以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、本発明を送信機、当該送信機に具備された圧電発電モジュール、および、当該圧電発電モジュールに具備された圧電発電装置に適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における送信機の構成を概略的に示す回路ブロック図である。また、図2は、図1に示す信号出力部の論理回路を示す図であり、図3は、図2に示す論理回路に対応したベン図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態における送信機1の構成ならびに信号出力部13の構成および動作について説明する。
本実施の形態における送信機1は、いわゆるリモートコントローラとして構成されたものであり、操作ボタンを押し下げる際に操作ボタンに付与されることとなる外力を利用して発電を行ない、発電した電力を用いることで送信部が動作するように構成されたものである。したがって、本実施の形態における送信機1は、乾電池等の電源の交換を必要としない。
図1に示すように、送信機1は、圧電発電モジュール10と、送信部20とを備えている。圧電発電モジュール10は、後述する圧電発電装置100A(図4ないし図6等参照)を具備しており、発電した電力を送信部20に供給するものである。送信部20は、圧電発電モジュール10から供給された電力によって動作する負荷に該当する。
送信部20は、RF(Radio Frequency)アンテナ21と、RF回路22とを含んでいる。送信部20は、圧電発電モジュール10から供給された電力を用いて、送信機1から離れた位置に設けられた受信器(図示せず)へとRF信号を送信する。このRF信号は、受信器への制御指令を示す信号であってもよいし、各種情報を受信器に伝達するための信号等であってもよい。
圧電発電モジュール10は、圧電発電体120と、全波整流回路11と、コンデンサCと、DC/DCコンバータ12と、信号出力部13と、制御回路14と、放電スイッチ15と、第1スイッチ141A,141Bと、第2スイッチ142とを主として備えている。
圧電発電体120は、出力端子T1,出力端子T2を含んでおり、変形することで発電する複数の圧電素子120a(図4ないし図6等参照)を含んでいる。ここで、出力端子T2の電位を基準とした出力端子T1の電位を「出力電圧V」と定義する。
全波整流回路11は、圧電発電体120とDC/DCコンバータ12との間においてこれらに電気的に接続されており、圧電発電体120の出力電圧Vを全波整流するものである。全波整流回路11としては、たとえばダイオードブリッジ(図示せず)を含む一般的な全波整流回路を用いることができる。
全波整流回路11は、ノードN1,N2を含んでいる。ノードN1は、電力線PLによってDC/DCコンバータ12に電気的に接続されており、全波整流された電圧(整流電圧)VcをDC/DCコンバータ12に出力する。ノードN2は、基準電位GNDを有する電力線GLに電気的に接続されている。
コンデンサCは、電力線PLと電力線GLとの間に電気的に接続されており、整流電圧Vcを平滑化するものである。
DC/DCコンバータ12は、平滑化された整流電圧Vcを所定の電圧に変換するものであり、入力端子Vinと、出力端子Voutと、イネーブル端子ENとを含んでいる。入力端子Vinは、全波整流回路11のノードN1に電気的に接続されており、出力端子Voutは、RF回路22に電気的に接続されている。イネーブル端子ENは、信号出力部13の出力ノードOUTに電気的に接続されている。
第1スイッチ141A,141Bは、ユーザの操作を受け付けた際に非導通状態(オフ)から導通状態(オン)に切り替わるものであり、各々が一対の接点を有している。第1スイッチ141A,141Bは、後述するように圧電発電装置100Aのレバー130から見て圧電発電体120が位置する側とは反対側に配置されている(図4ないし図7等参照)。
第1スイッチ141A,141Bは、各々が独立してユーザによって操作されるように構成されており、片方のスイッチのみの操作や両方のスイッチの同時の操作が可能である。なお、本実施の形態においては、後述するようにこれら第1スイッチ141A,141Bがいずれもメンブレンスイッチにて構成されているが、他の種類のスイッチを利用することもできる。
第1スイッチ141Aの一対の接点の一方は、電力線PLに電気的に接続されており、他方は、信号出力部13の入力ノードIN1Aに電気的に接続されている。これにより、第1スイッチ141Aは、オン状態において信号S1Aを信号出力部13に出力する。
第1スイッチ141Bの一対の接点の一方は、電力線PLに電気的に接続されており、他方は、信号出力部13の入力ノードIN1Bに電気的に接続されている。これにより、第1スイッチ141Bは、オン状態において信号S1Bを信号出力部13に出力する。
第2スイッチ142は、ユーザの操作を受け付けた際に非導通状態(オフ)から導通状態(オン)に切り替わるものであり、一対の接点を有している。第2スイッチ142は、後述するように圧電発電装置100Aのレバー130から見て圧電発電体120が位置する側に配置されている(図5ないし図7等参照)。第2スイッチ142は、上述した第1スイッチ141A,141Bとは、ユーザのボタン操作における異なるタイミングにおいてオン/オフが切り替わるものであるが、その詳細については後述することとする。
後述するように、第2スイッチ142の一対の接点のうちの一方は、反転バネ160にて構成されており、他方は、当該反転バネ160が実装された配線基板(第2フレキシブル配線基板150(図5ないし図7等参照))に設けられた導電端子にて構成されている。
第2スイッチ142の一対の接点の一方は、電力線PLに電気的に接続されており、他方は、信号出力部13の入力ノードIN2に電気的に接続されている。これにより、第2スイッチ142は、オン状態において信号S2を信号出力部13に出力する。
信号出力部13は、上述した入力ノードIN1A,IN1B,IN2および出力ノードOUTに加え、ダイオードD1〜D4と、抵抗R1〜R4と、NMOS(n-type Metal Oxide-Semiconductor)トランジスタからなるスイッチング素子Qとを含んでいる。
入力ノードIN1Aは、ダイオードD1を介してスイッチング素子Qのゲートに電気的に接続されている。ダイオードD1のアノードは、抵抗R1を介して電力線GLに電気的にされている。同様に、入力ノードIN1Bは、ダイオードD2を介してスイッチング素子Qのゲートに電気的に接続されている。ダイオードD2のアノードは、抵抗R2を介して電力線GLに電気的に接続されている。
スイッチング素子Qのドレインは、抵抗R3を介して電力線PLに電気的に接続されている。スイッチング素子Qのソースは、電力線GLに電気的に接続されている。
ダイオードD3のアノードは、抵抗R3とスイッチング素子Qのドレインとの接続ノードに電気的に接続されている。ダイオードD3のカソードは、出力ノードOUTに電気的に接続されている。また、ダイオードD3のカソードは、抵抗R4を介して電力線GLに電気的に接続されている。
入力ノードIN2は、ダイオードD4のアノードに電気的に接続されている。ダイオードD4のカソードは、ダイオードD3のカソードに電気的に接続されている。
ここで、信号出力部13の出力ノードOUTは、DC/DCコンバータ12のイネーブル端子ENに電気的に接続されている。これにより、イネーブル端子ENは、出力ノードOUTから出力された切替信号SWをDC/DCコンバータ12のイネーブル信号として受ける。
以上の回路構成からなる信号出力部13の論理回路は、図2に示す如くとなる。すなわち、図2に示すように、信号出力部13は、信号S1Aを受ける入力ノードIN1Aと、信号S1Bを受ける入力ノードIN1Bと、信号S2を受ける入力ノードIN2と、切替信号SWを出力する出力ノードOUTと、NOR回路(否定論理和回路)13aと、OR回路(論理和回路)13bとを含んでいる。
NOR回路13aは、信号S1Aと信号S1Bとの否定論理和の演算結果を示す信号をOR回路13bに出力する。OR回路13bは、NOR回路13aからの信号と、信号S2との論理和の演算結果を示す信号を出力ノードOUTに出力する。
図3に示すように、このように構成された信号出力部13は、領域K1に示すように、第1スイッチ141A,141Bおよび第2スイッチ142がいずれもオフである場合に、H(ハイ)レベルの切替信号SWを出力する。
また、領域K2,K3に示すように、第1スイッチ141A,141Bのうちの一方がオンであり、他方がオフであり、かつ、第2スイッチ142がオフである場合には、信号出力部13は、L(ロー)レベルの切替信号SWを出力する。また、領域K4に示すように第1スイッチ141A,141Bがいずれもオンであり、かつ、第2スイッチ142がオフである場合にも、信号出力部13は、Lレベルの切替信号SWを出力する。
一方、領域K5〜K8に示すように、第2スイッチ142がオンである場合には、信号出力部13は、Hレベルの切替信号SWを出力する。なお、後述する圧電発電装置100Aの構成から明らかなように、本実施の形態においては、第1スイッチ141A,141Bがいずれもオフであるにもかかわらず、第2スイッチ142がオンである状態(領域K8参照)は、実際には生じない。
