JP6662180B2 - 薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
溶融金属は、中央部に配設された浸漬ノズルから冷却ロールの周面に向けて吐出され、冷却ロールの周面に沿って一対のサイド堰側へとそれぞれ流れていく。
さらに、矩形状をなす湯面の4つのコーナ部においては、溶鋼金属溜まり部の内部で冷却ロールとサイド堰とが接する(冷却ロール/サイド堰/溶融金属)の三重境界上に湯面が存在しており、(冷却ロール/サイド堰/溶融金属/ガス)の四重点を形成する。
また、溶融金属溜まり部においては、浸漬ノズルから冷却ロールの周面に向けて吐出された溶融金属の吐出流が冷却ロールの周面に形成されている凝固シェルに衝突し、凝固シェルを構成する凝固晶の一部が凝固シェルから遊離して浮遊晶が生成することがある。この浮遊晶が、流動のデッドゾーンとなっている湯面の四重点近傍に堆積し、地金となるといった問題があった。
特許文献1には、サイド堰近傍の溶融金属の湯面を、外部加熱手段(プラズマ炎等)を用いて加熱する方法が提案されている。
特許文献2には、サイド堰を導電性耐火物で構成し、サイド堰近傍の溶融金属を通電加熱する方法が提案されている。
特許文献3には、サイド堰に近接した電磁誘導コイルにより、サイド堰と溶融金属とを軟接触状態とするとともに、サイド堰近傍の溶融金属を誘導加熱する方法が提案されている。
特許文献4には、導電性耐火物で構成されたフィンを浸漬させ、溶鋼金属の流動方向を変化させるとともに、このフィンを用いて通電加熱を行う方法が提案されている。
また、特許文献2及び特許文献3に記載された方法では、設備コストが高くなり、非経済的であった。
さらに、特許文献4に記載された方法では、フィンによって溶融金属の流れを変えているが、湯面のコーナ部での溶融金属の停滞を十分に解消することができなかった。
以上のように、従来の方法では、湯面のコーナ部での地金の発生を十分に抑制することができなかった。
また、前記湯面と前記冷却ロール周面の境界から10mm以上離間した位置に発熱部材を添加するので、発熱部材が冷却ロールの周面と接触することを抑制でき、薄肉鋳片の鋳造を安定して行うことができる。また、前記湯面と前記冷却ロール周面の境界及び前記サイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内に発熱部材を添加するので、発熱部材の発熱反応によってコーナ部の溶融金属の温度低下をさらに抑制することができる。
この場合、湯面に平行な往復運動又は公転運動を付与しながら前記発熱部材を添加することにより、前記溶融金属溜まり部の湯面のコーナ部における溶融金属の流動を促進することができる。これにより、コーナ部における溶融金属の停滞を抑制することができ、地金の発生及び成長を抑制することができる。
また、移動する前記発熱部材の軌跡の少なくとも一部が前記湯面と前記冷却ロール周面の境界及び前記サイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内に位置されるので、発熱部材の発熱反応によってコーナ部の溶融金属の温度低下をさらに抑制することができる。
溶鋼に対してSiを添加した場合には、発熱反応によって溶融金属の温度低下を抑制することが可能となる。ここで、金属Siは硬くて脆い材料のため、ワイヤー状又は帯状に成形することが困難であることから、顆粒状のSiを鉄材料で包むことで前記発熱部材をワイヤー状又は帯状に成形することができる。また、Siの含有量が40mass%以上とされているので、鉄材料の溶解に要する熱量よりもSiの添加による発熱量が大きくなり、湯面のコーナ部における溶融金属の温度低下を抑制することができる。
溶鋼に対してSi,Alを添加した場合には、発熱反応によって溶融金属の温度低下を抑制することが可能となる。特に、Si添加による効果が大きい。そこで、前記発熱部材として初晶Siを有する過共晶Al−Si合金を用いることにより、湯面のコーナ部における溶融金属の温度低下を抑制することができる。また、過共晶Al−Si合金は、ワイヤー状又は帯状に比較的簡単に成形することができる。
本実施形態において製造される薄肉鋳片1は、例えば、Siを0.5質量%以上8.0質量%以下の範囲で含むSi含有鋼とされている。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール11、11と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12、12、および、13、13と、一対の冷却ロール11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ロール11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼溜まり部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼溜まり部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル19と、を備えている。
