JP6268009B2 - 被覆顔料 - Google Patents

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本発明は、基材の表面にフェライト層を形成した被覆顔料に関する。
従来より、フレーク状基材に対し有機顔料を付着させた着色顔料は公知である。該着色顔料において、フレーク状基材に付着させる有機顔料としては、ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、スレン系、ペリノン系、ペリレン系、フタロン系、フタロシアニン系等の有機顔料が使用されている。
しかしながら、上記のような着色顔料においてはフレーク状基材上に付着させた有機顔料が光によって劣化し易いという問題があった。この問題を解決するためには、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、など比較的耐光性の優れた顔料を選ばざるを得ず、得られる着色顔料の意匠性に限界があった(特開平01−315470号公報(特許文献1))。また、この顔料を化粧品として使用する場合、顔料によっては化粧品への配合が禁止されており、使用できる顔料は制限されていた。
一方、マイカ、アルミナ、ガラス等の透明基材、またはアルミニウム顔料の表面に酸化珪素、酸化チタニウム、酸化鉄、金属等から成る単一または複合皮膜を形成する事により干渉色を付与した顔料も公知である。
例えばフレーク状アルミニウム基材上に酸化珪素および錫や銀などの金属微粒子層を付与した顔料は非常に彩度の高い干渉色を示す(国際公開第2007/094253号パンフレット(特許文献2))。
しかしながら、金属微粒子が光、水、熱などの外的刺激により劣化したり、金属微粒子の脱落などにより耐候性がやや劣るという問題がある。また、この顔料を化粧品に用いる場合、含有する金属によっては使用できる部位に制限が生じる。
一方、耐候性に優れた金属酸化物を被覆した干渉色顔料としては、例えばフレーク状基材表面に酸化鉄を付与したものが挙げられる。しかしながら、この技術はゲータイト(FEOOH)やヘマタイト(Fe23)を被覆する為に、得られる色は赤色系または黄色系に限られる(特開平10−259318号公報(特許文献3))。
また、特開平07−258579号公報(特許文献4)、特開2008−214634号公報(特許文献5)、特表2006−510797号公報(特許文献6)、特表2009−532573号公報(特許文献7)、および特開2005−307155号公報(特許文献8)には、Fe34に例示されるようなフェライトを高屈折率層として採用し、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの透明低屈折率皮膜と組み合わせて、黒色干渉色顔料や観察角度により色相が変化する干渉色顔料を得る技術が公開されている。
具体的には、特許文献4にはFe34(磁鉄鉱)により基材を被覆する事が記載されているが、その被覆方法としてCVD法(化学気相成長法)が用いられている。この技術では原料となるペンタカルボニル鉄を用いるが、揮発性があり毒性が強く、また可燃性であるために取り扱いが困難であった。
一方、特許文献5〜特許文献8には水溶液中でFe34またはMxFe(3-x)4で表わされるフェライトにより基材を被覆する方法が開示されているが、いずれの方法も強酸性の水溶液中でFeOOHの様な水酸化物を被覆させ、その後500〜900℃で焼成する事によってフェライトに転化させている。この方法では、強酸性水溶液中での工程を含むためアルミニウムや銅などのような金属基材を用いる場合、腐食による基材の変色や水素ガス発生による火災の危険性を有している。また500℃以上の高温での焼成が必要であるため、コスト高となり、また酸化による顔料の変色や場合によっては粉塵爆発の危険性がある。
特開平01−315470号公報 国際公開第2007/094253号パンフレット 特開平10−259318号公報 特開平07−258579号公報 特開2008−214634号公報 特表2006−510797号公報 特表2009−532573号公報 特開2005−307155号公報
上記特許文献4〜8は、その製造方法において課題を有するものであったが、それ以上に顔料自体の意匠性に問題があった。すなわち、Fe34等により基材を被覆しても、所望の彩度や発色性等を得ることができず、意匠性に劣るという根本的な問題が存した。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、意匠性に優れた被覆顔料を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、基材上にFe34等の粒子を形成すればよいこと、および形成されるFe34等の粒径が大きくなると意匠性を害するとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより本発明を完成させたものである。すなわち、本発明の被覆顔料は、基材の表面にフェライト層が形成されたものであって、該基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、該フェライト層は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされるフェライトを含み、かつ透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となることを特徴としている。
また、本発明の被覆顔料は、基材の表面にフェライト層が形成されたものであって、該基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、該フェライト層は、不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、該フェライト粒子は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされる組成を有し、かつ一次粒径が20nm未満であることを特徴としている。
ここで、上記金属基材は、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステンレス、およびこれらの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、また上記透光性基材は、シリカ、アルミナ、ガラス、マイカ、および樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記フェライト層は、ポリマーを含むことが好ましく、該ポリマーは、カルボキシル基を含有するポリマーであることが好ましい。
また、上記被覆顔料は、上記フェライト層上に保護層を有しており、該保護層は、金属酸化物、金属水酸化物、金属水和物、樹脂、またはこれらの組合せのいずれかにより構成されることが好ましい。
また、本発明は、上記の被覆顔料を含有する樹脂組成物にも係わり、該樹脂組成物を基体に塗布した塗布物にも係わる。さらに本発明は、上記の被覆顔料を含有する化粧料にも係わる。
本発明の被覆顔料は、上記のような構成を有することにより、極めて意匠性に優れたものである。
フェライト層の粉末X線回折の解析結果である。 被覆顔料のフェライト層のTEM像である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<被覆顔料>
本発明の被覆顔料は、基材の表面にフェライト層が形成された構成を有する。かかる構成を有する限り、他の構成が付加されていても本発明の範囲を逸脱するものではない。そして、本発明の被覆顔料の基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、該フェライト層は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされるフェライトを含み、かつ透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となることを特徴としている。
本発明の被覆顔料は、このような構成を有することにより、極めて意匠性に優れたものとなる。具体的には、フェライト層の被覆量(厚み)および/または透光性基材の厚みまたは金属基材の透光性層の厚みを変化させることにより、無彩色から有彩色の色相を表現する事ができ、特にフェライト層の被覆量を増加させたり、透光性基材の厚みまたは金属基材の透光性層の厚みを十分に厚くすることにより、観察する角度によって色が変わる、いわゆるカラートラベル性を発現することができる。
すなわち、本発明の被覆顔料は、有彩色である場合は彩度が高く、カラートラベル性を示すことができ、また無彩色の場合は優れた発色性(明度が高いこと)を示すという、意匠性に極めて優れたものとなる。
そして、このように優れた意匠性は、光に対する基材の屈折率とフェライト層の屈折率が異なるために発現されるものと考えられるが、該フェライト層において粒径の大きなフェライト粒子、すなわち粒径が20nm以上となるフェライト粒子が多数存在すると、その優れた意匠性が発現されなくなることが本発明者の研究により明らかとなった。その理由の詳細は未だ解明されていないものの、恐らく粒子径の大きなフェライト粒子が存在するとフェライト層の表面において光が散乱し、基材に到達する光が減衰する為、基材表面での十分な反射光が得られず、意匠性が低下する一方、フェライト層を構成するフェライト粒子を微細化すると上記のような散乱が起こり難く、結果として基材表面で反射する光が強くなるので、被覆顔料自体の意匠性が向上するためではないかと推測される。
本発明における「透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となる」というフェライト層に対する規定は、正しくフェライト層が上記のような粒径の大きなフェライト粒子を含まないことを規定したものに他ならない。
この点、本発明におけるフェライト層は、同様の趣旨から、「不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、かつ一次粒径が20nm未満である」と規定することも可能となる。
したがって、本発明の被覆顔料は、基材の表面にフェライト層が形成されたものであって、該基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、該フェライト層は、不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、該フェライト粒子は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされる組成を有し、かつ一次粒径が20nm未満であることを特徴とするものでもある。
