以下、本発明による自動検査システムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
ここで、まず、本発明の実施形態は、第1の手法によるものと、第2の手法によるものに大別できる。そして、まず、第1の手法による実施形態は、プローブ自体には指向性がなく、そのプローブを動かしたとき、その動かした方向に感度がよくなる場合、すなわち動かした方向がその指向方向となるようなプローブを用いた場合の一実施形態であり、次に、第2の手法は、最初からプローブ自体に指向性があり、その向きを制御しながらプローブを動かすようにした場合の一実施形態である。
ところで、このとき第2の実施形態の方が広く各種のプローブに当て嵌まるので、本発明の基本的な実施形態として、後で詳細に説明する。
一方、第1の実施形態では、プローブ自体には指向性がないので、プローブの向きを変える機構が不用で、装置の構成としては単純になる。そこで、まず、この場合の装置構成について、図1と図2を用いて簡単に説明しておくものとする。
まず、図1は、原子力発電所の配管などについて定期的に検査を行い、その健全性を確認する場合の装置構成を示したもので、このとき、原子力発電所などでは、放射能の問題があるため、遠隔操作により点検と検査を行なうように構成されているものである。
そして、この図1において、ここでは原子力発電所の配管が検査対象物1で、この配管にある溶接部2と、この溶接部2の近傍を点検し検査することになる。
そこで、この溶接部2の近傍にプローブ10を押し当て、内部が検査できるようにするのであるが、このとき、プローブ10をアーム形の走査機構20に取付け、検査対象物1の表面に沿って、所定の走査軌跡を辿って移動させることができるようにする。
このため、走査機構20をベース台車25に搭載し、検査対象物1の周囲に設置された軌道26により、検査対象物1の周囲に沿って移動できるように構成してある。
このとき、走査機構20は5個の回動関節部により回動角度θ1、θ2、θ3、θ4、θ5の5種の自由度を持ち、これによりプローブ10を検査対象物1の表面の任意の位置で垂直に押し当て、このまま任意の軌跡に沿って表面を走査し、サーベイ(探査又は探傷)することができるように構成されている。
このように、ベース台車25が軌道26に沿って検査対象物1の周囲を移動できることにより、検査対象物1の裏側も含めて円周方向に1周している溶接部2の近傍をくまなく検査できる。
走査機構20のベース台車25と各回動関節部には駆動モータとセンサが備えてあり、各駆動モータは走査機構制御装置50により制御される。そして、これのときのベース台車25の位置Xや各回動関節部の回動角度は各々のセンサにより検出され、検出された情報は走査機構制御装置50に取り込まれる。
このとき、記憶装置42には初期の走査軌跡データが記録され、記憶装置45には検査対象物1の形状情報が記録されている。そこで、走査制御データ生成部40は、これらの記憶装置42、45から各々のデータを読み出し、要求されている走査軌跡の実現に必要な各回動関節部の角度指令信号を計算してに入力する。
この結果、走査機構制御装置50は、フィードバックされてくる関節角度情報が指令角度と一致するように各関節部のモータを駆動制御し、これによりフィードバック制御ループが構成されるようにする。
ここで、プローブ10で検出された信号は検査データ記録部30に取り込まれ、演算処理されて欠陥の存在や位置、形状など必要なデータが算出され、必要なデータ形式に変換されて検査データ記憶装置35に記録される。そして、このとき、検査結果は必要に応じて表示モニタ50に供給され、検査員が確認できるようになっている。
このとき、この実施形態特有の構成として、今回、プローブ10で走査して得た検査データを、それ以前に走査した検査データと共に検査データ記録装置35に記憶しておき、走査制御データ生成部40で過去の検査データを読み込んで次に走査する制御条件を決定し、それを走査機構制御装置50に供給するようにした点があるが、これについては後で詳述する。
ところで、このような検査対象物1の溶接部2の近傍を検査する場合、従来の走査制御手順では、まずプローブ10をスタートポイントSPに位置決めし、そこでプローブ10を検査対象物1に押し当て、このまま溶接部2に向かって直線的に近づける走査を繰り返して周方向に1周させて行う制御が一般的である。
そして、スタートポイントSPから走査制御し、ポイント(位置)P1に達したとき、ここに欠陥3があるため、ここで始めて有意な検査結果データが得られる。但し、従来技術ではここまでである。
従って、プローブ10の欠陥3に対する走査方向により検出信号に強弱がある場合、従来技術では、欠陥3の向きが検出信号のあまり出ない向きにあったときプローブ10からの検査結果データの信号には有意差が十分にでない。
また、このため、その信号から欠陥3の大きさを推定しようとした場合、走査密度を細かくしても、従来技術では、欠陥3の向きに対して信号のあまり出ない方向から走査しているため、精度は良くない。
上記したように、欠陥3は一般的にランダムに発生するので、たまたま走査方向が適切な状態になる場合もあるかもしれないが、確率的にはならない場合の方が多い。
そこで、この実施形態では、或る位置で欠陥3による有意差信号が僅かでも検出された場合は、その位置、例えばポイントP1から欠陥3に対する走査方向を各ポイントP2、P3、P4で図示のように徐々に変えて行き、プローブ10から検出されてくる検査結果データの信号レベルが最も大きくなる方向が自動的に探索されるように、走査制御データ生成部40が構成してある。
ここで、上記したように、欠陥3の面に対して正対する方向、すなわち欠陥3の法線方向から超音波を当てた場合に反射波が最大になる。従って、図1の欠陥3の場合は、ポイントP1、P2、P3と走査軌跡を変えて行くと徐々に反射波は大きくなるが、ポイントP4まで方向を変えると、ここから正対する角度を越えてしまうので、今度は再度検出データの信号レベルが小さくなって行く。
