次に、本開示を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、自動変速機25を有する変速装置20の機械的構成の概略を示す構成図である。
自動車10は、図1および図2に示すように、エンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられた流体伝動装置23と、この流体伝動装置23の出力側に入力軸26が接続されると共にギヤ機構42やデファレンシャルギヤ44を介して駆動輪18a,18bに出力軸28が接続されて入力軸26に入力された動力を変速して出力軸28に伝達する有段の自動変速機25と、流体伝動装置23や自動変速機25に作動油を供給する油圧制御装置60と、油圧制御装置60を制御することによって流体伝動装置23や自動変速機25を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。ここで、変速装置20としては、主として、自動変速機25,油圧制御装置60,変速機ECU80が該当する。
エンジンECU16は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。エンジンECU16には、クランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号や、イグニッションスイッチ90からのイグニッション信号,アクセルペダル91の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。
流体伝動装置23は、図2に示すように、ポンプインペラやタービンランナ,ステータ,ワンウェイクラッチ,ロックアップクラッチ等を備えるロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されている。
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、図2に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3,C4,2つのブレーキB1,B2,ワンウェイクラッチF1と、を備える。
自動変速機25の第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転自在(回転自在)かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリヤ34とを備える。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に連結されている。第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
自動変速機25の第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構42、デファレンシャルギヤ44を介して左右の駆動輪18a,18bに伝達される。また、プラネタリキャリヤ39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持され、当該プラネタリキャリヤ39の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
クラッチC1〜C4は、いずれも、ピストン,複数の摩擦プレートやセパレータプレート,作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、2つの回転系を互いに接続すると共にその接続の解除が可能な摩擦式油圧クラッチとして構成されている。クラッチC1は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC2は、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39とを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC3は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC4は、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。
ブレーキB1,B2は、いずれも、ピストン,複数の摩擦プレートやセパレータプレート,作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、回転系を固定系に接続すると共にその接続の解除が可能な摩擦式油圧ブレーキとして構成されている。ブレーキB1は、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。ブレーキB2は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリヤ39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。
ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39に連結(固定)されるインナーレースや、トランスミッションケース22に固定されるアウターレース,インナーレースとアウターレースとの間に配置されたトルク伝達部材(複数のスプラグ等)を有し、プラネタリキャリヤ39の一方向の回転のみを許容する。
