ところで、ブレーキペダルのパッド部分が相対的に前方へ回動する程度に、リンクでブレーキブラケットの上部後端を下方へ案内するためには、十分な回動角度が必要になる。リンクが回動するとリンクの角度位置に因ってブレーキブラケットを押し下げる方向が変わる。リンクの回動角度を確保するためにリンクを水平に近づく方向へ傾けると、ダッシュパネルが後退してリンクが回動し始める初期段階では、リンクとステアリングハンガーとの間の脆弱部に対して車両の進行方向に作用する分力が大きく下方へ押し下げる分力は小さくなってしまう。また、リンクが回動して垂直に近づくと、回動の初期段階に比べて回動するにしたがってブレーキブラケットを下方へ案内する変位量は小さくなる。
衝突によって変形するダッシュパネルは、必ず真っ直ぐに後退してくるとは限らないとともに、衝突の大きさによって脆弱部及びステアリングハンガーとリンクの端部との結合部に作用する荷重は異なる。したがって、脆弱部を支点にリンクの中間部を的確に回動させるためには、設置された状態においてリンクの中間部が立て起こされた角度に取り付けられるとともに、必要な変位量に応じた長さを有している必要がある。また、安定した作動性能を発揮させるためには、リンクの取付角度など組立精度も必要である。
そこで、本発明は、前方衝突の際に後退してくるダッシュパネル対して相対的にブレーキペダルを前方へ移動させる動作が安定しているとともに、組立作業が容易なブレーキペダル支持装置を提供する。
本発明に係る一実施形態のブレーキペダル支持装置は、ペダルブラケットとブレーキペダルとステー部材とを備える。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられ後方へ延びている。ブレーキペダルは、ペダルブラケットに揺動可能に支持されている。ステー部材は、ペダルブラケットの上部後端に前端が固定され、ペダルブラケットよりも上方かつ後方に配置された車体部材に後端が固定される。このステー部材は、第1のリンクと第2のリンクと屈曲部と係止部とを有する。第1のリンクは、車両の後進方向に対対するステー部材の前端及び後端を結ぶ線分の仰角よりも大きい角度に配置されている。第2のリンクは、車両の後進方向に対するステー部材の前端及び後端を結ぶ線分の仰角よりも小さい角度に配置されている。屈曲部は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分上から外れた位置で回動可能に第1のリンクと第2のリンクを連結する。係止部は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分が短くなる方向に第1のリンクと第2のリンクが屈曲部を中心に一定の角度以下に相対的に回動することを規制する。
このとき、ステー部材は、第1のリンクと第2のリンクとを取外し可能に連結する取付部材を備えることが好ましい。また、上述のブレーキペダル支持装置において、取付部材は、第1のリンクに沿う第1の部分と、第2のリンクの屈曲部側の端部から下方に延びた接続片に沿う第2の部分と、を備えることも好ましい。また、ステー部材の前端は、ペダルブラケットの上部後端に溶接固定され、ステー部材の後端は、車体部材に溶接固定されることも好ましい。
また、上述のブレーキペダル支持装置において、係止部は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分側へ第1のリンクから延びたリブの屈曲部側に面した第1の縁部と、第2のリンクから線分側へ延びたリブの屈曲部側に面した第2の縁部と、を含む。さらに、係止部は、第1の縁部と第2の縁部との間に配置される挟持片を含むことも好ましい。
また、ブレーキペダル支持装置において、ステー部材の前端と屈曲部との間に第1のリンクが配置され、車体部材の後部側に固定されたステー部材の後端と屈曲部との間の車体部材の下方に第2のリンクが配置される。または、ブレーキペダル支持装置において、車体部材の後部側に固定されたステー部材の後端と屈曲部との間の車体部材の下方に第1のリンクが配置され、ステー部材の前端と屈曲部との間に第2のリンクが配置されていてもよい。上述のブレーキペダル支持装置において、ペダルブラケットの後端に固定されて第2のリンクを下方から支持する支持ブラケットをさらに備えることも好ましい。
本発明に係る一実施形態のブレーキペダル支持装置によれば、ペダルブラケットとブレーキペダルとステー部材とを備える。ステー部材は、ペダルブラケットの上部後端に前端が固定され、ペダルブラケットよりも上方かつ後方に配置された車体部材に後端が固定されている。このステー部材は、第1のリンクと第2のリンクと屈曲部と係止部とを有している。第1のリンクは、車両の後進方向に対するステー部材の前端及び後端を結ぶ線分の仰角よりも大きい角度に配置され、第2のリンクは、車両の後進方向に対してステー部材の前端及び後端を結ぶ線分の仰角よりも小さい角度に配置されている。屈曲部は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分上から外れた位置で回動可能に第1のリンクと第2のリンクとを連結している。したがって、車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネルが後退してきた場合、車両の後進方向に作用する衝突荷重は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分に対して仰角を大きくする方向に第1のリンクをまず回動させる。
