JP6670494B2 - 心筋細胞の製造方法、心室型心筋細胞及びその製造方法、並びにスクリーニング方法 - Google Patents

心筋細胞の製造方法、心室型心筋細胞及びその製造方法、並びにスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、心筋細胞の製造方法、心室型心筋細胞及びその製造方法、並びに肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法に関する。
近年、多能性幹細胞の1つである人工多能性幹細胞(以下、「iPS細胞」と称することがある)の研究が進められている。例えば、ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞は、再生医療、創薬研究、薬物安全性試験などの様々な用途への応用が期待されている。
再生医療では、例えば、自己のiPS細胞やバンキングされたiPS細胞から分化誘導された心筋細胞を心臓に移植することにより、失われた心臓の機能を回復させることが期待されている。また、創薬研究では、例えば、健常者のiPS細胞や難病患者から作製された疾患特異的iPS細胞から分化誘導された心筋細胞を解析やスクリーニングに利用し、循環器疾患や難病に対する新薬を開発することが期待されている。また、薬物安全性試験では、開発中もしくは開発された薬の心毒性のスクリーニングのために心筋細胞を用いたりすることが期待されている。
これまでに、心筋細胞を製造する方法として、胚様体形成法でサイトカインを用いて心筋細胞を分化誘導する方法(例えば、非特許文献1参照)、接着培養でサイトカインを使わずに心筋細胞を分化誘導する方法(例えば、非特許文献2参照)、接着培養と、浮遊培養とを併用し、サイトカインを使わずに心筋細胞を分化誘導する方法(例えば、非特許文献3参照)などが提案されている。
しかしながら、これらの提案で製造される心筋細胞は、再生医療、創薬研究、薬物安全性試験などの様々な用途への応用を考えると、品質的に十分とは言えないという問題がある。
そのため、大きく明瞭なプラトー相を有する活動電位を示し、また、大きなピークカリウム電流、ピークカルシウム電流、及びピークナトリウム電流を安定して示す高品質な心筋細胞が求められているのが現状である。
また、上記提案の技術で製造される心筋細胞には、多くの非心筋細胞が混入してしまうという問題や、心筋細胞の非均質性という問題もある。
前記心筋細胞の非均質性とは、異なる性質を有するペースメーカー型心筋細胞、心房型心筋細胞、心室型心筋細胞が混在していることを言う。
前記非心筋細胞の混入や、心筋細胞の非均質性によって、例えば、前記心筋細胞を再生医療に利用した際には、不整脈源性や発がん性が問題となり、創薬研究や薬物安全性試験に利用した際には不正確な結果が得られてしまう可能性があるという問題がある。
そのため、非心筋細胞の混入や、心筋細胞の非均質性を低減することができる心筋細胞の製造方法も求められているのが現状である。
Yang L, et al.、 Human cardiovascular progenitor cells develop from a KDR+ embryonic−stem−cell−derived population.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8 Lian X, et al.、 Robust cardiomyocyte differentiation from human pluripotent stem cells via temporal modulation of canonical Wnt signaling.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57 Minami I, et al.、 A small molecule that promotes cardiac differentiation of human pluripotent stem cells under defined, cytokine− and xeno−free conditions.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高品質な心筋細胞を製造することが可能な心筋細胞の製造方法、非心筋細胞の混入や、心筋細胞の非均質性が低減されており、高品質である心室型心筋細胞及びその製造方法、並びに心筋細胞及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いた肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 多能性幹細胞を培養し、胚様体を形成する胚様体形成工程と、
前記胚様体を培養し、中胚葉を誘導する中胚葉誘導工程と、
前記中胚葉誘導後の胚様体を培養し、心筋細胞を誘導する心筋細胞誘導工程と、
前記心筋細胞誘導後の胚様体を解離する胚様体解離工程とを含み、
前記胚様体解離工程が、前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間に行われることを特徴とする心筋細胞の製造方法である。
<2> 前記<1>に記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞に蛍光RNAプローブを導入する蛍光RNAプローブ導入工程と、
前記蛍光RNAプローブに由来する蛍光を発する細胞を分取する分取工程とを含むことを特徴とする心室型心筋細胞の製造方法である。
<3> 活動電位振幅が140mV以上であり、300pA以上のピークカリウム電流、1nA以上のピークカルシウム電流、及び6.5nA以上のピークナトリウム電流を示すことを特徴とする心室型心筋細胞である。
<4> 肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法であって、
心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いることを特徴とするスクリーニング方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高品質な心筋細胞を製造することが可能な心筋細胞の製造方法、非心筋細胞の混入や、心筋細胞の非均質性が低減されており、高品質である心室型心筋細胞及びその製造方法、並びに心筋細胞及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いた肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法を提供することができる。
図1は、製造例2において、蛍光RNAプローブを導入しなかった場合の結果を示す図である。 図2は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてSF102を導入した場合の結果を示す図である。 図3は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてMYL2−1を導入した場合の結果を示す図である。 図4は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてMYL2−2を導入した場合の結果を示す図である。 図5は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてMYL3−1を導入した場合の結果を示す図である。 図6は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてMYL3−2を導入した場合の結果を示す図である。 図7は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてIRX4−1を導入した場合の結果を示す図である。 図8は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてIRX4−2を導入した場合の結果を示す図である。 図9は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてRPL3L−1を導入した場合の結果を示す図である。 図10は、製造例2において、蛍光RNAプローブとしてRPL3L−2を導入した場合の結果を示す図である。 図11は、試験例1において、FACSでソーティングを行った結果を示す図である。 図12は、試験例1において、FACSでソーティングを行った結果を示す図である。 図13は、試験例2における遺伝子の発現量を解析した結果を示す図である。 図14は、試験例3におけるMYL2陽性分画の細胞の活動電位の代表的な一例を示す図である。 図15は、試験例3におけるMYL2陰性分画の細胞の活動電位の代表的な一例を示す図である。 図16は、試験例5における遺伝子の発現量を解析した結果を示す図である。 図17は、試験例7において、本発明の方法により精製した心室型心筋細胞のナトリウム電流を解析した結果を示す図である。 図18は、試験例7において、市販のiCell Cardiomyocytesのナトリウム電流を解析した結果を示す図である。 図19は、試験例7において、市販のReproCardioのナトリウム電流を解析した結果を示す図である。 図20は、試験例7において、本発明の方法により精製した心室型心筋細胞のカリウム電流を解析した結果を示す図である。 図21は、試験例7において、市販のiCell Cardiomyocytesのカリウム電流を解析した結果を示す図である。 図22は、試験例7において、市販のReproCardioのカリウム電流を解析した結果を示す図である。 図23は、試験例7において、本発明の方法により精製した心室型心筋細胞のカルシウム電流を解析した結果を示す図である。 図24は、試験例7において、市販のiCell Cardiomyocytesのカルシウム電流を解析した結果を示す図である。 図25は、試験例7において、市販のReproCardioのカルシウム電流を解析した結果を示す図である。 図26は、試験例8における健常者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞を免疫染色した代表的な一例を示す図である。 図27は、試験例8におけるにおける肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞を免疫染色した代表的な一例を示す図である。 図28は、試験例8のハイコンテンツ解析機器による細胞面積を解析した結果を示す図である。 図29は、試験例8のハイコンテンツ解析機器による細胞の真円率を解析した結果を示す図である。 図30は、試験例8のハイコンテンツ解析機器による核の面積を解析した結果を示す図である。 図31は、試験例8のハイコンテンツ解析機器による核の真円率を解析した結果を示す図である。 図32は、試験例8のハイコンテンツ解析機器によるファロイジン染色強度を解析した結果を示す図である。 図33は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Hole”を解析した結果を示す図である。 図34は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Edge”を解析した結果を示す図である。 図35は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Ridge”を解析した結果を示す図である。 図36は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Valley”を解析した結果を示す図である。 図37は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Bright”を解析した結果を示す図である。 図38は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Dark”を解析した結果を示す図である。 図39は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Saddle”を解析した結果を示す図である。 図40は、試験例8のハイコンテンツ解析機器付属のテクスチャ解析の項目の“Spot”を解析した結果を示す図である。 図41は、試験例9のハイコンテンツ解析機器による細胞面積を解析した結果を示す図である。 図42は、試験例9のハイコンテンツ解析機器による核の面積を解析した結果を示す図である。
(心筋細胞の製造方法)
本発明の心筋細胞の製造方法は、胚様体形成工程と、中胚葉誘導工程と、心筋細胞誘導工程と、胚様体解離工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<胚様体形成工程>
前記胚様体形成工程は、多能性幹細胞を培養し、胚様体を形成する工程である。
<<多能性幹細胞>>
前記多能性幹細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、iPS細胞、ES細胞などが挙げられる。これらの中でも、iPS細胞が好ましい。
前記多能性幹細胞の種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多能性幹細胞の調製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、後述するフィーダー細胞培養工程により未分化状態で維持されている多能性幹細胞を解離したものを前記胚様体形成工程に用いることができる。
<<培地>>
前記胚様体形成工程における培地(以下、「胚様体形成工程用培地」、「胚様体形成工程用培養液」と称することがある)としては、胚様体を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記胚様体形成工程用培地の具体例としては、多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地にY27632を最終濃度5μM〜10μMで添加した培地、StemPro34(Invitrogen社製)にBMP4などのサイトカインを添加した培地などが挙げられる。
前記多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地の具体例としては、ReproFF(リプロセル社製)、ReproFF2(リプロセル社製)、ReproXF(リプロセル社製)、Essential 6(Invitrogen社製)、Essential 8(Invitrogen社製)、mTeSR1(STEMCELL Technologies社製)、TeSR2(STEMCELL Technologies社製)などが挙げられる。
前記胚様体形成工程用培地は、Yang L, et al.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8、Lian X, et al.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57、Minami I, et al.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60などを参照して調製することができる。
