図1は、本発明の実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、エンジン22や燃料供給装置60の構成の概略を示す構成図である。
実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン22と、燃料供給装置60と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
エンジン22は、ガソリンや軽油などの燃料を用いて動力を出力する内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁125と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁126と、を有する。エンジン22は、ポート噴射弁125と筒内噴射弁126とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのいずれかで運転が可能となっている。
ポート噴射モードでは、エアクリーナ122によって清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共にポート噴射弁125から燃料を噴射して空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギによって押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室に吸入し、吸気行程の途中あるいは圧縮行程に至ってから筒内噴射弁126から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させてクランクシャフト26の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室に吸入する際にポート噴射弁125から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で筒内噴射弁126から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させてクランクシャフト26の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。
燃焼室からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)を有する浄化装置134を介して外気に排出される。
図2に示すように、燃料供給装置60は、エンジン22のポート噴射弁125および筒内噴射弁126に燃料を供給する装置として構成されている。燃料供給装置60は、燃料タンク61と、燃料タンク61の燃料をポート噴射弁125が接続された低圧側通路(第1通路)63に供給するフィードポンプ(第1ポンプ)62と、低圧側通路63に設けられた逆止弁64と、低圧側通路63における逆止弁64よりもポート噴射弁125側の燃料を加圧して筒内噴射弁126が接続された高圧側通路(第2通路)66に供給する高圧燃料ポンプ(第2ポンプ)65と、を備える。
フィードポンプ62および逆止弁64は、燃料タンク61内に配置されている。フィードポンプ62は、バッテリ50からの電力の供給を受けて作動する電動ポンプとして構成されている。逆止弁64は、低圧側通路63におけるフィードポンプ62側の燃圧(燃料の圧力)がポート噴射弁125側の圧力よりも高いときには開弁し、フィードポンプ62側の圧力がポート噴射弁125側の圧力以下のときには閉弁する。
高圧燃料ポンプ65は、エンジン22からの動力(カムシャフトの回転)によって駆動されて低圧側通路63内の燃料を加圧するポンプである。高圧燃料ポンプ65は、その吸入口に接続されて燃料を加圧する際に開閉する電磁バルブ65aと、その吐出口に接続されて燃料の逆流を防止すると共に高圧側通路66内の燃圧を保持するチェックバルブ65bと、を有する。この高圧燃料ポンプ65は、エンジン22の運転中に電磁バルブ65aが開弁されると、フィードポンプ62からの燃料を吸入し、電磁バルブ65aが閉弁されたときに、エンジン22からの動力によって作動する図示しないプランジャによって圧縮した燃料をチェックバルブ65bを介して高圧側通路66に断続的に送り込むことにより、高圧側通路66に供給する燃料を加圧する。なお、高圧燃料ポンプ65の駆動時には、低圧側通路63内の燃圧や高圧側通路66内の燃圧がエンジン22の回転(カムシャフトの回転)に応じて脈動する。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24によって運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御したり燃料供給装置60を制御したりするのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。また、吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトや排気バルブを開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジションθcaも挙げることができる。さらに、スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度THや、吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Taも挙げることができる。加えて、排気管に取り付けられた空燃比センサ135aからの空燃比AFや、排気管に取り付けられた酸素センサ135bからの酸素信号O2も挙げることができる。また、燃料供給装置60の低圧側通路63におけるポート噴射弁125付近に取り付けられた燃圧センサ68からのポート噴射弁125に供給する燃料の燃圧Pfpや、燃料供給装置60の高圧側通路66における筒内噴射弁126付近に取り付けられた燃圧センサ69からの筒内噴射弁126に供給する燃料の燃圧Pfdも挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御したり燃料供給装置60を制御したりするための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、ポート噴射弁126への駆動信号や筒内噴射弁126への駆動信号,スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号を挙げることができる。また、フィードポンプ62への駆動制御信号,高圧燃料ポンプ65の電磁バルブ65aへの駆動制御信号も挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
