JP6669052B2 - 変圧器、変圧器用の板状鉄心及び変圧器用の板状鉄心の製造方法 - Google Patents

変圧器、変圧器用の板状鉄心及び変圧器用の板状鉄心の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、変圧器、変圧器用の板状鉄心及び変圧器用の板状鉄心の製造方法に関するものである。
電気機器等に使用される変圧器は、省エネルギー化の観点等から、更なる高効率化が求められている。このような要求から、変圧器等の鉄心に用いられる無方向性電磁鋼板は、より低鉄損高磁束密度化が求められている。
特許文献1及び2には、特定の熱延板を、冷間圧延、中間焼鈍、特定のスキンパス圧延を施す、無方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。特許文献1及び2の手法は、熱延及び冷延方向に対して、特定の角度でスキンパスを施す必要があるため、1つのラインで連続的にスキンパスを施すことができず、生産性が悪い。
特許文献3には、炭素原子を0.05質量%以上含む特定の薄鋼板に、加工工程を施し、該薄鋼板の表層に特定の表面歪みを付加することにより、化成処理性に優れた高強度薄鋼板の製造方法が開示されている。
当該特許文献3の技術は、鋼の強度を増加するために炭素原子を0.05%以上含有させるものであり、電磁鋼板の技術とは異なる。
特許文献4には、特定の母材金属板を得る工程と、当該母材金属板に歪みを付与する工程と、歪み付与後の母材金属板にフェライト生成元素を付着させる工程と、当該フェライト生成元素を母材金属板に拡散させ合金化する工程と、特定温度で加熱し、次いで特定温度に冷却することにより{200}面集積度を増加させる工程とを有する、高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法が開示されている。
特許文献5には、特定の溶鋼を、移動更新する冷却体表面によって凝固せしめて鋳造鋼帯とし、次いで、該鋳造鋼帯を特定の圧延率で冷間圧延して所定の厚さとした後、仕上焼鈍する無方向性電磁鋼板の製造方法が記載されており、当該製造方法によれば、一次再結晶後の組織が{100}<0vw>集合組織を有する特定の無方向性電磁鋼板が製造できるとされている。
しかし、当該製造方法は、熱延もしくは鋳片において発生する柱状晶が板表面から中心層に向かって成長する際に、成長方向が<100>方向に一致する性質を利用して、熱延板や鋳片にランダムキューブ系方位を集積させ、当該ランダムキューブ型方位が集積したキューブ系結晶組織が冷延後再結晶で消失しないように低冷延率で冷間圧延および回復焼鈍を行い、元のキューブ方位を維持するものである。当該技術については、現状では設備制約によりキューブ集合組織の柱状晶を有する熱延鋼板もしくは鋳片は大量生産に適していないという課題があった。また、この技術では{111}方位はほとんど発達しない。
特許文献6には、特定の素材から特定の熱間圧延材を作成し、表面酸化層を除去後、特定の強冷間圧延して特定の板厚とした後、特定条件下で脱炭酸焼鈍と同時に最終焼鈍を行う、面内無方向性電磁鋼板の製造方法が記載されている。
当該製造方法は、冷間圧延において、高冷延率において形成されたαファイバー集合組織から{411}<148>〜{100}<012>に至る系列の再結晶方位が優先的に形成される現象を利用する。高冷延率のαファイバー集合組織において{100}<011>〜{211}<011>から当該再結晶方位が形成されると解釈されている。
このような{411}<148>〜{100}<012>系列のキューブ周辺の方位を有する無方向性電磁鋼板においては、ハイグレードの高Si系の材料では、高圧下率の冷延を施すにあたり、通板の安定性に課題があった。また、冷延率を高めると{111}方位はほとんど発達しなかった。
特許文献7には、特定の鋼をスラブとして、熱間圧延において粗圧延及び仕上げ圧延を施し熱延板とし、酸性し、一回の冷間圧延工程を施し、次いで特定条件による仕上焼鈍を施す、無方向性電磁鋼板の製造方法が記載されている。
また、特許文献8には、特定のスラブを粗圧延後、特定条件により熱間圧延の仕上げ圧延をして熱延板とし、次いで1回の冷間圧延後に仕上焼鈍を施す、無方向性電磁鋼板の製造方法が記載されている。
特許文献7及び8の方法は、冷間圧延の冷延率を実質的に上昇させる効果を伴う熱延を施す特徴がある。特許文献7の手法は、熱延仕上温度の極低温化により熱延集合組織に圧延集合組織を残存させ、従来よりも低い冷延率で{411}<148>〜{100}<012>系集合組織を再結晶後に形成させるものであり、特許文献8の手法は、潤滑熱延を行うことにより、熱延結晶組織における付加的せん断歪を減少させ、熱延板全厚にわたり、圧延集合組織を発達させるものである。しかしながら特許文献7及び8の手法は、熱延条件が通常条件を大きく外れており実用化されていない。
特許文献9には、鉄心に円筒状のギャップがあり、ギャップをはさんだ鉄心に電磁誘導により磁束を伝え、トランスとして動作させる技術が記載されている。
また、特許文献10には、コイルと円筒鉄心を同心円状に配置し、巻線スペースに一次巻線と二次巻線を同心円状にコイルとして巻いて設置する技術が開示されている。
更に、特許文献11には、リアクトルにおいて、磁性コアを構成する複合材料における磁性粉末の分布が不均一になることを抑制する技術が開示されている。
更にまた、特許文献12には、リアクトルにおいて、コイルを励磁した際の磁束の漏れを効果的に低減できる技術が開示されている。
また、特許文献13には、ギャップレスで組立作業性に優れるリアクトルに関する技術が開示されている。
更に、特許文献14には、筒状のコイルが、芯部、底部、円筒部からなるコアに収納されたリアクトルが開示されている。芯部、底部、円筒部からなるコアは、絶縁樹脂に磁性粉末を混合して分散させ、これらを成型することにより製造されている。
また、特許文献15には、リアクトル用コアにおいて、円柱状の内側コア、外側コア、端部コアからなり、円筒部と端部コアを嵌合する構造が開示されている。
しかし、これら特許文献9〜15に記載された技術はいずれも、集合組織に特徴を有する電磁鋼板を使用したものではなく、鉄心の磁束の流れにおける磁気抵抗を減少させることを課題としたものではない。
特開平05−247537号公報 特開平05−255752号公報 特開2010−89128号公報 特開2013−95955号公報 特開平5-306438号公報 特公昭51−942号公報 特開2010−1557号公報 特開平9−217117号公報 特開2001−57313号公報 特開2000−114063号公報 特開2013−179259号公報 特開2013−149943号公報 特開2013−162069号公報 特開2012−54483号公報 特開2008−41721号公報
従来、無方向性電磁鋼板の磁気特性は、通常、当該鋼板の板面に平行な方向で評価される場合が多かった。そのため、磁化容易軸である<100>方向を鋼板の板面に平行な方向に配置するよう結晶方位制御の努力が向けられてきた。しかし、変圧器の鉄心における磁束の方向を考えると、電磁鋼板の中を流れる磁束の方向は必ずしも鋼板板面に平行であるとは限らず、磁束の方向が鋼板板面に平行な方向から大きくずれる領域が存在する場合がある。このため従来の電磁鋼板では電磁部品の高効率化が十分とは言えない状況となっており、鋼板板面に傾斜した方向への磁束を考慮した材料が必要と考えられた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、鉄心の磁束の流れにおける磁気抵抗を減少させることが可能な変圧器、変圧器用の板状鉄心及び変圧器用の板状鉄心の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 柱状鉄心と、
前記柱状鉄心の周囲に配置された1または2以上の筒状鉄心と、
前記柱状鉄心の長手方向端部に接続するとともに前記筒状鉄心の長手方向端部に接続し、電磁鋼板の単層体または2以上の電磁鋼板の積層体からなる板状鉄心と、
前記柱状鉄心と前記筒状鉄心との間に配置された一次コイル及び二次コイルと、を備え、
前記電磁鋼板が、質量%で、
0.1≦Si≦3.5、
0.1≦Mn≦1.5、
Al≦2.5、
C≦0.003、
N≦0.003、
S≦0.003、
残部がFe、及びその他不可避不純物からなり、
さらに板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、
φ2=45°断面において、ψ=55°である方位の最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、
φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域が70°以上90°以下の無方向性電磁鋼板であることを特徴とする変圧器。
[2] 前記電磁鋼板が、更に質量%で、
Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする[1]記載の変圧器。
[3] 前記柱状鉄心と筒状鉄心と板状鉄心から構成される変圧器の全体積Vtrfmと各板状鉄心の合計の体積Vplateの間に式(1)が成立することを特徴とする[1]または[2]に記載の変圧器。
Vplate/Vtrfm ≦ 0.4 ・・・ (1)
ただし、変圧器の全体積Vtrfmは、板状鉄心の突起などの付加物を除いた外形において、変圧器の筒方向の軸に垂直な板状鉄心の断面積と、筒状鉄心を挟む2枚の板状鉄心の互いの外側の距離を筒の軸方向距離との積算値とする。
[4] 柱状鉄心と、
前記柱状鉄心の周囲に配置された1または2以上の筒状鉄心と、
前記柱状鉄心の長手方向端部に接続するとともに前記筒状鉄心の長手方向端部に接続し、電磁鋼板の単層体または2以上の電磁鋼板の積層体からなる板状鉄心と、
前記柱状鉄心と前記筒状鉄心との間に配置された一次コイル及び二次コイルと、を備える変圧器に用いられる前記板状鉄心であって、
前記電磁鋼板が、質量%で、
0.1≦Si≦3.5、
0.1≦Mn≦1.5、
Al≦2.5、
C≦0.003、
N≦0.003、
S≦0.003、
残部がFe、及びその他不可避不純物からなり、
当該無方向性電磁鋼板の板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、
φ2=45°断面において、ψ=55°である方位の最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、
φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域が70°以上90°以下の無方向性電磁鋼板であることを特徴とする変圧器用の板状鉄心。
[5] 前記電磁鋼板が、更に質量%で、
Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする[4]記載の変圧器用の板状鉄心。
[6] 質量%で、
0.1≦Si≦3.5、
0.1≦Mn≦1.5、
Al≦2.5、
C≦0.003、
N≦0.003、
S≦0.003、
残部がFe、及びその他不可避不純物からなる鋼を熱間圧延する工程と、
熱間圧延後の鋼板を少なくとも2本の表面粗度が式(2)を満たすリターンロールにより、曲げ−曲げ戻しする工程(I)と、
冷間圧延前に結晶粒の平均直径を円相当直径で50μm以上300μm以下の範囲とされた鋼板を直径600mm以下の圧延ロールにより圧延する冷間圧延工程(II)と、
仕上げ焼鈍する工程と、をこの順に有する、変圧器用の板状鉄心の製造方法。
0.7μm≦Ra≦5.0μm ・・・ (2)
[7] 前記電磁鋼板が、更に質量%で、
Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする[6]記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
[8] 前記冷間圧延工程(II)が、直径60mm以上120mm以下の圧延ロールを用いてリバース圧延機により圧延する工程である、[6]または[7]に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
[9] 前記冷間圧延工程(II)が、直径400mm以上600mm以下の圧延ロールを用いてタンデム圧延機により圧延する工程である、[6]または[7]に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
[10] 前記リターンロールの直径が、10mm以上300mm以下である、[6]乃至[9]のいずれか一項に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
