JP6675186B2 - 鱗片状複合粒子、それを含む樹脂組成物および塗布物、ならびに鱗片状複合粒子の製造方法 - Google Patents

鱗片状複合粒子、それを含む樹脂組成物および塗布物、ならびに鱗片状複合粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鱗片状複合粒子、それを含む樹脂組成物および塗布物、ならびに鱗片状複合粒子の製造方法に関する。
従来、アルミニウム顔料、およびこれと併用する有機顔料、無機顔料などの有色顔料を含有したメタリック塗膜が知られ、これらが有彩色メタリック塗膜または低彩度メタリック塗膜などとして、自動車車体などの幅広い外観設計に適用されている。なかでも、黒色系顔料としてのカーボンブラック、酸化鉄などにより、有彩色の明度を調整したり、低彩度色を設計したり、モノトーンの色彩で質感を表現したりすることが知られている。黒色系顔料は、自動車、バイク、化粧品、インキなど適用可能な用途が広いため、カーボンブラックのような単一の黒色ではなく、他色が混じった色調を有する黒色系の新色が求められている。
例えば、特開2010−275180号公報(特許文献1)において、薄片状粉体に金属微粒子を付着させ、金属微粒子のプラズモン現象を利用した光輝性をもつ着色構造体に係る技術が開示されている。
また、特開2009−242795号公報(特許文献2)において、アルミナ、雲母、シリカまたはガラスフレークの基材に、ニッケルまたは銀の微粒子を付着させた光輝材を含有する塗料組成物の塗膜形成方法が開示されている。
また、特開平1−108278号公報(特許文献3)において、セラミックの鱗片状粒子上に無機酸化物が全面付着している基材に対し、散点状に形成された金属または合金が島状部として付着している顔料を用いた塗膜形成方法が開示されている。
特開2010−275180号公報 特開2009−242795号公報 特開平1−108278号公報
特許文献1に開示されている着色構造体は、薄片状粉体の表面に1〜50nmの金属微粒子が付着し、粉体表面の面積の20〜99%が露出しているので、光輝性のある黒色系顔料を作製することができる可能性がある。しかしながら、薄片状粉体に対して30〜100質量%の銀を付着させる必要があるため、コストがかかる問題がある。
特許文献2に開示されている光輝材は、アルミナなどの無機フレークに対して2〜80nmのニッケルまたは銀の微粒子を0.5〜10質量%の範囲で付着させている。さらに光輝性を出すために、無機フレークの層と微粒子との間に、光の干渉を利用した屈折層(反射層)である無機酸化物層を付着させている。しかしながら、無機フレークの粒子径および厚み、微粒子の粒子径、ならびに無機酸化物層の厚みが色調に大きく影響するため、それらのコントロールが難しいという課題がある。さらに、無機酸化物層を設ける必要があるため、製造コストがかかる問題がある。
特許文献3には、セラミックス製鱗片状基材と、この基材の全表面を被覆し、光の干渉を利用して光輝性を出現させる反射層としての無機酸化物層と、この無機酸化物層の全表面に対して0.05〜95面積%で散点状に形成した金属または合金から成る島状部と、から成る顔料について開示されている。しかしながら、特許文献2と同様に、鱗片状基材の粒子径および厚み、金属または合金の粒子径、ならびに無機酸化物層の厚みが色調に大きく影響するため、それらのコントロールが難しいという課題がある。
さらに特許文献1〜3では、基材(薄片状粉体、無機フレーク、鱗片状基材)の厚みが色調に大きく影響するにもかかわらず、その厚みのバラツキがどの程度まで許容されるかについて、いずれも開示されていない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされ、その目的とするところは、光輝性を有する黒色系の色調を容易に発現させることができ、微粒子の材料コストを抑え、かつ反射層を不要にして製造コストを抑えることができる鱗片状複合粒子、それを含む樹脂組成物および塗布物、ならびに鱗片状複合粒子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討した結果、鱗片状粒子に金属または金属酸化物の微粒子を散点状または島状に付着させ、微粒子の粒子径および付着率ならびに鱗片状複合粒子の厚みのバラツキなどを制御することによって、反射層を設けることなく、光輝性が発現する黒色系の鱗片状複合粒子を得ることを見出し、本発明に至った。
さらに、本発明者らは、鱗片状粒子に付着している微粒子の粒子径、付着率およびその付着状態、ならびに鱗片状複合粒子の厚みのバラツキなどを制御することによって、微粒子の材料コストがかかる問題を解決し、かつ反射層を設けることを不要としたため、製造コストを抑えることができるという知見を得た。
すなわち本発明は、第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上を含む鱗片状粒子上に、金属または第2の金属酸化物からなる微粒子が付着している鱗片状複合粒子であって、前記微粒子は、散点状または島状に前記鱗片状粒子に付着し、前記鱗片状粒子への付着率が10面積%以上50面積%以下であり、かつ、その平均粒子径が1nm以上80nm以下であり、前記鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下であり、標準偏差sが0<s≦0.2であって、前記標準偏差sを前記平均値mで除して得られる変動係数CVが0%<CV≦70%である。
上記微粒子は、金、銀、銅、白金、スズ、パラジウム、ニッケル、鉄、これらの合金およびこれらの酸化物からなる群より選択される1種以上であることが望ましい。
上記鱗片状複合粒子は、触媒成分を含むことが望ましい。
上記鱗片状粒子は、アルミナ、シリカまたはガラスのいずれかであることが望ましい。
上記鱗片状粒子はアルミナであり、上記微粒子は銀であることが望ましい。
上記鱗片状複合粒子は、1層または2層以上の保護層を備えることが望ましい。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、上記鱗片状複合粒子を含むことが望ましい。
上記樹脂組成物は、上記鱗片状粒子および鱗片状アルミニウム粒子のいずれか一方または両方をさらに含むことが望ましい。
本発明の一態様に係る塗布物は、上記鱗片状複合粒子を含むことが望ましい。
本発明の一態様に係る鱗片状複合粒子の製造方法は、上記鱗片状粒子を準備する工程と、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を用いて前記鱗片状粒子の表面に対して活性化処理を行なうことにより、鱗片状活性化粒子を調製する工程と、前記鱗片状活性化粒子の表面に触媒を担持させることにより、鱗片状触媒担持粒子を調製する工程と、前記鱗片状触媒担持粒子に無電解めっき処理を行なうことにより、前記鱗片状触媒担持粒子の表面に微粒子を析出させて上記鱗片状複合粒子を作製する工程と、を備える。
上記鱗片状複合粒子の製造方法において、上記鱗片状複合粒子の表面を保護処理する工程をさらに備えることが好ましい。
本発明によれば、光輝性を有する黒色系の色調を容易に発現させることができ、微粒子の材料コストを抑え、かつ反射層を不要にして製造コストを抑えることができる鱗片状複合粒子を提供することができる。
本実施形態に係る鱗片状複合粒子の断面を模式的に表した説明図である。 実施例1の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 実施例2の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 実施例3の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 実施例4の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 実施例5の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 実施例6の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 比較例1の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。 比較例2の鱗片状複合粒子の表面を示す図面代用写真である。
以下、本発明の鱗片状複合粒子、およびそれを含む樹脂組成物ならびに塗布物について詳細に説明する。
<鱗片状複合粒子>
本発明に係る鱗片状複合粒子は、第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上の鱗片状粒子上に、金属または第2の金属酸化物からなる微粒子が付着している鱗片状複合粒子である。第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とは、同一の金属酸化物でもよいし、異なる金属酸化物であってもよい。ただし、鮮明な光輝性を得る観点から、第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とは異なる金属酸化物であることが好ましい。
鱗片状複合粒子は、以下の(A)から(D)の条件を満たす必要がある。
(A)微粒子は、散点状または島状に鱗片状粒子に付着していること
(B)微粒子は、鱗片状粒子への付着率が10面積%以上50面積%以下であること
(C)微粒子は、その平均粒子径が1nm以上80nm以下であること
(D)鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下であり、標準偏差sが0<s≦0.2であって、標準偏差sを平均値mで除して得られる変動係数CVが0%<CV≦70%であること。
本発明では、上記(A)から(D)の条件を満すことにより、無機酸化物層などの反射層を設けることなく、光輝性が発現する黒色系の鱗片状複合粒子を得ることができる。さらに、上記(A)から(D)の条件のように鱗片状粒子に付着している微粒子の粒子径、付着率およびその付着状態、ならびに鱗片状複合粒子の厚みのバラツキなどを制御することによって、鱗片状複合粒子の色調を容易にコントロールすることができ、微粒子にかかるコストを低減し、かつ反射層を不要として製造コストも低減することができる。
上記(A)から(D)の条件を満たしているかどうかは、次の方法により評価することができる。すなわち、鱗片状複合粒子を含む試料を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて200〜100000倍(200倍以上100000倍以下、本明細書において数値範囲を「〜」を用いて表わす場合、その範囲は上限および下限の数値を含むものとする)の倍率で撮影し、その画像を得て、画像解析することにより評価することができる。画像解析するための撮影画像は、電子化された画像(以下、「電子画像」とも称する)であることが好ましい。
本発明において、微粒子は鱗片状粒子上、すなわち鱗片状粒子の表面に散点状または島状に付着している。ここで散点状とは、後述する無電解めっき処理により析出する微粒子が鱗片状粒子上に一様に点在している状態またはその態様をいう。島状とは、後述する無電解めっき処理により析出する微粒子同士が互いに凝集し、この凝集した凝集体が複数、鱗片状粒子の表面に存在する状態またはその態様をいう。この凝集体の大きさは特段、制限されない。なお、鱗片状粒子上に微粒子が付着する様式は、化学吸着、物理吸着および化学結合のいずれであってもよい。
微粒子が鱗片状粒子の表面に散点状または島状に付着していることにより、鱗片状複合粒子およびその周辺では、次のような光が混在することとなる。
(i)微粒子と衝突して反射する光
(ii)鱗片状粒子を透過した後に、微粒子と衝突して反射する光
