JP6658603B2 - 溶接部検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は溶接部検査装置に係る。特に、本発明は、溶接部に超音波を照射し、その反射波(反射エコー)に基づいて溶接部の検査を行うための溶接部検査装置の改良に関する。
従来、自動車等の車体におけるスポット溶接部の溶接品質の良否を検査する装置として、超音波を利用した溶接部検査装置が知られている。この溶接部検査装置は、スポット溶接部に超音波を照射し、この超音波の反射波に基づいて(例えば反射波の強度や、反射波から作成されたスポット溶接部の画像データ等に基づいて)スポット溶接部の溶接品質の良否を検査するためのものである。
また、特許文献1には、この種の溶接部検査装置において、超音波の発振部を備えた検出器をフローティング機構によって支持することが開示されている。具体的には、多関節ロボットに取り付けられた固定板と検出器が取り付けられた可動板との間にコイルスプリングを介在させた構成としている。これにより検出器を弾性支持したフローティング機構を実現している。つまり、溶接品質の検査精度を高く得るためにはスポット溶接部の表面に対して直交方向から検出器を当接させる必要があるが、前記フローティング機構を採用することにより、スポット溶接部の表面に対して検出器が傾いている場合であっても、検出器がスポット溶接部の表面に当接した際の該表面からの反力によって検出器の向きを変化させることができ、これによりスポット溶接部の表面に対して直交方向から検出器を当接させることを可能にしている。
特開2013−22605号公報
一般に、溶接部検査装置にあっては、前記検出器は超音波の発振部であるプローブの先端に音響伝播媒体としてのシューが取り付けられて構成され、このシューをスポット溶接部の表面に当接させて前述した溶接品質の検査が行われる。このシューは、超音波の透過性に優れた材料であって、例えばアクリル樹脂等によって形成されている。このようにシューは、スポット溶接されている金属板(鋼板)よりも硬度が低い材料によって形成されている。
このため、前記検査が多数回に亘って行われた際には、シューの先端面に摩耗が生じてしまう可能性がある。例えば、シューの先端面に微小な凹凸(所謂ザラツキ)が生じたり、シューの先端面に偏摩耗が生じたりすることがある。このような摩耗が生じた場合、シューの先端面とスポット溶接部の表面との接触状態が良好に得られず、検査精度に悪影響を与えてしまうことになる。例えば、スポット溶接部の表面に対してプローブおよびシューが傾いている場合には前記フローティング機構によってプローブおよびシューの向きを変化させることになるが、この場合、シューの先端面の一部がスポット溶接部の表面に片当たりすることに起因して前記偏摩耗等が生じてしまう可能性がある。このため、従来の溶接部検査装置にあってはシューの長寿命化を図ることが難しく、シューの交換頻度が多くなってしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音響伝播媒体(シュー)の先端面の摩耗を抑制することが可能な溶接部検査装置を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、超音波を発振するプローブおよび該プローブの先端に取り付けられた音響伝播媒体を備え、金属板の溶接部に前記音響伝播媒体の先端面を対向させた状態で、前記プローブから発振された超音波を、前記音響伝播媒体を経て前記溶接部に照射し、この超音波の反射波に基づいて前記溶接部の検査を行うための溶接部検査装置を前提とする。そして、この溶接部検査装置は、前記プローブおよび前記音響伝播媒体が、弾性支持機構によって装置本体に弾性支持されており、前記金属板よりも硬度の高い材料で成り且つ少なくとも前記音響伝播媒体の側方に位置するガイド部材を備えており、該ガイド部材には、前記音響伝播媒体の前記先端面よりも突出して成る突出部分が当該ガイド部材における外縁部の複数箇所に設けられており、前記弾性支持機構は、前記装置本体と前記ガイド部材との間に介在され且つ一端が前記ガイド部材に当接するコイルスプリングを備えており、前記ガイド部材における前記複数の突出部分のうち一部の突出部分のみが前記金属板の表面に当接した場合に、全ての突出部分が前記金属板の表面に当接するように前記コイルスプリングが弾性変形して前記プローブおよび前記音響伝播媒体が姿勢変化する構成となっていることを特徴とする。
この特定事項により、音響伝播媒体の先端面を溶接部に対向させた状態で行われる溶接部の検査時には、ガイド部材の一部(音響伝播媒体の先端面よりも突出している部分;突出部分)が溶接部の表面に当接されることになり、音響伝播媒体の先端面が溶接部の表面に直接的に当接することはない。このため、この検査が多数回に亘って行われても音響伝播媒体の先端面に摩耗が生じてしまうことは回避され、音響伝播媒体の先端面にザラツキが生じたり偏摩耗が生じたりすることが抑制されて、検査精度を高く維持することができる。従って、音響伝播媒体の長寿命化を図ることができ、音響伝播媒体の交換頻度を大幅に少なくしたり、または、音響伝播媒体の交換の必要を無くしたりすることができる。
また、ガイド部材が溶接部の表面に当接される場合、このガイド部材の複数箇所に配置された突出部分(音響伝播媒体の先端面よりも突出しているガイド部材の一部)それぞれが溶接部の表面に当接することになる。そして、これら突出部分は、ガイド部材における外縁部の複数箇所に配置されていることから、音響伝播媒体の中心に対してある程度の距離がある。このため、溶接部の表面に対して音響伝播媒体およびプローブが傾いている場合に、前記突出部分が溶接部の表面に当接した際の該表面から受ける反力を大きく得ることができて、前記弾性支持機構により音響伝播媒体およびプローブの向きを容易に変化させることができる。つまり、音響伝播媒体およびプローブを溶接部の表面に対して直交する姿勢とすることができる。従って、前記突出部分に、音響伝播媒体の保護機能(音響伝播媒体の先端面を溶接部の表面に当接させないことによる音響伝播媒体の摩耗防止機能)と、音響伝播媒体およびプローブを溶接部の表面に対して直交する姿勢にする機能(調芯機能)とを備えさせることができる。
また、前記音響伝播媒体の前記先端面は矩形状であり、前記音響伝播媒体の前記先端面よりも突出している前記ガイド部材の一部は、前記音響伝播媒体の前記先端面における4つの角部それぞれに隣接した外側位置に配置されていることが好ましい。