[11] 鋼板の前記リターンロールへの入り側と出側とのなす角が135度以上180度以下である、[6]乃至[10]のいずれか一項に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
本発明によれば、鉄心の磁束の流れにおける磁気抵抗を減少させることが可能な変圧器、変圧器用の板状鉄心及び変圧器用の板状鉄心の製造方法を提供できる。
図1は、本発明の実施形態の変圧器の一例である単相変圧器を示す分解斜視図である。 図2は、図1に示す単相変圧器の横断面における磁束の流れを示す模式図である。 図3は、本発明の実施形態の変圧器の一例である三相変圧器の横断面における各鉄心と、一次コイル及び二次コイルとの配置関係を示す模式図である。 図4は、実施例1の無方向性電磁鋼板の表層から0.5tの深さを中心としたL断面の光学顕微鏡写真である。 図5は、比較例1の無方向性電磁鋼板の表層から0.5tの深さを中心としたL断面の光学顕微鏡写真である。 図6は、実施例1の無方向性電磁鋼板の表層から0.5tの深さにおける方位分布関数(ODF)のBunge表示である。 図7は、比較例1の無方向性電磁鋼板の表層から0.5tの深さにおける方位分布関数(ODF)のBunge表示である。 図8は、「強度が2以上であるφ1の角度領域」の説明の用に供する図面である。 図9は、「強度が2以上であるφ1の角度領域」の説明の用に供する図面である。
以下、本実施形態の変圧器、変圧器用の板状鉄心、及び板状鉄心の製造方法について説明する。
図1に、本実施形態の変圧器の一例である単相変圧器の分解斜視図を示す。図1に示す変圧器は、柱状鉄心2と、柱状鉄心2の周囲に同心環状に配置された筒状鉄心5と、柱状鉄心2及び筒状鉄心5を上下から挟むように配置された板状鉄心1と、柱状鉄心2及び筒状鉄心5の間に配置された一次コイル3及び二次コイル4と、から構成されている。
図1に示すように、筒状鉄心5は、柱状鉄心2を中心にしてほぼ同心円状に配置されている。また、柱状鉄心2の周囲に一次コイル3が配置され、一次コイル3の外周側に二次コイル4が配置され、更にその外周側に筒状鉄心5が配置されている。一次コイル3と二次コイル4の巻数比は電圧降下もしくは電圧上昇のいずれの用途にも適用可能な巻数比であってもよい。また、コイルの占積率を向上させるために平角線や断面が正方形の巻線を一次コイル3および二次コイル4に用いてもよい。
柱状鉄心2は、例えば、短冊状に切り出した方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板または電気鉄板の板片を積層して積層鉄心とし、更に積層鉄心を絶縁体で覆ったものとすることができる。積層鉄心を構成する板片の長手方向が、柱状鉄心2の軸方向と平行になる。積層鉄心を絶縁体で覆うことで、積層鉄心とコイルとの接触によりコイルの絶縁が破られることを防止できる。絶縁体としては、樹脂、セラミックスの中空円筒体を例示できる。絶縁体からなる中空円筒体に積層鉄心を格納して柱状鉄心2としてもよい。なお、以下の説明では、方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板または電気鉄板を総称して鋼板と呼ぶ場合があり、また、方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板を総称して電磁鋼板と呼ぶ場合がある。
また、柱状鉄心2の別の例として、方向性電磁鋼板を巻回してなる巻鉄心を用いてもよい。この場合、方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向を柱状鉄心の軸方向に一致させるようにして巻鉄心を構成すればよい。ただし、巻鉄心における鋼板の占積率は高いほどよいが、巻鉄心の中心部は鋼板の巻く半径が小さくなり、残留応力の影響により磁気特性が劣化する度合いが大きくなるので、中心部に円筒状の空隙を残してもよい。
更に、柱状鉄心2の他の例として、円形に打抜いた電磁鋼板を積層することで柱状鉄心2としてもよい。この際、キューブ方位が富化した、板面方向にBCC鉄の磁化容易軸である<100>が一致した結晶粒を多く含む集合組織を有する無方向性電磁鋼板を使用することが、積層した板面垂直方向の磁束の流れを円滑にする点で好ましい。
筒状鉄心5は、適当な幅と長さを持つ鋼板を円環状に巻回して巻鉄心としてもよく、円環状に打抜いた鋼板を積層して鉄心としてもよい。この際、キューブ方位が富化した、板面方向にBCC鉄の磁化容易軸である<100>が一致した結晶粒を多く含む集合組織を有する無方向性電磁鋼板を使用することが、積層した板面垂直方向の磁束の流れを円滑にするためにより好ましい。
本実施形態では、柱状鉄心2および筒状鉄心5の軸方向の磁気特性が特に優れていることが好ましい。従ってこれら柱状鉄心2及び筒状鉄心5の構成材として方向性電磁鋼板を使用した場合は、柱状鉄心2および筒状鉄心5の軸方向が方向性電磁鋼板の圧延方向と一致させるようにするとよい。
また、一般的な無方向性電磁鋼板においては、圧延方向の磁気特性が優れているので、方向性電磁鋼板と同様に、柱状鉄心2および筒状鉄心5の軸方向が無方向性電磁鋼板の圧延方向と一致させるようにするとよい。無方向性電磁鋼板としては、熱延板焼鈍を施し、冷間圧延前の結晶粒径を粗大化し、再結晶集合組織中のGOSS方位と呼ばれる{110}<001>方位が富化した無方向性電磁鋼板であることが好ましい。
コストの観点からは、柱状鉄心2および筒状鉄心5を巻鉄心で構成する場合は、鋼帯の幅方向に切り出した一枚の鋼板で巻くことが好ましいが、巻き長さが不足する場合は必要に応じ、不足する部分で鋼板を突き合わせて巻いてもよい。
また、柱状鉄心2および筒状鉄心5において、一周ごとに巻鉄心を積層して同心円状に積層した巻鉄心としてもよい。その際、突合せ部分を中心から外側に順にずらしたステップラップと称される技術を使用してもよい。
次に、板状鉄心1は、磁性体からなる板状の部材であって、図1に示すように、柱状鉄心2の長手方向両端に接続されている。また、板状鉄心1は、筒状鉄心5の長手方向両端にも接続されている。本実施形態の変圧器では、柱状鉄心2、筒状鉄心5及び板状鉄心1の接続部分における各鉄心の接合方法は、磁束の損失が極力小さくできるものであれば特に限定されない。例えば、下記(1)〜(4)に例示する接合方法を採用できる。
(1)各鉄心を接着剤により接合する。その際、接着間隙を極力薄くする接着剤により磁気抵抗を極力低減する。
(2)柱状鉄心2が短冊状の電磁鋼板を積層した積層鉄心である場合、または、電磁鋼板を巻回して筒状にした巻鉄心である場合は、柱状鉄心2の軸方向両端部に凸部を形成し、一方、板状鉄心1には凹部を形成し、これらを嵌合する。あるいは、筒状鉄心5に凹部を形成し、板状鉄心1に凸部を形成し、これらを嵌合する。板状鉄心1に凹部を設ける方法としては板状鉄心1を切削し嵌合可能な凹部を設けるか、あるいは板状鉄心1に筒状鉄心5の凸部に応じた凹部を設ける。凹部を持つ板状鉄心1は柱状鉄心2や筒状鉄心5の凸部に応じた隙間を有する板状鉄心1を分割して打ち抜き、その間隙が柱状鉄心2や筒状鉄心5の凸部に嵌合する形状として積層する。積層枚数は凸部の出っ張りに応じた枚数とする。
これにより板状鉄心1に凹部を形成し柱状鉄心2や筒状鉄心5の凸部と互いに嵌合させる。ただし、板状鉄心1を切削加工することにより残留応力が板状鉄心内に生じ磁気抵抗となるので極力残留応力が生じない加工方法を選択する必要がある。
(3)柱状鉄心2が積層鉄心の外周を絶縁材で覆うものである場合、絶縁材に鉄心長手方向よりも凸となる部分を設け、板状鉄心1を切削し嵌合可能な凹部を設け、これらを嵌合するか、あるいは板状鉄心1を積層する際に柱状鉄心2の凸部に応じた凹部を設け、絶縁材により形成された凸部と嵌合させる。凹部を持つ板状鉄心1は柱状鉄心2の凸部に応じた隙間を有する板状鉄心1を分割して打ち抜き、その間隙が柱状鉄心2の凸部に嵌合する形状として積層する。積層枚数は凸部の出っ張りに応じた枚数とする。
これにより板状鉄心1に凹部を形成し柱状鉄心2を覆い凸となる絶縁材と嵌合させる。
ただし、板状鉄心1を切削加工することにより残留応力が板状鉄心1内に生じ磁気抵抗となるので極力残留応力が生じない加工方法を選択する必要がある。
(4)熱歪が極力低減できる方法で筒状鉄心5と板状鉄心1をスポット溶接など方法で溶接する。
このような構造により、柱状鉄心2、筒状鉄心5及び板状鉄心1からなる磁路が構成される。また、板状鉄心1は、1枚の電磁鋼板からなる単層体でもよく、2以上の電磁鋼板を積層した積層体でもよい。板状鉄心1を構成する電磁鋼板については、以下に詳細に説明する。
以下、板状鉄心1を構成する無方向性電磁鋼板とその製造方法について、順に説明する。
以下の説明において「%」は、特に断りが無い限り「質量%」を表すものとする。
また、本明細書においては、磁束密度の強度を表す単位「tesla:テスラ」を表すアルファベット大文字「T」と、鋼板板厚全厚「thickness:厚み」を表すアルファベット「t」とを区別して用いる。
また、本明細書において、図の説明で使用する光学顕微鏡写真のL断面とは、鋼板法線方向と圧延方向を含む鋼板の断面を指している。L断面の観察は板幅全幅のうち、板幅中心線を中心として幅方向に90%以内の範囲から断面を取り観察することが好ましい。しかしながら、それ以外の鋼板端部のL断面の観察結果を本発明の特徴から排除することを意味するものではない。
本実施形態の板状鉄心1に好適に適用可能な無方向性電磁鋼板は、質量%で、0.1≦Si≦3.5、0.1≦Mn≦1.5、Al≦2.5、C≦0.003、N≦0.003、S≦0.003、残部がFe及びその他不可避不純物からなり、板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、φ2=45°断面において、ψ=55°である方位の最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域が70°以上90°以下である。また、Cr、Snをそれぞれ、質量%で、Cr≦1.0、Sn≦0.2の範囲で含有してもよい。
なお、φ2=45°断面において、ψ=54.7°を中心に±10°程度の範囲の方位は、一般的にγファイバーと呼ばれる。本発明においては、φ2=45°断面において、ψ=55°の方位における強度をγファイバーの代表値として取り扱うものとし、以降、本明細書においては、φ2=45°断面において、ψ=55°の方位を「γファイバー」と呼称することがある。
また、φ2=0°断面におけるψ=0°である方位は本発明においては特にCファイバーと呼ぶ。以降、本明細書においてはこの呼称を用いることがある。さらに、本発明で規定する「φ2=0°断面にてψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域」を単に「Cファイバーの特定角度領域」と呼ぶことがある。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、板面内に加え、板面に対し傾斜した方向への磁束の流れが向上し、磁気特性に優れている。
本発明者らは、無方向性電磁鋼板が、単純な長方形形状でない部材においても広く用いられている実情から、無方向性電磁鋼板の板面に平行でない方向における磁気特性の改善に、鋭意検討を進めた結果、当該無方向性電磁鋼板の板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、Cファイバーの特定角度領域が70°以上90°以下であり、かつ、γファイバーが適度に存在することにより、上記のような効果が得られるとの知見を得た。
本実施形態の無方向性電磁鋼板がこのような効果を有する作用については、未解明な部分もあるが、以下のように推測される。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、方位分布関数のBunge表示において、γファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、無方向性電磁鋼板内に、γファイバーが適度に存在している。γファイバーにおいて磁化容易軸である<100>方向は、板面に対して垂直な<111>方向と55度の角度をなして板面に対して傾斜している。このため一般的にはγファイバーは磁気特性にとって最も好ましからざる方位であり、板面内の磁気特性を向上させることを目的としている従来の電磁鋼板ではこの方位を意図的に残留させることはなく、極限まで低減させるように制御されている。
