JP6665806B2 - ジルコニウムの精製方法および精製装置 - Google Patents

ジルコニウムの精製方法および精製装置 Download PDF

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Description

本発明は、イットリウム中に生成された放射性ジルコニウムをイットリウムから分離精製するジルコニウムの精製方法および精製装置に関する。
従来、放射性ジルコニウムは、医用イメージングに有効な放射性同位元素であることが知られている。そのため、放射性ジルコニウムの製造方法および精製方法の確立が求められている。製造方法としては、イットリウム(Y)ターゲットに対して陽子線を照射する方法が知られている。陽子線を用いた製造方法においては、数百ミリグラム単位のイットリウム中に、数十〜数百ナノグラム単位の微量の放射性ジルコニウムが生成される。微量の放射性ジルコニウムが生成されたイットリウムから、放射性ジルコニウムを精製する精製方法としては、キレート樹脂を用いる方法が知られている。例えば、非特許文献1には、機能基としてヒドロキサム酸基を有するキレート樹脂(以下、ヒドロキサム酸樹脂)を使用して、イットリウムから放射性ジルコニウムを精製する方法が記載されている。
非特許文献1に記載されたヒドロキサム酸樹脂を用いた放射性ジルコニウムの精製方法においては、ヒドロキサム酸樹脂が有する、4価以上の金属イオンと強いキレート結合を形成する性質を利用する。すなわち、ヒドロキサム酸樹脂は、4価のジルコニウムイオンを捕集する一方、3価のイットリウムイオンをほとんど捕集しない。そこで、放射性ジルコニウムが生成されたイットリウムターゲットを塩酸によって溶解した後、得られた溶解液をヒドロキサム酸樹脂に通液すると、溶解液中のジルコニウムイオンがヒドロキサム酸樹脂に吸着される。ジルコニウムイオンを吸着して捕集したヒドロキサム酸樹脂に対して、洗浄液を通液した後にシュウ酸水溶液((COOH)2)を通液すると、シュウ酸水溶液中にジルコニウムが溶解する。その後は、陰イオン交換樹脂を用いてジルコニウムが溶解したシュウ酸溶液からシュウ酸を除去することによって、ジルコニウムを回収できる。さらに、特許文献1には、ジルコニウム(IV)等の原子価3以上の高原子価金属イオンを、酸性下であっても選択的に捕集できる、ヒドロキサム酸基を有する化合物を担体に導入してなる捕集剤が開示されている。
特許第5439691号公報
Jason P.Holland et al. "Standardized methods for the production of high specific-activity zirconium-89", Nucl. Med. Biol., 2009, 36, 729-739.
しかしながら、上述した従来技術において、ジルコニウムが溶解したシュウ酸溶液内におけるジルコニウムおよびイットリウムの濃度を計測したところ、イットリウムの濃度がジルコニウムの濃度の2〜5倍程度であることが判明した。すなわち、ジルコニウムが溶解したシュウ酸溶液において、目的核種であるジルコニウムに比して不純物であるイットリウムの方が多量に含まれており、精製が十分にされていないことが判明した。
また、シュウ酸イットリウムとシュウ酸ジルコニウムとの溶解度の差を利用する方法も考えられる。すなわち、放射性ジルコニウムを含むイットリウムターゲットを、溶解酸性溶液を用いて溶解し、溶解酸性溶液を除去した後にシュウ酸水溶液を加えて撹拌すると、溶解度の小さいシュウ酸イットリウムが析出するため、ろ過によってジルコニウムが分離可能になる(シュウ酸塩沈殿法)。なお、酸性物質が残存していると、シュウ酸イットリウムは溶解度が大きくなって析出し難くなるため、溶解酸性溶液はシュウ酸水溶液を添加する前に除去する。ところが、シュウ酸塩沈殿法においては、放射性ジルコニウムの一部も共沈する可能性がある。また、シュウ酸イットリウムの溶解度が0ではないことから、微量のイットリウムが残留する可能性もあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、ジルコニウムをイットリウムから分離精製する場合に、不純物であるイットリウムの含有率を低減でき、高純度のジルコニウムを含有した精製液を回収できるジルコニウムの精製方法および精製装置を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、ジルコニウムの錯体およびイットリウムの錯体を含む溶液を陰イオン交換樹脂に接触させて、前記ジルコニウムの錯体および前記イットリウムの錯体を吸着させる吸着工程と、前記吸着工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に純水を通液する純水通液工程と、前記純水通液工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に、前記イットリウムの錯体を略分解するとともに前記ジルコニウムの錯体を略分解しない濃度の低濃度酸性溶液を通液する酸通液工程と、前記酸通液工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に前記ジルコニウムを溶解可能な濃度の高濃度酸性溶液を通液して、前記ジルコニウムを含む精製液を得る回収工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記低濃度酸性溶液の濃度が、水素イオン濃度において0.1mol/L未満であることを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