放電時間との均衡が破れ、徐々に、充電時間の占める割合が大きくなる。しかし、上述のように充電時間と放電時間と均衡を維持するべく、VI位相差φが小さくなり、充電時間と放電時間とが再び均衡する。
ここで、駆動位相差θを360度から徐々に小さくした場合に、充電時間と放電時間との均衡が破れて調整用コンデンサC1の両端電圧が上昇し始める変曲点に相当する駆動位相差θが電力制御開始角θsに相当する。電力制御開始角θsは、VI位相差φによって異なる(式2参照)。電力制御開始角θsは、VI位相差φが90度のときよりも45度のときの方が、つまりVI位相差φが小さいほど、360度から270度に近づく向きにシフトする。
すなわち、「初期遅相」の場合、VI位相差φによる違いはあるとしても、規定範囲(例えば270度〜360度)内に電力制御開始角θsが存在する。そのため、制御回路23が、規定範囲の上限値(360度)から下限値(270度)にかけて駆動位相差θを徐々に小さくすれば、駆動位相差θが電力制御開始角θsに達した以降は、非接触給電装置2の出力電力は徐々に大きくなる。しかしながら、駆動位相差θが規定範囲の上限値(360度)から電力制御開始角θsに達するまでは、非接触給電装置2の出力電力は変化しない。すなわち、制御回路23は、この期間においては、出力電力の大きさを調節することができない。
そこで、開始角演算部231は、上記の[式2]を用いて調整用コンデンサC1の両端電圧が上昇し始める電力制御開始角θsを求める。制御部233は、電力制御開始角θsを、位相差制御における駆動位相差θの初期値とする。
さらに、補正演算部232は、現在のVI位相差φ(駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φ)と指示位相差φmとの差分[φ−φm]を位相補正量として導出する。そして、制御部233は、駆動位相差θを、電力制御開始角θsから位相補正量[φ−φm]だけ小さくすることで、駆動位相差θを目標位相差θmに調節し、出力電力の大きさを目標値に迅速に調節することができる。
また、この位相差制御は、インバータ回路21のVI位相差φを調節することによって、非接触給電装置2の出力電力を変化させているともいえる。
(3)出力電力制御の全体的な流れ
以下、本実施形態の「出力電力制御」の流れについて、制御回路23の処理を表す図9のフローチャートを参照して説明する。
制御回路23の制御部233は、出力電力の目標値のデータをメモリから読み出す(取得する)(S1)。目標値のデータは、非接触受電装置3が搭載された電動車両から非接触給電装置2へ伝達され、制御回路23などのメモリに格納されている。電動車両は、蓄電池4の蓄電状態に応じて目標値を更新し、更新毎に新たな目標値のデータを非接触給電装置2へ送信する。
制御部233は、インバータ回路21に対して周波数制御を行い、インバータ回路21を駆動して、一次側コイルL1に交流電力を供給する(S2)。具体的に、制御部233は、第1駆動信号の周波数を変化させて、出力電力を目標値に近付ける。このとき、制御部233は、調整用スイッチ素子Q5〜Q8をオン状態に制御し、電力補正回路22を短絡状態にして、インバータ回路21に対する周波数制御を行う。
補正演算部232は、制御部233がインバータ回路21に対して周波数制御を行っているときに、VI位相差φ、および一次側コイルL1に流れる電流の大きさを監視することで、VI位相差φと出力電力との対応関係(φ−P特性)を推定する(S3)。推定結果は、補正演算部232のメモリに格納される。
そして、制御部233は、周波数制御によって出力電力が目標値に達したか否かを判定する(S4)。制御部233は、出力電力が目標値に達すれば、ステップS1に戻って周波数制御を継続し、出力電力が目標値に一致するように第1駆動信号の周波数を調節する。
制御部233は、出力電力が目標値に達していない場合、出力電力が、周波数制御による出力電力のピーク値であるか否かを判定する(S5)。出力電力のピーク値は、周波数制御によって供給可能な出力電力の上限である。
制御部233は、出力電力がピーク値未満であれば、ステップS1に戻って周波数制御を継続し、出力電力が目標値に一致するように第1駆動信号の各周波数を調節する。
制御部233は、出力電力がピーク値に達していれば、周波数制御を停止して、位相差制御を行う(S6)。位相差制御を開始した制御部233は、第1駆動信号および第2駆動信号の各周波数を、周波数制御の停止時の周波数に維持する。そして、制御部233は、駆動位相差θを、電力制御開始角θsに調節する(S7)。
このとき、調整用コンデンサC1の容量は、一次側コンデンサC11,C12の各容量に比べて十分に大きい。したがって、電力補正回路22が短絡状態から動作状態に切り替わったとしても、一次側共振回路の共振周波数は変化していないとみなすことができる。すなわち、電力補正回路22が短絡状態から動作状態に切り替わったとしても、非接触給電装置2の共振特性の変化は十分に小さく、共振特性は変化していないとみなすことができる。