(iii)微粒子と衝突して反射し、さらに他の微粒子と衝突して反射する光
(iv)鱗片状粒子を透過する光。
これらの光が混在することによって鱗片状複合粒子は、無機酸化物などからなる反射層を設けなくても、十分な光輝性および黒色系の色調を備えることができる。なお、微粒子が鱗片状粒子上で存在している状態またはその態様を示す「散点状」および「島状」という表現は、当該微粒子が鱗片状粒子の全面を覆っているのではなく、鱗片状粒子の一部が当該微粒子の間から露出していることを意味する。換言すれば、当該微粒子が連続層を形成して鱗片状粒子を覆っていないことを意味する。
微粒子は、必ずしも鱗片状粒子の表面のすべての領域において、散点状または島状に付着している必要はなく、その表面の限られた領域でのみ散点状または島状に付着していても、本発明の効果を奏する限り、本発明を逸脱するものではない。
本発明において、鱗片状粒子上に付着している微粒子の付着率は、10面積%以上50面積%以下である。これにより鱗片状複合粒子が黒色系の色調を呈することができる。この付着率が10面積%未満である場合、鱗片状複合粒子の色調は、鱗片状粒子に付着している微粒子の色合いを帯びてしまう恐れがある。付着率が50面積%を超える場合、鱗片状複合粒子の色調は、微粒子を構成している金属の光沢色または第2の金属酸化物の色に近づき、意図する黒色系の色調を得ることが難しくなる。上記付着率は、15面積%以上40面積%以下であることが望ましい。
鱗片状粒子上に付着している微粒子の付着率(面積%)は、電子画像における個々の鱗片状複合粒子において、微粒子が占める面積の合計を百分率で表すものである。
具体的には、微粒子の鱗片状粒子への付着率は、次の方法により算出することができる。まず、SEMを用いて撮影し、鱗片状複合粒子の電子画像を得る。次に、この電子画像を二値化処理することにより、1つの鱗片状複合粒子において、鱗片状粒子上に微粒子が付着していない領域S1と鱗片状粒子上に微粒子が付着している領域の面積S2とを区別することができる。電子画像を二値化処理することができるのは、鱗片状粒子上に微粒子が付着している領域が、微粒子が付着していない領域よりも高い明度を示す傾向にあるからである。
微粒子の鱗片状粒子への付着率は、該領域S1、該領域S2の各面積値を下記式(1)に代入することにより、算出することができる。本明細書では、SEMによる電子画像で観察される鱗片状複合粒子を100個ピックアップし、それぞれの鱗片状複合粒子において算出した上記付着率の平均値を微粒子の鱗片状粒子への付着率というものとする。
本発明において、微粒子の平均粒子径は1nm以上80nm以下である。これにより、鱗片状複合粒子は黒色系の色調を呈することができる。微粒子の平均粒子径が1nm未満である場合、鱗片状複合粒子の色調は、光輝性が非常に小さくなって、微粒子を構成する金属固有または第2の金属酸化物固有の色調となる恐れがある。微粒子の平均粒子径が80nmを超える場合、鱗片状複合粒子の色調は、微粒子を構成する金属の光沢色または第2の金属酸化物の色に近づき、意図する黒色系の色調を得ることが難しくなる。さらに、微粒子を鱗片状粒子上に散点状または島状に析出させることが困難になる。微粒子の平均粒子径は、5nm以上70nm以下であることが望ましい。
微粒子の粒子径は、次の方法により算出することができる。まず、鱗片状複合粒子を樹脂に練り込んだ試料を準備する。次に、この試料を所定の形状に成形した後、イオンミリング法により切断する。続いて、たとえば電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、切断後の試料の断面をたとえば10000倍の倍率で撮影し、その電子画像を得る。得られる電子画像は、複数個(たとえば、100個)の鱗片状複合粒子が樹脂中に分散している様子を断面で捕らえた画像を用いることが好ましい。具体的には、図1に示すような、鱗片状粒子11と微粒子12と後述する保護層としての耐候被膜層13とを含む鱗片状複合粒子10の断面が撮影されることとなる。この電子画像を解析することにより、鱗片状粒子11に付着している微粒子12の粒子径を求めることが可能になる。微粒子の平均粒子径は、たとえば、上記電子画像から100個の微粒子の粒子径を算出し、その粒度分布の中央値である径(メディアン径)により表すことができる。
本発明において、鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下である。これにより、鱗片状複合粒子は、光輝性のある黒色系の色調を呈することができる。鱗片状複合粒子の厚みは、平均値mが0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。鱗片状複合粒子の厚みの平均値mが0.05μm未満である場合、鱗片状複合粒子に含まれる鱗片状粒子が脆くなりやすく、鱗片状複合粒子の厚みの平均値mが1μmを超える場合、厚み方向にクラックが入りやすくなる。
ここで「鱗片状複合粒子の厚み」とは、鱗片状粒子上に微粒子が付着している状態の鱗片状複合粒子における厚み方向の最大厚みをいう。さらに、鱗片状複合粒子が後述する保護層を備える場合、この保護層を含んだ厚みを「鱗片状複合粒子の厚み」というものとする。
鱗片状複合粒子の厚みは、次の方法により算出することができる。すなわち、上述のように電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)で撮影して得た電子画像より、鱗片状複合粒子の断面観察が可能となるので、その厚みを計測できる。上述のとおり電子画像は、複数個の鱗片状複合粒子が樹脂中に分散した状態で撮影されているので、個々の鱗片状複合粒子に対して厚み方向の最大厚みをそれぞれ算出することができる。
鱗片状複合粒子の厚みの平均値mは、最大厚みを算出した複数個(たとえば、100個)の鱗片状複合粒子の厚みti(1≦i≦N、N=100)を下記式(2)に代入することにより求めることができる。さらに、鱗片状複合粒子の厚みの標準偏差sは、上記平均値mを下記(3)に代入することにより、分散s2を求めることができるので、この分散s2の平方根を求めることにより算出することができる。
本発明において、鱗片状複合粒子の厚みの標準偏差sは、0<s≦0.2である。鱗片状粒子に付着している微粒子の粒子径およびその付着率などを制御して鱗片状複合粒子を製造することにより、標準偏差sを上述した範囲内に収めることができる。鱗片状粒子に付着している微粒子の粒子径およびその付着率などを制御しない場合、鱗片状複合粒子の厚みのバラツキが大きくなって、標準偏差sが0.2を超える。標準偏差sが0.2以下であれば、鱗片状複合粒子は、鮮明な光輝く黒色系の色調を呈することができるが、標準偏差sの値が0.2を超えるとくすんだ印象を与える色調となる恐れがある。鱗片状複合粒子の厚みの標準偏差sは、0<s≦0.17であることがより好ましい。
さらに、標準偏差sを平均値mで除して得られる変動係数CV(単位は[%])は、標準偏差sおよび平均値mを下記式(4)により算出することができる。変動係数CVは、厚みの平均値mに対する厚みのバラツキの相対評価を表し、変動係数CVの値が小さいほど、厚みのバラツキが小さくなる。したがって、変動係数CVの値が小さい鱗片状複合粒子は、鮮明な光輝く黒色系の色調を呈することができるようになる。
本発明において、変動係数CVは0%<CV≦70%である。変動係数CVが70%を超えると、鱗片状複合粒子の厚みのバラツキが大きく、様々な色調の鱗片状複合粒子が混在することを意味するため、不鮮明となってくすんだ印象を与える色調となる恐れがある。変動係数CVの値は、0%<CV≦60%であることがより好ましい。
<鱗片状粒子>
本発明における鱗片状粒子は、第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上より構成される。鱗片状粒子は、鱗片状複合粒子の大部分を占めるため、鱗片状複合粒子の形状、および製造コストに大きく寄与する。
第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上の鱗片状粒子は、光を透過する。本明細書において「光を透過する」鱗片状粒子とは、JIS K 7361(1997)の規定に準じて測定される全光透過率において、60%以上を示す鱗片状粒子を意味する。
第1の金属酸化物に含まれる金属酸化物として、アルミナ、シリカ、チタニアなどを例示することができる。樹脂に含まれるものとして、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂などを例示することができる。鱗片状粒子の製造方法は特に限定されず、鱗片状粒子は公知の製造方法により製造することができる。
なかでも、本発明において鱗片状粒子は、アルミナ、シリカまたはガラスのいずれかであることが好ましい。アルミナ、シリカおよびガラスは、後述する鱗片状複合粒子の製造方法に適用するのに適している。さらに、アルミナ、シリカおよびガラスは、樹脂と比べて熱膨張率が小さいため、より安定で品質の高い鱗片状複合粒子を提供することに寄与することができる。製造の容易性および品質の均一性の観点から、鱗片状粒子はアルミナまたはシリカであることがより好ましい。鱗片状粒子はアルミナであることが、さらに好ましい。
ここで、本発明における鱗片状粒子とは、フレーク形状または扁平形状の粒子をいい、たとえば、鱗片状粒子の平均粒子径を平均厚みで除して表されるアスペクト比が、20以上60以下である粒子をいう。
鱗片状粒子の平均粒子径は、0.05μm以上50μm以下であること好ましく、0.1μm以上10μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が0.05μm未満である場合、付着すべき微粒子の量が多くなるので、生産性が低下する恐れがある。平均粒子径が50μmを超える場合、これを用いた塗膜の緻密性が低下する場合がある。本発明において、鱗片状粒子の平均粒子径とは体積平均粒子径を意味する。鱗片状粒子の体積平均粒子径は、たとえば、市販の粒子径分布測定装置(たとえば、商品名:「LA−300」、堀場製作所製)を用いて、100個の鱗片状粒子の粒子径およびその体積を求め、これに基づき体積で重みづけをした平均値を得ることで算出することができる。
また、鱗片状粒子の平均厚みは、0.05μm以上50μm以下である。鱗片状粒子の平均厚みが0.05μm未満である場合、鱗片状粒子が脆くなりやすく、鱗片状粒子の平均厚みが50μmを超える場合、厚み方向にクラックが入りやすくなる。鱗片状粒子の平均厚みは、たとえば、市販の粒子径分布測定装置を用いて、100個の鱗片状粒子の厚みをそれぞれ求め、これらの平均値を得ることで算出することができる。
<微粒子>
本発明における微粒子は、鱗片状粒子上に散点状または島状に付着している。本発明では上述したように、微粒子を鱗片状粒子上、すなわち鱗片状粒子の表面に散点状または島状に付着させることにより、無機酸化物層などからなる反射層を不要としている。なお、上記のとおり鱗片状粒子上に微粒子が付着するとき、その付着の様式は化学吸着、物理吸着および化学結合のいずれであってもよい。
従来、この種の鱗片状複合粒子では、鱗片状粒子の表面に無機酸化物層などからなる反射層を設け、その反射層の表面に微粒子を付着させ、または反射層の表面を微粒子で被覆することにより、光輝性のある黒色系の色調を呈するようにしていた。本発明に係る鱗片状複合粒子によれば、後述する製造方法からも明らかなように、反射層を被覆することなく、鱗片状粒子の表面に直接、微粒子を散点状または島状に析出させることにより、光輝性のある黒色系の色調を呈することを可能とした。微粒子の付着状態は、上述のとおり走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することができる。