なお、本発明の被覆顔料がその効果を奏するためには、少なくとも、被覆顔料の断面を透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に、任意に選んだ5つの被覆顔料(ただし、凝集せずに被覆顔料それぞれが分離されているもの)について、それぞれ縦170nm×横170nmの視野範囲において、フェライト層中に20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数を数え、その平均値が3個以下であればよい。ここでの断面とは、少なくとも透光性層(被覆顔料を構成する基材が透光性基材であって、透光性基材の表面にフェライト層を形成した場合には当該透光性基材)とフェライト層が観察できる面を意味し、被覆顔料がフレーク形状であれば、フレーク形状の大部分を占める平面部分に対して垂直方向に切断した場合の切断面に相当する面を意味する。
また、本発明におけるフェライト層は、同様の趣旨から、少なくとも被覆顔料の断面を透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に、不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、かつ一次粒径が20nm未満であればよいと規定することが可能となる。ここでいう断面も上記と同じ意味を有する。
なお、本発明のフェライト層は、磁性を有する事から、例えば塗料に被覆顔料を用いて塗装した塗装面に対向させて、または塗装面の反対側に所望の文字や図形などの形に加工した磁石を設置することにより、被覆顔料の塗膜内での配向を変化させることができるため、その塗装面(すなわち被塗装物)に任意の模様を浮き上がらせる事もできる。
本発明の被覆顔料の粒子径は、特に限定されない。その粒子径は、通常、基材の種類により異なるが、0.5μm以上100μm以下が好ましく、0.5μm以上50μm以下がより好ましい。この範囲内であれば、塗装や印刷に好適に適用できる点で有利である。
例えば本発明の被覆顔料を塗料に使用する場合、塗膜表面から被覆顔料が突き出すことを防ぐ為には粒子径は概ね50μm以下が好適に使用される。また、被覆顔料を印刷に使用する場合、印刷方式にもよるが、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷に対しては版の目詰まり防止や隠蔽性確保の観点から概ね20μm以下の粒子径が好ましい。また、化粧品や樹脂射出成型物(樹脂成形体)に対しては更に大きなサイズも選択可能であり、特に50μm〜100μmの粒子径の被覆顔料を用いる事で、粒子感に富んだ、意匠を得る事ができる。
一方、粒子径が0.5μm未満の場合、光を反射する面積が小さくなる為、輝度や彩度の低い顔料となってしまう傾向がある。
なお、上記のような粒子径は、レーザー回折法により測定された体積累積粒度分布における累積度50%の粒子径(D50)を意味する。また、後述の樹脂組成物中の被覆顔料の粒子径は、このような方法では測定できないので、例えば光学顕微鏡やレーザー顕微鏡などで樹脂組成物中の被覆顔料を撮影し、市販の画像解析ソフトを使用して、長径(二次元解析による被覆顔料の輪郭線上で最も離れた2点間の距離)の分布を得ることにより粒子径を求める事ができる。
また、本発明の被覆顔料がフレーク状の形状である場合、その厚みは特に限定されない。たとえば、その厚みは0.01μm以上10μm以下が好ましく、0.03μm以上5μm以下であることがより好ましい。例えば射出成型により製造される樹脂成形体に被覆顔料を使用する場合は、樹脂の流れ方向に対して被覆顔料が配向することで生じるウェルドラインを防止するために、その厚みは1μmから10μm程度とすることが好ましい。
一方、粒子径にもよるが、厚みが0.01μm未満の場合、基材の比表面積が大きくなる為、後述の透光性層およびフェライト層の厚みを厚くする事が困難となり所望の意匠性を得る事が出来ない場合がある。
なお、このような厚みは、被覆顔料の断面を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察する事により測定する事ができる。具体的には、被覆顔料の断面写真において、任意の100個を抽出し、その厚みを走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて観察し実測する。その際、抽出する被覆顔料は凝集体など2個以上が連結しているものは抽出せず、個々に独立している被覆顔料のみを抽出する。
以下、本発明の被覆顔料の各構成等についてさらに詳述する。
<基材>
本発明で使用される基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材である。したがって、本発明において単に基材という場合は、透光性基材および/または透光性層を表面に形成した金属基材を意味するものとする。
このような基材の形状は特に限定されず、フレーク状であってもよいし、非フレーク状であってもよい。非フレーク状の形状としては、例えば球状、粒状、など種々の形状が含まれる。高い輝度や高い彩度が求められる用途に被覆顔料を用いる場合は、フレーク状の基材を採用することが好ましく、マット調の意匠が求められたり、粒度の細かい顔料が求められたりする用途では、非フレーク状の基材を好適に用いる事ができる。
基材のサイズ(粒子径)は、前述の被覆顔料の粒子径が達成できる範囲で任意に選択する事ができる。また、フレーク状の基材の場合、その厚みは特に限定されず、たとえば0.01μm以上10μm以下が好ましく、0.03μm以上5μm以下であることがより好ましい。例えば射出成型により製造される樹脂組成物へ被覆顔料を使用する場合は、樹脂の流れ方向に対して被覆顔料が配向することで生じるウェルドラインを防止するために、1μmから10μm程度の厚みを有する基材を用いることが望まれる。
一方、粒子径にもよるが、厚みが0.01μm未満の場合、基材の比表面積が大きくなる為、後述の透光性層およびフェライト層の厚みを厚くする事が困難となり所望の意匠を得る事が出来ない場合がある。
なお、基材のサイズ(粒子径)は、前述の被覆顔料の場合と同様に測定することができ、またその厚みも前述の被覆顔料の場合と同様に被覆顔料(基材)の断面を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等で観察する事により測定する事ができる。
以下、透光性基材および透光性層を表面に形成した金属基材について詳述する。
<透光性基材>
透光性基材としては、マイカ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化鉄、ガラス、樹脂などを挙げることができる。比較的高い屈折率のフェライト層を被覆する事を考慮すると、基材としてはより低い屈折率を有するシリカ、アルミナ、ガラス、マイカ、および樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。このような透光性基材を採用することにより、透明感のある被覆顔料を得ることができる。
なお、このような透光性基材は、後述のフェライト層と異なる屈折率を有する限りフェライト層との間で干渉作用を生じ得るため、ここでいう「透光性」とは光が基材を完全に透過する場合のみに限定されず、光の一部のみが基材を透過する様な場合をも含むものとする。また、透光性基材の表面に、後述の金属基材に形成されるような透光性層が形成されていても、本発明の透光性基材に含まれるものとする。
<金属基材>
本発明の金属基材は、その表面に透光性層を形成した構成を有する。このような透光性層は、後述のフェライト層と異なる屈折率を有する限りフェライト層との間で干渉作用を生じ得るため、ここでいう「透光性」とは光が該層を完全に透過する場合のみに限定されず、光の一部のみが基材を透過する様な場合をも含むものとする。
上記金属基材としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、錫とこれらの合金を例示する事ができるが、これらのみに限定されるものではない。好ましくは、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステンレス、およびこれらの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれた少なくとも1種である。特に、高輝度または高彩度の被覆顔料を得るためには、アルミニウム、錫、または銅で構成されるフレーク状の形状のものを用いる事が好ましい。また、特に金属基材としてアルミニウムを用いた場合、アルミニウムの表面では可視光は強く反射されるので、得られる被覆顔料の彩度が高く、特に透光性層の厚みが厚い場合には強いカラートラベル性を有するため好ましい。
一方、金属基材としては、前述の透光性基材の表面を蒸着などにより上記の金属等で被覆した構成のものも含まれる。この場合、不透明な金属調の外観を呈したものとなる。
フレーク状の形状を有する金属基材は、たとえば金属粉末や、金属薄片を湿式ボールミル法(すなわちホール法)または乾式ボールミル法で粉砕する方法や、フィルム等に金属薄膜を蒸着した後、それを剥離して粉砕する方法等により得ることができる。
本発明において、基材として透光性基材を使用した場合は、基材自体が透光性を示すため(透明であり光を透過するため)それ自体が特定の屈折率を有するものとなるのに対して、金属基材はそれ自体が光を透過しないため、その表面に透光性層を形成する必要がある。このような透光性層は屈折率を有するものであるが、後述のフェライト層を形成させる際に金属基材の腐食を防止するという観点から、透明な不動態皮膜となることが好ましい。特に金属基材としてアルミニウムなどの酸やアルカリ等と反応しやすい金属を使用する場合、欠陥のない透光性層の形成は腐食防止の効果を奏する。このような透光性層は、フェライト層の屈折率との差が大きい方がより彩度の高い干渉色が得られる。
このような透光性層は、金属基材の表面の全体に形成されていることが好ましいが、透光性層の作用を奏する限りその表面の一部において透光性層が形成されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものでない。このような透光性層は、たとえば金属酸化物、金属水酸化物または金属水和物で構成されていることが好ましく、より好ましくは酸化珪素(水和物)または酸化アルミニウム(水和物)で構成されていることが好適である。このような透光性層を採用することにより、金属光沢感に優れた被覆顔料を得ることができる。
ここで、上記の金属酸化物、金属水酸化物または金属水和物を構成する金属としては、Ti、Zr、Ce、Cr、Si、Alなどが例示できる。特に、原料コスト、被覆の容易性の点からSiまたはAlを用いる事が好ましい。
このような透光性層の形成方法は特に限定されないが、金属塩を溶解させた水溶液のpHを徐々に変化させることにより、金属基材の表面に金属水酸化物を析出させる均一沈殿法や金属アルコキシドを加水分解する事ことにより金属酸化物や金属水酸化物を金属基材上に析出させるゾルゲル法が例示できる。例えば酸化珪素(水和物)を形成する場合、その形成方法としては水中に金属基材を分散させて、攪拌しながら、水ガラスを徐々に添加し、その際にpHの上昇を抑え、pHを7付近に保持する事により形成する事ができる。