以上により、信号出力部13は、第1スイッチ141A,141Bおよび第2スイッチ142のオン状態またはオフ状態の組み合わせに基づき、HレベルまたはLレベルの切替信号SWをDC/DCコンバータ12のイネーブル端子ENに出力する。
図1に示すように、制御回路14は、電力線PLと電力線GLとの間に接続されている。制御回路14は、送信部20の動作を制御する部位であり、ここではその詳細な説明は省略するが、信号S1A,S1Bの入力を別途受けられるように構成されており、入力された信号に応じて送信部20に動作指令を出力する。また、制御回路14は、放電スイッチ15に放電指令を出力する。
放電スイッチ15は、圧電発電体120の出力端子T1と出力端子T2との間に接続されており、圧電発電体120に蓄えられた電荷を放電するために用いられる。より具体的には、放電スイッチ15は、制御回路14からの放電指令に応答して非導通状態(オフ)から導通状態(オン)へと切り替えられる。
これにより、放電スイッチ15がオンになった場合に、出力端子T1と出力端子T2とが短絡することになり、圧電発電体120に蓄えられた電荷が放電されることになる。なお、放電スイッチ15としては、たとえばアナログスイッチなどのIC(Integrated Circuit)またはFET(Field Effect Transistor)を用いることができる。
以上において説明した送信機1においては、第1スイッチ141A,141Bおよび第2スイッチ142のオン状態またはオフ状態に基づき、DC/DCコンバータ12が、イネーブル端子ENに信号出力部13からHレベルの切替信号SWの入力を受けた場合に、送信部20への電力の供給を行ない、イネーブル端子ENに信号出力部13からLレベルの切替信号SWの入力を受けた場合に、送信部20への電力の供給を行なわないことになる。
このように構成することにより、本実施の形態における送信機1においては、第1スイッチ141A,141Bおよび第2スイッチ142のオン状態またはオフ状態の組み合わせに基づき、圧電発電体120にて発電された電力を所定のタイミングで送信部20へと供給することで効率的な発電と必要な送信動作とが実現されることになるが、当該送信機1の動作の詳細については後述することとし、以下においては、上述した圧電発電モジュール10に具備された圧電発電装置100Aについて詳細に説明する。
図4は、本実施の形態における圧電発電装置の斜視図であり、図5および図6は、それぞれ図4中に示すV−V線およびVI−VI線に沿った断面図である。また、図7は、図4に示す圧電発電装置の分解斜視図であり、図8は、図7に示す圧電素子の分解斜視図である。まず、これら図4ないし図8を参照して、本実施の形態における圧電発電装置100Aの構成について説明する。
図4ないし図7に示すように、圧電発電装置100Aは、支持部材としてのケース体110と、圧電素子120aが複数積層されてなる圧電発電体120と、可動部としてのレバー130と、第1フレキシブル配線基板140と、第2フレキシブル配線基板150と、外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170と、ビス180とを備えている。
圧電発電装置100Aは、操作ボタン(不図示)の背後に配置されるものである。具体的には、操作ボタンは、圧電発電装置100Aの第1フレキシブル配線基板140が位置する側の主面上に設置される。なお、本実施の形態においては、独立して操作可能な2つの操作ボタンが、図4ないし図6中に示す矢印AR1,AR2の位置に設置され、当該操作ボタンがユーザによって操作されることにより、圧電発電装置100Aに対して当該矢印AR1,AR2方向にそれぞれ外力が付与されることになる。
ケース体110は、平面視略矩形状の底板部111と、当該底板部111の四辺から立設された側壁部112〜115とを含む箱状の形状を有している。ケース体110は、圧電発電装置100Aを構成する他の部品を支持するベースとなる部材であり、これら圧電発電装置100Aを構成する他の部品は、底板部111および側壁部112〜115によって囲まれた空間に主として収容される。
側壁部112,115は、互いに対向するように底板部111の相対する二辺から立設されており、側壁部113,114は、互いに対向するように底板部111の上述した二辺とは異なる他の二辺から立設されている。底板部111の四隅には、これら側壁部112〜115が互いに不連続となるように側壁部が設けられていない部分が形成されている。
底板部111の四隅には、それぞれ底板部111の内底面から突出するように支持部111aが設けられている。これら支持部111aは、圧電発電体120を撓み変形可能に支持するための部位である。
側壁部113,114の側壁部112寄りの所定位置には、互いに対向するように軸支孔113a,114aが設けられている(図5および図7参照)。軸支孔113a,114aは、レバー130を回動可能に軸支するための部位である。
側壁部115は、他の側壁部112〜114よりも僅かに低く構成されており、レバー130の回動を制限するための突き当たり部としての突き当たり面115aをその上面に有している。
上述した構成のケース体110は、所定の厚みを有する金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されていることが好ましく、このように構成することにより、ケース体110に高い剛性を付与することができる。特に、図示するように底板部111の四辺から側壁部112〜115を曲げ加工によって立設させることにより、ケース体110の強度を高く保つことができる。具体的には、ケース体110は、たとえば厚み0.25[mm]のステンレス製の板状部材のプレス成形品にて構成される。
なお、ケース体110は、底板部111および側壁部112〜115によって囲まれた空間に圧電発電体120を配置することのみによって当該圧電発電体120のケース体110に対する位置決めが行なわれることとなるように、後述する圧電発電体120の大きさよりも僅かに大きい大きさとされることが好ましい。
圧電発電体120は、可撓性を有する平面視矩形状の板状の圧電素子120aを複数積層してなるものであり、全体として板状の形状を有している。個々の圧電素子120aは、厚み方向に変形することで発電するものであり、これら複数の圧電素子120aは、互いの厚み方向が合致するように積層されている。圧電素子120aとしては、ユニモルフ型、バイモルフ型およびマルチモルフ型のいずれのタイプのものを使用してもよいが、本実施の形態においては、後述する圧電膜が6層積層された圧電体を備えたマルチモルフ型の圧電素子120aを使用している。
図8に示すように、圧電素子120aは、金属板121と、当該金属板121の一方の主面に設けられた板状の圧電体122とを主として有している。金属板121と圧電体122とは、たとえばエポキシ接着剤等からなる接着剤層124によって貼り合わされている。このように、圧電体122の一方の主面に金属板121を貼り付けることにより、繰り返しの撓み変形によっても破損が生じ難い耐久性に優れた圧電素子とすることができる。
また、圧電素子120aは、外部接続用の一対の端子123を有している。一対の端子123は、それぞれ圧電体122のおもて面に設けられた一対の外部電極に導電性接着剤125を用いて接着されている。一対の端子123は、シート状のフレキシブルな金属製の部材からなり、その一部が圧電体122の外側の領域に向けて引き出されている。また、一対の端子123の各々の先端部の所定位置には、貫通孔123aが設けられている。
圧電体122は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなる圧電膜を複数積層してなるものであり、そのおもて面に上述した一対の外部電極を有している。圧電体122の内部には複数の内部電極が設けられており、これら内部電極の各々は、圧電体122のおもて面に設けられた一対の外部電極のいずれか一方に接続されている。なお、圧電体122としては、非鉛系圧電体セラミックス(ニオブ酸カリウムナトリウム系セラミックス、アルカリニオブ酸系セラミックス等)を用いてもよい。
圧電体122のおもて面には、その全面を覆うように保護膜126が設けられている。保護膜126は、圧電体122および端子123等を保護するものである。保護膜126としては、たとえば圧電体122に貼り付けが可能なポリイミドシート等が利用できる。
ここで、圧電素子120aの大きさは、特に制限されるものではないが、本実施の形態における圧電素子120aは、一対の端子123を除く部分の大きさが14[mm]×14[mm]×0.08[mm]のものを用いている。
図4ないし図7に示すように、複数の圧電素子120aは、その各々が有する圧電体122のおもて面がケース体110の底板部111側を向くように(すなわち、圧電体122が金属板121よりも底板部111側に位置するように)積層されてケース体110に載置されている。これにより、圧電発電体120は、その下面の四隅がケース体110の底板部111に設けられた支持部111aに当接することになり、その大部分が底板部111から距離をもって位置することでケース体110によって撓み変形可能に支持されることになる。なお、本実施の形態においては、合計で4個の圧電素子120aを積層している。
