次に、図面を参照しながら本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の制御装置により制御されるハイブリッド車両20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド車両20は、エンジン22(第1駆動力発生装置)と、シングルピニオン式のプラネタリギヤ30と、何れも同期発電電動機であるモータMG1およびMG2(第2駆動力発生装置)と、蓄電装置40と、蓄電装置40に接続されると共にモータMG1およびMG2を駆動する電力制御装置(以下、「PCU」という)50と、車両全体を制御する本開示の制御装置であるパワーマネージメント電子制御ユニット(以下、「PMECU」という)70とを含む。
エンジン22は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を発生する内燃機関であり、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであるエンジン電子制御装置(以下、「エンジンECU」という)25により制御される。エンジン22では、エアクリーナにて清浄された空気がスロットルバルブや吸気管,吸気バルブを介して複数の燃焼室内に吸入され、吸入空気に対しては、燃料噴射弁から燃料が噴射される。空気と燃料との混合気は、各燃焼室で点火プラグからの電気火花によって爆発燃焼させられる。エンジン22からの排ガスは、排気バルブや排気管を介して側排ガス浄化装置(三元触媒)へと送出され、当該排ガス浄化装置にて浄化された後、外部へと排出される。
プラネタリギヤ30は、モータMG1のロータに接続されるサンギヤ31と、駆動軸35に接続されると共に減速機36を介してモータMG2のロータに連結されるリングギヤ32と、複数のピニオンギヤ33を回転自在に支持すると共にダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト(出力軸)に連結されるプラネタリキャリヤ34とを有する。駆動軸35は、図示しないギヤ機構、デファレンシャルギヤ38を介して左右の車輪(駆動輪)DWに連結される。かかる構成を有するハイブリッド車両20では、モータMG1,MG2の出力トルクを調整することで、エンジン22の動作点(回転数および出力トルク)を任意に設定(変更)することができる。なお、減速機36の代わりに、モータMG2のロータと駆動軸35との間の変速比を複数段階に設定可能な変速機が採用されてもよい。
モータMG1は、主に、負荷運転されるエンジン22からの動力の少なくとも一部を用いて電力を生成する発電機として動作する。モータMG2は、主に、蓄電装置40からの電力およびモータMG1からの電力の少なくとも何れか一方により駆動されて動力を発生する電動機として動作すると共に、ハイブリッド車両20の制動時に回生制動トルクを出力する。モータMG1およびMG2は、PCU50を介して蓄電装置40と電力をやり取りする。
蓄電装置40は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータである電源管理電子制御装置(以下、「電源管理ECU」という)45により管理される。電源管理ECU45は、蓄電装置40の電圧センサからの端子間電圧や、電流センサからの充放電電流、温度センサからの電池温度Tbat等に基づいて、蓄電装置40のSOC(充電率)等を算出する。蓄電装置40は、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素二次電池といった二次電池であってもよく、キャパシタであってもよく、二次電池およびキャパシタの双方を含んでもよい。
PCU50は、モータMG1を駆動する第1インバータや、モータMG2を駆動する第2インバータ、蓄電装置40からの電力を昇圧する昇圧コンバータ(電圧変換モジュール)等を含む(何れも図示省略)。PCU50は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであるモータ電子制御装置(以下、「MGECU」という)55により制御される。MGECU55は、PMECU70からの指令信号や、昇圧コンバータの昇圧前電圧および昇圧後電圧、モータMG1,MG2のロータの回転位置を検出するレゾルバの検出値、モータMG1,MG2に印加される相電流等を入力する。MGECU55は、これらの入力信号に基づいて第1および第2インバータや昇圧コンバータをスイッチング制御する。また、MGECU55は、レゾルバの検出値に基づいてモータMG1およびMG2のロータの回転数を算出する。