しかしながら、特にフレーク状の形状を有する金属基材を用いる場合、フレーク状に加工する工程において金属基材の表面は脂肪酸により覆われるため、水中に分散させる事ができない場合がある。この場合アルコールやその他の親水性有機溶剤中で透光性層を形成する事が好ましい。
この場合、例えば金属基材(この場合、金属基材と溶剤とを含む混合物であってもよい)と、珪素化合物を含む溶液とを、塩基性または酸性に保ちながらスラリー状態またはペースト状態で撹拌または混練する方法等が採用でき、これにより金属基材の表面に欠陥のない酸化珪素(水和物)からなる透光性層を形成することができる。
上記の珪素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等およびそれらの縮合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が例示される。
また珪素化合物を溶解させるための溶媒としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン等の親水性溶媒を用いる事が好ましい。また、該溶媒に、アルコキシシランを加水分解するのに充分な水をさらに配合する事が望ましい。
添加する珪素化合物の量は、形成する透光性層の厚みによって任意に選択する事ができる。また、反応温度は使用する溶媒により変わるが、使用する溶媒の沸点未満であれば良い。
このような透光性層の厚みは、1〜1000nmの範囲とすることが好ましい。1nm未満の場合にはフェライト層を付与する工程で金属基材が腐食される可能性がある。このような厚みを実現する為には、例えば透光性層として酸化珪素を被覆する場合であって金属基材が3m2/g程度の比表面積を有する場合、金属基材に対して概ね0.5質量%から250質量%の酸化珪素で被覆する事により達成する事ができる。
また、無彩色の被覆顔料を得る場合には、透光性層の厚みを概ね100nm以下とする事が好ましい。これは透光性層の厚膜化に伴う干渉色が発現するのを防ぐ為である。従って例えば黒色の被覆顔料を得る場合には、干渉色を発現させず、フェライト自体の黒色を付与する必要があるので、透光性層の厚みを概ね25nm程度としフェライト層を連続的に25nm程度の厚みで被覆すれば良い。
一方、有彩色の被覆顔料を得る場合には、フェライト層の厚みにもよるが透光性層の厚みを概ね100nm以上とする事が好ましい。これは高い屈折率を有するフェライト層と、低い屈折率を有する透光性層の屈折率差により光の干渉が起こる為である。また、透光性層の厚みが厚くなるほど、またはフェライト層が厚くなるほどカラートラベル性(視角による色相の変化)が大きくなり、視認性が向上する事から、特に偽造防止用の用途(セキュリティーコーティング組成物)に好適に使用する事ができる。
上述の様に、透光性層の厚みは厚いほど、カラートラベル性は強くなり、彩度も高くなる傾向があり、透光性層の厚みを厚くする事は技術的に可能である。しかしながら、透光性層を付与するための工程に多くの時間を要する為、生産性が大きく低下する事と、被覆顔料自体の隠ぺい力、すなわち単位重量あたりの下地を覆い隠す能力(着色力)が低下するため、1000nmを超える厚みは実用上非現実的である。
なお、透光性層の厚みは走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で被覆顔料の断面を観察することにより確認することができる。
<フェライト層>
本発明の被覆顔料は、基材の表面にフェライト層が形成された構成を有する。このようなフェライト層は、基材の表面の全体に形成する事が好ましいが、フェライト層の作用を奏する限りその表面の一部においてフェライト層が形成されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものでない。
このようなフェライト層は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされるフェライトを含み、かつ透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となることを特徴としている。
このようにフェライト層は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされるフェライトを含む限り他の成分が含まれていても良いが、好ましくはMxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされるフェライトで構成されていることが好適である。
フェライト層に含まれるフェライトは、基材(透光性層)の屈折率とは異なる屈折率を有するため、本発明の被覆顔料に光(可視光)が浸入すると干渉色が発現され、これにより優れた意匠性が示されることになる。そして、このような優れた効果は、上記の通り、フェライト層が大きな粒径のフェライト粒子を含まない場合に好適に発現され、以って「透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となる」ことを規定したものである。したがって、かかる視野においてフェライト粒子の数が4個以上となる場合には、上記のような優れた効果は発現されなくなる。
ところで、上記の規定は、透過型電子顕微鏡によるいずれかの視野(すなわち任意の視野)としているため、当該規定はより好ましくは、「透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で任意の10個の被覆顔料を観察した場合に、各被覆顔料毎に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数を測定した場合に、その平均値が3個以下となる」と規定することができる。
ここで、100万倍という倍率としたのは、これよりも倍率が低くなると長径が20nm前後以下のフェライト粒子を特定することが困難となるためである。
また、フェライト粒子の長径とは、透過型電子顕微鏡の視野平面におけるフェライト粒子の輪郭線上において最も離れた2点間の距離とする。また、フェライト粒子(フェライトからなる粒子)の形状を不定形または定形と規定したのは、フェライト粒子の形状を何等限定しないことを意味する。
なお、本発明においては、上記の通り、大きな粒径(すなわち長径20nm以上)のフェライト粒子が多数含まれる場合に優れた効果が示されなくなるため、フェライト粒子の粒径は小さくなればなるほど好ましいと考えられる。そして、本発明のフェライト層は、原則としてこのようなフェライト粒子の集合体と考えられるが、該フェライト粒子の長径が小さくなればなるほど、透過型電子顕微鏡の倍率を100万倍またはそれ以上高くしても該フェライト粒子を認識できなくなる場合がある。したがって、透過型電子顕微鏡によってフェライト粒子が認識できない場合であっても、本発明のフェライト層は極めて微細なフェライト粒子の集合体として捉えることができる。
このため、本発明のフェライト層は、「不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、該フェライト粒子は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、xは正の数を示す)で表わされる組成を有し、かつ一次粒径が20nm未満である」と規定することもできる。
ここで、不定形または定形のフェライト粒子とは、上記で説明したのと同様の意味である。また、一次粒径とは、2個以上のフェライト粒子が凝集している場合にその凝集体の粒径ではなく、個々のフェライト粒子単独の粒径であることを意味している。また、ここでいう粒径とは、上記で説明した長径を意味する。なお、このような一次粒径は、上記と同様にして被覆顔料を100万倍の倍率で観察することにより特定することができる。また、フェライト層が極めて少数の20nm以上の一次粒径を有するフェライト粒子を含む場合であっても、透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で任意の10個の被覆顔料を観察した場合に、20nm以上の一次粒径を有するフェライト粒子が観察されない場合、そのようなフェライト層は本発明の範囲に含まれるものとする。
なお、フェライト層を透過型電子顕微鏡により100万倍の倍率で観察した場合に、フェライト粒子の粒径が小さすぎてフェライト粒子を確認できない場合であっても、そのフェライト層は、一次粒径が20nm未満の不定形または定形のフェライト粒子の集合体であるものとみなすものとする。
上記におけるMxFe(3-x)4のMは、2価または3価の金属イオンを示す。該金属イオンは、2価または3価である限り、その金属の種類は特に限定されない。そのような金属としては、たとえばFe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、In、およびSnからなる群より選ばれる少なくとも1種とすることができる。このように上記Mは、1種または2種以上の金属を示すものである。
上記MがFeである場合は、MxFe(3-x)4はFe34(マグネタイト)となり、意匠性に優れるとともに人体に対しても安全であるため、特に好適である。人体に安全であることから、本発明の被覆顔料を化粧料に用いる場合に特に有効となる。
また、Fe34(マグネタイト)以外にも、NixFe(3-x)4、MgxFe(3-x)4、ZnxFe(3-x)4、CoxFe(3-x)4、AlxFe(3-x)4等を好適なものとして例示することができる。
本発明においてフェライト層は、以下のような方法により基材の表面に形成することができる。なお、以下では、MxFe(3-x)4において、MがFeである場合(すなわちマグネタイト)の場合を例にとり説明するが、MがFe以外の金属である場合においても採用できることは言うまでもない。
まず基材を水に分散させスラリー状態とすることによりスラリーを得、該スラリーを攪拌しながらそこにFe2+を含有する水溶液を徐々に添加する。この際、pHが変動するため、pH調整剤によりそのpHを6.5〜14の間に保持し、同時に酸化剤を用いてスラリーの酸化還元電位を概ね−160mV〜−750mVの間に保つ事によりフェライト層が基材上に被覆される。この手法はフェライトめっき法と言われており、基材上に存在する水酸基を介してフェライト粒子が成長する為、基材表面に水酸基を有していれば選択的にフェライト層を形成する事ができる。
ここで、Fe2+を含有する水溶液は、例えば塩化第1鉄、硝酸第1鉄、硫酸第1鉄などの2価の鉄を含有する塩を、不活性ガスで脱気したイオン交換水に溶解する事により容易に得る事ができる。なお、Fe2+を含有する水溶液は不要な酸化を抑制する為に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら使用する事が好ましい。またFe2+の量は、得ようとする被覆顔料の意匠性に応じて、基材の量を勘案して任意に調整する事ができる。
