JP7124617B2 - スカム堰、双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、上述の双ロール式連続鋳造装置を用いて薄肉鋳片を鋳造する際に、湯面上のスカムが冷却ロールの周面に巻き込まれることを抑制する技術が提案されている。
注湯ノズルとメニスカスとの間に、冷却ロールの軸方向に対して平行に、スカム堰を浸漬することにより、湯面に浮上したスカムを堰止めることが可能となる。なお、溶鋼は浸漬したスカム堰の下部を通って、メニスカスに達するので、湯面のスカム巻込みが大幅に防止され、健全な鋳片が製造される。
(1)式:[Si]eq=[Si]+[Al]/3
(2)式:W×[Si]eq≧0.5
(3)式:([Si]+[Al]+[Fe])>95.0
(4)式:[Si]eq/([Si]eq+[Fe])×100>45.0
この場合、発熱部材が、さらにMg,Ca,REMのうち少なくとも1種又は2種以上から選択される還元金属を含有しているので、これらMg,Ca,REMによって酸化物(スカム)を還元することで溶鋼の見かけ上の粘性を低下させて、溶鋼の流動を促進することができ、スカム堰の幅方向端部周辺における地金の発生をさらに抑制することができる。
また、Mg,Ca,REMのうち少なくとも1種又は2種以上から選択される還元金属の合計含有量が5.0質量%未満に制限されているので、Si及びAlの含有量を確保することができ、スカム堰の幅方向端部周辺の溶鋼を十分に加熱することが可能となる。
本実施形態では、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。なお、鋼種としては、例えば0.001~0.01%C極低炭鋼、0.02~0.05%C低炭鋼、0.06~0.4%C中炭鋼、0.5~1.2%C高炭鋼、SUS304鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430鋼に代表されるフェライト系ステンレス鋼、3.0~3.5%Si方向性電磁鋼、0.1~6.5%Si無方向性電磁鋼等(なお、%は、質量%)が挙げられる。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール11、11と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12,12及び13,13と、一対の冷却ロール11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ロール11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼プール部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼プール部16へと溶鋼3を供給する注湯ノズル19と、を備えている。
このスカムXが冷却ロール11に巻き込まれることを抑制するために、溶鋼プール部16には、スカム堰20が配設される。詳述すると、図2から図4に示すように、スカム堰20は、矩形平板状をなしており、注湯ノズル19と冷却ロール11、11との間に配置され、その一部が溶鋼3内に浸漬されている。
ここで、堰本体21は、強度と耐熱性を有し、熱変形の少ない材料で構成されている。具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、黒鉛、および、これらの複合材料を用いることができる。
そして、発熱部材22に含まれるSi量を[Si](質量%)、Al量を[Al](質量%)、[Fe](質量%)とし、堰本体21の片側の幅方向端部領域に配設された発熱部材22の重量をW(g)とした場合に、以下の(1)~(4)式を満足する。
(1)式:[Si]eq=[Si]+[Al]/3
(2)式:W×[Si]eq≧0.5
(3)式:([Si]+[Al]+[Fe])>95.0
(4)式:[Si]eq/([Si]eq+[Fe])×100>45.0
(5)式:W(Mg)eq=W(Mg)+0.61×W(Ca)
+0.26×W(REM)≧0.002
鋳造開始時に、溶鋼プール部16の湯面レベルが上昇して、スカム堰20が溶鋼3と接触する際に、予熱されていないスカム堰20の幅方向端部周辺において溶鋼3の温度が低下しやすく、地金が生成するおそれがある。
鋳造開始時におけるスカム堰20の幅方向端部周辺の溶鋼3の温度低下を抑制するために、本実施形態においては、堰本体21の下端から10mmかつ幅方向端部から10mmまでの幅方向端部領域に、溶鋼3に添加した際に発熱反応するAl及びSiの少なくとも一方又は両方を含む発熱部材22を配設している。
発熱部材22は、図6又は図7に示すように、堰本体21の側面(サイド堰15に向かい合った面)、あるいは、注湯ノズル19側を向く面や、冷却ロール11側を向く面に配置してもよい。また、底面に配置してもよい。スカム堰20(堰本体21)は、一般に厚み10mmほどの耐火物板なので、側面や底面に、一定量の発熱部材22を配置することができる。
そこで、本実施形態では、少なくとも堰本体21の下端から10mmに、発熱部材22を配設している。