PMECU70は、図示しないCPU,ROM,RAM,入出力装置等を含むマイクロコンピュータであり、ネットワーク(CAN)を介してECU25,45,55と各種信号をやり取りする。更に、PMECU70は、例えばスタートスイッチからの信号や、アクセルペダルポジションセンサにより検出されるアクセル開度Acc、車速センサにより検出される車速V、モータMG1,MG2の回転数等を入力する。
また、PMECU70には、複数の走行モードを選択的に切り替え可能とするモードスイッチ100からのモード信号が入力される。モードスイッチ100は、図示しない車室内のスイッチパネル等に配置されており、燃費と走行用動力の出力応答性(加速性能や動力性能)のバランスをとりながらハイブリッド車両20を走行させる通常走行用のノーマルモードと、走行用の動力の出力応答性よりも燃費の向上を優先させながらハイブリッド車両20を走行させるエコモードと、燃費の向上よりも走行用動力の出力応答性を優先させながらハイブリッド車両20を走行させるスポーツモードとの選択を運転者に対して許容する。PMECU70は、モードスイッチ100を介して運転者によりノーマルモードが選択されている場合には、モードフラグFmを値0に設定し、モードスイッチ100を介して運転者によりエコモードが選択されている場合には、モードフラグFmを値1に設定し、モードスイッチ100を介して運転者によりスポーツモードが選択されている場合には、モードフラグFmを値2に設定する。
次に、図2を参照しながら、PMECU70によるエンジン22やモータMG1,MG2の目標動作点の設定手順について説明する。図2は、PMECU70の制御ブロック図である。同図に示すように、PMECU70には、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、予めインストールされた各種プログラムとの協働により、要求パワー導出部71、目標回転数導出部72、エンジントルク導出部73、燃料消費量導出部74、充放電電力導出部75、充放電電流導出部76、SOC変化量導出部77、燃料換算部78、および目標値導出部79が機能ブロックとして構築されている。また、PMECU70のROMには、図示しない要求パワー設定マップ、目標回転数導出用の燃費ラインおよび最大トルクライン、OCVマップ81、抵抗マップ82、燃料消費量マップ(図示省略)等が格納されている。
運転者により図示しないアクセルペダルが踏み込まれると、PMECU70は、アクセル開度Accや車速V、蓄電装置40のSOC,電池温度Tbatといった制御に必要なデータを入力する。アクセル開度Accおよび車速Vは、要求パワー導出部71に与えられ、当該要求パワー導出部71は、図示しない要求パワー設定マップからアクセル開度Accおよび車速Vに対応した車両要求パワーPrqを導出する。車両要求パワーPrqは、運転者の要求者(アクセル開度Acc)およびハイブリッド車両20の走行状態(車速)に応じた当該ハイブリッド車両20を走行させるのに必要なパワーであり、アクセル開度Accおよび車速Vに対応した要求トルクと駆動軸35の回転数との積値に相当するものである。
図2に示すように、車両要求パワーPrqは、アクセル開度Accおよび車速Vと共に目標回転数導出部72に与えられ、当該目標回転数導出部72は、アクセル開度Accおよび車速Vまたは車両要求パワーPrqに基づいてエンジン22の目標回転数Netagを設定する。具体的には、目標回転数導出部72は、まず、図3に示す燃費ラインから車両要求パワーPrqに対応した基準回転数Nerefを導出する。燃費ラインは、いわゆる燃料消費率等高線に基づいて、エンジン22をより効率よく動作させる動作点を結ぶことにより予め定められた動作ライン(マップ)である。更に、目標回転数導出部72は、ハイブリッド車両20が加速しているか否かを判定し、当該ハイブリッド車両20が加速していないとみなされる場合、基準回転数Nerefをエンジン22の目標回転数Netagに設定する。