また、係止部は、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分が短くなる方向に第1のリンクと第2のリンクが屈曲部を中心に一定の角度以下に相対的に回動することを規制する。したがって、第1のリンクが第2のリンクに対して一定の角度になるまで回動すると、第1のリンクと第2のリンクは一体化されて、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分が後進方向に対して仰角を大きくする方向に、ステー部材全体が後端を中心に回動する。ステー部材の前端は、ペダルブラケットの上部後端に固定されているので、ペダルブラケットは、相対的に後方かつ下方に押し下げられる。その結果、前方衝突によってダッシュパネルが後退してくることに伴ってブレーキペダルが後退してくることを抑制することができる。
また、第1のリンクが先行して回動するので、ペダルブラケットの上部後端を後方かつ下方へ誘導する際の初期動作として回動半径が小さく、後進方向に作用する衝突荷重のベクトルを下方へ向けやすい。そのため、ブレーキペダルを相対的に前方へ移動させる変位量が安定する。さらに、第1のリンクと第2のリンクが一体となってステー部材が回動する際にステー部材の後端に作用する荷重のベクトルも、ステー部材の前端及び後端を結ぶ線分に対する角度が大きくなる。したがって、ステー部材の後端に対してステー部材の前端及び後端を結ぶ線分に沿う方向に作用する荷重は、軽減される。
ペダルブラケットと車体部材との間を接続するステー部材が前端及び後端を結ぶ線分よりも、仰角が大きい角度に配置される第1リンクと、仰角が小さい角度に配置される第2リンクとで構成され、第1リンクと第2リンクの間に屈曲部を有しているため、組立作業が容易になる。
また、第1のリンクと第2のリンクとを取外し可能に連結する取付部材をステー部材がさらに備えることとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1のリンク及び第2のリンクの一方をペダルブラケットに、他方を車体部材に、それぞれ予め取り付けておき、後から取付部材で連結することができる。
このとき、ステー部材の前端をペダルブラケットの上部後端に溶接固定し、ステー部材の後端を車体部材に溶接固定することとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、ステー部材の前端及び後端となる部分が溶接固定されるため、衝突荷重に対する剛性が増し、動作も安定する。また、ブレーキペダルの交換が必要になった場合にも、車体部材を外すことなく、取付部材の部分で分解してブレーキペダル及びペダルブラケットを外すことができる。
また、第1のリンクに沿う第1の部分と第2のリンクの屈曲部側の端部から下方に延びた接続片に沿う第2の部分とを取付部材が有することとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1のリンクが屈曲部の前方に配置され第2のリンクが屈曲部の後方に配置される場合、及び、第1のリンクが屈曲部の後方に配置され第2のリンクが屈曲部の前方に配置される場合のいずれの場合でも、取付部材を介して第1のリンクと第2のリンクを連結する組立作業及びこれらを取り外す分解作業において、後方からすなわち運転席側から作業ができるため、作業効率が良い。
また、第1の縁部と第2の縁部を係止部が含むこととする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1の縁部はステー部材の前端及び後端を結ぶ線分側へ第1のリンクから延びたリブの屈曲部に面して設けられており、第2の縁部はステー部材の前端及び後端を結ぶ線分側へ第2のリンクから延びたリブの屈曲部側に面して設けられている。第1の縁部と第2の縁部は、第1のリンクと第2のリンクのそれぞれリブに設けられるので剛性も高く、屈曲部を中心に第1のリンクと第2のリンクが互いに接近する方向へ回動すると互いに当接し、第1のリンクと第2のリンクを一定の角度に保持できる。
さらに、第1の縁部と第2の縁部との間に配置される挟持片を係止部が含むこととする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1の縁部と第2の縁部が当接する際の安定性が増す。挟持片は、第1の縁部と第2の縁部との間に別部材で配置されたものでもよいし、第1の縁部又は第2の縁部あるいはその両方に設けられていてもよい。