溶接部の表面には溶接時に生じた凹凸部分が存在していることがある。例えばスポット溶接が行われたものにあっては溶接機の電極による挟持に起因する打痕が凹凸部分として存在している。ガイド部材の突出部分(音響伝播媒体の先端面よりも突出しているガイド部材の一部)のうちの一つがこの凹凸部分(特に凸部分)に当接する状況では、音響伝播媒体およびプローブを溶接部の表面に対して直交する姿勢にすることが難しくなる。このため、前記突出部分としては、溶接部の表面に存在する凹凸部分に当接しないようにするためには個数は少ない方が好ましいが、一方では、前記調芯機能を十分に発揮させるためには個数は多い方が好ましい。これらの点に鑑み、本解決手段では、十分な調芯機能を得ることができる範囲内で突出部分の個数をできるだけ少なくして、溶接部の表面に存在する凹凸部分に突出部分が当接し難くなるように、矩形状の音響伝播媒体の先端面における4つの角部それぞれに隣接した外側位置に各突出部分を配置させている。これにより、十分な調芯機能を得て、音響伝播媒体およびプローブを溶接部の表面に対して直交する姿勢にすることが可能になる。
また、前記溶接部検査装置の使用形態としては、多関節ロボットのアーム先端部に取り付けられ、前記溶接部の検査時には、前記多関節ロボットの作動によって前記音響伝播媒体の前記先端面が前記溶接部に対向されるようになっていることが挙げられる。
このように多関節ロボットのアーム先端部に溶接部検査装置を取り付けて溶接部の検査を行う場合、前記ガイド部材を備えていない従来の溶接部検査装置にあっては、音響伝播媒体が比較的高い速度で溶接部の表面に当接する可能性がある。例えば多関節ロボットのティーチングが適正に行われなかった場合などである。この場合、音響伝播媒体の破損が懸念される状況となる。これに対し、本発明では前記ガイド部材を備えさせ、音響伝播媒体が溶接部の表面に直接的に当接することがないものとなっているので、仮に多関節ロボットのティーチングが適正に行われなかった場合であっても、音響伝播媒体の破損を抑制することができる。つまり、前記ガイド部材を備えさせたことにより、多関節ロボットを利用した溶接部検査の自動化の実用性を高めることができる。
また、前記ガイド部材を前記溶接部の表面に当接させた際に前記音響伝播媒体の前記先端面と前記溶接部の前記表面との間に形成される空間の容積量よりも多い量のジェルを前記溶接部の前記表面に塗布しておくジェル塗布手段を備えさせることが好ましい。
前記ガイド部材の一部が音響伝播媒体の先端面よりも突出していることにより、溶接部の検査時には音響伝播媒体の先端面と溶接部の表面との間には空間が形成されることになる。そして、音響伝播媒体の先端面と溶接部の表面との間に空気が存在すると、溶接部への超音波の照射が適正に行えなくなる場合があるため、この両者間にジェルを介在させる必要がある。本解決手段では、前記空間をジェルで満たすべく、ジェル塗布手段を備えさせ、このジェル塗布手段によるジェルの塗布量を、前記空間の容積量よりも多い量に設定している。これにより、音響伝播媒体の先端面と溶接部の表面との間に空気が存在することを抑制でき、溶接部への超音波の照射が適正に行え、検査精度を高く得ることができる。
本発明では、溶接部検査装置の音響伝播媒体の側方に位置するガイド部材を備えさせ、このガイド部材の一部を音響伝播媒体の先端面よりも突出させている。これにより、音響伝播媒体が溶接部の表面に直接的に当接することがなくなり、音響伝播媒体の先端面に摩耗が生じてしまうことを回避できる。その結果、音響伝播媒体の長寿命化を図ることができ、音響伝播媒体の交換頻度を大幅に少なくしたり、または、音響伝播媒体の交換の必要を無くしたりすることができる。
実施形態に係る溶接部検査装置の斜視図である。 実施形態に係る溶接部検査装置の一部を破断した正面図である。 実施形態に係る溶接部検査装置の側面図である。 実施形態に係る溶接部検査装置の組み立て作業を説明するための図である。 プローブガイドの斜視図である。 プローブクランプの斜視図である。 シューおよびプローブガイドの先端部分の斜視図である。 溶接部検査装置が多関節ロボットに取り付けられた状態を示す斜視図である。 シューおよびプローブガイドの先端部分の正面図であって、図9(a)はプローブガイドの先端がスポット溶接部の表面に当接した時点の状態を、図9(b)はフローティング機構による自動調芯が行われた状態をそれぞれ示す図である。 フローティング機構による自動調芯が行われた状態を示す図2相当図である。 車体のスポット溶接部の検査を行っている状態を示す斜視図である。 車体パネルの凹部に位置するスポット溶接部に対して溶接部検査装置による検査を行う場合を説明するための図である。 変形例1における図7相当図である。 変形例2における図7相当図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車の車体製造ライン上での検査工程においてスポット溶接部の溶接品質を検査するための溶接部検査装置として本発明を適用した場合について説明する。
−溶接部検査装置の全体構成の説明−
先ず、本実施形態に係る溶接部検査装置の全体構成について説明する。図1は溶接部検査装置1の斜視図である。図2は溶接部検査装置1の一部を破断した正面図である。図3は溶接部検査装置1の側面図である。図4は溶接部検査装置1の組み立て作業を説明するための図である。
以下では、溶接部検査装置1の中心線O(図2の一点鎖線を参照)に沿う方向(図2における上下方向)をZ方向とする。また、このZ方向に直交する方向であって溶接部検査装置1の幅方向(図2における左右方向)をX方向とする。また、前記Z方向に直交する方向であって溶接部検査装置1の厚さ方向(図3における左右方向)をY方向とする。そして、前記Z方向において図2の下側をZ1方向と呼び、図2の上側をZ2方向と呼ぶ。また、前記X方向において図2の右側をX1方向と呼び、図2の左側をX2方向と呼ぶ。また、前記Y方向において図3の右側をY1方向と呼び、図3の左側をY2方向と呼ぶ。また、以下では、溶接部検査装置1が図1〜図4の姿勢にあるときの下側の面を下面と呼び、下側を下方と呼ぶこととする。
図1〜図4に示すように溶接部検査装置1は、1個のベースブラケット(装置本体)2、2個のガイドブラケット3,3、1個の超音波検査ユニット4、2個のプローブガイド5,5、2個のプローブクランプ6,6、1個のコイルスプリング7、および、1個のジェル塗布装置8が一体的に組み付けられて構成されている。そして、この溶接部検査装置1は、超音波検査ユニット4からスポット溶接部(金属板(鋼板)の溶接部)に超音波を照射し、この超音波の反射波(反射エコー)に基づいてスポット溶接部の溶接品質に係る情報を出力するものとなっている。以下、この溶接部検査装置1を構成する各部材について説明する。
(ベースブラケット)
ベースブラケット2は、ベースプレート21およびベースブラケット本体22を備えている。
ベースプレート21は、後述する多関節ロボット100(図8を参照)のアーム先端部101に取り付けられる部分であって、略直方体形状で成っている。また、このベースプレート21には、多関節ロボット100のアーム先端部101にボルト止めするためのボルトB1,B1,…がねじ込まれるボルト孔21a,21a,…が板厚方向(Z方向)に沿って貫通形成されている。なお、図2および図3では、ベースプレート21が取り付けられる多関節ロボット100のアーム先端部101および前記ボルトB1,B1,…をそれぞれ仮想線で示している。