そして、予熱されていないスカム堰20の幅方向端部周辺は、特に地金が生成しやすい。これは、サイド堰が、予熱されてはいるが、最も高温の場合でも、現実には溶鋼温度より低い温度(例えば溶鋼温度より100℃程度低い温度)にとどまるため、スカム堰20の幅方向端部周辺の溶鋼が、スカム堰端部とサイド堰表面との二方向から抜熱されるためである。このため、スカム堰20の幅方向端部から10mm以内に、発熱部材22を配設している。
SiとAlは、溶鉄に溶解した時に発熱する元素である。同量のSiとAlの溶解熱を比べると、Alが溶解した時の発熱量はSiの1/3である。
式(1)は、SiとAlの合計量を、発熱量が等しいSi量に換算した、Si当量(質量%):[Si]eqを規定するものである。
スカム堰20の厚みを一般的な10mm、溶鋼3に浸漬する深さを一般的な10mmと想定すると、堰本体21の幅方向端部領域の表面積(図5に示すハッチング部の面積)は4cm2となる。付着する地金の厚みは数mmであるので、本実施形態では、スカム堰20の表面から5mm以内にある溶鋼3を昇温する条件を考える。
発明者らが実験から得た知見によると、地金付着を防止するためには、スカム堰20に接触した溶鋼3を少なくとも10℃以上昇温する必要がある。溶鋼比熱は0.823J/K/gなので、14gの溶鋼が10℃昇温するために要する正味の熱量は、0.115kJである。
発熱部材22をスカム堰20の表面に配置しているので、発熱量の半分がスカム堰20の表層の昇温に費やされ、残り半分が溶鋼3を昇温すると想定する。また、湯面からの輻射で約3割の熱量が逃げる影響を考慮すると、地金付着を防止するために必要な、発熱部材の最低限の発熱量は、0.3kJと計算される。この0.3kJが、発熱部材が発熱すべき最低限の発熱量である。
スカム堰20に配設される発熱部材22においては、Si及びAlの他にFeを含有していてもよい。この場合、Si、Al、Feの3成分の合計含有量が95質量%超とする。
Feは、SiやAlをスカム堰20に配置する際に包むための鉄箔として使用されるほか、Fe-Si合金やFe-Al合金を用いる場合に含有されることがある。これら3成分以外の成分は、Feと同様に発熱作用を有しない成分であるので、合計5質量%未満に制限する。
溶鋼3に溶解した時に発熱するSi及びAlと、発熱作用を有しないFeの割合を規定する。Fe割合が高すぎると、Si及びAlによる発熱が、発熱部材22に含有されるFeの昇温や融解に費やされるため、スカム堰20に接した溶鋼3を十分に昇温できないおそれがある。したがって、発熱部材22のFe含有量の上限(Si当量の下限)を規定する。具体的には、式(2)の項で説明したように、Feを含む発熱部材全体として最低限0.3kJを発熱するために、Si当量とFeの合計に対して、Si当量を45質量%超とすることを、熱化学計算から決定した。この規定により、対象領域14gの溶鋼には0.115kJの熱量が伝わり10℃以上昇温するので、地金付着を防止できる。
本実施形態の発熱部材22においては、さらにMg、Ca、REMのうちの少なくとも1種又は2種以上の還元金属を、5質量%未満の範囲で含有していてもよい。
Mg、Ca、REMは強脱酸元素である。鋳造初期の溶鋼3には、チャンバー内の雰囲気に含まれる酸素によって生成した酸化物が、比較的多く含まれるため、見かけ上の溶鋼粘度が高い。溶鋼3の粘度が高いとスカム堰20近傍で滞留しやすくなり、予熱されていないスカム堰20に接して地金が生成しやすくなる。
そこで、溶鋼3中の酸化物を、これらの還元金属で還元して見かけ上の粘度を低下させることで、滞留を防ぎ、スカム堰20周辺の溶鋼3の温度低下をさらに抑制することが可能となる。
W(Mg)eqは、湯面上のスカム、主にAl2O3を還元するために必要なMg量に換算したMg当量である。式(5)の左辺の各項の係数は、同一量のAl2O3を還元するために必要な、各元素の重量比から算出した。鋳造開始時に注湯ノズル19から注入された直後の溶鋼3は、チャンバー内雰囲気で酸化されるので、t.[O]値は100ppmに達する場合がある。この結果、多量のスカムが生成し、湯面を覆う。W(Mg)eq=0.002(g)は、昇温対象とする溶鋼14gに含まれる酸化物、t.[O]値に換算すると最大100ppmを還元するために必要なMg当量の重量を表す。
配置する発熱部材22の形態は、特に規定しない。
なお、発熱部材22としては、以下のような形態のものが挙げられる。
(1)所定の組成を均一に有する金属塊(インゴット)を成形加工したもの。粉末、粒、板、棒状など形態は問わない。これらを鉄やアルミの箔に包んだり、鉄箔に包んでワイヤー状に成形したりする。
(2)一部あるいは全ての成分の原料を、物理的に混合して、鉄やアルミの箔に包んで配置する。例えば、各成分の単体金属(金属Si、金属Al、金属Mgなど)のほか、各成分を含む合金(Fe-Si合金、Fe-Si-Al合金、Si-Mg合金、MgSi2、Ca-Si合金、CaSi2など)を取り扱いやすい形状(粉末、粒など)に加工した後、混合して、所定の組成に調整したもの。なお、REMの原料として、金属単体(金属La、金属Ceなど)やミッシュメタル、Fe-Si-REM合金などを用いることができる。
発熱部材22の固定方法は、特に規定しない。