記高濃度酸性溶液の濃度が、水素イオン濃度において0.1mol/L以上であることを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを溶解酸性溶液によって溶解させて溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液をキレート樹脂に接触させる前段吸着工程と、前記前段吸着工程の後に、前記キレート樹脂を洗浄する前段洗浄工程と、前記前段洗浄工程の後に、前記キレート樹脂に前記ジルコニウムを溶解可能な回収酸性溶液を通液して前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む溶液を得る前段回収工程と、を前記吸着工程の前にさらに含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記回収酸性溶液が、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸水溶液であることを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを溶解酸性溶液によって溶解させて溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液を蒸発乾固させて前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む物質を得る蒸発乾固工程と、前記蒸発乾固工程の後に、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む物質にシュウ酸水溶液を添加して撹拌し、ジルコニウムを溶解させ、シュウ酸イットリウムを析出させる撹拌工程と、前記撹拌工程の後に、前記混合液をろ過することにより、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む溶液を得るろ過工程と、を前記吸着工程の前にさらに含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製装置は、陰イオン交換樹脂が充填されているとともに、ジルコニウムおよびイットリウムを含む溶液、前記イットリウムの錯体を略分解するとともに前記ジルコニウムの錯体を略分解しない濃度の低濃度酸性溶液、前記ジルコニウムを溶解可能な濃度の高濃度酸性溶液、および純水を、選択的に通液後に排出可能な陰イオン交換樹脂容器と、前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液をそれぞれ貯留可能で、前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液を、前記陰イオン交換樹脂容器に供給可能な複数の貯留槽と、を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製装置は、上記の発明において、ジルコニウムおよびイットリウムを溶解させて溶解液を得る溶解槽と、キレート樹脂が充填されているとともに、前記溶解槽から排出された前記溶解液、酸性溶液、および純水を、選択的に通液後に排出可能なキレート樹脂容器と、をさらに備え、前記貯留槽が、さらに前記酸性溶液を貯留可能で、前記酸性溶液、前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液を、前記キレート樹脂容器および前記陰イオン交換樹脂容器の少なくとも一方に選択的に供給可能に構成されていることを特徴とする。
本発明に係るジルコニウムの精製方法および精製装置によれば、ジルコニウムをイットリウムから分離精製する場合に、不純物であるイットリウムの含有率を低減でき、高純度のジルコニウムを含有した精製液を回収することが可能になる。
図1は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。 図2は、第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程に相当する実験方法を説明するための図である。 図3は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製装置を説明するためのブロック図である。 図4は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製方法における粗精製液の製造方法の他の例を説明するための図である。 図5は、従来技術によるヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
まず、本発明の一実施形態を説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、本発明者が上記課題を解決するために行った実験および鋭意検討について説明する。
最初に、本発明者の鋭意検討の対象となった、従来のジルコニウムの精製方法(非特許文献1参照)について説明する。図5は、従来技術によるヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。図5に示すように、従来のジルコニウムの精製方法においては、ターゲット溶解工程、吸着工程、洗浄工程、および回収工程を順次行う。
まず、89Yのイットリウムターゲット100に加速された陽子(陽子線)を照射することによって、放射性ジルコニウム(89Zr:以下、ジルコニウムまたはZr)(図示せず)を生成する。次に、ターゲット溶解工程において、Zrが生成されたイットリウムターゲット100を、溶解槽101内において酸性溶液102を用いて溶解させる。ここで、イットリウムターゲット100の質量は例えば0.33g(330mg)であり、酸性溶液102としては、濃度が6mol/Lで容量が2mLの塩酸(HCl)を用いる。