また、前記多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地としては、下記多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−1、多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−2を用いることもできる。
−多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−1−
基礎培地として、DMEM/F12(ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、下記表1−1及び表1−2に記載の成分を添加した培地(以下、「第1の分化誘導培地」と称することがある)。
−多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−2−
基礎培地として、イスコフ改変ダルベッコ培地(以下、「IMDM」と称することがある)を用い、前記基礎培地に、下記表2−1及び表2−2に記載の成分を添加した培地(以下、「一液式分化誘導培地」と称することがある)。
前記胚様体形成工程用培地の中でも、前記多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−1にY27632を最終濃度5μM〜10μMで添加した培地、前記多能性幹細胞を未分化状態で維持可能な培地−2にY27632を最終濃度5μM〜10μMで添加した培地が好ましい。
<<培養>>
前記胚様体形成工程における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、接着加工を行っていない培養皿や低接着加工を行った培養皿を用い、前記多能性幹細胞を培養する方法やスピナーフラスコを用い、前記多能性幹細胞を培養する方法が挙げられる。
前記接着加工を行っていない培養皿、低接着加工を行った培養皿、及びスピナーフラスコは、市販品を用いることができる。
−期間−
前記胚様体形成工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、24時間〜48時間などが挙げられる。
−培養条件−
前記胚様体形成工程における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができる。
前記培養は、低酸素条件で行ってもよいし、大気条件で行ってもよいが、分化効率に優れる点で、低酸素条件が好ましい。
低酸素条件とは、常酸素濃度(21%)を下回る酸素濃度条件をいう。
前記低酸素条件における酸素濃度としては、21%未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1%以上21%未満が好ましく、1%以上10%以下がより好ましく、4%以上6%以下が特に好ましい。
<中胚葉誘導工程>
前記中胚葉誘導工程は、前記胚様体を培養し、中胚葉を誘導する工程である。
<<培地>>
前記中胚葉誘導工程における培地(以下、「中胚葉誘導工程用培地」、「中胚葉誘導工程用培養液」と称することがある)としては、中胚葉を誘導することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Yang L, et al.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8に記載の培地、Lian X, et al.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57に記載の培地、Minami I, et al.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60に記載の培地などが挙げられる。
前記中胚葉誘導工程用培地の具体例としては、下記第2の分化誘導培地、前記一液式分化誘導培地、StemPro34(Invitrogen社製)などの培地に、Wntシグナル活性化物質、Activin AやBMP4などのサイトカインを添加した培地などが挙げられる。これらの中でも、下記第2の分化誘導培地にWntシグナル活性化物質を添加した培地、前記一液式分化誘導培地にWntシグナル活性化物質を添加した培地が好ましい。
前記Wntシグナル活性化物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Wntタンパク質、CHIR99021等の化合物などが挙げられる。これらの中でも、CHIR99021が好ましい。前記Wntシグナル活性化物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中胚葉誘導工程用培地におけるCHIR99021の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μM〜6μMが好ましく、3μM〜5μMがより好ましい。前記好ましい範囲内であると、より心筋細胞への分化誘導効率に優れる点で、有利である。
−第2の分化誘導培地−
基礎培地として、IMDM(ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、下記表3に記載の成分を添加した培地。
<<培養>>
前記中胚葉誘導工程における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養の項目に記載した方法と同様のものが挙げられる。
−期間−
前記中胚葉誘導工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、48時間〜72時間などが挙げられる。
−時期−
前記中胚葉誘導工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記胚様体形成工程開始1日目〜3日目、前記胚様体形成工程開始1日目〜4日目、前記胚様体形成工程開始2日目〜4日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−培養条件−
前記中胚葉誘導工程における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
<心筋細胞誘導工程>
前記心筋細胞誘導工程は、前記中胚葉誘導後の胚様体を培養し、心筋細胞を誘導する工程である。
前記心筋細胞誘導工程は、単回の心筋細胞誘導処理からなる態様であってもよいし、複数回の心筋細胞誘導処理からなる態様であってもよいが、複数回の心筋細胞誘導処理からなる態様が好ましい。
前記心筋細胞誘導処理の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3回が好ましい。
前記心筋細胞誘導工程は、洗浄処理を含んでもよい。
−期間−
前記心筋細胞誘導工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4日間〜25日間などが挙げられる。これらの中でも、10日間〜25日間が好ましい。
通常、心筋細胞誘導工程を4日間程度行うことで心筋細胞が分化誘導され、胚様体が拍動する様子が観察される。心筋細胞誘導工程を10日間〜25日間程度行うことで十分に心筋細胞を誘導することができる。
−時期−
前記心筋細胞誘導工程の時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記胚様体形成工程開始3日目〜20日目、前記胚様体形成工程開始4日目〜20日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
<<第1の心筋細胞誘導処理>>
前記第1の心筋細胞誘導処理は、前記中胚葉誘導後の胚様体を第1の心筋細胞誘導処理用培地(以下、「第1の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)で培養する処理である。
−培地−
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地としては、心筋細胞を誘導することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Yang L, et al.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8に記載の培地、Lian X, et al.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57に記載の培地、Minami I, et al.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60に記載の培地などが挙げられる。
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地の具体例としては、前記第2の分化誘導培地、前記一液式分化誘導培地、StemPro34(Invitrogen社製)などの培地に、Wntシグナル抑制物質、TGF−βシグナル抑制物質、エストロゲン様作用を有する物質、又はサイトカインを添加した培地などが挙げられる。
これらの中でも、前記第2の分化誘導培地にWntシグナル抑制物質、TGF−βシグナル抑制物質、及びエストロゲン様作用物質を添加した培地、前記一液式分化誘導培地にWntシグナル抑制物質、TGF−βシグナル阻害剤、及びエストロゲン様作用物質を添加した培地が好ましい。
前記Wntシグナル抑制物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Dkk−1やFrizzled8−Fc等のリコンビナントタンパク質、IWP2、IWR1、XAV939、KY02111等の化合物などが挙げられる。これらの中でも、IWP2が、低濃度から優れた分化誘導効率を発揮する点で、好ましい。前記Wntシグナル抑制物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地におけるIWP2の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μM〜10μMが好ましく、2μM〜9μMがより好ましく、4μM〜7μMが特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、より心筋細胞への分化誘導効率に優れる点で、有利である。
前記TGF−βシグナル阻害剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SB431542、SB505124、A−83−01などが挙げられる。これらの中でも、SB431542が、分化誘導効率に優れる点で、好ましい。前記TGF−βシグナル阻害剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地におけるSB431542の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μM〜10μMが好ましく、2μM〜9μMがより好ましく、3μM〜8μMが特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、より心筋細胞への分化誘導効率に優れる点で、有利である。
前記エストロゲン様作用物質とは、エストロゲン作用を示すホルモン、低分子化合物をいう。
前記エストロゲン様作用物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、ゲニステインなどが挙げられる。これらの中でも、エストラジオールが、分化誘導効率に優れる点で、好ましい。前記エストロゲン様作用を有する物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地におけるエストロゲン様作用物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nM〜10,000nMが好ましく、10nM〜1,000nMがより好ましい。前記好ましい範囲内であると、より心筋細胞への分化誘導効率に優れる点で、有利である。
前記サイトカインとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、VEGF、bFGFなどが挙げられる。前記サイトカインは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第1の心筋細胞誘導処理用培地におけるサイトカインの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1ng/mL〜100ng/mLなどが挙げられる。
−培養−
前記第1の心筋細胞誘導処理における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養の項目に記載した方法と同様のものが挙げられる。
−−期間−−
前記第1の心筋細胞誘導処理の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、48時間〜72時間などが挙げられる。
−−時期−−
前記第1の心筋細胞誘導処理を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚様体形成工程開始3日目〜6日目、胚様体形成工程開始3日目〜5日目、胚様体形成工程開始4日目〜6日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−培養条件−−
前記第1の心筋細胞誘導処理における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
<<第2の心筋細胞誘導処理>>
前記第2の心筋細胞誘導処理は、前記第1の心筋細胞誘導処理後の胚様体を第2の心筋細胞誘導処理用培地(以下、「第2の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)で培養する処理である。
−培地−
前記第2の心筋細胞誘導処理用培地としては、心筋細胞を誘導することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Yang L, et al.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8に記載の培地、Lian X, et al.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57に記載の培地、Minami I, et al.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60に記載の培地などが挙げられる。
前記第2の心筋細胞誘導処理用培地の具体例としては、前記第2の分化誘導培地、前記一液式分化誘導培地、StemPro34(Invitrogen社製)などの培地に、Wntシグナル抑制物質、TGF−βシグナル抑制物質、エストロゲン様作用を有する物質、又はサイトカインを添加した培地などが挙げられる。