また、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、Cファイバーの特定角度領域が70°以上である。Cファイバーは、鋼板面内に<100>軸方向を有する方位であるため、この方位の強度を高めることが磁気特性にとって好ましいことは周知の事実である。しかし、いわゆる{100}方位の集積度を高めた電磁鋼板ではCファイバーの中でも特定のφ1の角度領域でのみ集積度が高くなることが多い。このような鋼板では、上記のようにγファイバーを制御したとしても、本発明で期待されるような効果は発現しない。
これは本願における板面に対して傾斜した方向への磁束の流れの良さを担保するγファイバー方位は、板面内の磁束の流れが特定方向に拘束されるような状況ではその効果を発揮できなくなることを示していると思われる。この理由は明確ではないが、板面に対して傾斜した方向への磁束の流れの良さは、他の方向についても拘束がなく全方向に流れが良い状況として発現するためと考えられる。
この結果、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、板面に平行な磁束の流れが確保されているとともに、板面に対し傾斜した方向への磁束の流れが向上し、1枚の鋼板を部材として用いた場合のみならず、特に複数の鋼板を積層した部材において、積層方向の磁気特性を改善して部材の磁気的効率を向上させるという効果を発揮する。従って、本実施形態の無方向性電磁鋼板を変圧器の板状鉄心に適用することで、柱状鉄心2及び筒状鉄心5と板状鉄心1との間における磁束の流れが向上し、変圧器の特性を向上できるようになる。
以下、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の各構成についてより詳細に説明する。
[無方向性電磁鋼板の組成]
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、少なくとも、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)を含有し、更にAl(アルミニウム)、Cr(クロム)、Sn(スズ)を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、C(炭素)、N(窒素)、S(硫黄)及びその他不可避不純物を含有してもよい、残部がFe(鉄)からなる組成を有するものである。
(0.1≦Si≦3.5)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、Siの含有割合が0.1%以上3.5%以下である。Siは電気抵抗を増加する作用を有するため、鉄損低減に寄与する。本実施形態の無方向性電磁鋼板は、鉄損低減の点から、Siの含有割合を0.1%以上とするものであり、0.5%以上が好ましく、さらに好ましくは1.0%以上がより好ましい。鉄損をさらに改善するためには1.9%以上がより好ましい。一方、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れ、圧延作業性を良好にし、仕上げの焼鈍温度の上昇を抑制する点から、Siの含有割合を3.5%以下とするものであり、3.2%以下が好ましく、2.7%以下がより好ましい。圧延作業性をさらに改善するためには2.4%以下がより好ましい。
(0.1≦Mn≦1.5)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、Mnの含有割合が0.1%以上1.5%以下である。
Mnは電気抵抗を増加する作用を有するため、鉄損低減に寄与する。また、Mnはオーステナイト拡大型元素であり、仕上焼鈍時におけるγファイバーの結晶粒の成長を抑制する。
本実施形態の無方向性電磁鋼板においては、Cファイバーの特定角度領域を広く確保しつつ適度にγファイバーを形成する点から、Mnの含有割合は、0.1%以上1.5%以下であり、0.2%以上1.3%以下であることが好ましく、0.5%以上1.0%以下であることがより好ましい。
またMnの含有割合が、0.1%以上1.5%以下であれば、鉄損を低減し、且つ磁束密度の低下を抑制できる。
(Al≦2.5)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、Alを含有してもよい。無方向性電磁鋼板がAlを含有する場合、鉄損低減の点から、0.1%以上2.5%以下であることが好ましく、0.3%以上2.4%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.9%以上2.3であることがより好ましい。
また、オーステナイト域の縮小を抑制し、Cファイバーの特定角度領域を広く確保しつつ適度にγファイバーを形成する点から、Siの含有割合と、Alの含有割合の2倍との和(Si+2Al)が、0.1%以上5.1%以下であることが好ましい。
(不可避不純物)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、本発明の効果を損なわない範囲で、不可避的に混入する各種元素(不可避不純物)を含むものであってもよい。
このような元素としては、C、N、Sのほか、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)、As(ヒ素)、Zr(ジルコニウム)、P(リン)等が挙げられる。
Cの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下が好ましい。
Nの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下がより好ましい。
Sの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下がより好ましい。
Tiの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.004%以下であることが好ましく、さらに0.003%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.002%以下がより好ましく、0.001%以下が特に好ましい。
Nbの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下が好ましい。
Asの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下が好ましい。
Zrの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.003%以下であり、さらに0.002%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.001%以下が好ましい。
Pの含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.25%以下であり、さらに0.15%以下がより好ましい。さらに秀逸な磁気特性を得るためには0.10%以下が好ましい。
また、不可避不純物全体の含有割合は、磁気特性に優れる点から、0.1%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、Cr、Snの一方または両方を含有しても良い。
(Cr≦1.0)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、1.0%以下の範囲でCrを含有してもよい。1.0%を超過するとその効果が飽和するからである。無方向性電磁鋼板がCrを含有する場合、磁気特性を改善し、本発明の効果を向上させる点から、中でも、0.1≦Cr≦1.0であることが好ましい。
(Sn≦0.2)
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、0.2%以下の範囲でSnを含有してもよい。0.2%を超過するとその効果が飽和するからである。無方向性電磁鋼板がSnを含有する場合、磁気特性を改善し、本発明の効果を向上させる点から、中でも、質量%で、0.05≦Sn≦0.2であることが好ましく、0.05≦Sn≦0.015であることがより好ましい。
無方向性電磁鋼板中の各元素の含有割合は、元素の種類に応じて下記の方法で公知の測定条件により測定することができる。
Si、Mn、Al、Cr、Sn、Ti、Nb、Zrについては、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法)により測定することができる。また、Asについては、フレームレス原子吸光法により測定することができる。更に、C、Sについては、燃焼赤外線吸収法により測定することができる。また、Nについては、加熱融解−熱伝導法により測定することができる。
具体的には、まず、測定対象となる無方向性電磁鋼板を準備する。無方向性電磁鋼板が絶縁被膜やその他の層を備える場合には、予め公知の方法により当該被膜などを取り除く。
当該無方向性電磁鋼板の一部を切子状にして秤量し、これを測定用試料とする。当該測定用試料は、測定方法に応じて以下のように処理される。なお、燃焼赤外線吸収法、及び加熱融解−熱伝導法においては、上記切子状の測定用試料をそのまま用いることができる。
(A)誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法)
前記測定用試料を酸に溶解し酸溶解液とする(必要に応じて加熱してもよい)。残渣は濾紙回収して別途アルカリ等に融解し、融解物を酸で抽出して溶液化する。当該溶液と前記酸溶解液とを混合し、必要に応じて希釈することにより、ICP−MS測定用溶液とすることができる。
(B)フレームレス原子吸光法(AA法)
前記測定用試料を酸に溶解し酸溶解液とする(必要に応じて加熱してもよい)。得られた酸溶解液を必要に応じて希釈することにより、AA法測定用溶液とすることができる。
[方位分布関数(ODF)]
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、当該無方向性電磁鋼板の板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、γファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、Cファイバーの特定角度領域が70°以上90°以下である。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、少なくとも板厚中心層においてγファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、Cファイバーの特定角度領域が70°以上であればよい。なお本発明において板厚中心層とは、電磁鋼板の厚みをtとしたときに、当該電磁鋼板の表面から、0.2t〜0.8tの深さの範囲をいう。更に、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、磁気特性の点から、0.1t〜0.9tの範囲でγファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、Cファイバーの特定角度領域が70°以上であることが好ましく、鋼板表層(即ち、0.0t〜0.1tおよび0.9t〜1.0tも含む全領域)においてもγファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、Cファイバーの特定角度領域が70°以上であることがより好ましい。
本実施形態においてODF(Orientation Distribution Function)、すなわち三次元方位分布関数は、測定対象となる無方向性電磁鋼板に関し、X線回折により極点図を複数求め、これをもとに結晶粒方位分布関数を求め、球面調和関数を展開して方位空間分布を求め、結晶方位はBunge表示により、φ1、φ2、ψの3つの指数で表される方位空間中の各方位の強度分布を求める。
極点図は反射法のX線回折では(110)、(200)、(211)、(310)の4面の不完全極点図を測定し、これらを元にBunge表示による方位空間における方位分布関数(ODF)を計算する。
Bunge記法では、方位を表す際に、Cube方位の3つの<100>軸を鋼板の圧延方向(RD)のX軸、板面垂直方向(ND)Z軸、板幅方向(TD)Y軸の3つにあわせてから、決められた手順で回転操作を行い、その3つの回転角をもって各結晶方位の三次元方位空間の位置を決定する。
Bunge表示によるオイラー角は、φ1、φ2、ψにより構成される。