ここで、複数の圧電素子120aは、その全体または一部が互いに接触するように積層されていることが好ましく、そのように構成することにより、より底板部111側に位置する圧電素子120aにまで外力の付与による変形を発生させることができる。特に、複数の圧電素子120aの一部を互いに接触させる場合には、金属板の露出面側に凹凸等を設けることにより、複数の圧電素子120aの各々の四隅と中央部とを接触させることが好ましい。
レバー130は、平面視略矩形状の基部131と、互いに対向するように当該基部131の相対する二辺から立設された立壁部133,134とを有している。基部131は、圧電発電体120に対向するように配置されており、立壁部133,134は、それぞれケース体110の側壁部113,114に対向するように配置されている。
基部131の所定位置には、一対のビス穴131aが設けられている。当該ビス穴131aは、第2フレキシブル配線基板150および補助バネ170をレバー130に固定するための部位であり、当該ビス穴131aの各々には、ビス180が取付けられる。
立壁部133,134の外側面であってケース体110の側壁部112寄りの所定位置には、外側に向けて突出するように軸部133a,134aが設けられている(図5および図7参照)。軸部133a,134aは、それぞれケース体110に設けられた軸支孔113a,114aに挿入されることで当該軸支孔113a,114aによって軸支されている。これにより、レバー130は、軸部133a,134aを結ぶ軸線を回転軸1000(図5および図6参照)として、ケース体110によって回動可能に支持されている。
レバー130がケース体110によって回動可能に支持されることにより、レバー130の基部131に外力が付与された場合には、レバー130が、圧電発電体120の厚み方向に実質的に沿った方向に変位する。このレバー130の変位に伴い、レバー130が受けた外力は、後述する外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170を介して圧電発電体120へと伝達され、これにより個々の圧電素子120aに撓み変形が生じることになる。
ここで、レバー130のうち、上述した回転軸1000から最も遠い部分である基部131の先端部135は、ケース体110の側壁部115側の位置に配置されており、当該先端部135は、レバー130を圧電発電体120側に回動させた場合に、ケース体110の側壁部115に設けられた突き当たり面115aに当接するように構成されている(図9参照)。
より詳細には、レバー130の回転軸1000は、圧電発電体120の厚み方向に沿って見た場合に圧電発電体120の相対する二辺(すなわち、側壁部112,115が設けられた二辺)に平行なるように配置されており、上述した突き当たり面115aは、当該二辺のうちの回転軸1000から遠い方の一辺(すなわち、側壁部115)に沿って設けられている。
このように構成することにより、レバー130の圧電発電体120側に向けての回動範囲が制限されることになる。したがって、突き当たり面115aを設ける位置を圧電発電体120の設置位置やレバー130の配設位置や形状等に応じて適切に設定することにより、圧電発電体120に過度に外力が付与されることが防止できることになり、圧電発電体120の破損を未然に抑制できることになる。
上述した構成のレバー130は、所定の厚みを有する金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されていることが好ましく、このように構成することにより、レバー130に高い剛性を付与することができる。特に図示するように、基部131の相対する二辺から立壁部133,134を曲げ加工によって立設させるとともに、当該立壁部133,134が位置しない側の基部131の相対する二辺に軽度に曲げ加工を施すことにより、レバー130の強度を高く保つことができ、過度の外力が付与された場合の破損を防止することができる。具体的には、レバー130は、たとえば厚み0.6[mm]のステンレス製の板状部材のプレス成形品にて構成される。
なお、本実施の形態においては、レバー130の回転軸1000が、圧電発電体120の中央部よりもケース体110の側壁部112側の位置に配置されている。このように構成することにより、レバー130としては、平面視細長形状を有する板状の部材にてこれを構成することが可能になり、当該レバー130の長辺方向がレバー130の回転軸1000の延在方向と平行になるように、レバー130を配置することができる。なお、ここで言う回転軸1000の延在方向と平行とは、±5[°]程度ずれた略平行である場合も含んでいる。
したがって、当該構成を採用することにより、回転軸1000から突き当たり面115aが設けられた側壁部115までの距離を短くすることができてレバー130の先端部135の回転半径を小さくできるため、ユーザが操作ボタンを押し下げた場合にレバー130に生じる撓み変形が大幅に抑制でき、より確実に圧電発電体120の破損を防止できることになる。
第1フレキシブル配線基板140は、レバー130の基部131の一対の主表面のうちの圧電発電体120が位置しない側の主表面上に設けられている。第1フレキシブル配線基板140は、複層の基材の表面等に各種の導電パターンが形成されてなるものであり、その所定位置に上述した第1スイッチ141A,141Bを構成する2つのメンブレンスイッチを有している。
第1スイッチ141A,141Bを構成する2つのメンブレンスイッチは、レバー130の回転軸1000の延在方向と平行な方向に沿って並んで位置するように設けられている。これにより、当該2つのメンブレンスイッチは、上述した2つの操作ボタン(不図示)に対向して位置することになる。
第1スイッチ141A,141Bを構成する2つのメンブレンスイッチは、2[N]以下の低荷重でオフ状態からオン状態に切り替わるものであることが好ましく、このように構成することにより、ユーザが操作ボタンを押し下げたことをいち早く検知することができる。なお、この2つのメンブレンスイッチについては、クリック感をユーザに伝えるものである必要はない。
第1フレキシブル配線基板140は、その所定位置に接続部143を有している。当該接続部143は、第2フレキシブル配線基板150に電気的に接続される部位である。
なお、第1フレキシブル配線基板140は、図示しない両面テープ等によってレバー130に固定されていることが好ましく、そのように構成することにより、操作ボタン(不図示)やレバー130に対するメンブレンスイッチの位置ずれを防止することができる。
第2フレキシブル配線基板150は、レバー130の基部131の一対の主表面のうちの圧電発電体120が位置する側の主表面上に設けられている。第2フレキシブル配線基板150は、単層または複層の基材の表面等に各種の導電パターンが形成されてなるものであり、2つの接続部153,154を有している。
接続部153は、第1フレキシブル配線基板140に電気的に接続される部位であり、接続部154は、圧電発電装置100Aを外部のパワーマネジメント回路(すなわち、図1に示した圧電発電モジュール10の回路ブロックから圧電発電装置100Aにて構成される回路部分を除いた電力供給回路がこれに該当する)に電気的に接続するための部位である。
図5ないし図7に示すように、圧電発電体120と、レバー130の一方の主表面上に配置された第2フレキシブル配線基板150との間には、外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170が配置されている。当該外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170は、レバー130で受けた外力を圧電発電体120に伝達するためのものである。
反転バネ160は、第2フレキシブル配線基板150のうちのレバー130の基部131の主表面上に位置する部分であってかつ圧電発電体120の中央部に対向する部分に実装されている。
反転バネ160は、外力が付与されて所定の荷重がかかった場合に、その凹凸形状が反転するように座屈し、外力の付与が解除された場合に座屈が解消して元の形状に復帰するバネであり、たとえばドーム状の形状を有する金属部材またはその積層構造物にて構成される。
反転バネ160は、上述した第2スイッチ142の一対の接点のうちの一方を構成するものであり、第2フレキシブル配線基板150との間に空間が形成されるように下に凸となる姿勢で(すなわち、ドーム状の反転バネ160の頂部が圧電発電体120側に位置することとなるように)第2フレキシブル配線基板150に固定されている。
一方、上述した第2スイッチ142の一対の接点のうちの他方は、第2フレキシブル配線基板150のうち、上述した反転バネ160によって覆われた部分に導電端子として設けられている。
このように構成することにより、反転バネ160が反転した状態において第2スイッチ142の一対の接点を導通状態(オン)にすることができ、反転バネ160が反転していない状態において第2スイッチ142の一対の接点を非導通状態(オフ)にすることができる。