図1に示すように、プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2と接続されると共に電力ライン54を介してバッテリ50と接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2,モータMG2の温度を検出する温度センサからのモータMG2の温度tm2などが入力ポートを介して入力されている。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン54を介してインバータ41,42と接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの電池電圧Vbやバッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからの電池電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサ51bからの電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド走行(HV走行)モードや電動走行(EV走行)モードで走行する。ここで、HV走行モードは、エンジン22を運転しながら、エンジン22の運転を伴って走行するモードであり、EV走行モードは、エンジン22の運転を伴わずに走行するモードである。
HV走行モードでは、HVECU70は、まず、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に要求される要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*に駆動軸36の回転数Ndを乗じて駆動軸36に要求される要求パワーPd*を計算する。ここで、駆動軸36の回転数Ndは、例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数などを用いることができる。続いて、要求パワーPd*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づく充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じて車両に要求される要求パワーPe*を計算する。そして、要求パワーPe*に基づいてエンジン22の運転ポイントしての目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する。実施例では、基本的には、エンジン22を効率よく動作させるための燃費動作ラインを実行用動作ラインとして選択し、要求パワーPe*と実行用動作ライン(燃費動作ライン)とに応じた回転数NeefおよびトルクTeefを目標回転数Ne*および目標トルクTe*として設定するものとした。図3は、エンジン22の燃費動作ラインの一例と回転数NeefおよびトルクTeefを設定する様子とを示す説明図である。エンジン22の回転数NeefおよびトルクTeefは、エンジン22の燃費動作ラインと要求パワーPe*が一定の曲線との交点として求めることができる。次に、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信すると、この目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいてエンジン22が運転されるようにエンジン22の吸入空気量制御,燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、エンジンECU24は、エンジン22を運転する際には、燃料供給装置60の制御も行なう。具体的には、ポート噴射弁125に供給する燃料の燃圧Pfpが目標燃圧Pfp*となるようにフィードポンプ62を制御すると共に筒内噴射弁126に供給する燃料の燃圧Pfdが目標燃圧Pfd*となるように高圧燃料ポンプ65の電磁バルブ65aを制御する。目標燃圧Pfd*は、例えば、数MPa〜十数MPa程度を用いることができる。目標燃圧Pfp*の設定方法については後述する。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このHV走行モードでは、要求パワーPe*が停止用閾値Pstop以下に至ったときなどエンジン22の停止条件が成立したときに、エンジン22の運転を停止して、EV走行モードに移行する。
EV走行モードでは、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36の要求トルクTd*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に要求トルクTd*をモータMG2のトルク指令Tm2*に設定し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このEV走行モードでは、HV走行モードのときと同様に計算した要求パワーPe*が停止用閾値Pstopよりも大きい始動用閾値Pstart以上に至ったときなどエンジン22の始動条件が成立したときに、エンジン22を始動してHV走行モードに移行する。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、ポート噴射弁125に供給する燃料の目標燃圧Pfp*を設定する際の処理について説明する。図4は、実施例のエンジンECU24により実行される目標燃圧設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の運転開始時に実行される。
目標燃圧設定ルーチンが実行されると、エンジンECU24は、まず、ポート噴射弁125に供給する燃料の燃圧Pfpを燃圧センサ68から入力し(ステップS100)、入力した燃圧Pfpを閾値Pfprefと比較する(ステップS110)。燃圧Pfpが閾値Pfpref未満のときには、比較的低い所定燃圧Pfpnoを目標燃圧Pfp*に設定して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。ここで、所定燃圧Pfpnoは、例えば、380kPaや400kPa,420kPaなどを用いることができる。また、閾値Pfprefは、例えば、所定燃圧Pfpnoと同一の値やそれよりも若干低い値などを用いることができる。このようにして、目標燃圧Pfp*を比較的低い所定燃圧Pfpnoとすることにより、目標燃圧Pfp*を比較的高い後述の所定燃圧Pfpupとする場合に比して、フィードポンプ62の電力消費を抑制することができる。
ステップS110で燃圧Pfpが閾値Pfpref以上のときには、所定燃圧Pfpnoよりも高い所定燃圧Pfpupを目標燃圧Pfp*に設定する(ステップS130)。ここで、所定燃圧Pfpupは、例えば、510kPa,530kPa,550kPaなどを用いることができる。このようにして、目標燃圧Pfp*を比較的高い所定燃圧Pfpupとすることにより、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpnoとする場合に比して、燃料の霧化を促進させることができる。
続いて、所定時間T1が経過するのを待って(ステップS140)、エンジン22の回転数Neを入力する(ステップS150)。ここで、所定時間T1は、例えば、5秒や6秒,7秒などを用いることができる。また、エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに基づいて演算されたものを入力するものとした。