次に、従来の吸着工程において、Zrが生成されたイットリウムターゲット100が溶解された溶解液を、機能基としてヒドロキサム酸基を有するキレート樹脂(以下、ヒドロキサム酸樹脂)103が充填された樹脂カラム104に通液する。従来の吸着工程においては、溶解液がヒドロキサム酸樹脂103に接触して、溶解液中のジルコニウムがヒドロキサム酸樹脂103に吸着する。ジルコニウムがヒドロキサム酸樹脂103に吸着された後の溶解液は、排液口104aから排出される。
次に、従来の洗浄工程において、樹脂カラム104内に、洗浄液としての酸性溶液と純水とを順次通液する。これにより、樹脂カラム104内の内壁やヒドロキサム酸樹脂103に付着したイットリウムや酸性溶液などの不純物が洗浄されて排出される。ここで、酸性溶液としては、例えば濃度が2mol/Lで容量が10mLの塩酸を用い、純水の容量は例えば10mLとする。
次に、従来の回収工程において、樹脂カラム104内に回収液として用いられる回収酸性溶液を通液する。これにより、ヒドロキサム酸樹脂103に吸着したジルコニウムが脱離して、回収酸性溶液に溶出する。ジルコニウムが溶出した回収酸性溶液は、排液口104aから回収通過液として排出されて回収される。ここで、回収酸性溶液としては、例えば濃度が1mol/Lで容量が3mLのシュウ酸水溶液((COOH)2)を用いる。以上のようにジルコニウムが精製される。
非特許文献1においては、イットリウムターゲット(質量0.33g)に陽子線を照射することによって、ジルコニウム(89Zr)が1.5〜2.2GBq(質量換算で90〜132ng)生成したと報告されている。そこで本発明者は、質量が0.33gのイットリウムと質量が100ngのジルコニウムとを含む模擬ターゲット溶解液を作成した。そして、この模擬ターゲット溶解液を、上述した従来技術によるジルコニウムの精製方法に基づいて分離精製して、ICP質量分析(ICP−MS)法により回収通過液に含まれるイットリウムイオンおよびジルコニウムの質量を計測した。その結果、回収通過液中において、450ngのイットリウムイオンと98ngのジルコニウムとが確認された。すなわち、精製後の回収通過液中に、不純物であるイットリウムが目的核種であるジルコニウムに比して多量に含まれていることが確認された。これにより、非特許文献1に記載された従来技術によるジルコニウムの精製方法では、ジルコニウムを十分に分離精製できないことが判明した。なお、非特許文献1によると、回収通過液中にはイットリウムはほとんど含まれていないとされている。さらに、ジルコニウムを最終的に回収するための回収液としてシュウ酸水溶液を用いていることにより、ジルコニウムの薬剤合成を阻害する可能性もあった。
ここで、本発明者の知見によれば、回収通過液中に残留するイットリウムの質量は、ヒドロキサム酸樹脂のイットリウムに対する吸着力によって決定される。このヒドロキサム酸樹脂のイットリウムに対する吸着力は、ヒドロキサム酸基に固有のものである。そのため、ジルコニウムを分離精製する場合に、ヒドロキサム酸樹脂を用いる限り、回収通過液中におけるイットリウムの残留は不可避である。
回収通過液中に目的核種であるジルコニウムよりも不純物であるイットリウムが多量に含まれているため、回収通過液からさらにイットリウムを除去して、ジルコニウムをさらに精製する必要がある。そこで、本発明者は、ジルコニウム、およびジルコニウムよりも多量のイットリウムイオンを含有する回収通過液を粗精製液として、さらに粗精製液からジルコニウムを精製する方法について鋭意検討を行った。
まず、本発明者の知見によれば、粗精製液であるシュウ酸溶液中において、ジルコニウムはジルコニウムオキサラト錯体([Zr(C24)n-(2n-4))として存在している。また、イットリウムは、一部がイットリウムオキサラト錯体([Y(C24)n-(2n-3))として存在しているとともに、多くの残部が3価のイットリウムイオン(Y3+)として存在していると考えられる。
そこで、本発明者は、粗精製液を陰イオン交換樹脂に通液させて、ジルコニウムオキサラト錯体とイットリウムオキサラト錯体とを陰イオン交換樹脂に吸着させる方法を想到した。すなわち、上述したオキサラト錯体は陰イオンである。そのため、粗精製液を、陰イオン交換樹脂が充填された樹脂カラムに通液させることで、オキサラト錯体を陰イオン交換樹脂に吸着させることができる。一方、イットリウムイオン(Y3+)は、陽イオンであることから陰イオン交換樹脂には吸着しない。これにより、陰イオン交換樹脂に吸着しなかったイットリウムイオン(Y3+)を含む粗精製液の通過液を樹脂カラムから排出することで、粗精製液中の多くのイットリウムをジルコニウムから分離できる。
この段階で、粗精製液中に含まれる3価のイットリウムイオンは高い比率で除去されるが、一部のイットリウムはイットリウムオキサラト錯体として、ジルコニウムオキサラト錯体とともに陰イオン交換樹脂に吸着されている。そこで、本発明者は、イットリウムオキサラト錯体を陰イオン交換樹脂から脱離させる方法について、種々実験および鋭意検討を行い、オキサラト錯体の酸性溶液のpHに依存した安定性に着目するに至った。すなわち、本発明者は、種々の実験から、イットリウムオキサラト錯体が分解する酸濃度と、ジルコニウムオキサラト錯体が分解する酸濃度とが異なる濃度であることを知見した。そして、本発明者は、陰イオン交換樹脂からイットリウムオキサラト錯体のみを脱離させるために、ジルコニウムオキサラト錯体が略分解せず、かつイットリウムオキサラト錯体が略分解する濃度の酸性溶液を用いる方法を想到した。