この反転バネ160を用いることにより、ユーザが操作ボタンを押し下げた場合に、所定の大きさの荷重がかかった時点で上述した座屈現象が生じることになり、反転バネ160のバネ定数が瞬間的に下がることになる。これにより、その衝撃が加わることでユーザはクリック感を得ることができ、操作ボタンを操作する際の操作性が確保できることになる。
一方、補助バネ170は、側面視略V字状の細長い板状の形状を有しており、反転バネ160を受け入れるように下に凸となる姿勢で(すなわち、側面視略V字状の補助バネ170の頂部が圧電発電体120側に位置することとなるように)第2フレキシブル配線基板150に取付けられている。補助バネ170は、たとえば単一の金属製の板バネまたはその積層構造物にて構成される。
より詳細には、補助バネ170の両端には、貫通孔170a(図5および図7参照)が設けられており、この貫通孔170aに対応する部分の第2フレキシブル配線基板150にも貫通孔150a(図5および図7参照)が設けられている。これら貫通孔150a,170aは、いずれも上述したレバー130の基部131に設けられたビス穴131aに合致するように設けられており、当該貫通孔150a,170aを挿通するようにビス180がビス穴131aに螺合されることにより、レバー130に対して第2フレキシブル配線基板150および補助バネ170が固定されることになる。また、これにより、第2フレキシブル配線基板150と補助バネ170とによって反転バネ160が挟み込まれることにより、反転バネ160の第2フレキシブル配線基板150への固定が補強されることにもなる。
補助バネ170は、レバー130が受けた外力を圧電発電体120に伝達する外力伝達部全体としてのバネ定数を調整するものであり、当該補助バネ170を設けることにより、反転バネ160によるクリック感の程度(後述するクリック率を参照のこと)の調整や、圧電発電体120および反転バネ160に加わる力のバランスの補正が行なえることになるが、その詳細については後述することとする。
また、反転バネ160の頂部に対応する部分の補助バネ170には、当該反転バネ160の頂部に当接する突部171が設けられている。これにより、ユーザが操作ボタンを操作した場合に、反転バネ160の座屈現象が確実に生じることになる。
なお、図示するように、本実施の形態においては、反転バネ160をドーム状の形状を有する薄い金属部材を4個積層した積層構造物にて構成し、補助バネ170を1個の金属製の板バネにて構成している。これは、上述したクリック感の程度の調整と、圧電発電体120および反転バネ160に加わる力のバランスの補正とを行なった結果であり、圧電発電装置100Aの仕様が異なる場合には、当然にこれらを適宜変更することができる。
図4に示すように、上述した圧電発電装置100Aは、図示しない送信機1の筐体等に圧入ピン190を用いて固定される。具体的には、圧入ピン190は、圧電発電体120に含まれる個々の圧電素子120aの端子123に設けられた貫通孔123aと、これに重なるように設けられた第2フレキシブル配線基板150の貫通孔150b(図7参照)とに挿通され、送信機1の筐体等に設けられた圧入用の穴にその先端が圧入されることで固定される。
ここで、圧入ピン190によって圧電発電体120の端子123と第2フレキシブル配線基板150とが圧接されることにより、圧電発電体120と第2フレキシブル配線基板150との電気的な接続が確保されることになる。なお、圧入ピン190として金属製のものを用いれば、より圧電発電体120と第2フレキシブル配線基板150との電気的な接続を確実ならしめることができる。
図9は、図4に示す圧電発電装置に外力が付与された状態における断面図である。次に、この図9を参照して、本実施の形態における圧電発電装置100Aに外力が付与された状態について説明する。
図4に示す状態において、たとえばユーザが、第1スイッチ141Aに対応した操作ボタン(不図示)を図中に示す矢印AR1方向に向けて押し下げた場合には、操作ボタンが移動することで第1フレキシブル配線基板140を介してレバー130が外力を受ける。これにより、図9に示すように、レバー130が回転軸1000を回転中心として図中矢印DR方向に回動し、結果としてレバー130が圧電発電体120側に向けて傾倒するように変位する。
レバー130が変位することにより、圧電発電体120とレバー130との間に配置された外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170がこれらによって圧縮されることになり、その反力を受けることで圧電発電体120に含まれる個々の圧電素子120aにも撓み変形が生じる。
圧電素子120aに撓み変形が生じることにより、その変形過程において圧電体122に分極が生じる。分極に伴い、圧電素子120aに設けられた一対の外部電極の一方が負に帯電し、他方が正に帯電する。そのため、圧電発電体120において電力が発生することになる。
ここで、反転バネ160は、圧電発電体120における発電に必要な押圧ストローク以上の所定の押圧ストロークにて反転(すなわち座屈)するように設定されていることが好ましい。このように構成すれば、発生させるべき電力量が圧電発電体120において発生した時点またはその後において反転バネ160が反転することになるため、ユーザの操作ボタンに対する操作量(すなわち押し込み量)を確保することができ、発電動作を確実に完了させることができる。
なお、第1スイッチ141Aは、ユーザが操作ボタンを押し下げ始めた初期の段階においてオフ状態からオン状態に切り替わる。一方、反転バネ160を含んで構成された第2スイッチ142は、圧電発電体120において電荷が蓄えられ、発生させるべき電力量が発生した時点またはその後にオフ状態からオン状態に切り替わる。そのため、第2スイッチ142は、第1スイッチ141Aよりも遅延してオン状態に切り替わることになる。
また、図9を参照して、本実施の形態における圧電発電装置100Aにおいては、上述したように、過度の外力が圧電発電体120に加えられることがないように、レバー130が所定量だけ回動した時点において、レバー130の先端部135がケース体110の突き当たり面115aに当接するように構成されている。
ここで、レバー130の先端部135がケース体110の突き当たり面115aに当接するレバー130の回動量を、圧電発電体120に過度の外力が付与されない範囲で反転バネ160が反転するレバー130の回動量よりも大きく設定することにより、圧電発電体120による効率的な発電とその破損防止との両立が図られることになる。
一方で、図9に示す状態からユーザが第1スイッチ141Aに対応した操作ボタン(不図示)の操作を解除することにより、圧電発電装置100Aに付与されていた外力は、これが取り除かれることになる。これに伴い、圧電発電体120、反転バネ160および補助バネ170の有する弾性力に基づいてこれらが元の状態に復元することになり、レバー130も再度変位して(すなわち、図9中に示す矢印DR方向とは反対方向に向けて変位して)元の位置に復帰する。これにより、圧電発電装置100Aは、図4に示す状態に戻ることになる。なお、その際、反転バネ160に生じていた座屈も解消することになる。
撓み変形が生じていた圧電素子120aが元の形状に復帰する過程においても、圧電体122に分極が生じる。分極に伴い、圧電素子120aに設けられた一対の外部電極の一方が正に帯電し、他方が負に帯電する。そのため、圧電発電体120において上述した変形過程とは逆極性の電力が発生することになる。本実施の形態においては、この逆極性の電力についても利用することとしているが、その詳細については後述することとする。
ここで、反転バネ160を含んで構成された第2スイッチ142は、ユーザが操作ボタンの押し下げを解除し始めた初期の段階においてオン状態からオフ状態に切り替わる。一方、第1スイッチ141Aは、圧電発電体120において電荷が蓄えられ、発生させるべき電力量が発生した時点またはその後にオン状態からオフ状態に切り替わる。そのため、第1スイッチ141Aは、第2スイッチ142よりも遅延してオフ状態に切り替わることになる。
なお、ここではその説明は省略するが、ユーザが第1スイッチ141Bに対応した操作ボタン(不図示)を操作した場合、および、ユーザが第1スイッチ141A,141Bに対応した操作ボタンを同時に操作した場合についても、上記説明に準じた状態となる。
図10は、図1に示す送信機の動作の一例を説明するためのタイムチャートである。次に、この図10を参照して、上述した送信機1の動作の一例として、ユーザが第1スイッチ141Aに対応した操作ボタンを押し下げる操作を行なった場合について説明する。なお、図10においては、横軸が経過時間を示しており、縦軸が上から順に、荷重のオン/オフ、圧電発電体の出力電圧、第1スイッチ141Aのオン/オフ、第1スイッチ141Bのオン/オフ、第2スイッチ142のオン/オフ、圧電発電体のリセット動作のオン/オフを示している。
図10に示すように、時刻t1までにおいては、第1スイッチ141A,141Bおよび第2スイッチ142がいずれもオフであるため、信号出力部13の切替信号SWは、Hレベルである。しかしながら、未だ圧電発電体120において発電が行なわれていないため、圧電発電モジュール10から送信部20への電力供給は行なわれていない。