これらの中でも、前記第2の分化誘導培地にWntシグナル抑制物質、及びエストロゲン様作用物質を添加した培地、前記一液式分化誘導培地にWntシグナル抑制物質、及びエストロゲン様作用物質を添加した培地が好ましい。
前記Wntシグナル抑制物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記TGF−βシグナル抑制物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記エストロゲン様作用物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記サイトカイン、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
−培養−
前記第2の心筋細胞誘導処理における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養の項目に記載した方法と同様のものが挙げられる。
−−期間−−
前記第2の心筋細胞誘導処理の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、48時間〜72時間などが挙げられる。
−−時期−−
前記第2の心筋細胞誘導処理を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚様体形成工程開始6日目〜8日目、胚様体形成工程開始5日目〜8日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−培養条件−−
前記第2の心筋細胞誘導処理における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
<<第3の心筋細胞誘導処理>>
前記第3の心筋細胞誘導処理は、前記第2の心筋細胞誘導処理後の胚様体を第3の心筋細胞誘導処理用培地(以下、「第3の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)で培養する処理である。
−培地−
前記第3の心筋細胞誘導処理用培地としては、心筋細胞を誘導することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Yang L, et al.、 Nature.、 2008 May 22;453(7194):524−8に記載の培地、Lian X, et al.、 Proc Natl Acad Sci U S A.、 2012 July 3;109(27):E1848−57に記載の培地、Minami I, et al.、 Cell Rep.、 2012 Nov 29;2(5):1448−60に記載の培地などが挙げられる。
前記第3の心筋細胞誘導処理用培地の具体例としては、前記第2の分化誘導培地、前記一液式分化誘導培地、StemPro34(Invitrogen社製)などの培地に、Wntシグナル抑制物質、TGF−βシグナル抑制物質、エストロゲン様作用を有する物質、又はサイトカインを添加した培地などが挙げられる。
これらの中でも、前記第2の分化誘導培地にエストロゲン様作用物質を添加した培地、前記一液式分化誘導培地にエストロゲン様作用物質を添加した培地が好ましい。
前記Wntシグナル抑制物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記TGF−βシグナル抑制物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記エストロゲン様作用物質、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
前記サイトカイン、及びその含有量は、上記第1の心筋細胞誘導処理用培地の項目に記載したものと同様である。
−培養−
前記第3の心筋細胞誘導処理における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養の項目に記載した方法と同様のものが挙げられる。
−−期間−−
前記第3の心筋細胞誘導処理の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4日間〜20日間などが挙げられる。これらの中でも、8日間〜12日間が好ましい。
−−時期−−
前記第3の心筋細胞誘導処理を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚様体形成工程開始8日目〜20日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−培養条件−−
前記第3の心筋細胞誘導処理における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
<<洗浄処理>>
前記洗浄処理は、前記第1の心筋細胞誘導処理、前記第2の心筋細胞誘導処理、及び前記第3の心筋細胞誘導処理の少なくともいずれかの後に、前記胚様体を洗浄する処理であり、後述する洗浄工程と同様にして行うことができる。
<胚様体解離工程>
前記胚様体解離工程は、前記心筋細胞誘導後の胚様体を解離する工程である。
−時期−
前記胚様体解離工程を行う時期としては、前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中胚葉誘導工程開始16日目から30日目までの間が好ましい。前記胚様体解離工程を前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間に行うことにより、細胞に対して強い障害を与えることなく、胚様体を解離させることができる。前記時期は、前記中胚葉誘導工程開始日を0日目として数える。
−解離方法−
前記胚様体を解離する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記胚様体にタンパク質分解酵素を接触させて解離する方法などが挙げられる。
−−接触時間−−
前記胚様体と前記タンパク質分解酵素とを連続して接触させる時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間〜30分間が好ましい。前記好ましい範囲内であると、胚様体がタンパク質分解酵素に連続して長時間曝露されることで起こる細胞死を防ぐことができ、効率良く細胞を回収することができる。
−−回数−−
前記胚様体解離工程の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、複数回が好ましい。
前記胚様体を解離する方法の好ましい態様は、以下の通りである。
(1) 胚様体が、ピペットや回収チューブの容器内面に接着しないように、ピペットや回収チューブの容器内面に、タンパク質成分を0.1質量%〜1質量%含む緩衝液を接触させる。
(2) 前記胚様体を回収チューブに回収し、沈殿させた後に上清を除去する。次いで、緩衝液を加え、再度沈殿させた後に上清を除去する作業を2回繰り返す。
(3) タンパク質分解酵素、及び核酸分解酵素を含む解離溶液を加え、37℃で5分間保持した後にピペッティングを行い、更に37℃で5分間保持する。
(4) ピペッティングを行った後に、核酸分解酵素、及び10質量%〜20質量%の血清を含むタンパク質分解反応停止液を加え、37℃で5分間保持する。これにより、タンパク質分解反応を停止させるとともに、細胞が破壊されることで溶液中に漏出したゲノムDNAを分解する。
(5) 上清中に含まれる解離した細胞を回収する。
(6) 前記(4)で沈殿していた残渣に緩衝液を加え、再度沈殿させた後に上清を除去する。
(7) タンパク質分解酵素、及び核酸分解酵素を含む解離溶液を加え、37℃で5分間保持した後にピペッティングを行い、更に37℃で5分間保持する。
(8) ピペッティングを行った後に、核酸分解酵素、及び10質量%〜20質量%の血清を含むタンパク質分解反応停止液を加え、37℃で5分間保持する。これにより、タンパク質分解反応を停止させるとともに、細胞が破壊されることで溶液中に漏出したゲノムDNAを分解する。
(9) 上清中に含まれる解離した細胞を回収する。
(10) 前記(6)〜(9)の作業を残渣がなくなるまで繰り返し行う。
(11) 前記(5)及び(9)で解離した細胞を全てまとめ、40μmのフィルタに通すことで細胞の凝集体を除去した後、遠心して細胞を回収する。
前記タンパク質成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血清、牛血清アルブミンなどが挙げられる。
前記緩衝液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PBS、HBSSなどが挙げられる。
前記タンパク質分解酵素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリプシンなどが挙げられる。
前記核酸分解酵素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Dnase Iなどが挙げられる。
前記胚様体解離工程は、前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理を含むことが好ましい。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理における培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DMEMに、血清を添加した培地などが挙げられる。前記血清の含有量としては、例えば、20質量%などが挙げられる。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理における培養は、接着培養が好ましい。
前記接着培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1日間〜3日間などが挙げられる。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理を行う時期としては、前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記解離処理を行った後、前記中胚葉誘導工程開始から30日目までの間が好ましい。前記時期は、前記中胚葉誘導工程開始日を0日目として数える。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
前記接着培養における細胞の播種密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5×10細胞/cm〜2×10細胞/cmが好ましく、8×10細胞/cm〜1.2×10細胞/cmがより好ましい。
前記解離処理を行った後の細胞を培養する処理における培養容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着培養を行うための培養容器をゼラチンでコーティングしたものが好ましい。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィーダー細胞培養工程、洗浄工程、心筋細胞成熟化工程、非心筋細胞成長抑制工程などが挙げられる。これらの中でも、心筋細胞成熟化工程、非心筋細胞成長抑制工程を含むことが好ましい。
<<フィーダー細胞培養工程>>
前記フィーダー細胞培養工程は、多能性幹細胞と、フィーダー細胞とを共に培養し、多能性幹細胞を未分化な状態で維持する工程である。
前記フィーダー細胞としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができる。
前記フィーダー細胞培養工程の培養条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<洗浄工程>>
前記洗浄工程は、上述した胚様体形成工程、中胚葉誘導工程、及び心筋細胞誘導工程の少なくともいずれかの後に、前記胚様体を洗浄する工程である。
前記洗浄の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養後の胚様体を培養液ごと容器に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去し、次いで、培養液又は緩衝液を加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去する方法などが挙げられる。
前記洗浄の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、複数回行うことが好ましい。
<<非心筋細胞成長抑制工程>>
前記非心筋細胞成長抑制工程は、非心筋細胞の成長を抑制する工程である。
前記非心筋細胞成長抑制工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記心筋細胞誘導工程と前記胚様体解離工程との間(以下、「第1の非心筋細胞成長抑制工程」、又は「非心筋細胞成長抑制工程−1」と称することがある)、及び前記胚様体解離工程と前記心筋細胞成熟化工程との間(以下、「第2の非心筋細胞成長抑制工程」、又は「非心筋細胞成長抑制工程−2」と称することがある)の少なくともいずれかで行うことが好ましい。
−第1の非心筋細胞成長抑制工程−
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程は、前記心筋細胞誘導工程後の胚様体を第1の非心筋細胞成長抑制工程用培地(以下、「第1の非心筋細胞成長抑制工程用培養液」と称することがある)で培養する工程である。
−−培地−−
第1の非心筋細胞成長抑制工程用培地としては、非心筋細胞の成長を抑制することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコースを含まない培養液に乳酸を添加した培地などが挙げられる。前記培地を用いることにより、非心筋細胞の増殖を抑制し胚様体中に含まれる心筋細胞の割合を高めることができる。
前記グルコースを含まない培養液に乳酸を添加した培地は、例えば、国際公開第2007/088874号、Tohyama et al. Cell Stem cell 2013などの記載を参照して調製することができる。
具体的には、DMEMに、牛血清アルブミンと、L−乳酸とを添加した培地などが挙げられる。前記牛血清アルブミンの含有量としては、例えば、5,000mg/Lなどが挙げられる。前記L−乳酸の含有量としては、例えば、360mg/Lなどが挙げられる。
−−培養−−
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程における培養は、浮遊培養が好ましい。
前記浮遊培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養の項目に記載した方法と同様のものが挙げられる。
−−−期間−−−
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、6日間〜10日間などが挙げられる。
−−−時期−−−
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚様体形成工程開始20日目〜28日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−−培養条件−−−