ここで、イットリウムオキサラト錯体は、所定の濃度の酸性溶液を用いることによって、以下の(1)式に従って分解する。
[Y(C24)n-(2n-3)+2nH+ → Y3++nH224 …(1)
(1)式に従って、イットリウムオキサラト錯体は3価の陽イオンであるイットリウムイオン(Y3+)に分解されるため、陰イオン交換樹脂から脱離させることができる。離脱したイットリウムイオンは、酸性溶液の流れに沿って樹脂カラムから排出させることができる。一方、ジルコニウムオキサラト錯体は略分解しないため、陰イオンの状態が維持されて、陰イオン交換樹脂に吸着されている。これにより、イットリウムをほとんど除去して、ジルコニウムオキサラト錯体と分離できる。
イットリウムを除去した後、陰イオン交換樹脂に吸着されているジルコニウムオキサラト錯体は、ジルコニウムオキサラト錯体を略分解可能な濃度の酸性溶液を用いて、陰イオン交換樹脂からジルコニウムイオンとして脱離可能である。ここで、ジルコニウムオキサラト錯体は、以下の(2)式に従って分解する。
[Zr(C24)n-(2n-4)+2nH+ → Zr4++nH224 …(2)
(2)式に従って分解されたジルコニウムは、酸性溶液に溶解した状態で回収できる。本発明は、以上の実験および鋭意検討に基づいて案出されたものである。
次に、本発明の一実施形態について説明する。図1は、この一実施形態によるジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。図1に示すように、一実施形態によるジルコニウムの精製方法においては、ターゲット溶解工程、第1吸着工程、第1洗浄工程、第1回収工程、第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程を含む。
ターゲット溶解工程、第1吸着工程、第1洗浄工程、および第1回収工程はそれぞれ、従来技術によるターゲット溶解工程、吸着工程、洗浄工程、および回収工程と同様である。すなわち、まず、89Yのイットリウムターゲット1に陽子線を照射して、89Zr(図示せず)を生成する。次に、溶解工程としてのターゲット溶解工程において、溶解槽2内の酸性溶液3によってZrが生成されたイットリウムターゲット1を溶解させる。ここで、イットリウムターゲット1の質量は、例えば0.33g(330mg)、溶解酸性溶液としての酸性溶液3としては、例えば濃度が6mol/Lで容量が2mLの塩酸を用いる。
次に、前段吸着工程としての第1吸着工程において、ターゲット溶解工程で得られた溶解液を、ヒドロキサム酸樹脂4が充填されたキレート樹脂容器としての樹脂カラム5内に通液する。樹脂カラム5は、各種溶液を通液後に排液口5aから排出可能に構成される。溶解液は、ヒドロキサム酸樹脂4に接触して、ジルコニウムがヒドロキサム酸樹脂4に吸着した後に、排液口5aから排出される。続いて、前段洗浄工程としての第1洗浄工程において、樹脂カラム5内に、洗浄液としての酸性溶液と純水とを順次通液する。これにより、樹脂カラム5内の内壁やヒドロキサム酸樹脂4に付着したイットリウムや酸性溶液などの不純物が洗浄されて排出される。ここで、洗浄液としての酸性溶液は、例えば濃度が2mol/Lで容量が10mLの塩酸を用い、純水の容量は例えば10mLとする。続いて、前段回収工程としての第1回収工程において、樹脂カラム5内に、回収液として回収酸性溶液を通液する。これにより、ヒドロキサム酸樹脂4に吸着したジルコニウムが脱離して、回収酸性溶液に溶出する。ジルコニウムを含む回収酸性溶液は、回収通過液として排液口5aから排出される。ここで、回収酸性溶液は、例えば濃度が1mol/Lで容量が3mLのシュウ酸水溶液を用いる。
次に、吸着工程としての第2吸着工程において、第1回収工程によって得られた回収通過液を粗精製液として、陰イオン交換樹脂6が充填された陰イオン交換樹脂容器としての樹脂カラム7に供給する。樹脂カラム7は、各種溶液を通液後に排液口7aから排出可能に構成される。ここで、陰イオン交換樹脂としては、例えばSep-Pak Accell Plus QMA(Waters製)を用いる。上述したように、粗精製液には、イットリウムイオン(Y3+)およびオキサラト錯体(ジルコニウムオキサラト錯体:[Zr(C24)n-(2n-4)、イットリウムオキサラト錯体:[Y(C24)n-(2n-3))が含まれている。第2吸着工程においては、ジルコニウムおよびイットリウムを含む溶液としての粗精製液が陰イオン交換樹脂6に接触して、粗精製液中のオキサラト錯体が陰イオン交換樹脂6に吸着する。一方、3価の陽イオンであるイットリウムイオン(Y3+)は吸着されない。オキサラト錯体が陰イオン交換樹脂6に吸着された後のイットリウムイオン(Y3+)を含む粗精製液は、通過液として排液口7aから排出される。
次に、純水通液工程としての、第2洗浄工程における純水洗浄工程において、樹脂カラム7内に洗浄液としての純水を通液する。これにより、樹脂カラム7内の陰イオン交換樹脂6に付着しているイットリウムイオンが洗浄されて、通過液として排液口7aから排出される。ここで、樹脂カラム7内に通液する純水の容量は、例えば40mLである。
続いて、酸通液工程としての、第2洗浄工程における酸洗浄工程において、樹脂カラム7内に洗浄液としての低濃度酸性溶液を通液する。この一実施形態において、低濃度酸性溶液の濃度は、イットリウムオキサラト錯体を略分解するとともにジルコニウムオキサラト錯体を略分解しない低濃度に設定される。具体的に、低濃度酸性溶液としては例えば塩酸が用いられ、水素イオン(H+)のモル濃度(水素イオン濃度)として0.1mol/L未満、好適には0.05mol/L以下とする。