時刻t1において外力の付与が開始されると、圧電発電装置100Aに加えられる荷重が上昇し始める。
その後、時刻t2において第1スイッチ141Aがオンになると、信号出力部13の切替信号SWは、Lレベルになる。これに伴い、圧電発電モジュール10から送信部20への電力供給も行なわれなくなる。
当該時刻t2とほぼ同時に、圧電発電装置100Aに加えられる荷重が増加することによって圧電発電体120に撓み変形が生じ始める。この変形に伴って圧電発電体120にて発電が行なわれ、発電された電力は、送信部20へと供給されることなく圧電発電体120に蓄えられる。
時刻t3において反転バネ160が反転を始め、時刻t4において反転バネ160の反転が完了すると、当該時刻t4において第2スイッチ142がオンになる。これにより、信号出力部13の切替信号SWは、Hレベルになる。これに伴い、圧電発電体120において蓄えられていた電力が、圧電発電モジュール10から送信部20へと供給され、送信部20において送信動作が開始される。
ここで、時刻t3から時刻t4においては、クリック動作が生じることになり、ユーザはクリック感を実感する。また、時刻t4以降においては、圧電発電モジュール10から送信部20へと電力供給が行なわれることで圧電発電体120の出力電圧は低下する。
送信動作が完了すると、時刻t5において圧電発電体120のリセット動作が開始されることにより、圧電発電体120の電極間が短絡させられ、これにより圧電発電体120の出力電圧が0[V]にリセットされる。その後、時刻t6において圧電発電体120のリセット動作が停止される。
時刻t7において外力の付与が解除され始めると、反転バネ160が再び反転(元の形状に復帰するための反転)を始め、当該時刻t7において第2スイッチ142がオフになる。これにより、信号出力部13の切替信号SWは、Lレベルになる。これに伴い、圧電発電モジュール10から送信部20への電力供給は行なわれなくなる。
当該時刻t7とほぼ同時に、圧電発電装置100Aに加えられる荷重が減少することによって圧電発電体120の撓み変形が解消し始める。この変形に伴って圧電発電体120にて発電が行なわれ、発電された電力は、送信部20へと供給されることなく圧電発電体120に蓄えられる。
なお、時刻t7から、時刻t8において反転バネ160の反転が完了するまでにおいては、クリック動作が生じることになり、ユーザはクリック感を実感する。
時刻t9において第1スイッチ141Aがオフになると、信号出力部13の切替信号SWは、Hレベルになる。これに伴い、圧電発電体120において蓄えられていた電力が、圧電発電モジュール10から送信部20へと供給され、送信部20において送信動作が開始される。
その後、時刻t10において外力の付与が終了する。また、時刻t9以降においては、圧電発電モジュール10から送信部20へと電力供給が行なわれることで圧電発電体120の出力電圧は低下する。
送信動作が完了すると、時刻t11において圧電発電体120のリセット動作が開始されることにより、圧電発電体120の電極間が短絡させられ、これにより圧電発電体120の出力電圧が0[V]にリセットされる。その後、時刻t12において圧電発電体120のリセット動作が停止される。
以上において説明したように、本実施の形態における送信機1は、上述した構成の圧電発電装置100Aを具備した圧電発電モジュール10を備えているため、ユーザの一度の操作ボタンの操作の間に、二度にわたって送信動作を行なうことができる。したがって、受信機側において二度の受信の時間的な間隔を検知することにより、操作ボタンが操作された時間を判別することもできる。
なお、ここではその説明は省略するが、ユーザが第1スイッチ141Bに対応した操作ボタン(不図示)を操作した場合、および、ユーザが第1スイッチ141A,141Bに対応した操作ボタンを同時に操作した場合についても、上記説明に準じた送信動作が実施されることになる。
図11および図12は、それぞれ本実施の形態に準じた圧電発電装置および比較例1に係る圧電発電装置の概略的な構成ならびにレバーとケース体との接続構造を示す概念図である。以下、これら図11および図12を参照して、レバー130と圧電発電体120との間に反転バネ160を配置することによって得られる効果について詳説する。
図11(A)に示すように、本実施の形態に準じた圧電発電装置100A’は、上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aと比較した場合に、補助バネ170が設けられておらず、反転バネ160と圧電発電体120とが直接接触している点においてのみ、その構成が相違している。
このように構成された圧電発電装置100A’においては、圧電発電体120が、図中に示す点P0を支点としてケース体110によって支持されることとなり、レバー130は、図中に示す点P1を支点としてケース体110によって回動自在に支持されることになる。
また、この圧電発電装置100A’においては、図中に示す点P2を力点としてレバー130に対して外力が付与されることになる一方、レバー130が回動することにより、図中に示す点P3を作用点として反転バネ160に力が加えられることになる。
上述したように、圧電発電装置100A’においては、反転バネ160と圧電発電体120とが直接接触しているため、当該圧電発電装置100A’におけるレバー130とケース体110との接続構造を概念的に示すと図11(B)の如くとなる。
すなわち、図11(B)に示すように、圧電発電装置100A’においては、レバー130とケース体110とが、これらの間に直列に接続された反転バネ160と圧電発電体120とによって接続されることになる。
一方、図12(A)に示すように、比較例1に係る圧電発電装置100Xは、上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aと比較した場合に、補助バネ170が設けられていない点と、反転バネ160が圧電発電体120とケース体110との間に配置されている点とにおいて、その構成が相違している。
このように構成された圧電発電装置100Xにおいては、上述した本実施の形態に準じた圧電発電装置100A’と同様に、圧電発電体120が、図中に示す点P0を支点としてケース体110によって支持されることとなり、レバー130は、図中に示す点P1を支点としてケース体110によって回動自在に支持されることになる。
その反面、この圧電発電装置100Xにおいては、図中に示す点P2を力点としてレバー130に対して外力が付与されることになる一方、レバー130が回動することにより、図中に示す点P3を作用点として圧電発電体120に力が加えられることになる。
上述したように、圧電発電装置100Xにおいては、反転バネ160が圧電発電体120とケース体110との間に配置されているため、当該圧電発電装置100Xにおけるレバー130とケース体110との接続構造を概念的に示すと図12(B)の如くとなる。
すなわち、図12(B)に示すように、圧電発電装置100Xにおいては、レバー130とケース体110とが、これらの間に並列に接続された反転バネ160と圧電発電体120とによって接続されることになる。
ここで、図12(B)に示す接続構造においてレバー130に外力を作用させた場合には、圧電発電体120における発電に必要な押圧ストロークを発生させるための押圧荷重として、圧電発電体120を変形させるための押圧荷重のみならず、これに反転バネ160を変形させるための押圧荷重を加えたものが必要となる。そのため、反転バネ160を設けることによって得られるクリック感は、圧電発電体120のバネ定数に応じて極端に低下してしまうことになり、また、圧電発電体120における発電に必要な押圧ストロークを発生させるための押圧荷重も大幅に増大してしまうことになる。
一方、図11(B)に示す接続構造においてレバー130に外力を作用させた場合には、作用反作用の法則に従い、反転バネ160のバネ定数と圧電発電体120のバネ定数との比に応じて押圧荷重がそれぞれ反転バネ160および圧電発電体120に加わることになるため、圧電発電体120における発電に必要な荷重以上の押圧荷重は必要なくなる。そのため、反転バネ160を設けることによって得られるクリック感は、圧電発電体120のバネ定数に依らずそのまま維持され、また、圧電発電体120における発電に必要な押圧ストロークを発生させるための押圧荷重の増大も抑制できることになる。
したがって、上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aまたはこれに準じた圧電発電装置100A’のように、反転バネ160をレバー130と圧電発電体120との間に配置することにより、圧電発電体120における発電に必要な押圧荷重を低く抑えつつ、高いクリック感を得ることが可能になる。
図13は、上述した本実施の形態における圧電発電装置のレバーとケース体との接続構造を示す概念図である。次に、この図13を参照して、レバー130と圧電発電体120との間に反転バネ160に加えて補助バネ170を配置することによって得られる効果について詳説する。