これに対して、ハイブリッド車両20が加速しているとみなされる場合、目標回転数導出部72は、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて、閾値Nep(ステップ量)および勾配dNeを導出する。本実施形態では、アクセル開度Accおよび車速Vと閾値Nepとの関係を規定する図示しない閾値設定マップと、アクセル開度Accおよび車速Vと勾配dNeとの関係を規定する図示しない勾配設定マップとが予め作成され、両マップがPMECU70の図示しないROMに格納されている。目標回転数導出部72は、両マップからアクセル開度Accおよび車速Vに対応した閾値Nepと勾配dNeとを導出する。
目標回転数導出部72は、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれたか、あるいは踏み増されたタイミング(図4における時刻t0)から目標回転数Netagあるいは計測されるエンジン22の回転数が閾値Nepに達するまで(図4における時刻t1)、上述の基準回転数Nerefを目標回転数Netagに設定する。また、目標回転数Netag等が閾値Nepに達すると、目標回転数導出部72は、その時点(時刻t1)から目標回転数Netagが時間の経過と共に勾配dNeに従って高まるように目標回転数Netagを設定する。これ以後、目標回転数Netagは、基本的に基準回転数Nerefよりも低くなり、比較的緩やかに高まっていくことになる。そして、目標回転数導出部72は、目標回転数Netagあるいは計測されるエンジン22の回転数が基準回転数Neref以上になると(図4における時刻t2)、それ以後、基準回転数Nerefを目標回転数Netagに設定する。このようにして目標回転数Netagを導出することで、ハイブリッド車両20の加速開始直後に、運転者に自らの加速意思に合致した加速が得られたと感じさせることが可能となる。ここまで説明した目標回転数導出部72による目標回転数Netagの導出処理は、一定の時間(例えば、数mSec)おきに実行される。
目標回転数導出部72により導出された目標回転数Netagは、エンジントルク導出部73に与えられ、エンジントルク導出部73は、図3に示す燃費ラインおよび最大トルクラインを用いて、それぞれ目標回転数Netagを含むエンジン22の複数の動作点を導出する。例えば、エンジントルク導出部73は、図3に示すように、燃費ラインから目標回転数Netagに対応したトルクをエンジントルクT(1)として導出すると共に、最大トルクラインから目標回転数Netagに対応したトルクをエンジントルクT(n)として導出する(“n”は、任意の正の整数であり、図3に示す例では、例えばn=10である。)。更に、エンジントルク導出部73は、例えば、エンジントルクT(n)とエンジントルクT(1)の差分を(n−1)等分することにより、エンジントルクT(1)とエンジントルクT(n)との間に、n−2個のエンジントルク(2)〜T(n−1)を定める。これにより、それぞれ目標回転数Netagを含むエンジン22の複数(n個)の動作点(Netag,T(k))が導出される。なお、最大トルクラインは、回転数ごとにエンジン22の最大出力トルクを規定するように予め定められた動作ライン(マップ)である。また、エンジントルクT(k)は、燃費ラインから導出される目標回転数Netagに対応したトルクを含むように設定されればよく、最小のエンジントルクT(1)は、燃費ラインから導出される目標回転数Netagに対応したトルクよりも小さく設定されてもよい。
エンジントルクT(1)〜T(n)は、図示しないRAMに格納されると共に、目標回転数Netagと共に燃料消費量導出部74に与えられる。燃料消費量導出部74は、図示しない燃料消費量マップから各動作点(Netag,T(k))におけるエンジン22の単位時間(例えば1秒間)あたりの燃焼消費量(第1燃料消費量)Fceng(k)を導出(取得)する。燃料消費量マップは、実験・解析を経て、同一の燃料消費量となるエンジン22の動作点を等高線状に結ぶことにより予め作成されたものである。なお、各動作点(Netag,T(k))におけるエンジン22の燃焼消費量Fceng(k)は、エンジントルク、エンジン回転数、冷却水温度、EGR率等を変数とする関数を用いて導出されてもよい。