次に、回収工程としての第2回収工程において、樹脂カラム7内に回収液としての高濃度酸性溶液を通液する。この一実施形態において、高濃度酸性溶液の濃度は、ジルコニウムオキサラト錯体が略分解する高濃度に設定される。具体的に、高濃度酸性溶液としては例えば塩酸が用いられ、水素イオン濃度として0.1mol/L以上とする。これにより、陰イオン交換樹脂6に吸着されたジルコニウムオキサラト錯体が分解されて、ジルコニウムイオン(Zr4+)が脱離して酸性溶液に溶出する。ジルコニウムイオンが溶出した酸性溶液は、排液口7aから排出されて、精製液として回収される。以上により、一実施形態による精製方法によって、ジルコニウムが精製される。
次に、上述した一実施形態によるジルコニウムの精製方法における第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程について、本発明者が行った実験について説明する。図2は、本発明者が行った第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程に相当する実験方法を説明するための図である。
図2に示すように、上述した第2洗浄工程において、まず、粗精製液を、陰イオン交換樹脂6が充填された樹脂カラム7(図1参照)内に通液して、排出された溶液を第1通過液として回収する。これは、第2吸着工程に相当する。次に、樹脂カラム7内に純水を通液して、排出された溶液を第2通過液として回収する。これは、純水洗浄工程に相当する。その後、樹脂カラム7内に、酸性溶液として例えば塩酸を、濃度をそれぞれ、0.025mol/L、0.05mol/L、0.1mol/L、および1mol/Lに変えて順次通液し、排出された溶液をそれぞれ、第3,第4,第5,第6通過液として回収する。なお、酸性溶液の容量はいずれも1mLとする。これらは酸洗浄工程および第2回収工程に相当する。その他の実験条件については、上述した一実施形態において説明した条件と同様である。
上述した第2吸着工程から第2回収工程において記載した精製方法に従って実験を行って得られた第1〜第6通過液について、イットリウムおよびジルコニウムのそれぞれの濃度(ng/mL)を計測し、通過液の容量(mL)から、イットリウムおよびジルコニウムの質量(ng)を導出した。なお、上述した第1回収工程において得られた回収液の模擬溶液として、濃度が1mol/L、容量が3mLのシュウ酸水溶液に約19μgのイットリウムと約100ngのジルコニウムを溶解させた溶液を使用した。上述したように、第1回収工程によって得られた回収液に含まれるイットリウムは約450ngであるが、模擬溶液を用いた実験においては、多量のイットリウムが含有された溶液を使用した。これは、想定よりも多量のイットリウムが残留した場合でも、イットリウムが除去可能であるか否かを検証するためである。
また、最終的に回収された溶質の質量の合計(全体)に対する、計測した通過液中の溶質の質量の占める割合(%)を導出した。これらの結果を表1に示す。なお、表1において、例えば「第1通過液(粗精製液)」は、「粗精製液」を陰イオン交換樹脂6に通液して「第1通過液」が得られたことを意味する。
Figure 0006665806
表1から、第2吸着工程によって得られた第1通過液中においては、イットリウムの濃度が5800ng/mL、質量で17,400ngであるのに対し、ジルコニウムの濃度が2ng/mL、質量で6ngであることが分かる。また、第1通過液中のイットリウムは、溶出されるイットリウムの全体量に対して、93.41%の割合で排出されることが分かる。これにより、第2吸着工程において、ジルコニウムがほとんど排出されない一方、イットリウムの多くが陰イオン交換樹脂6に吸着されずに排出されることが分かる。第1通過液が排出された後の陰イオン交換樹脂6には、上述したようにイットリウムオキサラト錯体およびジルコニウムオキサラト錯体が吸着されている。
また、表1から、純水洗浄工程によって得られた第2通過液中においては、ジルコニウムが含まれていないことが分かる。これにより、純水洗浄工程によって、樹脂カラム7の内壁や陰イオン交換樹脂6の表面に付着したイットリウムのみが排出されて、イットリウムを選択的に除去できると考えられる。
さらに、表1において、第3〜第6通過液を互いに比較する。まず、酸洗浄工程によって得られた第3通過液および第4通過液のように、低濃度酸性溶液として、0.1mol/L未満の濃度の塩酸を陰イオン交換樹脂6に通液させた場合、イットリウムがジルコニウムに比して80〜90倍程度多く溶出されることが分かる。すなわち、第2吸着工程および純水洗浄工程の後において、陰イオン交換樹脂6に、濃度が0.1mol/L未満の塩酸を通液させると、イットリウムを選択的に溶出させることができる。これにより、酸洗浄工程においては、濃度が0.1mol/L未満の酸性溶液を用いることで、イットリウムを選択的に除去できることが確認された。
一方、第2回収工程によって得られた第5通過液および第6通過液のように、0.1mol/L以上の濃度の塩酸を陰イオン交換樹脂6に通液した場合、ジルコニウムがイットリウムに比して4〜15倍程度多く溶出されることが分かる。すなわち、陰イオン交換樹脂6に、濃度が0.1mol/L以上の塩酸を通液させると、ジルコニウムを選択的に溶出させることができ、効率良くジルコニウムを回収できることが確認された。これにより、酸洗浄工程において低濃度酸性溶液を通液させ、第2回収工程において高濃度酸性溶液を通液させることにより、目的核種であるジルコニウムの回収量に比して、不純物であるイットリウムの残留量を、1/10未満にまで大幅に低減できることが確認された。