この溶鋼溜まり部16の湯面20における溶鋼3の流動は、図4に示すように、浸漬ノズル19から冷却ロール11の周面に向けて流れ、冷却ロール11の周面に沿って、一対のサイド堰15側へとそれぞれ流れていく。
この四重点P近傍は、溶鋼3の流動のデッドゾーンとなっており、溶鋼3が十分に流動せずに停滞する領域(停滞域)となる。また、この四重点P近傍は、周囲から抜熱されやすいため、冷却過多となる傾向にある。
この発熱部材30は、図2及び図3に示すように、断面円形のワイヤー状又は断面矩形の帯状をなしており、湯面20のコーナ部21から溶鋼溜まり部16の内部へと連続的に添加される構成とされている。
なお、発熱部材30を自転させて添加してもよい。発熱部材30を自転させることで、コーナ部21における溶鋼3の流動が促進され、溶鋼3の停滞を抑制することが可能となる。自転させる発熱部材30は、溶鋼への流動を促進する効率を高めるため自転軸の垂直断面が矩形であるような帯状とすることが好ましい。さらに自転運動の回転数は10〜120rpmの範囲内とすることが好ましい。
ここで、発熱部材30に往復運動を付与する場合には、図5及び図6に示すように、往復駆動手段35を用いて、発熱部材30をサイド堰15に沿った方向に往復移動させる。これにより、コーナ部21における溶鋼3の流動が促進される。なお、往復運動の周期は0.2〜2.0Hzの範囲内、振幅は±5〜±15mmの範囲内とすることが好ましい。
なお、発熱部材30を自転させて溶鋼3の流動を促進する場合には、発熱部材30の断面形状を矩形状等の溶鋼3に対して流速を与えやすい形状にすることが好ましい。
発熱部材30の供給量は、溶鋼3の総スループット、総スループットに対するコーナ部溶鋼の体積割合、コーナ部溶鋼の温度低下速度、発熱部材30の発熱量により決定する。ここで、発熱部材30の発熱量とは、常温の発熱部材単位質量(1kg)が溶鋼3に溶解する際、発熱部材30自身の昇温に消費される熱量を除いた正味の溶鋼加熱可能な熱量である。
(コーナ部の抜熱量)=
(総スループット)×(コーナ部溶鋼の体積割合)×(温度低下量)×(溶鋼比熱)
(発熱材供給量)×(発熱量)≧(コーナ部の抜熱量)
(発熱材供給量下限)=(コーナ部の抜熱量)/(発熱量)
=(4.4kJ/min) / (24kJ/kg)
=0.18kg/min
すなわち、発熱部材である純Siを毎分180g(各コーナ45g)以上添加すればよい。
(発熱材供給量下限)=(コーナ部の抜熱量)/(発熱量)
=(4.4kJ/min) / (13kJ/kg)
=0.34kg/min
すなわち、発熱部材である70mass%Si(残部Feワイヤー)を毎分340g(各コーナ85g)以上添加すればよい。
(発熱材供給量下限)=(コーナ部の抜熱量)/(発熱量)
=(4.4kJ/min) / (6kJ/kg)
=0.74kg/min
すなわち、発熱部材である20mass%Siの過共晶Alを毎分740g(各コーナ185g)以上添加すればよい。
発熱部材30を往復運動又は公転運動を付与しつつコーナ部溶鋼の流動を促進させながら供給すると、発熱による加熱の効果に加えてコーナ部溶鋼の停滞が緩和され、周囲溶鋼と均熱化する効果も同時に得られる。運動付与せずに添加する場合に比べ、次のような利点がある:(1)発熱部材の添加量を低減することができる。(2)発熱部材に含有するSi含有量を小さくすることができる。(3)発熱部材の添加による溶鋼の組成変化を小さくすることができる。
一方、発熱部材30に含有するSiが溶鋼3に溶け込むため薄肉鋳片1のSi成分が増加する。この溶質Si増分(質量)は、溶鋼総量(質量)に対して0.3%以下、あるいは、発熱部材添加前の溶鋼3の初期Si量(質量%)の1/5以下(いずれか少ない方)であることが好ましい。
さらに、Si含有量が20mass%の過共晶Al合金製の発熱部材30を用いるときの溶鋼溜まりの4つのコーナ部21への供給量は、各2250g/min以下とするのが好ましい。
さらに、本実施形態である薄肉鋳片1の製造方法において、発熱部材30に対して自転運動を付与した場合には、溶鋼溜まり部16の湯面20の4つのコーナ部21における溶鋼3の流動を促進することができ、溶鋼3の滞留を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ピンチロールを配設した双ロール式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