一方、エンジントルクT(1)〜T(n)は、図2に示すように、目標回転数Netagおよび車両要求パワーPrqと共に充放電電力導出部75にも与えられる。充放電電力導出部75は、各エンジントルクT(k)に目標回転数Netagを乗じることにより各動作点(Netag,T(k))におけるエンジン22の出力パワーPe(k)を導出する。更に、車両要求パワーPrqから各出力パワーPe(k)を減じることにより、複数の動作点(Netag,T(k))ごとに、蓄電装置40の充放電電力Pbat(k)を導出する。充放電電力Pbat(k)は、車両要求パワーPrqに対するエンジン22の出力パワーPe(k)の過不足分を示す。すなわち、充放電電力Pbat(k)が正の値となる場合、充放電電力Pbat(k)は、蓄電装置40から放電させるべき電力となり、充放電電力Pbat(k)が負の値となる場合、充放電電力Pbat(k)は、エンジン22の出力パワーPe(k)の余剰分であって、蓄電装置40に充電すべき電力となる。ハイブリッド車両20の加速時に、上述のようにして目標回転数Netagが設定される場合、充放電電力Pbat(k)は、基本的に、正の放電電力となる。
充放電電力Pbat(k)は、図示しないRAMに格納されると共に、充放電電流導出部76に与えられる。充放電電流導出部76は、OCVマップ81から蓄電装置40のSOCおよび電池温度Tbatに対応した開放電圧OCVを導出すると共に、抵抗マップ82から蓄電装置40のSOCおよび電池温度Tbatに対応した内部抵抗Rを導出する。更に、充放電電流導出部76は、次式(1)に従い、充放電電力Pbat(k)、開放電圧OCVおよび内部抵抗Rに基づいて、動作点(Netag,T(k))ごとに、蓄電装置40の充放電電流Ib(k)を導出する。式(1)は、充放電電力Pbat(k)が充放電電流Ib(k)および開放電圧OCVに基づく電力(両者の積)から内部抵抗Rによる消費電力(R・Ib(k)2 )を差し引いたものに一致するとみなしたものである。本実施形態において、充放電電流Ib(k)は、放電側が正の値となり、充電側が負の値となる。
Pbat(k)=OCV・Ib(k)−R・Ib(k)2 …(1)
充放電電流Ib(k)は、SOC変化量導出部77に与えられる。SOC変化量導出部77は、充放電電流Ib(k)が単位時間Δt(例えば1秒)だけ流れたときの電荷量Ib(k)・Δtを予め判明している電池容量で除することにより、動作点(Netag,T(k))ごとに、SOCの変化量ΔSOC(k)を導出する。本実施形態において、変化量ΔSOC(k)は、放電側が正の値となり、充電側が負の値となる。
SOCの変化量ΔSOC(k)は、燃料換算部78に与えられる。また、燃料換算部78は、上述のモードフラグFmの値を入力して当該フラグの値から運転者により選択されている走行モードを判別し、書き換え可能なROMである換算係数記憶部78mから、運転者により選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsを読み出す。更に、燃料換算部78は、読み出した換算係数Ce,CnまたはCsを変化量ΔSOC(k)に乗じることにより、当該変化量ΔSOC(k)を単位時間(例えば1秒間)あたりの燃料消費量(第2燃料消費量)Fcbat(k)に換算する。
換算係数Ceは、エコモードに対応し、換算係数Cnは、ノーマルモードに対応し、換算係数Csは、スポーツモードに対応し、何れも対応する走行モードに関連付けされて換算係数記憶部78mに記憶されている。換算係数Ce,CnおよびCsは、予め実験・解析を経て求められた各走行モードにおける蓄電装置40のSOCの変化量と燃料消費量との関係に基づいて定められた互いに異なる複数の基準換算係数Ceb,CnbおよびCsbをベースとするものである。エコモード、ノーマルモードおよびスポーツモードにおけるSOCの変化量と燃料消費量との関係は、各走行モードのもとでハイブリッド車両20を異なる運転条件で所定距離だけ走行させてSOCの変化量(増減量)を燃料消費量に換算した場合にどの程度の量になるのかを調べることにより得られる。図5に示すように、各走行モードにおいて、換算後の燃料消費量は、SOCの変化量に概ね比例する。そして、図5における近似直線の傾きが換算係数Ce,Cn,Csとなり、上述のようにΔSOC(k)が放電側で正となる場合、換算係数Ce,Cn,Csは、何れも正の値となる。また。エコモードに対応した換算係数Ceの絶対値は、ノーマルモードに対応した換算係数Cnの絶対値よりも小さく、スポーツモードに対応した換算係数Csの絶対値は、ノーマルモードに対応した換算係数Cnの絶対値よりも大きい。