ステー部材の前端と屈曲部との間に第1のリンクが配置され、車体部材の後部側に固定されたステー部材の後端と屈曲部との間で車体部材の下方に第2のリンクが配置されることとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1のリンクが第2のリンクと一体になるまで屈曲部を中心に回動する間、及び、第1のリンクが第2のリンクと一体になってステー部材の後端を中心に回動する間のそれぞれにおいて、ペダルブラケットの上部後端を下方へ押し下げる安定した変位量を得ることができる。
車体部材の後部側に固定されたステー部材の後端と屈曲部との間で車体部材の下方に第1のリンクが配置され、ステー部材の前端と屈曲部との間に第2のリンクが配置されることとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1のリンクが第2のリンクと一体になるまでの間はステー部材の後端を中心に第1のリンクが回動してペダルブラケット及び第2のリンクを一体的に押し下げ、第1のリンクが第2のリンクと一体になった後はステー部材全体が後端を中心に回動してペダルブラケットを下方に押し下げる。前方衝突によってダッシュパネルが変形する際、第1のリンクと第2のリンクが一体となった後の方が、ブレーキペダルが後退するのを抑制する効果が高くなる。このとき、ペダルブラケットの後端に固定されて第2のリンクを下方から支持する支持ブラケットをさらに備えることとする上述の発明に係るブレーキペダル支持装置によれば、第1のリンクが第2のリンクと一体になるまでの間においてもペダルブラケットを下方に押し下げる変位量を確保することができる。
本発明に係る第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1について、図1から図6を参照して説明する。図1は、ダッシュパネル2の下部であるトーボードの運転席側に設置されるブレーキペダル支持装置1を左側から見た側面図である。このブレーキペダル支持装置1は、車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネル2が後退してくるような変形が生じた場合に、これに伴ってブレーキペダル12が後退してきても運転席に座っている運転者の脚に当たらないようにする機構を有している。なお、本明細書中において、車両の進行方向を基準に「前」、「後ろ」、「右」、「左」をそれぞれ定義し、重力の作用する方向を基準に「上」及び「下」を定義する。
図1に示すブレーキペダル支持装置1は、ペダルブラケット11とブレーキペダル12とステー部材13とを備える。ペダルブラケット11は、運転席側からダッシュパネル2に取り付けられて、後方へ突出するように延びている。ブレーキペダル12は、アーム121とペダル122とを有し、ペダルブラケット11に車幅方向に配置された軸111を中心にアーム121の上端が揺動可能に支持されている。ペダル122はアーム121の下端に固定されている。アーム121の中央よりも上端寄りの位置には、ブレーキブースタから延びた操作ロッドが接続される。
図2は、車両の進行方向に沿う鉛直面で切断した場合のステー部材13およびその周辺の断面図である。ステー部材13は、ペダルブラケット11の上部後端112に前端131が固定され、車体部材3に後端132が固定される。本実施形態において、車体部材3は、ペダルブラケット11よりも上方かつ後方を車幅方向に車体の右から左まで配置されたデッキクロスメンバ31と、このデッキクロスメンバ31に取り付けられるデッキクロスブラケット32とを含む。ステー部材13の後端132は、デッキクロスブラケット32の後部に固定される。ステー部材13の前端131はペダルブラケット11の上部後端112に溶接されて一体となり、ステー部材13の後端132はデッキクロスブラケット32に溶接されて一体となっている。ステー部材13の前端131及び後端132は溶接以外の方法、例えば、接着、ろう付け、あるいはリベットやボルト止めによってそれぞれ固定されていてもよい。
図2に示すように、ステー部材13は、第1のリンク14と第2のリンク15と屈曲部16と係止部17とを有する。第1のリンク14は、車両の進行方向に対するステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの仰角よりも大きい角度に配置されている。第2のリンク15は、車両の進行方向に対するステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの仰角よりも小さい角度に配置されている。屈曲部16は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A上から外れた位置で第1のリンク14と第2のリンク15とを回動可能に連結する。