つまり、この場合、ポイントP3で最も検出信号が大きくなるので、その状況をモニタリングしながら走査軌跡をポイントP1、P2、P3、P4と変えていくと、ポイントP4で信号レベルが低くなるので、その手前のポイントP3での走査方向が欠陥3の面に正対する方向であることが判る。
ここで、図2は、欠陥3を拡大して示したものであるが、ここで、この実施形態によれば、ポイントP3での走査方向が欠陥3に対する法線方向Pn0であるとすると、欠陥3がその左右にどのように広がっているかサーベイすることも可能になる。
つまり、ポイントP3での走査方向=法線方向Pn0を基準にして、その右方向に走査軌跡をずらし、そのずらしたポイントにおいて同様に角度を変化させ、最も検査結果データの信号レベルが大きくなる方向(法線方向)をサーベイして行く。
そうすると、このポイントでの法線方向Pn1が得られ、更にその右側に少しずらしたポイントPn2での法線方向と更に右側のポイントPn3での法線方向、という具合に各ポイントPn4、Pn5での法線方向を検出することにより、欠陥3の拡がりを求めることができる。
このとき、ポイントPn5から右側では欠陥3がなくなっているので、検出データ信号をモニタリングしていることにより、ポイントPn5の位置が欠陥3の右側の端部であることも精度良く検出でき、同様に欠陥3の左側の法線方向を検出することにより、左側の端部も精度良く検出することができる。
これらのサーベイ処理は、プローブ10から得られる現在の検出データと記憶装置35から得られる以前の検出データを走査制御データ生成部40により参照し、次に走査制御する軌跡データをで生成することにより、自動的に行うことができるようになっている。
なお、このときの走査制御データ生成部40の具体的な処理フローについては、後でまとめて図17により説明する。
このとき、表示制御装置60Cにより、検出した欠陥3の位置情報を検査データ35の中から読み取り、表示モニタ60に平面図的に表示することにより、欠陥3の上から見た形状や長さを精度よく認識することができる。
また、このとき、欠陥3の端部位置データから数値的に欠陥3の長さを求めて表示モニタ60に表示するようにしても良い。
次に、本発明の第2の実施形態について、図3から図9により説明する。なお、ここでは、指向性を持ったプローブの一例として超音波探触子の場合について説明するが、指向性を持ったプローブであれば、渦電流センサ、磁気センサ、静電気センサ、放射線センサなど、センサの種類を問うものではない。
また、検査対象物についても、食品、樹脂、地球などの大地、岩盤など、金属に限るものではない。ここでは金属内の欠陥を検査する超音波センサを用いた場合を例に挙げているものである。
ここで、図1の場合は走査機構20がアーム型であるのに対して、以下に説明する実施形態では、図3に示されているように、走査機構20がX軸とY軸の2軸駆動型になっている。但し、走査機構20の構成は、プローブ10の走査制御ができるものであれば、どのような走査機構でも良い。
図3において、走査機構20は送りネジ21と送りナット22を備え、ベース台車25に搭載され、軌道26上をX方向に移動でき、送りネジ21の回転により送りナット22をY方向に移動させることができるようになっている。
このとき、プローブ10が指向性を持っているので、送りナット22に回転モータ23を備えた回動機構を設け、これによりプローブ10の向きθが変えられるようになっている。
そこで、この図3の走査機構20は、走査機構制御装置50よりX軸方向とY軸方向、それにプローブの向きθが制御され、この結果、検査対象物1の表面にプローブ10を押し当てた状態で、プローブ10の指向性を考慮して、任意の方向に走査制御することができるように構成されている。
この実施形態では、プローブ10に指向性を持たせ、これにより、各ポイントP1、P2、P3、P4で走査方向を変えるとき、プローブ10の指向性の向きを走査方向に合わせるように回転モータ23を制御して方向θを制御するようになっている。
なお、このように指向性のあるプローブを用いた場合、方向θを制御する必要が生じるが、指向性のないプローブと比較した場合、探傷のためのエネルギーを一方向に集中させることができ、この結果、大きな反射エネルギーを得ることができるので、欠陥などを更に感度よく検出することができる。
ここで、図4は、プローブ10の指向方向を走査方向に合わせるための回動機構部の具体的な構造の一例を示したもので、このときプローブ10は超音波探触子であり、検査対象物1の表面に接触して走査させる必要がある。そこで、プローブ10の先端にシュー101を設けて滑りやすくしてある。
このとき、プローブ10を収納筒103に入れた状態で押し付けバネ104を設け、これによりプローブ10が検査対象物1の表面に一定の力で押し付けるようにしてある。
なお、この図3では、バネ104を用いて一定の力でプローブ10を検査対象物1の表面に押し付けるようにしているが、プローブ10の押し付け力をセンサで検出し、その検出したプローブの押し付け力が所定の一定の値になるように、例えば図1のアーム型の走査機構20の場合には、各アームの関節部にあるアクチュエータを制御して所定の力でプローブ10が押し付けられるように制御してもよい。
また、この図3のXY2軸駆動型の走査機構20の場合には、押し付け専用アクチュエータを設け、センサで検出した押し付け力が一定になるようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。
ここで、走査機構20の走査精度は、検査対象物1の法線方向から押し付け、誤差ゼロの状態で走査させることができる程、高くない。そこで、プローブ10とバネ104が収納されている収納筒103にジンバル機構102を設け、このジンバル機構102によりプローブ10が走査機構20に取り付けられるようにしてある。