そして、補正演算部232は、VI位相差φと出力電力との対応関係(φ−P特性)を参照して、指示位相差φmを求める(S8)。補正演算部232は、現在のVI位相差φ(駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φ)と指示位相差φmとの差分[φ−φm]を位相補正量として導出する(S9)。制御部233は、位相補正量[φ−φm]が0以上であるか否かを判定する(S10)。位相補正量[φ−φm]が0以上であれば、制御部233は、駆動位相差θを、電力制御開始角θsから位相補正量[φ−φm]だけ小さくすることで、駆動位相差θを目標位相差θmに調節する(S11)。すなわち、制御部233は、目標値の変化に応じて目標位相差θmを更新する。この結果、目標値が変化した場合でも、出力電力の大きさは変化後の目標値に調節される。
そして、制御部233は、出力電力の目標値のデータをメモリから読み出して、目標値が変更されたか否かを判定する(S12)。制御部233は、目標値が変更されるまで、現状の位相差制御を維持する。目標値が変更された場合、補正演算部232は、変更後の目標値に対応する指示位相差φmを求める(S8)。そして、補正演算部232は、変更後の目標値に対応する位相補正量[φ−φm]を導出する(S9)。制御部233は、変更後の目標値に対応する位相補正量[φ−φm]が0以上であるか否かを判定する(S10)。位相補正量[φ−φm]が0以上であれば、制御部233は、駆動位相差θを、変更後の目標値に対応する目標位相差θmに調節する(S11)。この結果、出力電力の大きさは変更後の目標値に調節される。
また、ステップS10において位相補正量[φ−φm]が0未満であれば、制御部233は、電力補正回路22のスイッチ素子Q5〜Q8をオン状態に制御して、電力補正回路22を短絡状態にし(S13)、ステップS1に戻ってインバータ回路21に対する周波数制御を行う。すなわち、位相補正量[φ−φm]が0未満である場合、位相差制御による電力制御が不可能になるので、制御部233は、位相差制御から周波数制御に切り替える。
<起動処理>
本実施形態の非接触給電装置2は、インバータ回路21が動作を開始する起動時において、以下に説明するようにインバータ回路21をソフトスタートさせる。
制御回路23は、インバータ回路21の起動時、変換用スイッチ素子Q1〜Q4を制御するための第1駆動信号G1〜G4のデューティ比を、0(ゼロ)から所定値(例えば0.5)まで徐々に上げることで、インバータ回路21のソフトスタートを実現する。これにより、非接触給電装置2に入力される電圧や電流の急変が抑制され、回路素子に加わるストレスを低減できる。以下では、このように制御回路23が第1駆動信号G1〜G4のデューティ比を変化させてインバータ回路21をソフトスタートさせる処理を、「起動処理」という。
本実施形態の非接触給電装置2は、制御回路23が起動処理を行っている間、電力補正回路22に関しては全ての調整用スイッチ素子Q5〜Q8をオンに固定し、電力補正回路22を短絡状態にする。これにより、非接触給電装置2は、「(1)電力補正回路なし」(上記「基本動作」の欄参照)と等価の状態となる。
制御回路23は、インバータ回路21の起動処理が終了すると、つまり第1駆動信号G1〜G4のデューティ比が所定値(例えば0.5)に達すると、周波数制御にて出力電力の調節を開始する。このとき、制御回路23は、電力補正回路22の調整用スイッチ素子Q5〜Q8をオン状態に維持しておく。
そして、制御回路23は、周波数制御にて調節後の出力電力の大きさが所定の目標値未満である場合に、電力補正回路22の動作を開始させる。具体的には、制御回路23は、第2駆動信号G5〜G8にて調整用スイッチ素子Q5〜Q8のスイッチング制御を開始する。これにより、非接触給電装置2は、「(2)電力補正回路あり」(上記「基本動作」の欄参照)と等価の状態となる。このとき、制御回路23は、駆動位相差θを360(度)に一旦設定して、電力補正回路22を始動させることが好ましい。
ところで、制御回路23は、周波数制御によって出力電力を調節する前に、電力補正回路22の動作を開始させて位相差制御によって出力電力の調節を行うように構成されてもよい。すなわち、制御回路23は、周波数制御を行う前に、位相差制御によって出力電力の調節を行い、位相差制御による調節後の出力電力の大きさが所定の目標値未満である場合に、周波数制御を行ってもよい。
<サーチモード>
本実施形態においては、制御回路23は、上述したような出力電力制御を行う通常モード(起動処理を含む)の他に、一次側コイルL1と二次側コイルL2との間の結合係数を推定するサーチモードを有している。制御回路23は、上記起動処理、周波数制御および位相差制御を行う前に、つまり通常モードで動作する前にサーチモードによる処理を実行して一次側コイルL1と二次側コイルL2との間の結合係数を推定する。