発熱部材として、粒径2mm以下の顆粒状の金属SiをFe箔で包み、断面形状が直径8mmの円形をなすワイヤーを用いた。なお、このときのSi含有量を70mass%とした。
この発熱部材を、湯面の4つのコーナ部に添加した。このときの添加位置は、湯面と冷却ロール周面の境界から10mm以上離間し、かつ、湯面と冷却ロール周面の境界及びサイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内とした。また、送り速度は600mm/minとした。
発熱部材として、粒径1mm以下の顆粒状の金属SiをFe箔で包み、断面形状が厚さ5mm×幅10mmの矩形状をなす帯状のものを用いた。なお、このときのSi含有量を60mass%とした。この発熱部材を、自転させながら湯面の4つのコーナ部に添加した。このときの回転数は60rpmとした。また、発熱部材の添加位置は、湯面と冷却ロール周面の境界から10mm以上離間し、かつ、湯面と冷却ロール周面の境界及びサイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内とした。また、送り速度は120mm/minとした。
発熱部材として、粒径2mm以下の顆粒状の金属SiをFe箔で包み、断面形状が直径8mmの円形をなすワイヤーを用いた。なお、このときのSi含有量を40mass%以上とした。
この発熱部材を、湯面の4つのコーナ部に、湯面に平行な公転運動をさせながら添加した。なお、公転運動の条件は、回転中心位置がサイド堰の表面から20mm、湯面と冷却ロール周面の境界から20mm位置とし、回転半径を8mmとし、回転の周期を0.5Hzとした。また、送り速度は80mm/minとした。
発熱部材として、Si含有量が20mass%の過共晶Al−Si合金を、断面形状が厚さ5mm×幅10mmの矩形状をなす帯状のものを用いた。
この発熱部材を、湯面の4つのコーナ部に、湯面に平行な往復運動をさせながら添加した。なお、往復運動の条件は、往復中心位置がサイド堰の表面から10mm、湯面と冷却ロール周面の境界から20mm位置とし、振幅を±10mm、周期を1Hzとした。また、送り速度は60mm/minとした。
従来例では、発熱部材の添加を行わずに鋳造を実施した。
一方、従来例においては、鋳造開始から3min経過後に地金の噛み込みが多発し、薄肉鋳片にも地金の巻き込みが確認された。地金は、コーナ部溶鋼温度が液相線温度を下回り、湯溜まりのコーナ部で生じた凝固によるものと推定された。
また、発熱部材の添加によって、発明例1における鋳造板のSi成分の変化は、発明例1では初期Si0.6%に対し、たかだか0.04%程度の増加に留まり問題ないことを確認した。更に発明例2〜4における鋳造板のSi成分の変化は、いずれも0.01%未満であり全く問題なかった。
3 溶鋼
5 凝固シェル
11 冷却ロール
15 サイド堰
16 溶鋼溜まり部(溶融金属溜まり部)
20 湯面
21 コーナ部
30 発熱部材
Claims (4)
- 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に浸漬ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて、薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
前記溶融金属溜まり部の湯面は、前記冷却ロールと前記サイド堰とによって四方を囲まれた矩形状をなしており、
前記溶融金属に添加した際に発熱反応するワイヤー状又は帯状の発熱部材を、前記湯面と前記冷却ロール周面の境界から10mm以上離間し、かつ、前記湯面と前記冷却ロール周面の境界及び前記サイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内から連続添加することを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - 湯面に平行な往復運動又は公転運動を付与しつつ前記発熱部材を連続添加する構成とされており、移動する前記発熱部材の軌跡の少なくとも一部が前記湯面と前記冷却ロール周面の境界及び前記サイド堰の表面に対して50mm以下の範囲内に位置することを特徴とする請求項1に記載の薄肉鋳片の製造方法。
- 前記溶融金属は溶鋼であり、前記発熱部材はSiを鉄材料で包んだ構成とされ、Siの含有量が40mass%以上とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄肉鋳片の製造方法。
- 前記溶融金属は溶鋼であり、前記発熱部材は、初晶Siを有する過共晶Al−Si合金で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄肉鋳片の製造方法。
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