そして、このジンバル機構102には、歯車などを介して回転モータ23の回転力が伝達されるようになっており、これよりプローブ10の方向θが制御され、プローブ10で検出された信号はケーブル105により取り出される。
そこで、いま、図3のポイントP4における走査方向を、図4に矢印で示し、この方向にプローブ10を移動させて行き、ポイントP4(1)から順次、超音波を発信させ、その応答をプローブ10で検出するようにして走査したとする。
そうすると、検査対象物1の中に欠陥3があった場合、ポイントP4(2)からポイントP4(3)の間では超音波が欠陥3で反射されるので、検出結果信号に有意差が現れ、ポイントP4(4)では欠陥3からの反射がなくなった状態で検査結果データが得られる。
このときの信号の応答波形を図5に示す。ここで、この図5は、横軸に時間をとり、縦軸に信号レベルをとって出力信号を表わしたものである。
そして、このとき、図6は、図5の信号に対応した検査対象物の断面状況の一例を示したものであり、これらの図5と図6において、まずポイントP4(1)では、超音波発信時の信号はあるが、応答は返ってこない。
次に、ポイントP4(2)からポイントP4(3)では、欠陥3による反射波が返ってくるので、その信号が、ポイントP4(2)ではt(a)max 時間後に欠陥3(a)部からの反射波として現れ、その信号レベルは最大値S(a)max である。
同様に、ポイントP4(3)ではt(b)max 時間後に欠陥3(b)部からの反射波S(b)max が現れている。しかし、ポイントP4(4)になると、ここでは反射波はない。
このとき、P4方向の移動速度に、各ポイントP4(1)、P4(2)、P4(3)、P4(4)における超音波発信の間隔(時間)を掛けた量は、プローブ10のP4方向への移動量を表すこととなる。
上記したように、図5は、その状態を検査対象物1の走査方向P4に沿った断面図で示したもので、ここでプローブ10は、ポイントP4(1)、ポイントP4(2)、ポイントP4(3)、そしてポイントP4(4)と順次、移動している。そしてポイントP4(2)からポイントP4(3)の間では欠陥3による反射波が検出されている。
このとき、夫々の反射波が現われる時間t(a)max、t(b)max に音速を乗ずると、距離L(a)、L(b)が得られる。そこで、プローブ10の指向特性が角度αの方向であるとすると、欠陥3(a)と欠陥3(b)の位置が夫々特定できる。
ところで、欠陥3の法線方向の特性は、図2の平面図で見た場合の法線方向の特性だけではなく、他にも図2のポイントP3における走査方向で検査対象物1を断面にしたときの特性がある。
ここで、図7はポイントP3の走査方向による検査対象物1の断面図を示したものであるが、ここでは、更に細かく超音波を発信し、応答を検出する場合の一例について示してあり、この場合、欠陥3から反射波が現われる範囲は、ポイントP3(1)からポイントP3(8)の間である。
このとき、プローブ10の指向性は角度α方向で、この方向からくる超音波の反射を検出することになるが、この断面による欠陥3にも法線方向があり、欠陥3に対して正対する法線方向から超音波が発信された場合、大きな反射波がプローブ10で受信され、レベルのおおきな信号が検出される。
そこで、いま、ポイントP3(5)で角度α方向に超音波が発信されたとすると、欠陥3のA1点に超音波が入射され、ここで反射された反射波は、薄い矢印で示すように、RP3(5)αのレベルをもっているものとする。
そして、このA1点では、ポイントP3(5)からの超音波は、入射角度αが欠陥3のほぼ法線方向になっているので大きな反射波が得られる。
一方、ポイントP3(6)から角度αで入力した超音波は欠陥3のB点に入射し、ここで反射されるが、このB点面では角度αより傾きが大きくなっているので、反射波のレベルRP3(6)αは小さくなっている。
ここで、もしもプローブ10の指向方向を角度αではなく、角度α2にしたとすると、この場合は、ポイントP3(8)から入射した超音波が欠陥3に対してほぼ正対することになり、レベルRP3(6)α2で示す大きな反射波レベルが得られることになる。
このように、この図7の断面中でも欠陥3には法線方向があり、それを検出するためにはプローブ10の指向角度αをいろいろ変えてサーベイする必要があるが、欠陥の大きさを更に詳細に知る必要がある場合でなければ、そこまでたんさする必要はない。
但し、あまりにも感度が悪い場合には、指向角度αを45度、70度、90度の3種類程度用意し、使い分けることによって、より感度よく欠陥3の形状、寸法が検出できるようにする場合もあるが、これについては後述する。
以下、プローブ10の指向性特性は変えないで、角度αのまま欠陥3の形状と大きさをサーベイする場合について更に説明すると、まず、ここでは、図7において、任意の1点、例えばポイントA1を選び、このポイントA1のAA断面方向から見たときの法線方向をサーベイするものとする。
そこで、このポイントA1の1点に対して、図8に示すように各ポイントP1、P2、P3、P4、P5の方向から順次走査し、ポイントA1からの反射波レベルが最高になる方向を検出すれば、その方向がAA断面から見た場合の欠陥3の法線方向となる。
同様に、ポイントP3(1)における角度α方向の反射点から順にポイントP3(2)、P3(3)、P3(4)、P3(6)、P3(7)、P3(8)における角度αの各反射点について、平面図方向(=AA断面の方向)の法線方向を調べると、欠陥3の広がっている方向を知ることができる。
この場合、角度αを最適値に合わせることはできないが、平面図方向での走査方向を法線方向に合わせることにより大きな感度を得ることができるので、欠陥の状況をより正確に知ることができる。
勿論、角度αを変化させて欠陥3の面に対する3次元的に正確な法線方法を検出するようにしてやる方が、時間はかかるが、より正確に欠陥の状況がサーベイできるのはいうまでもない。
このときのサーベイ処理は、プローブ10からの検出結果データと、記憶装置35から読出した以前の検査結果データを参照して、走査制御データ生成部40により、次に走査制御する軌跡データを生成するようにすることで自動的に行うことができる。