上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aのレバー130とケース体110との接続構造を概念的に示すと図13の如くとなる。すなわち、図13に示すように、圧電発電装置100Aにおいては、レバー130とケース体110とが、互いに並列に接続された反転バネ160および補助バネ170と、これら反転バネ160および補助バネ170に直列に接続された圧電発電体120とによって接続されることになる。
このように反転バネ160にのみ並列に接続されるように補助バネ170を設けることにより、上述したように反転バネ160によるクリック感の程度の調整や、圧電発電体120および反転バネ160に加わる力のバランスの補正が行なえることになる。
具体的には、反転バネ160が圧電発電体120における発電に必要な押圧荷重よりも小さい押圧荷重にて反転してしまった場合には、必要な電力が得られる前に電力がパワーマネジメント回路に供給されてしまうことになり、動作不良を誘発してしまう。そのため、反転バネ160に並列に補助バネ170を接続することにより、反転バネ160が反転現象を起こす荷重(以下、これを反転荷重と称する)と、補助バネを設けることによって加算される押圧荷重の和が、おおよそ圧電発電体120における発電に必要な押圧荷重に等しくなるように設定することにより、ユーザの操作ボタンに対する操作量(すなわち押し込み量)を確保することができ、発電動作をより確実に完了させることが可能になる。
ここで、上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aにおいては、図5および図6等に示すように、ドーム状の形状を有する薄い金属部材を4個積層した積層構造物にて反転バネ160を構成するとともに、1個の板バネにて補助バネ170を構成することにより、適度なクリック感が得られるように構成している。
すなわち、本実施の形態における圧電発電装置100Aにおいては、圧電発電体120を用いて発電すべき発電量が、おおよそ15[N]に設定されている。そのため、押圧荷重が概ね15[N]程度(より好ましくは15[N]以上)でクリック感が得られることが好ましい。しかしながら、ドーム状の薄い金属部材の1個当たりの反転荷重は、通常2[N]〜3[N]程度であり、これを1個利用しただけでは、適切な押圧荷重においてクリック感を得ることができない。
そこで、上述のようにドーム状の形状を有する薄い金属部材を4個積層した積層構造物にて反転バネ160を構成するとともに、1個の板バネにて補助バネ170を構成しつつ、当該補助バネ170のバネ定数を最適化することにより、概ね15[N]程度でクリック感が得られるように構成している。
なお、より強いクリック感が必要になる場合には、補助バネ170の配置を廃止することで上述した本実施の形態に準じた圧電発電装置100A’の如くの構成とすればよい。
以下においては、所定の補助バネを使用しつつ、反転バネの構成を変更した場合におけるクリック率および反転荷重の変化を確認した第1検証試験について説明する。図14は、反転バネの操作量と操作力との関係を示すグラフであり、図15は、第1検証試験の結果を示したグラフである。
図14に示すように、反転バネは、操作力(荷重)の増加に伴い、所定の操作量(変位量)に達した時点で操作力が瞬間的に低下し、その後、再度操作力が増加することで操作量が引き続き増加する。
ここで、上述したクリック感の程度は、一般にクリック率として定義され、図14に示す操作力Fa,Fb(ここで、Faは、瞬間的に操作力が低下を開始する時点の操作力であり、Fbは、その後、操作力が回復し始める時点の操作力である)を用いて、100×(Fa−Fb)/Fa[%]で表わされる。
第1検証試験においては、ドーム状の形状を有する薄い金属部材を5個積層した積層構造物にて反転バネを構成し、これに互いに異なる構成を有する補助バネを並列に接続した複数のサンプルを試作し、それぞれのサンプルにおけるクリック率と反転荷重とを実測した。ここで、補助バネについては、同一形状でかつ同一のバネ定数を有する板バネを複数準備し、サンプルごとにその接続個数を変更することでその構成を変更することとした。
図14から理解されるように、第1検証試験の結果、補助バネを接続していないサンプルにおいてクリック率が実測値で51[%]であったものが、補助バネを1個並列に接続したサンプルにおいて実測値で38[%]にまで低下し、さらに補助バネの接続個数を増やすことで、順に実測値で25[%]、15[%]、7[%]に低下していくことが確認された。
一方で、反転荷重については、補助バネを接続していないサンプルにおいて実測値で11.0[N]であったものが、補助バネを1個並列に接続したサンプルにおいて実測値で約12.5[N]に上昇し、さらに補助バネの接続個数を増やすことで、順に実測値で13.5[N]、14.5[N]、16.0[N]に上昇していくことが確認された。
なお、図14においては、クリック率の実測値に加え、前述の図13において示したモデルに基づいて算出した計算値についてもあわせて表記している。これらクリック率の実測値と計算値とで概ね整合が図れているため、当該モデルに基づいてクリック率を設計することが可能であることも確認された。
以上の第1検証試験の結果から明らかなように、上述した本実施の形態における圧電発電装置100Aまたはこれに準じた圧電発電装置100A’とすることにより、圧電発電体120における発電に必要な押圧荷重を低く抑えつつ高いクリック感を得ることができることが、実験的にも確認されたと言える。
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2における圧電発電装置の斜視図であり、図17および図18は、それぞれ図16中に示すXVII−XVII線およびXVIII−XVIII線に沿った断面図である。また、図19は、図16に示す圧電発電装置の分解斜視図であり、図20は、図16に示す圧電発電装置に外力が付与された状態における断面図である。まず、これら図16ないし図20を参照して、本実施の形態における圧電発電装置100Bの構成について説明する。なお、圧電発電装置100Bは、上述した実施の形態1における圧電発電装置100Aに代えて、上述した実施の形態1における送信機1およびこれに具備される圧電発電モジュール10に具備されるものである。
図16ないし図20に示すように、圧電発電装置100Bは、上述した実施の形態1における圧電発電装置100Aと近似の構成を有しており、当該圧電発電装置100Aと比較した場合に、可動部としてのレバー130の組付け姿勢が異なる点において主としてその構成が相違しており、これに伴って当該レバー130の形状が異なる点や補助バネ170の形状が異なる点等において、細部の構成が若干相違している。上記のとおり可動部としてのレバー130の組付け姿勢が異なることにより、本実施の形態における圧電発電装置100Bは、上述した実施の形態1における圧電発電装置100Aよりも発電効率の向上が図られている。
図17ないし図20に示すように、補助バネ170は、平面視略T字状であって側面視した場合に略C字状に屈曲した形状を有しており、その一部が反転バネ160の下方に配置される(すなわち、反転バネ160と圧電発電体120との間に位置する)とともに残る部分が反転バネ160の下方の位置から外側に引き出された姿勢で第2フレキシブル配線基板150に取付けられている。補助バネ170は、たとえば単一の金属製の板バネまたはその積層構造物にて構成される。
反転バネ160の下方の位置から外側に引き出された部分の補助バネ170の両端には、貫通孔170a(図19参照)が設けられており、この貫通孔170aに対応する部分の第2フレキシブル配線基板150にも貫通孔150a(図19参照)が設けられている。これら貫通孔150a,170aは、いずれもレバー130の基部131に設けられたビス穴131aに合致するように設けられており、当該貫通孔150a,170aを挿通するようにビス180がビス穴131aに螺合されることにより、レバー130に対して第2フレキシブル配線基板150および補助バネ170が固定されることになる。
また、補助バネ170の反転バネ160の下方に位置する部分(すなわち、反転バネ160の頂部に対応する部分)には、当該反転バネ160の頂部に当接する突部171が設けられている。これにより、ユーザが操作ボタンを操作した場合に、反転バネ160の座屈現象が確実に生じることになる。
一方、レバー130は、上述した実施の形態1と同様に、平面視略矩形状の板状の基部131と、互いに対向するように当該基部131の相対する二辺から立設された立壁部133,134とを有している。一対の立壁部133,134には、ケース体110に設けられた軸支孔113a,114aに挿入されることで当該軸支孔113a,114aによって軸支される軸部133a,134が設けられており、これによりレバー130は、ケース体110に回動可能に組付けられている。
また、レバー130のうち、その回転軸1000から最も遠い部分である基部131の先端部135は、ケース体110の側壁部115側の位置に配置されており、当該先端部135は、レバー130を圧電発電体120側に回動させた場合に、ケース体110の側壁部115に設けられた突き当たり面115aに当接するように構成されている(図20参照)。なお、レバー130は、上述した基部131における先端部135の折り曲げ方向において、上述した実施の形態1とその形状が相違している。