上記のpH調整剤は、Fe2+を含有する水溶液がスラリーに添加される際のpHを6.5〜14に保持できれるようなものを使用することができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの水溶液を適宜使用することができるが、これらに限定されるものではない。上記pHの範囲は6.5〜12が好ましいが、さらに好ましくは7.5〜10である。この範囲を超えるとフェライト層が形成されないか、あるいはフェライト以外の鉄含有化合物が混在した層となる。また特にpHが10.0を超えると基材表面が侵されたり、基材が金属基材である場合にはその腐食が発生する場合があるため好ましくない。なお、必要に応じて、急激なpHの変動を抑制する為にpH緩衝剤をスラリーに予め添加する事ができ、例えば酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウムなどを使用する事ができる。
反応時の温度は、スラリーが凍結または沸騰しない範囲であれば良く、好ましくは10℃〜80℃である。10℃を下回る場合にはFe2+の酸化反応が遅くなるため多くの時間を要し、80℃を超えると、特にpHが高い場合に、基材表面を侵すため好ましくない。
本発明において、Fe2+のみを金属源として用いる場合にはFe34(マグネタイト)が生成するが、Fe2+の一部を他の2価または3価の金属イオンに置き換えることも可能である。置き換え可能な金属としては、例えばMg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、In、Snなどが挙げられ、これらの塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩などを用いる事ができる。またこれらの金属の種類および添加量によって磁性の強さまたは耐熱性を変化させることができる。なお、このようにFe2+以外の金属イオンを併用する場合は、MxFe(3-x)4におけるMがFeとその併用される金属とを示すことになる。なお、この場合xは、Feと併用される金属との合計量を示すものとする。
なお、本発明の被覆顔料を化粧料に用いる場合、人体への毒性を考慮するとM=Fe、すなわちマグネタイトによりフェライト層を構成する事が好ましい。
また上記酸化剤としては、亜硝酸塩、硝酸塩、過酸化水素、酸素などが使用できるが、最も安価で毒性のない酸素(空気)を使用する事が好ましい。
上記のようにフェライト層は、基材の表面の全体に形成する事が好ましいが、フェライト層の作用を奏する限りその表面の一部においてフェライト層が形成されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものでない。すなわち、本発明においてフェライト層による基材の被覆状態は連続的であっても良いし、不連続的であっても良い。「連続的」または「連続的に被覆する」とは、基材の表面の全体にフェライト層を形成することを意味する。この場合、フェライト層を連続層とも呼ぶものとする。一方、「不連続的」または「不連続的に被覆する」とは、基材の表面の一部に(島状に)フェライト層を形成することを意味する。この場合、フェライト層を不連続層とも呼ぶものとする。
このようなフェライト層による被覆状態は、被覆顔料の表面または断面を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡によって確認する事ができる。フェライト層が連続的に基材を被覆するとは、被覆顔料の表面を走査型電子顕微鏡で観察した際、基材や透光性層の露出が無い状態を意味する。しかしながら、フェライト層が連続的に被覆されていたとしても、機械的な摩擦によりフェライト層が一部脱落する場合がある。しかし、この場合は本質的には連続的な被覆といえる。これとは逆に、基材や透光性層が露出している場合は、不連続的に基材を被覆していると判断できる。
有機溶剤を用いて樹脂組成物中の樹脂を溶解し、被覆顔料を抽出する事により、その表面を上記のような方法で観察する事により、フェライト層の被覆状態を確認する事ができる。
一方、フェライト層が後述の保護層で被覆されている場合や、樹脂組成物中の被覆顔料を直接抽出できない場合は、フェライト層による基材の被覆状態を観察する事が出来ない。しかしこの場合、該樹脂組成物の断面を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて観察し、被覆顔料を特定した後、その被覆顔料において直下の基材や透光性層の露出度合いを観察する事によりフェライト層の被覆状態を判断することができる。
基材に対するフェライト層の被覆量(形成量)は、フェライト層を形成する工程において、基材の量(または基材の総表面積)及び添加するFe2+の量によって制御する事ができる。添加するFe2+量が基材に対して少ない場合、基材表面を完全に被覆することができず、不連続的なフェライト層となる。一方、添加するFe2+の量が基材に対して十分な場合にはフェライト層が連続層となり(すなわち基材の表面全体に形成でき)厚みも増加していく。
基材をフェライト層により不連続的に被覆する場合、基材自体の色調を利用することができる。例えば約140nmの酸化珪素からなる透光性層を形成したアルミニウムフレーク(金属基材)を基材として用いる場合、フェライト層としてマグネタイトから成る厚みが10nm〜25nm程度の層により不連続的に基材上を被覆すると、磁性を有する無彩色のシルバーメタリック顔料を得る事ができる。さらにフェライト層としてマグネタイトから成る厚みが20nm程度の層により不連続的に基材上を被覆すると、磁性を有する黄味を帯びたシルバーメタリック顔料を得る事ができる。
さらに被覆状態が連続的な状態となりフェライト層が連続層となると、特に下層の透光性層が100nmより厚い場合で干渉色が強くなり、彩度または輝度が高い被覆顔料を得る事ができる。例えば約140nmの酸化珪素からなる透光性層を形成したアルミニウムフレーク(金属基材)を基材として用いる場合、フェライト層としてマグネタイトから成る厚みが30nm程度の層により連続的に基材上を被覆すると、磁性を有する高彩度のピンク系の被覆顔料(メタリック顔料)を得る事ができる。
さらにフェライト層が連続的な状態でかつ厚みが増していくとカラートラベル性が強くなる。例えば約140nmの酸化珪素からなる透光性層を形成したアルミニウムフレーク(金属基材)を基材として用いる場合、フェライト層としてマグネタイトから成る厚みが100nm程度の層により連続的に基材上を被覆すると、観察する角度により緑から紫色に変化する被覆顔料(メタリック顔料)を得る事ができる。
しかしながら、フェライト層の厚みを厚くする事は技術的には可能であるが、被覆工程に多くの時間を要する為、生産性が大きく低下するとともに、被覆顔料自体の隠ぺい力、すなわち単位重量あたりの下地を覆い隠す能力(着色力)が低下する。また、特にpHが10以上においてはフェライト層の形成工程が長くなると基材が長時間、塩基性雰囲気に曝されることとなり、基材表面が侵されるので、フェライト層の厚みを250nmを超える厚みとすることは実用上非現実的である。一方、フェライト層の厚みを1nm未満とすると、フェライト層の効果を発現できなくなる可能性がある。したがって、フェライト層の厚みは、1〜250nmとすることが好ましく、5〜200nmとすることがより好ましい。
このようなフェライト層の厚みは、例えば比表面積が概ね3m2/gの基材を用い、またフェライト層としてマグネタイトを形成する場合、基材に対して1〜150質量%のマグネタイトを被覆する事で達成される。なお、前述の通り、フェライト層の厚みは走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で被覆顔料の断面を観察する事で確認する事ができる。また、形成されたフェライト層の組成的同定は、粉末X線回折(XRD)により確認する事ができる。
なお、上記で説明したとおり、本発明のフェライト層を構成するフェライト粒子の粒子径(長径)は、小さいほど彩度や輝度が高い被覆顔料(すなわち意匠性に優れる被覆顔料)が得られる。フェライト粒子の粒子径を小さくするには、Fe2+を添加する際に、反応スラリー中にポリマーを共存させることが好ましい。これは、Fe2+の周囲をポリマーが覆うことでフェライト粒子の成長を抑制する為ではないかと考えられる。このようなポリマーとしては、カルボキシル基を含有するポリマーが特に好ましい。
したがって、本発明のフェライト層は、ポリマーを含むことが好ましく、該ポリマーとしてはカルボキシル基を含有するポリマーとすることが好ましい。なお、このようなポリマーとしては、カルボキシル基を含有するポリマー以外に、たとえばポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。
また、カルボキシル基を含有するポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸アンモニウム、ポリマレイン酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム共重合体、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記のようなポリマーを1種または2種以上の混合物として用いる事ができる。また、このようなポリマーは粉体であっても、水溶液であっても、どちらも好適に用いる事ができる。
なお、上記のようなポリマーの分子量は特に限定されないが、500000以下の重量平均分子量を有することが好ましく、250000以下の重量平均分子量を有することがより好ましい。その重量平均分子量が500000を超える場合には、Fe2+の酸化が抑制されフェライトの形成が阻害されるという傾向がある。
なお上記のようなポリマーを使用しない場合、反応初期段階から大部分のフェライト粒子が粒子径20nm以上の状態で析出する傾向にある。従ってこの場合、フェライト層の被覆率が高く、フェライト層が厚くなったとしても、概ね20nm以上のフェライト粒子の集合体としてフェライト層が形成される。
一方、フェライト層形成時に上記のようなポリマーが共存する場合、フェライト粒子は非常に細かい状態で形成される。従ってフェライト層が連続、不連続に関わらず析出したフェライト粒子を透過型電子顕微鏡で100万倍程度以上の倍率で観察すると一次粒径は20nm未満となる事が確認できる。この様な微細なフェライト粒子からなるフェライト層を有する被覆顔料は彩度や輝度が優れたものとなる。
本発明において、このようなポリマーは反応時(反応溶媒中)に存在すれば良く、反応スラリーに予め添加する事もできるし、Fe2+の添加に併せて徐々に添加しても良い。
本発明において、ポリマーの量は、反応溶媒であるイオン交換水中で0.05質量%から5質量%の範囲で好適に用いる事ができる。0.05質量%未満では、ポリマーの量が少なすぎて効果を示さない傾向があり、5質量%を超えるとFe2+の酸化反応が抑制される為、フェライトが生成しにくい傾向を示す。
<保護層>