微粒子は、金属または第2の金属酸化物からなる。鱗片状複合粒子として光輝性のある黒色系の色調を呈するためには、微粒子を構成する金属または第2の金属酸化物として、金、銀、銅、白金、スズ、パラジウム、ニッケル、鉄、これらの合金およびこれらの酸化物からなる群より選択される1種以上とすることが好ましい。なかでも、高い光輝性を発揮する観点から、金、銀または白金のいずれかを選択することがより好ましい。特に、微粒子は銀であることがさらに好ましい。そして、本発明に係る鱗片状複合粒子において、鱗片状粒子は、アルミナであり、微粒子は、銀であることが最も好ましい。
さらに本発明は、後述する無電解めっき処理において、鱗片状粒子の表面に触媒が担持され、この触媒を核にして散点状または島状に微粒子が析出するように制御されて鱗片状粒子上に微粒子が付着することを含む。このため、本発明に係る鱗片状複合粒子は、触媒成分を含むことができる。
なお、微粒子を構成する第2の金属酸化物としては、酸化銅、酸化銀、酸化錫などを例示することができる。
微粒子は、平均粒子径が1nm以上80nm以下となるように制御される。微粒子の平均粒子径が1nm未満である場合、鱗片状複合粒子は、光輝性が非常に小さくなって、微粒子を構成する金属固有または第2の金属酸化物固有の色調となる恐れがある。一方、微粒子の平均粒子径が80nmを超える場合、鱗片状複合粒子は、微粒子を構成する金属の光沢色または第2の金属酸化物の色に近づくために、意図した黒色系の色調を得ることが難しくなる。微粒子を鱗片状粒子上に散点状または島状に析出させることも困難になる。さらに、材料費の増加、製造工程の長時間化による製造コストが増加する恐れがある。微粒子の平均粒子径は、5nm以上70nm以下であることが望ましい。微粒子の平均粒子径は、上述したようにメディアン径として表される。
<保護層>
本発明に係る鱗片状複合粒子は、1層または2層以上の保護層を備えることができる。具体的には、鱗片状粒子の表面に付着している微粒子上に1層または2層以上の保護層を備えることが好ましい。その保護層として、微粒子の腐食を抑制する作用のあるもの(便宜的に「腐食抑制層」とも記す)、微粒子の硫化または酸化を抑制する作用のあるもの(便宜的に「耐候被覆層」とも記す)、塗膜を構成する塗料樹脂中の鱗片状複合粒子の分散性、および鱗片状複合粒子と塗料樹脂との密着性のいずれか一方または両方を向上させる作用のあるもの(便宜的に「被覆樹脂層」とも記す)などを例示することができる。
(腐食抑制層)
腐食抑制層は、腐食抑制剤を含むことが好ましい。腐食抑制剤として、微粒子に対して腐食抑制作用を有する化合物、たとえば、下記に示す化合物などを例示することができる。腐食抑制層は、下記に示す化合物のいずれかからなる単独膜、または下記に示す化合物より選ばれる2種以上を含む混合物膜から構成することができる。腐食抑制層は、微粒子として銀および銅などの酸化反応、硫化反応が起きやすい金属を採用した場合に、鱗片状複合粒子、および鱗片状複合粒子を含む塗膜に対して耐候性を付与することができる。
腐食抑制層を形成する方法は特に限定されない。たとえば、親水性溶媒中に腐食抑制剤を加えて撹拌または混練したスラリー状態またはペースト状態の懸濁液に、鱗片状複合粒子を加えてさらに撹拌または混練することにより、鱗片状複合粒子における微粒子の表面に腐食抑制層を形成することができる。
腐食抑制剤として、公知のものがいずれも使用できる。これらのうち、特に好適に用いられる腐食抑制剤には、ベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、1−エチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシベンゾトリアゾール、1−クロルベンゾトリアゾール、5−クロルベンゾトリアゾール、N−アセチル−ベンゾトリアゾール、N−ブチリル−ベンゾトリアゾール、N−ピバロイル−ベンゾトリアゾール、N−ノナノイル−ベンゾトリアゾール、N−カプロイル−ベンゾトリアゾール、N−カプリリル−ベンゾトリアゾール、N−ラウロイル−ベンゾトリアゾール、N−ステアリル−ベンゾトリアゾール、N−オレオイル−ベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、トリルトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(ジ)エチルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)ブチルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)オクチルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)トリデシルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)オクタデシルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)シクロヘキシルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)アリルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)ベンジルアミノメチルベンゾトリアゾール、(ジ)オクチルアミノエチルベンゾトリアゾール、(ジ)オクチルアミノデシルベンゾトリアゾール、(ジ)オクチルアミノベンジルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、臭化3−(4,5ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル2H−テトラゾリウム、5−アミノ−1H−テトラゾールなどのテトラゾール類、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−プロピルイミダゾール、2−フェニル−5−ヨードイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、2−ベンジル−4−メチルイミダゾール、2−(3−クロル)ベンジルイミダゾール、2−(3−ヨード)ベンジルイミダゾール、2−ナフチルイミダゾール、2−ナフチル−4−メチルイミダゾール、2−ナフチル−4−メチル−5−ブロムイミダゾール、2−(3,5−ジブロム)ナフチルイミダゾール、2−(2,6−ジクロル)ナフチル−4−メチルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−アミルイミダゾール、2−ヘプチルイミダゾール、2−デシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−トリデシルイミダゾール、2−テトラデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ペンチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ヘキシル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−オクチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−デシル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ウンデシル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ドデシル−1,2,4−トリアゾールなどのアルキルアミノトリアゾール類、グリオキサール、ピルボアルデヒド、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、3,4−ヘプタンジオン、3,4−オクタンジオン、4、5−ノナンジオン、4,5−デカンジオン、5,6−ウンデカンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、4,6−デカンジオン、5,7−ウンデカンジオン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、2−エチルカルボニルシクロペンタノン、α−エチルカルボニル−γ−ブチロラクトン、2−プロピルカルボニルシクロペンタノン、α−プロピルカルボニル−γ−ブチロラクトン、2−ブチルカルボニルシクロペンタノン、α−ブチルカルボニル−γ−ブチロラクトン、2−アセチルシクロヘキサノン、α−アセチル−δ−ペンチロラクトン、2−エチルカルボニルシクロヘキサノン、α−エチルカルボニル−γ−ペンチロラクトン、2−プロピルカルボニルシクロヘキサノン、α−プロピルカルボニル−γ−ペンチロラクトン、2−ブチルカルボニルシクロヘキサノン、α−ブチルカルボニル−γ−ペンチロラクトンなどのα−ジカルボニル化合物またはβ−ジカルボニル化合物、あるいはそれらのアミン付加物など、メルカプトイミダゾリン、ナフチルメルカプタン、C6〜C22のアルキルメルカプタンなどのメルカプタン化合物を例示することができる。
さらに、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、アイコシルアミン、ノニルアミンなどの高級アルキルアミンおよびそのエチレンオキサイド付加物などを例示することができる。
さらに、2−メチルベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、Ntert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのベンゾチアゾール類を例示することができる。
腐食抑制剤の添加量は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。たとえば、腐食抑制剤の添加量は、保護層(腐食抑制層)中の含有量として概ね0.0001〜5質量%とすることができる。
腐食抑制剤は、適切な溶媒とともに上記懸濁液に添加されることが好ましい。この溶媒には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、ベンゼンなどを例示することができる。
腐食抑制剤を含む懸濁液のpHは、pH1〜13の範囲で使用可能である。ただし、弱酸性から弱アルカリ性の領域で腐食抑制の効果が十分に発揮されるため、安全性の観点からpH4〜11で用いることが望ましい。pHを調整する場合、公知の酸およびアルカリを使用することができる。塩酸および硝酸は多量に用いると鱗片状粒子または微粒子に影響を与える可能性があるので、酸として硫酸、スルホン酸などが好適に用いられ、アルカリとして水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが好適に用いられる。
腐食抑制層を形成した後、樹脂により腐食抑制層を覆うことができる。この樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂などを例示することができる。この場合、腐食抑制層を覆った樹脂を含めて「腐食抑制層」と呼ぶものとする。
腐食抑制層の厚みは、これを覆う樹脂の厚みを含めて、1〜100nmであることが好ましい。該厚みがこの範囲にあれば、鱗片状複合粒子は、腐食抑制性、光輝性などが良好となり、光輝性のある黒色系の色調が良好に発現される。腐食抑制層の厚みは、1〜50nmであることがより好ましい。この腐食抑制層の厚みは平均値である。
(耐候被膜層)
