JP6659502B2 - 内燃機関のピストン - Google Patents

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本開示は、内燃機関のピストンに関する。
内燃機関のピストンがシリンダの中で直線運動をするとき、コンロッドの運動によってピストンピンに直交する方向に側圧が生じる。側圧は、燃焼行程で生じる側(スラスト側)の方がその反対側(反スラスト側)よりも大きい。このような側圧に関連する強度や摩擦等を考慮して、ピストンを軽量化するための様々なスカートの構造が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のピストンでは、スラスト側スカート及び反スラスト側スカートのいずれか一方が、他方よりも、長い周長及び大きな曲率半径を有する。周長の短いスカートにおいては、曲率半径が小さいため、連結壁によって支持されて剛性の高い両端部がシリンダ内面に接触せず、摩擦抵抗が低減される。
また、特許文献2に記載のピストンでは、スラスト側スカートが、反スラスト側よりも短い周長を有し、ボス穴の側部を画成するリブがピストンピンの軸方向に延びている。特許文献2には、このような構造の構成のピストンにおいては、ピンボス領域やピストンヘッドの支持領域にほとんど亀裂が発生しないことが経験的に確認されたと記載されている。
特開2002−317691号公報 特開2014−25480号公報
しかしながら、所望の強度を確保した上で、ピストンを更に軽量化し、ピストンとシリンダとの摩擦力を低減することが求められている。本発明は、所定の強度を有し、かつ軽量化可能な内燃機関のピストンを提供することを目的とする。
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、内燃機関のピストン(1)であって、ピストンヘッド(2)と、前記ピストンヘッドのスラスト側及び反スラスト側から、それぞれ下方に延出するスラスト側スカート(3)及び反スラスト側スカート(4)と、前記両スカートの対向する側端同士を連結し、それぞれピストンピン穴(9)を備えた1対の連結壁(5,5)とを備え、前記両スカートの高さ方向についての少なくとも一部の領域において、横断面視で、前記反スラスト側スカートが、前記スラスト側スカートよりも長い周長を有し、前記1対の連結壁が、反スラスト側部分(11)において、スラスト側部分(10)よりも低い剛性を有することを特徴とする。更に、前記両スカートの高さ方向についての全ての領域において、横断面視で、前記反スラスト側スカートが、前記スラスト側スカートよりも長い周長を有してもよい。また、前記スラスト側スカート及び前記反スラスト側スカートの双方は、高さ方向の中間位置から上端側近傍まで上方に向かうに従って周長が長くなり、かつ前記中間位置から下端側近傍まで下方に向かうに従って周長が長くなるように、側縁において傾斜又は湾曲しているとよい。
この構成によれば、高い側圧に耐える必要があるスラスト側スカート及び連結壁のスラスト側部分の強度が高くなる。また、スラスト側スカートの周長が短いことにより、ピストンを軽量化できる。更に、強度は、肉厚と形状とに影響を受けるが、スラスト側においては、この構成の形状によって強度が高くなるため、必要な強度が高くない場合には、薄肉にしてピストンを軽量化できる。また、連結壁の反スラスト側部分の剛性が低いため、シリンダの内面に押し付けられた反スラスト側スカートが変形して、ピストンとシリンダとの間に生じる摩擦力を低減できる。なお、反スラスト側は、側圧が大きくないため、連結壁の反スラスト側部分の剛性を低くしても必要な強度を確保できる。
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、横断面視で、前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、前記スラスト側部分よりも湾曲の度合いが大きいことにより、上記構成における連結壁のスラスト側部分とスラスト側部分との剛性の違いを実現する。この湾曲形状は、本発明の少なくともいくつかの実施形態においては、前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、横断面視で、湾曲する凸面をもって互いに対向するように構成される。また、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、これら構成に代えて、又はこれら構成に加えて、横断面視で、前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、半径方向外向きに、前記スラスト側部分よりも大きく拡開することにより、連結壁のスラスト側部分とスラスト側部分との剛性の違いを実現する。
これらの構成によれば、連結壁の反スラスト側部分を薄肉にすることにより剛性を低下させる場合に比べて、強度の低下を抑制することができる。
本発明によれば、所望の強度を確保した上で、ピストンを軽量化し、ピストンとシリンダとの間の摩擦力を低減することができる。
本発明の実施形態に係るピストンの正面図 本発明の実施形態に係るピストンの底面図 本発明の実施形態に係るピストンの側面図 図1のIV−IV線に沿って示す横断面図