また、表1から、第5通過液および第6通過液中に含まれるジルコニウムの質量は、合計で(77ng+12ng=)89ngであることが分かる。これは、第1〜第6通過液中に含まれるジルコニウムの合計の量のうちの、約89%のジルコニウムを回収できることを意味する。一方、第5通過液および第6通過液に含まれるイットリウムの質量は、(5ng+3ng=)8ngであることが分かる。これは、第1〜第6通過液中に含まれるイットリウムの合計の量のうちの、0.05%に相当する。これにより、第2吸着工程および第2洗浄工程においては、ジルコニウムの排出を抑制しつつほとんどのイットリウムを排出でき、第2回収工程においては、ジルコニウムを選択的に回収できることが確認された。
(ジルコニウムの精製装置)
次に、以上説明したジルコニウムの精製方法を実行するためのジルコニウムの精製装置について説明する。図3は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製装置を説明するためのブロック図である。
図3に示すように、精製装置10は、溶解槽2、ヒドロキサム酸樹脂4が充填された樹脂カラム5、陰イオン交換樹脂6が充填された樹脂カラム7、精製液バイアル11、廃液バイアル12、およびリザーバタンク群13を備える。リザーバタンク群13は、それぞれが各種溶媒や各種溶液を貯留可能な貯留槽を構成するリザーバタンク13a,13b,13c,13d,13e,13fから構成される。
溶解槽2は、陽子線の照射により微量の89Zrが生成されたイットリウムターゲット1を溶解させるための槽である。溶解槽2には、リザーバタンク13aから溶解酸性溶液が供給される。リザーバタンク13aには、溶解酸性溶液として、例えば6mol/Lの濃度の塩酸が貯留されている。リザーバタンク13aから溶解槽2に溶解酸性溶液が供給されることによって、イットリウムターゲット1が溶解される。これにより、ターゲット溶解工程が実行されて、溶解液が生成される。リザーバタンク13aから溶解槽2への溶解酸性溶液の供給は、バルブ15aの開閉により制御される。
ヒドロキサム酸樹脂4が充填された樹脂カラム5には、溶解槽2から溶解液が供給可能に構成される。溶解槽2から樹脂カラム5への溶解液の供給は、バルブ2aにより制御される。溶解槽2から樹脂カラム5に溶解液が供給されることにより、第1吸着工程が実行され、内部に充填されたヒドロキサム酸樹脂4にジルコニウムが吸着する。樹脂カラム5には、リザーバタンク13b,13c,13dからそれぞれ、酸性溶液、回収酸性溶液、および洗浄液が供給可能に構成される。
リザーバタンク13bには、洗浄液となる酸性溶液として例えば2mol/Lの濃度の塩酸が貯留されている。リザーバタンク13bから樹脂カラム5に酸性溶液が供給されることによって、第1洗浄工程の酸洗浄工程が実行される。リザーバタンク13bから樹脂カラム5への酸性溶液の供給は、バルブ15bの開閉により制御される。リザーバタンク13dには、洗浄液として例えば純水が貯留されている。リザーバタンク13dから樹脂カラム5に純水が供給されることによって、第1洗浄工程の純水洗浄工程が実行される。リザーバタンク13dから樹脂カラム5への純水の供給は、三方弁16aの切り換えにより制御される。リザーバタンク13cには、回収酸性溶液として濃度が例えば1mol/Lのシュウ酸水溶液が貯留されている。リザーバタンク13cから樹脂カラム5に回収酸性溶液が供給されることによって、第1回収工程が実行される。リザーバタンク13cから樹脂カラム5への回収酸性溶液の供給は、バルブ15cの開閉により制御される。以上の第1吸着工程、第1洗浄工程、および第1回収工程において、樹脂カラム5の排液口5aから排出される通過液は、三方弁16bの切り換えに応じて、廃液バイアル12または樹脂カラム7に供給される。
陰イオン交換樹脂6が充填された樹脂カラム7には、樹脂カラム5からの通過液が供給可能に構成されている。樹脂カラム5から樹脂カラム7には、第1回収工程によって得られたジルコニウムおよびイットリウムを含む溶液としての粗精製液が供給される。樹脂カラム5から樹脂カラム7への粗精製液の供給は、三方弁16bの切り換えにより制御される。樹脂カラム5から樹脂カラム7に、粗精製液が供給されることによって、第2吸着工程が実行される。第2吸着工程において、内部に充填された陰イオン交換樹脂6に、イットリウムおよびジルコニウムのオキサラト錯体が吸着する。
樹脂カラム7は、リザーバタンク13d,13e,13fからそれぞれ、洗浄液、酸性溶液、および回収液が供給可能に構成される。リザーバタンク13dから樹脂カラム7に洗浄液としての純水が供給されることによって、第2洗浄工程における純水洗浄工程が実行される。リザーバタンク13dから樹脂カラム7への純水の供給は、三方弁16aの切り換えにより制御される。リザーバタンク13eには、低濃度酸性溶液として、水素イオン濃度が例えば0.1mol/L未満の塩酸が貯留されている。リザーバタンク13eから樹脂カラム7に低濃度酸性溶液が供給されることによって、第2洗浄工程における酸洗浄工程が実行される。リザーバタンク13eから樹脂カラム7への低濃度酸性溶液の供給は、バルブ15eの開閉により制御される。リザーバタンク13fには、回収液としての高濃度酸性溶液として、水素イオン濃度が例えば0.1mol/L以上の塩酸が貯留されている。リザーバタンク13fから樹脂カラム7に高濃度酸性溶液が供給されることによって、第2回収工程が実行される。リザーバタンク13fから樹脂カラム7への高濃度酸性溶液の供給は、バルブ15fの開閉により制御される。以上の第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程において、樹脂カラム5の排液口5aから排出される通過液は、三方弁16cの切り換えに応じて、廃液バイアル12または精製液バイアル11に供給される。