耐候被膜層は、酸化物、水酸化物もしくは水和物のいずれかからなる単独膜、またはこれらから2種以上を組み合わせた混合物膜から構成することができる。特に、アルミニウム、珪素、セリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む酸化物、水酸化物もしくは水和物のいずれかからなる単独膜、またはこれらから2種以上を組み合わせた混合物膜からなることが好ましい。本発明において、このような単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層を形成することにより、鱗片状複合粒子に変色防止効果を付与し、耐候性を向上させることができる。特に、微粒子として銀および銅などの酸化、硫化が起きやすい元素または化合物を採用した場合に、鱗片状複合粒子およびこれを含む塗膜に対して良好な耐候性を付与することができる。
さらに、本発明に係る鱗片状複合粒子において、耐候被膜層とともに上述の腐食抑制層を形成する場合、腐食抑制層の上に耐候被膜層を形成することが好ましい。これにより、長期ばく露時の耐候性効果が向上し、かつ加熱による酸化および硫化を抑制する点で特に有利となる。
耐候被膜層を形成する方法は特に限定されない。たとえば、耐候被膜層がアルミニウムおよび珪素の少なくとも一方または両方を含む単独膜または混合物膜を形成する場合を例示する。まず親水性溶媒中にアルミニウム化合物または珪素化合物の少なくとも一方を加え、pHをアルカリ性または酸性に保ちながら撹拌または混練し、スラリー状態またはペースト状態の懸濁液とする。続いて、この懸濁液に鱗片状複合粒子を加え、さらに撹拌または混練することにより、鱗片状複合粒子の表面にアルミニウムおよび珪素の少なくとも一方または両方を含む水和膜を形成する。最後に、懸濁液を加熱処理することにより、この水和膜から、アルミニウムおよび珪素の少なくとも一方または両方を含む単独膜または混合物膜からなる耐候被膜層を形成することが好ましい。
耐候被膜層を形成する方法に用いられる珪素化合物およびアルミニウム化合物として、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシランなど、およびそれらの縮合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、珪酸ナトリウム、珪タングステン酸、珪モリブデン酸、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムなど、およびそれらの縮合物、硝酸アルミニウムなどを例示することができる。しかしながら、上記方法に用いられる珪素化合物およびアルミニウム化合物は、上記化合物に限定されるものではない。
耐候被膜層を形成するための懸濁液に用いられる親水性溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトンなどを例示することができる。しかしながら、耐候被膜層を形成するための懸濁液に用いられる親水性溶媒は、上記親水性溶媒に限定されるものではない。耐候被膜層を形成するための懸濁液は、水が含まれていてもよい。
たとえば耐候被膜層がセリウムを含む場合、酢酸セリウム、硝酸セリウム、セリウムアルコキシド、セリウムゾルなどを溶解または分散した溶液または懸濁液中に、鱗片状複合粒子を加えてpHをアルカリ性に保ちながら加熱撹拌または混練する。これにより、鱗片状複合粒子の表面にセリウムを含む水和膜を形成し、次いで加熱処理することにより、セリウムを含む単独膜からなる耐候被膜層を形成することができる。
耐候被膜層の厚みは1〜100nmであることが好ましい。この厚みが1nm以上であることにより、鱗片状複合粒子に、耐水性、耐熱性、耐候性などの性質を十分に付与することが可能となる。この厚みが100nm以下であることにより、鱗片状複合粒子は光輝性のある黒色系の色調を良好に呈することができる。耐候被膜層の厚みは、20〜50nmであることがより好ましい。この耐候被膜層の厚みは平均値である。
ここで耐候被膜層を鱗片状複合粒子に形成する場合、耐候被膜層がカップリング剤、特に珪素またはチタンの少なくとも一方を含むカップリング剤で処理されていることが好ましい。これにより、たとえば鱗片状複合粒子と塗料樹脂とを含有する樹脂組成物から塗膜を形成する際に、鱗片状複合粒子と塗料樹脂との親和性が増加し、これらの密着性を向上させることができる。カップリング剤として、たとえばシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤として、たとえば、RA−Si(ORB3、またはRA−SiRB(ORB2(RA:炭素数2〜18のアルキル基、アリール基またはアルケニル基、RB:炭素数1〜3のアルキル基)などを用いることが好ましい。さらに、RAは官能基を有することも好ましい。RAが有する官能基として、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ(メタクリル)基、アクリロキシ(アクリル)基、メルカプト基、ケチミノ基などを例示することができる。
好ましいシランカップリング剤として、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、n−メチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エポキシ−シラン)、n−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シランなど、およびこれらの縮合物などを例示することができる。
さらに、チタンカップリング剤はシランカップリング剤に比べて種類が少ないものの、耐候被膜層を処理するのに用いるカップリング剤として好ましい。チタンカップリング剤は、一般に、親水基としての加水分解性基と疎水基としての側鎖有機官能基とを有する。典型的には、加水分解性基としてアルコキシル基、側鎖有機官能基としてアルキルリン酸エステル基、アミノ基、スルフィド基などを有する。好ましい市販品として、チタンカップリング剤(商品名:「プレンアクトKR46B」、味の素ファインテクノ株式会社製)を例示することができる。プレンアクトKR46Bの場合、加水分解性基としてC817O−、側鎖有機官能基としてHO−P−(OC13272を有し、C817O−がTiに配位した構造を有する。
カップリング処理に際し、カップリング剤の添加量は、鱗片状複合粒子と塗料樹脂とを含有し、カップリング処理前の状態にある樹脂組成物の全体の0.1〜30質量%に調製することが好ましい。カップリング剤の添加量が上記樹脂組成物の全体の0.1質量%以上であることにより、鱗片状複合粒子と塗料樹脂との密着性を向上させる効果を得ることができる。カップリング剤の添加量が上記樹脂組成物の全体の30質量%以下であることにより、経時安定性が得られ、たとえば凝集することなどを防止することができる。カップリング剤の添加量は上記樹脂組成物の全体の1〜5質量%とすることがより好ましい。
カップリング処理は、耐候被膜層を形成した鱗片状複合粒子を、イソプロピルアルコールなどの溶媒に分散させてスラリー化した後、カップリング剤を添加する方法により行なうことができる。
(被覆樹脂層)
本発明に係る鱗片状複合粒子は、最外層として被覆樹脂層が形成されることが好ましい。これにより、たとえば鱗片状複合粒子と塗料樹脂とを含有する樹脂組成物から塗膜を形成する際に、鱗片状複合粒子と塗料樹脂との密着性が向上し、塗膜の物性が良好になる。さらに、塗膜の耐薬品性を向上させることができる。
被覆樹脂層を形成する方法は特に限定されない。たとえば、鱗片状複合粒子を非極性溶媒に分散し、被覆樹脂層を構成することになる重合性モノマーと重合開始剤とを添加し、これらを撹拌しながら加熱して重合反応を進行させることにより、鱗片状複合粒子の表面に被覆樹脂層を形成させることができる。
ここで上記重合反応は、非酸化性雰囲気、たとえば窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で進行させることが好ましい。酸化雰囲気下では、重合反応に寄与するラジカルが消滅しやすくなり、重合効率が低下する傾向があるからである。反応温度は50〜150℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。反応温度が50℃以上であることにより、重合効率が十分となる。反応温度が150℃以下であることにより、溶媒が過度に蒸発するのを回避することができ、安全性を確保することができる。
分散用溶媒として用いる非極性溶媒は、炭化水素系溶媒であることが好ましい。炭化水素系溶媒として、ミネラルスピリット、石油ベンジン、ソルベントナフサ、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレンなどを例示することができる。非極性溶媒を用いることにより、鱗片状複合粒子を被覆する最外層として、十分に厚みのある被覆樹脂層を形成することができる。
被覆樹脂層は、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基またはリン酸基の少なくとも一方を有する反応性モノマー、3官能以上を有する多官能性アクリルエステルモノマー、ベンゼン核を有する重合性モノマーからなる群より選ばれる少なくとも2種以上のモノマーから合成される共重合体からなることを例示することができる。
カルボキシル基またはリン酸基の少なくとも一方を有する反応性モノマーとして、下記のものが例示される。添加量は、重合させるモノマー成分全体の0.1〜10質量%とすることが好ましく、重合させるモノマー成分全体の0.5〜5質量%とすることがより好ましい。添加量がこの範囲を外れる場合、鱗片状複合粒子を含む塗膜に良好な耐薬品性を付与することが困難となる傾向がある。
反応性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアッシドフォスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネートなどを例示することができる。
3官能以上を有する多官能性アクリルエステルモノマーとして、下記のものが例示される。多官能性アクリル酸エステルモノマーの添加量は、重合させるモノマー成分全体の30〜90質量%とすることが好ましく、重合させるモノマー成分全体の40〜80質量%とすることがより好ましい。添加量がこの範囲を外れる場合、鱗片状複合粒子を含む塗膜に良好な耐薬品性を付与することが困難となる傾向がある。多官能アクリル酸エステルモノマーは樹脂の三次元架橋に寄与し、有機溶剤および水に対して被覆樹脂層を不溶化する効果を有する。
3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを例示することができる。
ベンゼン核を有する重合性モノマーとして、下記のものが例示される。ベンゼン核を有する重合性モノマーの添加量は、重合させるモノマー成分全体の5〜50質量%とすることが好ましく、重合させるモノマー成分全体の10〜30質量%とすることがより好ましい。添加量がこの範囲を外れる場合、鱗片状複合粒子に良好な耐薬品性を付与することが困難となる傾向がある。ベンゼン核を有する重合性モノマーを共重合させることにより、被覆樹脂層の耐薬品性をより向上させることができる。
ベンゼン核を有する重合性モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、フェニルビニルケトン、フェニルビニルエーテル、ジビニルベンゼンモノオキサイドフェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートなどを例示することができる。
被覆樹脂層の質量は、鱗片状複合粒子の1〜100質量%とすることが好ましく、鱗片状複合粒子の5〜50質量%とすることがさらに好ましい。被覆樹脂層の質量が鱗片状複合粒子の1質量%以上であることにより、良好な耐薬品性が得られる。被覆樹脂層の質量が鱗片状複合粒子の100質量%以下であることにより、鱗片状複合粒子の鮮明性が損なわれ難い。