本発明の被覆顔料は、必要に応じて、フェライト層上に保護層を有することができる。このような保護層は、外部からの酸素、水分、酸、アルカリ、紫外線などに対して被覆顔料を保護する作用を有するものである。したがって、保護層としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属水和物、樹脂、またはこれらの組合せのいずれかにより構成されることが好ましい。例えば酸素や水分から被覆顔料を保護する場合には珪素またはアルミニウムの酸化物または水酸化物、またはこれらの混合物を用いる事が好ましく、一方、酸、アルカリから被覆顔料を保護する場合には樹脂を用いる事が好ましい。さらに、このような保護層としては、珪素またはアルミニウムの酸化物または水酸化物、またはこれら混合物及び樹脂を層状に形成する事(すなわちこれらの組合せ)も可能である。
なお、このような保護層は、フェライト層の表面の全体を被覆する事が好ましいが、保護層の作用を奏する限りその表面の一部において保護層が形成されていない部分が含まれていても良い。
ここで、保護層として金属酸化物または金属水酸化物である珪素の酸化物または水酸化物を形成する場合は、上記透光性層と同様に水ガラスの中和反応を利用したり、被覆顔料の分散液と珪素化合物を含む溶液とを、塩基性または酸性に保ちながらスラリー状態またはペースト状態で撹拌または混練する方法等が採用できる。
また、保護層として金属酸化物または金属水酸化物であるアルミニウムの酸化物または水酸化物を形成する場合は、例えば被覆顔料を水中に分散し、攪拌しながら硫酸アルミニウムと尿素を添加し70〜100℃で反応させる事により被覆顔料(のフェライト層)上に水酸化アルミニウムを被覆し、ついで200℃以上で乾燥(または焼成)させる事でベーマイトや酸化アルミニウムに転換させることにより保護層を形成することができる。
一方、保護層として樹脂を形成する場合は、特に限定されるものではないが、フェライト層を形成した被覆顔料を必要に応じて非極性溶媒で洗浄および濾過した後、非極性溶媒に分散し、重合性モノマーと重合開始剤とを添加し、撹拌しながら加熱してモノマーを重合させ、被覆顔料の表面に樹脂を析出させる方法等が好ましく採用され得る。重合反応は、非酸化性雰囲気、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行なう事が望ましい。雰囲気が酸化雰囲気になると、重合反応に寄与するラジカルが消滅しやすくなり、モノマーの重合効率が低下する傾向がある。反応温度は50〜150℃、より好ましくは70〜100℃が好適である。反応温度が50℃以上である場合、重合効率が良好であり、150℃以下である場合溶媒の過度の蒸発が防止され、作業環境や安全性の面で好ましい。
上記の非極性溶媒としては、特に炭化水素系溶媒が好ましい。非極性溶媒の好ましい例としては、ミネラルスピリット、石油ベンジン、ソルベントナフサ、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレン等の溶媒が好ましく例示される。このように非極性溶媒を用いると、樹脂の析出効率が良好であり、十分な量の保護層を容易に被覆することができる。
上記において本発明の保護層として特定の例を挙げて説明したが、本発明の保護層として使用できるものを以下に例示する。
すなわち、金属酸化物、金属水酸化物または金属水和物を構成する金属としては、Ti、Zr、Ce、Cr、Si、Alなどが例示できる。特に、原料コスト、被覆の容易性の観点からSiまたはAlを用いる事が好ましい。
また、樹脂としては、カルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマー、3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマー、およびベンゼン核を有する重合性モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーから合成された重合体を好適な例として例示できる。
上記のカルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマーとしては下記のものが例示される。なお、カルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマーの添加量は、樹脂を構成するモノマー成分全体の0.1〜10質量%の範囲内とすることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内とすることがより好ましい。該添加量がこの範囲を外れる場合、良好な耐薬品性(すなわち酸またはアルカリから保護する性能)が得られにくくなる傾向がある。
カルボキシル基および/または燐酸基を有する反応性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアッシドフォスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート等が挙げられる。
3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマーとしては下記のものが例示される。なお多官能性アクリル酸エステルモノマーの添加量は、樹脂を構成するモノマー成分全体の30〜90質量%の範囲内とすることが好ましく、40〜80質量%の範囲内とすることがより好ましい。該添加量がこの範囲を外れる場合、良好な耐薬品性(すなわち酸またはアルカリから保護する性能)が得られにくくなる傾向がある。
3官能以上の多官能性アクリル酸エステルモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。このような多官能アクリル酸エステルモノマーは樹脂の三次元架橋に寄与し、有機溶剤および水に対し、保護層(樹脂層)を不溶化する効果を有する。
このような樹脂からなる保護層は、上記のようなモノマーと重合開始剤とから合成されることができる。重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、などのパーオキサイド類、および/またはアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が好ましく例示できる。
重合開始剤の配合量は、モノマー成分100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることがより好ましい。また該配合量は、モノマー成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることがより好ましい。該配合量が0.1質量部以上の場合、重合反応が良好に進行し予定する量の保護層を容易に形成できる。また、重合反応が急激に進行した場合、生成重合体の被覆顔料への吸着が追いつかず、遊離のポリマー粒子が生成することによって系全体の粘性が急激に上昇し、凝固が生じ易くなる傾向がある。該配合量が10質量部以下の場合には重合の急激な進行が防止されるため、上記のような不都合が生じ難い。
<樹脂組成物>
本発明は、被覆顔料を含有する樹脂組成物にも関する。このような樹脂組成物としては、塗料、インク、塗料により形成される塗膜、インクにより形成される印刷物、樹脂成形体等が含まれる。なお、以下では塗料およびインクをまとめてコーティング組成物とも記す。
まず、塗料およびインクとしては、有機溶剤型および水性のいずれも含まれるが、水性塗料または水性インクにおいては、耐光性、耐候性の向上が重要な課題であるため、本発明の被覆顔料は特に水性塗料または水性インクに対して有効に配合される。
このようなコーティング組成物における被覆顔料の配合量は、コーティング組成物全体の0.1〜30質量%の範囲内とすることが好ましい。該配合量が0.1質量%以上である場合メタリック効果等の装飾効果が良好であり、30質量%以下である場合コーティング組成物の耐候性、耐食性、機械強度等が良好である。コーティング組成物における被覆顔料の配合量は、コーティング組成物全体の1〜20質量%の範囲内とされることがより好ましい。
コーティング組成物は、本発明の被覆顔料に樹脂を適宜配合して得られる。このような樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂等が例示できる。
なお、このようなコーティング組成物には、本発明の被覆顔料および樹脂に加え、他の着色顔料、体質顔料、染料等を併用しても良い。併用される着色顔料としては、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ペリレン、アゾレーキ、酸化鉄、黄鉛、カーボンブラック、酸化チタン、パールマイカ等を例示できる。
さらにコーティング組成物には、上記の成分の他、添加剤として、水、有機溶剤、界面活性剤、硬化剤、紫外線吸収剤、静電気除去剤、増粘剤等も適宜配合され得る。
上記のようなコーティング組成物を用いて塗膜を形成する場合、電着塗装等による下塗り層や中塗り層の上に該塗膜を形成しても良く、またこのようなコーティング組成物による塗膜の上にトップコート層がさらに形成されても良い。
このようなコーティング組成物は、従来のコーティング組成物と同様の用途に用いられることは勿論のこと、特に偽造防止用としても好適に用いる事ができる。
磁性を持たないカラートラベル性を有する通常の顔料は、装飾用の顔料として市場から容易に入手することができる。このため、例えば偽造者が銀行券を偽造する際にカラーコピーを行ない、更にカラートラベル性を有する顔料を印刷したり塗装したりする事により、偽造をする可能性がある。これに対して本発明の被覆顔料を含むコーティング組成物は、カラートラベル性の様な色の視認性による偽造防止効果に加えて、磁石により特定の配向をさせることでその配向模様による視認性の向上が期待できる。さらに磁性の有無による識別も可能になる事から、偽造防止用として好適に使用する事ができる。
また、このようなコーティング組成物は、電波遮蔽用としても好適に使用することができる。通常、電波遮蔽コーティングは電波吸収材料である各種フィラーをコーティング組成物に含有させる事で提供される。電波吸収材料は導電性電波吸収材、誘電性電波吸収材、磁性電波吸収材に大別され、特に磁性電波吸収材にはフェライトが用いられる。しかしながら、これら電波吸収材料は金属粉末、カーボンブラック、フェライトなど何れも無彩色のフィラーが用いられるので、意匠性を有していない。本発明のコーティング組成物は色彩を有するため、意匠性を兼ね備えた電波遮蔽コーティング組成物とすることができる。
一方、上記の樹脂成形体を構成する樹脂は、特に限定されず、従来の樹脂成形体に用いられている樹脂をいずれも使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
このような樹脂成形体における被覆顔料の配合量は、樹脂100質量部に対して0.005〜5質量部程度とすることが好ましく、0.01〜2質量部とすることがより好ましい。0.005質量部未満の場合は、一般に着色力が乏しくなる傾向にある。また、5質量部を超える場合は、ムラが発生したり、コスト高となるおそれがある。但し、被覆顔料の形状、樹脂の種類、最終製品の用途等によっては上記範囲外となっても良い場合がある。
このような樹脂成形体は、被覆顔料の他、必要に応じて他の着色剤(顔料、染料)、安定剤、分散剤、耐候剤、帯電防止剤、粘度調整剤、離型剤、発泡剤、難燃剤等の公知の添加剤も適宜配合することができる。