制御回路23は、結合係数から、上記「基本動作」の「(1)電力補正回路あり」の欄で説明したような共振特性(つまりインバータ回路21の動作周波数と、非接触給電装置2の出力電力との関係)をさらに推定することができる。その結果、制御回路23では、例えばインバータ回路21の動作周波数f1について、インバータ回路21が遅相モードで動作する(つまり進相モードにならない)周波数範囲を推定できる。これにより、制御回路23は、通常モードでの動作を開始する際の動作周波数f1の初期値を、インバータ回路21が遅相モードで動作する周波数範囲内に設定することができる。なお、この場合、上述した周波数制御における動作周波数f1の下限値は、インバータ回路21が遅相モードで動作する周波数範囲の下限値と、許可周波数帯F1の下限値fminとの大きい方とされる。
<変形例1>
本実施形態において、制御部233が駆動位相差θを電力制御開始角θsから目標位相差θmに調節する場合、段階的に調節してもよい。たとえば、駆動位相差θが電力制御開始角θs=360度から目標位相差θm=300度に調節される場合、駆動位相差θは、360度→340度→320度→300度となるように、調整幅を20度として段階的に調節される。なお、調節幅は、20度に限定されず、電力制御開始角θsと目標位相差θmとの差分に応じた任意の調整幅に設定されればよい。また、調整段数も、任意の数に設定される。
また、駆動位相差θは、360度→310度→300度となるように、調整幅を変化させながら段階的に調節されてもよい。すなわち、制御部233は、駆動位相差θを目標位相差θm+α(この場合、α=10度)に調節した後、駆動位相差θを目標位相差θmに調節する。
変形例1では、駆動位相差θを電力制御開始角θsから目標位相差θmに段階的に調節することによって、出力電力が過大になることを抑制できる。
なお、駆動位相差θを電力制御開始角θsから目標位相差θmに段階的に調節する形態は、上述の形態に限定されない。
<変形例2>
本実施形態において、制御回路23が周波数制御から位相差制御に切り替えるタイミングは、周波数制御による出力電力が周波数制御によるピーク値に達したタイミング以外であってもよい。たとえば、制御回路23は、出力電力が目標値の1/2に達するまで周波数制御を行い、出力電力が目標値の1/2に達した後、電力補正回路22を用いた位相差制御を行う。
すなわち、出力電力の目標値以下の任意の閾値を設定し、制御回路23は、出力電力が閾値に達するまで周波数制御を行い、出力電力が閾値に達した後、電力補正回路22を用いた位相差制御を行えばよい。
<変形例3>
本実施形態において、一次側コイルL1および二次側コイルL2は、コアに対して導線が螺旋状に巻き付けられたソレノイド型のコイルであってもよい。
また、電力補正回路22は、本実施形態のように4つの調整用スイッチ素子Q5〜Q8を用いた構成に限定されない。出力電力の大きさを調整する回路は、図1に示す電力補正回路22と等価な機能を有する回路であればよい。
また、出力点214と一次側コイルL1との間に電力補正回路22が電気的に接続されてもよい。さらに、出力点213と一次側コイルL1との間、および出力点214と一次側コイルL1との間のそれぞれに、電力補正回路22が電気的に接続されてもよい。
また、非接触給電装置2から非接触で出力電力が供給される(つまり給電される)負荷は、電動車両に限らず、例えば携帯電話機やスマートフォンなどの蓄電池を備えた電気機器、あるいは蓄電池を備えない照明器具などの電気機器であってもよい。
また、非接触給電装置2から非接触受電装置3への出力電力の伝送方式は、上述した磁界共鳴方式に限らず、例えば電磁誘導方式、マイクロ波伝送方式などであってもよい。
また、各変換用スイッチ素子Q1〜Q4や各調整用スイッチ素子Q5〜Q8は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の半導体スイッチ素子で構成されていてもよい。
また、各ダイオードD1〜D4は、各変換用スイッチ素子Q1〜Q4の寄生ダイオードに限らず、各変換用スイッチ素子Q1〜Q4に外付けされていてもよい。同様に、各ダイオードD5〜D8は、各調整用スイッチ素子Q5〜Q8の寄生ダイオードに限らず、各調整用スイッチ素子Q5〜Q8に外付けされていてもよい。
また、計測部24は、制御回路23と別に設けられる構成に限らず、制御回路23と一体に設けられていてもよい。さらに、計測部24は一次側コイルL1に流れる電流の大きさを計測できればよいので、電流センサ25は、一次側コイルL1と第2の一次側コンデンサC12との間に限らず、一次側コイルL1に流れる電流の経路上にあればよい。
また、制御回路23の制御部233は、周波数制御を行うことは必須ではなく、位相差制御のみで出力電力の大きさを調節するように構成されていてもよい。
また、制御回路23は、開始角演算部231、補正演算部232、制御部233が同一筐体に設けられていることは必須ではなく、例えば開始角演算部231、補正演算部232、制御部233はそれぞれ個別に設けられていてもよい。
また、インバータ回路21は、直流電圧を交流電圧に変換して出力可能な電圧形インバータであればよく、4つの変換用スイッチ素子Q1〜Q4がフルブリッジ接続されたフルブリッジインバータ回路に限らない。インバータ回路21は、例えばハーフブリッジインバータ回路であってもよい。