重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのパーオキサイド類、およびアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物を例示することができる。
重合開始剤の配合量は、重合させるモノマー成分全体の0.1質量%以上であることが好ましく、重合させるモノマー成分全体の0.5質量%以上であることがより好ましい。さらに、重合開始剤の配合量は、重合させるモノマー成分全体の10質量%以下であることが好ましく、重合させるモノマー成分全体の8質量%以下であることがより好ましい。この配合量が重合させるモノマー成分全体の0.1質量%以上であることにより、重合反応が良好に進行して被膜を容易に形成することができる。この配合量が重合させるモノマー成分全体の10質量%以下であることにより、重合反応の急激な進行が防止されるため、遊離のポリマー粒子が生成し、系全体の粘性が急激に上昇して凝固が発生する、といった不都合が生じ難くなる。
被覆樹脂層の厚みは1〜100nmであることが好ましい。該厚みがこの範囲にあれば、鱗片状複合粒子と塗料樹脂とを含有する樹脂組成物から塗膜を形成したとき、鱗片状複合粒子と塗料樹脂との密着性、耐薬品性などが良好となり、光輝性のある黒色系の色調が良好に発現される。被覆樹脂層の厚みは、10〜50nmであることがより好ましい。この被覆樹脂層の厚みは平均値である。
以上、本実施形態に係る鱗片状複合粒子の主な構成について説明したが、鱗片状複合粒子は、鱗片状粒子の表面に微粒子が直接付着していればよく、本発明の効果が損なわれない範囲で、上述した以外の層が形成されていたり、粒状物などが付着していたりしてもよい。
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、鱗片状複合粒子を含む。このような樹脂組成物としては、たとえば、塗料、この塗料により形成される塗膜、インキ、このインキにより形成される印刷物、化粧料および樹脂成形体などが含まれる。本発明に係る樹脂組成物が塗料またはインキである場合、有機溶剤型(油性)および水性のいずれにも構成することが可能であるが、耐光性、耐候性の向上が重要な課題とされている水性の塗料またはインキとして構成することが特に有効である。
樹脂組成物における鱗片状複合粒子の配合量は、樹脂組成物の全体の0.1〜30質量%であることが好ましい。この配合量が樹脂組成物の全体の0.1質量%以上であることにより、装飾効果が良好となる。この配合量が樹脂組成物の全体の30質量%以下であることにより、樹脂組成物の耐候性、耐食性、機械強度などが良好となる。樹脂組成物における鱗片状複合粒子の配合量は、樹脂組成物の全体の1〜20質量%であることがより好ましい。
樹脂組成物は、たとえば、塗料を構成する場合、鱗片状複合粒子に樹脂(以下「塗料樹脂」とも称する)を適宜配合することにより得ることができる。塗料樹脂として、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂などを例示することができる。
このような樹脂組成物を用い、電着塗装などによって形成された下塗り層、中塗り層の上に塗膜を形成してもよい。樹脂組成物を用いて形成した塗膜の上に、上塗り層をさらに形成してもよい。
本発明に係る樹脂組成物は、上記鱗片状粒子および鱗片状アルミニウム粒子のいずれか一方または両方をさらに含むことができる。すなわち樹脂組成物は、鱗片状複合粒子に加え、第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上の鱗片状粒子を、塗料樹脂などに配合することにより得ることができる。さらに樹脂組成物は、鱗片状複合粒子、鱗片状粒子および鱗片状アルミニウム粒子を塗料樹脂などに配合することによって得ることができ、あるいは鱗片状複合粒子とともに鱗片状アルミニウム粒子のみを塗料樹脂などに配合することによっても得ることができる。このような樹脂組成物は、隠ぺい性が強く、光輝感あるいはメタリック感を増加させる効果を備え、下地塗りを省略することができる点で有利である。鱗片状アルミニウム粒子とは、0.05μm以上50μm以下の平均粒子径を有し、平均粒子径を平均厚みで除して表されるアスペクト比が、20以上60以下であるフレーク形状または扁平形状のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる粒子をいう。
さらに、樹脂組成物は、他の着色顔料あるいは体質顔料または染料を含むことができる。このような着色顔料として、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ペリレン、アゾレーキ、酸化鉄、黄鉛、カーボンブラック、酸化チタン、パールマイカなどを例示することができる。上記成分の他、添加剤として、水、有機溶剤、界面活性剤、硬化剤、紫外線吸収剤、静電気除去剤、増粘剤などを含むことができる。
本発明に係る樹脂組成物の1種として、化粧料を例示することができる。従来から、化粧料に光沢感および光輝感を付与するため、パール顔料、アルミニウム顔料などが用いられている。しかし、パール顔料は隠蔽性に乏しく、アルミニウム顔料はグレー色を呈するため、他の着色顔料を配合して化粧料を構成しても鮮明な色調が得られない傾向があった。さらに、アルミニウム顔料は水と反応しやすいために、水を含有する化粧料に適用できなかった。
本発明では、鱗片状複合粒子を配合することにより、優れた隠蔽力を有し、かつ黒色系の色調を呈する化粧料が得られる。さらに、鱗片状複合粒子が水と反応し難い安定な性質を有するため、水を含有する場合にも好適となる。鱗片状複合粒子を配合した化粧料の種類は特に限定されないが、以下の化粧料を例示することができる。
たとえば、メーキャップ化粧料(口紅、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、ネイルエナメルなど)、毛髪化粧料(ヘアジェル、ヘアワックス、ヘアトリートメント、シャンプー、ヘアマニキュアジェルなど)、基礎化粧料(下地クリームなど)などの化粧料である。
本発明に係る樹脂組成物の1種としての化粧料は、鱗片状複合粒子以外に以下の成分を含むことができる。
(油分)
油分として、油脂(オリーブ油、ひまし油など)、ロウ類(ミツロウ、カルナバロウ、ラノリンなど)、炭化水素油(流動パラフィン、スクワラン、ポリブテンなど)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリミリスチン酸グリセリルなど)、高級脂肪酸(オレイン酸、イソステアリン酸など)、高級アルコール(イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなど)、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、フッ素化合物(パーフルオロポリエーテルなど)を含むことができる。
(その他の成分)
その他の成分として、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、水溶性高分子、皮膜形成剤、非水溶性高分子、高分子エマルション、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、紫外線吸収剤、ビタミン類、酸化防止剤、抗菌剤、香料、水などを含むことができる。
(配合量)
化粧料中の鱗片状複合粒子の好ましい配合量は、0.1〜99質量%である。さらに好ましくは、1〜80質量%である。
本発明に係る化粧料は、従来公知の製造方法により製造することができる。化粧料の分散方法は、ディスパー、ロールミルを用いる方法などが好適である。
<塗布物>
本発明に係る塗布物は、鱗片状複合粒子を含む。本発明は、たとえば、上記樹脂組成物のいずれかを基体に塗布した塗布物を含む。このような塗布物を構成する基体の素材は、特に限定されず、たとえば、金属、樹脂、木材、紙、皮革などを挙げることができる。また、このような塗布物としては、たとえば、自動車、バイクなどの車体、蓋材、包装材、雑誌、ポスターなどの印刷物、紙幣、パスポート、免許証、金券などのセキュリティー性が必要な塗布物などを挙げることができる。
<鱗片状複合粒子の製造方法>
本発明に係る鱗片状複合粒子の製造方法は、鱗片状粒子を準備する工程(準備工程)と、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を用いて、鱗片状粒子の表面に対して活性化処理を行なうことにより、鱗片状活性化粒子を調製する工程(鱗片状活性化粒子調製工程)と、鱗片状活性化粒子の表面に触媒を担持させることにより、鱗片状触媒担持粒子を調製する工程(鱗片状触媒担持粒子調製工程)と、鱗片状触媒担持粒子に無電解めっき処理を行なうことにより、鱗片状触媒担持粒子の表面に微粒子を析出させて鱗片状複合粒子を作製する工程(鱗片状複合粒子作製工程)とを備える。以下、各工程について説明する。
(準備工程)
準備工程では、鱗片状粒子を準備する。鱗片状粒子は、第1の金属酸化物、樹脂、マイカおよびガラスからなる群より選択される1種以上が採用される。鱗片状粒子として、平均厚みが0.05μm以上1μm以下であり、平均粒子径が、0.05μm以上50μm以下であるものを用いることが好ましい。
(鱗片状活性化粒子調製工程)
鱗片状活性化粒子調製工程では、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を用いて、鱗片状粒子の表面に対して活性化処理を行なうことにより、鱗片状活性化粒子を調製する。具体的には、まず撹拌槽に鱗片状粒子を投入し、さらに水などの溶媒を投入することにより、鱗片状粒子を含むスラリーを調製する。次に、このスラリーに酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を添加して撹拌することにより、鱗片状粒子の表面を活性化させることができる。さらに、スラリーを洗浄処理することにより、活性化処理を停止させることができる。洗浄処理方法は、洗浄液としてたとえば水を用い、この洗浄液を加えたスラリーを遠心分離機、漏斗などを用いて固液分離する方法を例示することができる。
酸性溶媒に含まれる酸として、硝酸、塩酸、硫酸、フッ酸を例示することができ、アルカリ性溶媒に含まれるアルカリとして、水酸化ナトリウムを例示することができる。安全性の観点から、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒の溶媒成分は水であることが好ましいが、アルコールなどの有機溶媒を使用してもよい。
酸性溶媒の添加量は、スラリーに含まれる鱗片状粒子の全量を100体積%としたとき、酸性溶媒に含まれる酸の体積割合が0.1体積%以上30体積%以下であることが好ましい。アルカリ性溶媒を使用する場合、その添加量は鱗片状粒子の全量を100体積%としたとき、アルカリ性溶媒に含まれるアルカリの体積割合が0.1体積%以上30体積%以下であることが好ましい。酸またはアルカリの体積割合が30体積%を超える場合、活性化だけでなく、過剰なエッチングが生じ易くなり、鱗片状粒子の表面が荒れてしまう傾向がある。酸またはアルカリの体積割合が0.1体積%未満である場合、鱗片状粒子の表面の活性化が不十分となる傾向がある。酸性溶媒またはアルカリ性溶媒の添加量は、スラリーに含まれる鱗片状粒子の全量を100体積%としたとき、酸またはアルカリの体積割合が0.5体積%以上10体積%以下であることが、より好ましい。