本実施形態の場合、図2及び図3に示すように、ステー部材13は、第1のリンク14と第2のリンク15とを取外し可能に連結する取付部材160を備えており、この取付部材160は、屈曲部16として機能する。第1のリンク14は、ステー部材13の前端131と屈曲部16との間に配置され、ステー部材13の前端131と一続きに形成されている。第2のリンク15は、ステー部材13の後端132と屈曲部16との間の車体部材3の下方に配置され、ステー部材13の後端132と一続きに形成されている。
取付部材160は、図2及び図3に示すように、第1のリンク14に沿う第1の部分161と、第2のリンク15の屈曲部16側の端部から下方に延びた接続片151に沿う第2の部分162とを備える。第1の部分161及び第2の部分162は、第1のリンク14及び第2のリンク15の接続片151に対して前方から当てられる。第1の部分161及び第2の部分162にはそれぞれナット181,182が溶接で取り付けられており、第1のリンク14及び第2のリンク15は、後方から差し込まれるボルト183,184で締結される。第1のリンク14及び第2のリンク15に設けられるボルト穴は、組立位置を合わせるための調整代を有している。
係止部17は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aが短くなる方向に第1のリンク14と第2のリンク15が屈曲部16を中心に一定の角度以下に回動することを規制する。具体的には図3に示すように、係止部17は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A側へ第1のリンク14の両側部から延びたリブ141の屈曲部16側に面した第1の縁部142と、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A側へ第2のリンク15の両側部から延びたリブ152の屈曲部16側に面した第2の縁部153とを含む。本実施形態の場合、図4に示すように、第1のリンク14のリブ141どうしの間隔W1は、第2のリンク15のリブ152どうしの間隔W2よりも狭く配置されている。第1のリンク14のリブ141は、第1のリンク14から離れた側の端部から互いに離間するように外に開いたフランジ143を有している。第1の縁部142は、フランジ143の屈曲部16側に面した部分も含む。第1のリンク14のリブ141どうしの間隔W1が、第2のリンク15のリブ152どうしの間隔W2よりも広く配置される場合は、第2のリンク15のリブ152を第1のリンク14のリブ141よりも短くし、そのリブ152の端部から互いに離間するように外へ開いたフランジを設ける。
ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aが短くなるように屈曲部16を中心に第1のリンク14が第2のリンク15に向かって回動すると、第1のリンク14のフランジ143の部分の第1の縁部142は、第2のリンク15の第2の縁部153に対して互いに交差する位置で当接し、第1のリンク14と第2のリンク15の角度が一定の角度以下にならないように保持される。衝突荷重のように大きな力が加わった場合、第1の縁部142と第2の縁部153が滑って外れないように、フランジ143の第1の縁部142の角には、第2の縁部153に向かって突出した凸部144を有している。第2のリンク15のリブ152の第2の縁部153の角に同様の凸部を設けてもよい。
以上のように構成された第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1の動作について、車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネル2が後退してくる場合を例に、図1、図5、図6を用いて説明する。上述のように構成された第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1は、図1の状態に組み立てられている。第1のリンク14の第1の縁部142と第2のリンク15の第2の縁部153との間は離間しているとともに、車体部材3であるデッキクロスメンバ31とその下方に位置する第2のリンク15との間にもわずかに隙間を有している。
車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネル2がエンジンなどによって押されて後退してくると、ステー部材13の前端131から後端132までの距離が縮まる。つまり、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aが短くなる方向に第1のリンク14と第2のリンク15が屈曲部16を中心に回動する。このとき、第2のリンク15は、ステー部材13の後端132を中心に上方へ少し回動し直ぐにデッキクロスメンバ31に当接し、保持される。また、ダッシュパネル2が変形する方向である後進方向に対するステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの仰角よりも、第1のリンク14は大きい角度に、第2のリンク15は小さい角度に、それぞれ配置されているため、後進方向へ作用する衝突荷重は、屈曲部16を中心に第1のリンク14を回動させる方向へ優先的に作用する。その結果、第1のリンク14が屈曲部16を中心に、下方に向かって回動する。