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、上記油圧制御装置60による作動油の給排を受けて動作する。図3に自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2,ワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2を図2の作動表に示す状態とすることにより、第1速〜第8速の前進段および第1速,第2速の後進段とを提供する。具体的には、図3に示すように、前進1速は、クラッチC1を係合することで形成される。なお、前進1速は、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2も係合される。前進2速は、クラッチC1とブレーキB1とを係合することで形成される。前進3速は、クラッチC1とクラッチC3とを係合することで形成される。前進4速は、クラッチC1とクラッチC4とを係合することで形成される。前進5速は、クラッチC1とクラッチC2とを係合することで形成される。前進6速は、クラッチC2とクラッチC4とを係合することで形成される。前進7速は、クラッチC2とクラッチC3とを係合することで形成される。前進8速は、クラッチC2とブレーキB1とを係合することで形成される。後進1速は、クラッチC3とブレーキB2とを係合することで形成される。後進2速は、クラッチC4とブレーキB2とを係合することで形成される。
油圧制御装置60は、図4に示すように、エンジン12の動力を用いて作動油を圧送するオイルポンプ61と、オイルポンプ61から圧送された作動油の一部をクーラ71やギヤ,ベアリング等の潤滑対象72に供給しながら調圧してライン圧用油路63にライン圧PLを発生させるレギュレータバルブ62と、ライン圧用油路63のライン圧PLを調圧してクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2の各油圧サーボに供給するリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4,SLB1,SLB2(SLC2〜SLC4とSLB1は図示せず)と、作動油を蓄圧する蓄圧器としてのアキュムレータ64と、アキュムレータ64とライン圧用油路63との連通および遮断を行なうオンオフソレノイドバルブ65と、を備える。オンオフソレノイドバルブ65は、ノーマルクローズタイプのバルブとして構成されている。
変速機ECU80は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。変速機ECU80には、油圧制御装置60内の作動油の油温を検出する油温センサ68からの油温Toや、ライン圧用油路63におけるオンオフソレノイドバルブ65付近に配置された油圧スイッチ69からのオンオフ信号,シフトレバー95の位置を検出するシフトポジションセンサ96からのシフトポジションSP,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。油圧スイッチ69は、ライン圧用油路63の油圧(ライン圧PL)が閾値PLref以上のときにはオンとなり、ライン圧用油路63の油圧が閾値PLref未満のときにはオフとなる。シフトレバー95のシフトポジションSPとしては、本実施形態では、駐車時に用いるパーキングポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)が用意されている。変速機ECU80からは、油圧制御装置60(リニアソレノイドバルブSLC1,SLB2,オンオフソレノイドバルブ65)への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
なお、エンジンECU16とブレーキECU17と変速機ECU80は、相互に通信ポートを介して接続されており、相互に制御に必要な各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。変速機ECU80は、エンジン回転速度Neやイグニッションスイッチ90からのイグニッション信号,アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度AccをエンジンECU16を介して通信により入力したり、ブレーキペダル93の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ94からのブレーキ開度BraをブレーキECU17を介して通信により入力したりしている。
こうして構成された自動車10では、エンジンECU16は、エンジン12の運転中に車速Vが所定車速以下でアクセルオフされているなどのエンジン12の自動停止条件が成立し且つ自動停止が許可されているときにエンジン12を自動停止し、エンジン12の自動停止中にブレーキオフやアクセルオンなどのエンジン12の自動始動条件が成立したときにエンジン12をクランキングして自動始動する、アイドルストップ制御を行なっている。
変速機ECU80は、エンジン12が運転中のときには、必要に応じてオンオフソレノイドバルブ65を開弁してオイルポンプ61からの油圧(ライン圧油路63の作動油)をアキュムレータ64に蓄圧し、エンジン12が自動停止されるときには、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してアキュムレータ64に蓄圧された油圧を保持する。そして、次回にエンジン12が自動始動されるときには、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してアキュムレータ64に蓄圧された油圧(作動油)をライン圧用油路63に放出し、エンジン12が始動してオイルポンプ61が作動するまでの間、アキュムレータ64からの油圧を用いて前進1速を形成するクラッチC1の係合制御を行なう。なお、この係合制御は、摩擦材(摩擦プレート、セパレータプレート)が滑りを伴わずに係合(完全係合)するまでクラッチC1の油圧サーボに作動油が供給されるように行なわれるものとしてもよいし、摩擦材が滑りを伴って係合(半係合)するまでクラッチC1の油圧サーボに作動油が供給されるように行なわれるものとしてもよいし、摩擦材が滑る直前(ピストンストロークエンド)までクラッチC1の油圧サーボに作動油が供給されるように行なわれるものとしてもよい。