またこのような樹脂成形体は、公知の樹脂成形体と同様にして製造することができる。例えば、樹脂、被覆顔料、その他の添加剤を均一に混練した後、成形することにより樹脂成形体を得ることができる。成形方法も特に制限されず、例えば射出成形法、押し出し成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法等の公知の成形方法を採用することができる。
<塗布物>
本発明は、上記の樹脂組成物のいずれかを基体に塗布した塗布物にも関する。このような塗布物を構成する基体の素材は、特に限定されず、例えば金属、樹脂、木材、紙、皮革等を挙げることができる。
そして、このような塗布物としては、例えば自動車、バイクなどの車体、蓋材、包装材、雑誌、ポスターなどの印刷物、紙幣、パスポート、免許証、金券などのセキュリティー性が必要な塗布物等を挙げることができる。
<化粧料>
本発明は、被覆顔料を含有する化粧料にも関する。従来、化粧料に光沢感や光輝感を付与するためパール顔料やアルミニウム顔料が用いられてきたが、パール顔料については隠蔽性に乏しく、アルミニウム顔料についてはグレー色を呈するため着色顔料を配合しても鮮明な色合いが得られないという問題があった。アルミニウム顔料についてはさらに水と反応しやすいため、水を含有する化粧料には使用できないという問題もあった。本発明の被覆顔料は、上記のような問題を解消したものであり、化粧料に好適に含有することができる。
なお、本発明の被覆顔料は、磁石によって任意の模様に配向させる事ができるので、被覆顔料自体の意匠性に加えて、磁石により任意の模様を表現する事ができる。
以下、被覆顔料を含有する化粧料についてさらに詳述する。
(化粧料の種類)
化粧料としては、メーキャップ化粧料(口紅、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、ネイルエナメルなど)、毛髪化粧料(ヘアージェル、ヘアワックス、ヘアトリートメント、シャンプー、ヘアマニキュアジェルなど)、基礎化粧料(下地クリーム)等を挙げることができる。
(構成成分)
化粧料は、主に油分および他の成分から構成される。
油分としては、油脂(オリーブ油、ひまし油等)、ロウ類(ミツロウ、カルナバロウ、ラノリンなど)、炭化水素油(流動パラフィン、スクワラン、ポリブテンなど)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリミリスチン酸グリセリルなど)、高級脂肪酸(オレイン酸、イソステアリン酸など)、高級アルコール(イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなど)、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、フッ素化合物(パーフルオロポリエーテルなど)等を挙げることができる。
他の成分としては、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、水溶性高分子、皮膜形成剤、非水溶性高分子、高分子エマルション、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、紫外線吸収剤、ビタミン類、酸化防止剤、抗菌剤、香料、水等を挙げることができる。
なお化粧料中の被覆顔料の配合量は、0.1〜99質量%とすることが好ましく、1〜80質量%とすることがより好ましい。また、本発明の化粧料は、通常の化粧料の製造方法により製造することができる。特に分散方法としては、ディスパー、ロールミル等が好適である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明における各種の評価方法等は以下の通りである。
<色調評価>
被覆顔料2.0gに対して、バインダーとして常乾型アクリル樹脂バインダー(商品名:「ニッペアクリルオートクリヤー」、日本ペイント株式会社製)10.0gを加え、均一になるまで撹拌混合することにより被覆顔料含有コーティング組成物を作製した。
次いで、100μm間隙を有するアプリケータを用いて、上記で得られたコーティング組成物を100μm厚のPETフィルム上に塗布し常温で自然乾燥させることにより評価用塗膜を作製した。
色調の評価は、X−Rite MA68IIマルチアングル分光測色計を用いて、塗膜の明度と彩度とを測色することにより行なった。測色値は、L***表色系(CIE1976)で表わし、測色は入射光に対して正反射光から15°ずれた光を検出した。
<磁性の確認>
被覆顔料1.0gを50ccガラスビーカーに投入し、イオン交換水10gを加えスラリーを調製した。次にフェライト磁石(φ20mm、厚み5mm、表面磁束密度100mT)をビーカー底面外側に設置し、目視にて磁性の有無を確認した。なお、被覆顔料が磁性を有さない場合スラリーに変化は起こらないが、被覆顔料が磁性を有する場合、被覆顔料は磁気により配向したり、磁石自身に集まるので目視により磁性を有していることを確認できる。
<透光性層およびフェライト層の同定>
上記の色調評価用に作製した塗膜に対して、イオンミリング装置を用いてその塗膜の断面を観察できるようにした。次いで走査型電子顕微鏡(商品名:「SU8020」、株式会社日立ハイテクノロジー社製)を用いて倍率5万倍以上でその断面を観察した。任意の50の断面に対してこのような観察を行なうことにより、被覆顔料の透光性層およびフェライト層の厚みを測定し、その平均値を各層の厚みとした。
<フェライト粒子の粒径の同定>
被覆顔料に対してFIBにて被覆顔料の断面中に少なくとも透光性層(被覆顔料を構成する基材が透光性基材であって、透光性基材の表面にフェライト層を形成した場合には当該透光性基材)及びフェライト層が同一視野で観察できるように薄片状サンプルを作製した。次いでTEM(透過型電子顕微鏡、商品名:「TITAN80−300」、FEI社製)を用いて加速電圧200kV、倍率100万倍(縦170nm×横170nmの視野範囲)でその断面を観察した。任意の10個の被覆顔料を選びフェライト層を構成するフェライト粒子の長径を測定し、その平均値をフェライト粒子の粒径とした。
<被覆顔料中のフェライト層の特定>
被覆顔料を測定用セルに均一に充填し、X線回折装置(商品名:「RINT2000」、株式会社リガク製)により被覆顔料の構成(フェライト層)を特定した。なお、測定時の条件はX線源としてCuKα線を用い、管電圧40kV、管電流30mA、サンプリング幅0.05°、スキャン速度0.2°/minにて測定を行なった。
<フェライト層の密着性評価>
被覆顔料1.0gとイオン交換水10gをガラス製の50ccビーカーに投入しスラリーを作製した。次いで超音波槽にこの50ccビーカーの高さの約半分まで水を張り、45kHz、100Wの出力で15分間、ビーカー中のスラリーに超音波を照射した。照射後、スラリーを吸引ろ過器で固液分離し、次いでイソプロピルアルコール(以下IPAと略す)で洗浄後、吸引ろ過しそのまま乾燥粉とした。
得られた被覆顔料(乾燥粉)は、上記の色調評価に記載の方法と同じ方法で塗膜を形成し(超音波照射前の被覆顔料についても同様に塗膜を形成し)、超音波照射前後の色差(ΔE*15)を比較する事によりフェライト層の密着性を評価した。ΔE*15が小さいほど超音波照射前後においてフェライト層の欠落が少なく密着性が高いことを示す。
<耐熱性評価>
被覆顔料10gをビーカーに採取し、150℃の大気雰囲気下で30分間保持した。その後常温に戻し、加熱処理された被覆顔料を得た。次に、この加熱処理被覆顔料2.0gに対して、バインダーとして常乾型アクリル樹脂バインダー(商品名:「ニッペアクリルオートクリヤー」、日本ペイント株式会社製)10.0gを加え、均一になるまで撹拌混合することにより被覆顔料含有コーティング組成物を作製した。
次いで、100μm間隙を有するアプリケータを用いて、上記で得られたコーティング組成物を100μm厚のPETフィルム上に塗布し常温で自然乾燥させることにより評価用塗膜を作製した。また同様にして、加熱処理されていない被覆顔料を用いて評価用塗膜を作製した。
そして、これらの塗膜について、上記の色調評価と同様にして測色値を得、加熱前後の色差ΔE*15を求めた。ΔE*15が小さいほど熱によるフェライト層の変化(変質)が少なく耐熱性が良好であることを示す。
<耐薬品性評価>
被覆顔料2.0gに対して、バインダーとして常乾型アクリル樹脂バインダー(商品名:「ニッペアクリルオートクリヤー」、日本ペイント株式会社製)10.0gを加え、均一になるまで撹拌混合することにより被覆顔料含有コーティング組成物を作製した。
次いで、100μm間隙を有するアプリケータを用いて、上記で得られたコーティング組成物を100μm厚のPETフィルム上に塗布し常温で自然乾燥させることにより評価用塗膜を作製した。
次に50℃に保持したフタル酸塩pH標準液(25℃、pH4)に、上記の評価用塗膜を浸漬し24時間保持した。24時間後、フタル酸塩pH標準液から評価用塗膜を取り出し、イオン交換水でよく濯いだ後、水分をふき取り24時間室温で乾燥させた。乾燥後の評価用塗膜の測色値を上記の色調評価と同様にして得た。
一方、上記のようなフタル酸塩pH標準液に浸漬させていない評価用塗膜についても同様に測色値を得た。そして、これら両者の測色値から色差ΔE*15値を求めた。ΔE*15が小さいほど薬品によるフェライト層の変化(変質)が少なく耐薬品性が良好であることを示す。
<実施例1>
(透光性層)
過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水3gに金属モリブデン粉末0.3gを少しずつ加え、反応させて得られた溶液をIPA1000gに溶解し、IPA溶液を得た。次いで、このIPA溶液に、フレーク状の金属基材として市販のフレーク状アルミニウム顔料(商品名:「5422NS」、東洋アルミニウム(株)製、固形分:75質量%、平均粒径:19μm)を133g(すなわちアルミニウム分として100g)加え、75℃で1時間攪拌混合してスラリーを得た。
その後、このスラリーを攪拌し75℃に保持しながらアンモニア水と水80gとを加えスラリーのpH値を10.0に調整した。pH値を調整したスラリーに、テトラエトキシシラン150gを450gのIPAに溶解した溶液を徐々に滴下し、さらに75℃で6時間攪拌混合した。その後、スラリーをフィルターで固液分離し、次いで150℃のオーブンに24時間入れ、溶剤分を除去する事でフレーク状の金属基材の表面に約125nmの厚みの酸化珪素からなる透光性層を形成した。なお、透光性層の厚みは<透光性層およびフェライト層の同定>により求め、その結果を表1に示す。
(フェライト層)
攪拌機、pH測定電極、ガス導入管を備え付けた密閉反応器に、上記で透光性層を形成したフレーク状の金属基材100gおよび窒素にて十分に脱気したイオン交換水5000gを加え、イオン交換水中に金属基材を分散させたスラリーを得た。
次いで、ポリアクリル酸(重量平均分子量:250000)1.0g、酢酸ナトリウム40gを上記のスラリーに投入しスラリーが60℃になるまで攪拌しながら加温した。