まず、結晶座標のZ軸(ND方向と一致)の周りにφ1(°)結晶を回転させる。次に、回転後の新しい結晶座標の新しい向きのX’軸周りにψ(°)回転させる。この操作の後のさらに新しい結晶座標系のZ’’軸周りにφ2(°)回転させる。
Bunge表示の定義ではφ1:0〜360°、φ2:0〜360°、ψ:0〜180°の回転が可能である。方位分布関数であるODFは立法晶の対称性と縮退を考慮して、φ1、φ2、ψとも0〜90°で方位空間を表現する。すなわち、φ1とφ2は立法晶の結晶の対称性は4回対称であるので、等価な回転を省略して、φ1:0〜90°、φ2:0〜90°とする。
また、ψについては、2分の1に縮退することから、ψ:0〜90°とする。
すなわち本発明では、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示を使用する。
なお、Bunge表示は、「集合組織」長嶋晋一 丸善株式会社 p.1−39を参照することができる。
ここで、φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域即ち、Cファイバーの特定角度領域について図8及び図9を参照して説明する。
図8及び図9は、「強度が2以上であるφ1の角度領域」の説明の用に供する図面である。
図8及び図9は、方位分布関数(ODF)のφ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、横軸にφ1、縦軸に強度をとったグラフである。図8の例では、φ1が0°〜10°の範囲、及び、φ1が20°〜85°の範囲で、強度が2以上となっている。この場合、当該2つの領域の合計75°の領域で強度が2以上、即ち、強度が2以上であるφ1の角度領域は75°である。この場合は本発明の範囲内となる。また、図9の例では、φ1が0°〜15°の範囲およびφ1が85°〜90°の範囲で、強度が2以上となっている。この場合、当該2つの領域の合計20°の領域で強度が2以上、即ち、強度が2以上であるφ1の角度領域は20°である。この場合は本発明の範囲外となる。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、上記の測定により測定された方位分布関数(ODF)Bunge表示において、γファイバーの最高強度が2.8以下かつ1.5以上であればよく、磁気特性の点から、2.8以下かつ1.7以上であることが好ましく、2.7以下かつ2.0以上であることが更に好ましい。
また、同時に、Cファイバーの特定角度領域が70°以上90°以下であればよく、磁気特性の点から、75°以上であることが好ましい。また、磁気特性の点から、Cファイバーの特定角度領域を強度が2.5以上と規定した場合にもその領域が70°以上であることがより好ましく、強度を3.0以上と規定してもその領域が70°以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、方位分布関数が上記の範囲を満たすため、板面内に加えて板面に対して傾斜した方向への磁束の流れが向上する。
本実施形態の無方向性電磁鋼板の厚みは、用途等に応じて適宜調整すればよく特に限定されるものではないが、製造上の観点から、通常、0.004mm以上0.65mm以下であり、0.010mm以上0.50mm以下がより好ましい。磁気特性と生産性のバランスの観点からは、0.015mm以上0.35mm以下が好ましい。
次に、本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、鋼板を少なくとも2本の表面粗度Raが一定の範囲に制御されたリターンロールにより、曲げ−曲げ戻しする工程(I)と、鋼板を直径600mm以下の圧延ロールにより圧延する冷間圧延工程(II)とをこの順に有する。
これまで、リターンロールの粗度は、リターンロールを通過した後の冷間圧延ロールの表面粗度Raで鋼板の表面粗度Raが決まるため、このリターンロールの表面粗度Raを成品の集合組織制御のために制御することは全く顧みられなかった。
すなわち、リターンロールの表面粗度Raを意図的に制御することはなく、その必要もなかった。
しかるに、発明者らは、曲戻しに使用するリターンロールの表面粗度Raの制御により、鋼板が曲げられる際の歪変化の無い中立点をリターンロールと接触するのに近い板面側に移動させることにより、本発明において意図する曲げ戻しによる成品の集合組織制御効果が著しく高まることを見出し、この成品を用いた板状鉄心を使用する本発明で規定した変圧器において効率などの特性が著しく改善することを見出し発明の完成に至ったのである。
その機構については、発明者は鋭意調査中であるが、曲戻しロールの表面粗度Raを適切な値に制御することにより、冷間圧延前の鋼板に導入される格子欠陥や転移の存在状態および曲戻し時の集合組織に変化が生じ、結果として、無方向性電磁鋼板の成品の集合組織に変化が発生し、本発明における板状鉄心に適切な集合組織が得られたのではないかと推察している。
この曲戻しに使用するリターンロールの表面粗度Raの値について発明者らは種々検討を行った結果、Raの範囲が0.7μm以上5.0μm以下であれば、その効果が適切に得られることを確認した。
リターンロールの表面粗度Raの値が0.7μm未満であると、発明者らが意図した、鋼板がリターンロールによる曲戻しを受ける際の鋼板内の中立点の曲戻しロール側への移動が不十分となり、本発明の板状鉄心の集合組織制御効果が得られず、結果として、本発明が意図する板状鉄心を使用した変圧器の効率などの特性が改善されないため、リターンロールの表面粗度Raは0.7μm以上と定める。
リターンロールの表面粗度Raが5.0μmを超えると、本発明の板状鉄心に対する集合組織制御効果と、その効果に基づく板状鉄心を使用する変圧器の効率などの特性改善も飽和するのでリターンロールの表面粗度Raは5.0μm以下に定める。
なお、リターンロールの表面粗度Raを5.0μm以下に定める有益性は、表面の加工工賃のコスト削減ならびに、リターンロールの表面粗度が使用開始当初から大きく変動することなく、長寿命とする効果もあり、ひいては製造コストの低減にもつながる副次的メリットがある。
リターンロールの表面粗度Ra制御の効果は5.0μmにおいて飽和傾向に至るため、5.0μm以下に定めたが、板状鉄心の集合組織制御効果による変圧器の効率などの特性改善はリターンロールの表面粗度Raが3.5μm以下においてより好ましい効果が得られる。また、表面粗度加工工賃とロール寿命延長によるコスト低減効果も同時に得られるので、総合的に勘案するとより好ましい範囲はRaが0.7μm以上かつ3.5μm以下である。さらに、本発明効果の意図する板状鉄心を使用した変圧器における効率改善などの発明効果はリターンロールの表面粗度Raが0.7μm以上かつ2.5μm以下においてさらに好ましい結果が得られるので、リターンロールの表面粗度Raのさらに好ましい表面粗度Raの範囲は0.7μm以上2.5μm以下である。これにより、リターンロールの表面加工工賃、およびその寿命などのコストもさらに低減するメリットもより本発明により享受することが可能となる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法によれば、従来、無方向性電磁鋼板の製造において広く用いられていた拡散焼鈍工程を行うことなく、板面に対し傾斜した方向への磁束の流れが向上し、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を製造することが可能となり、当該無方向性電磁鋼板の生産性に優れ、更に低コストで製造可能となる。
本実施形態の製造方法により、本実施形態の無方向性電磁鋼板を好適に製造可能な理由は不明確な部分もあるが、工程(I)で鋼板内に形成される特殊な転位および格子欠陥構造をその後の圧延によりさらに複雑な構造とすることが、その後の仕上焼鈍で発達する、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板に特有な集合組織の形成の原因になっているためと推測される。
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法は、少なくとも一度以上、曲げ−曲げ戻しする工程(I)と、冷間圧延工程(II)とが連続して行われればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の工程を有していてもよく、全製造工程において、前記工程(I)に相当する工程が2回以上行われてもよく、また、工程(II)に相当する工程が2回以上行われても良いものである。
本実施形態の製造方法においては、途中で一度でも本実施形態規定内の工程(I)の直後に工程(II)が実施されていれば、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を得ることができる。
工程(I)及び工程(II)以外の他の工程としては、例えば、鋼板を準備する工程(III)や、仕上焼鈍工程等が挙げられる。以下、このような本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法について、順に詳細に説明する。
[工程(I)]
工程(I)は、鋼板を少なくとも2本の表面粗度Raが一定の範囲に制御されたリターンロールにより、曲げ−曲げ戻しする工程である。当該工程(I)により冷間圧延前の鋼板内に通常の冷間圧延とは異なる形態の転移および転移の相互作用により形成された新規な転移の堆積および格子欠陥が形成され、Cファイバーが適度に存在した鋼板を得ることができる。
この工程(I)において使用されるリターンロールの表面粗度Raを適切な範囲である0.7μm以上5.0μm以下に制御することにより、リターンロールと接触し曲戻しを受ける鋼板の中立点がリターンロールと接触する板面側に移動し、板状鉄心に使用される成品の無方向性電磁鋼板の集合組織が改善される。
本実施形態の工程(I)においては、リターンロールを2本1組で用いる。リターンロールを2本1組で用いることにより、曲げ及び曲げ戻しの際に鉄鋼にかかる応力が大きくなり、通常の冷間圧延で形成されるものとは異なる転位および転位の相互作用により形成された新規な転位の堆積および格子欠陥の形成が促進される。その結果、後述の工程(II)での冷間圧延による歪み導入、およびその後の仕上焼鈍を経て、Cファイバーが適度に存在した鋼板を得ることができる。
本実施形態においては、曲げ−曲げ戻しの際に鉄鋼に十分な歪を与える点から、リターンロールの直径が10mm以上300mm以下であることが好ましく、さらに15mm以上200mm以下であることがより好ましい。
また本実施形態においては、曲げ−曲げ戻しの際に鉄鋼に十分な歪を与える点から、鋼板の前記リターンロールへの入り側と出側とのなす角が135度以上180度以下であることが好ましく、145度以上170度以下であることがより好ましい。
[工程(II)]
工程(II)は、鋼板を600mm以下の圧延ロールで圧延する冷間圧延工程である。前述の工程(I)で導入された、通常の冷間圧延とは異なる形態の転位および転位の相互作用により形成された新規な転位の堆積および格子欠陥に、さらに圧延歪を加えることで複雑な転位および格子欠陥構造が形成されるため、最終的な仕上焼鈍を経た後に、γファイバーが適度に存在した鋼板を得ることができる。
さらに、直径200mm以下の圧延ロールにより圧延することにより、転位および格子欠陥構造がより特殊なものとなり、発明効果を顕著に得ることができる。
工程(II)での圧延率は工程(II)一回あたり23%以上とすることが好ましい。即ち、工程(II)の直前の鋼板の厚みに対する、工程(II)の直後の鋼板の厚みが23%以上減少していることが好ましい。特に、工程(I)と工程(II)とを連続で行う際に、工程(I)の直後の鋼板の厚みに対して、工程(II)の直後の鋼板の厚みが23%以上減少していることが好ましい。これは工程(II)一回あたりの圧下率が小さすぎると転位および格子欠陥構造を一般的なものとは異なる好ましい程度に複雑なものにできなくなるためと考えられる。工程(I)と工程(II)を複数回繰り返す場合は、少なくとも一回は、本実施形態の規定を満足する工程(I)の直後の工程(II)においてこの圧下率範囲を満足していることが好ましい。
上限は、工業的な製造の困難さを回避するためと、冷延率が高くなるとその直前に導入した工程(I)による特殊な転位構造の影響が小さくなり、特許文献6のような既存の高冷延率材と同様に、Cファイバー中の特定方位のみの強度が高く、γファイバーが発達しない集合組織が形成されてしまうため、47%以下とすることが好ましく、より好ましくは28〜43%、さらに好ましくは24〜39%である。