燃料換算部78により導出(取得)された燃料消費量Fcbat(k)は、燃料消費量導出部74により導出された燃料消費量Fceng(k)に加算され、両者の和である総燃料噴射量Fc(k)=Fc(1)〜Fc(n)は、目標値導出部79に与えられる。目標値導出部79は、図6に例示するような総燃料噴射量Fc(1)〜Fc(n)から、最小の総燃料噴射量Fc(k)を抽出し、“k”を特定する。総燃料噴射量Fc(k)を最小にする“k”が“m”(ただし、1≦m≦nであり、図6の例では、m=9)であるとすれば、目標値導出部79は、エンジントルクT(m)をエンジン22の目標トルクTetagに設定すると共に、充放電電力Pbat(m)を蓄電装置40の目標充放電電力Pbtagに設定する。
また、目標値導出部79は、エンジン22、モータMG1,MG2、および蓄電装置40の少なくとも何れかにより車両要求パワーPrqが賄われるようにモータMG1,MG2の目標動作点としてのトルク指令Tm1tag,Tm2tagを設定する。すなわち、目標値導出部79は、エンジン22の回転数が目標回転数NetagになるようにモータMG1の目標回転数およびトルク指令Tm1tagを設定する。更に、目標値導出部79は、エンジン22から駆動軸35に出力されるトルク(直達トルク)とモータMG2から駆動軸35に出力されるトルクとの和が車両要求パワーPrqに対応したトルク(要求トルク)となるように、モータMG2のトルク指令Tm2tagを設定する。これにより、運転者により選択されている走行モードに合わせた換算係数Ce,CnまたはCsを用いて、ハイブリッド車両20のトータルの燃費が向上するようにエンジン22とモータMG2の出力配分を設定することが可能となる。
すなわち、エコモードに対応した換算係数Ceの絶対値は、ノーマルモードに対応した換算係数Cnの絶対値よりも小さいことから、エコモードの選択時には、図6からわかるように、総燃料噴射量Fc(k)に対する燃料噴射量Fcbat(k)の割合がノーマルモードの選択時に比べて小さくなる。従って、運転者によりエコモードが選択されている際には、総燃料噴射量Fc(k)を最小にする“k”が小さくなる傾向が強まり、エンジン22の効率が高く、かつトータルの燃料消費量がより少なくなる動作点をエンジン22およびモータMG1,MG2の目標動作点に設定することが可能となる。
また、スポーツモードに対応した換算係数Csの絶対値は、ノーマルモードに対応した換算係数Cnの絶対値よりも大きいことから、スポーツモードの選択時には、図6からわかるように、総燃料噴射量Fc(k)に対する燃料噴射量Fcbat(k)の割合がノーマルモードの選択時に比べて大きくなる。従って、運転者によりスポーツモードが選択されている際には、総燃料噴射量Fc(k)を最小にする“k”が大きくなる傾向が強まり、エンジン22の出力トルクがより高くなる動作点をエンジン22およびモータMG1,MG2の目標動作点に設定し、電力の消費を抑えながら走行用動力の出力応答性を良好に確保することが可能となる。
PMECU70は、目標回転数Netagおよび目標値導出部79により導出された目標トルクTetagをエンジンECU25に送信すると共に、トルク指令Tm1tagおよびTm2tagをMGECU55に送信する。エンジンECU25は、エンジン22の出力トルクが目標トルクTetagに一致するように吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火時期制御等を実行する。また、MGECU55は、トルク指令Tm1tag,Tm2tagに基づいてPCU50(2つのインバータのスイッチング素子)を制御(スイッチング制御)する。上述の要求パワーPrqの導出から目標回転数Netagや目標トルクTetag、トルク指令Tm1tag,Tm2tagの送信までの一連の処理は、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれている間、PMECU70により一定の時間(例えば、数mSec)おきに繰り返し実行される。