第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153に当接する位置までそれぞれ移動した状態を図5に示す。第1のリンク14が連結されているステー部材13の前端131、すなわちペダルブラケット11の上部後端112は、第1のリンク14が屈曲部16を中心に下方へ回動することで、第1のリンク14を半径とする円弧状の軌跡に沿って移動するように、ダッシュパネル2に押されて後退しながら第1のリンク14によって下方へ押し下げられる。ペダルブラケット11の上部後端112がダッシュパネル2に対して相対的に下方へ押し下げられることによって、ブレーキペダル12のアーム121は、ダッシュパネル2に固定されたペダルブラケット11の基部113を中心に下方かつ前方へ回動される。その結果、アーム121の下端に取り付けられたペダル122は、図1の状態と比較して、車両の進行方向にほぼ変わらない位置に保持される。
図5に示した状態まで、すなわち、第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153に当接した状態まで、第1のリンク14が回動すると、ステー部材13の後端132と第2のリンク15との連結部を中心に第1のリンク14及び第2のリンク15が一体的に下方へ回動し始める。ダッシュパネル2が後退するにしたがって、ペダルブラケット11の上部後端112は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aを半径とする円弧状の軌跡に沿って後退しながらステー部材13によって押し下げられる。ペダルブラケット11の上部後端112がダッシュパネル2に対して相対的に下方へ押し下げられることによって、ブレーキペダル12のアーム121は、さらにペダルブラケット11の基部113を中心に下方かつ前方へ回動される。このとき、ペダルブラケット11の上部後端112を誘導するステー部材13の前端131の回動半径は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aであって、第1のリンク14よりも大きい。したがって、ブレーキペダル12のアーム121はより大きく変位され、ペダル122もダッシュパネル2に対して相対的に前方へ変位する。
ステー部材13の前端131が後端132のほぼ真下となる位置までステー部材13が回動された状態を図6に示す。ペダルブラケット11の上部後端112は、ステー部材13の後端132を中心に回動するステー部材13によって押し下げられ、ブレーキペダル12のアーム121が前方に回動したことによって、ペダル122は、車体部材3であるデッキクロスメンバ31よりも少し前方に位置している。このときダッシュパネル2は、デッキクロスメンバ31にほぼ干渉する位置まで後退している。また、第1のリンク14及び取付部材160の第1の部分161がペダルブラケット11の上部に当たるようになるため、第1のリンク14はペダルブラケット11に対して相対的に固定された状態となる。したがって、ダッシュパネル2が図6に示す状態よりもさらに後退する場合、ステー部材13は、第1のリンク14の第1の縁部142と第2のリンク15の第2の縁部153が離間する。このとき、第1のリンク14は、ペダルブラケット11側に固定されているので、第2のリンク15が相対的に屈曲部16及びステー部材13の後端132を中心に回動する。その結果、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aは、伸ばされる、つまり、ステー部材13によって案内されるペダルブラケット11の上部後端112は、さらに下方へ押し下げられることとなる。
以上のように、本実施形態の構造を有したブレーキペダル支持装置1は、ブレーキペダル12を前方へ移動させる動作が安定しており、後退してくるダッシュパネル2に対して相対的にかつ継続的にブレーキペダル12を前方に変位させることができる。また、ステー部材13の第1のリンク14と第2のリンク15は、各々、ペダルブラケット11と車体部材3に分けて取り付けられ、取付部材160によって連結されるように構成されているので、組立作業が容易であり、また、メンテナンスなどの際にブレーキペダル支持装置1を取り外す場合にも、分解しやすい。
第2から第4の実施形態のブレーキペダル支持装置1について以下に説明する。第2から第4の実施形態において第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1と同じ機能を有する構成には、第1の実施形態の構成要素と同じ符号を付し、それらの詳細な説明は、第1の実施形態の記載を参酌することとする。