また、変速機ECU80は、エンジン12の運転中にアキュムレータ64に蓄圧されている油圧(アキュムレータ内圧Pacin)が停止許可閾値Pacinsp以上である条件を含む複数の許可条件が成立しているときに、エンジン12の自動停止を許可する自動停止許可信号をエンジンECU16に送信する。エンジンECU16は、エンジン12の自動停止条件が成立していても変速機ECU80から自動停止許可信号を受信する(自動停止が許可される)までは、エンジン12の自動停止を行なわない。
ここで、アキュムレータ内圧Pacinは、アキュムレータ64に作動油が充填される充填状態と、アキュムレータ64に充填された作動油が保持される保持状態と、アキュムレータ64に充填された作動油が吐出される吐出状態と、のうち何れの状態にあるかに応じて推定するものとした。例えば、アキュムレータ64が充填状態あるときには、作動油が充填される際の単位時間あたりの油圧の変化量(充填レート)を油温に基づいて決定(油温が低いほど作動油の粘性が低くなるため、単位時間あたりの変化量は小さくなる)し、決定した充填レートで上昇する油圧を時間積分することにより推定することができる。アキュムレータ64が保持状態にあるときには、アキュムレータ64から作動油が漏れる際の単位時間あたりの油圧の変化量(漏れレート)を油温に基づいて決定し、決定した漏れレートで下降する油圧を時間積分することにより推定することができる。アキュムレータ64が吐出状態にあるときには、アキュムレータ64から作動油が吐出される際の単位時間あたりの油圧の変化量(吐出レート)を油温に基づいて決定し、決定した吐出レートで下降する油圧を時間積分することにより推定することができる。なお、本実施形態では、アキュムレータ64が吐出状態にあるときには、アキュムレータ64から作動油が吐出される際の単位時間あたりの吐出圧の変化量(吐出圧レート)を油温に基づいて決定し、決定した吐出圧レートを用いてアキュムレータ64の吐出圧Pacdiも推定している。アキュムレータ64が充填状態や保持状態にあるときには、このアキュムレータ64の吐出圧Pacdiを値0とするものとした。
停止許可閾値Pacinspは、エンジン12を自動停止した後に、次回にエンジン12を始動して発進する際にクラッチC1の係合準備に必要な油圧をアキュムレータ64に蓄圧された油圧で賄うことができるように、エンジン12の自動停止中の作動油の漏れ量などを考慮して設定される。エンジン12の運転中にアキュムレータ64に蓄圧する際には、アキュムレータ内圧Pacinがこの停止許可閾値Pacinsp以上になるように蓄圧する。
次に、こうして構成された本実施形態の変速装置20の動作、特に、運転者によりイグニッションオフされた(イグニッションスイッチ90がオフされた)ときの動作について説明する。図5は、イグニッションスイッチ90がオフされたときに変速機ECU80により実行されるイグニッションオフ時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、イグニッションスイッチ90がオフされると、エンジン11が回転停止してオイルポンプ61も回転停止し、ライン圧用油路63の油圧(ライン圧PL)が低下する。
イグニションオフ時処理ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、オンオフソレノイドバルブ65を開弁する(ステップS100)。上述したように、イグニッションスイッチ90がオフされるとライン圧PLが低下するから、オンオフソレノイドバルブ65を開弁すると、アキュムレータ64に蓄圧されている作動油がライン圧用油路63に吐出され、アキュムレータ64内の油圧(アキュムレータ内圧Pacin)が低下する。これにより、アキュムレータ64のスプリングなどを保護すると共にディーラーなどでアキュムレータ64の分解作業が行なわれるときの安全性を確保することができる。
こうしてオンオフソレノイドバルブ65を開弁すると、その開弁から所定時間T1が経過するのを待つ(ステップS110)。ここで、所定時間T1は、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してからアキュムレータ64の吐出圧Pacdiが十分に小さい値(例えば略値0)に至る(油圧スイッチ69が配置される位置の油圧が上述の閾値PLrefよりも十分に小さい値(例えば略値0)で安定する)までに要する時間として予め実験や解析によって定められ、例えば、10秒や15秒,20秒などを用いることができる。なお、この所定時間T1は、一律の値を用いるものとしてもよいし、可変値(オンオフソレノイドバルブ65を開弁したときのアキュムレータ内圧Pacinが大きいほど長くなる傾向の値)を用いるものとしてもよい。
そして、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してから所定時間T1が経過すると、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁し(ステップS120)、油圧スイッチ69の故障診断を行なって(ステップS130)、本ルーチンを終了する。ここで、油圧スイッチ69の故障診断では、油圧スイッチ69がオフのときには、油圧スイッチ69が正常であると判定し、油圧スイッチ69がオンのときには、油圧スイッチ69が故障している(可能性がある)と判定する。オンオフソレノイドバルブ65を開弁してから所定時間T1が経過したときには、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが十分に小さい値になっている(油圧スイッチ69が配置される位置の油圧が上述の閾値PLrefよりも十分に小さい値で安定している)と考えられる。したがって、このときに油圧スイッチ69の故障診断を行なうことにより、誤診断を抑制することができる。しかも、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうから、油圧スイッチ69が配置される位置の油圧がより安定している状態で油圧スイッチ69の故障診断を行なうことができ、誤診断をより抑制することができる。