なお、このときの走査制御データ生成部40の具体的な処理フローについては、上記したように、後でまとめて図17により説明する。
次に、図9は、欠陥3の形状をサーベイした結果を概念的に示した場合の一例で、欠陥の形状は各反射ポイントR11〜R54が構成する面の欠陥として表され、このとき指向方向角度αは変えても変えなくてもよいが、これにより各反射ポイントR11〜R54での法線方向が検出されている状況が示されている。
このとき、勿論、プローブ10の指向特性が狭い程、形状の検出分解能はよいものになるのはいうまでもない。
この図9に示すようにして欠陥3の形状をサーベイした結果は、検査データとして記録装置35に記録されるので、記録装置35の中の欠陥3の位置データ、形状データの数値情報を表示制御装置60Cにより読出してやれば、表示モニタ60に欠陥3を3次元グラフィック(3次元CG)で表示させることができる。
このように、3次元グラフィックで欠陥3の形状を表示させてやれば、3次元グラフィックに備えられている一般的な機能により、表示させるときの視点の位置が変更でき、この結果、欠陥3の形状をいろいろな角度から確認して形状を容易に把握することができるようになる。
このとき、表示モニタ60にスケールを表示させ、一目で欠陥3の大きさ(概略寸法)が参照できるようにしてもよいし、表示モニタ60に表示されている欠陥3の任意の2箇所のポイントをマウス操作やペンライトで操作入力することにより、その2点間の距離(寸法)数値が表示モニタ60の画面に表示されるようにしてもよい。
従って、以上の実施形態によれば、欠陥3に対して最も感度のよい方向、すなわち超音波探触子の場合には一般に割れなどの欠陥に対して正対する直角方向から自動的に走査させることができ、この結果、自動欠陥検出に対する感度を高め、その結果をビジュアルに表示させて、欠陥の大きさ、形状をより精度良く検査することができる。
次に、本発明において使用されるプローブについて説明すると、まず、図10は超音波アレイセンサを用いて指向特性が電気的に変えられるようにした、いわゆる電子スキャン方式のプローブの一例で、このとき、超音波アレイセンサは、複数個の探触子10(1)、10(2)、……、10(n)で構成されている。
ここで、この図10では、n=11、つまり探触子の個数は全部で11個であり、これらの探触子10(1)〜10(n)を一列に並べて配置し、検査対象物1の表面に接触させ、探傷が行えるように、全体をシュー101で覆って一体化したものである。
そして、各探触子10(1)、10(2)、……、10(n)に供給すべき超音波発信用の励振信号のタイミングを少しづつずらすことにより、各探触子から発射される超音波に干渉を起こさせ、特定の方向に指向性が現われるようにしたものである。
この図10では、一例として、発射された超音波の焦点がポイントFになるように制御した場合が示されているが、このとき、励振信号の供給タイミングの取り方によって任意の距離、所定の方向に離れた位置に超音波の焦点を絞って集中させることができる。
このように音波を発信する方向や音波を集中させる焦点が任意に制御できる電子スキャン方式のアレイセンサをプローブ10として用いることにより、既に図7で説明したように、プローブの指向性特性の一つである角度αを任意に制御しながらプローブ10の走査制御を行うことができ、欠陥3の面の法線方向をサーベイする際、より詳細で正確なサーベイが可能になる。
ここで詳細なサーベイまで必要としない場合でも、角度αが1種類しかない場合、角度αに正対する欠陥3の面は検出しやすいが、反対に角度αに平行な面では反射波のほとんどがプローブ10の方へ戻らないので、欠陥3の検出感度(S/N)が低くなってしまう。
しかし、このような場合でも図10のプローブを用いてやれば、角度αを少し変えることができるので、欠陥3の検出感度を上げることができ、欠陥3の大きさや形状を正確に検査することができる。
次に、図11は、複数個の探触子10(n)を、O点を中心とする仮想球体10aの表面に沿って配置しアレイセンサとした場合の一例で、この場合、各探触子10(n)は、夫々O点から別々に異なった放射方向に向いている。
そこで、サーベイに使用する探触子を複数個の探触子10(n)中から選択してやれば、必要な方向に容易に超音波を発信させることができ、従って、この場合は、微妙な発信タイミングの制御は不要で、単に必要な方向を向いている探触子を選択するだけで済む。
また、この場合、超音波は、仮想球体10aのO点を中心として、放射状に発射されるので、反射波から反射ポイントとなる欠陥位置を計算する処理も容易になる。
なお、このように探触子を配置したアレイセンサの場合でも、発信のタイミングを微妙に制御して指向性を持たせるようにしてもよい。
ここで、複数個の探触子10(n)を1列だけ仮想球体10aの表面に配置しても良く、この場合、探触子10(n)が1列に並んでいる方向で、任意の指向特性を持たせることができるので、例えは図3のプローブ10として用いてやれば、回転モータ23で角度θを制御するだけで済む。
一方、図11に示したように、複数個の探触子10(n)を仮想球体10aの表面の一部の球面に三次元的に配置してやれば、各探触子の選択だけで指向方向の角度αと角度θを制御することができるので、例えは図3のプローブ10として用いてやれば、回転モータ23による回動機構を省略することができる。
ところで、図10と図11はプローブにアレイセンサを適用し、プローブ10自体の指向特性を変化させるようにした場合であるが、次に説明する実施形態では、複数個の特性が異なっているプローブを用意しておき、必要に応じてプローブを交換してサーベイするようにしている。
ここで、図12がその実施形態で、ここでは走査機構20としてアーム型のマニプレータを備えたティーチング・プレイバック方式のロボットを用い、操作機構20のベース台車25は、軌道26に沿って検査対象物1の両側に或る程度アクセスしやすい位置に移動できるようにしてある。