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
前記第1の非心筋細胞成長抑制工程における培養容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、血清又は牛血清アルブミンなどのタンパク質成分を0.1質量%〜1質量%程度含むPBSやHBSSなどの緩衝液を予め容器内面に接触させる処理をすることが好ましい。前記グルコースを含まない培養液に乳酸を添加した培地はタンパク質成分をほとんど含んでおらず、培養中の胚様体がピペットや回収チューブなどのプラスチック製容器内面に接着しやすくなっているが、前記処理により、プラスチック製容器内面に胚様体が接着することを防ぎ、本工程におけるロスを軽減することができる。
−第2の非心筋細胞成長抑制工程−
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程は、前記胚様体解離工程後の細胞を第2の非心筋細胞成長抑制工程用培地(以下、「第2の非心筋細胞成長抑制工程用培養液」と称することがある)で培養する工程である。
−−培地−−
第2の非心筋細胞成長抑制工程用培地としては、非心筋細胞の成長を抑制することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記第1の非心筋細胞成長抑制工程の培地の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
−−培養−−
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程における培養は、接着培養が好ましい。
前記接着培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
−−−期間−−−
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3日間〜7日間などが挙げられる。前記胚様体解離工程後の心筋細胞は、グルコースを含まない培地による培養に対する感受性が多様であることから、前記第1の非心筋細胞成長抑制工程よりも短期間であることが好ましい。
−−−時期−−−
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記胚様体解離工程後の心筋細胞が接着した後、胚様体形成工程開始30日目〜35日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−−培養条件−−−
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
前記接着培養における細胞の播種密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5×10細胞/cm〜2×10細胞/cmが好ましく、8×10細胞/cm〜1.2×10細胞/cmがより好ましい。
前記第2の非心筋細胞成長抑制工程における培養容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着培養を行うための培養容器をゼラチンでコーティングしたものが好ましい。
<<心筋細胞成熟化工程>>
前記心筋細胞成熟化工程は、前記胚様体解離工程後の心筋細胞を培養し、成熟化させる工程である。
−培地−
前記心筋細胞成熟化工程に用いる培地(以下、「心筋細胞成熟化工程用培地」、「心筋細胞成熟化工程用培養液」と称することがある)としては、心筋細胞を成熟化させることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DMEM培地に、Knockout Serum Replacement(Invitrogen社製)、Fetal Bovine Serum(Biowest社製)、Newborn Calf Serum(Hyclone社製)、Bovine Calf Serum(Hyclone社製)、又はAdult Bovine Serum(Hyclone社製)を1質量%〜20質量%含有させた培養液などが挙げられる。
−−培養−−
前記心筋細胞成熟化工程における培養は、接着培養が好ましい。
前記接着培養の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
−−期間−−
前記心筋細胞成熟化工程の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5日間〜10日間などが挙げられる。
−−時期−−
前記心筋細胞成熟化工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚様体形成工程開始35日目〜42日目などが挙げられる。前記時期は、前記胚様体形成工程開始日を0日目として数える。
−−培養条件−−
前記心筋細胞成熟化工程における培養条件としては、特に制限はなく、公知の培養条件を適宜選択することができ、例えば、上記胚様体形成工程の培養条件の項目に記載したものと同様とすることができる。
前記接着培養における細胞の播種密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5×10細胞/cm〜2×10細胞/cmが好ましく、8×10細胞/cm〜1.2×10細胞/cmがより好ましい。
前記心筋細胞成熟化工程における培養容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記心筋細胞成熟化工程を行うことにより、心筋細胞の成熟を促すことができる。心筋細胞が成熟することで、例えば、心室型心筋細胞では心室型心筋細胞特異的な遺伝子をより高発現するようになり、心室型心筋細胞特異的遺伝子を標識する技術を応用した心室型心筋細胞の単離が容易になる。また、心筋細胞を成熟させることで、生後心臓で起こる心筋細胞の変化(細胞面積の増大、分裂能の喪失、カルシウムハンドリング関連遺伝子の発現増加など)を再現することができ、再生医療や薬物スクリーニングにより適した高品質の心筋細胞を得ることができる。
上記方法により、多能性幹細胞から心筋細胞が得られたことを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、心筋細胞に特異的な遺伝子の発現を免疫染色により確認する方法、心筋細胞に特異的な遺伝子の発現をPCR法により確認する方法などが挙げられる。
また、得られた心筋細胞が高品質であるか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パッチクランプ法などが挙げられる。
具体的には、活動電位振幅が140mV以上である大きく明瞭なプラトー相を有する活動電位、300pA以上の大きなピークカリウム電流、1nA以上の大きなピークカルシウム電流、及び6.5nA以上の大きなピークナトリウム電流が確認された場合には、高品質な心筋細胞が得られたと判断することができる。
本発明の心筋細胞の製造方法により製造される心筋細胞は、後述する本発明の心室型心筋細胞の製造方法の材料、スクリーニング方法の材料などとして、好適に用いることができる。
(心室型心筋細胞及びその製造方法)
本発明の心室型心筋細胞は、本発明の心室型心筋細胞の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、本発明の心室型心筋細胞の製造方法の説明と併せて、本発明の心室型心筋細胞についても説明する。
<心室型心筋細胞の製造方法>
本発明の心室型心筋細胞の製造方法は、蛍光RNAプローブ導入工程と、分取工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<<蛍光RNAプローブ導入工程>>
前記蛍光RNAプローブ導入工程は、本発明の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞に蛍光RNAプローブを導入する工程である。
−心筋細胞−
前記心筋細胞は、多能性幹細胞から分化誘導された心筋細胞であり、ペースメーカー型心筋細胞、心房型心筋細胞、心室型心筋細胞などが混在した細胞集団である。
−蛍光RNAプローブ−
前記蛍光RNAプローブは、前記心筋細胞内の標的遺伝子の検出に用いられる。
前記心筋細胞内の標的遺伝子の有無を検出することにより、心室型心筋細胞を特異的に検出することが可能となる。
前記蛍光RNAプローブは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記標的遺伝子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、MYL2遺伝子、IRX4遺伝子、MYL3遺伝子、及びRPL3L遺伝子の少なくともいずれかが好ましく、心室型心筋細胞をより特異的に検出することができる点で、MYL2遺伝子がより好ましい。
前記標的遺伝子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記標的遺伝子における標的配列としては、標的遺伝子を検出することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各標的遺伝子における全てのアイソフォームを網羅することができる配列であることが好ましい。
前記標的配列の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mer〜30merが好ましい。
前記標的配列は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−MYL2遺伝子−
前記MYL2遺伝子は、正式名称がMyosin Light Chain 2,Regulatory,Cardiac,Slowであり、その塩基配列は、GenBank(NCBI)などの公共データベースを通じて容易に入手することができる。例えば、ヒトMYL2遺伝子の塩基配列は、NCBIアクセッション番号NM_000432.3で入手することができる。
前記MYL2遺伝子を検出するための標的配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号:1で表される配列、配列番号:2で表される配列が好ましく、配列番号:1で表される配列がより好ましい。
−−MYL2遺伝子を検出するための標的配列−−
5’−catggcacctaagaaagcaaagaagag−3’(配列番号:1)
5’−catcacccacggagaagagaaggacta−3’(配列番号:2)
−IRX4遺伝子−
前記IRX4遺伝子は、正式名称がIroquois Homeobox 4であり、その塩基配列は、GenBank(NCBI)などの公共データベースを通じて容易に入手することができる。例えば、ヒトIRX4遺伝子の塩基配列は、NCBIアクセッション番号NM_016358.2で入手することができる。
前記IRX4遺伝子を検出するための標的配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号:3で表される配列、配列番号:4で表される配列が好ましい。
−−IRX4遺伝子を検出するための標的配列−−
5’−ctatggcaactacgtgacctacggctc−3’(配列番号:3)
5’−agagctccaagaacgcagagcccgtgg−3’(配列番号:4)
−MYL3遺伝子−
前記MYL3遺伝子は、正式名称がMyosin Light Chain 3,Alkali; Ventricular,Skeletal,Slowであり、その塩基配列は、GenBank(NCBI)などの公共データベースを通じて容易に入手することができる。例えば、ヒトMYL3遺伝子の塩基配列は、NCBIアクセッション番号NM_000258.2で入手することができる。
前記MYL3遺伝子を検出するための標的配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号:5で表される配列、配列番号:6で表される配列が好ましい。
−−MYL3遺伝子を検出するための標的配列−−
5’−ctaaggaggtcgagtttgatgcttcca−3’(配列番号:5)
5’−cagctaaacctcgtgcccaggaagccc−3’(配列番号:6)
−RPL3L遺伝子−
前記RPL3L遺伝子は、正式名称がRibosomal Protein L3−Likeであり、その塩基配列は、GenBank(NCBI)などの公共データベースを通じて容易に入手することができる。例えば、ヒトRPL3L遺伝子の塩基配列は、NCBIアクセッション番号NM_005061.2で入手することができる。
前記RPL3L遺伝子を検出するための標的配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号:7で表される配列、配列番号:8で表される配列が好ましい。
−−RPL3L遺伝子を検出するための標的配列−−
5’−tgcagaacacctcagtgatgagtgccg−3’(配列番号:7)
5’−attacgctgagaaagtccctcctggtg−3’(配列番号:8)
前記蛍光RNAプローブの構成としては、特に制限はなく、公知の構成を適宜選択することができ、例えば、金ナノ粒子に蛍光標識された二本鎖オリゴヌクレオチドを結合させた構成や、直鎖状のオリゴデオキシヌクレオチドを直接蛍光標識したもの、ヘアピン状のオリゴヌクレオチドを蛍光標識したもの(モレキュラービーコンなど)などが挙げられる。
前記金ナノ粒子に蛍光標識された二本鎖オリゴヌクレオチドを結合させた構成の蛍光RNAプローブは、一方の鎖が蛍光色素分子を有し(以下、「レポーター鎖」と称することがある)、他方の鎖(以下、「捕捉鎖」と称することがある)が金ナノ粒子に結合している。二本鎖オリゴヌクレオチドを形成している状態では、前記レポーター鎖の蛍光色素分子は、前記金ナノ粒子により消光している。一方、前記蛍光RNAプローブが標的遺伝子(以下、「標的RNA」と称することがある)に近付くと、前記標的RNAが前記捕捉鎖に結合し、前記レポーター鎖が放出され、蛍光が発する。前記蛍光を検出することで、前記心筋細胞内における標的遺伝子の発現の有無を確認することができ、後述の分取工程で、心室型心筋細胞を分取することが可能となる。
前記金ナノ粒子に蛍光標識された二本鎖オリゴヌクレオチドを結合させた構成の蛍光RNAプローブは、例えば、SmartFlare(商標) RNA検出プローブ(メルク株式会社製)を用いることができる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cy3、Cy5などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記蛍光色素の中でも、Cy5が、汎用のセルソーターで検出可能な点で、好ましい。
−導入−
前記心筋細胞は、前記蛍光RNAプローブを導入する2日程度前に、8×10細胞/cm〜1.2×10細胞/cmの播種密度で播き、接着培養をすることが好ましい。