例えば、図6及び図7に示すように、金属粒や粉末や、それらを箔材で包んだもの、あるいは圧縮成形体を、堰本体21の表面に、耐熱接着材等を用いて接着しても良い。
また、図8及び図9に示すように、発熱部材22を堰本体21に配置するために、溝や、段差を加工してよい。溝に、金属粒や粉末を直接埋め込んだり、段差部にワイヤー材や圧縮成形体を配置したりすることができる。
さらに、図10及び図11に示すように、金属粒や粉末を箔材で包んだものを、針金で吊り下げたり、巻き付けたりして配置しても良い。
また、図12に示すように、発熱部材22自体を線材に成形し、堰本体21に直接巻き付けてもよい。
また、Mg,Ca,REMのうち少なくとも1種又は2種以上から選択される還元金属の合計含有量が5.0質量%未満に制限することにより、Si及びAlの含有量を確保することができ、スカム堰の幅方向端部周辺の溶鋼を十分に加熱することが可能となる。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ピンチロールを配設した双ロール式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
冷却ドラムの直径:1200mm
鋳造幅:800mm
鋳造厚み:平均2.0mm
鋳造速度:平均50m/min
鋳造雰囲気:Ar+N2
鋳造量:10トン
湯面レベル弧角:40deg
溶鋼と冷却ドラムの接触弧長:419mm
溶鋼プール部の溶鋼温度:1533~1553℃(上記溶鋼の液相線温度1513℃なので、過熱度は20~40℃)
以上のような条件で薄肉鋳片の鋳造を実施し、鋳造開始から1分間に発生したホットバンドの発生個数を、記録ビデオから測定した。合格基準は5個以下である。測定結果を表1及び表2に示す。
比較例52においては、堰本体の下端から10mm以内かつ幅方向端部から10mmまでの幅方向端部領域に発熱部材を配置しなかったため、スカム堰の幅方向端部に地金が付着した。その結果、地金が巻き込まれて、ホットバンドが12ヶ所、発生した。
比較例53においては、(1)式及び(2)式を満たしておらず、スカム堰の幅方向端部に地金が付着することを十分に抑制することができず、地金の巻き込みによってホットバンドが10ヶ所も生じた。
比較例54においては、(3)式を満たしておらず、スカム堰の幅方向端部に地金が付着することを十分に抑制することができず、ホットバンドが6ヶ所、発生した。
比較例55においては、(4)式を満たしておらず、スカム堰の幅方向端部に地金が付着することを十分に抑制することができず、ホットバンドが8ヶ所、発生した。
3 溶鋼
5 凝固シェル
11 冷却ロール
16 溶鋼プール部
20 スカム堰
21 堰本体
22 発熱部材
Claims (4)
- 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶鋼プール部に、注湯ノズルを介して溶鋼を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置において、前記溶鋼プール部に配設されるスカム堰であって、
堰本体と、少なくとも前記堰本体の下端から10mmかつ幅方向端部から10mmまでの幅方向端部領域に配設され、前記溶鋼に添加した際に発熱反応するAl及びSiの少なくとも一方又は両方を含む発熱部材と、を有し、
前記発熱部材に含まれるSi量を[Si](質量%)、Al量を[Al](質量%)、Fe量を[Fe](質量%)とし、片側の前記幅方向端部領域に配設された前記発熱部材の重量をW(g)として、以下の(1)~(4)式を満足することを特徴とするスカム堰。
(1)式:[Si]eq=[Si]+[Al]/3
(2)式:W×[Si]eq≧0.5
(3)式:([Si]+[Al]+[Fe])>95.0
(4)式:[Si]eq/([Si]eq+[Fe])×100>45.0 - 前記発熱部材が、さらにMg,Ca,REMのうち少なくとも1種又は2種以上の還元金属を含有しており、前記還元金属の合計含有量が5.0質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のスカム堰。
- 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶鋼プール部に、溶鋼を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置であって、
請求項1又は請求項2に記載のスカム堰が、前記溶鋼プール部に配設されていることを特徴とする双ロール式連続鋳造装置。 - 回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶鋼プール部に、溶鋼を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項1又は請求項2に記載のスカム堰を、前記溶鋼プール部に配設することを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。
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