ベースブラケット本体22は、前記ベースプレート21の下側(Z1方向側)に連続する部分であって、その各側面(X1方向側およびX2方向側にそれぞれ位置する側面)22a,22aにおける前記Y方向の中央部分には上下方向(Z方向)に沿って延びる凸部22b,22bがそれぞれ設けられている。また、これら凸部22b,22bの中央部分(Y方向における中央部分)には上下方向に亘る3箇所にボルト孔22c,22c,22c(図4を参照)がX方向に沿って貫通形成されている。また、このベースブラケット本体22の下面(Z1方向側に位置する面)には、後述するコイルスプリング7の上端部(研削されたクローズドエンド形状の上端部)が嵌め込まれる溝22d(図2および図3を参照)が形成されている。
そして、前記ベースプレート21およびベースブラケット本体22には、これら両者に亘って中心線Oに沿う方向(Z方向)に貫通し前記超音波検査ユニット4を挿通するためのユニット挿通孔23が形成されている。
(ガイドブラケット)
ガイドブラケット3は、前記ベースブラケット本体22の側面22aに組み付けられる部材であって、ベースブラケット本体22に対向する内側面に、ベースブラケット本体22の側面22aに設けられている前記凸部22bが嵌り込む凹部3a(図4を参照)が形成されている。また、このガイドブラケット3には、前記ベースブラケット本体22に形成されているボルト孔22c,22c,22cに対応するボルト挿通孔3b,3b,3bが形成されている。そして、このボルト挿通孔3b,3b,3bがベースブラケット本体22のボルト孔22c,22c,22cに位置合わせされ、このボルト挿通孔3b,3b,3bにボルトB2,B2,B2が挿通されると共に、このボルトB2,B2,B2がボルト孔22c,22c,22cにねじ込まれることによって各ガイドブラケット3,3がベースブラケット2の側面22a,22aにそれぞれ組み付けられている。
また、このガイドブラケット3の長手方向(Z方向)の寸法は前記ベースブラケット本体22の長手方向の寸法よりも長く設定されている。また、各ガイドブラケット3,3がベースブラケット本体22に組み付けられた状態では、各ガイドブラケット3,3の上面位置はベースブラケット本体22の上端位置に一致している。このため、各ガイドブラケット3,3の下側部分はベースブラケット2の下端よりも下側(Z1側)に延びている。以下、この下側に延びている部分をガイドブラケット3の延長部31と呼ぶこととする。
図2において一部を破断して示すように、ガイドブラケット3の延長部31の下部における内側面(中心線O側に向いている内側面)には、下側(Z1側)に向かうに従って内側に傾斜する傾斜面31a、および、この傾斜面31aの下端から水平方向内側に延びるストッパ面31bが形成されている。この傾斜面31aおよびストッパ面31bは、前記超音波検査ユニット4の抜け止め機能や位置決め機能を発揮する部分である(これら機能については後述する)。
(超音波検査ユニット)
超音波検査ユニット4は、プローブ(超音波トランスデューサ)41、シュー42および信号ケーブル43を備えている。
プローブ41は、直方体形状のプローブ本体41aと、このプローブ本体41aの上側に一体形成され且つ前記信号ケーブル43が接続されるコネクタ部41bとを備えている。プローブ本体41aの内部には、多数の圧電振動素子がマトリクス状に整列配置された基板が収容されている。各圧電振動素子には、図示しないコントローラで発生した作動信号が前記信号ケーブル43を経て送信され、この作動信号に従って各圧電振動素子が作動して超音波を発振するようになっている。
また、プローブ41の下面(Z1方向側に位置する面)は長方形状である。また、このプローブ41の下面は正方形状や円形状であってもよい。
シュー42は、プローブ41の先端にネジ止め等によって取り付けられた本発明でいう音響伝播媒体であって、超音波の透過性に優れた材料によって形成されている。例えばアクリル樹脂等によって形成されている。このシュー42は、前記プローブ41の先端に取り付けられる直方体形状のベース部42aと、このベース部42aの下側(Z1側)に連続する四角錐台形状の先端部42bとを有している。このシュー42の上面(ベース部42aの上面)の形状はプローブ41の下面の形状に合致している。つまり長方形状となっている。また、このシュー42の上面は正方形状や円形状であってもよい。また、前記先端部42bは、先端側に向かって先細りとなる形状(前記四角錐台形状)となっており、その先端面42c(シュー42の下面)は正方形状であって、例えば一辺が10mmとなっている。この一辺の寸法はこれに限定されるものではない。また、このシュー42の先端面42cは長方形状や円形状であってもよい。
信号ケーブル43は、前記コントローラと前記プローブ41との間を接続してこれらの間で信号の送受信を行う。つまり、プローブ41の各圧電振動素子に前記作動信号を送信したり、各圧電振動素子が受信した反射エコーに基づく電気信号をコントローラに送信したりする。
なお、コントローラでは、反射エコーの電気信号を信号検出回路を経て信号処理部に送り、この信号処理部で並列演算処理を行い、検査対象であるスポット溶接部の溶接品質の良否が判定され、その判定結果が出力されるようになっている。
(プローブガイド)
本実施形態において特徴とする部材であるプローブガイド5は、プローブ41およびシュー42の側面(X1方向側およびX2方向側にそれぞれ位置する側面)を覆う部材である。図5は一方のプローブガイド5の斜視図である。このプローブガイド5は左右一組で構成され、各プローブガイド5,5によってプローブ41およびシュー42の左右両側面が覆われている。
図5に示すように、プローブガイド5は、プローブ41の側面を覆うプローブガイド部51(図5における一点鎖線よりも上側の部分)と、このプローブガイド部51の下側に連続し、シュー42の側面を覆うシューガイド部52(図5における一点鎖線よりも下側の部分)と、前記プローブガイド部51の上側に連続し、前記ガイドブラケット3に係止される係止部53とを備えている。
プローブガイド部51は、平板状で成り、その側面の形状(X方向から見た形状)は前記プローブ41のプローブ本体41aの側面の形状に略合致している。そして、このプローブガイド部51がプローブ41のプローブ本体41aの側面に重ね合わされることで、このプローブ本体41aの側面の全体がプローブガイド部51によって覆われている。
シューガイド部52は、シュー42のベース部42aおよび先端部42bそれぞれの側面に重ね合わされることで、シュー42の側面の全体を覆っている。つまり、このシューガイド部52は、シュー42のベース部42aの側面に沿う平板状の平板部52aと、シュー42の先端部42bの側面に沿うように平板部52aの下端から中心線O側に向かって傾斜する傾斜板部52bとを有している。