前記接着培養における培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記心筋細胞成熟化工程の培地の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記心筋細胞に前記蛍光RNAプローブを導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SmartFlare(商標) RNA検出プローブ(メルク株式会社)の推奨プロトコルに沿って導入することができる。
前記蛍光RNAプローブの導入には、細胞毒性の観点から、リポフェクタミンLTX Plus(インビトロジェン社製)を使用しないことが好ましい。
<<分取工程>>
前記分取工程は、前記蛍光RNAプローブに由来する蛍光を発する細胞(以下、「蛍光標識された細胞」と称することがある)を分取する工程である。
前記分取工程により、心室型心筋細胞が単離、精製される。
前記蛍光を発する細胞を分取する手段としては、特に制限はなく、公知の手段を適宜選択することができ、例えば、自動細胞解析分離装置(Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS))などが挙げられる。
前記分取工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記蛍光RNAプローブの導入の1日間後が好ましい。
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<心室型心筋細胞>
上記方法により、心室型心筋細胞が得られたことを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、心室型心筋細胞に特異的な遺伝子の発現を免疫染色により確認する方法、心室型心筋細胞に特異的な遺伝子の発現をPCR法により確認する方法、パッチクランプ法などで心室型心筋細胞特有の活動電位を確認する方法などが挙げられる。
また、得られた心室型心筋細胞が高品質であるか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パッチクランプ法などが挙げられる。
具体的には、活動電位振幅が140mV以上である大きく明瞭なプラトー相を有する活動電位、300pA以上の大きなピークカリウム電流、1nA以上の大きなピークカルシウム電流、及び6.5nA以上の大きなピークナトリウム電流が確認された場合には、高品質な心室型心筋細胞が得られたと判断することができる。
本発明の心室型心筋細胞は、活動電位振幅が140mV以上であり、300pA以上のピークカリウム電流、1nA以上のピークカルシウム電流、及び6.5nA以上のピークナトリウム電流を示す。
本発明の心室型心筋細胞の製造方法によれば、ペースメーカー型心筋細胞、心房型心筋細胞、心室型心筋細胞などが混在した細胞集団から、心室型心筋細胞を生きたまま分取することができる。前記心室型心筋細胞は、重症心不全などの再生医療の対象となる疾患に対し、より特異性が高いため、再生医療の実現へ向けて非常に有用である。また、心室筋型心筋細胞のみをスクリーニングに用いることで、心不全、心筋症、ヌーナン症候群などの心室筋型心筋細胞が異常を呈する疾患に対してより有用な新規薬剤を開発することが可能となる。
(スクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法である。
前記スクリーニング方法に用いる細胞としては、心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記心筋細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞が好ましい。
前記心室型心筋細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の心室型心筋細胞が好ましい。
前記スクリーニングの方法としては、心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被験物質投与工程と、測定工程と、判定工程とを含む方法が好ましい。
前記心筋細胞を用いる場合には、心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程を更に含むことが好ましい。
<被験物質投与工程>
前記被験物質投与工程は、前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかに被験物質を投与する工程である。
前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞は、健常者由来の細胞であってもよいし、肥大型心筋症患者由来の細胞であってもよいし、心肥大患者由来の細胞であってもよし、ヌーナン症候群患者由来の細胞であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−被験物質−
前記被験物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化合物、該化合物の誘導体、タンパク質、核酸分子などが挙げられる。
前記被験物質の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−培養−
前記被験物質を投与される前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかの培養方法としては、特に制限はなく、後述する測定工程で用いる方法に応じて適宜選択することができる。
例えば、パッチクランプ法を用いる場合には、前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを低密度で播種することで単細胞の状態で培養する必要があり、播種密度としては、500細胞/cm〜10,000細胞/cmが好ましい。
例えば、ハイコンテンツ解析機器を用いて測定する場合には、前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを培養容器の底面積を50%〜80%程度覆う状態で培養する必要があり、播種密度としては、15,000細胞/cm〜60,000細胞/cmが好ましく、15,000細胞/cm〜35,000細胞/cmがより好ましい。
例えば、カルシウムイメージングや細胞の動きの解析を行う場合には、前記心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを高密度に播種することでシート状に培養する必要があり、播種密度としては、1×10細胞/cm〜2×10細胞/cmが好ましい。
前記播種密度が好ましい範囲外であると、評価を適切に行うことが困難となることがある。
前記培養における培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DMEMに、血清を添加した培地などが挙げられる。前記血清の含有量としては、例えば、5質量%〜10質量%などが挙げられる。
前記培養の方法、条件としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
<測定工程>
前記測定工程は、前記被験物質を投与された心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを測定する工程である。
−方法−
前記測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パッチクランプ法を用いて電気生理学的特性を測定する方法、マイクロプレートリーダーを用いてカルシウムイオンや膜電位の変化を測定する方法、ハイコンテンツ解析機器を用いて細胞の形態、タンパク質の発現、タンパク質の修飾を測定する方法、細胞イメージングシステムを用いて細胞の動きを観察する方法などが挙げられる。
前記測定方法を行う手段としては、特に制限はなく、公知の手段を適宜選択することができる。
例えば、前記ハイコンテンツ解析機器を用いる場合、前記測定工程は、細胞質染色化合物により心筋細胞を染色し、前記心筋細胞の面積を測定する処理と、アクチン繊維染色化合物により心筋細胞を染色し、前記アクチン繊維染色化合物の染色強度を測定する処理とを含むことが好ましい。また、必要に応じて、核染色化合物により、心筋細胞を染色し、前記心筋細胞の核の面積を測定する処理を含んでもよい。
前記細胞質染色化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HCS CellMaskTM Blue(インビトロジェン社製)などが挙げられる。
前記細胞質染色化合物を用いることにより、アクチン繊維染色化合物による染色や後述する心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程における免疫染色において、細胞の端まで染色されなかったり、均一に染まらなかったりすることによる細胞の定義付けが困難であるという問題を解消することができる。
前記アクチン繊維染色化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ファロイジンなどが挙げられる。前記アクチン繊維染色化合物により、細胞骨格を染色することができる。
前記核染色化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキストなどが挙げられる。
<判定工程>
前記判定工程は、前記測定工程の結果を指標として、前記被験物質の肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療効果を判定する工程である。
−判定−
前記判定の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、ハイコンテンツ解析機器を測定方法として利用した場合、被験物質を投与した肥大型心筋症、心肥大、又はヌーナン症候群患者由来の心筋細胞又は心室型心筋細胞の細胞面積、細胞の真円率、核の面積、核の真円率、アクチン繊維染色化合物による染色強度、テクスチャ解析の各種パラメータが、健常者由来の心筋細胞又は心室型心筋細胞と同様となった場合には、前記被験物質は、肥大型心筋症、心肥大、又はヌーナン症候群に対する治療効果を有すると判定することができる。
前記テクスチャ解析の各種パラメータとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイコンテンツ解析機器としてOperetta(PerkinElmer社製)を用いた場合には、“Hole”、“Edge”、“Ridge”、“Valley”、“Bright”、“Dark”、“Saddle”、“Spot”などが挙げられる。
前記評価工程は、心室型心筋細胞の面積、及び心室型心筋細胞の細胞骨格異常の少なくともいずれかを指標とすることが好ましい。
前記心室型心筋細胞の面積を指標とすることにより、心室型心筋細胞の肥大の程度を評価することができる。
前記細胞骨格異常は、前記アクチン繊維染色化合物による染色強度、前記テクスチャ解析の各種パラメータに基づいて評価することができる。
<心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程>
前記心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、免疫染色が好ましい。
心室型心筋細胞特異的に発現する遺伝子を免疫染色することにより、心室型心筋細胞であるか否かを判別することができる。また、併せて、心房型心筋細胞特異的に発現する遺伝子についても免疫染色してもよい。
前記心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程を行う時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
後述する試験例6に示されるように、心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とでは、細胞面積が異なる。そのため、心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別することにより、前記判定工程でより適切な判定をすることができる。
本発明のスクリーニング方法によれば、肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬を効率良くスクリーニングすることが可能となる。
以下に製造例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例等に何ら限定されるものではない。
(製造例1:心筋細胞の製造)
<胚様体形成工程>
多能性幹細胞として、国立大学法人 東京大学医学部付属病院にて樹立したヒトiPS細胞を用いた。
常法に則って未分化状態で維持されている前記ヒトiPS細胞をコロニー状に解離し、下記培地(以下、「胚様体形成工程用培養液」と称することがある)に懸濁した後、低接着加工を行った培養皿(Corning超低接着加工表面(コーニング社製))で浮遊培養(培養条件:37℃、5%CO、5%O)を開始し(0日目)、1日間培養することで、前記ヒトiPS細胞の凝集体(胚様体(Embryoid Body:EB)を形成させた。
−胚様体形成工程用培養液−
基礎培地として、DMEM/F12(ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、下記表4−1及び表4−2に記載の成分を添加したもの(第1の分化誘導培地)に、更に、Y27632(シグマ社製、5μM)を添加した培地を胚様体形成工程用培養液とした。
<洗浄工程>
前記胚様体を培養液ごと遠心管に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。次いで、イスコフ改変ダルベッコ培地(以下、「IMDM」と称することがある)(ナカライテスク株式会社製)を加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。この作業を2回繰り返し行った。
<中胚葉誘導工程>
前記洗浄工程後、下記培地(以下、「中胚葉誘導工程用培養液」と称することがある)を加え、前記培養皿で、浮遊培養を再開した(胚様体形成工程開始1日目〜3日目)。
−中胚葉誘導工程用培養液−
基礎培地として、IMDM(ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、下記表5に記載の成分を添加したもの(第2の分化誘導培地)に、更に、CHIR99021(ミリポア社製、4μM)を添加した培地を中胚葉誘導工程用培養液とした。
<洗浄工程>
前記中胚葉誘導後の胚様体を培養液ごと遠心管に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。次いで、IMDMを加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。この作業を2回繰り返し行った。
<心筋細胞誘導工程>
<<第1の心筋細胞誘導処理>>
前記洗浄工程後、下記培地(以下、「第1の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)を加え、前記培養皿で、浮遊培養を再開した(胚様体形成工程開始3日目〜6日目)。