<まとめ>
以上説明したように、本発明に係る第1の態様の非接触給電装置2は、インバータ回路21と、一次側コイルL1(給電側コイル)と、電力補正回路22と、制御回路23とを備える。インバータ回路21は、一対の入力点211,212と一対の出力点213,214との間に電気的に接続された複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を有している。インバータ回路21は、複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点211,212に印加される直流電圧を交流電圧に変換して一対の出力点213,214から出力する。一次側コイルL1は、一対の出力点213,214間に電気的に接続され、交流電圧が印加されることにより二次側コイルL2(受電側コイル)に非接触で出力電力を供給する。電力補正回路22は、一対の出力点213,214の少なくとも一方と一次側コイルL1との間に電気的に接続され、調整用コンデンサC1および複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を有している。電力補正回路22は、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のスイッチングにより、調整用コンデンサC1の充放電を行う。制御回路23は、第1駆動信号G1〜G4にて複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を制御し、第2駆動信号G5〜G8にて複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を制御する。制御回路23は、電圧位相に対して電流位相が遅れ位相になる遅相モードでインバータ回路21を動作させるように構成される。制御回路23は、第1駆動信号G1,G4(G2,G3)に対する第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の位相の遅れである駆動位相差θ(第1位相差)を調節することにより、出力電力の大きさを調節するように構成されている。制御回路23は、第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の1周期において調整用コンデンサC1が充電される時間と調整用コンデンサC1が放電される時間とが等しくなる駆動位相差θを電力制御開始角θsとする。制御回路23は、インバータ回路21の出力電圧と一次側コイルL1に流れる電流との位相差をVI位相差φ(第2位相差)とし、出力電力が目標値になるときのVI位相差φを指示位相差φm(第3位相差)とする。制御回路23は、駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φから指示位相差φmを引いた差分を位相補正量φ−φmとする。制御回路23は、電力制御開始角θsから位相補正量φ−φmを引いた値を目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節する。
この構成によると、非接触給電装置2は、第1駆動信号G1,G4(G2,G3)に対する第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の位相の遅れである駆動位相差θを調節することにより、出力電力の大きさを調節することができる。したがって、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係が変化して、一次側コイルL1と二次側コイルL2との間の結合係数が変化したとしても、非接触給電装置2は、駆動位相差θを調節することによって、必要な出力電力を確保しやすくなる。
さらに、非接触給電装置2は、VI位相差φを用いて調整用コンデンサC1の放電時間と充電時間とが等しくなる角度を電力制御開始角θsとしている。また、出力電力が目標値になる駆動位相差θを目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節している。したがって、非接触給電装置2は、出力電力の目標値に対する高い応答性を得ることができる。
本発明に係る第2の態様の非接触給電装置2では、第1の態様において、制御回路23は、インバータ回路21の動作周波数を調節する周波数制御を行っているときに、VI位相差φ(第2位相差)と出力電力との対応関係を推定する。そして、制御回路23は、この推定結果に基づいて、指示位相差φm(第3位相差)を求めることが好ましい。
この構成によると、制御回路23は、周波数制御時にVI位相差φと出力電力との対応関係を推定するので、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係に応じた推定結果を得ることができる。したがって、非接触給電装置2は、目標位相差θmの算出精度を向上させることができ、目標値に対する出力電力の精度を向上させることができる。