係止部53は、前記プローブ41のコネクタ部41bを把持するホールド部53aと、前記ガイドブラケット3に形成された前記傾斜面31aおよびストッパ面31bに当接することで超音波検査ユニット4の抜け止めおよび位置決めを行う位置決め部53bとを備えている。
前記ホールド部53aは、その内面53g(図5においてX1方向側に位置する面)がプローブガイド部51の内面よりもコネクタ部41b側(X1方向側)に位置するように突出している。このホールド部53aの突出寸法は、コネクタ部41bの側面に対するプローブ本体41aの側面の突出寸法に略一致している。このため、プローブガイド部51がプローブ本体41aの側面に重ね合わされた状態では、ホールド部53aの内面53gがコネクタ部41bの側面に当接することになる。プローブガイド5は左右一組で構成されているため、各プローブガイド5,5がプローブ41およびシュー42の側面に当接した状態では、各プローブガイド5,5のホールド部53a,53aの内面53g,53gがコネクタ部41bの側面にそれぞれ当接することにより、これらプローブガイド5,5のホールド部53a,53aによってコネクタ部41bが左右両側(X方向の両側)から挟持されることになる(図2を参照)。また、このホールド部53aの外面53f(図5においてX2方向側に位置する面)は平面視(Z方向から見た形状)が円弧形状とされている。この外面53fの円弧の半径は後述するコイルスプリング7の内周部の半径に略一致されており、ホールド部53aにコイルスプリング7の下端部が嵌め込まれた状態で、コイルスプリング7の内周部が外面53fに当接することでコイルスプリング7の位置決めがなされるようになっている。
前記位置決め部53bは、プローブガイド部51の外面よりも外側(ガイドブラケット3側)に向けて突出している。そして、この位置決め部53bは、水平方向に延びる下面53cを有していると共に、この下面53cの外側端から外側に向かって上方に傾斜する傾斜面53dを有している。この傾斜面53dの傾斜角度(下面53cに対する傾斜角度)は、前記ガイドブラケット3の延長部31の内側面に形成されている前記傾斜面31aの傾斜角度(ストッパ面31bに対する傾斜角度)に略一致している。このため、図2に示すように位置決め部53bの下面53cが、ガイドブラケット3のストッパ面31bに当接した状態では、位置決め部53bの傾斜面53dがガイドブラケット3の傾斜面31aに沿うことになる。つまり、下面53cとストッパ面31bとが当接することによって超音波検査ユニット4の抜け止め機能(プローブ41がガイドブラケット3,3から抜け落ちることを防止する機能)が発揮されると共に、傾斜面53dと傾斜面31aとが当接することによって超音波検査ユニット4のプローブ41およびシュー42の中心線が溶接部検査装置1の中心線Oに一致する位置決め機能が発揮されるようになっている。また、位置決め部53bの上面53eは、コイルスプリング7の下端部(研削されたクローズドエンド形状の下端部)が当接されるスプリング受け座として構成されている。
また、プローブガイド5には、前記プローブガイド部51およびシューガイド部52に亘る上下方向(Z方向)の3箇所にボルト孔54,54,54がY方向に沿って貫通形成されている。
また、プローブガイド5は、自動車の車体を構成する金属板(鋼板)よりも硬度の高い材料で形成されている。例えばステンレスによって形成されている。このプローブガイド5の材料はこれに限定されるものではなく適宜設定される。
このようにプローブガイド5は、プローブ41およびシュー42の側面を覆っており、このプローブガイド5が本発明でいうガイド部材(溶接部の金属板よりも硬度の高い材料で成り且つ少なくとも音響伝播媒体の側方に位置するガイド部材)に相当することになる。
(プローブクランプ)
プローブクランプ6は、プローブ41の前面(Y2方向側に位置する面)および後面(Y1方向側に位置する面)を覆う部材である。図6は一方のプローブクランプ6の斜視図である。このプローブクランプ6は、前記一対のプローブガイド5,5同士を連結し、これによって各プローブガイド5,5をプローブ41に離脱不能に組み付けるためのものである。
具体的に、このプローブクランプ6は、前記プローブ本体41aの前面および後面の形状に略合致する平板部61と、この平板部61におけるX方向の外側に一体形成された締結部62,62とを備えている。締結部62,62には、前記プローブガイド5,5に形成されているボルト孔54,54,54に対応するボルト挿通孔62a,62a,62aが形成されている。そして、このボルト挿通孔62a,62a,62aがプローブガイド5のボルト孔54,54,54に位置合わせされ、このボルト挿通孔62a,62a,62aにボルトB3,B3,B3(図4を参照)が挿通されると共に、このボルトB3,B3,B3がボルト孔54,54,54にねじ込まれることによって各プローブクランプ6,6が各プローブガイド5,5同士の間に跨って組み付けられている。この状態では、各プローブガイド5,5と各プローブクランプ6,6とが連結されていることで、これらプローブガイド5,5およびプローブクランプ6,6が、プローブ41およびシュー42の外周囲を覆った状態で一体的に組み付けられている。
また、プローブクランプ6における平板部61の上部には、この平板部61に対して直交方向(Y方向の外側)に突出するスプリング受け座63が形成されている。このスプリング受け座63は、その外縁が前記コイルスプリング7の外縁形状に沿う円弧形状となっている。
(プローブガイドの突起)
本実施形態の特徴は、前記プローブガイド5の先端部に突起55,55が設けられている点にある。以下、具体的に説明する。
図7は、シュー42およびプローブガイド5の先端部分の斜視図である。この図7に示すように、プローブガイド5の先端部56における、その長手方向(Y方向)の両端部(Y1方向側の端部およびY2方向側の端部)それぞれに直方体形状の突起55,55が一体に設けられている。この突起55は、プローブガイド5の先端部56の幅方向(X方向)の寸法に一致する寸法の一辺を有する正方形の先端面55aを有している。