本発明に係る第2の実施形態のブレーキペダル支持装置1について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、第2の実施形態のブレーキペダル支持装置1のステー部材13を左後方から見た斜視図である。このステー部材13は、第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1のステー部材13と同じ構造を有し、係止部17としてさらに挟持片163を含む。挟持片163は、図7に示すように、第1のリンク14の第1の縁部142と第2のリンク15の第2の縁部153との間に配置される。本実施形態の場合、挟持片163は、図7及び図8に示すように、第2のリンク15の屈曲部16側の端から下方へ延びた接続片151に沿う取付部材160の第2の部分162の左右両側から車幅方向へ一続きに延びている。
図7に示す第1のリンク14のリブ141どうしの間隔W1は、第2のリンク15のリブ152どうしの間隔W2と同じである。したがって、第1のリンク14が屈曲部16を中心に下方へ回動し、第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153に接近すると、第1の縁部142と第2の縁部153は、挟持片163を挟み込む。図8に示すように、第1のリンク14及び第2のリンク15に対して接続片151及び取付部材160の第2の部分162がちょうど中間の位置に保持されるので、第1のリンク14が屈曲部16を中心に回動する間、及び、第1のリンク14と第2のリンク15が一体となったステー部材13が後端132を中心に回動する間、第1のリンク14と第2のリンク15の結合状態が安定する。
なお、本実施形態では、第1のリンク14のリブ141と第2のリンク15のリブ152は、それぞれ同じ平面上に配置されるので、図7に示すように第1のリンク14のリブ141の端部にフランジ143を有していない。また、挟持片163は、取付部材160の第2の部分162から一続きに形成されている代わりに、第2のリンク15の接続片151から車幅方向へ左右両側に形成されていてもよい。
第2の実施形態のブレーキペダル支持装置1の上述以外の構成は、第1の実施形態のブレーキペダル支持装置1の構成と同じであり、第1の実施形態で説明したのと同じように動作及び機能し、同等の効果を奏する。
本発明に係る第3の実施形態のブレーキペダル支持装置1について、図9から図13を参照して説明する。図9は、ブレーキペダル支持装置1を左側から見た側面図である。第3の実施形態のブレーキペダル支持装置1は、ステー部材13の構造が第1及び第2の実施形態のブレーキペダル支持装置1の場合と異なっている。
図9から図11に示すように本実施形態のステー部材13において、第1のリンク14は、車体部材3であるデッキクロスブラケット32の後部側に固定されたステー部材13の後端132と屈曲部16との間の車体部材3の下方に配置され、第2のリンク15は、ステー部材13の前端131と屈曲部16との間に配置される。つまり、第1のリンク14は屈曲部16の後方に配置され、第2のリンク15は屈曲部16の前方に配置される。
図10は、車両の進行方向に沿う鉛直面で切断した場合のステー部材13及びその周辺の断面図である。第1のリンク14は、デッキクロスブラケット32に溶接されたステー部材13の後端132と一続きに形成されている。第2のリンクは、ペダルブラケット11の上部後端112に溶接されたステー部材13の前端131と一続きに形成されている。第1のリンク14は、車両の後進方向に対するステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの仰角よりも大きい角度に配置され、第2のリンク15は、車両の進行方向に対するステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの仰角よりも小さい角度に、本実施形態では後進方向とほぼ同じに配置されている。
また、図10に示すように、第1のリンク14及び第2のリンク15を回動可能に連結する屈曲部16は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A上から外れた位置、本実施形態では、線分Aから下方に外れた位置に設定される。ステー部材13は、図11に示すように、第1のリンク14と第2のリンク15を取外し可能に連結する取付部材160を有しており、この取付部材160は、屈曲部16として機能する。