こうしてエンジン22の回転数Neを入力すると、入力したエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内か共振領域外かを判定する(ステップS160)。そして、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内のときには、ステップS150に戻り、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときには、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替えて(ステップS170)、本ルーチンを終了する。このようにして、目標燃圧Pfp*を比較的低い所定燃圧Pfpnoとすることにより、所定燃圧Pfpupで保持する場合に比して、フィードポンプ62の電力消費を抑制することができる。
いま、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替える(低下させる)ときを考える。目標燃圧Pfp*を低下させると、フィードポンプ62からの燃料量を少なくすることによって、低圧側通路63における逆止弁64よりもフィードポンプ62側の圧力がポート噴射弁125側の圧力以下となって逆止弁64が閉弁することがある。逆止弁64が閉弁すると、高圧燃料ポンプ65の駆動によって発生する低圧側通路63の燃圧の脈動が大きくなり、燃料供給装置60(低圧側通路63や燃料タンク61など)や燃料供給装置60が配置される車体などの振動が大きくなって異音が発生することがある。上述の燃料供給装置60の共振領域は、目標燃圧Pfp*を低下させたときに、燃料供給装置60や車体などの振動が大きくなって異音が発生しやすいエンジン22の回転数Neの領域として定められる。この燃料供給装置60の共振領域は、低圧側通路63における逆止弁64と高圧燃料ポンプ65との距離やポート噴射弁125と高圧燃料ポンプ65との距離などに応じて定めることができ、例えば、1000rpm程度から1200rpm程度までの領域とすることができる。実施例では、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに低下させることにより、逆止弁64が閉弁したとしても、低圧側通路63の燃圧の脈動が大きくなりにくいことによって燃料供給装置60や車体などの振動を大きくなりにくくして、燃料供給装置60や車体などで異音が発生するのを抑制することができる。
図5は、フィードポンプ62と燃圧Pfpおよび目標燃圧Pfp*とエンジン22の回転数Neとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。図示するように、エンジン22を始動して運転を開始したときに(時刻t11)、燃圧Pfpが閾値Pfpref以上のときには、目標燃圧Pfp*を比較的高い所定燃圧Pfpupとする。これにより、エンジン22の運転開始直後の燃料の霧化を促進させることができる。そして、その後に、所定時間T1が経過して且つエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに(時刻t12)、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpnoに低下させる。これにより、フィードポンプ62の電力消費を抑制することができる。しかも、目標燃圧Pfp*が燃圧Pfpよりも低くなることに起因して逆止弁64が閉弁したとしても、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外であるから、低圧側通路63の燃圧の脈動が大きくなりにくいことによって燃料供給装置60や車体などの振動が大きくなりにくく、燃料供給装置60や車体などで異音が発生するのを抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転開始時に目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpupを設定した後に、所定時間T1が経過して且つエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupよりも低い所定燃圧Pfpnoに切り替える(低下させる)。これにより、低圧側通路63における逆止弁64よりもフィードポンプ62側の圧力がポート噴射弁125側の圧力以下となって逆止弁64が閉弁したとしても、低圧側通路63の燃圧の脈動が大きくなりにくいことによって燃料供給装置60や車体などの振動を大きくなりにくくして、燃料供給装置60や車体などで異音が発生するのを抑制することができる。
実施例や変形例のハイブリッド自動車20では、目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpupを設定した後に、所定時間T1が経過して且つエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupよりも低い所定燃圧Pfpnoに切り替えるものとした。しかし、目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpupを設定した後に、所定時間T1が経過していなくても、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupよりも低い所定燃圧Pfpnoに切り替えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、図4の目標燃圧設定ルーチンを実行するものとした。しかし、図4の目標燃圧設定ルーチンに代えて、図6の目標燃圧設定ルーチンを実行するものとしてもよい。この図6の目標燃圧設定ルーチンは、図4の目標燃圧設定ルーチンのステップS150,S160の処理に代えて、ステップS200〜S240の処理を実行する点を除いて、図4の目標燃圧設定ルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
図6の目標燃圧設定ルーチンでは、エンジンECU24は、所定燃圧Pfpupを目標燃圧Pfp*に設定してから所定時間T1が経過すると(ステップS130,S140)、エンジン22の回転数Neを入力し(ステップS200)、入力したエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内か共振領域外かを判定する(ステップS210)。そして、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときには、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替えて(ステップS170)、本ルーチンを終了する。