次に、三角フラスコに硫酸第一鉄・7水和物55gと窒素にて十分に脱気したイオン交換水100gを投入し、窒素ガスを通気しながら硫酸第一鉄が溶解するまで攪拌し、硫酸第一鉄水溶液を得た。その後、この硫酸第一鉄水溶液を、攪拌中の上記スラリーに5時間掛けて徐々に添加した。この際、5wt%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpHが6.5〜10.0の範囲に収まるようにした。また10分間隔でスラリーのサンプリングを行ない、酸化還元電位が−300mV〜−500mVの範囲となる様に空気を反応器内に導入した。このようにして硫酸第一鉄水溶液を添加し終わった後、さらに1時間攪拌を続け、その後、常温になるまで放冷し、ろ過、水洗を行なった。次いで、その後IPA洗浄を行ない乾燥粉となるまでろ過を続けた。
この様にして透光性層をマグネタイトからなるフェライト層で被覆した本発明の被覆顔料を得た。この被覆顔料は鮮やかなゴールド色を呈し(表1の測色値参照、なお表1の被覆顔料の測色値は上記の<色調評価>による)、また上記の<磁性の確認>および<フェライト層の密着性評価>から、磁性を有しており、フェライト層と基材とが強く密着していることが確認された。さらに、上記の<被覆顔料中のフェライト層の特定>によりマグネタイトに帰属されるピークが観察され(図1)、また上記の<透光性層およびフェライト層の同定>により、得られた被覆顔料の表面は完全にマグネタイト(フェライト層)で覆われている事(すなわちフェライト層が連続的に形成されていること)が確認された。以上の結果を表1に示す。なお、表1中、フェライト層の「連続性」において「連続的」とは、このようにフェライト層が連続的に形成されていることを意味し、「磁性」において「あり」とは、上記のように磁性を有していることを意味する。
また、上記の<フェライト粒子の粒径の同定>および<透光性層およびフェライト層の同定>により、上記のフェライト層は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子(マグネタイト粒子)の集合体からなる厚さ約50nm程度の層であり、そのフェライト層が長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含んでいないことが確認された(図2)。その結果を合わせて表1に示す。なお、表1中、フェライト層の「粒子径」において「20nm未満」とは、このようにフェライト層が一次粒径20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体から構成され、長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が観察されなかったこと(すなわち、長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含んでいないと判断できること)を示している。また、フェライト層の「厚み」とは、上記で確認された厚みを示す。
なお、図2の左側が本実施例1の測定結果を示すTEM像であり、下段(1000000倍で観察)は上段(125000倍で観察)を拡大したものである。上段および下段の濃色部(黒色部)がフェライト層を示しているが、明確な形状のフェライト粒子は確認できない(すなわち、一次粒径が20nm未満の微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体とみなされる)。いずれにせよ、長径が20nm以上のフェライト粒子が存在しないことは明らかである。
<実施例2>
実施例1においてポリアクリル酸の重量平均分子量を500000にした事を除き、その他は実施例1と同様にして本発明の被覆顔料を作製した。この様にして得られた被覆顔料は鮮やかなゴールド色を呈し、また磁性を有しており、さらにフェライト層と基材とが強く密着していることが確認された。また実施例1と同様にマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また被覆顔料の表面は完全にマグネタイト(フェライト層)で覆われている事が確認された。これらの結果を表1に示す。なお、評価方法および表1中の記載項目の意味内容は実施例1と同じである。
また、実施例1と同様の倍率が100万倍のTEM観察により、得られた被覆顔料は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子(マグネタイト粒子)の集合体からなる厚さ約60nm程度のフェライト層により被覆されている事およびそのフェライト層が長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含んでいないことが確認された。以上の結果も併せて表1に示すが、その記載項目の意味内容は実施例1と同じである。
<実施例3>
実施例1においてポリアクリル酸の代わりにポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(重量平均分子量:40000)を用いたことを除き、その他は実施例1と同様にして本発明の被覆顔料を作製した。このようにして得られた被覆顔料は鮮やかなゴールド色を呈し、また磁性を有しており、さらにフェライト層と基材とが強く密着していることが確認された。また実施例1と同様にマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また被覆顔料の表面は完全にマグネタイト(フェライト層)で覆われている事が確認された。これらの結果を表1に示す。なお、評価方法および表1中の記載項目の意味内容は実施例1と同じである。
また、実施例1と同様の倍率が100万倍のTEM観察により、得られた被覆顔料は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子(マグネタイト粒子)の集合体からなる厚さ約55nm程度のフェライト層により被覆されている事およびそのフェライト層が長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含んでいないことが確認された。以上の結果も併せて表1に示すが、その記載項目の意味内容は実施例1と同じである。
<比較例1>
実施例1においてフェライト層形成時にポリアクリル酸を添加しないことを除き、その他は実施例1と同様にして被覆顔料を作製した。
このようにして得られた被覆顔料は磁性は有していたものの、彩度が低いゴールド色を呈していた。またフェライト層と基材との密着性が低いことに起因する色調の低下がみられた。また実施例1と同様にマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また被覆顔料の表面は完全にマグネタイト(フェライト層)で覆われている事が確認された。これらの結果を表1に示す。なお、評価方法および表1中の記載項目の意味内容は実施例1と同じである。
また、実施例1と同様の倍率が100万倍のTEM観察により、得られた被覆顔料は、長径20nm以上のフェライト粒子(マグネタイト粒子)が基材表面に対して水平方向および垂直方向に多数(3個以上)堆積した集合体により被覆されている事が確認された(図2)。その結果を合わせて表1に示す。なお、表1中、フェライト層の「粒子径」において「20nm以上」とは、実施例1と同様のTEM観察により長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が4個以上存在することを示している。
なお、図2の右側が本比較例1の測定結果を示すTEM像であり、下段は上段を拡大したものである。上段および下段の濃色部(黒色部)がフェライト層を示しているが、そのフェライト層中に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が多数(4個以上)確認できる。
表1より明らかなように、実施例1〜実施例3の被覆顔料は、フェライト層を形成するときにポリマー(カルボキシル基を含有するポリマー)を共存させた事により、一次粒径が20nm未満という非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体からなるフェライト層(すなわち長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含まないフェライト層)が形成されており、長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含むフェライト層が形成された比較例の被覆顔料に比し、優れた意匠性(L*15値より明度が高く、C*15値により彩度が高い)を有していることが分かる。
<実施例4>
実施例1で作製した被覆顔料100gをIPA1000gに分散し、75℃で1時間攪拌混合してスラリーを得た。
次いで、上記スラリーを攪拌しながら75℃に保持しつつ、アンモニア水と水80gとを加えスラリーのpH値を10.0に調整した。このpH調整したスラリーに、テトラエトキシシラン20gを60gのIPAに溶解したものを徐々に滴下し、さらに75℃で6時間攪拌混合した。その後、スラリーをフィルターを用いて固液分離することにより、被覆顔料表面に約10nmの酸化珪素からなる保護層を形成した本発明の被覆顔料を得た。
得られた被覆顔料に対して上記の<耐熱性評価>および<耐薬品性評価>を実施し、優れた耐熱性及び耐薬品性を有する事を確認した。その結果を表2に示す。
<実施例5>
実施例1で作製した被覆顔料100gとミネラルスピリット1000gとを気密性の高い容器に入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.2g、エポキシ化ポリブタジエン4g、トリメチロールプロパントリアクリレート10g、ジビニルベンゼン1.8g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.75gを添加し、80℃で6時間重合した。重合終了後、スラリーをフィルターを用いて固液分離することにより、被覆顔料表面に約10nmのアクリルポリマー(樹脂)からなる保護層を形成した本発明の被覆顔料を得た。
得られた被覆顔料に対して上記の<耐熱性評価>および<耐薬品性評価>を実施し、優れた耐熱性及び耐薬品性を有する事を確認した。その結果を表2に示す。
<実施例6>
実施例4で作製した酸化珪素からなる保護層を形成した被覆顔料100gとミネラルスピリット1000gとを気密性の高い容器に入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.2g、エポキシ化ポリブタジエン4g、トリメチロールプロパントリアクリレート10g、ジビニルベンゼン1.8g、およびアゾビスイソブチロニトリル0.75gを添加し、80℃で6時間重合した。重合終了後、スラリーをフィルターを用いて固液分離することにより、被覆顔料表面に酸化珪素およびアクリルポリマー(樹脂)の順で積層された合計約20nmの保護層を形成した本発明の被覆顔料を得た。