取付部材160は、図10に示すように、第1のリンク14に沿う第1の部分161と、第2のリンク15の屈曲部16側の端部から下方に延びた接続片151に沿う第2の部分162とを備える。第1の部分161は、第1のリンク14に対して前方から当接され、第2の部分162は、接続片151に対して後方から当接されている。第1の部分161と第1のリンク14は、第1の部分161に溶接されたナット181に、第1のリンク14に設けられたボルト穴に後方からボルト183を通して締結される。第2の部分162と接続片151は、接続片151に包摂されたナット182に、第2の部分162に設けられたボルト穴に後方からボルト184を通して締結される。
係止部17は、第1の実施形態と同様に、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aが短くなる方向に第1のリンク14と第2のリンク15が屈曲部16を中心に一定の角度以下に回動することを規制する。第3の実施形態において具体的には、図10及び図11に示すように、係止部17は、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A側へ第1のリンク14の両側部から延びたリブ141の屈曲部16側に面した第1の縁部142と、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分A側へ第2のリンク15の両側部から延びたリブ152の屈曲部16側に面した第2の縁部153とを含む。本実施形態の場合、線分Aは、第1のリンク14及び第2のリンク15の上方を通り、それぞれのリブ141,152は上方へ向かって延びている。また、第1のリンクのリブ141どうしの間隔は、第2のリンク15のリブ152どうしの間隔よりも狭く配置されており、したがって、第1のリンク14のリブ141の端部に互いに離間するように外側に開いたフランジ143を有している。屈曲部16からフランジ143までの距離は、第2のリンク15のリブの第2の縁部153が設けられた範囲に収まるように設定され、好ましくは、フランジ143と第2の縁部153が当接する部位が、フランジ143と第2の縁部153が当接する状態(図12)のステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aの近くに位置するように設定する。
本実施形態のブレーキペダル支持装置1は、図10及び図11に示すように、支持ブラケット154をさらに備えている。支持ブラケット154は、ペダルブラケット11の上部後端112に固定されて第2のリンク15を下方から支持する。図10及び図11では、支持ブラケット154は、第2のリンク15に当接しているが、少し隙間を有していてもよい。また、支持ブラケット154は、ステー部材13の前端131の左右両側部から一続きに形成され、第2のリンク15のリブ152の下方に回り込むように折り曲げられている。
以上のように構成された第3の実施形態のブレーキペダル支持装置1の動作について、車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネル2が後退してくる場合を例に、図9、図12、図13を用いて説明する。ブレーキペダル支持装置1は、図9の状態に組み立てられており、第1のリンク14の第1の縁部142と第2のリンク15の第2の縁部153との間は離間している。
車両が前方衝突を起こし、ダッシュパネル2がエンジンなどによって押されて後退してくると、ステー部材13の前端131から後端132までの距離が縮まる。すなわち、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aが短くなる方向に、第1のリンク14と第2のリンク15が屈曲部16を中心に回動される。このとき第2のリンク15は、支持ブラケット154によって下方へ回動しないように保持されている。したがって、第1のリンク14がステー部材13の後端132を中心に下方へ回動される。ペダルブラケット11の上部後端112は、第1のリンク14が回動することに伴い、第2のリンク15とともに下方へ押し下げられる。ペダルブラケット11の上部後端112が下方へ変位することで、ペダルブラケット11は、ダッシュパネル2に固定された基部113を中心に回動し、これに伴ってブレーキペダル12のペダル122がダッシュパネル2に対して相対的に前方へ移動する。
第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153に当接する位置まで、ダッシュパネル2とともにペダルブラケット11及び第2のリンク15が後退し、第1のリンク14が回動した状態を図12に示す。第1のリンク14がステー部材13の後端132を中心に回動したことによって、屈曲部16は、第1のリンク14を半径とする円弧状の軌跡に沿って移動する。第2のリンク15は、第1のリンク14に対して屈曲部16を中心に回動可能に取付部材160によって連結されており、支持ブラケット154によってペダルブラケット11に一体的に保持されている。したがって、ペダルブラケット11及び第2のリンク15は、ペダルブラケット11の基部113から屈曲部16まで一体的に下方へ回動されることとなる。つまり、ペダルブラケット11の上部後端112を下方に押し下げるための作用点が第2のリンク15の長さ分だけ延長され、より小さい力で押し下げることができる。