このとき走査機構20の先端部分にプローブ着脱機構10cを設け、これによりプローブ10が走査機構20の先端部分に着脱可能になっている。そして、これに合わせてプローブ置き台10bを設け、これに、特性が異なっている幾つか別のプローブを用意しておくことができるように構成してある。
そして、このアーム型のロボットからなる走査機構20により、或るプローブ10を用いて検査対象物1をサーベイ中、そのプローブ10を、走査方向に応じて必要とする指向特性をもった他のローブと自動交換できるようになっている。
このときのプローブ10の自動交換は、次のようにして行われる。すなわち、まず、ローブ置き台20bを走査機構20のベース台車25、軌道26と同じフレームに取付け、これによりプローブ置き台20bと走査機構20の先端のプローブ着脱機構10cの位置関係が既知の位置関係になるようにしておく。
そして、このことを前提として、予め走査機構20のロボットをティーチング(教示)しておき、これにより通常のマニピュレータの制御と同様に、プレイバック自動運転することによりプローブ10が自動交換できるようにするのである。
従って、この実施形態では、現在把持しているプローブ10をプローブ置き台20bの所定の位置に戻し、この後、別の特性のプローブを把持して元のサーベイ位置に戻る動作を一連の自動運転動作として行うものである。
このときのティーチングとプレイバックに必要な動作制御データは、走査機構制御装置50に持たせてあり、従って、走査制御データ生成部40が前の検査データから走査制御条件の一種であるプローブ特性の変更データを生成した場合、プローブの交換指令を走査制御データの一部として走査機構制御装置50に出力したとき、プレイバック運転が実行される。
また、このとき交換されるプローブの種別や性能については、予め走査機構制御装置50に入力してあり、それに対応して切り替えスイッチ10eが切換えられ、選択されたプローブによる信号が検査データ記録部30と走査制御データ生成部40に正しく入力されるように制御される。
このように、特性が異なるプローブを複数用意しておけば、走査機構20で把持しているプローブを交換するだけで、自動検査の途中、その都度、容易にブローブの特性を変更することができるようになる。
このとき、走査機構20は、もともと自動運転制御ができる機能を有しているので、それを利用するだけで、プローブの特性変更を簡単に実現させることができる。
一方、プローブを走査する検査対象物1の周囲に十分なスペースがあり、走査機構20の先端にあるプローブ10の把持部が大きくなっても支障のない場合には、走査機構20の先端に予め複数個のプローブを設けておき、選択指令信号によりプローブの1個を選択し、それを所定の位置、つまりサーベイに必要な位置に移動させる機構を設け、これにより自動検査の途中でも任意に特性の異なるプローブに変更できるようにしてもよい。
従って、以上の実施形態によれば、プローブ10の特性、すなわち指向性の角度αや焦点距離、ビームの広がり特性などを、検査の途中で、それまでの検査結果データの状況に応じて適切なものに変更することができ、この結果、欠陥の調査をより一層正確に且つ詳細に連続して自動的に行うことができる。
次に、図13も本発明の実施形態で使用される電子スキャン方式のプローブの一例で、これは複数個の探触子、ここでは超音波探触子を121個(=11個×11個)、2次元的に配列したものである。
ここで、上記した図10では、探触子を一列に配置した1次元構成ものであるが、この図13の例では2次元に配列したものであり、しかもこのとき、更に各探触子を柔軟なシート状の部材に取り付け、シート状2次元アレイセンサとしている。
この結果、隣り合う探触子はシート状部材のつながれている部分で容易に曲がることができるようになり、配管などの曲面を有する検査対象物に適用したとき、その曲面に沿って曲がり、2次元の各探触子の全てを検査対象部位に正面から押し当てられた状態にすることができる。
従って、この図13に示したシート状2次元アレイセンサからなるプローブによれば、2次元配列されている探触子の中から任意の1次元アレイセンサの組み合わせを想定して電子スキャン制御を行うことができ、こうすることにより機械的な走査機構20を用いることなく、任意の方向の走査制御を電子スキャン制御だけで行わせることができるようになる。
具体的に説明すると、図13において、いま、例えば角度αの指向特性を持たせ、Pi方向に走査させたい場合には、2次元に配列されている探触子の中から、図示のように、Pi方向に並んでいる探触子a8、b8、c7、c8、d7、e7、f6、f7、g6、h6、i5、j5、k5、l4、l5を選択し、これらにより1次元のアレイセンサを仮想的に形成させる。
そして、これらを電子スキャン制御することにより、つまりPi方向に並んでいる各探触子の間隔距離を考慮した所定のタイミングで順次発信制御することにより、図10で説明した1次元のアレイセンサをPi方向に向けて走査制御したときと同じことが機械的な走査制御全く行わないで実現できることになる。
従って、この図13のプローブの場合、最初に所定の位置に所定の向きでシートを検査対象物1にかぶせる作業を行うだけで、後は全て電子スキャン制御により欠陥3の詳細な形状、大きさを詳細に検査できるようになる。
次に、図14と図15は、図11で説明した仮想球体10aによるプローブを探触子ユニット10Asmとし、これを複数個、図では二重丸で示してある折り曲げ自在な機構により相互に連結して2次元的に配置してプローブとした場合の一例である。
このとき、図15に示すように、ここでも複数個の探触子ユニット10Asmの個数は121個(=11個×11個)、2次元的に配置してある。
ここで、各ユニット10Asmは、図14に示すような回転自在な機構で連結してもよいし、図13の場合と同様、シート状の柔軟な部材で各々をつなぐようにしてもよい。