なお、一般的な熱延鋼板を原板として、最終的に一般的な板厚と磁気特性を有する電磁鋼板を得るにはトータルの圧延率は63〜94%であることが好ましく、より好ましくは70%〜92%であり、さらに好ましくは72〜89%である。工程(I)と工程(II)を複数回行う場合には、得られた電磁鋼板の圧延率が、熱延鋼板を基準にして、上記範囲内であることが好ましい。
工程(II)において、圧延方式は特に限定されず、例えば、リバース圧延方式、タンデム圧延方式等、いずれの圧延方式を用いてもよい。リバース圧延機では60mm以上120mm以下のロール径で、さらに好ましくはロール径90mm以上120mm以下の圧延ロールにより、タンデム圧延機では400mm以上600mm以下の圧延ロールにより、さらに好ましくは400mm以上500mm以下の圧延ロールで圧延することが上記の転位および格子欠陥構造を本発明効果の発現に適したものとするために好ましい。
中でも、鋼板の通板方向を一定方向とする、タンデム圧延では通板速度を安定させることが可能となるため特に板厚中心層でのφ2=0°断面におけるψ=0°かつφ1において強度が2以上の範囲が70°以上の方位の範囲の角度を増やすことができ、{100}方位を富化すると同時に、本発明の特徴である{111}面強度であるγファイバーを同時に発達させることが容易となる。
タンデム圧延においてこのような結果が得られる原因については発明者らは調査中であるが、歪速度の違いが転位構造に影響を与えた結果、再結晶集合組織に影響を与えることが一因ではないかと推察している。
工程(I)および工程(II)の鋼板の通板性を改善するため、本実施形態では圧延前の鋼板を加熱して温間圧延を行ってもよい。
例をあげれば、熱水中に圧延前のコイルを浸漬し、70℃以上80℃以下の温度で圧延を行ってもよい。
また、圧延前のコイルを誘導加熱その他の方法により加熱し、100℃以上400℃以下の温度で温間圧延を行ってもよい。
[その他の工程]
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば、鋼板を準備する工程(III)や、仕上焼鈍工程(IV)等が挙げられる。
[工程(III)]
工程(III)は、本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法に用いられる鋼板を準備する工程である。当該鋼板を準備する方法は、特に限定されないが、通常、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板と同様の組成を有する鋼塊乃至鋼片を熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍することにより得られる。
本実施形態の無方向性電磁鋼板の製造方法においては、板面に対し傾斜した方向への磁束の流れが向上し、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を効率よく得られる点から、冷間圧延工程直前の鋼板の結晶粒の平均直径が、円相当直径で50μm以上300μm以下であることが好ましい。そのため、本工程は、結晶粒の平均粒径が、円相当直径で50μm以上である鋼板を準備する工程(III’)であることが好ましい。
冷間圧延前の鋼板の結晶粒の平均円相当直径が小さすぎると、鋼板に導入される転位や格子欠陥の形態が本発明で得られるものと異なり、工程(I)と(II)の相乗効果が損なわれやすくなる傾向がある。この結果として、再結晶方位において{111}方位であるγファイバーが主方位となり、{100}方位の発達が抑制され、従来の無方向性電磁鋼板生産プロセスにより得られた磁気特性は変わらないものとなる。そのため、本実施形態においては、冷間圧延工程直前の鋼板の結晶粒の平均直径が、円相当直径で50μm以上であることが好ましい。一方、300μm超であると、リターンロールでの通板時の安定性が損なわれるので、本実施形態においては、冷間圧延工程直前の鋼板の結晶粒の平均直径が、円相当直径で300μm以下であることが好ましい。
工程(III’)は、先ず上述した組成を有する鋼を、連続鋳造法あるいは鋼塊を分塊圧延する方法など一般的な方法によりスラブとし、加熱炉に装入して熱間圧延を施す。この際、スラブ温度が高い場合には加熱炉に装入しないで熱間圧延を行ってもよい。スラブ加熱温度は特に限定されるものではないが、コストおよび熱間圧延性の観点から1000〜1300℃とすることが好ましい。より好ましくは1050〜1250℃である。また、熱間圧延の各種条件は特に限定されるものではなく、例えば仕上げ温度が700〜950℃、巻き取り温度が750℃以下など、一般的な条件に従って行えばよい。
次に、上記熱間圧延により得られた熱間圧延鋼板に必要に応じて熱延板焼鈍を施す。熱延板焼鈍工程を行うことにより、磁気特性が向上する。熱延板焼鈍は、例えば800℃以上1050℃以下で10秒間以上3分間以下保持する連続焼鈍にて実施する。
連続焼鈍の場合、本実施形態では、焼鈍温度が800℃未満では短時間の連続焼鈍で熱延板焼鈍の効果が得られないので800℃以上で行う。焼鈍温度が1050℃超では、表面に形成される酸化層が厚くなり酸洗性が低下するとともに、加熱に要する熱エネルギーが増大し不経済となるとともに、熱延板焼鈍の効果が飽和するので本実施形態では連続焼鈍の場合、1050℃以下が好ましい。
連速焼鈍の場合、保定時間が5秒未満ではその効果が不足し、3分超ではその効果が飽和するとともに焼鈍に要する熱エネルギーが増大し不経済となるので5秒以上3分以下が好ましい。
本実施形態では熱延板焼鈍を箱焼鈍により750℃以上1050℃以下で焼鈍温度に到達後5分以上3時間以内の保定を行った後、降温してもよい。
箱焼鈍の場合、焼鈍温度が750℃未満では熱延板焼鈍の効果が十分に得られないので本実施形態では750℃以上が好ましい。焼鈍温度が1050℃超では加熱に必要なエネルギーが増大するとともに、炉の寿命が短くなりコスト上昇を招き、熱延板焼鈍の効果も飽和するので1050℃以下が好ましい。
箱焼鈍の場合、保定時間が5分未満ではその効果が不足し、3時間超ではその効果が飽和するとともに焼鈍に要する熱エネルギーが増大し不経済となるので5分以上3時間以下が好ましい。
このようにして結晶粒の平均直径が円相当直径で50μm以上の鋼板を得ることができる。本実施形態において鋼板中の結晶粒の直径は、光学顕微鏡を用いて測定することができる。円相当直径はJIS G0552の切断法により求めた結晶粒の平均断面積をもとに計算する。
(仕上焼鈍工程(IV))
仕上焼鈍工程は、例えば、最高温度を700度以上に設定し、最高温度での保持時間を30秒以下として焼鈍を行う方法などが挙げられる。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は仕上焼鈍後、1%以上から15%以内のスキンパス圧延を施しても良い。また、無方向性電磁鋼板に形成する表面皮膜に関しては、いずれの成分や塗布技術を適用することも、本発明を制限するものではない。
本実施形態鋼板は、そのまま打ち抜いて板状鉄心としての使用に供することができる。また、鋼板使用者において、鋼板の打ち抜き後、もしくは打ち抜いて板状鉄心に積層の後、歪取焼鈍を施すなどの使用方法を適用できる。
C.電磁鋼板の用途
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、例えば図1に示すような変圧器において、板状鉄心1の素材として使用することで変圧器の特性を格段に向上させることができる点に技術的特徴がある。変圧器の板状鉄心1は、板面に対し傾斜した方向への磁気特性が求められる部材であり、板状鉄心1を電磁鋼板または積層した電磁鋼板で形成する場合、電磁鋼板については、板面に対し傾斜した方向への磁気特性が求められることとなる。
図2に、本実施形態の変圧器における磁束の流れを模式的に示している。図を簡略化するために、磁束の流れは1本の磁束線で示している。変圧器内の磁束分布を考えると、筒状鉄心5および柱状鉄心2においては、比較的単純で、ほとんどの磁束は各鉄心の軸方向に沿っての一方向に流れている。このため、一般的に板面内の磁気特性が優れるように設計されている電磁鋼板を、鋼板の板面内の方向が軸方向に一致するように電磁鋼板を配置すれば、変圧器特性としては格段の問題は生じない。
一方、板状鉄心1においては、磁束の流れは複雑で、板面に対して垂直方向から板状鉄心1に侵入した磁束は、板面内で放射状に流れた後、再び板面と垂直方向に向けて板状鉄心1から流出する。これは、板厚がほぼ一定である鋼板を1枚の板材として使用する場合だけでなく、どのように積層して板状鉄心1を構成しても避けることはできず、本実施形態の変圧器のように典型的な変圧器の板状鉄心1に特有の状況とも言える。
従来、無方向性電磁鋼板の積層方向の磁束分布は十分に解析されておらず、磁束の流れの変化は板面内だけで発生すると考えられていた。しかし、上述のように本実施形態のような変圧器の板状鉄心用の素材鋼板としては、このような板面内特性の考慮だけでは不十分であることは明白である。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、板面に平行な磁束の流れが確保されているとともに、板面に対し傾斜した方向への磁束の流れが向上し、1枚の鋼板を部材として用いた場合のみならず、特に複数の鋼板を積層した部材において、板厚方向(積層方向)の磁気特性が優れるという特徴を有する。このため、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、変圧器の板状鉄心1という用途に適用することで、劇的な磁気効率の改善効果を発揮する。
実施形態者らは、この理由について、以下のように推測している。すなわち、筒状鉄心5の磁束が軸方向に流れやすくなり、本実施形態の板面方向以外の磁束の流れの円滑な板状鉄心1に対して筒状鉄心5から板状鉄心1の板面垂直に磁束が流れ込みやすくなり、本実施形態の特徴ある集合組織制御効果を有する無方向性電磁鋼板の特性がより発揮できるためであると推測している。
発明者らは加えて、筒状鉄心5、柱状鉄心2および板状鉄心1からなる変圧器において、変圧器の全体積と板状鉄心の体積の間において、特定の関係式を満たす場合において、変圧器の効率などの特性がより向上することを見出した。
この際、変圧器の特性は巻線と鉄心から構成される磁気回路により決まるので、変圧器の全体積よりも変圧器の筒状鉄心5および柱状鉄心2と板状鉄心1の体積の関係を定める方が適切にみえる。
しかしながら、本発明の構造の変圧器では、変圧器の全体積が決まると、変圧器の定格送電容量(W数)から筒状鉄心5および柱状鉄心2の容積と板状鉄心1の容積はおのずと決まる。よって、本発明では、筒状変圧器の外形の体積と板状鉄心の容積を用いた。
発明者らはこの筒状変圧器の全体積と板状鉄心の体積について様々な形状の変圧器を作成し検討を行った結果、変圧器の全体積Vtrfmと板状鉄心の合計体積Vplateの間に以下の式(1)が成り立つ場合に効率などの特性がより優れたものになることを見出した。本発明では通常、板状鉄心は2枚となるが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。
Vplate/Vtrfm≦0.4 … (1)
式(1)の値が0.4以下にすることにより、本発明の板状鉄心を使用したことによる変圧器の効率などの特性改善効果をより高めることができるなお、式(1)の値は0.2以下が好ましく、さらに、0.07以下であるとさらに好ましい。
発明者らが調査した範囲では式(1)の値には小さいほど変圧器の効率などの特性は優れていたので、下限は特に設けない。
ここで、本発明における変圧器の全体積Vtrfmについて説明する。変圧器は、概ね、鉄心本体、巻線、外部端子、放熱器およびそのための放熱板が鉄心自体に付加される場合がある。また、鉄心内に格納された巻線の絶縁を確保するために、絶縁油、もしくは空隙を設ける場合がある。その際には、筒状変圧器の巻線を格納する空隙の体積は巻線自身の体積よりも大きくなる場合がある。
そこで、本発明では、変圧器の全体積Vtrfmについては、以下のような原則に従って計算することとする。
変圧器の筒方向の軸に垂直な板状鉄心1の断面積と、2枚の板状鉄心1の互いの外側の距離であって筒状の変圧器の軸方向の距離を積算することにより、本発明の変圧器の全体積Vtrfmとする。この際、板状鉄心1に突起物、付加物がある際は、これらは板状鉄心1の断面積に含まない。すなわち、板状鉄心1が円形、楕円形、矩形であれば、それぞれの外周に付加された端子、付加物、放熱突起などによる断面積の増加分は本発明の板状鉄心1の断面積に含まないこととする。