また、プローブガイド5の先端部56の位置(突起55が設けられていない先端部56のZ方向の位置)は、このプローブガイド5がプローブクランプ6に組み付けられてシュー42の側面を覆っている状態において、シュー42の先端面42cよりも上側(Z2方向側)の位置にある。つまり、図7における寸法t1だけ、シュー42の先端面42cの方がプローブガイド5の先端部56よりも下側(Z1側)に位置している。そして、前記突起55,55の高さ寸法(Z方向の寸法)は、前記寸法t1よりも長く設定されており、これによって突起55,55の先端面55aはシュー42の先端面42cよりも下側(Z1側)に位置している。つまり、突起55,55の先端部分はシュー42の先端面42cよりも突出している。この突出寸法(図7における寸法t2)としては、スポット溶接部の表面に存在している微小な凹凸部分(溶接機の電極による挟持に起因する打痕による凹凸部分)の高さ寸法(特に凸部の高さ寸法)よりも大きく設定されている。具体的にはシュー42の先端面42cからの突出寸法が0.4mmとなるように突起55,55の高さ寸法は設定されている。また、各突起55,55の高さ寸法は互いに一致している。この寸法は前記の値に限定されることなく適宜設定される。このような構成により、本発明でいう「ガイド部材の一部が、音響伝播媒体の先端面よりも突出している」構成を実現している。つまり、前記突起55,55においてシュー42の先端面42cよりも突出している部分(突出寸法t2の部分)が本発明でいう「音響伝播媒体の先端面よりも突出しているガイド部材の一部(突出部分)」となっている。
また、前記プローブガイド5におけるシューガイド部52の傾斜板部52b(図5を参照)は、下側(Z1側)に向かって幅方向(Y方向)の寸法が次第に小さくなっており、X方向から見た形状が略台形状となっている(図3を参照)。そして、この台形の斜辺に相当する傾斜板部52bの側縁の傾斜角度(図3における角度α1)は、シュー42の先端部42bの側面(図3において破線で示す先端部42bの側面)の斜辺の傾斜角度よりも小さくなっている(シュー42の先端部42bの側面の斜辺よりも垂直に近い角度となっている)。このため、シューガイド部52の下端部分の幅寸法(Y方向の幅寸法;図3における寸法t3)はシュー42の先端面42cの一辺の寸法(図3に破線で示すシュー42の先端部42bの下端の幅寸法t4)よりも大きくなっている。そして、前記突起55,55は、プローブガイド5の先端部56における、その長手方向(Y方向)の両端部に配置されていることから、これら突起55,55は、シュー42の先端面42cの各辺よりも外側の位置に配置されている。より具体的には、シュー42の先端面42cの角部と突起55の角部とが当接するように各突起55,55,…は配置されている(図7を参照)。このようにして、各突起55,55,…は、シュー42の先端面42cにおける4つの角部それぞれに隣接した外側位置に配置されている。
このように、各突起55,55,…をシュー42の先端面42cにおける4つの角部それぞれに隣接した外側位置に配置した理由は以下のとおりである。つまり、スポット溶接部の表面には前述したように溶接時に生じた凹凸部分が存在していることがある。例えば溶接機の電極による挟持に起因する打痕が凹凸部分として存在している。プローブガイド5,5の先端部56,56に設けられた複数の突起55,55,…のうちの一つがこの凹凸部分(特に凸部分)に当接する状況では、シュー42およびプローブ41をスポット溶接部の表面に対して直交する姿勢にすることが難しくなる。このため、突起55,55,…としては、スポット溶接部の表面に存在する凹凸部分に当接しないようにするためには個数は少ない方が好ましいが、一方では、後述する調芯機能(コイルスプリング7によるフローティング機構9によって、シュー42およびプローブ41をスポット溶接部の表面に対して直交する姿勢にする機能)を十分に発揮させるためには個数は多い方が好ましい。これらの点に鑑み、本実施形態では、十分な調芯機能を得ることができる範囲内で突起55,55,…の個数をできるだけ少なくして、スポット溶接部の表面に存在する凹凸部分に突起55,55,…が当接し難くなるように、シュー42の先端面42cにおける4つの角部それぞれに隣接した外側位置に各突起55,55,…を配置させている。これにより、十分な調芯機能を得て、シュー42およびプローブ41をスポット溶接部の表面に対して直交する姿勢にすることを可能にしている。
(コイルスプリングによるフローティング機構)
次に、前記コイルスプリング7を利用することでプローブ41およびシュー42をベースブラケット(装置本体)2に弾性支持するフローティング機構(弾性支持機構)9について説明する。前述したようにプローブガイド5,5の位置決め部53b,53bはガイドブラケット3,3の下端部に係止されている。つまり、プローブガイド5,5はガイドブラケット3,3に固定されていない。そして、前記ベースブラケット2のベースブラケット本体22と、プローブクランプ6のスプリング受け座63の上面および位置決め部53bの上面53eとの間にコイルスプリング7が圧縮された状態で介在されている(図1〜図3を参照)。このため、超音波検査ユニット4は、コイルスプリング7から下向きの付勢力を受けながら、この付勢力に抗して変位することが可能となっており、これによりフローティング機構9が構成されている。
つまり、プローブガイド5等に外力が作用していない場合には、前記コイルスプリング7の付勢力により、プローブガイド5の位置決め部53bの下面53cがガイドブラケット3のストッパ面31bに当接(押圧)されると共に、位置決め部53bの傾斜面53dがガイドブラケット3の傾斜面31aに当接(押圧)されることによって(図2を参照)、超音波検査ユニット4のプローブ41およびシュー42の中心線が溶接部検査装置1の中心線Oに一致した状態で超音波検査ユニット4が位置決めされる。これに対し、プローブガイド5等に外力が作用した場合(プローブガイド5がスポット溶接部の表面に当接することで外力が作用した場合)には、その外力によってコイルスプリング7が弾性変形し、プローブガイド5の位置決め部53bの下面53cがガイドブラケット3のストッパ面31bから離れたり、位置決め部53bの傾斜面53dがガイドブラケット3の傾斜面31aから離れたりすることによって超音波検査ユニット4のプローブ41およびシュー42の姿勢を変化させることが可能となっている。つまり、プローブ41およびシュー42の中心線を溶接部検査装置1の中心線Oに対して傾斜させることが可能となっている(図10を参照)。
(ジェル塗布装置)
スポット溶接部の溶接品質を検査する際に、シュー42の先端面42cとスポット溶接部の表面との間に空気が存在すると、スポット溶接部への超音波の照射が適正に行えなくなる場合があるため、この両者間にジェルを介在させる必要がある。このため、本実施形態に係る溶接部検査装置1は、このジェルをスポット溶接部の表面に塗布するためのジェル塗布装置(ジェル塗布手段)8を備えている。
このジェル塗布装置8は、所定量のジェルをスポット溶接部の表面に塗布するものであって、一方側(X1方向側)のガイドブラケット3に取り付けられた支持ブラケット81にジェルノズル82が支持された構成となっている。ジェルノズル82の先端部(ジェルの吐出口)はプローブガイド5の先端部近傍に位置している。また、このジェルノズル82には図示しないジェル供給管が接続されており、図示しないポンプから圧送されたジェルが、電磁弁の開閉動作に応じて、ジェル供給管からジェルノズル82に導入されて、スポット溶接部の表面に向けて所定量だけ塗布されるようになっている。