活性化処理に要する時間は、1分以上30分以下であることが好ましい。活性化処理に要する時間とは、スラリーに酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を添加してから、洗浄処理に供するまでの時間である。この時間が30分を超えると、鱗片状粒子の表面の活性化だけでなく、過剰なエッチングが生じ易くなり、該表面が荒れてしまう傾向がある。1分未満である場合、鱗片状粒子の表面の活性化が不十分となる傾向がある。
ここで鱗片状活性化粒子調製工程において、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒と共に、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤が、酸性溶媒またはアルカリ性溶媒によって清浄化された鱗片状粒子の表面に付着することにより、鱗片状粒子の表面に活性度の高いシラン基を有する鱗片状活性化粒子を調製することができる。シランカップリング剤の添加量は、スラリーに含まれる鱗片状粒子の全量を100体積%としたとき、シランカップリング剤の体積割合が1体積%以上20体積%以下であることが好ましい。このようなシランカップリング剤として、アミノシラン、エポキシシランなどを例示することができる。
(鱗片状触媒担持粒子調製工程)
鱗片状触媒担持粒子調製工程では、鱗片状活性化粒子の表面に触媒を担持させることにより、鱗片状触媒担持粒子を調製する。具体的には、撹拌槽に水などの溶媒を投入し、洗浄処理をした鱗片状活性化粒子を投入することにより、鱗片状活性化粒子を含むスラリーを調製する。次に、このスラリーに触媒を添加して撹拌することにより、鱗片状活性化粒子の表面に触媒を担持させることができる。さらに、スラリーを洗浄処理することにより、触媒の担持を停止させることができる。洗浄処理方法は、洗浄液としてたとえば水を用い、この洗浄液を加えたスラリーを遠心分離機、漏斗などを用いて固液分離する方法を例示することができる。
活性化鱗片状粒子の表面に担持された触媒は、後述する無電解めっき処理において微粒子が析出するための核となる。触媒として、金属化合物を好適に用いることができ、たとえば塩化第一パラジウム、塩化第一スズ、硫酸第一スズ、フッ化スズ、酸化スズおよび有機酸スズからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を用いることができる。たとえば、塩化第一パラジウムを用いた場合、鱗片状活性化粒子の表面にパラジウムイオンが担持された鱗片状触媒担持粒子を得ることができる。鱗片状触媒担持粒子調製工程では、必要に応じて還元剤を用いてもよい。
触媒の添加量は、スラリーに含まれる活性化鱗片状粒子の全量を100質量%としたとき、触媒の質量割合が0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましい。触媒の質量割合が20質量%を超える場合、必要量以上に触媒を添加することになるので、コストが増加してしまう傾向がある。触媒の質量割合が0.001質量%未満である場合、触媒量が少なすぎることにより、鱗片状粒子に付着する微粒子量が少なくなる傾向があり、あるいは微粒子の大きさが乱雑になり色調が低下する傾向がある。触媒の添加量は、スラリーに含まれる活性化鱗片状粒子の全量を100質量%としたとき、触媒の質量割合が0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
触媒の担持に要する時間は、処理温度によるところが大きいが、概ね1分以上30分以下であることが好ましい。触媒の担持に要する時間とは、スラリーに触媒を添加してから、洗浄処理に供するまでの時間をいう。この時間が30分を超えると、生産性が悪化する傾向がある。この時間が1分未満である場合、触媒の担持にムラができる傾向がある。
(鱗片状複合粒子作製工程)
鱗片状複合粒子作製工程では、鱗片状触媒担持粒子に無電解めっき処理を行なうことにより、鱗片状触媒担持粒子の表面に微粒子を析出させて鱗片状複合粒子を作製する。具体的には、撹拌槽に水などの溶媒を投入し、洗浄処理後の鱗片状触媒担持粒子を投入することにより、鱗片状触媒担持粒子を含むスラリーを調製することができる。次に、このスラリーを撹拌しながら、金属塩、還元剤および錯化剤を含むめっき処理液を投入することにより、無電解めっき処理を進行させることができる。さらに、スラリーを洗浄処理することにより、無電解めっき処理を停止させることができる。洗浄処理方法は、洗浄液としてたとえば水を用い、この洗浄液を加えたスラリーを遠心分離機、漏斗などを用いて固液分離する方法を例示することができる。
めっき処理液の溶媒として、有機溶媒、水またはこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒を用いた場合、無電解めっき処理の速度が遅くなるので、微粒子による緻密な金属層を鱗片状粒子上に形成するのに適している。一方で、生産性を考慮した場合、溶媒として有機溶媒および水からなる混合溶媒、または水を用いることが好ましい。めっき処理液を添加する前の鱗片状触媒担持粒子を含むスラリーに用いる溶媒は、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒のいずれでもよい。
めっき処理液に含まれる金属塩として、無電解めっき処理法に用いられる公知のものを用いることができる。たとえば、有機溶媒、水、混合溶媒中で安定的に溶解できる硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、塩化物、酢酸塩、乳酸塩、スルファミン酸塩、フッ化物、ヨウ化物、シアン化物を用いることができる。この金属塩を構成する金属が鱗片状粒子上に析出し、鱗片状粒子に付着している微粒子を構成する金属となる。
めっき処理液に含まれる還元剤として、無電解めっき処理法に用いられる公知のものを用いることができる。たとえば、グルコース、サッカロースなどの糖類、セルロース、デンプン、グリコーゲンなどの多糖類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、次亜リン酸、ホルムアルデヒド、水素化ボロン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン酒石酸およびこれらの塩を用いることができる。この中でヒドラジン酒石酸は、アルカリ金属塩として用いることが好ましい。
めっき処理液に含まれる錯化剤として、無電解めっき処理法に用いられる公知のものを用いることができる。たとえば、グルコース、サッカロースなどの糖類、セルロース、デンプン、グリコーゲンなどの多糖類、コハク酸などのカルボン酸、クエン酸および酒石酸などのオキシカルボン酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アミノ酢酸、およびこれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩など)を用いることができる。錯化剤を用いることにより、金属の再析出を抑制することができ、安定的な微粒子の析出が可能となる。
めっき処理液に含まれる金属塩の添加量は、鱗片状触媒担持粒子(特に、鱗片状粒子)の材質、粒子径などの性状および添加する金属塩の種類などに応じて適宜決定する。めっき処理液に含まれる還元剤および錯化剤の添加量については、めっき処理液に含まれる金属塩の添加量に応じて、適宜決定することができる。
無電解めっき処理に要する時間は、1分以上120分以下であることが好ましい。無電解めっき処理に要する時間とは、スラリーに金属塩を添加してから、洗浄処理に供するまでの時間である。この時間が120分を超えると、生産性が悪化する傾向がある。この時間が1分未満である場合、未反応分の金属イオンがスラリー中に存在する傾向がある。
めっき処理液のpHは、金属塩を構成する金属の種類によって適宜調整することが好ましい。めっき処理液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などを添加することにより、そのpHをアルカリ性(pH8〜12)に調整することができる。めっき処理液に、硫酸、硝酸、クエン酸などを添加することにより、そのpHを酸性(pH1〜6)にすることができる。さらに、これらを併用することによって、そのpHを中性(pH6〜8)にすることができる。鱗片状触媒担持粒子を含むスラリーにめっき処理液を添加して調製した反応液のpHについても、金属塩を構成する金属の種類によって適宜調整すればよい。
無電解めっき処理を進行させる際の反応液の温度は、微粒子として析出する金属または第2の金属酸化物の種類によって適宜調整することが好ましい。たとえば微粒子が銀である場合、5℃以上40℃以下であることが好ましく、10℃以上30℃以下であることがより好ましい。無電解めっき処理時には、鱗片状触媒担持粒子が沈降しない程度に反応液を撹拌することが好ましい。
鱗片状複合粒子作製工程を経ることにより、鱗片状複合粒子を含むスラリーを得ることができ、これを乾燥させることにより、鱗片状複合粒子を得ることができる。
得られた鱗片状複合粒子は、以下の(A)から(D)の条件を満たしている。
(A)微粒子は、散点状または島状に鱗片状粒子に付着していること
(B)微粒子は、鱗片状粒子への付着率が10面積%以上50面積%以下であること
(C)微粒子は、その平均粒子径が1nm以上80nm以下であること
(D)鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下であり、標準偏差sが0<s≦0.2であって、標準偏差sを平均値mで除して得られる変動係数CVが0%<CV≦70%であること。
(保護処理工程)
本発明では、鱗片状複合粒子の表面を保護処理する工程を備えることが好ましい。鱗片状複合粒子の表面を保護処理する工程は、上記鱗片状複合粒子作製工程に続いて行なうことができる。これにより、鱗片状複合粒子の表面に上述した腐食抑制層、耐候被覆層、被覆樹脂層などの保護層を形成することができる。
保護層を形成する方法は特に制限されないが、保護層の材料となる脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、キレート剤、有機金属化合物などを含む溶液中に、鱗片状複合粒子を投入しスラリーとする方法を例示することができる。保護層の形成後には洗浄処理することが好ましい。洗浄液としてたとえば水を用い、この洗浄液を加えたスラリーを遠心分離機、漏斗などを用いて固液分離することにより、保護層が形成された鱗片状複合粒子を洗浄処理することができる。
たとえば、保護処理する工程として、鱗片状複合粒子の表面に腐食抑制層を形成する腐食抑制層形成工程がある。この工程における腐食抑制層の形成方法は特に限定されないが、たとえば、上述の方法により達成することができる。
さらに、たとえば保護処理する工程として、鱗片状複合粒子の表面に耐候被膜層を形成する耐候被膜層形成工程がある。この工程における耐候被膜層の形成方法は特に限定されないが、たとえば、上述の方法により達成することができる。
保護処理する工程として耐候被膜層形成工程を含む場合に、カップリング処理工程を組み合わせることができる。この場合のカップリング処理の方法も特に限定されないが、たとえば、上述の方法により達成することができる。
本発明に係る鱗片状複合粒子の製造方法では、得られた鱗片状複合粒子と、樹脂組成物を構成するのに必要となる塗料樹脂と、さらに必要に応じて添加する他の着色顔料、体質顔料、染料、添加剤などとを従来公知の方法で混合する工程を備えることができる。さらに、本発明に係る鱗片状複合粒子の製造方法では、樹脂組成物の1種として化粧料を調製するため、得られた鱗片状複合粒子を他の成分と混合し、ディスパー、ロールミルなどを用いて公知の方法で分散させる工程を備えることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[鱗片状複合粒子の製造]