また、鉄心内部に絶縁のために絶縁油を格納する空隙や乾式の空隙を設けたことにより、板状鉄心1もしくは筒状鉄心5の寸法が変化した際でも、あくまでも先述の原則に従って計算した板状鉄心の断面積と軸方向距離を積算して本発明の変圧器全体積Vtrfmとする。
また、変圧器全体積Vtrfmを求める場合と同様に、板状鉄心の体積Vplateは、変圧器の筒方向の軸に垂直な板状鉄心1の断面積と、板状鉄心1の厚みとの積算値である。また、板状鉄心1に突起物、付加物がある際は、これらは板状鉄心1の断面積に含まない。すなわち、板状鉄心1が円形、楕円形、矩形であれば、それぞれの外周に付加された端子、付加物、放熱突起などによる断面積の増加分は本発明の板状鉄心1の断面積に含まないこととする。
このような適切な範囲が存在する理由について発明者らは鋭意調査中であるが、変圧器全体積に占める板状鉄心1の合計体積の比が小さくなることにより、変圧器内を流れる磁気回路における板状鉄心1の占める通過体積が減少する。この結果、変圧器の効率などの特性が板状鉄心1の磁気抵抗の影響を受けやすくなる。よって、本発明の無方向性電磁鋼板を使用した板状鉄心1の効果がより発現しやすくなることが原因ではないかと推察している。
本実施形態の変圧器は、2つの板状鉄心1、柱状鉄心2、一次コイル巻線3、二次コイル巻線4、筒状鉄心5をそれぞれ別途作成し、組み上げるだけであるので、変圧器の製造工程が簡素でコストも低減される。また、鉄心を製造する際に、従来の各種変圧器のようにコイルを挿入するための溝や凹部を設ける必要がなく、構造が単純になる。
本実施形態の変圧器の一例として単相変圧器を説明したが、本発明の変圧器は単相変圧器に限らず、三相変圧器に適用してもよい。また、インバータの普及とともに問題となっている電源に含まれる高調波を低減するために使用される6相、12相、24相、36相、48相などの多相変圧器に適用してもよい。更に、移相巻線付変圧器等に適用してもよい。移送巻線付変圧器とは、千鳥結線として移相角を持たせた変圧器である。さらに、本発明の変圧器は、水冷、油冷、空冷等の技術により冷却される形式であってもよい。
変圧器が多相変圧器の場合、同心環状に配置された各筒状鉄心の間に一次コイルと二次コイルを配置する。その配置は筒状鉄心の軸方向に上下に配置してもよいが、本発明の効果をより活用するためには、同心円状に一次コイルと二次コイルを配置することが好ましく、また三相3巻線変圧器の場合は一次コイル、二次コイル及び三次コイルを同心円状に配置することが好ましい。
また、本発明の対象となる変圧器は、電気機器に用いられる小型変圧器のみならず、一般の変圧器、リアクトル、チョークコイル、カレントセンサ等、様々な用途で使用される変圧器であってもよい。
また、本実施形態における変圧器の一次コイル及び二次コイルはともに円周状に巻かれたものであるが、一次コイルと二次コイルのどちらを内側に配置するかについては、適宜その用途および変圧器の特性に応じて定めればよい。また、一次コイルと二次コイルを同心円状に重ねて配置するのみならず、一次コイルと二次コイルを柱状鉄心の軸方向に沿って並べて配置してもよい。
また、一次コイル及び二次コイルの外部への導線は、筒状鉄心に凹部を設けて取り出すことが加工の観点から好ましいが、板状鉄心に溝などを形成し、この溝から導線を引き出してもよい。板状鉄心に導線引出し用の溝を形成する場合は、打抜きの際に溝部を有する蹄鉄状の円環を打抜き、円環の切れ目を積層して導線引き出し部とすることが好ましい。これにより、積層が終了してから切削することによる筒状鉄心の残留応力の影響を受けず、変圧器の特性をより向上できる。
また、本実施形態の変圧器を構成する一次コイル及び二次コイルに代えて、単一のコイルを柱状鉄心と筒状鉄心の間隙に配置してもよい。この場合はリアクトルとして機能させることができる。リアクトルを形成した場合であっても、本発明の効果を十分に得ることができる。
以上、変圧器の例として単相変圧器について説明したが、本発明はこれに限らず、図3に示すような三相変圧器に適用してもよい。
図3に示す三相変圧器は、柱状鉄心2と、柱状鉄心2の周囲に同心環状に配置された3つの直径が異なる筒状鉄心5a、5b、5cと、柱状鉄心2及び筒状鉄心5a〜5cを上下から挟むように配置された板状鉄心1と、柱状鉄心2と筒状鉄心5aの間、または各筒状鉄心5a〜5c同士の間に配置された一次コイル3及び二次コイル4と、から構成されている。
図3に示す三相変圧器に備えられた筒状鉄心5a〜5cには、柱状鉄心2に最も近くにある第1筒状鉄心5aと、第1筒状鉄心5aの外周側にある第2筒状鉄心5bと、第2筒状鉄心5bの外周側にある第3筒状鉄心5cとがある。図3に示す柱状鉄心2及び各筒状鉄心5a〜5cは、図1及び図2に示す単相変圧器の柱状鉄心2筒状鉄心5と同じ構成である。
また、図3に示す三相変圧器に備えられた一次コイル3及び二次コイル4には、柱状鉄心2と第1筒状鉄心5aとの間に配置されたU相一次コイル3a及びU相二次コイル4aと、第1筒状鉄心5aと第2筒状鉄心5bとの間に配置されたV相一次コイル3b及びV相二次コイル4bと、第2筒状鉄心5bと第3筒状鉄心5cとの間に配置されたW相一次コイル3c及びW相二次コイル4cとがある。各相のコイルにおいては、一次コイル3の外周側に二次コイル4が配置されているが、本発明ではこれに限らず、一次コイル3の内側に二次コイル4があってもよい。
そして、図1及び図2の場合と同様に、図3に示す板状鉄心1は、上述の無方向性電磁鋼板からなる。
図3には三相変圧器を示すが、更に多相の変圧器であってもよい。三相以上の多相変圧器の場合、相数をn相とすると、変圧器の構造は、柱状鉄心の軸方向両端に2つの板状鉄心が配置され、同心円状にn個の直径の異なる筒状鉄心S1、S2、・・・Sn−1、Snを配置され、そのn個の間隙に一次コイルと二次コイルを一組としてn組配置されたものとなる。柱状鉄心の場合は鉄心S0と呼称する。
また、各相の一次コイルと二次コイルの組は、同心円状に存在する円環状の間隙のいずれかにその次数に対して本発明の変圧器は限定されるものではない。また、一次コイルと二次コイルの配置は同心円状であることが磁束の流れを円滑にするので好ましいが、円筒軸方向に重ねて配置してもよい。
n相変圧器において、nは1からnまでの円筒鉄心Snに対応した値の自然数である。たとえば三相変圧器であれば、nは順に、1、2、3の値となる。n=0は中心鉄心S0に対応した値の整数である。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例における柱状鉄心および筒状鉄心は、板状鉄心と同一成分の鋼を用い、そのL方向特性が優れるように製造工程を施し同一板厚の無方向性電磁鋼板を得てこれを使用した。すなわち、熱延、必要に応じ熱延板焼鈍、冷間圧延、焼鈍を施した無方向性電磁鋼板を使用した。製造された無方向性電磁鋼板は、L方向の磁気特性が優れていることを確認し、そのL方向が柱状鉄心および筒状鉄心の軸方向に一致させた。
なお、柱状鉄心は、短冊状に切断した鋼板を積層して積層鉄心とし、コイルとの間の絶縁破壊が発生しないように絶縁物を積層鉄心の周囲に巻いたものとした。また、筒状鉄心は、上記の無方向性電磁鋼板を適当なサイズに切り出し、中空円筒状に巻回することで形成した。
[実施例1]
(本発明1−1:無方向性電磁鋼板1−1の製造)
(1)Si:0.3%、Mn:0.2%、Al:0.2%を含有するスラブを、加熱炉に装入して、1000℃〜1300℃で加熱し、熱間圧延することにより、厚みが2.5mmの鋼板を得た。
(2)上記で得られた鋼板を、半径90mmのリターンロール1組に順次巻きつけて鋼板の曲げ伸ばしを行った。なお、リターンロールへの入り側と出側とのなす角は150度とした。リターンロールの表面粗度Raは2.4μmとした。
(3)次いで得られた鋼板を酸洗後、圧延ロール径100mmのリバース冷延機で5パス均等圧下し、厚みが0.5mmの鋼板を得た。各パスの圧延率は27.5%である。また、冷間圧延前の鋼板の平均結晶粒径は85μmであった。
(4)750℃で20秒間仕上焼鈍を行い、無方向性電磁鋼板1−1を得た。
(比較例1−1:比較無方向性電磁鋼板の製造)
上記本発明1−1において、(2)の工程を行わなかった以外は、本発明1−1と同様にして、比較無方向性電磁鋼板を得た。
[評価]
<金属組成観察>
本発明1−1の(3)の工程のあと、(4)の工程の前に、鋼板の一部を切り出して、観察断面に圧延方向と鋼板垂直方向が含まれ、鋼板板幅方向に垂直なL断面を研磨し、ナイタールエッチング後、光学顕微鏡観察を行った。比較例1−1の鋼板についても同様にして、光学顕微鏡観察を行った。結果を図4及び図5に示す。なお、図4及び図5においては、写真の上下方向が板面垂直方向、水平方向が圧延方向である。
<方位分布関数の測定>
本発明1−1及び比較例1−1の無方向性電磁鋼板を反射法によるX線回折により(110)、(200)、(211)、(310)の4面の不完全極点図を測定し、これらを元にBunge記法による方位空間における方位分布関数(ODF)を測定した。結果を図6及び7に示す。なお、図6及び図7は、圧延方向と板幅方向を含む鋼板面と平行な0.5tの中心層の断面試料を表面から検索して採取し、エッチングにより研削歪を除去して鏡面仕上げとしてX線回折測定に供し、その反射X線回折像をもとに方位分布関数(ODF)を計算した結果を示している。これをもとにCファイバーの特定角度領域とγファイバーの最高強度を算出した。
<磁気測定>
本発明1−1及び比較例1−1の無方向性電磁鋼板の一部をそれぞれサンプルとして切り出し、750℃で2時間、歪取焼鈍を行った後、JIS C2550に記載のエプスタイン試験法に基づいて、磁気測定を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中のB50は、磁化力が5000(A/m)における磁束密度(T)を表し、W15/50は、最大磁束密度が1.5T、周波数50Hzのときに発生する鉄損を表す。
次に、本発明1−1と比較例1−1の無方向性電磁鋼板を使用して、図1及び図2に示す単相複巻変圧器を製作した。以下、単相複巻変圧器を単相変圧器を称する。
板状鉄心に本発明1−1の無方向性電磁鋼板と比較例1−1の無方向性電磁鋼板を積層して使用し、柱状鉄心及び筒状鉄心は先に説明した通りの鉄心を用いた。
その際、本発明1−1の無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用した変圧器において、変圧器全体積のVtrfmに対する板状鉄心合計体積Vplateの割合を5水準設定した。同様に、比較例1−1の無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用した変圧器においても比を5水準設定し、変圧器の効率に対する影響を調査した。
そして、容量0.1kVA、一次電圧200V、二次電圧100Vとし、負荷率0%における効率を比較した。その結果を表2に示す。
表2より、本発明の無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用すると、単相変圧器の効率が改善することがわかる。これは、図1に模式的に示したように、柱状鉄心、筒状鉄心及び板状鉄心の間において、板状鉄心内に板面内とは異なるわたり磁束が生じるため、積層した板状鉄心の無方向性電磁鋼板においても、積層鋼板間にわたり磁束が生じるところ、本発明1−1の電磁鋼板は、この磁気抵抗が少なかったことで、変圧器の効率が向上したと考えられる。
また、表2より、本発明1−1の無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用する変圧器においては、変圧器全体の体積Vtrfmに対する板状鉄心合計体積Vplateの比であるVplate/Vtrfmの値が小さくなるほど、変圧器の効率が向上していることがわかる。
これに対し、比較例1−1の無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用した場合は、変圧器の全体積Vtrfmに対する板状鉄心合計体積Vplateの比であるVplate/Vtrfmの値が変化しても変圧器の効率にほとんど変化がみられず、効率自体も本発明1−1には及ばない。
以上のように、発明者らは、本発明の無方向性電磁鋼板は、比較例の無方向性電磁鋼板に対して、変圧器の効率が向上し、更に、変圧器全体積に占める板状鉄心合計体積の値が小さくなることにより、変圧器の効率がより改善されるという新規な知見を見出した。