ジルコニウムの精製装置10は、不活性ガス供給源から溶解槽2およびリザーバタンク群13に不活性ガスを供給するために、供給量制御部としてのマスフローコントローラ(MFC)17を備える。不活性ガスは、MFC17を通じて溶解槽2およびリザーバタンク13a〜13fにそれぞれ、選択的に供給される。それぞれのリザーバタンク13a〜13fへの不活性ガスの供給はそれぞれ、バルブ14a,14b,14c,14d,14e,14fの開閉により制御される。供給された不活性ガスの圧力によって各種溶液を移動できる。なお、各種溶液の移動に用いられる不活性ガスは、例えばヘリウム(He)や窒素(N2)などが好適に用いられるが、必ずしもこれらのガスに限定されるものではない。また、精製液バイアル11および廃液バイアル12の内部は、バルブ18を介して真空ポンプに連通している。バルブ18の開閉によって、精製液バイアル11および廃液バイアル12の内部を真空引きして、各種溶液の流入を容易にすることが可能である。
以上のように構成されたジルコニウムの精製装置10において、ターゲット溶解工程、第1吸着工程、第1洗浄工程、第1回収工程、第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程を実行することによって、ジルコニウムを高純度で含む精製液を得ることができる。また、ジルコニウムの精製装置10において、それぞれのバルブ2a,14a〜14f,15a〜15f,18、三方弁16a〜16c、それぞれのリザーバタンク13a〜13f、およびMFC17などの各構成部を制御する制御部を備えてもよい。この場合、制御部が各構成部を制御することによって、上述したジルコニウムの精製方法を実行可能となる。
(変形例)
次に、上述した一実施形態の変形例について説明する。図4は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製方法における粗精製液の製造方法の他の例を説明するための図である。図4に示す粗精製液の製造方法は、いわゆるシュウ酸塩沈殿法である。シュウ酸塩沈殿法においては、シュウ酸ジルコニウム(Zr(C242)が水溶性である一方、シュウ酸イットリウム(Y2(C243)が難溶性であることを利用する。
図4に示すように、変形例による粗精製液の製造方法においては、まず、上述した一実施形態と同様にして、溶解用容器において、イットリウムターゲット1に溶解酸性溶液を供給する。ここで、溶解酸性溶液としては例えば塩酸が用いられる。これにより、ターゲット溶解工程(図4中、溶解工程)が実行されて、溶解液が得られる。
続いて、溶解液を加熱することによって溶媒を蒸発させる蒸発乾固を行う(蒸発乾固工程)。蒸発乾固工程は、溶解液に残留した溶解酸性溶液を除去するために蒸発乾固させて、ジルコニウムおよびイットリウムと溶解酸性溶液との塩を得るために行われる。溶解酸性溶液として塩酸を用いた場合は塩化イットリウム(YCl3)および塩化ジルコニウム(ZrCl4)を含む物質が得られる。
続いて、蒸発乾固工程において得られた塩化イットリウムおよび塩化ジルコニウムを含む物質を、回収酸性溶液としてのシュウ酸水溶液に混合させて混合液とした後に、この混合液を撹拌する(撹拌工程)。撹拌工程は、蒸発乾固工程において得られた塩にシュウ酸水溶液を添加して撹拌することによって、ジルコニウムのみを再溶解させ、シュウ酸イットリウムを析出させるために行われる。これにより、イットリウムはシュウ酸イットリウムとして析出する一方、ジルコニウムはオキサラト錯体として溶解する。なお、イットリウムの一部はオキサラト錯体としてシュウ酸水溶液に溶解する。
その後、撹拌工程によって得られた混合液をろ過する(ろ過工程)。ろ過工程は、混合液をろ過することによって、ジルコニウムを富化したジルコニウムおよびイットリウムを含む溶液を得るために行われる。これにより、シュウ酸イットリウムがろ別されて、ジルコニウムおよび一部のイットリウムがオキサラト錯体として溶解された粗精製液が得られる。
その後、製造された粗精製液に対して、上述した一実施形態と同様に、陰イオン交換樹脂6を用いて、第2吸着工程、第2洗浄工程、および第2回収工程を順次行うことにより、ジルコニウムを高純度で精製できる。
以上説明した一実施形態によるジルコニウムの精製方法および精製装置によれば、第2吸着工程、第2洗浄工程においてイットリウムをほとんど除去することができるので、第2回収工程によって、ジルコニウムを高純度で精製することができる。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良く、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
上述の一実施形態においては、洗浄液としての酸性溶液として塩酸を用いているが、硫酸(H2SO4)や硝酸(HNO3)を用いることも可能である。また、イットリウムターゲット1を溶解する溶解酸性溶液として塩酸を用いているが、必ずしも塩酸に限定されるものではなく、硝酸(HNO3)、リン酸(H3PO4)、または硫酸(H2SO4)などのイットリウムターゲット1を溶解可能な他の酸性溶液を用いることができる。
また、第1回収工程における回収液としてシュウ酸水溶液を用いているが、必ずしもシュウ酸水溶液に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸(HOOC−R−COOH、Rは2価の置換基)、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸水溶液を用いることも可能である。