このジェル塗布装置8からスポット溶接部の表面に塗布されるジェルの量は、プローブガイド5,5の突起55,55,…をスポット溶接部の表面に当接させた際にシュー42の先端面42cとスポット溶接部の表面との間に形成される空間の容積量よりも所定量だけ多い量に設定されている。これは、前記空間に空気を存在させないためである。つまり、本実施形態では、プローブガイド5の先端部56に突起55,55が設けられていることから、シュー42の先端面42cとスポット溶接部の表面との間には空間(従来技術にあっては生じていなかった空間)が形成されることになる。そして、前述したようにこの両者間に空気が存在すると、スポット溶接部への超音波の照射が適正に行えなくなる場合があるため、この両者間にジェルを介在させる必要がある。本実施形態では、この空間をジェルで満たすべく、このジェルの塗布量は、前記空間の容積量よりも多い量に設定されている。これにより、シュー42の先端面42cとスポット溶接部の表面との間に空気が存在することを抑制し、スポット溶接部への超音波の照射を適正に行って、検査精度を高く得ることができるようにしている。このジェルを塗布するタイミングおよびジェルの塗布量を調整するための電磁弁の開閉動作は前記コントローラからの制御信号に基づいて行われる。
−溶接部検査装置の組み立て作業−
ここで、前記溶接部検査装置1の組み立て作業について簡単に説明する。この組み立て作業では、図4に示すように、ベースブラケット2のユニット挿通孔23に対し上側から超音波検査ユニット4のプローブ41およびシュー42を挿通させておく。そして、コイルスプリング7の内側にプローブ41およびシュー42を通過させ、このコイルスプリング7の上端部を、ベースブラケット本体22の下面に形成されている溝22d(図2を参照)に嵌め込む。
そして、プローブ41およびシュー42の各側面にプローブガイド5,5を当接させると共に、プローブ41の前面および後面にプローブクランプ6,6を当接させ、これらプローブガイド5,5とプローブクランプ6,6とをボルトB3,B3,B3によって一体的に組み付ける。
その後、ベースブラケット2の各側面22a,22aにガイドブラケット3,3をそれぞれボルトB2,B2,B2によって組み付ける。この際、コイルスプリング7の下端部を、前記ホールド部53aに嵌め込むと共に、このコイルスプリング7の下端部を、前記位置決め部53bの上面53eおよびスプリング受け座63に当接させて、ベースブラケット本体22と、プローブガイド5およびプローブクランプ6との間にコイルスプリング7を圧縮した状態で介在させる。また、プローブガイド5,5の位置決め部53bをガイドブラケット3,3に係止させておく。つまり、位置決め部53bの下面53cをガイドブラケット3のストッパ面31bに当接させ、位置決め部53bの傾斜面53dをガイドブラケット3の傾斜面31aに当接させる(図2を参照)。このようにしてベースブラケット2の各側面22a,22aにガイドブラケット3,3を組み付けた状態では、超音波検査ユニット4の前記抜け止め機能および前記位置決め機能が発揮されることになる。また、前記フローティング機構9が構成されることになる。その後、一方のガイドブラケット3に支持ブラケット81を介してジェルノズル82を取り付ける。
−溶接部検査動作−
次に、溶接部検査動作について説明する。
以上の如く構成された溶接部検査装置1は多関節ロボット100のアーム先端部101に取り付けられ(図8を参照)、この多関節ロボット100の作動によって溶接部検査が行われる。
本実施形態で採用されている多関節ロボット100は、複数の回転軸を備えたものである。また、この多関節ロボット100は、前記アーム先端部101が溶接部検査装置1の中心線O回りに回転可能となっている。つまり、このアーム先端部101には、溶接部検査装置1の中心線Oと同軸上に回転可能な電動モータ102が備えられており、この電動モータ102の作動に伴うアーム先端部101の回転によって溶接部検査装置1がその中心線O回りに回転可能な構成とされている(図8における中心線O回りの矢印を参照)。
なお、自動車の車体におけるスポット溶接部は多数存在するが、溶接部検査にあっては、これら多数のスポット溶接部のうち予め設定された所定箇所のスポット溶接部を検査対象として検査することになる。つまり、多関節ロボット100には予めオフラインティーチングによって、検査対象であるスポット溶接部に向けて溶接部検査装置1を移動させるための情報(各関節の回転角度量等の情報)が入力されている。そして、車体製造ライン上の検査工程まで搬送されてきた車体に対し、この情報に従って多関節ロボット100が作動することで、検査対象であるスポット溶接部に向けて溶接部検査装置1を順次移動させていくことになる。
スポット溶接部の検査が開始されると、多関節ロボット100の作動により、シュー42の先端面42cが検査対象であるスポット溶接部に対向する位置まで溶接部検査装置1が移動される。この時点では未だプローブガイド5,5の突起55,55,…はスポット溶接部の表面に当接していない。そして、プローブガイド5,5の突起55,55,…がスポット溶接部の表面に当接する前に前記ジェル塗布装置8のジェルノズル82から所定量のジェルがスポット溶接部の表面に塗布される。その後、溶接部検査装置1がスポット溶接部に近づくように多関節ロボット100が作動し、プローブガイド5,5の突起55,55,…がスポット溶接部の表面に当接する。
この際、図9(a)に示すように、スポット溶接部Wの表面に対してプローブ41およびシュー42が傾いている場合には、前記突起(片側の突起)55がスポット溶接部Wの表面に当接し、この際の該表面からの反力を受けることになる。そして、この反力によって前記コイルスプリング7が弾性変形し、図9(b)に矢印で示すようにプローブ41およびシュー42の向きが変化して、プローブ41およびシュー42はスポット溶接部Wの表面に対して直交する姿勢となる。この時点で全ての突起55,55,…がスポット溶接部の表面に当接することになる。特に、本実施形態のものでは、突起55,55,…は、プローブガイド5,5の先端部56における外縁部に配置されていることから、シュー42の先端面42cの中心に対してある程度の距離があるため、前記反力を大きく得ることができて、プローブ41およびシュー42の向きを容易に変化させることが可能である。図10は、プローブ41およびシュー42の向きが変化してプローブ41およびシュー42がスポット溶接部の表面に対して直交する姿勢となった状態を示す正面図である。この図10からも解るようにフローティング機構9の調芯機能によって自動調芯が行われた場合(プローブ41およびシュー42がスポット溶接部の表面に対して自動的に直交する姿勢とされた場合)には、プローブ41およびシュー42の中心線O1が溶接部検査装置1の中心線Oに対して傾斜されることになる。また、図11は車体Vのスポット溶接部の検査を行っている状態を示す斜視図である。具体的に、この図11は、多関節ロボット100が車体Vのドア開口部から車室内空間に入り込み、フロアパネルFPに対するレインフォースメントRFのスポット溶接部の検査を行っている状態を示している。