図6は、イグニッションスイッチ90がオフされたときの様子の一例を示す説明図である。図示するように、イグニッションスイッチ90がオフされると(時刻t11)、エンジン12が回転停止すると共に、オンオフソレノイドバルブ65を開弁する。オンオフソレノイドバルブ65が開弁すると、アキュムレータ64から作動油が吐出される。そして、オンオフソレノイドバルブ65の開弁から所定時間T1が経過すると(時刻t12)、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なう。
本開示の変速装置20では、イグニッションオフされたときには、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してから所定時間T1が経過したときに、油圧スイッチ69の故障診断を行なうから、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが十分に小さい値になっている(油圧スイッチ69が配置される位置の油圧が上述の閾値PLrefよりも十分に小さい値で安定している)状態で、油圧スイッチ69の故障診断を行なうことができる。この結果、油圧スイッチ69の故障診断における誤診断を抑制することができる。しかも、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうから、油圧スイッチ69が配置される位置の油圧がより安定している状態で油圧スイッチ69の故障診断を行なうことができ、誤診断をより抑制することができる。
本開示の変速装置20では、イグニッションオフされたときには、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してから所定時間T1が経過したときに、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとしたが、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁せずに(開弁を保持して)油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、変速機ECU80は、イグニッションオフされたときに、図5のイグニッションオフ時処理ルーチンを実行するものとしたが、これに代えて、図7のイグニッションオフ時処理ルーチンを実行するものとしてもよい。図7のイグニッションオフ時処理ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、オンオフソレノイドバルブ65を開弁する(ステップS200)。続いて、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiを入力し(ステップS210)、入力したアキュムレータ64の吐出圧Pacdiを閾値Pacdirefと比較する(ステップS220)。ここで、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiは、上述の手法により推定した値を入力するものとした。また、閾値Pacdirefは、オンオフソレノイドバルブ65を開弁した後に、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが十分に小さい値に至った(油圧スイッチ69が配置される位置の油圧が上述の閾値PLrefよりも十分に小さい値で安定した)か否かを判定するのに用いられる閾値であり、例えば、略値0やそれよりも若干大きい値などを用いることができる。
アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが閾値Pacdirefよりも大きいときには、ステップS210に戻り、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが閾値Pacdiref以下に至ると、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁し(ステップS230)、油圧スイッチ69の故障診断を行なって(ステップS240)、本ルーチンを終了する。この場合でも、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが十分に小さい値になっている(油圧スイッチ69が配置される位置の油圧が上述の閾値PLrefよりも十分に小さい値で安定している)状態で、油圧スイッチ69の故障診断を行なうことができる。この結果、油圧スイッチ69の故障診断における誤診断を抑制することができる。しかも、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうから、油圧スイッチ69が配置される位置の油圧がより安定している状態で油圧スイッチ69の故障診断を行なうことができ、誤診断をより抑制することができる。
この図7のイグニッションオフ時処理ルーチンでは、オンオフソレノイドバルブ65を開弁した後にアキュムレータ64の吐出圧Pacdiが閾値Pacdiref以下に至ったときに、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとした。しかし、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiが値でなく範囲を有する場合には、その範囲の上限値(最大値)が閾値Pacdiref以下に至ったときに、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとしてもよい。