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る内燃機関のピストン1について説明する。
図1及び図2に示すように、内燃機関のシリンダ内を往復運動するピストン1は、ピストンヘッド2と、ピストンヘッド2の周縁から下方に延出する1対の横断面視円弧状のピストンスカート3,4と、1対のピストンスカート3,4を連結する1対の連結壁5,5と、ピストンヘッド2の下面に、概ねピストンピンPの軸方向に沿って延在するリブ6とを備える。ピストン1は、軽くて、強度があり、熱伝導性が高く、熱膨張率が鋼製のシリンダよりも高いアルミニウム合金等の金属を素材とする。ピストン1は、底面視で、ピストンピンPの軸方向に直交する方向(図2の紙面の左右方向)を軸にして概ね左右対称形をなすが、ピストンピンPの軸方向(図2の紙面の上下方向)を軸にすると、左右非対称である。
ピストンヘッド2は、概ね円板状又は一方の底面が有底な円筒状をなす。ピストンヘッド2の外周には、ピストンリング(図示せず)をはめ込む複数のリング溝7が設けられている。
図1〜図3に示すように、1対のピストンスカート3,4は、ピストンヘッド2のスラスト側から下方に延出するスラスト側スカート3と、ピストンヘッド2の反スラスト側から下方に延出する反スラスト側スカート4とからなる。スラスト側スカート3と反スラスト側スカート4とは、下方への延出長さは略等しく、肉厚も略等しい(図4参照)。また、スラスト側スカート3及び反スラスト側スカート4の双方は、高さ方向の中間位置で最も周長が短く、上端側では中間位置から上方向かうに従って周長が長くなり、下端側では中間位置から下方に向かうに従って周長が長くなるように、側縁が傾斜又は湾曲した鼓型をしている。
スラスト側スカート3と反スラスト側スカート4とは、大きさにおいて互いに相違する。1対のピストンスカート3,4の高さ方向についての全領域において、横断面視で、反スラスト側スカート4が、スラスト側スカート3よりも長い周長を有する。好ましくは、反スラスト側スカート4の周長は、どの高さにおいても、スラスト側スカート3の最も長い周長よりも長い。また、高さ方向について少なくとも一部の領域、例えば下端側の領域のみにおいて、横断面視で、反スラスト側スカート4が、スラスト側スカート3よりも長い周長を有するように変更してもよい。
1対の連結壁5,5は、その側端において、1対のピストンスカート3,4の互いに対向する側端同士を連結し、その上端において、ピストンヘッド2の下面に連結している。1対の連結壁5,5のスラスト側スカート3と連結した端部は、下端側においては、スラスト側スカート3の側縁に沿って延在し、上端側においては、スラスト側スカート3の下端側の側縁の延長線からスラスト側スカート3の上端側の側縁までの拡幅した幅を持って延在する(図4参照)。各々の連結壁5は、1対のピストンスカート3,4を連結する方向における中間部に、ピストン1とコンロッド(図示せず)とをつなぐためのピストンピンPを軸支するピストンピンボス8及びピストンピン穴9を有する。各々の連結壁5は、ピストンピンボス8及びピストンピン穴9よりもスラスト側に延在するスラスト側部分10と、ピストンピンボス8及びピストンピン穴9よりも反スラスト側に延在する反スラスト側部分11とを有する。各々の連結壁5のスラスト側部分10と反スラスト側部分11とは、互いに略等しい肉厚を有する。1対の連結壁5,5の互いに対向する内面は、下方に向かうにつれて互いに離間するように傾斜している。
1対のピストンスカート3,4がシリンダの内面に押し付けられたときに、反スラスト側スカート4がスラスト側スカート3よりも大きく変形するように、各々の連結壁5の反スラスト側部分11は、スラスト側部分10よりも低い剛性を有する。具体的には、図4に示すように、横断面視で、各々の連結壁5の反スラスト側部分11が、スラスト側部分10よりも湾曲の度合いが大きくなっている。横断面視で、スラスト側部分10は、略直線状であることが好ましい。横断面視で、反スラスト側部分11は、湾曲する凸面をもって互いに対向するように湾曲している。なお、横断面視で、反スラスト側部分11が、湾曲する凹面をもって互いに対向するように変更してもよい。
リブ6は、4つ設けられており、各々の連結壁5に設けられたピストンピンボス8の両側部から1つずつ、ピストンヘッド2の側周部の内面まで、底面視で直線状に延在している。ピストンピンPの配置領域を挟んで互いに対向する2つのリブ6,6は、ピストンヘッド2の側部の内面に向かうにつれて互いに離間するように配置されている。
次に、ピストン1の作用及び効果について説明する。
内燃機関を作動させると側圧が生じる。特に、燃焼行程においてスラスト側スカート3は、シリンダに大きな側圧を与える。スラスト側スカート3を支持する1対の連結壁5,5のスラスト側部分10が横断面視で略直線状に配置されて剛性が高く、かつスラスト側スカート3の周長が短いため、スラスト側スカート3は、大きな側圧に耐える高い強度を有する。