このようにプローブ41およびシュー42をスポット溶接部Wの表面に対して直交する姿勢とした状態(図9(b)を参照)では、前記突起55,55,…がスポット溶接部Wの表面に当接されることになり、シュー42の先端面42cがスポット溶接部Wの表面に直接的に当接することはない。
このようにしてシュー42の先端面42cをスポット溶接部Wの表面に対向させた状態で、前記コントローラから作動信号が信号ケーブル43を経てプローブ41に送信され、このプローブ41では、この作動信号に従って各圧電振動素子が作動して超音波を発振する。発振された超音波は、シュー42を経てスポット溶接部Wに照射される。この超音波は、各金属板の端面や底面、溶接欠陥が存在する場合にはその欠陥部分でそれぞれ反射されることになり、各圧電振動素子がその反射エコーを受信する。各圧電振動素子が受信した反射エコーの電気信号は信号ケーブル43を経てコントローラに送信される。コントローラでは、前述したように反射エコーの電気信号が信号検出回路を経て信号処理部に送られ、この信号処理部で並列演算処理が行われて、検査対象であるスポット溶接部Wの溶接品質の良否が判定され、その判定結果が出力される。なお、この判定結果の出力は、車体製造ラインの後工程での作業に利用される。
以上説明したように、本実施形態では、シュー42の先端面42cをスポット溶接部Wの表面に対向させた状態で行われる検査時には、プローブガイド5,5に設けられた突起55,55,…がスポット溶接部Wの表面に当接されることになり、シュー42の先端面42cがスポット溶接部Wの表面に直接的に当接することはない。このため、この検査が多数回に亘って行われてもシュー42の先端面42cに摩耗が生じてしまうことは回避され、シュー42の先端面42cにザラツキが生じたり偏摩耗が生じたりすることが抑制されて、検査精度を高く維持することができる。従って、シュー42の長寿命化を図ることができ、シュー42の交換頻度を大幅に少なくしたり、または、シュー42の交換の必要を無くしたりすることができる。また、前記フローティング機構9によってシュー42およびプローブ41をスポット溶接部Wの表面に対して直交する姿勢とすることができる。このため、前記突起55,55,…に、シュー42の保護機能(シュー42の先端面42cをスポット溶接部Wの表面に当接させないことによるシュー42の摩耗防止機能)と、シュー42およびプローブ41をスポット溶接部Wの表面に対して直交する姿勢にする機能(調芯機能)とを備えさせることができる。
また、本実施形態では、多関節ロボット100を使用して溶接部検査装置1による検査を行うようにしている。このように多関節ロボット100を使用して検査を行う場合、前記プローブガイド5,5を備えていない従来の溶接部検査装置にあっては、シューが比較的高い速度でスポット溶接部の表面に当接する可能性がある。例えば多関節ロボットのティーチングが適正に行われなかった場合などである。この場合、シュー42の破損が懸念される状況となる。これに対し、本実施形態ではプローブガイド5,5に突起55,55を備えさせ、シュー42の先端面42cがスポット溶接部Wの表面に直接的に当接することがないものとなっているので、仮に多関節ロボット100のティーチングが適正に行われなかった場合であっても、シュー42の破損を抑制することができる。つまり、プローブガイド5,5を備えさせたことにより、多関節ロボット100を利用した溶接部検査の自動化の実用性を高めることができる。
また、本実施形態では、プローブガイド5等に外力が作用していない場合には、コイルスプリング7の付勢力により、プローブガイド5の位置決め部53bの下面53cがガイドブラケット3のストッパ面31bに当接(押圧)されると共に、位置決め部53bの傾斜面53dがガイドブラケット3の傾斜面31aに当接(押圧)されることによって、超音波検査ユニット4のプローブ41およびシュー42の中心線が溶接部検査装置1の中心線Oに一致した状態で超音波検査ユニット4は位置決めされるようになっている。このため、突起55,55,…がスポット溶接部Wの表面に当接するまでは(外力が作用していない状況では)、多関節ロボット100の作動に伴って移動する溶接部検査装置1の移動軌跡としてティーチングの再現性を良好に確保することができる。
また、本実施形態で採用されている多関節ロボット100は、前述したように、アーム先端部101が溶接部検査装置1の中心線O回りに回転可能となっている。このため、検査対象であるスポット溶接部Wが車体パネルの凹部に位置する場合に、この凹部内に溶接部検査装置1を挿入可能とすることができる。つまり、図2および図3からも解るように、本実施形態に係る溶接部検査装置1は、X方向の寸法が比較的大きくなっている。このため、例えば図12(a)に示すように検査対象であるスポット溶接部Wが車体パネルの凹部P1に位置している際、この凹部P1の幅寸法が溶接部検査装置1のX方向の寸法よりも小さい場合には、図12(a)に示す状態から、多関節ロボット100のアーム先端部101を90°回転させ(前記電動モータ102の作動によるアーム先端部101の回転によって溶接部検査装置1をその中心線O回りに90°回転させ)、図12(b)に示すようにX方向に比べて寸法が小さいY方向を凹部P1の幅方向に合わせる。これにより、検査対象であるスポット溶接部Wに向けて凹部P1内に溶接部検査装置1を挿入することが可能となる。このように、本実施形態では、比較的狭い隙間の間に存在するスポット溶接部Wに対しても、多関節ロボット100による検査の自動化を図ることができる。
−変形例1−
次に本発明の変形例1について説明する。本変形例はプローブガイド5の先端部分の形状が前記実施形態のものと異なっている。その他の構成および溶接部検査動作は前記実施形態の場合と同様である。従って、ここではプローブガイド5の先端部分の形状についてのみ説明する。
図13は本変形例におけるシュー42およびプローブガイド5の先端部分の斜視図である。この図13に示すように、本例ではプローブガイド5のシューガイド部52の下端部の全体がシュー42の先端面42cよりも下側(Z1側)に位置した構成となっている。つまり、シューガイド部52の下端部の全体が面一とされ、この下端部の全体がシュー42の先端面42cよりも突出した位置にあることになる。また、このシューガイド部52の下端部の突出寸法(シュー42の先端面42cからの突出寸法)は前記実施形態における突起55,55の突出寸法(同じくシュー42の先端面42cからの突出寸法)に一致している。本変形例では、このような構成により、本発明でいう「ガイド部材の一部が、音響伝播媒体の先端面よりも突出している」構成を実現している。