得られた被覆顔料に対して上記の<耐熱性評価>および<耐薬品性評価>を実施し、優れた耐熱性及び耐薬品性を有する事を確認した。その結果を表2に示す。
表2は、実施例4〜6の被覆顔料とともに実施例1の被覆顔料の耐熱性評価と耐薬品性評価を示している。表2より明らかなように、実施例4〜6の被覆顔料は、実施例1の被覆顔料よりも耐熱性および耐薬品性に優れていた。
なお、表2中、保護層の「一層目」とはフェライト層上に形成される保護層を示し、「二層目」とは一層目の保護層上に形成される保護層を示す。
<実施例7>
ボールミルを用いて、粒子径約5μmの銅粉300gをフレーク化した。このボールミルには、有機溶媒であるミネラルスピリット2000gと粉砕助剤であるオレイン酸3gと磨砕メディアである球状のスチールボールとが装填されており、粉砕時間(フレーク化処理時間)は10時間とした。
次いで、ボールミル内のスラリーを吸引ろ過にて固液分離し、さらにIPAで洗浄した後、再び吸引ろ過した。さらに100℃の窒素雰囲気下で12時間乾燥することにより、粒子径約17μmの銅フレークを得た。得られた銅フレークは赤みのある金属光沢を有していた。
続いて、実施例1で用いたフレーク状アルミニウム顔料に代えて、この銅フレーク250gをフレーク状の金属基材として用いることを除き、他は実施例1と同様にしてフレーク状の金属基材の表面に約160nmの厚みの酸化珪素からなる透光性層を形成した。
次に、この透光性層を形成したフレーク状の金属基材200gを用いて、実施例1と同様にしてこの金属基材を被覆する厚さ70nmの連続的なフェライト層を形成することにより、本発明の被覆顔料を作製した。
この被覆顔料は、実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有しており、またメタリック調の緑色を呈していた。また、実施例1と同様にしてフェライト層が形成されている事を確認した。
すなわち、この被覆顔料のフェライト層は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が含まれていないものであった。
<実施例8>
実施例1において、酸化珪素からなる透光性層を形成したフレーク状の金属基材(フレーク状アルミニウム顔料)に代えて、基材としてフレーク状アルミナ粉末(キンセイマテック社製、グレード:05025、粒子径5μm、厚み200nm)を用いることを除き、他は実施例1と同様にしてこの基材(透光性基材)を約50nmの連続的なフェライト層で被覆することにより本発明の被覆顔料を作製した。
この被覆顔料は、実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有しており、また濃い透明感のある紫色を呈していた。また、実施例1と同様にしてフェライト層が形成されている事を確認した。
すなわち、この被覆顔料のフェライト層は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が含まれていないものであった。
<実施例9>
実施例1において、テトラエトキシシランの量を増やし、透光性層を140nmの厚みで形成したこと、および硫酸第一鉄・7水和物の量を適宜減らすことを除き、他は実施例1と同様にして被覆顔料を作製した。
この様にして得られた被覆顔料は鮮やかなピンク色を呈し、また実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有していた。また実施例1と同様の方法によりマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また実施例1と同様にしてフェライト層は基材を連続的に被覆するようにして形成されている事を確認した。
また、実施例1と同様にして確認したところ、被覆顔料は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体からなる、厚さ約30nmのフェライト層が形成されている事および長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が含まれていないことが確認された。
<実施例10>
実施例9において硫酸第一鉄・7水和物の量を適宜増やすことによりフェライト層を形成することを除き、他は実施例9と同様にして被覆顔料を作製した。
この様にして得られた被覆顔料は観察する角度により緑色から紫色に変化するカラートラベル性を有するとともに、実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有していた。また、実施例1と同様の方法によりマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また実施例1と同様にしてフェライト層は基材を連続的に被覆するようにして形成されている事を確認した。
また、実施例1と同様にして確認したところ、被覆顔料は、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体からなる、厚さ約100nmのフェライト層が形成されている事および長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が含まれていないことが確認された。
<実施例11>
実施例9において硫酸第一鉄・7水和物の量を適宜減らすことによりフェライト層を形成することを除き、他は実施例9と同様にして被覆顔料を作製した。
この様にして得られた被覆顔料は明度の高いシルバー色を呈し、また実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有していた。また、実施例1と同様の方法によりマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また実施例1と同様にしてフェライト層は基材を不連続的に被覆するようにして形成されている事を確認した。
また、実施例1と同様にして確認したところ、不連続的に形成されたフェライト層の各層は、約10nmの厚みを有し、不連続部分の各々の幅は50nm〜100nmであり、一次粒径が20nm未満の非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体が不連続的に堆積した状態となっている事および当該集合体には長径20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子が含まれていないことが確認された。
<比較例2>
実施例11においてポリアクリル酸を使用せずにフェライト層を形成することを除き、他は実施例11と同様にして被覆顔料を作製した。
このようにして得られた被覆顔料はシルバー色を呈し、また実施例1と同様の方法により確認したところ磁性を有していた。また、実施例1と同様の方法によりマグネタイトに帰属されるピークが観察され、また実施例1と同様にしてフェライト層は基材を不連続的に被覆するようにして形成されている事を確認した。
さらに、実施例1と同様にして確認したところ、不連続的に形成されたフェライト層の各層は、一次粒径が25nm程度のフェライト粒子が被覆顔料の表面と平面方向に数個連なった集合体として不連続的に堆積している事が確認された。
なお、上記の<色調評価>に基づき、実施例11の被覆顔料の測色値と比較例2の被覆顔料の測色値を以下の表3に示す。
表3より明らかなように、実施例11の被覆顔料と比較例2の被覆顔料は、いずれも無彩色であるが、実施例11の被覆顔料が比較例2の被覆顔料に比し、優れた発色性(明度が高いこと)を示していることが分かる。
これは、実施例11の被覆顔料において、フェライト層を形成するときにポリマー(カルボキシル基を含有するポリマー)を共存させた事により、一次粒径が20nm未満という非常に微細な不定形または定形のフェライト粒子の集合体からなるフェライト層(すなわち長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含まないフェライト層)が形成されたのに対して、比較例の被覆顔料においては、そのようなポリマーを共存させなかったために長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子を含むフェライト層が形成されたことに起因することは明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (9)

  1. 基材の表面にフェライト層が形成された被覆顔料であって、
    前記基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、
    前記フェライト層は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、x
    は正の数を示す)で表わされるフェライトを含み、かつ透過型電子顕微鏡を用いて100万倍の倍率で観察した場合に長径が20nm以上の不定形または定形のフェライト粒子の数が3個以下となり、
    前記フェライト層は、ポリマーを含む、被覆顔料。
  2. 基材の表面にフェライト層が形成された被覆顔料であって、
    前記基材は、透光性基材または透光性層を表面に形成した金属基材であり、
    前記フェライト層は、不定形または定形のフェライト粒子の集合体であり、
    前記フェライト粒子は、MxFe(3-x)4(Mは2価または3価の金属イオンを示し、
    xは正の数を示す)で表わされる組成を有し、かつ一次粒径が20nm未満であり、
    前記フェライト層は、ポリマーを含む、被覆顔料。
  3. 前記金属基材は、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステンレス、およびこれらの少なくとも1種を含む合金からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1または2に記載の被覆顔料。
  4. 前記透光性基材は、シリカ、アルミナ、ガラス、マイカ、および樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1または2に記載の被覆顔料。
  5. 前記ポリマーは、カルボキシル基を含有するポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆顔料。
  6. 前記被覆顔料は、前記フェライト層上に保護層を有しており、
    前記保護層は、金属酸化物、金属水酸化物、金属水和物、樹脂、またはこれらの組合せのいずれかにより構成される、請求項1〜のいずれかに記載の被覆顔料。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の被覆顔料を含有する樹脂組成物。
  8. 請求項に記載の樹脂組成物を基体に塗布した塗布物。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の被覆顔料を含有する化粧料。
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