ここで、ハイブリッド車両20の走行中、蓄電装置40の充電に供されるモータMG1,MG2の発電量は、運転者のアクセル操作やブレーキ操作(ペダルの踏み方)、走行環境(路面勾配)等によって変化する。このため、SOCの変化量ΔSOC(k)を燃料消費量に換算するための換算係数Ce,CnおよびCsのそれぞれが予め適合された基準換算係数Ceb,CnbおよびCsb(一定値)のままであると、エンジン22とモータMG2の出力配分を適正に設定し得なくなり、ハイブリッド車両20の燃費を向上させ得なくなってしまうおそれがある。これを踏まえて、PMECU70には、図2に示すように、換算係数更新部780が構築されている。そして、ハイブリッド車両20では、その走行中に当該換算係数更新部780によって換算係数Ce,CnおよびCsが更新(学習)される。
図7は、換算係数Ce,CnおよびCsを更新するために、ハイブリッド車両20の走行中に換算係数更新部780によって実行される換算係数更新ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7の換算係数更新ルーチンの開始に際して、換算係数更新部780は、まず、換算係数Ce,CnおよびCsの更新に用いられる積算値(後述するΣFcb,ΣQcb,ΣFdおよびΣQrb)をリセットすると共に、図示しないタイマをオンする(ステップS100)。次いで、換算係数更新部780は、エンジン22によって蓄電装置40の充電のために消費された燃料の量である充電用燃料噴射量Fcb、エンジン22が充電用燃料噴射量Fcbを消費するのに伴ってモータMG1により発電された電気量(電荷量)である充電用発電量Qcb、ハイブリッド車両20を走行させるためにエンジン22によって消費された燃料の量である走行用燃料噴射量Fd、およびモータMG2からの回生制動トルクの出力に伴って発電された電気量(電荷量)である回生発電量Qrbの積算処理を実行し(ステップS110)、タイマの計時時間tが予め定められた基準時間tref以上になったか否かを判定する(ステップS120)。換算係数更新部780は、ステップS120にて計時時間tが基準時間tref以上になったと判定するまで、一定の時間(例えば、数mSec)おきにステップS110の積算処理を実行する。基準時間trefは、例えば一般的な信号待ち時間程度の時間とされてもよく、郊外や高速道路では例えば15〜30分程度に定められてもよい。また、ステップS120では、1トリップが完了した時点で計時時間tが基準時間tref以上になったと判定されてもよい。
ステップS110において、換算係数更新部780は、目標充放電電力Pbtagを入力し、当該目標充放電電力Pbtag(=Prq−Netag×Tetag)が負の値であって蓄電装置40が充電される場合に、目標充放電電力Pbtagを燃料噴射量に換算した上で順次加算して充電用燃料噴射量Fcbの積算値ΣFcbを得る。また、ステップS110において、換算係数更新部780は、蓄電装置40の電流センサにより検出される電流(充電電流)の値を入力し、目標充放電電力Pbtagが負の値であって蓄電装置40が充電される場合に、入力した電流の値を順次加算して充電用発電量Qcbの積算値ΣQcbを得る。更に、ステップS110において、換算係数更新部780は、上記タイマがオンされてからのエンジン22の燃料噴射量を積算すると共に、燃料噴射量の積算値から上述の充電用燃料噴射量Fcbの積算値ΣFcbを減じることにより走行用燃料噴射量Fdの積算値ΣFdを得る。また、ステップS110において、換算係数更新部780は、モータMG2のトルク指令Tm2tagが負の値であってモータMG2に回生制動トルクの出力が要求されている場合に、蓄電装置40の電流センサから入力した電流(充電電流)の値を順次加算して回生発電量Qrbの積算値ΣQrbを得る。