また、このとき、検査対象物がボイラの鏡板など3次元の曲面を持っている場合は、それにうまくフィットさせることができるように、各探触子ユニット10Asmの間隔を離して更にルーズにしておくとか、予めフィットさせたい曲面形状に合わせて探触子ユニット10Asmの個数や配置を考慮して各々を接続しておくようにすれば、3次元の曲面に対しても全ての探触子が正対した状態でかぶせることができるようになる。
また、このように探触子ユニット10Asmを2次元に配置してプローブにした場合、図14に示すように、複数個の淡色ユニット10Asmから同時に超音波を発信することはないので、隣り合う探触子の間隔をできるだけ狭め、高密度で配置できるようにするのがよい。
ここで、この図14の例では、図11の例のように、検査対象物1とプローブの間をシューで埋めるのではなく、液体或いはジェル状の接触媒体9で埋めるようにしてあり、この結果、より安定に曲面にフィットして設定できる。
このような2次元のアレイセンサをプローブ10として用い、検査対象物1にかぶせるようにしてやれば、機械的な走査機構が不要であることは勿論であるが、より多くの特性のプローブを電子スキャンできるようになるので、欠陥3をより正確に詳細に、しかも機械的な走査がないので、より早く確実に検査を行うことができる。
このとき、機械式走査機構と組み合わせたり、或いは検査員によるシートの再セットを行なったりして、シート全体を少しずらしてやれば、等価的に各探触子ユニット10Asmの中心点Oの間の間隔を狭めることができ、この結果、更に分解能が高められ、より一層木目細かに検査を行うことができる。
次に、本発明の実施形態について、図16により更に詳細に説明する。ここで、この図16に示した実施形態は、図1で説明した実施形態において、更にシミュレーション結果が格納される記憶装置70と模擬欠陥データが格納される記憶装置80、それにシミュレータ85を設け、これにより走査制御データ生成部40に更にシミュレーション機能が付加されるようにしたものである。
ここで、この実施形態の場合、第1の動作モードと第2の動作モードがある。そこで、まず、最初は第1の動作モードによる動作について説明する。
第1の動作モードの場合、予め欠陥のない検査対象物1を用意し、その種別データや形状データなどを用い、所定の特性のプローブ10により所定の位置から所定の条件、すなわち初期の走査制御データに基づく条件により走査し、計算機でプローブ10の応答信号を求めておく。
いま、プローブ10が超音波探触子であるとすると、この場合、超音波の指向性特性や広がり特性により、検査対象の形状によって反射する場所、反射する場合の音圧レベルの減衰定数など実際の材料特性より適切な数値を模擬(シミュレーション)しておくことができる。
つまり、プローブから発信して反射成分がプローブで戻ってくるまでの時間や、戻ったときの音圧レベルにより、それがプローブで電気信号に変換されたときの信号レベルまで計算で求めることができることになり、このため、例えば既に図5により説明したような応答波形を事前の計算機によるシミュレーションで求めておくことができる。
そこで、以上のことを、予め初期の走査制御データの記憶装置42にある走査予定データの全ての場合において計算しておき、その結果をシミュレーション結果の記憶装置70に記録しておく。
そして、この記憶した結果を初期の走査制御データの記憶装置42による走査条件により、実際にプローブ10を走査した場合に、このプローブ10からの信号と同じ時間軸スケールで比較するようにする。
このときのシミュレーション結果のデータは、検査対象物1に欠陥がないものとして計算されたものであり、従って、シミュレーション結果のデータになく、実際のプローブ10からの信号に応答があった場合には、それは欠陥からの信号であるということが容易に判断できる。
例えば検査対象物1が一様な板厚ではなく、途中に段差があるような場合などのとき、そこは実際には欠陥ではないが、超音波は反射するので、プローブだけの信号を見ていたのでは、それが欠陥によるものか、板厚変化部分によるものかを判別するのは容易なことではない。
しかして、上記したように、予め形状特性から得られる反射波をシミュレーションで求めておけば、それが欠陥ではない反射波であると判別するのは容易である。
このとき、システムの中に走査制御データ生成部40からの走査制御データ(含むプローブの種類、すなわちプローブの指向性などの特性データ)と、検査対象の形状データの記録装置45からの形状データ(表面形状に限ることはなく内部の切欠き形状や板厚形状や材料特性なども含めたデータ)を入力し、プローブ10の応答信号をシミュレーションするシミュレータ85を組み込んでおいてもよい。
この場合は、リアルタイムでシミュレーションできるように、高速の計算処理が必要になるが、予め多くのシミュレーション結果を記録装置70に準備しておく必要がなくなるのと、走査制御データ生成部40が生成した走査軌跡の場合もシミュレーションと比較できるようになるので、より精度よく欠陥の有無を検出できるようになる。
次に、第2の動作モードによる動作について説明すると、この場合には、更にシミュレータ85のシミュレーション結果を記録装置70に記録して、走査制御データ生成部40に入力するだけではなく、検査データ記録部30にもシミュレーション結果を入力するようにする。
そして、検査データ記録部30では、プローブ10からの実際の検査結果データを、同じく走査機構20のその時の実際の姿勢情報や位置情報と対応付けして記録すると共に、シミュレーション結果とも比較して欠陥データに相当する部分の信号を抽出し、そのような応答信号となる欠陥データを推定して、その推定結果を模擬欠陥データとして記憶装置80に記録するようにする。
これにより、シミュレータ85は、欠陥を感度よく検出するときに用いるシミュレーション結果として、欠陥の無い場合のシミュレーションと、模擬欠陥データ80の模擬欠陥データを用いた場合のシミュレーションとを行う。