また、内燃機関を作動させていない状態では、ピストン1の外輪郭は、シリンダの内輪郭よりもわずかに小さいが、内燃機関を作動させると、ピストン1の熱膨張によって1対のピストンスカート3,4がシリンダに押し付けられる。反スラスト側スカート4を支持する1対の連結壁5,5の反スラスト側部分11がスラスト側部分10よりも横断面視で湾曲して剛性が低く、かつ反スラスト側スカート4の周長が長いため、反スラスト側スカート4は、スラスト側スカート3に比べて変形しやすい。反スラスト側は側圧が大きくないため、反スラスト側部分11は、その剛性を低くしても、必要な強度を確保できる。熱膨張及び側圧によってスラスト側スカート3及び反スラスト側スカート4がシリンダの内面に接触するとき、それぞれ、まず、周方向における中心において接触し、その後、両端部に向かって接触面積が増大するように変形する。この接触面積が増大する過程で、比較的小さな力で変形する反スラスト側スカート4が、スラスト側スカート3よりも大きく変形する。このようにピストン1の外輪郭の形状が調整されることにより、スラスト側スカート3及び反スラスト側スカート4とシリンダとの間の熱膨張に起因する力の増大が抑制され摩擦力を低減することができる。反スラスト側部分は、湾曲形状によって剛性を低くしているため、肉厚を薄くして剛性を低くする場合に比べて強度の低下を抑制できる。
スラスト側スカート3の周長が短いため、ピストン1を軽量化できる。また、1対のピストンスカート3,4並びに1対の連結壁5,5のスラスト側部分10及び反スラスト側部分11において、最も強度が必要なスラスト側スカート3及びスラスト側部分10が強度を高める支持形状を有するため、1対のピストンスカート3,4並びにスラスト側部分10及び反スラスト側部分11を薄肉にしても必要な強度を維持でき、ピストン1を軽量化できる。
また、スラスト側スカート3及び反スラスト側スカート4が、高さ方向の中間部において周長が短く、その中間部から上方及び下方に向かうにつれ周長が長くなっていることから、中間部が変形し易くなっている。そのため、コンロッドの運動がピストン1を傾けるようとする力は、スラスト側スカート3及び反スラスト側スカート4の中間部が変形することによって少なくとも部分的に吸収され、ピストン1とシリンダとの間の摩擦力を低減することができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。連結壁の反スラスト側部分がスラスト側部分よりも湾曲していることに代えて、又は湾曲していることに加えて、横断面視で、反スラスト側部分が半径方向外向きにスラスト側部分よりも大きく拡開していることにより、又は、反スラスト側部分の肉厚がスラスト側部分よりも薄いことにより、反スラスト側部分の剛性をスラスト側部分よりも小さくしてもよい。
1:ピストン
2:ピストンヘッド
3:スラスト側スカート
4:反スラスト側スカート
5:連結壁
6:リブ
7:リング溝
8:ピストンピンボス
9:ピストンピン穴
10:連結壁のスラスト側部分
11:連結壁の反スラスト側部分
P:ピストンピン

Claims (5)

  1. 内燃機関のピストンであって、
    ピストンヘッドと、
    前記ピストンヘッドのスラスト側及び反スラスト側から、それぞれ下方に延出するスラスト側スカート及び反スラスト側スカートと、
    前記両スカートの対向する側端同士を連結し、それぞれピストンピン穴を備えた1対の連結壁とを備え、
    前記両スカートの高さ方向についての少なくとも一部の領域において、横断面視で、前記反スラスト側スカートが、前記スラスト側スカートよりも長い周長を有し、
    前記1対の連結壁が、反スラスト側部分において、スラスト側部分よりも低い剛性を有し、
    前記スラスト側スカート及び前記反スラスト側スカートの双方は、高さ方向の中間位置から上端側近傍まで上方に向かうに従って周長が長くなり、かつ前記中間位置から下端側近傍まで下方に向かうに従って周長が長くなるように、側縁において傾斜又は湾曲していることを特徴とする内燃機関のピストン。
  2. 横断面視で、前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、前記スラスト側部分よりも湾曲の度合いが大きいことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のピストン。
  3. 前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、横断面視で、湾曲する凸面をもって互いに対向することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のピストン。
  4. 横断面視で、前記1対の連結壁の前記反スラスト側部分が、半径方向外向きに、前記スラスト側部分よりも大きく拡開することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のピストン。
  5. 前記両スカートの高さ方向についての全ての領域において、横断面視で、前記反スラスト側スカートが、前記スラスト側スカートよりも長い周長を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のピストン。
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