−第1の心筋細胞誘導処理用培養液−
前記中胚葉誘導工程用培養液において調製した第2の分化誘導培地に、IWP2(シグマ社製、5μM)、SB431542(シグマ社製、5μM)、及びエストラジオール(シグマ社製、100nM)を添加した培地を第1の心筋細胞誘導処理用培養液とした。
<<洗浄処理>>
前記第1の心筋細胞誘導処理後の胚様体を培養液ごと遠心管に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。次いで、IMDMを加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。この作業を2回繰り返し行った。
<<第2の心筋細胞誘導処理>>
前記洗浄工程後、下記培地(以下、「第2の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)を加え、前記培養皿で、浮遊培養を再開した(胚様体形成工程開始6日目〜8日目)。
−第2の心筋細胞誘導処理用培養液−
前記中胚葉誘導工程用培養液において調製した第2の分化誘導培地に、IWP2(シグマ社製、5μM)、及びエストラジオール(シグマ社製、100nM)を添加した培地を第2の心筋細胞誘導処理用培養液とした。
<<洗浄処理>>
前記第2の心筋細胞誘導処理後の胚様体を培養液ごと遠心管に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。次いで、IMDMを加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。この作業を2回繰り返し行った。
<<第3の心筋細胞誘導処理>>
前記洗浄工程後、下記培地(以下、「第3の心筋細胞誘導処理用培養液」と称することがある)を加え、前記培養皿で、浮遊培養を再開した(胚様体形成工程開始8日目〜20日目)。
−第3の心筋細胞誘導処理用培養液−
前記中胚葉誘導工程用培養液において調製した第2の分化誘導培地に、エストラジオール(シグマ社製、100nM)を添加した培地を第2の心筋細胞誘導処理用培養液とした。
<<洗浄処理>>
前記第3の心筋細胞誘導処理後の胚様体を培養液ごと遠心管に回収し、静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。次いで、IMDMを加え、再度静置して前記胚様体を沈殿させた後、上清を除去した。この作業を2回繰り返し行った。
<非心筋細胞成長抑制工程−1>
前記洗浄処理後、下記培地(以下、「非心筋細胞成長抑制用培養液」と称することがある)を加え、前記培養皿で、浮遊培養を再開した(胚様体形成工程開始20日目〜28日目)。
−非心筋細胞成長抑制用培養液−
基礎培地として、DMEM(グルコース不含、ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、牛血清アルブミン(シグマ社製)を5,000mg/L、L−乳酸(和光純薬工業株式会社製)を360mg/L添加した培地を非心筋細胞成長抑制用培養液とした。
<胚様体解離工程>
前記非心筋細胞成長抑制用培養液で培養した後の胚様体を以下のようにして、解離した(胚様体形成工程開始28日目、中胚葉誘導工程開始27日目)。
(1) 胚様体が、ピペットや回収チューブの容器内面に接着しないように、ピペットや回収チューブの容器内面に、血清(Biowest社製)を1質量%含むPBSを接触させた。
(2) 前記胚様体を回収チューブに回収し、沈殿させた後に上清を除去した。次いで、PBSを加え、再度沈殿させた後に上清を除去する作業を2回繰り返した。
(3) 下記組成の解離溶液を3mL加え、37℃で5分間保持した後にピペッティングを行い、更に37℃で5分間保持した。
−解離溶液−
2.5mg/L−Trypsin/1mmol/L−EDTA solution(ナカライテスク株式会社製)に、DNase I(ミリポア社製)を20mg/L添加した溶液を解離溶液として利用した。
(4) ピペッティングを行った後に、下記組成のタンパク質分解反応停止液を3mL加え、37℃で5分間保持し、タンパク質分解反応を停止させるとともに、細胞が破壊されることで溶液中に漏出したゲノムDNAを分解した。
−タンパク質分解反応停止液−
DMEM(ナカライテスク株式会社製)に、血清(Biowest社製)を20質量%、及びDNase I(ミリポア社製)を20mg/L添加した溶液をタンパク質分解反応停止液として用いた。
(5) 上清に含まれる解離した細胞を別のチューブに回収した。
(6) 前記(4)で沈殿していた残渣にPBSを加え、再度沈殿させた後に上清を除去した。
(7) 前記(3)と同様の作業を行った。
(8) 前記(4)と同様の作業を行った。
(9) 前記(5)と同様の作業を行った。
(10) 前記(6)〜(9)の作業を残渣がなくなるまで繰り返し行った。
(11) 前記(5)、及び(9)で別のチューブに回収した細胞をまとめて40μmのフィルタ(BD社製(352340))に通し、解離した細胞から細胞の凝集体を除去した。前記フィルタを通した後の細胞を遠心して上清を除去した。
前記(11)で上清を除去した後にペレットとなって沈殿している細胞を、培地(DMEM(ナカライテスク株式会社製)に血清(Biowest社製)を20質量%加えた培養液)に懸濁し、播種密度100,000細胞/cmとなるようにゼラチンコートを行った培養皿(グライナー社製)に播き、接着培養を行った(培養条件:37℃、5%CO、胚様体形成工程開始28日目〜30日目)。
なお、前記ゼラチンコートは、PBSにゼラチン(シグマ社製)を0.1質量%加えた溶液を培養皿の表面に30分間以上接触させた後、該溶液を除去することで可能である。
<非心筋細胞成長抑制工程−2>
前記胚様体解離工程後、培地を前記非心筋細胞成長抑制工程−1における非心筋細胞成長抑制用培養液に変更し、培養を継続した(培養条件:37℃、5%CO、胚様体形成工程開始30日目〜35日目)。
<心筋細胞成熟化工程>
前記非心筋細胞成長抑制工程後、培地を下記心筋細胞成熟化工程用培養液に変更し、培養を継続した(培養条件:37℃、5%CO、胚様体形成工程開始35日目〜42日目)。以上の工程により、心筋細胞を製造した。
−心筋細胞成熟化工程用培養液−
基礎培地として、DMEM(ナカライテスク株式会社製)を用い、前記基礎培地に、Bovine Calf Serum(Hyclone社製)を5質量%添加した培地を心筋細胞成熟化工程用培養液とした。
(製造例2:心室型心筋細胞の製造)
前記製造例1で得られた心筋細胞を用い、以下のようにして、心室型心筋細胞を製造(以下、「精製」と称することがある)した。
<蛍光RNAプローブ導入工程>
蛍光RNAプローブを導入する2日前に、前記製造例1で得られた心筋細胞を、播種密度100,000細胞/cmとなるようにゼラチンコートを行った培養皿(グライナー社製)に播き、接着培養を行った(培養条件:37℃、5%CO)。なお、培地は、前記製造例1の心筋細胞成熟化工程における心筋細胞成熟化工程用培養液を用いた。
前記接着培養開始2日目に、SmartFlareTM RNA検出プローブ(ミリポア社製、標的配列は下記蛍光RNAプローブの項目参照)を含む溶液(以下、「SmartFlare溶液」と称することがある)を培養液1mLあたり1μL添加し、培養を継続した。
なお、レポーター鎖の蛍光色素分子には、Cy5を用いた。
−蛍光RNAプローブ(「RNA蛍光標識プローブ」と称することもある)−
(1)標的遺伝子がMYL2遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:1で表されるプローブ(以下、「MYL2−1」と称することがある)
5’−catggcacctaagaaagcaaagaagag−3’(配列番号:1)
前記配列番号:1で表される配列は、MYL2遺伝子の71番目〜97番目の領域である。
(2)標的遺伝子がMYL2遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:2で表されるプローブ(以下、「MYL2−2」と称することがある)
5’−catcacccacggagaagagaaggacta−3’(配列番号:2)
前記配列番号:2で表される配列は、MYL2遺伝子の545番目〜571番目の領域である。
(3)標的遺伝子がIRX4遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:3で表されるプローブ(以下、「IRX4−1」と称することがある)
5’−ctatggcaactacgtgacctacggctc−3’(配列番号:3)
前記配列番号:3で表される配列は、IRX4遺伝子の365番目〜391番目の領域である。
(4)標的遺伝子がIRX4遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:4で表されるプローブ(以下、「IRX4−2」と称することがある)
5’−agagctccaagaacgcagagcccgtgg−3’(配列番号:4)
前記配列番号:4で表される配列は、IRX4遺伝子の838番目〜864番目の領域である。
(5)標的遺伝子がMYL3遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:5で表されるプローブ(以下、「MYL3−1」と称することがある)
5’−ctaaggaggtcgagtttgatgcttcca−3’(配列番号:5)
前記配列番号:5で表される配列は、MYL3遺伝子の188番目〜214番目の領域である。
(6)標的遺伝子がMYL3遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:6で表されるプローブ(以下、「MYL3−2」と称することがある)
5’−cagctaaacctcgtgcccaggaagccc−3’(配列番号:6)
前記配列番号:6で表される配列は、MYL3遺伝子の675番目〜701番目の領域である。
(7)標的遺伝子がRPL3L遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:7で表されるプローブ(以下、「RPL3L−1」と称することがある)
5’−tgcagaacacctcagtgatgagtgccg−3’(配列番号:7)
前記配列番号:7で表される配列は、RPL3L遺伝子の365番目〜391番目の領域である。
(8)標的遺伝子がRPL3L遺伝子であり、標的配列が下記配列番号:8で表されるプローブ(以下、「RPL3L−2」と称することがある)
5’−attacgctgagaaagtccctcctggtg−3’(配列番号:8)
前記配列番号:8で表される配列は、RPL3L遺伝子の1028番目〜1054番目の領域である。
(9)ネガティブコントロール(スクランブルオリゴを標識したもの、以下、「SF102」と称することがある)
<分取工程>
前記蛍光RNAプローブを導入して1日間経過後に、トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞を剥離し、FACS(FACSAriaTMIII、BD Biosciences社製)でソーティングを行った。結果を図1〜図10に示す。
図1〜図10の結果から、蛍光RNAプローブとしてMYL2−1を導入した場合に右方シフトが最も強いことが示された。
(試験例1:心室型心筋細胞の評価−1)
蛍光RNAプローブとしてMYL2−1を用い、製造例2と同様にして、心室型心筋細胞を精製した。FACSでソーティングを行った結果を図11及び図12に示す。
図12中、P1は、MYL2−1陽性分画(MYL2−1によって標識された蛍光強度が上位10%の分画)を示し、P2は、MYL2−1陰性分画(MYL2−1によって標識された蛍光強度が下位10%の分画)を示す。
−免疫染色−
FACSでソーティングを行う前の細胞群(以下、「未ソート」と称することがある)、MYL2−1によって標識された蛍光強度が上位10%の細胞群(以下、「MYL2陽性分画」と称することがある)、及びMYL2−1によって標識された蛍光強度が下位10%の細胞群(以下、「MYL2陰性分画」と称することがある)について、播種密度30,000細胞/cmとなるようにゼラチンコートを行った96穴プレート(CellCarrier−96、PerkinElmer社製)に播き、接着培養を開始した(培養条件:37℃、5%CO)。なお、培地は、DMEM(ナカライテスク株式会社製)に血清(Biowest社製)を10質量%加えた培養液を用いた。2日間後、培地を除去した後にPBSで洗浄し、4質量%パラホルムアルデヒドを常温で10分間作用させることで固定作業を行った。
心室型ミオシン軽鎖、及び心房型ミオシン軽鎖に対する抗体を用いて固定した細胞の免疫染色を以下のようにして行い、ハイコンテンツ解析機器(PerkinElmer社製、Operetta)を用いて解析した。
前記固定後の細胞をPBSで2回洗浄した後、TritonX−100(シグマ社製)を0.1質量%含むPBSを常温で5分間作用させることで透徹作業を行った。
透徹後の細胞をPBSで1回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSを常温で60分間作用させることでブロッキング作業を行った。
ブロッキング後の細胞をPBSで1回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSに、心室型ミオシン軽鎖に対するウサギポリクローナル抗体(カタログ番号10906−1−AP、Proteintech社製)及び心房型ミオシン軽鎖に対するマウスモノクローナル抗体(カタログ番号311011、Synaptics社製)を1:200で希釈することで作製した一次抗体溶液を4℃で一晩作用させた。
一次抗体溶液を作用させた細胞をPBSで3回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSに、AlexaFluor(登録商標)488で蛍光標識したヤギ抗ウサギIgG抗体(Invitrogen社製)及びAlexaFluor(登録商標)546で蛍光標識したヤギ抗マウスIgG抗体(Invitrogen社製)を1:500で希釈することで作製した二次抗体溶液を常温で1時間作用させた。
二次抗体を作用させた細胞をPBSで2回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSに、ヘキスト33342(10mg/mL、インビトロジェン社製)を1:10,000で、DMSOに溶解したHCS CellMaskTM Blue(インビトロジェン社製)を1:5,000で、メタノールに溶解したCFTM647で蛍光標識したファロイジン(Biotium社製)を1:40で希釈することで作製したカウンターステイン溶液を室温で30分間作用させた。
カウンターステインした細胞をPBSで2回洗浄した後、4質量%パラホルムアルデヒドを常温で10分間作用させることで後固定作業を行った。
前記免疫染色の結果、未ソートでは、心室筋(MYL2遺伝子単独陽性)細胞の割合が64.1%、心房筋(MYL7遺伝子単独陽性)細胞の割合が13.7%、その他の割合が22.2%であった。MYL2陽性分画では、心室型心筋細胞の割合が94.3%、心房型心筋細胞の割合が3.2%、その他の割合が2.6%であった。MYL2陰性分画では、心室型心筋細胞の割合が44.3%、心房型心筋細胞の割合が24.6%、その他の割合が31.0%であった。