1 イットリウムターゲット
2 溶解槽
2a,14a,14b,14c,14d,14e,14f,15a,15b,15c,15e,15f,18 バルブ
3 酸性溶液
4 ヒドロキサム酸樹脂
5,7 樹脂カラム
5a,7a 排液口
6 陰イオン交換樹脂
10 精製装置
11 精製液バイアル
12 廃液バイアル
13 リザーバタンク群
13a,13b,13c,13d,13e,13f リザーバタンク
16a,16b,16c 三方弁
17 マスフローコントローラ(MFC)

Claims (8)

  1. ジルコニウムの錯体およびイットリウムの錯体を含む溶液を陰イオン交換樹脂に接触させて、前記ジルコニウムの錯体および前記イットリウムの錯体を吸着させる吸着工程と、
    前記吸着工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に純水を通液する純水通液工程と、
    前記純水通液工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に、前記イットリウムの錯体を分解するとともに水素イオン濃度が0.1mol/L未満である低濃度酸性溶液を通液する酸通液工程と、
    前記酸通液工程の後に、前記陰イオン交換樹脂に前記ジルコニウムを溶解可能な濃度の高濃度酸性溶液を通液して、前記ジルコニウムを含む精製液を得る回収工程と、
    を含むことを特徴とするジルコニウムの精製方法。
  2. 前記高濃度酸性溶液の濃度が、水素イオン濃度において0.1mol/L以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載のジルコニウムの精製方法。
  3. 前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを溶解酸性溶液によって溶解させて溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液をキレート樹脂に接触させる前段吸着工程と、前記前段吸着工程の後に、前記キレート樹脂を洗浄する前段洗浄工程と、前記前段洗浄工程の後に、前記キレート樹脂に前記ジルコニウムを溶解可能な回収酸性溶液を通液して前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む溶液を得る前段回収工程と、を前記吸着工程の前にさらに含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のジルコニウムの精製方法。
  4. 前記回収酸性溶液が、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸水溶液である
    ことを特徴とする請求項に記載のジルコニウムの精製方法。
  5. 前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを溶解酸性溶液によって溶解させて溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液を蒸発乾固させて前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む物質を得る蒸発乾固工程と、前記蒸発乾固工程の後に、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む物質にシュウ酸水溶液を添加して撹拌し、ジルコニウムを溶解させ、シュウ酸イットリウムを析出させる撹拌工程と、前記撹拌工程の後に、前記混合液をろ過することにより、前記ジルコニウムおよび前記イットリウムを含む溶液を得るろ過工程と、を前記吸着工程の前にさらに含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のジルコニウムの精製方法。
  6. 陰イオン交換樹脂が充填されているとともに、ジルコニウムおよびイットリウムを含む溶液、前記イットリウムの錯体を分解するとともに水素イオン濃度が0.1mol/L未満である低濃度酸性溶液、前記ジルコニウムを溶解可能な濃度の高濃度酸性溶液、および純水を、選択的に通液後に排出可能な陰イオン交換樹脂容器と、
    前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液をそれぞれ貯留可能で、前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液を、前記陰イオン交換樹脂容器に供給可能な複数の貯留槽と、
    を備えることを特徴とするジルコニウムの精製装置。
  7. 前記高濃度酸性溶液の濃度が、水素イオン濃度において0.1mol/L以上である
    ことを特徴とする請求項6に記載のジルコニウムの精製装置。
  8. ジルコニウムおよびイットリウムを溶解させて溶解液を得る溶解槽と、キレート樹脂が充填されているとともに、前記溶解槽から排出された前記溶解液、酸性溶液、および純水を、選択的に通液後に排出可能なキレート樹脂容器と、をさらに備え、前記貯留槽が、さらに前記酸性溶液を貯留可能で、前記酸性溶液、前記純水、前記低濃度酸性溶液、および前記高濃度酸性溶液を、前記キレート樹脂容器および前記陰イオン交換樹脂容器の少なくとも一方に選択的に供給可能に構成されている
    ことを特徴とする請求項6または7に記載のジルコニウムの精製装置。
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