図18に示すように、圧電発電装置100Bにおいては、当該圧電発電装置100Bに外力が付与されていない状態(すなわち圧電発電体120に変形が生じていない状態)において、レバー130の基部131のうちの先端部135を除く部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向(すなわち圧電発電体120の主面と平行な方向)に交差するように傾斜して配置されている。より詳細には、レバー130の当該部分のうちの回転軸1000に近い側の端部が、レバー130の当該部分のうちの先端部135に近い側の端部よりも圧電発電体120により近い位置に配置されるように、レバー130が構成されている。
図18に示す状態において、たとえばユーザが、第1スイッチ141Aに対応した操作ボタン(不図示)を図中に示す矢印AR1方向に向けて押し下げた場合は、操作ボタンが移動することで第1フレキシブル配線基板140を介してレバー130が外力を受ける。これにより、図20に示すように、レバー130が回転軸1000を回転中心として図中矢印DR方向に回動し、結果としてレバー130が圧電発電体120側に向けて変位する。
レバー130が変位することにより、圧電発電体120とレバー130との間に配置された外力伝達部としての反転バネ160および補助バネ170がこれらによって圧縮されることになり、その反力を受けることで圧電発電体120に含まれる個々の圧電素子120aにも撓み変形が生じる。
図20に示すように、レバー130の先端部135がケース体110の突き当たり面115aに当接した状態(すなわち、レバー130をそれ以上押し下げることができなくなった状態)においては、レバー130の基部131のうちの先端部135を除く部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向(すなわち、変形前の圧電発電体120の主面と平行な方向)に配置される。より詳細には、レバー130の当該部分のうちの回転軸1000に近い側の端部と、レバー130の当該部分のうちの先端部135に近い側の端部とが、圧電発電体120の厚み方向に沿って同じ高さに配置されるように、レバー130が構成されている。
したがって、圧電発電装置100Bに外力が付与されて圧電発電体120に最大の変形が生じた状態においては、レバー130の基部131のうちの先端部135を除く部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向に配置されることになる。
ここで、レバー130の先端部135がケース体110の突き当たり面115aに当接するレバー130の回動量を、圧電発電体120における発電に必要な押圧ストロークを生じさせるレバー130の回動量と等しく設定すれば、必要以上のレバー130の押し下げ操作が不要になり、圧電発電体120に無駄な外力が付与されることを防止することができる。
一方で、図20に示す状態からユーザが第1スイッチ141Aに対応した操作ボタン(不図示)の操作を解除することにより、圧電発電装置100Bに付与されていた外力は、これが取り除かれることになる。これに伴い、圧電発電体120、反転バネ160および補助バネ170の有する弾性力に基づいてこれらが元の状態に復元することになり、レバー130も再度変位して(すなわち、図20中に示す矢印DR方向とは反対方向に向けて変位して)元の位置に復帰する。これにより、圧電発電装置100Bは、図18に示す状態に戻ることになる。なお、その際、反転バネ160に生じていた座屈も解消することになる。
なお、ここではその説明は省略するが、ユーザが第1スイッチ141Bに対応した操作ボタン(不図示)を操作した場合、および、ユーザが第1スイッチ141A,141Bに対応した操作ボタンを同時に操作した場合についても、上記説明に準じた状態となる。
図21は、本実施の形態における圧電発電装置において、操作時において各部に付与される力の方向変化を示す図であり、図22は、比較例2に係る圧電発電装置において、操作時において各部に付与される力の方向変化を示す図である。ここで、図21(A)および図21(B)は、圧電発電体に変形が生じ始める時点を示しており、図21(B)および図22(B)は、圧電発電体に最大の変形が生じる時点を示している。また、図21(C)および図22(C)は、レバーが変位することで圧電発電体が押圧されて変形する過程における後述する押圧角の変化を示した概念図である。以下、これら図21および図22を参照して、本実施の形態における圧電発電装置100Bとすることにより、高い発電効率が実現できる仕組みについて詳説する。なお、図21および図22においては、理解を容易とするために、要部のみを抜き出して図示している。
図21を参照して、上述したように、本実施の形態における圧電発電装置100Bにおいては、外力が付与されておらず圧電発電体120に変形が生じていない状態において、レバー130の基部131のうちの先端部135を除く部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向に交差するように傾斜して配置されるとともに、外力が付与されて圧電発電体120に最大の変形が生じた状態において、レバー130の当該部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向に配置されるように構成されている。
そのため、図21(A)に示すように、圧電発電体120に変形が生じ始める時点においては、図示しない操作ボタンがレバー130を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる一方、レバー130が押される方向は、圧電発電体120の厚み方向と交差する方向になる。また、これに伴い、レバー130が圧電発電体120を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と交差する方向になる一方、圧電発電体120が押される方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。
一方、図21(B)に示すように、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点においては、図示しない操作ボタンがレバー130を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向のままである一方、レバー130が押される方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。また、これに伴い、レバー130が圧電発電体120を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になり、圧電発電体120が押される方向も、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。
すなわち、図21(C)に示すように、圧電発電体120に印加する力の方向と圧電発電体120の厚み方向とが成す角度のうちの小さい方の角度(図中に示す角度θ)を押圧角と定義すると、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点での押圧角が、圧電発電体120に変形が生じ始める時点での押圧角よりも小さくなる。ここで、本実施の形態においては、上述したように圧電発電体120に最大の変形が生じる時点において、圧電発電体120を押す方向が圧電発電体120の厚み方向と一致する(すなわち、圧電発電体120を押す方向と圧電発電体120の厚み方向とが平行になる)こととなるため、その際の押圧角は、0[°]である。
また、本実施の形態においては、レバー130が回転軸1000を回転中心として回動するように構成されているため、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、上記押圧角は、圧電発電体120に変形が生じ始める時点から圧電発電体120に最大の変形が生じる時点までの間で徐々に減少することになる(図21(C)に示した矢印参照)。
一方で、図22に示すように、比較例2に係る圧電発電装置100X’においては、外力が付与されておらず圧電発電体120に変形が生じていない状態において、レバー130の基部131のうちの先端部135を除く部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向に配置されるとともに、外力が付与されて圧電発電体120に最大の変形が生じた状態において、レバー130の当該部分が、圧電発電体120の厚み方向と直交する方向に交差するように傾斜して配置されるように構成されている。なお、比較例2に係る圧電発電装置100X’のその他の構成は、いずれも本実施の形態における圧電発電装置100Bと同様である。