図12に示した状態まで、すなわち、第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153に当接した状態まで、第1のリンク14が回動すると、ステー部材13の後端132と第1のリンク14との連結部を中心としたまま、ステー部材13の第1のリンク14及び第2のリンク15が一体化され、ステー部材13が全体的に下方へ回動し始める。ペダルブラケット11の上部後端112は、ダッシュパネル2が後退するにしたがってステー部材13によって押し下げられ、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aを半径とする円弧状の軌跡に沿って、後退しながら下方へ移動する。
ペダルブラケット11を回動させる作用点は、屈曲部16からステー部材13の前端131すなわちペダルブラケット11の上部後端112に移り、この上部後端112がステー部材13の後端132を中心にしたままで第1のリンク14よりも大きい回動半径となるステー部材13で下方へ押し下げられる。したがって、ブレーキペダル12のペダル122が前方へ移動する変化率は相乗されて大きくなる。ステー部材13の後端132よりも後方へ屈曲部16が移動した状態を図13に示す。ダッシュパネル2がデッキクロスメンバ31に干渉する直前であり、ブレーキペダル12のペダル122は、デッキクロスメンバ31のほぼ真下に位置している。
以上のように、第3の実施形態の構造を有したブレーキペダル支持装置1は、ブレーキペダル12を前方へ移動させるための初期段階において小さい力で作動するとともに、後半では、移動量を増加させることができる。
本発明に係る第4の実施形態のブレーキペダル支持装置1について、図14及び図15を参照して説明する。図14は、第4の実施形態のブレーキペダル支持装置1のステー部材13を左前方から見た側面図である。図14に示すように、このステー部材13は、第3の実施形態のブレーキペダル支持装置1のステー部材13と同様の構造を有し、係止部17としてさらに挟持片163を含む。図14に示す第1のリンク14のリブ141どうしの間隔W1は、第2のリンク15のリブ152どうしの間隔W2と同じである。第1のリンク14のリブ141と第2のリンク15のリブ152は、それぞれ同じ平面上に配置されるので、図14に示すように第1のリンク14のリブ141の端部にフランジを有していない。第2のリンク15の屈曲部16側の端から下方に延びた接続片151に沿う取付部材160の第2の部分162は、第1のリンク14のリブ141どうしの間隔W1及び第2のリンク15のリブ152どうしの間隔W2よりも大きい幅を有している。挟持片163は、図14及び図15に示すように、取付部材160の第1の部分161よりも大きく左右両側に延びた第2の部分162の屈曲部16側に面した縁から一続きに、ステー部材13の前端131及び後端132を結ぶ線分Aに向かって、第1のリンク14のリブ141と第2のリンク15のリブ152の間に延びている。
図14及び図15に示す第1のリンク14がステー部材13の後端132との連結部を中心に下方へ回動すると、第1のリンク14の第1の縁部142が第2のリンク15の第2の縁部153へ接近し、第1の縁部142と第2の縁部153との間に挟持片163が挟まれる。図14及び図15に示すように、挟持片163は、屈曲部16から第1の縁部142及び第2の縁部153の間に延びている。したがって、ブレーキペダル支持装置1を組み立てる際に、微調整することができる。なお、挟持片163は、取付部材160とは別部材で造り、第1のリンク14の第1の縁部142と第2のリンク15の第2の縁部153との間に位置するように、第2のリンク15の接続片151と取付部材160の第2の部分162の間に挟み込んでもよい。
第4の実施形態のブレーキペダル支持装置1の上述以外の構成は、第3の実施形態のブレーキペダル支持装置1の構成と同じであり、第3の実施形態で説明したのと同じように動作及び機能し、同等の効果を奏する。
以上、第1から第4の実施形態を用いて本発明のブレーキペダル支持装置1について説明した。これらの実施形態は、本発明を実施するにあたって理解しやすくするための一例に過ぎず、これらの実施形態のみに限定されることを意図していない。したがって、本発明を実施するにあたってその趣旨を逸脱しない範囲で、各構成を同等の機能を有するものに置き換えて実施することも可能であり、それらもまた本発明に含まれる。また、各実施形態で説明した構成のいくつかを互いに組み合わせて、あるいは置き換えて実施することも本発明に含まれる。
また、本発明は、ブレーキペダルに限らず、同様の構造で取り付けられる他のペダル、例えば、パーキングブレーキを操作するフットペダルに適用することもできる。