したがって、本発明の心室型心筋細胞の製造方法により、心室型心筋細胞を精製できることが確認された。
(試験例2:心室型心筋細胞の評価−2)
前記試験例1で得られたMYL2陽性分画、及びMYL2陰性分画の各細胞における心室型心筋細胞特異的遺伝子(MYL2遺伝子、MYL3遺伝子、IRX4遺伝子)、及びカルシウムハンドリングに関わる遺伝子(PLN遺伝子、RYR2遺伝子、ATP2A2遺伝子、CASQ1遺伝子)の発現量をリアルタイムPCR法で解析した。結果を図13に示す。
−遺伝子の発現量の測定−
細胞からRNA抽出試薬(Trizol、インビトロジェン社製)を用いてRNAを抽出し、キット(Quantitect Reverse Trancription Kit、QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを除去した後に逆転写反応を行い、cDNAを作成した。リアルタイムPCRはユニバーサルプローブ及びLightCycler480 II(Roche社製)を用いて行った。リアルタイムPCRに用いたプライマーの配列及びユニバーサルプローブの番号は、以下のとおりである。
−−MYL2遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−gcaggcggagaggttttc−3’(配列番号:9)
リバース : 5’−agttgccagtcacgtcagg−3’(配列番号:10)
プローブ番号 : 63番
−−MYL3遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−ggcagaagtgctccgtgt−3’(配列番号:11)
リバース : 5’−agtccatcatcttggtattgagc−3’(配列番号:12)
プローブ番号 : 60番
−−IRX4遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−agagctccaagaacgcagag−3’(配列番号:13)
リバース : 5’−tcgaagtcgtccaagtcactaa−3’(配列番号:14)
プローブ番号 : 17番
−−PLN遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−ttcacattgagtaggcagagga−3’(配列番号:15)
リバース : 5’−catgaatattctttcccccact−3’(配列番号:16)
プローブ番号 : 69番
−−RYR2遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−gcggatccagtaaaacacttg−3’(配列番号:17)
リバース : 5’−tccccatgtggatagtgtcat−3’(配列番号:18)
プローブ番号 : 63番
−−ATP2A2遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−ggtcaagaagcttaaggagagatg−3’(配列番号:19)
リバース : 5’−tcacaagttccagcaaggttt−3’(配列番号:20)
プローブ番号 : 41番
−−CASQ1遺伝子を定量するためのプライマー配列及びプローブの番号−−
フォワード : 5’−gctgtggccaagaaactagg−3’(配列番号:21)
リバース : 5’−caatgacttcatctcccttgaa−3’(配列番号:22)
プローブ番号 : 56番
図13中、横軸は、遺伝子を示し、各遺伝子の項目における左側は、MYL2陰性分画の細胞における遺伝子の発現を解析した結果を示し、右側は、MYL2陽性分画の細胞における遺伝子の発現を解析した結果を示す。
図13の結果から、MYL2陽性分画では、心室型心筋細胞特異的遺伝子及びカルシウムハンドリングに関わる遺伝子の発現が高くなっていた。カルシウムハンドリングに関わる遺伝子が多いほうが成熟した心室型心筋細胞であり、応用に適しているとされることから、本発明の製造方法で得られた心室型心筋細胞は、優れたものであることが示された。
(試験例3:心室型心筋細胞の評価−3)
前記試験例1で得られたMYL2陽性分画、及びMYL2陰性分画の各細胞について、パッチクランプを用いた電気生理学的解析を行った。結果を図14及び図15に示す。
−活動電位の測定−
前記細胞を、ゼラチンをコートしたカバーグラス上に播種し、5日間〜10日間培養した後、自発的に拍動している単細胞をホールセル状態にし、電流固定下(0pA)で自発性の活動電位を測定した。細胞外液の組成は、NaCl 150mmol/L、KCl 4mmol/L、CaCl 1.2mmol/L、MgCl 1mmol/L、D(+)−グルコース 10mmol/L、HEPES 10mmol/L(NaOHを用いてpH7.4に調整)のものを用いた。電極内液の組成は、KCl 140mmol/L、MgCl 1mmol/L、EGTA 5mmol/L、MgATP 5mmol/L、HEPES 10mmol/L(KOHを用いてpH7.2に調整)のものを用いた。
図14は、MYL2陽性分画の細胞の活動電位の代表的な一例を示し、図15は、MYL2陰性分画の細胞の活動電位の代表的な一例を示す。
MYL2陽性分画では、全ての細胞で活動電位が観察され、また、心室筋様活動電位が観察された細胞の割合は92%であった(12細胞中11細胞)。一方、MYL2陰性分画では、活動電位が観察された細胞の割合は50%であり、そのうち、心室筋様活動電位が観察された細胞の割合は33%であった(6細胞中2細胞)。
したがって、電気生理学的解析の結果からも本発明の製造方法で得られた心室型心筋細胞は、優れたものであることが示された。
(試験例4:心室型心筋細胞の精製時期の検討−1)
心筋細胞として、(1)前記製造例1の胚様体解離工程後の心筋細胞、(2)前記製造例1の非心筋細胞成長抑制工程−2後の心筋細胞、又は(3)前記製造例1の心筋細胞成熟化工程後の心筋細胞を用い、蛍光RNAプローブとして、MYL2−1を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、FACSでソーティングを行った。
FACSにより分取したMYL2陽性分画について、前記試験例1と同様にして免疫染色を行った。
前記免疫染色の結果、(1)前記製造例1の胚様体解離工程後の心筋細胞を用いた場合では、心室型心筋細胞の割合が70%、心房型心筋細胞の割合が13%、その他の割合が17%であり、(2)前記製造例1の非心筋細胞成長抑制工程−2後の心筋細胞を用いた場合では、心室型心筋細胞の割合が84%、心房型心筋細胞の割合が4.9%、その他の割合が11%であり、(3)前記製造例1の心筋細胞成熟化工程後の心筋細胞を用いた場合では、心室型心筋細胞の割合が94%、心房型心筋細胞の割合が3.2%、その他の割合が2.6%であった。
したがって、心室型心筋細胞の精製効率は、心筋細胞成熟化工程を行うことによって上昇することが示された。
(試験例5:心室型心筋細胞の精製時期の検討−2)
前記試験例4で得られた各MYL2陽性分画の細胞における心室型心筋細胞特異的遺伝子(MYL2遺伝子、MYL3遺伝子、IRX4遺伝子)、及びカルシウムハンドリングに関わる遺伝子(PLN遺伝子、RYR2遺伝子、ATP2A2遺伝子、CASQ1遺伝子)の発現量を、前記試験例2と同様にして測定した。結果を図16に示す。
図16中、横軸は、遺伝子を示し、各遺伝子の項目における左側は、(1)前記製造例1の胚様体解離工程後の心筋細胞を用いた場合のMYL2陽性分画の細胞における遺伝子の発現を解析した結果を示し、中央は、(2)前記製造例1の非心筋細胞成長抑制工程−2後の心筋細胞を用いた場合のMYL2陽性分画の細胞における遺伝子の発現を解析した結果を示し、右側は、(3)前記製造例1の心筋細胞成熟化工程後の心筋細胞を用いた場合のMYL2陽性分画の細胞における遺伝子の発現を解析した結果を示す。
図16の結果から、心室型心筋細胞特異的遺伝子及びカルシウムハンドリングに関わる遺伝子の発現は、心筋細胞成熟化工程を行うことによって上昇することが示された。
(試験例6:心室型心筋細胞の精製時期の検討−3)
前記試験例4の免疫染色の結果を用い、心室型心筋細胞及び心房型心筋細胞の面積を測定した。結果を表6−1から表6−3に示す。
表6−1から表6−3の結果から、胚様体解離工程後、非心筋細胞成長抑制工程−2後、心筋細胞成熟工程後の順に、細胞面積が増大し、ばらつきが減少した。
したがって、心筋細胞成熟化工程を行うことが好ましいことが示された。
(試験例7:心室型心筋細胞の評価−4)
前記試験例1で得られたMYL2陽性分画の細胞、市販の心筋細胞である、iCell Cardiomyocytes(Cellular Dynamics International社製)、及びReproCardio(株式会社リプロセル製)について、パッチクランプを用いた電気生理学的解析を行った。
−イオンチャネル電流の測定−
前記細胞を、ゼラチンをコートしたカバーグラス上に播種し、5日間〜10日間培養した後、自発的に拍動している単細胞をホールセル状態にし、電位固定下で観察した。細胞外液の組成は、NaCl 150mmol/L、KCl 4mmol/L、CaCl 1.2mmol/L、MgCl 1mmol/L、D(+)−グルコース 10mmol/L、HEPES 10mmol/L(NaOHを用いてpH7.4に調整)のものを用いた。電極内液の組成は、KCl 140mmol/L、MgCl 1mmol/L、EGTA 5mmol/L、MgATP 5mmol/L、HEPES 10mmol/L(KOHを用いてpH7.2に調整)のものを用いた。
イオンチャネル電流を測定する際の電位プロトコルは以下を用いた。
・ ナトリウム電流 : 保持電位−90mVから−20mVまで20ミリ秒の脱分極刺激を1秒間隔で与えた。
・ カルシウム電流 : 保持電位−40mVから−0mVまで100ミリ秒の脱分極刺激を10秒間隔で与えた。
・ カリウム電流 : 保持電位−90mVから−40mVまで50ミリ秒の脱分極の後、20mV、2秒の脱分極、更に−40mV、0.5秒に再分極させる刺激を15秒間隔で与えた。
結果を図17から図25に示す。
図17は、試験例1で得られたMYL2陽性分画の細胞のナトリウム電流を解析した結果を示し、図18は、市販のiCell Cardiomyocytesのナトリウム電流を解析した結果を示し、図19は、市販のReproCardioのナトリウム電流を解析した結果を示す。
図20は、試験例1で得られたMYL2陽性分画の細胞のカリウム電流を解析した結果を示し、図21は、市販のiCell Cardiomyocytesのカリウム電流を解析した結果を示し、図22は、市販のReproCardioのカリウム電流を解析した結果を示す。
図23は、試験例1で得られたMYL2陽性分画の細胞のカルシウム電流を解析した結果を示し、図24は、市販のiCell Cardiomyocytesのカルシウム電流を解析した結果を示すし、図25は、市販のReproCardioのカルシウム電流を解析した結果を示す。
図17から図25の結果から、本発明の製造方法で得られた心室型心筋細胞は、6.5nA以上の大きなピークナトリウム電流、300pA以上の大きなピークカリウム電流、及び1nA以上の大きなピークカルシウム電流を安定して示しており、市販品と比較して、非常に優れたものであることが示された。
(試験例8:心室型心筋細胞の比較)
多能性幹細胞として、国立大学法人 東京大学医学部付属病院にて樹立した、健常者由来iPS細胞、ヌーナン症候群患者由来iPS細胞、又は肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いた以外は、前記製造例1と同様にして、心筋細胞を製造した。
前記心筋細胞を、15,000細胞/cmで96穴プレートに播種した。培地は、DMEM(ナカライテスク株式会社製)に血清(Biowest社製)を10質量%加えた培養液を用いた。
免疫染色により、MYL2遺伝子(心室型ミオシン軽鎖)を発現している細胞、MYL7遺伝子(心房型ミオシン軽鎖)を発現している細胞、細胞の核及び細胞質を染色し、ハイコンテンツ解析機器(PerkinElmer社製、Operetta)を用いて観察、解析した。
前記免疫染色は、以下のようにして行った。
播種2日間後、培地を除去した後にPBSで洗浄し、4質量%パラホルムアルデヒドを常温で10分間作用させることで固定作業を行った。
固定後の細胞をPBSで2回洗浄した後、TritonX−100(シグマ社製)を0.1質量%含むPBSを常温で5分間作用させることで透徹作業を行った。
透徹後の細胞をPBSで1回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSを常温で60分間作用させることでブロッキング作業を行った。
ブロッキング後の細胞をPBSで1回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSに、心室型ミオシン軽鎖に対するウサギポリクローナル抗体(カタログ番号10906−1−AP、Proteintech社製)及び心房型ミオシン軽鎖に対するマウスモノクローナル抗体(カタログ番号311011、Synaptics社製)を1:200で希釈することで作製した一次抗体溶液を4℃で一晩作用させた。
一次抗体溶液を作用させた細胞をPBSで3回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSに、AlexaFluor(登録商標)488で蛍光標識したヤギ抗ウサギIgG抗体(Invitrogen社製)及びAlexaFluor(登録商標)546で蛍光標識したヤギ抗マウスIgG抗体(Invitrogen社製)を1:500で希釈することで作製した二次抗体溶液を常温で1時間作用させた。
二次抗体を作用させた細胞をPBSで2回洗浄した後、正常ヤギ血清(シグマ社製)を5質量%含むPBSにヘキスト33342(10mg/mL、インビトロジェン社製)を1:10,000で、DMSOに溶解したHCS CellMaskTM Blue(インビトロジェン社製)を1:5,000で、メタノールに溶解したCFTM647で蛍光標識したファロイジン(Biotium社製)を1:40で希釈することで作製したカウンターステイン溶液を室温で30分間作用させた。
カウンターステインした細胞をPBSで2回洗浄した後、4質量%パラホルムアルデヒドを常温で10分間作用させることで後固定作業を行った。
健常者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞を免疫染色した代表的な一例を図26に示し、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞を免疫染色した代表的な一例を図27に示す。
また、ハイコンテンツ解析機器による解析の結果を図28〜図40に示す。なお、図28〜図40中、「健常者」は健常者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞中の心室型心筋細胞の結果を示し、「ヌーナン症候群」はヌーナン症候群患者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞中の心室型心筋細胞の結果を示し、「肥大型心筋症」は肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心筋細胞中の心室型心筋細胞の結果を示す。