そのため、図22(A)に示すように、圧電発電体120に変形が生じ始める時点においては、図示しない操作ボタンがレバー130を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になるとともに、レバー130が押される方向も、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。また、これに伴い、レバー130が圧電発電体120を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になるとともに、圧電発電体120が押される方向も、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。
一方、図22(B)に示すように、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点においては、図示しない操作ボタンがレバー130を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向のままである一方、レバー130が押される方向は、圧電発電体120の厚み方向と交差する方向になる。また、これに伴い、レバー130が圧電発電体120を押す方向は、圧電発電体120の厚み方向と交差する方向になる一方、圧電発電体120が押される方向は、圧電発電体120の厚み方向と平行な方向になる。
すなわち、図22(C)に示すように、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点での押圧角が、圧電発電体120に変形が生じ始める時点での押圧角よりも大きくなる。ここで、当該比較例2においては、上述したように圧電発電体120に変形が生じ始める時点において、圧電発電体120を押す方向が圧電発電体120の厚み方向と一致する(すなわち、圧電発電体120を押す方向と圧電発電体120の厚み方向とが平行になる)こととなるため、その際の押圧角は、0[°]である。
また、当該比較例2においては、レバー130が回転軸1000を回転中心として回動するように構成されているため、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、上記押圧角は、圧電発電体120に変形が生じ始める時点から圧電発電体120に最大の変形が生じる時点までの間で徐々に増加することになる(図22(C)に示した矢印参照)。
このように、本実施の形態における圧電発電装置100Bにおいては、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点での押圧角が、圧電発電体120に変形が生じ始める時点での押圧角よりも小さくなる反面、上記比較例2に係る圧電発電装置100X’においては、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点での押圧角が、圧電発電体120に変形が生じ始める時点での押圧角よりも大きくなる。
この違いに基づき、発電効率の観点からは大きな相違が生じる。以下、その相違をシミュレーションにより検証した第2検証試験について説明する。図23は、当該第2検証試験の結果を示したグラフである。なお、当該第2検証試験においては、本実施の形態における圧電発電装置100Bおよび比較例2に係る圧電発電装置100X’のいずれにおいても、圧電発電体120のバネ定数を10[N/mm]に設定するとともに、圧電発電体120に変形が生じ始める時点から圧電発電体120に最大の変形が生じる時点までに要するレバー130の回転角度を20[°]に設定している。
図23に示すように、本実施の形態における圧電発電装置100Bおよび比較例2に係る圧電発電装置100X’のいずれにおいても、レバー130の回転角度が大きくなるにつれてレバー130を押すために必要となる力は増加することになる。ここで、レバー130の回転角度が0°からおおよそ10°までの範囲においては、本実施の形態における圧電発電装置100Bおよび比較例2に係る圧電発電装置100X’のいずれにおいても同等の力が必要であることが分かる。
これに対し、レバー130の回転角度がおおよそ10°から20°までの範囲においては、レバー130を押すために必要となる力に大きな相違が生じ、本実施の形態における圧電発電装置100Bとすることにより、比較例2に係る圧電発電装置100X’とした場合よりも小さい力でレバー130を押圧することができることが分かる。ここで、本実施の形態における圧電発電装置100Bにおいては、レバー130の回転角度が20°である場合にレバー130を押すために必要となる力は、5.99[N]であるのに対し、比較例2に係る圧電発電装置100X’においては、レバー130の回転角度が20°である場合にレバー130を押すために必要となる力は、6.78[N]である。
これは、レバー130が変位するにつれて圧電発電体120の変形量が増加することと、上述した押圧角の変化の仕方の違いとに起因している。
すなわち、ユーザが操作ボタンを押し下げ始めた段階(すなわち、レバー130の回転角度が0°からおおよそ10°までの範囲)においては、レバー130の変位に伴って変形する圧電発電体120の変形量が未だ大きくなく、圧電発電体120が変形することによってレバー130が受ける反力が十分に小さい状態にある。
そのため、上記操作ボタンを押し下げ始めた段階においては、上述した押圧角の違いによる影響は小さく、本実施の形態における圧電発電装置100Bと比較例2に係る圧電発電装置100X’との間でレバー130を押すために必要となる力に大きな差は生じない。
その反面、ユーザが操作ボタンを押し下げ続けた段階(すなわち、レバー130の回転角度がおおよそ10°から20°までの範囲)においては、レバー130の変位に伴って変形する圧電発電体120の変形量が大きくなり、圧電発電体120が変形することによってレバー130が受ける反力が、上記操作ボタンを押し下げ始めた段階よりも、圧電発電体120のバネ定数に起因して大幅に大きい状態となる。
その際、本実施の形態における圧電発電装置100Bにおいては、押圧角がより小さくなることに伴い、圧電発電体120を当該圧電発電体120の厚み方向に沿って押圧する力が効率的に圧電発電体120に作用するのに対し、比較例2に係る圧電発電装置100X’においては、押圧角がより大きくなることに伴い、圧電発電体120を当該圧電発電体120の厚み方向に沿って押圧する力が非効率的に圧電発電体120に作用することとなってしまう。
そのため、上記操作ボタンを押し下げ続けた段階においては、上述した押圧角の違いによる影響が大きくなり、本実施の形態における圧電発電装置100Bと比較例2に係る圧電発電装置100X’との間でレバー130を押すために必要となる力に大きな差が生じる。その結果、上述したとおり、レバー130を押すために必要となる力が、比較例2に係る圧電発電装置100X’に比べて、本実施の形態における圧電発電装置100Bにおいてより小さくて済むことになる。
したがって、本実施の形態における圧電発電装置100Bのように、レバー130が変位することで圧電発電体120が押圧されて変形する過程において、圧電発電体120に最大の変形が生じる時点での押圧角が、圧電発電体120に変形が生じ始める時点での押圧角よりも小さくなるように構成することにより、高い発電効率を実現することが可能になる。
なお、上述したように、圧電発電体120に無駄な外力が付与されることを防止するためには、レバー130の回動範囲内において最大限レバー130が押し下げられた状態において、圧電発電体120において必要な発電が完了するように設定されていることが好ましいが、必ずしもそのように設定する必要はなく、レバー130の回動範囲内のいずれかの位置において、圧電発電体120において必要な発電が完了するように設定すれば、所期の目的は達成されることになる。
上述した本発明の実施の形態1,2においては、反転バネをスイッチとして利用した場合を例示して説明を行なったが、反転バネを利用してスイッチを構成する必要性は必ずしもなく、別途これに代わるスイッチを設けてもよいし、そもそも可動部と圧電素子との間にスイッチが必要でない場合には、これらの間に反転バネのみを設けることとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1,2においては、可動部としてレバーを採用した場合を例示して説明を行なったが、外力を受けることで圧電素子の厚み方向に実質的に沿った方向に変位可能な可動部であれば、どのようなものを利用することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1,2において示した圧電発電モジュールのパワーマネジメント回路の構成はあくまでも一例に過ぎず、異なる回路構成を採用することも当然に可能である。
さらには、上述した本発明の実施の形態1,2においては、送信機およびこれに具備される圧電発電モジュールに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、他の電子機器およびこれに具備される圧電発電モジュールに本発明を適用することも当然に可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって画定され、また請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。