これにより、ステップS120にて計時時間tが基準時間tref以上になったと判定された時点で、積算値ΣFcbは、基準時間(所定時間)tref内におけるトータルの充電用燃料噴射量Fcbを示し、積算値ΣQcbは、基準時間tref内におけるトータルの充電用発電量Qcbを示し、積算値ΣFdは、基準時間tref内におけるトータルの走行用燃料噴射量Fdを示し、積算値ΣQrbは、基準時間tref内におけるトータルの回生発電量Qrbを示すことになる。換算係数更新部780は、ステップS120にて計時時間tが基準時間tref以上になったと判定すると、タイマをオフした上で(ステップS130)、モードフラグFmの値を入力する(ステップS140)。更に、換算係数更新部780は、モードフラグFの値すなわち運転者に選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsの初期値である基準換算係数Ceb,CnbまたはCsbを図示しないROMから入力する(ステップS150)。そして、換算係数更新部780は、次式(2)に従い、運転者に選択されている走行モードに対応した基準換算係数Ceb,CnbまたはCsb、上述の積算値ΣFcb,ΣQcb,ΣFdおよびΣQrbに基づいて、運転者に選択されている走行モードについて新たな換算係数Cnewを算出する(ステップS160)。
Cnew=基準換算係数×α×A′/A×B′/B…(2)
式(2)において、“A”は、A=ΣFcb/ΣQcbであって、基準時間tref内にエンジン22によって蓄電装置40の充電のために消費された燃料の量(充電用燃料消費量すなわち積算値ΣFcb)と、積算値ΣFcbに対応したモータMG1の発電量(電気量)との比率を示す。また、“B”は、B=ΣFd/ΣQrbであって、基準時間tref内にハイブリッド車両20を走行させるためにエンジン22によって消費された燃料の量と、当該基準時間tref内におけるモータMG2の回生制動トルクの出力に伴う発電量(電気量)との比率を示す。更に、“A′”および“B′”は、本ルーチンの前回実行時におけるAおよびBの値であり、“α”は、重み係数である。また、“A′”および“B′”の初期値としては、走行モードごとに実験・解析を経て予め定められた値が用いられる。
換算係数Cnewを算出した後、換算係数更新部780は、当該換算係数Cnewを運転者に選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCs(更新後の換算係数)として換算係数記憶部78mに記憶させ(ステップS170)、ハイブリッド車両20がシステム停止されたか否か(スタートスイッチがオフされたか否か)を判定する(ステップS180)。ステップS180にてハイブリッド車両20がシステム停止されていないと判定した場合、再度ステップS100以降の処理を実行する。また、ステップS180にてハイブリッド車両20がシステム停止されていると判定した場合、換算係数更新部780は、本ルーチンを終了させる。
このように、PMECU70の換算係数更新部780は、運転者に選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsを、基準時間tref内におけるエンジン22の燃料消費量と当該基準時間tref内に蓄電装置40の充電に供されたモータMG1,MG2の発電量との比率A,Bに基づいて更新する。すなわち、換算係数更新部780は、基準時間tref内にエンジン22によって蓄電装置40の充電のために消費された充電用燃料噴射量Fcbと、基準時間tref内に蓄電装置40の充電に供されたモータMG1の発電量Qcbとの比率Aと、基準時間tref内にハイブリッド車両20を走行させるためにエンジン22によって消費された走行用燃料噴射量Fdと、基準時間tref内におけるモータMG2の回生制動トルクの出力に伴う発電量Qrbとの比率Bとの双方に基づいて運転者に選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsを更新する。これにより、運転者により選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsに対して、運転者のアクセル操作やブレーキ操作、走行環境等に応じた蓄電装置40の充電に供されるモータMG1,MG2の発電量の変化を反映させて、当該換算係数Ce等を運転者の運転の傾向や走行環境に合致した、燃料消費量をより低減化させ得る適正なものに修正することが可能となる。