また、本発明に係る第3の態様の非接触給電装置2では、第1、第2の態様において、制御回路23は、駆動位相差θ(第1位相差)を目標位相差θmに調節する場合、電力制御開始角θsから目標位相差θmまでの範囲において、駆動位相差θを段階的に変化させることが好ましい。
この構成によると、駆動位相差θを電力制御開始角θsから目標位相差θmに段階的に調節することによって、出力電力が過大になることを抑制できる。
また、本発明に係る第4の態様の非接触給電装置2では、第1〜第3のいずれかの態様において、制御回路23は、目標値が変化した場合、目標位相差θmを更新することが好ましい。
この構成によると、非接触給電装置2は、目標値が変化した場合でも、出力電力の大きさを変化後の目標値に調節することができる。したがって、非接触給電装置2は、出力電力の目標値に対する追従性を向上させることができる。
また、本発明に係る第5の態様の非接触給電装置2では、第1〜第4のいずれかの態様において、目標位相差θmが電力制御開始角θsより大きい場合、制御回路23は、電力補正回路22を短絡状態に制御することが好ましい。
この構成によると、非接触給電装置2は、位相差制御による電力制御が不可能になる場合、位相差制御を停止させることができる。
また、本発明に係る第6の態様の非接触電力伝送システム1は、第1〜第5のいずれかの態様の非接触給電装置2と、二次側コイルL2(受電側コイル)を有する非接触受電装置3とを備える。非接触受電装置3は、非接触給電装置2から非接触で出力電力が二次側コイルL2に供給されるように構成されている。
この構成によると、非接触電力伝送システム1では、非接触給電装置2は、給電側コイルと受電側コイルとの相対的な位置関係が変化しても、必要な電力を確保しやすくなる。さらに、非接触給電装置2は、出力電力が目標値になる駆動位相差θを目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節している。したがって、非接触給電装置2は、出力電力の目標値に対する高い応答性を得ることができる。
また、非接触給電装置2は、マイクロコンピュータ等で構成されたコンピュータを搭載しており、このコンピュータがプログラムを実行することによって、非接触給電装置2の各機能が実現されている。なお、非接触給電装置2に搭載されるコンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサおよびインターフェースを主なハードウェア構成として備える。この種のプロセッサとしては、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等を含み、プログラムを実行することによって非接触給電装置2の機能を実現することができれば、その種類は問わない。
また、プログラムの提供形態としては、コンピュータに読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク等の記録媒体に予め格納されている形態、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給される形態等がある。
本発明に係る第7の態様のプログラムは、非接触給電装置2に用いられるコンピュータを、制御部233、開始角演算部231、補正演算部232として機能させる。非接触給電装置2は、インバータ回路21と、一次側コイルL1(給電側コイル)と、電力補正回路22と、制御回路23とを備える。インバータ回路21は、一対の入力点211,212と一対の出力点213,214との間に電気的に接続された複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を有している。インバータ回路21は、複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点211,212に印加される直流電圧を交流電圧に変換して一対の出力点213,214から出力する。一次側コイルL1は、一対の出力点213,214間に電気的に接続され、交流電圧が印加されることにより二次側コイルL2(受電側コイル)に非接触で出力電力を供給する。電力補正回路22は、一対の出力点213,214の少なくとも一方と一次側コイルL1との間に電気的に接続され、調整用コンデンサC1および複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を有している。電力補正回路22は、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のスイッチングにより、調整用コンデンサC1の充放電を行う。制御回路23は、第1駆動信号G1〜G4にて複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を制御し、第2駆動信号G5〜G8にて複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を制御する。