さらに、表2から、本発明1−1の無方向性電磁鋼板を使用した板状鉄心を用いた変圧器ではVplate/Vtrfmの値が0.4以下において変圧器の効率が91%以上、より好ましくは92%以上に向上しており、優れた効果が示された。また、Vplate/Vtrfmの値が0.2以下においては変圧器の効率が92%以上により向上しており、Vplate/Vtrfmの値は0.2以下がより好ましい範囲であることが示された。さらに、Vplate/Vtrfmの値が0.07以下では変圧器の効率が93%以上に向上しており、Vplate/Vtrfmの値のさらに好ましい範囲が0.07以下であることが示された。
[実施例2]
(本発明2−1:無方向性電磁鋼板2−1の製造)
(1)Si:2.1%、Mn:0.5%、Al:0.5%を含有するスラブを、加熱炉に装入して、1050℃で加熱し、熱間圧延することにより、厚みが2.3mmの鋼板を得た。
(2)上記で得られた鋼板を、半径120mm、表面粗度Raが2.0μmのリターンロール2組に順次巻きつけて鋼板の曲げ伸ばしを行った。なお、リターンロールへの入り側と出側とのなす角は145度とした。
(3)次いで得られた鋼板を酸洗後、圧延ロール径450mmのタンデム冷延機で5パス均等圧下し、厚みが0.5mmの鋼板を得た。各パスの圧延率は26.3%である。また、冷間圧延前の鋼板の平均結晶粒径は65μmであった。
(4)900℃で30秒間仕上焼鈍を行い、無方向性電磁鋼板2−1を得た。
(比較例2−1:比較無方向性電磁鋼板の製造)
本発明2−1において、(2)の工程を行わなかった以外は、本発明2−1と同様にして、比較無方向性電磁鋼板を得た。
<磁気測定および変圧器による効率試験>
容量および相数が異なる3種類の円筒型変圧器における本発明の適用効果の違いを調査するために以下の試験を行った。容量および電流の相数が異なることにより、円筒型変圧器の板状鉄心に流れ込む磁束の複雑さが変化する。
本発明2−1及び比較例2−1の無方向性電磁鋼板の一部をそれぞれサンプルとして切り出し、750℃で2時間、歪取焼鈍を行った後、JIS C2550に記載のエプスタイン試験法に基づいて、磁気測定を行った。結果を表3に示す。
本発明2−1及び比較例2−1におけるエプスタイン測定の結果では、磁束密度B50、鉄損W15/50ともに磁気特性の大きな違いはなかった。
そこで、本発明2−1及び比較例2−1の無方向性電磁鋼板を使用して、2種類の変圧器として図1〜3に示す容量1kVAの単相変圧器と三相変圧器を作成し、また、これらとは別にACリアクトルを作成した。その際、変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.07とした。
変圧器は負荷率0%での効率を測定し、リアクトルは周波数50Hzの100V電源電圧に重畳する高調波の低減率を比較した。
変圧器およびリアクトルの板状鉄心は、本発明2−1、又は比較例2−1の無方向性電磁鋼板を積層して製作したものを用いた。
表4にその結果を示す。
表4より、本発明2−1と比較例2−1の無方向性電磁鋼板を用いた変圧器においては、本発明2−1の集合組織を有する無方向性電磁鋼板を使用した場合の方が、比較例2−1の無方向性電磁鋼板を使用した場合に比べ効率が優れていることがわかる。
一方、円筒型ACリアクトルの場合も、本発明の集合組織を有する無方向性電磁鋼板を使用したほうが高調波の低減率が高いことがわかる。
なお、高調波の低減率は、それぞれの50Hzの基本波形に占める電流波形に占める高調波の比率の改善率を測定した。
三相変圧器は、鉄心内の磁束の流れが単相変圧器よりも複雑になる。このため、本発明2−1の無方向性電磁鋼板を使用することにより、効率改善代がより向上したと考えられる。
本発明の無方向性電磁鋼板は板面内以外の磁束の流れが改善されているので、これを複雑な磁束の流れが存在する板状鉄心に用いることで、単相変圧器と三相変圧器の効率改善の比較により、その効果がより発揮されることが本実施例により明らかとなった。
このように、磁束の流れが複雑な板状鉄心に本発明の無方向性電磁鋼板を使用することにより、効率向上の効果が高まることが明らかとなった。
また、リアクトルに使用した場合には、電源に重畳する高調波を低減する効果がより高いことが判明した。
[実施例3〜8]
以下、実施例3〜8について、まず共通する製造方法について説明し、次いで各結果を説明する。
(鋼種A〜Dの準備)
下表5に示される組成を有する鋼種A〜Dスラブをそれぞれ準備した。
(無方向性電磁鋼板の製造方法)
前記鋼種A〜Dのスラブをそれぞれスラブ加熱炉にて保定し、上記表5に記載の各仕上焼鈍条件にて仕上焼鈍を行い、その後、後述する表6〜表12に示された熱延巻取温度(CT/℃)で各熱延板板厚(mm)に仕上げた。なお、必要に応じ、表6〜表12に記載の温度で60秒の熱延板焼鈍(AP/℃)を熱延板に施した。熱延板焼鈍(AP)を施す際に熱延仕上温度を上昇させたのは、熱延板焼鈍における熱延板の結晶組織の成長を促進する効果があるからである。
続いてリターンロールでの曲げ伸ばし(工程(I))及び、冷間圧延工程(II)を行い、最終板厚に仕上げた。なお、表6〜表12中、工程(I)の欄が「−」となっているものは、工程(I)を行わなかったことを示す。その後、仕上焼鈍を施し、無方向性電磁鋼板を得た。また、冷間圧延前の鋼板の平均結晶粒径は表6〜表12に示す通りであった。
リターンロールは実施例において特段に断りの無い限り、表面粗度Raが1.7μmのものを統一して用いた。リターンロールの表面粗度Raの測定方法は公知の圧延ロールの表面粗度Raの測定方法と同一の方法にて行った。
すなわち、本発明の無方向性電磁鋼板は、大きく分けると以下の二通りの工程を経る。
第1:仕上熱延−リターンロールによる曲げ伸ばしおよび圧延−仕上焼鈍−磁気測定
第2:仕上熱延−熱延板焼鈍(AP)−リターンロールによる曲げ戻しおよび圧延−仕上焼鈍−磁気測定
得られた無方向性電磁鋼板それぞれについて、JIS C2550に定められたエプスタイン試料を用意し、エプスタイン測定を行い、磁束密度B50、鉄損W15/50を測定した。磁束密度B50とは、磁界5000A/mにおけるエプスタイン試験片の示す磁束密度の値(単位:T)であり、鉄損W15/50とは、周波数50Hzにおいて、最大動作磁束密度1.5Tにエプスタイン試験片を励磁した際の鉄損の値(単位:W/kg)である。結果を表6〜表12に示す。
得られた無方向性電磁鋼板を板状鉄心に使用して円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成した。以下では本明細書においては必要に応じて、これらを変圧器A、変圧器B、変圧器Cと呼称する。各変圧器の鉄心には、図1〜図3に示す各種の鉄心を用いた。
円筒型鉄心の板状鉄心における磁束の流れの複雑さは、単相複巻線変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器の順に複雑となる。これにより、本発明で得た無方向性電磁鋼板の円筒形変圧器の板状鉄心に対する特殊な効果の確認が容易となる。
以下に、個別の実施例について述べる。
(実施例3)
下記表6に従い、前記鋼種A〜Dをそれぞれ選択し、前記無方向性電磁鋼板の製造方法において述べた方法により、表6の鋼No.3−1〜3−20の無方向性電磁鋼板を製造した。表6の「熱延板の熱履歴」において、CTは熱延巻取温度(℃)を示し、APは熱延板焼鈍温度(℃)を示し、CT、APの後に続く数字はそれぞれの温度(℃)である。表7〜表12についても同様である。
圧延は、工程(I)および工程(II)のロール径を変えてタンデム圧延、すなわち一方向圧延にて行った。
得られた無方向性電磁鋼板をそれぞれ用いて、円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成しそれぞれ特性を測定した。変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.10とした。表6に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
以下、先述のように、単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を変圧器A、変圧器B、変圧器Cと必要に応じ呼称する。
結果を表6に示す。本発明の効果は円筒形鉄心の変圧器A、変圧器B、変圧器Cの順に板状鉄心内の磁束の流れの板面方向以外の成分が増え、より複雑になるので、変圧器Aの効率<変圧器Bの効率<変圧器Cの効率の順に改善されていることがわかる。
表6より、工程(I)と工程(II)のロール径の適切な組合せの場合に優れた磁気特性と変圧器の効率が得られていることがわかる。
表6より、円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器の効率向上には、工程(II)のロール径は600mm以下が好ましいことがわかる。さらに好ましくは、工程(II)のロール径が120mm以上550mm以下であることがわかる。
また、工程(I)を省略すると、本発明の効果が得られないことがわかる。表6より、工程(I)のロール径は10mm以上300mm以下が好ましいことがわかる。さらに好ましくは、50mm以上180mm以下であることがわかる。
(実施例4)
下記表7に従い、前記無方向性電磁鋼板の製造方法において述べた方法により、表7の鋼No.4−1〜4−10の無方向性電磁鋼板を製造した。
圧延は、タンデム圧延、すなわち一方向圧延にて行った。
得られた無方向性電磁鋼板をそれぞれ用いて、円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成しそれぞれの無負荷損における効率を測定した。変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.25とした。表7に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
結果を表7に示す。本発明の効果は円筒形鉄心の変圧器A、変圧器B、変圧器Cの順に板状鉄心内の磁束の流れの板面方向以外の成分が増え、より複雑になるので、変圧器Aの効率<変圧器Bの効率<変圧器Cの効率の順に改善されていることがわかる。
表7より、本発明で定める工程(I)でのリターンロールへの入り側と出側のなす角度(単位:度、deg.、もしくは「°」)が135度以上180度以下において優れた磁気特性と、より高い変圧器効率が得られていることがわかる。さらに好ましくは、145度以上165度以下であることが磁気特性と円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器の効率よりわかる。
(実施例5)
下記表8に従い前記無方向性電磁鋼板の製造方法において述べた方法により、表8の鋼No.5−1〜5−10の無方向性電磁鋼板を製造した。
圧延は、タンデム圧延、すなわち一方向圧延にて行った。鋼種Bは工程(I)のロール径は50mm、鋼種Dは工程(II)のロール径は100mmで行った。
得られた無方向性電磁鋼板をそれぞれ用いて、円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成しそれぞれの無負荷損における効率を測定した。変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.20とした。表8に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
結果を表8に示す。本発明の効果は円筒形鉄心の変圧器A、変圧器B、変圧器Cの順に板状鉄心内の磁束の流れの板面方向以外の成分が増え、より複雑になるので、変圧器Aの効率<変圧器Bの効率<変圧器Cの効率の順に改善されていることがわかる。
表8より、最初の工程(I)とそれに続く工程(II)に供する鋼板の円相当平均結晶粒径が50μm以上300μmにおいて、より優れた磁気特性と高い変圧器効率が得られていることがわかる。
さらに、磁気特性及び円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器の効率は、最初の工程(I)とそれに続く工程(II)に供する鋼板の円相当平均結晶粒径の範囲が、70μm以上かつ250μm以下においてより好ましいことが表8よりわかる。
また、円相当直径が300μm超の鋼板は、工程(I)の通板時に鋼板がロールに巻きつく際に破断し、磁気測定可能かつ板状鉄心製造可能な成品が得られなかった。
このため、本発明で規定したように、最初の工程(I)もしくは工程(II)の直前の鋼板の結晶粒の平均円相当直径は50μm以上300μm以下である必要がある。さらに好ましくは、70μm以上250μm以下である。
(実施例6)
下記表9に従い、前記無方向性電磁鋼板の製造方法において述べた方法により、タンデム圧延で表9の鋼No.6−1〜6−10、リバース圧延で表10の鋼No.6−11〜6−20の無方向性電磁鋼板を製造した。