以下の各工程を実施することにより、実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子を製造した。
<実施例1>
(準備工程)
鱗片状粒子として、鱗片状アルミナ粒子を準備した。この鱗片状アルミナ粒子の体積平均粒子径は8.3μmであり、平均厚みは0.24μmであった。
(鱗片状活性化粒子調製工程)
撹拌槽に鱗片状アルミナ粒子10g、イオン交換水50mlを投入してスラリーを調製した。このスラリーに、60体積%フッ酸1mlをイオン交換水50mlで希釈した酸性溶媒を添加して3分間撹拌した。このときの撹拌槽内の温度は25℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状活性化粒子としての粒子Aを得た。
(鱗片状触媒担持粒子調製工程)
次に、他の撹拌槽にイオン交換水50mlを投入し、粒子Aの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Aを含むスラリーを調製した。このスラリーに、触媒としてのフッ化第一スズ0.25gとイオン交換水50mlを添加し、5分間撹拌を行った。このときの撹拌槽内の温度は55℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状触媒担持粒子としての粒子Bを得た。
(鱗片状複合粒子作製工程)
次に、さらに他の撹拌槽にイオン交換水900mlを投入し、粒子Bの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Bを含むスラリーを調製した。このスラリーに、以下の(1)〜(3)の水溶液を投入し、10分間撹拌することにより、無電解めっき処理を進行させた。このときの撹拌槽内の温度は30℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状複合粒子としての粒子Cを得た。
(1)硝酸銀1.75gと25体積%アンモニア水7.8mlとをイオン交換水50mlに溶解させた水溶液
(2)水酸化ナトリウム0.7gをイオン交換水50mlに溶解させた水溶液
(3)ブドウ糖10.5gをイオン交換水50mlに溶解させた水溶液
硝酸銀が金属塩に相当し、水酸化ナトリウムがpH調整剤に相当し、ブドウ糖が還元剤に相当し、アンモニア水が錯化剤に相当する。
(保護処理工程)
次に、またさらに他の撹拌槽内に、100mlのイオン交換水と1mlのNew Dain Silver(株式会社大和化成研究所製)とを投入し、さらに粒子Cの全量を投入して1分間撹拌した。これにより、粒子Cの表面に保護層としての腐食抑制層を形成した。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄し、さらに110℃の真空環境下で乾燥処理を行った。
以上により、実施例1の鱗片状複合粒子を製造した。実施例1の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<実施例2>
準備工程において、体積平均粒子径が9.5μmであり、平均厚みが0.19μmである鱗片状アルミナ粒子を用いた以外は、実施例1と同様の方法により複合粒子を作製した。
実施例2の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<実施例3>
準備工程において、体積平均粒子径が8.8μmであり、平均厚みが0.24である鱗片状アルミナ粒子を用いた以外は、実施例1と同様の方法により鱗片状複合粒子を作製した。
実施例3の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<実施例4>
(準備工程)
鱗片状粒子として、鱗片状アルミナ粒子を準備した。この鱗片状アルミナ粒子の体積平均粒子径は9.6μmであり、平均厚みは0.22μmであった。
(鱗片状活性化粒子調製工程)
撹拌槽に準備した鱗片状アルミナ粒子200g、イオン交換水1000mlを投入して、スラリーを調製した。このスラリーに60体積%フッ酸20mlをイオン交換水1000mlで希釈した酸性溶媒を添加して3分間撹拌した。このときの撹拌槽内の温度は25℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状活性化粒子としての粒子Dを得た。
(鱗片状触媒担持粒子調製工程)
次に、他の撹拌槽にイオン交換水1000mlを投入し、粒子Dの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Dを含むスラリーを調製した。このスラリーに触媒としてのフッ化第一スズ4gとイオン交換水1000mlを添加し、5分間撹拌を行った。このときの撹拌槽内の温度は52℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状触媒担持粒子としての粒子Eを得た。
(鱗片状複合粒子作製工程)
次に、さらに他の撹拌槽にイオン交換水4000mlを投入し、粒子Eの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Eを含むスラリーを調製した。このスラリーに以下(4)〜(6)の水溶液を投入し、10分間撹拌することにより、無電解めっき処理を進行させた。このときの撹拌槽内の温度は30℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状複合粒子としての粒子Fを得た。
(4)硝酸銀35gと25体積%アンモニア水157mlをイオン交換水1000mlに溶解させた水溶液
(5)水酸化ナトリウム14gをイオン交換水1000mlに溶解させた水溶液
(6)ブドウ糖210gをイオン交換水1000mlに溶解させた水溶液
硝酸銀が金属塩に相当し、水酸化ナトリウムがpH調整剤に相当し、ブドウ糖が還元剤に相当し、アンモニア水が錯化剤に相当する。
(保護処理工程)
次に、またさらに他の撹拌槽内に、2000mlのイオン交換水と20mlのNew Dain Silver(株式会社大和化成研究所製)とを投入し、さらに粒子Fの全量を投入して1分間撹拌した。これにより、粒子Fの表面に保護層としての腐食抑制層を形成した。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄し、さらに110℃の真空環境下で乾燥処理を行った。
以上により、実施例4の鱗片状複合粒子を製造した。実施例4の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<実施例5>
(準備工程)
鱗片状粒子として、鱗片状アルミナ粒子を準備した。この鱗片状アルミナ粒の体積平均粒子径は9.6μmであり、平均厚みは0.22μmであった。
(鱗片状活性化粒子調製工程)
撹拌槽に準備した鱗片状アルミナ粒子10g、イオン交換水50mlを投入して、スラリーを調製した。このスラリーに60体積%フッ酸1mlをイオン交換50mlで希釈した酸性溶媒を添加して3分間撹拌した。このときの撹拌槽内の温度は25℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状活性化粒子としての粒子Gを得た。
(鱗片状触媒担持粒子調製工程)
次に、他の撹拌槽にイオン交換水100mlを投入し、粒子Gの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Gを含むスラリーを調製した。ここで、触媒を付着させやすくする目的として、表面調整を実施した。このスラリーに表面調整剤(商品名:「コンディライザーSP」、奥野製薬工業株式会社製)20mlを添加し、10分間撹拌を行った。このときの撹拌槽内の温度は53℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。続けて、このスラリーに、触媒としての塩化第一スズ0.2gと35体積%塩酸1mlならびにイオン交換水100mlを添加し、5分間撹拌を行った。このときの撹拌槽内の温度は26℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、鱗片状触媒担持粒子としての粒子Hを得た。
次に、さらに他の撹拌槽にイオン交換水100mlを投入し、粒子Hの全量を投入して撹拌することにより、粒子Hを含むスラリーを調整した。このスラリーに触媒としての塩化パラジウム0.01gと35体積%塩酸0.01gをイオン交換水1mlで溶解した塩化パラジウム溶液を添加し、5分間撹拌を行った。このときの撹拌槽内の温度は40℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄した。これにより、パラジウム触媒が担持した更なる鱗片状触媒担持粒子としての粒子Iを得た。
(鱗片状複合粒子作製工程)
次に、またさらに他の撹拌槽にイオン交換水100mlを投入し、粒子Iの全量を投入して1分間撹拌することにより、粒子Iを含むスラリーを調製した。このスラリーに以下(7)〜(9)の水溶液を投入し、10分間撹拌することにより、無電解めっき処理を進行させた。このときの撹拌槽内の温度は68℃であった。撹拌後にスラリーの固液分離を行い、イオン交換水で洗浄し、さらに110℃の真空環境下で乾燥処理を行った。これにより、鱗片状複合粒子としての粒子Jを得た。
(7)硫酸ニッケル5gをイオン交換水10mlに溶解させた水溶液
(8)次亜リン酸ナトリウム20gをイオン交換水20mlに溶解させた水溶液
(9)コハク酸ナトリウム3.5をイオン交換水50mlに溶解させた水溶液
硫酸ニッケルが金属塩に相当し、次亜リン酸ナトリウムが還元剤に相当し、コハク酸ナトリウムが錯化剤に相当する。
以上により、実施例5の鱗片状複合粒子を製造した。実施例5の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、ニッケルリン合金からなる微粒子とを有している。
<実施例6>
準備工程において、鱗片状粒子として鱗片状ガラス粒子を用いた。この鱗片状ガラス粒子の体積平均粒子径は12.7μmであり、平均厚みは0.52μmであった。それ以外は、実施例1と同様の方法により鱗片状複合粒子を作製した。
実施例6の鱗片状複合粒子は、ガラスからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<比較例1>
鱗片状複合粒子作製工程において無電解めっき処理を行なうとき、鱗片状触媒担持粒子に投入する水溶液を実施例1の(1)〜(3)からそれぞれ、硝酸銀15.75gと25体積%アンモニア水70mlとをイオン交換水400mlに溶解させた水溶液、水酸化ナトリウム6.3gをイオン交換水400mlに溶解させた水溶液およびブドウ糖95gをイオン交換水400mlに溶解させた水溶液に代え、それ以外を実施例1と同様の方法として鱗片状複合粒子を作製した。比較例1の鱗片状複合粒子は、アルミナからなる鱗片状粒子と、銀からなる微粒子と、腐食抑制層とを有している。
<比較例2>
準備工程において、体積平均粒子径が8.7μmであり、平均厚みが0.23μmである鱗片状アルミナ粒子を用いた以外は、実施例1と同様の方法により鱗片状複合粒子を作製した。
[特性評価]
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子に対し、SEM、目視による観察および電子画像の撮影を行なった。SEMによる観察から微粒子の付着状態を評価した。目視による観察から色調を調べた。得られた電子画像から鱗片状複合粒子の厚みの平均値m、標準偏差sおよび変動係数CV、微粒子の付着率および平均粒子径を調べた。さらに、それぞれの鱗片状複合粒子を用いて樹脂組成物を作製し、その光輝性の評価をした。また、微粒子の量に起因する原料コストが抑えられているかどうかを調べるため、原子吸光光度計による分析から微粒子の平均被覆量を調べた。なお、上述のように鱗片状複合粒子の厚みは、保護層(腐食抑制層)を含んで構成される場合、これを含んだ厚みを表す。