ステップS210でエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内のときには、エンジン22の運転ポイントの変更指令をHVECU70に送信する(ステップS220)。HVECU70は、エンジン22の運転ポイントの変更指令を受信すると、エンジン22の目標回転数Ne*(回転数Ne)が燃料供給装置60の共振領域外となるようにエンジン22の運転ポイントとしての目標回転数Ne*および目標トルクTe*を変更する。実施例では、エンジン22の実行用動作ラインを燃費動作ラインから共振回避動作ラインに切り替えて、要求パワーPe*と実行用動作ライン(共振回避動作ライン)とに応じた回転数NereおよびトルクTereを目標回転数Ne*および目標トルクTe*として設定するものとした。ここで、共振回避動作ラインは、燃費動作ラインのうち少なくともエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内となる部分を高回転数低トルク側の共振領域外に移行させた動作ラインである。図7は、エンジン22の共振回避動作ラインの一例と回転数NereおよびトルクTereを設定する様子とを示す説明図である。エンジン22の回転数NereおよびトルクTereは、エンジン22の共振回避動作ラインと要求パワーPe*が一定の曲線との交点として求めることができる。なお、図7では、参考のために、燃費動作ラインと回転数NeefおよびトルクTeefとについても図示した。この図7から分かるように、実行用動作ラインを燃費動作ラインから共振回避動作ラインに切り替えることによってエンジン22の目標回転数Ne*(回転数Ne)を回転数Neefから回転数Nereに移行させて、エンジン22の回転数Neを燃料供給装置60の共振領域外に移行させることができる。
続いて、エンジン22の回転数Neを入力し(ステップS230)、入力したエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内か共振領域外かを判定し(ステップS240)、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内のときには、ステップS230に戻る。こうして、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外になるのを待つ。
そして、エンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外になると、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替えて(ステップS170)、本ルーチンを終了する。これにより、実施例(エンジン22の実行用動作ラインを燃費動作ラインで保持してエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外になるのを待つ場合)に比して、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替えるまでの時間が長くなるのをより抑制することができる。この結果、フィードポンプ62の電力消費をより抑制することができる。なお、エンジン22の実行用動作ラインは、目標燃圧Pfp*を切り替えてから所定時間T2(例えば、数秒など)が経過したときなどに、共振回避動作ラインから燃費動作ラインに戻すものとした。
この変形例では、目標燃圧Pfp*が所定燃圧Pfpupで所定時間が経過したときにエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内のときには、エンジン22の実行用動作ラインを共振回避動作ラインに切り替えることによって、エンジン22の回転数Neを燃料供給装置60の共振領域外に移行させるものとした。しかし、共振回避動作ラインを設けずに、目標燃圧Pfp*が所定燃圧Pfpupで所定時間が経過したときにエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域内のときには、燃料供給装置60の共振領域の上限回転数よりも若干大きい回転数をエンジン22の目標回転数Ne*に設定すると共に要求パワーPe*をエンジン22の目標回転数Ne*で除してエンジン22の目標トルクTe*を設定することによって、エンジン22の回転数Neを燃料供給装置60の共振領域外に移行させるものとしてもよい。
実施例や変形例のハイブリッド自動車20では、図4や図6の目標燃圧設定ルーチンで説明したように、エンジン22の運転開始時に燃圧Pfpが閾値Pfpref未満のときには、目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpnoを設定して保持し、エンジン22の運転開始時に燃圧Pfpが閾値Pfpref以上のときには、目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpupを設定してからその後にエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpnoに切り替える(低下させる)ものとした。しかし、エンジン22の運転開始時に燃圧Pfpに拘わらずに目標燃圧Pfp*に所定燃圧Pfpupを設定してからその後にエンジン22の回転数Neが燃料供給装置60の共振領域外のときに目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpnoに切り替える(低下させる)ものとしてもよい。
実施例や変形例のハイブリッド自動車20では、図4や図6の目標燃圧設定ルーチンで説明したように、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに迅速に切り替えるものとした。しかし、目標燃圧Pfp*を所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに切り替える際には、レート処理などの緩変化処理を用いて目標燃圧Pfp*を徐々に変化させるものとしてもよい。この場合、例えば、目標燃圧Pfp*を、所定燃圧Pfpupから所定燃圧Pfpnoに向けて数msec当たり数kPa〜10数kPaずつ変化させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とを備えるものとした。しかし、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とを単一の電子制御ユニットとして構成するものとしてもよい。
実施例では、駆動輪39a,39bに連結された駆動軸36にプラネタリギヤ30を介してエンジン22およびモータMG1を接続すると共に駆動軸36にモータMG2を接続する構成とした。しかし、駆動輪に連結された駆動軸に変速機を介してモータを接続すると共にそのモータの回転軸にクラッチを介してエンジンを接続するいわゆる1モータハイブリッド自動車の構成としてもよい。また、駆動輪に連結された駆動軸に走行用モータを接続すると共にその走行用モータと電力をやりとりする発電用モータをエンジンの出力軸に接続するいわゆるシリーズハイブリッド自動車の構成としてもよい。さらに、モータを備えずにエンジンからの動力だけを用いて走行する自動車の構成としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、燃料供給装置60が「燃料供給装置」に相当し、図4の目標燃圧設定ルーチンを実行すると共にエンジン22および燃料供給装置60を制御するエンジンECU24が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。