タンデム圧延は圧下率均等の4パスで最終板厚に仕上げた。リバース圧延は圧下率均等の5パスで最終板厚に仕上げた。
得られた無方向性電磁鋼板をそれぞれ用いて、円筒形の容量1kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成しそれぞれの無負荷損における効率を測定した。変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.08とした。表9に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
タンデム圧延を行った結果を表9に、リバース圧延を行った結果を表10に示す。
最初の工程(I)を施さなかった鋼No.6−1および鋼No.6−11では磁気特性、変圧器効率とも優れたものが得られなかった。
本発明の効果は円筒形鉄心の変圧器A、変圧器B、変圧器Cの順に板状鉄心内の磁束の流れの板面方向以外の成分が増え、より複雑になるので、変圧器Aの効率<変圧器Bの効率<変圧器Cの効率の順に改善されていることがわかる。
表9および表10より、曲戻しロールの表面粗度Raが0.7μm以上5.0μm以下の場合に優れた磁気特性と本発明の板状鉄心を使用する変圧器の効率が優れていることがわかる。
あわせて、工程(I)を施さなかった鋼No.6−1および鋼No.6−11は磁気特性も劣り、変圧器の効率も90%以下にとどまっている。
また、曲戻しロールの表面粗度Raが5μm超であると、圧延された無方向性電磁鋼板において焼鈍時に微細な再結晶粒が形成され、磁束密度、鉄損とも劣るのみならず、積層した場合の占積率が低下し、本発明の板状鉄心を使用する変圧器の効率も90%以下の低い値にとどまった。
また、曲戻しロールの表面粗度Raは、0.7μm以上3.5μm以下の場合がより変圧器の効率が優れ、0.7μm以上2.5μm以下の場合がさらに効率が優れている。
以上より、曲戻しロールの表面粗度Raの値は本発明では0.7μm以上5.0μm以下に規定するが、0.7μm以上3.5μm以下がより好ましく、0.7μm以上2.5μm以下がさらに好ましい範囲である。
(実施例7)
下記表11に従い、前記無方向性電磁鋼板の製造方法において述べた方法により、表11の鋼No.7−1〜7−7の無方向性電磁鋼板を製造した。表11に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
圧延はロール径を変化させたリバース圧延機を用いて行った。
得られた無方向性電磁鋼板をそれぞれ用いて、円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器を作成しそれぞれの無負荷損における効率を測定した。変圧器作成にあたっては、いずれも本発明で規定するVplate/Vtrfm=0.10とした。
結果を表11に示す。本発明の効果は円筒形鉄心の変圧器A、変圧器B、変圧器Cの順に板状鉄心内の磁束の流れの板面方向以外の成分が増え、より複雑になるので、変圧器Aの効率<変圧器Bの効率<変圧器Cの効率の順に改善されていることがわかる。
表11より、ロール径60mm以上600mm以下において優れた磁気特性と、高い変圧器効率が得られていることがわかる。鋼No.7−6では、圧延ロール径が600mm超であるので、磁気特性、変圧器効率とも劣っている。
また、リバース圧延機の場合、ロール径が60mm以上120mm以下の鋼No.7−1、鋼No.7−2、鋼No.7−3において無負荷における変圧器効率が変圧器A、変圧器B、変圧器Cともに93%以上の優れた値を示している。
本発明の範囲内であるが、リバース圧延機のロール径が200mmである鋼No.7−5の場合は無負荷における変圧器効率が変圧器A、変圧器B、変圧器Cともに92%台に低下する。リバース圧延機のロール径が600mmである鋼No.7−6では変圧器A、変圧器B、変圧器Cともに効率が90%台にさらに低下する。
この結果から、リバース圧延機の場合は、ロール径が60mm以上120mm以下であることが、磁気特性と変圧器効率の両面からより好ましい範囲である。
以上より、表11より、リバース圧延の場合、工程(II)のロール径が小さいほど円筒形の容量5kVAの単相複巻変圧器、三相変圧器、三相3巻線変圧器の特性がすぐれていることがわかる。
(実施例8)
鋼種Bを使用し、これを1100℃のスラブ加熱により熱延板とした。表12に示す工程条件の組み合わせにより、表12に示すエプスタイン磁気特性を有する鋼板を製造した。そしてこの鋼板を用いて1kVAの単相変圧器を製造した。変圧器Dは額縁型の鉄心に片方に一次巻線、もう片方に二次巻線を施し、一般的な変圧器とした。
これに対し、変圧器E、変圧器Fは本発明の特徴であるVplate/Vtrfmの値を変更して、図1に示した筒型変圧器を2種類作成した。表12に記載の鋼板を板状鉄心に用いた以外の詳細は実施例1と同様にした。
プロセスと、変圧器効率の関係を表12に示した。
表12より、比較鋼は熱延板焼鈍(AP)を施しておらず、冷間圧延前粒径が35μmと小さいため、エプスタイン測定による磁気特性のみならず、いずれの変圧器においても効率が著しく劣る。
鋼No.12−4から鋼No.12−12においては、エプスタイン測定による磁気特性に差が見られないことが特徴である。
鋼No.12−4〜鋼No.12−6は従来の製造法による無方向性電磁鋼板電磁鋼板である。これらにおいては、一般型の変圧器における特性が本発明の筒状変圧器よりも効率が優れており、本発明が意図する変圧器の特性向上効果が得られていないことがわかる。また、本発明の特徴である変圧器全体の容積に対する板鉄心の容積比Vplate/Vtrfmの値が小さくなると、変圧器の効率は低下している。
鋼No.12−7〜鋼No.12−9は本発明のごとく工程(I)において繰り返し曲げを施しているが、そのロール表面の粗度が0.05μmと小さい鏡面ロールを使用している。これらにおいては、本発明で規定した集合組織の要件を満たしていないが、一般型変圧器よりも筒状変圧器において効率が優れる。しかしながら、本発明で説明したとは反して、Vplate/Vtrfmの値が小さくなると、効率が逆に低下している。
鋼No.12−10から鋼No.12−12は冷間圧延前の工程(I)の際に、表面粗度が2.4μmの繰り返し曲げロールを用いることにより、本発明の集合組織制御効果をより一層促進させたものである。これらの鋼では、一般型変圧器よりも効率が2.7%以上の著しい向上を示すだけでなく、Vplate/Vtrfmの値が小さくなると、効率が改善し、96.2%にまで到達する著しい改善効果を示していることがわかる。
以上の様に、本発明では、冷間圧延前に表面粗度を制御した繰り返し曲げロールを用い、Vplate/Vtrfmの値をあわせて制御することにより、一般型変圧器ではなく、筒状変圧器において特にその特性が優れるという新規な知見を見出した。

Claims (11)

  1. 柱状鉄心と、
    前記柱状鉄心の周囲に配置された1または2以上の筒状鉄心と、
    前記柱状鉄心の長手方向端部に接続するとともに前記筒状鉄心の長手方向端部に接続し、電磁鋼板の単層体または2以上の電磁鋼板の積層体からなる板状鉄心と、
    前記柱状鉄心と前記筒状鉄心との間に配置された一次コイル及び二次コイルと、を備え、
    前記電磁鋼板が、質量%で、
    0.1≦Si≦3.5、
    0.1≦Mn≦1.5、
    Al≦2.5、
    C≦0.003、
    N≦0.003、
    S≦0.003、
    残部がFe、及びその他不可避不純物からなり、
    さらに板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、
    φ2=45°断面において、ψ=55°である方位の最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、
    φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域が70°以上90°以下の無方向性電磁鋼板であることを特徴とする変圧器。
  2. 前記電磁鋼板が、更に質量%で、
    Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする請求項1記載の変圧器。
  3. 前記柱状鉄心と筒状鉄心と板状鉄心から構成される変圧器の全体積Vtrfmと各板状鉄心の合計の体積Vplateの間に式(1)が成立することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変圧器。
    Vplate/Vtrfm ≦ 0.4 ・・・ (1)
    ただし、変圧器の全体積Vtrfmは、板状鉄心の突起などの付加物を除いた外形において、変圧器の筒方向の軸に垂直な板状鉄心の断面積と、筒状鉄心を挟む2枚の板状鉄心の互いの外側の距離を筒の軸方向距離との積算値とする。
  4. 柱状鉄心と、
    前記柱状鉄心の周囲に配置された1または2以上の筒状鉄心と、
    前記柱状鉄心の長手方向端部に接続するとともに前記筒状鉄心の長手方向端部に接続し、電磁鋼板の単層体または2以上の電磁鋼板の積層体からなる板状鉄心と、
    前記柱状鉄心と前記筒状鉄心との間に配置された一次コイル及び二次コイルと、を備える変圧器に用いられる前記板状鉄心であって、
    前記電磁鋼板が、質量%で、
    0.1≦Si≦3.5、
    0.1≦Mn≦1.5、
    Al≦2.5、
    C≦0.003、
    N≦0.003、
    S≦0.003、
    残部がFe、及びその他不可避不純物からなり、
    当該無方向性電磁鋼板の板厚中心層の、0≦φ1≦90°、0≦φ2≦90°、0≦ψ≦90°で定義される方位分布関数(ODF)のBunge表示において、
    φ2=45°断面において、ψ=55°である方位の最高強度が2.8以下かつ1.5以上であり、
    φ2=0°断面におけるψ=0°である方位において、強度が2以上であるφ1の角度領域が70°以上90°以下の無方向性電磁鋼板であることを特徴とする変圧器用の板状鉄心。
  5. 前記電磁鋼板が、更に質量%で、
    Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする請求項4記載の変圧器用の板状鉄心。
  6. 質量%で、
    0.1≦Si≦3.5、
    0.1≦Mn≦1.5、
    Al≦2.5、
    C≦0.003、
    N≦0.003、
    S≦0.003、
    残部がFe、及びその他不可避不純物からなる鋼を熱間圧延する工程と、
    熱間圧延後の鋼板を少なくとも2本の表面粗度Raの値が式(2)を満たすリターンロールにより、曲げ−曲げ戻しする工程(I)と、
    冷間圧延前に結晶粒の平均直径を円相当直径で50μm以上300μm以下の範囲とされた鋼板を直径600mm以下の圧延ロールにより圧延する冷間圧延工程(II)と、
    仕上げ焼鈍する工程と、をこの順に有する、変圧器用の板状鉄心の製造方法。
    0.7μm≦Ra≦5.0μm ・・・ (2)
  7. 前記鋼が、更に質量%で、
    Cr≦1.0、Sn≦0.2の一方または両方を含有することを特徴とする請求項6記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
  8. 前記冷間圧延工程(II)が、直径60mm以上120mm以下の圧延ロールを用いてリバース圧延機により圧延する工程である、請求項6または請求項7に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
  9. 前記冷間圧延工程(II)が、直径400mm以上600mm以下の圧延ロールを用いてタンデム圧延機により圧延する工程である、請求項6または請求項7に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
  10. 前記リターンロールの直径が、10mm以上300mm以下である、請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
  11. 鋼板の前記リターンロールへの入り側と出側とのなす角が135度以上180度以下である、請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の変圧器用の板状鉄心の製造方法。
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