記憶装置80の模擬欠陥データを組み込んだシミュレーション結果は、実際のプローブ10からの信号が一致しているかどうかで、記憶装置80の中の模擬欠陥データが実際の欠陥と同じになったということを確認する手段に用いる。
そして、同じでない場合、検査データ記録部30は、記憶装置80の中の模擬欠陥データの内容をシミュレーション結果と実際のプローブからの信号を比較してより実際のプローブからの信号と一致するように変更する。
それによって、実際のプローブ10からの信号と模擬欠陥データ80の内容を組み込んでシミュレーションした場合のシミュレータ85の出力結果が一致すれば模擬欠陥データは実際の欠陥を精度よく模擬するようになったということになる。
このようにすることによって、実際の欠陥の形状、寸法をより精度よく推定可能な検査結果データを模擬欠陥データ80として得ることができる。このとき、表示モニタ60では、プローブ10からの実際の検査データやシミュレーション結果、或いは模擬欠陥データなどを必要に応じて表示し、確認できるようにする。
ここで、表示モニタ60に模擬欠陥データを表示する場合、3D(三次元)のCG画像にで表示してやれば、任意の視野のもとで任意の方向に視点を変えながら欠陥が観測できるようになり、より見やすく監視することができる。
また、この場合は、検査対象物1の形状データも3DのCG画像で表示してやれば、分かりやすい表示となる。
ここで、以上に説明した実施形態における走査制御データ生成部40による具体的な処理フローについて、図17Aと図17B、それに図17Cのフローチャートにより説明する。
ここで、基本的な処理の流れとしては、スタートしたら、最初に処理40aで検査対象の形状データの読み込みを行う。このときの形状データには、検査対象物1の材質特性や板厚、内部の切欠き情報を含むものであってよい。
次に、処理40bでは初期の走査制御データを読み込む。このときの走査制御データには、どのような特性のプローブを用い、どのような走査軌跡により、どのような順番で走査するかの情報が含まれている。
このとき、一般的な走査軌跡としては、ジグザグな経路或いは矩形の折り返し経路により検査対象物1の検査対象部位全体をサーベイしてゆき、その全経路に沿ってサーベイして欠陥が検出されない場合には、その範囲には所定の大きさ以上の欠陥は存在しないということが言えるような走査軌跡としておくのがよい。
次の処理40cでは走査機構20の現在の姿勢、位置情報、プローブの設定情報を読み込み、続く処理40dでは走査機構の姿勢、位置、プローブの設定を所定の条件に合わせるように制御指令を走査機構制御装置50に出力する。なお、これは初期の走査制御データに基づく所定の走査制御を行うため、スタート条件が合っていない場合には合わせる必要があるためである。
次に処理40eで初期の走査制御データに基づく最初の所定の走査制御を行う走査機構の動作指令を走査機構制御装置50に出力し、実際に走査制御させ、次の処理40fでは実際に走査しているときのプローブ10からの検査データを読み込み、検査データに欠陥からの信号の有無を検出する処理を行う。
ここで、検出する手法に前述の欠陥の無い場合のシミュレーション結果データと比較するようにして精度よく欠陥データを検出するようにしてよい。
次の処理40gで、欠陥信号を検出した場合と、そうでない場合とで以後の処理を分ける。そして、欠陥が検出されない場合、つまり「No」のときは処理40iを介して処理40eに戻る。
これにより所定の走査制御データに基づいて次の走査制御を繰り返し、処理40iで全ての用意していた走査条件でのサーベイが終わったと判定されたら、その用意した走査条件で検出可能な欠陥は無かったということになり、本処理は終了する。
一方、処理40gで欠陥信号が検出された場合、つまり「Yes」のときは処理40hに進み、図5で説明したように、検査データの欠陥位置L(a)〜L(b)と欠陥信号MAXレベルS(a)max〜S(b)maxを検出する処理を行う。
このとき、欠陥位置L(a)〜L(b)の間を、図7で説明したように、等間隔ピッチに細かく分割するようにするのが望ましく、この場合は、より詳細なサーベイが得られるので、好ましい。
次の処理40jでは、欠陥が検出された走査制御データの軌跡データを基準にし、欠陥位置L(i)を中心にして、図8で説明したように走査方向を一方向に少し変更した軌跡データを、検査対象の形状データに基づいて生成し、制御指令を走査機構制御装置に出力する。
このとき、最初の欠陥位置L(i)は、位置L(a)、或いは位置L(b)の何れか一方の端部の位置にし、その次には等間隔で分割した隣の欠陥位置を位置L(i)とするように順番に処理するようにするのが分かりやすい。
次の処理40kでは、処理40jで実行した実際の走査結果の検査データを読み込み、検査データに欠陥位置L(i)からの欠陥による信号の有無を検出する。そして、この後、判別処理40l(Lの小文字)で、欠陥信号があるか否かで処理を分ける。
まず、ここで欠陥信号有り場合、つまり「Yes」のときは処理40mに進み、検査データの欠陥位置L(i)での欠陥信号MAXレベルS(i)maxを検出して、最初に検出されたときの信号レベルと比較する。
そして、処理40nで、その信号レベルが増加したか否かを判定し、ここで、信号レベルが増加したと判定された場合、つまり「Yes」のときは、その方向に更に走査方向を変えて走査制御すればプローブ10の信号レベルがさらに大きくなる(より欠陥の面に対して法線方向になる)ということを意味する。
そこで、このときは処理40oに進み、走査軌跡データを欠陥位置L(i)を中心に走査方向を同じ方向に少し変更した軌跡データとして、検査対象の形状データをもとに生成して、制御指令を走査機構制御装置50に出力する。
以下同様に処理40kに戻り、欠陥位置L(i)の欠陥信号MAXレベルS(i)maxが増加しつづける間は同じ方向へ走査方向を変えていく。