制御回路23は、電圧位相に対して電流位相が遅れ位相になる遅相モードでインバータ回路21を動作させるように構成される。制御回路23は、第1駆動信号G1,G4(G2,G3)に対する第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の位相の遅れである駆動位相差θ(第1位相差)を調節することにより、出力電力の大きさを調節するように構成されている。制御回路23は、第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の1周期において調整用コンデンサC1が充電される時間と調整用コンデンサC1が放電される時間とが等しくなる駆動位相差θを電力制御開始角θsとする。制御回路23は、インバータ回路21の出力電圧と一次側コイルL1に流れる電流との位相差をVI位相差φ(第2位相差)とし、出力電力が目標値になるときのVI位相差φを指示位相差φm(第3位相差)とする。制御回路23は、駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φから指示位相差φmを引いた差分を位相補正量φ−φmとする。制御回路23は、電力制御開始角θsから位相補正量φ−φmを引いた値を目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節する。
このプログラムによれば、専用の制御回路23を用いなくても本実施形態の非接触給電装置2と同等の機能を実現できる。したがって、給電側コイルと受電側コイルとの相対的な位置関係が変化しても、必要な電力を確保しやすくなる。さらに、出力電力が目標値になる駆動位相差θを目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節しているので、出力電力の目標値に対する高い応答性を得ることができる。
本発明に係る第8の態様の非接触給電装置の制御方法は、第1〜第4処理を含む。非接触給電装置2は、インバータ回路21と、一次側コイルL1(給電側コイル)と、電力補正回路22と、制御回路23とを備える。インバータ回路21は、一対の入力点211,212と一対の出力点213,214との間に電気的に接続された複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を有している。インバータ回路21は、複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点211,212に印加される直流電圧を交流電圧に変換して一対の出力点213,214から出力する。一次側コイルL1は、一対の出力点213,214間に電気的に接続され、交流電圧が印加されることにより二次側コイルL2(受電側コイル)に非接触で出力電力を供給する。電力補正回路22は、一対の出力点213,214の少なくとも一方と一次側コイルL1との間に電気的に接続され、調整用コンデンサC1および複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を有している。電力補正回路22は、複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8のスイッチングにより、調整用コンデンサC1の充放電を行う。第1処理では、制御部233が、第1駆動信号G1〜G4にて複数の変換用スイッチ素子Q1〜Q4を制御し、第2駆動信号G5〜G8にて複数の調整用スイッチ素子Q5〜Q8を制御する。制御部233は、電圧位相に対して電流位相が遅れ位相になる遅相モードでインバータ回路21を動作させる。制御部233は、第1駆動信号G1,G4(G2,G3)に対する第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の位相の遅れである駆動位相差θ(第1位相差)を調節することにより、出力電力の大きさを調節する。第2処理では、開始角演算部231が、第2駆動信号G6,G7(G5,G8)の1周期において調整用コンデンサC1が充電される時間と調整用コンデンサC1が放電される時間とが等しくなる駆動位相差θを電力制御開始角θsとする。第3処理では、補正演算部232が、インバータ回路21の出力電圧と一次側コイルL1に流れる電流との位相差をVI位相差φ(第2位相差)とし、出力電力が目標値になるときのVI位相差φを指示位相差φm(第3位相差)とする。補正演算部232は、駆動位相差θを電力制御開始角θsに調節したときのVI位相差φから指示位相差φmを引いた差分を位相補正量φ−φmとして求める。第4処理では、制御部233が、電力制御開始角θsから位相補正量φ−φmを引いた値を目標位相差θmとして、駆動位相差θを目標位相差θmに調節する。
この制御方法によると、専用の制御回路23を用いなくても本実施形態の非接触給電装置2と同等の機能を実現できる。
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。