本変形例の構成によっても前記実施形態の場合と同様に、シュー42の先端面42cがスポット溶接部Wの表面に直接的に当接することはないため、検査が多数回に亘って行われてもシュー42の先端面42cに摩耗が生じてしまうことは回避され、検査精度を高く維持することができる。従って、シュー42の長寿命化を図ることができ、シュー42の交換頻度を大幅に少なくしたり、または、シュー42の交換の必要を無くしたりすることができる。
また、本変形例の構成によれば、シューガイド部52の先端面57の全面が前記実施形態における突起55の機能を果たすことになるため、スポット溶接部の表面に対する接触面積を大きく得ることができ、前記調芯機能を十分に得ることが可能となる。また、シューガイド部52の先端部分の強度を高く確保することができ、シューガイド部52の破損を防止することもできる。
−変形例2−
次に本発明の変形例2について説明する。本変形例はシュー42およびプローブガイド5の形状が前記実施形態のものと異なっている。その他の構成および溶接部検査動作は前記実施形態の場合と同様である。従って、ここではシュー42およびプローブガイド5の形状についてのみ説明する。
図14は本変形例におけるシュー42およびプローブガイド5の先端部分の斜視図である。この図14に示すように、本例におけるシュー42の先端面42cは円形となっている。つまり、シュー42は円錐台形状となっている。このため、各プローブガイド5,5としては、シュー42の周方向の略1/4(周方向の角度で90°)の範囲を覆う形状となっており、その先端部58における周方向の両端位置に突起59,59が設けられた構成となっている。この突起59,59の突出寸法は前記実施形態における突起55,55の突出寸法に一致している。本変形例では、このような構成により、本発明でいう「ガイド部材の一部が、音響伝播媒体の先端面よりも突出している」構成を実現している。
本変形例の構成によっても前記実施形態の場合と同様に、シュー42の先端面42cがスポット溶接部Wの表面に直接的に当接することはないため、検査が多数回に亘って行われてもシュー42の先端面42cに摩耗が生じてしまうことは回避され、検査精度を高く維持することができる。従って、シュー42の長寿命化を図ることができ、シュー42の交換頻度を大幅に少なくしたり、または、シュー42の交換の必要を無くしたりすることができる。
−他の実施形態−
なお、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および当該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、自動車の車体のスポット溶接部を検査するための溶接部検査装置1として本発明を適用した場合について説明したが、その他の部材のスポット溶接部を検査するための溶接部検査装置としても本発明は適用することが可能である。
また、前記実施形態および前記各変形例では、スポット溶接部Wの検査を行う溶接部検査装置1として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、シーム溶接等その他の種類の溶接による溶接部の検査を行う溶接部検査装置として適用することも可能である。
また、前記実施形態および前記各変形例では、溶接部検査装置1の使用形態として多関節ロボット100のアーム先端部101に取り付けた場合について説明した。本発明はこれに限らず、作業者が溶接部検査装置1を把持してスポット溶接部Wの検査を行う使用形態とすることもできる。
また、前記実施形態および前記変形例2では、突起55(59)の構成として、平坦な先端面55aを備えたものとしていた。本発明はこれに限らず、円錐形状の突起や、半球体形状の突起としてもよい。
また、前記実施形態および前記変形例2では、突起55(59)の数を合計4個としていた。これに限らず、突起55(59)を3個としたり、5個以上とした場合も本発明の技術的思想に含まれる。
本発明は、スポット溶接部の溶接品質の良否を検査する溶接部検査装置に適用可能である。
1 溶接部検査装置
2 ベースブラケット(装置本体)
41 プローブ
42 シュー(音響伝播媒体)
42c 先端面
5 プローブガイド(ガイド部材)
55,59 突起
56 プローブガイドの先端部
7 コイルスプリング
8 ジェル塗布装置(ジェル塗布手段)
9 フローティング機構(弾性支持機構)
100 多関節ロボット
101 アーム先端部
W スポット溶接部

Claims (4)

  1. 超音波を発振するプローブおよび該プローブの先端に取り付けられた音響伝播媒体を備え、金属板の溶接部に前記音響伝播媒体の先端面を対向させた状態で、前記プローブから発振された超音波を、前記音響伝播媒体を経て前記溶接部に照射し、この超音波の反射波に基づいて前記溶接部の検査を行うための溶接部検査装置において、
    前記プローブおよび前記音響伝播媒体は、弾性支持機構によって装置本体に弾性支持されており、
    前記金属板よりも硬度の高い材料で成り且つ少なくとも前記音響伝播媒体の側方に位置するガイド部材を備えており、該ガイド部材には、前記音響伝播媒体の前記先端面よりも突出して成る突出部分が当該ガイド部材における外縁部の複数箇所に設けられており、
    前記弾性支持機構は、前記装置本体と前記ガイド部材との間に介在され且つ一端が前記ガイド部材に当接するコイルスプリングを備えており、前記ガイド部材における前記複数の突出部分のうち一部の突出部分のみが前記金属板の表面に当接した場合に、全ての突出部分が前記金属板の表面に当接するように前記コイルスプリングが弾性変形して前記プローブおよび前記音響伝播媒体が姿勢変化する構成となっていることを特徴とする溶接部検査装置。
  2. 請求項1記載の溶接部検査装置において、
    前記音響伝播媒体の前記先端面は矩形状であり、
    前記音響伝播媒体の前記先端面よりも突出している前記ガイド部材の突出部分は、前記音響伝播媒体の前記先端面における4つの角部それぞれに隣接した外側位置に配置されていることを特徴とする溶接部検査装置。
  3. 請求項1または2記載の溶接部検査装置において、
    多関節ロボットのアーム先端部に取り付けられ、前記溶接部の検査時には、前記多関節ロボットの作動によって前記音響伝播媒体の前記先端面が前記溶接部に対向されるようになっていることを特徴とする溶接部検査装置。
  4. 請求項1、2または3のうち何れか一つに記載の溶接部検査装置において、
    前記ガイド部材を前記溶接部の表面に当接させた際に前記音響伝播媒体の前記先端面と前記溶接部の前記表面との間に形成される空間の容積量よりも多い量のジェルを前記溶接部の前記表面に塗布しておくジェル塗布手段を備えていることを特徴とする溶接部検査装置。
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