<SEM観察>
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子を、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて10000倍の倍率で撮影した。得られた電子画像を図2〜9に示す。
(微粒子の付着状態)
図2〜図9は、それぞれ実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子の電子画像を表している。図2〜図7(実施例1〜6)、および図9(比較例2)に表された鱗片状複合粒子の電子画像では、鱗片状粒子の表面に微粒子が散点状、かつ島状に付着している様子が捕らえられた。図8(比較例1)に表された鱗片状複合粒子の電子画像では、鱗片状粒子の全面を微粒子が被覆している様子が捕らえられた。また、この結果を下記表1の「付着状態」の欄に示す。
<目視観察>
さらに目視観察の結果を、表1の「色調」の欄に示した。実施例1〜6および比較例2の鱗片状複合粒子は、黒緑色、黒青色、濃黒緑色、黒赤色、黒灰色などの黒色系の色調を呈したのに対し、比較例1の鱗片状複合粒子は黄白色の色調を呈していた。一方で、比較例2の鱗片状複合粒子が呈した黒色系の色調は、実施例1〜6の鱗片状複合粒子の色に比べて光輝性に欠け、くすんだ色調であった。
<原子吸光光度計による分析>
(微粒子の平均被覆量)
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子を、硝酸およびフッ化水素酸からなる混酸に溶解してそれぞれ測定試料を準備し、各測定試料中に含まれる微粒子成分の質量を原子吸光光度計(製品名:「A−2000」、株式会社日立ハイテクフィールディング製)を用いて測定した。測定波長を328.1nmとし、ガス条件を空気−アセチレンとした。微粒子成分の質量の値を下記式(5)に代入することにより、各鱗片状複合粒子における微粒子の平均被覆量(質量%)を算出した。この結果を、下記表1の「平均被覆量(質量%)」の欄に示す。
上記式(5)中、W1は微粒子の質量を表し、W2は鱗片状粒子の質量を表す。
<画像処理ソフトウェアによる分析>
(微粒子の付着率)
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子を50000倍の倍率で撮影し、その電子画像を解析することにより、鱗片状粒子上に付着している微粒子の付着率(面積%)を求めた。付着率の算出に関し、画像処理ソフトウェア(製品名:「WinROOF」、三谷商事株式会社製)を用いた。その結果を下記表1の「付着率(面積%)」の欄に示す。
(微粒子の平均粒子径)
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子を、それぞれエポキシ樹脂に練り込んで各測定試料を準備した。さらに、各測定試料を所定の形状に成形した後、イオンミリング法により切断した。得られた各測定試料の切断面を、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて10000倍の倍率で撮影し、得られた電子画像から100個の微粒子を選んでそれぞれ粒子径を算出し、そのメディアン径を求めた。各測定試料の粒子径の算出に関し、画像処理ソフトウェア(製品名:WinROOF、三谷商事株式会社製)を用いた。その結果を表1の「微粒子の平均粒子径(nm)」の欄に示す。
<鱗片状複合粒子の分析>
(平均値m)
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子の厚みを、上述した微粒子の平均粒子径を算出するのに用いた各測定試料の電子画像から算出した。これに際し、1画像につき100個の鱗片状複合粒子を選んでその厚みti(1≦i≦N、N=100)を算出し、その平均値mを上記式(2)に基づいて算出した。その結果を表1の「平均値m(μm)」の欄に示す。
(標準偏差s)
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子の厚みの標準偏差を次のようにして算出した。すなわち、上述のようにして得た鱗片状粒子の厚みの平均値mと、上記の100個の鱗片状複合粒子の厚みti(1≦i≦N、N=100))とを上記式(3)に代入することにより分散s2を求め、その平方根である標準偏差sを算出した。その結果を表1の「標準偏差s」の欄に示す。
(変動係数CV)
鱗片状複合粒子の厚みのバラツキは標準偏差sで表すことができる。さらに、その標準偏差sを厚みの平均値mで徐することにより得られる変動係数CVにより、値の桁数に影響されずにバラツキを把握することができる。実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子の厚みの変動係数CVを上記式(4)から算出した。その結果を表1の「変動係数CV(%)」の欄に示す。
<光輝性の評価>
実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子のそれぞれと、樹脂としてのビヒクル(商品名:「ニッペアクリルオートクリヤースーパー」、日本ペイント社製)とを混練し、実施例1〜6および比較例1〜2の鱗片状複合粒子のそれぞれに対応する樹脂組成物を作製した。樹脂組成物における配合比は、鱗片状複合粒子が10質量%であるのに対して樹脂が90質量%である。
得られた樹脂組成物をアート紙(商品名:「タンザク用紙」、松村印刷株式会社製)にアプリケーターにて塗布し、常温にて自然乾燥させ塗膜を作製した。
各塗膜について、JIS Z8722(2009)(色の測定方法−反射および透過物体色)の条件aに記載の方法に従って測定したY値から、JIS Z8729(2004)(色の表示方法−L***表色系およびL***表色系)に規定されるL*、a*およびb*を得た。具体的には、マルチアングル分光測色計(商品名:「X−Rite MA−68II」、X−Rite社製)を用いて、入射角45°、正反射方向からのオフセット角15°におけるL*値を測定した。L*値が大きいほど、明度が大きいことを示す。この結果を表1の「L*」の欄に示す。
なお、表1では「鱗片状粒子」の列に、実施例1〜6および比較例1〜2における鱗片状粒子の体積平均粒子径および平均厚みも記載している。
[考察]
SEM観察および電子画像の解析などから表1に示すように、実施例1〜6の鱗片状複合粒子は、以下の(A)から(D)の条件を満たしている。
(A)微粒子は、散点状または島状に鱗片状粒子に付着していること
(B)微粒子は、鱗片状粒子への付着率が10面積%以上50面積%以下であること
(C)微粒子は、その平均粒子径が1nm以上80nm以下であること
(D)鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下であり、標準偏差sが0<s≦0.2であって、標準偏差sを平均値mで除して得られる変動係数CVが0%<CV≦70%であること。
さらに、実施例1〜6の光輝性樹脂組成物は、「L*」の値から明度が高く、したがって、高い光輝性を示すことが分かった。
また、実施例1〜6の鱗片状複合粒子は、微粒子の平均被覆量が、鱗片状複合粒子の10質量%前後であり、微粒子の使用量が低減可能なことから原料コストを抑制することができるものと分かった。実施例1〜6の鱗片状複合粒子は反射層を備えておらず、製造工程が減っているため、製造コストが抑制されていることは明らかである。
その一方で、比較例1の鱗片状複合粒子は、微粒子の付着率が50面積%を超える98.8面積%であり、微粒子が鱗片状粒子の全面を被覆していることが分かった。さらに、比較例1の微粒子の平均粒子径は80nmを超えて88.3nmであった。比較例1の鱗片状複合粒子が呈した黄白色の色調は、図8に基づけば、鱗片状粒子の全面を被覆している微粒子に対し、光が全反射したことによって呈された色調であると推測された。また、「L*」の値から導かれる明度の高さは、黄白色の色調によるものと推測された。
比較例2の鱗片状複合粒子は、厚みの標準偏差sが0.2を超えて0.26であった。さらに、標準偏差sを厚みの平均値mで除して得られる変動係数CVが70%を超えて77.3%であった。上述したように、目視観察から比較例2の鱗片状複合粒子の黒色系の色調は、実施例1〜6に比べて光輝性に欠け、くすんだ色調を呈していた。この理由は、CVが70%を超えていることから、光の透過層である鱗片状粒子毎の厚みのバラツキが大きく、その結果、呈する色調が鱗片状複合粒子ごとに大きく異なったことに基づくものと考えられる。その他、比較例2の光輝性樹脂組成物は、「L*」の値から実施例1〜6および比較例1に比べて明度が低かったことからも光輝性に欠け、くすんだ色調であったことが理解される。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 鱗片状複合粒子、11 鱗片状粒子、12 微粒子、13 耐候被膜層。

Claims (10)

  1. 属酸化物からなる鱗片状粒子上に、金、銀、銅、白金、スズ、パラジウム、ニッケル、鉄およびこれらの合金からなる群より選択される1種以上からなる微粒子が付着している鱗片状複合粒子であって、
    前記微粒子は、散点状または島状に前記鱗片状粒子に付着し、前記鱗片状粒子への付着率が10面積%以上50面積%以下であり、かつ、その平均粒子径が1nm以上80nm以下であり、
    前記鱗片状複合粒子の厚みは、その平均値mが0.05μm以上1μm以下であり、標準偏差sが0<s≦0.2であって、前記標準偏差sを前記平均値mで除して得られる変動係数CVが0%<CV≦70%である、鱗片状複合粒子。
  2. 前記鱗片状複合粒子は、触媒成分を含む、請求項1に記載の鱗片状複合粒子。
  3. 前記鱗片状粒子は、アルミナまたはシリカのいずれかである、請求項1または請求項2に記載の鱗片状複合粒子。
  4. 前記鱗片状粒子は、アルミナであり、
    前記微粒子は、銀である、請求項1〜3のいずれかに記載の鱗片状複合粒子。
  5. 前記鱗片状複合粒子は、1層または2層以上の保護層を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の鱗片状複合粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の鱗片状複合粒子を含む、樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物は、前記鱗片状粒子および鱗片状アルミニウム粒子のいずれか一方または両方をさらに含む、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の鱗片状複合粒子を含む、塗布物。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の鱗片状複合粒子の製造方法であって、
    前記鱗片状粒子を準備する工程と、
    酸性溶媒またはアルカリ性溶媒を用いて前記鱗片状粒子の表面に対して活性化処理を行なうことにより、鱗片状活性化粒子を調製する工程と、
    前記鱗片状活性化粒子の表面に触媒を担持させることにより、鱗片状触媒担持粒子を調製する工程と、
    前記鱗片状触媒担持粒子に無電解めっき処理を行なうことにより、前記鱗片状触媒担持粒子の表面に前記微粒子を析出させて前記鱗片状複合粒子を作製する工程と、を備える、鱗片状複合粒子の製造方法。
  10. 前記鱗片状複合粒子の表面を保護処理する工程をさらに備える、請求項9に記載の鱗片状複合粒子の製造方法。
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