細胞面積は、図28に示されるように、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、ヌーナン症候群患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞及び肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが大きくなっていた。
細胞の真円率は、図29に示されるように、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが小さくなっていた。
核の面積は、図30に示されるように、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが大きくなっていた。
核の真円率は、図31に示されるように、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが小さくなっていた。
ファロイジン染色強度は、図32に示されるように、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、ヌーナン症候群患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが小さくなっていた。
ファロイジン染色像についてのハイコンテンツ解析機器(PerkinElmer社製、Operetta)付属のテクスチャ解析の項目のうち、“Hole(図33)”、“Edge(図34)”、“Ridge(図35)”、“Valley(図36)”、“Bright(図37)”、及び“Dark(図38)”は、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、ヌーナン症候群患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞及び肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが小さくなっていた。また、ファロイジン染色像についてのハイコンテンツ解析機器(PerkinElmer社製、Operetta)付属のテクスチャ解析の項目のうち、“Saddle(図39)”、及び“Spot(図40)”は、健常者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞と比べて、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いて製造された心室型心筋細胞のほうが小さくなっていた。
以上のように、本発明の製造方法によると、健常者由来と、ヌーナン症候群患者由来と、肥大型心筋症患者由来とで大きさなどが異なる心室型心筋細胞となることが明らかとなった。
したがって、本発明の方法により得られる心筋細胞、及び心室型心筋細胞は、ヌーナン症候群、肥大型心筋症、及び心肥大の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法に応用できる可能性が示された。
(試験例9:スクリーニング系の確認)
多能性幹細胞として、国立大学法人 東京大学医学部付属病院にて樹立した、肥大型心筋症患者由来iPS細胞を用いた以外は、前記製造例1と同様にして、心筋細胞を製造した。
前記心筋細胞を、15,000細胞/cmで96穴プレートに播種した。培地は、DMEM(ナカライテスク株式会社製)に血清(Biowest社製)を10質量%加えた培養液を用いた。
播種の48時間後に、培地をDMEM(ナカライテスク株式会社製)に血清(Hyclone社製)を5質量%加えた培養液に交換したうえで、心肥大抑制効果が報告されている薬剤であるラパマイシン、ニフェジピン、カルベジロールを最終濃度10μMで添加した。また、前記薬剤に代えて、DMSOを添加したものをコントロールとした。
前記薬剤の添加の48時間後に、前記試験例8と同様にして、免疫染色により、MYL2遺伝子(心室型ミオシン軽鎖)を発現している細胞、MYL7遺伝子(心房型ミオシン軽鎖)を発現している細胞、細胞の核及び細胞質を染色し、ハイコンテンツ解析機器(PerkinElmer社製、Operetta)を用いて観察、解析した。
ハイコンテンツ解析機器により、心室筋型心筋細胞について解析した結果を図41〜図42に示す。
カルベジロールを添加した場合は、図41〜図42に示されるように、細胞面積及び核面積の両方が、コントロールに比べて減少していた。
ラパマイシンを添加した場合、及びニフェジピンを添加した場合は、図42に示されるように、核面積がコントロールに比べて減少していた。
したがって、本発明の製造方法により製造された心筋細胞、及び本発明の心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いることにより、心肥大に対して予防乃至治療効果を有する化合物を適切に検出できることが確認された。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 多能性幹細胞を培養し、胚様体を形成する胚様体形成工程と、
前記胚様体を培養し、中胚葉を誘導する中胚葉誘導工程と、
前記中胚葉誘導後の胚様体を培養し、心筋細胞を誘導する心筋細胞誘導工程と、
前記心筋細胞誘導後の胚様体を解離する胚様体解離工程とを含み、
前記胚様体解離工程が、前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間に行われることを特徴とする心筋細胞の製造方法である。
<2> 胚様体解離工程が、中胚葉誘導工程開始16日目から30日目までの間に行われる前記<1>に記載の心筋細胞の製造方法である。
<3> 胚様体解離工程における、胚様体とタンパク質分解酵素とを連続して接触させる時間が1分間〜30分間である前記<1>から<2>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<4> 胚様体解離工程を複数回行う前記<1>から<3>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<5> 胚様体解離工程後の心筋細胞を培養し、成熟化させる心筋細胞成熟化工程を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<6> 非心筋細胞の成長を抑制する非心筋細胞成長抑制工程を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<7> 非心筋細胞成長抑制工程が、心筋細胞誘導工程と胚様体解離工程との間、及び胚様体解離工程と心筋細胞成熟化工程との間の少なくともいずれかで行われる前記<1>から<6>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<8> 心筋細胞が、肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法、並びに心室型心筋細胞の製造の少なくともいずれかに用いられる前記<1>から<7>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞に蛍光RNAプローブを導入する蛍光RNAプローブ導入工程と、
前記蛍光RNAプローブに由来する蛍光を発する細胞を分取する分取工程とを含むことを特徴とする心室型心筋細胞の製造方法である。
<10> 蛍光RNAプローブの標的遺伝子が、MYL2遺伝子、IRX4遺伝子、MYL3遺伝子、及びRPL3L遺伝子の少なくともいずれかである前記<9>に記載の心室型心筋細胞の製造方法である。
<11> 蛍光RNAプローブの標的遺伝子が、MYL2遺伝子である前記<9>から<10>のいずれかに記載の心室型心筋細胞の製造方法である。
<12> 活動電位振幅が140mV以上であり、300pA以上のピークカリウム電流、1nA以上のピークカルシウム電流、及び6.5nA以上のピークナトリウム電流を示すことを特徴とする心室型心筋細胞である。
<13> 前記<9>から<11>のいずれかに記載の心室型心筋細胞の製造方法により製造されたものである前記<12>に記載の心室型心筋細胞である。
<14> 肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法であって、
心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いることを特徴とするスクリーニング方法である。
<15> 心筋細胞が、前記<1>から<8>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞であり、心室型心筋細胞が、前記<12>から<13>のいずれかに記載の心室型心筋細胞である前記<14>に記載のスクリーニング方法である。
<16> 心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかに被験物質を投与する被験物質投与工程と、
前記被験物質を投与された心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを測定する測定工程と、
前記測定工程の結果を指標として、前記被験物質の肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療効果を判定する判定工程とを含む前記<14>から<15>のいずれかに記載のスクリーニング方法である。
<17> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞を用い、
免疫染色により、心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程を含む前記<15>から<16>のいずれかに記載のスクリーニング方法である。
<18> 測定工程が、細胞質染色化合物により心筋細胞を染色し、前記心筋細胞の面積を測定する処理と、アクチン繊維染色化合物により心筋細胞を染色し、前記アクチン繊維染色化合物による染色強度を測定する処理とを含む前記<16>から<17>のいずれかに記載のスクリーニング方法である。
<19> 評価工程が、心室型心筋細胞の面積、及び心室型心筋細胞の細胞骨格異常の少なくともいずれかを指標とする前記<16>から<18>のいずれかに記載のスクリーニング方法である。

Claims (16)

  1. 多能性幹細胞を培養し、胚様体を形成する胚様体形成工程と、
    前記胚様体を培養し、中胚葉を誘導する中胚葉誘導工程と、
    前記中胚葉誘導後の胚様体をエストラジオール、エストロン及びエストリオールからなる群より選択される一種以上の存在下で培養し、心筋細胞を誘導する心筋細胞誘導工程と、
    前記心筋細胞誘導後の胚様体を解離する胚様体解離工程とを含み、
    前記胚様体解離工程が、前記中胚葉誘導工程開始から40日目までの間に行われることを特徴とする心筋細胞の製造方法。
  2. 胚様体解離工程が、中胚葉誘導工程開始16日目から30日目までの間に行われる請求項1に記載の心筋細胞の製造方法。
  3. 胚様体解離工程における、胚様体とタンパク質分解酵素とを連続して接触させる時間が1分間〜30分間である請求項1から2のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法。
  4. 胚様体解離工程を複数回行う請求項1から3のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法。
  5. 胚様体解離工程後の心筋細胞を培養し、成熟化させる心筋細胞成熟化工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法。
  6. 非心筋細胞の成長を抑制する非心筋細胞成長抑制工程を含む請求項5に記載の心筋細胞の製造方法。
  7. 非心筋細胞成長抑制工程が、心筋細胞誘導工程と胚様体解離工程との間、及び胚様体解離工程と心筋細胞成熟化工程との間の少なくともいずれかで行われる請求項6に記載の心筋細胞の製造方法。
  8. 心筋細胞が、肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法、並びに心室型心筋細胞の製造の少なくともいずれかに用いられる請求項1から7のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞に蛍光RNAプローブを導入する蛍光RNAプローブ導入工程と、
    前記蛍光RNAプローブに由来する蛍光を発する細胞を分取する分取工程とを含むことを特徴とする心室型心筋細胞の製造方法。
  10. 蛍光RNAプローブの標的遺伝子が、MYL2遺伝子、IRX4遺伝子、MYL3遺伝子、及びRPL3L遺伝子の少なくともいずれかである請求項9に記載の心室型心筋細胞の製造方法。
  11. 蛍光RNAプローブの標的遺伝子が、MYL2遺伝子である請求項9から10のいずれかに記載の心室型心筋細胞の製造方法。
  12. 肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療薬のスクリーニング方法であって、
    請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造された心筋細胞、及び請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法により製造された心室型心筋細胞の少なくともいずれかを用いることを特徴とするスクリーニング方法。
  13. 心筋細胞、及び心室型心筋細胞の少なくともいずれかに被験物質を投与する被験物質投与工程と、
    前記被験物質を投与された心筋細胞、及び前記心室型心筋細胞の少なくともいずれかを測定する測定工程と、
    前記測定工程の結果を指標として、前記被験物質の肥大型心筋症、心肥大、及びヌーナン症候群の少なくともいずれかに対する予防乃至治療効果を判定する判定工程とを含む請求項12に記載のスクリーニング方法。
  14. 前記判定工程が、心室型心筋細胞の面積、及び心室型心筋細胞の細胞骨格異常の少なくともいずれかを指標とする請求項13に記載のスクリーニング方法。
  15. 請求項1から8のいずれかに記載の心筋細胞の製造方法により製造された心筋細胞を用い、
    免疫染色により、心室型心筋細胞と、心房型心筋細胞とを区別する工程を含む請求項12から14のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  16. 測定工程が、細胞質染色化合物により心筋細胞を染色し、前記心筋細胞の面積を測定する処理と、アクチン繊維染色化合物により心筋細胞を染色し、前記アクチン繊維染色化合物による染色強度を測定する処理とを含む請求項13から15のいずれかに記載のスクリーニング方法。
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