以上説明したように、本開示の制御装置としてのPMECU70は、燃料をエネルギ源とするエンジン22(第1駆動力発生装置)と、電気をエネルギ源とする発電可能なモータMG1,MG2(第2駆動力発生装置)と、当該モータMG1,MG2と電力をやり取りする蓄電装置40と、エコモード、ノーマルモードおよびスポーツモードの選択を運転者に許容するモードスイッチ100とを含むハイブリッド車両20を制御するものである。そして、PMECU70は、目標回転数導出部72、エンジントルク導出部73、燃料消費量導出部74、充放電電力導出部75、充放電電流導出部76、SOC変化量導出部77、燃料換算部78、および換算係数記憶部78mを含む。
目標回転数導出部72(目標回転数設定手段)は、アクセル開度Acc(運転者の要求)および車速V(ハイブリッド車両20の走行状態)に応じたエンジン22の目標回転数Netagを設定する。エンジントルク導出部73および燃料消費量導出部74(第1燃料消費量取得手段)は、それぞれ目標回転数Netagを含むエンジン22の複数の動作点(Netag,T(k))における燃料消費量(第1燃料消費量)Fceng(k)を導出(取得)する。エンジントルク導出部73、充放電電力導出部75、充放電電流導出部76、SOC変化量導出部77および燃料換算部78(第2燃料消費量取得手段)は、アクセル開度Acc(運転者の要求)に応じた車両要求パワーPrqに基づいて、エンジン22の複数の動作点(Netag,T(k))ごとに、蓄電装置40のSOCの変化量ΔSOC(k)を導出(取得)すると共に変化量ΔSOC(k)に換算係数Cを乗じて燃料消費量(第2燃料消費量)Fcbat(k)を導出(取得)する。目標値導出部79(目標動作点設定手段)は、燃料消費量Fceng(k)と燃料消費量Fcbat(k)との和を最小にする動作点(Netag,T(m))をエンジン22の目標動作点(Netag,Tetag)に設定すると共に、エンジン22、モータMG1,MG2、および蓄電装置40の少なくとも何れかにより車両要求パワーPrqが賄われるようにモータMG1,MG2のトルク指令(目標動作点)Tm1tag,Tm2tagを設定する。換算係数記憶部78m(換算係数記憶手段)は、エコモードに対応した換算係数Ce、ノーマルモードに対応した換算係数Cnおよびスポーツモードに対応した換算係数Csを記憶する。燃料換算部78(第2燃料消費量取得手段)は、取得したSOCの変化量ΔSOC(k)に運転者により選択されている走行モードに対応した換算係数Ce,CnまたはCsを乗じて燃料消費量Fcbat(k)を取得する。
これにより、ハイブリッド車両20では、運転者により選択されている走行モードに合わせた換算係数Ce,CnまたはCsを用いて、トータルの燃費が向上するようにエンジン22とモータMG2との出力配分を設定することができる。この結果、複数の走行モードを選択的に切り替え可能なハイブリッド車両20の燃費を向上させつつ、各走行モードの特性に合致した駆動力特性を得ることが可能となる。
なお、上記実施形態において、換算係数Ce,CnまたはCsは、ハイブリッド車両20のシステム起動時にそれぞれの基準換算係数Ceb,CnbまたはCsbに戻されてもよい。また、上記実施形態において、換算係数更新部780により更新された換算係数Ce,CnまたはCsは、基準換算係数Ceb,CnbまたはCsbを比率A,Bに基づいて補正したものとなるが、これに限られるものではない。すなわち、換算係数更新部780により更新された換算係数Ce,CnまたはCsは、換算係数記憶部78mに記憶されている換算係数Ce,CnまたはCsを比率A,Bに基づいて補正したものであってもよい。この場合、図7のステップS150では、上記式(2)における“基準換算係数”を換算係数記憶部78mに記憶されている換算係数Ce,CnまたはCsで置き換えた関係式から、新たな換算係数Cnewが算出されればよい。更に、本開示のハイブリッド車両は、動力分配用のプラネタリギヤ30を有する2モータ式のハイブリッド車両20に限られるものではなく、エンジンの動作点を任意に変更なものであれば、1モータ式のハイブリッド車両であってもよい。すなわち、第2駆動力発生装置は、単一のモータを含むものであってもよい。また、ハイブリッド車両20は、プラグイン式のハイブリッド車両であってもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。