また、図7のイグニッションオフ時処理ルーチンでは、イグニッションオフされたときには、オンオフソレノイドバルブ65を開弁した後にアキュムレータ64の吐出圧Pacdiが閾値Pacdiref以下に至ったときに、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してから油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとしたが、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁せずに(開弁を保持して)油圧スイッチ69の故障診断を行なうものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、アキュムレータ内圧Pacinは、推定するものとしたが、アキュムレータ64内の油圧を検出する油圧センサを設けて、その油圧センサにより検出された値を用いるものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、アキュムレータ64の吐出圧Pacdiは、推定するものとしたが、アキュムレータ64の吐出口などにアキュムレータ64の吐出圧を検出する吐出圧センサを設けて、その吐出圧センサにより検出された値を用いるものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、ライン圧用油路63におけるオンオフソレノイドバルブ65付近にライン圧用油路63が配置されるものとした。しかし、ライン圧用油路63におけるオイルポンプ61およびレギュレータバルブ62とリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4,SLB1,SLB2およびアキュムレータ64との間にマニュアルバルブが配置され、ライン圧用油路63におけるマニュアルバルブよりもアキュムレータ64側に油圧スイッチ69が配置されるものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、ライン圧用油路63におけるオンオフソレノイドバルブ65付近に、ライン圧用油路63の油圧に応じてオンオフする油圧スイッチ69を配置するものとしたが、ライン圧用油路63の油圧を検出する油圧センサを配置するものとしてもよい。
本開示の変速装置20では、自動変速機25としては、8段変速式の変速機を用いるものとしたが、4段変速式や5段変速式,6段変速機式,10段変速式などの自動変速機を用いるものとしてもよい。
以上説明したように、本開示の変速装置(20)は、自動停止および自動始動が可能なエンジン(12)を備える車両(10)に搭載され、複数の係合要素(C1〜C4,B1,B2)の係脱により変速段を形成して前記エンジン(12)からの動力を駆動輪(18a,18b)に伝達する変速装置(20)であって、前記エンジン(12)からの動力を用いて作動油を圧送するポンプ(61)と、前記ポンプ(61)から前記係合要素(C1〜C4,B1,B2)の油圧サーボまでの油路に接続されると共に作動油を蓄圧する蓄圧器(64)と、前記油路における前記蓄圧器(64)に接続される位置の油圧を検出する油圧検出器(69)と、を有し、前記ポンプ(61)および/または前記蓄圧器(64)からの作動油の油圧を制御して前記油圧サーボに供給するとともに、前記エンジン(12)が自動始動する際に前記蓄圧器(64)に蓄圧された作動油を前記油圧サーボに供給する油圧制御装置(60)と、イグニッションオフされたときには、前記蓄圧器(64)内の油圧を解放させた後に、前記油圧検出器(69)の故障診断を行なう制御装置(80)と、を備えることを要旨とする。
この本開示の変速装置では、イグニッションオフされたときには、蓄圧器内の油圧を解放させた後に、油圧検出器の故障診断を行なう。これにより、アキュムレータの吐出圧が十分に小さい値になってから(油圧検出器が配置される位置の油圧が十分に小さい値で安定してから)油圧検出器の故障診断を行なうことができるから、故障診断における誤診断を抑制することができる。
こうした本開示の変速装置(20)において、前記制御装置(80)は、前記蓄圧器(64)内の油圧の解放を開始してから所定時間が経過したときに、前記油圧検出器(69)の故障診断を行なう、ものとしてもよい。また、前記制御装置(80)は、前記制御装置(80)は、前記蓄圧器(64)内の油圧の解放を開始した後に前記蓄圧器(64)の吐出圧が所定吐出圧以下に至ったときに、前記油圧検出器(69)の故障診断を行なう、ものとしてもよい。
また、本開示の変速装置(20)において、前記油圧制御装置(60)は、前記油路と前記蓄圧器(64)との連通および遮断を行なうバルブ(65)を有し、前記制御装置(80)は、イグニッションオフされたときには、前記バルブ(65)を開弁することにより前記蓄圧器(64)内の油圧を解放させる、ものとしてもよい。
この態様の本開示の変速装置(20)において、前記制御装置(80)は、前記バルブ(65)を開弁することにより前記蓄圧器(64)内の油圧を解放させた後に、前記バルブ(65)を閉弁してから前記油圧検出器(69)の故障診断を行なう、ものとしてもよい。
本開示の変速装置(20)において、前記油圧検出器(69)は、油圧が所定油圧以上のときにオンすると共に油圧が前記所定油圧未満のときにオフする油圧スイッチである、ものとしてもよい。
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。