こうして、増加傾向がなくなって、判別処理40nで「No」になった場合には、今度は処理40pの後、処理40qで逆の方向に走査方向を変化させた場合の欠陥位置L(i)の欠陥信号MAXレベルS(i)maxがどうなるかを、同じようにして増加傾向がなくなるまでサーベイし、処理40nで「No」になり、更に処理40pでも「No」になったら、逆方向含めて両方向のサーベイが終了したものとし、処理40rで、欠陥位置L(i)を中心に走査方向を各種変えて走査制御した検査データの中で最も大きな欠陥信号の得られた方向をその欠陥面の法線方向として検査データに記録する。
ここで、十分な欠陥信号MAXレベルS(i)maxがいろいろな方向から走査した結果で得られたということは、欠陥位置L(i)には欠陥が間違いなく存在するということで模擬欠陥データ80にもその法線方向特性の情報も含めて記録するようにしてもよい。
ここで、欠陥信号MAXレベルS(i)maxが十分なレベルで得られない場合、具体的にはS/Nがギリギリの有意差程度の場合には、角度をいろいろ変えてみても、その結果として欠陥位置L(i)には欠陥がない可能性がある。
そこで、この場合には、より確実にサーベイするため、プローブ10の指向性特性、例えば角度αを違う角度に変え、同じようなサーベイを行うようにする。例えば、この角度αでは、たまたま平行な欠陥でS/N比が悪かった可能性もあるので、2種類或いは3種類、例えば45°、70°、90°の角度αのプローブを用い、それでも検査結果があまり有意差の信号がでない場合に、本当に欠陥位置L(i)には欠陥はないと判断するようにしてもよい。
また、この実施形態では、走査角度を左右に変化させる場合、そのとき変える角度は最初から小さな角度にし、サーベイの分解能を上げるようにした場合の処理の流れを示している。
しかし、このとき、サーベイ効率を上げるため、最初は大きな角度で変化させ、増加傾向が緩やかになったら逆方向に小さな角度で変化させるようにして、さらに増加傾向がなくなった場合には再度逆方向にさらに変化させる角度を小さくするというように、徐々に変化させる角度を小さくしながら、欠陥信号MAXレベルS(i)maxの最大ピークを得られる方向がより効率よくサーべイできるようにしてもよい。
以上のようにして、或る1点の欠陥位置L(i)についてのサーベイが終わったら、次に処理40tから処理40jへ戻って隣の欠陥位置L(i=i+1)の位置について同様の処理を繰り返し、判定処理40Sで、最初に等分割した欠陥位置L(a)〜L(b)の間の位置の全てに渡ってサーベイ済になった場合には処理40uに進む。
この処理40uでは欠陥位置の法線方向を調べるための走査制御を実施中、その中で新たに検出された欠陥位置が含まれる場合があるので、その欠陥位置について、最初の40hからの処理と同様にして、検出欠陥の法線方向を全ての欠陥位置と思われる全ての位置についてサーベイする。
そして、処理40vで、この新たに検出された欠陥位置についても、全ての法線方向が調べ終わったと判断された場合には、判別処理40iへ戻って初期に計画された走査制御データの残りの処理に戻る。
こうして判別処理40vで新たに検出された欠陥位置の全てについてサーベイが終了したら、次の処理40wで、走査軌跡データをまだ走査制御していない軌跡データについて走査したり、或いはプローブの特性を変えたりして、他にも欠陥は存在しないかをサーベイする。
なお、ここで、更に検出欠陥の周辺を詳しく走査制御して欠陥の状況をより詳しく調べる処理を入れたのは、もともとこの処理40uで調べた欠陥位置データは、最初に見つけた欠陥の法線方向をサーベイするときに、たまたま走査した新たな方向に欠陥が見付かった場合の処理に過ぎず、必ずしもここで欠陥の全体形状や大きさを知るのに十分なサーベイを行っているとは限らないためである。
そのため、処理40wでは、一度検出した欠陥の周辺近傍は他に欠陥の続いている個所がないかどうか、さらに積極的にサーベイする処理を行うようにし、これにより、最初に発見された欠陥につながる欠陥や近傍に存在する欠陥について、より確実に、また精度よく検出することが可能になる。
そして、このため、次の判別処理40xで欠陥の状況が十分に明確になったか否かを調べ、十分に明確になった場合に次の所定の走査制御パターンへ戻るようにした。このとき処理40xでは、記憶装置80から読出した模擬欠陥データを用いてシミュレータ85で実行したシミュレーション結果と、実際のプローブ10によるデータとが、いろいろな走査条件で十分一致しているということを確認して十分明確になったと判断するようにしてもよい。
ところで、以上の図17A〜図17Cのフローチャートによる処理の流れは本発明の基本的な処理であり、従って、図1と図3、図12、それに図16の機械的な走査機構を含む検査システムの走査制御データ生成部にも適用できるし、図13と図15で説明した2次元にセンサ(探触子)を配置した場合の実施形態でも、機械的な走査のかわりに電子スキャンになるだけであり、同様に同じ考え方で適用可能なものである。
次に、本発明の更に別の実施形態について、図18により説明する。ここで、この図18の実施形態は、図12の実施形態にTVカメラ90と形状データ生成部900、それに照明装置95(1)、95(2)を付加したものに相当し、その他の構成は同じである。
そして、まずTVカメラ90は、プローブ10の近傍に取付けられ、検査対象物1のプローブ10によるサーベイ点を中心として、その表面を撮像し、画像信号を形状データ生成部900に供給する働きをする。
次に、形状データ生成部900は、TVカメラ90から入力された画像信号を処理し、検査対象物1の表面形状を表すデータと、TVカメラ90と検査対象物1の相対位置姿勢関係を表すデータとを求める働きをする。
このように、検査対象物1の表面形状と相対位置姿勢関係が求められれば、走査機構20の現場での初期の設定位置誤差なども正しく校正(補正)できるようになり、従って、この実施形態によれば、検査装置の走査機構に対する検査対象物の位置関係を意識して、精度よくセッティングする必要がなくなる。
また、このように、検査対処物1の表面形状がTVカメラ90で撮像した画像情報から容易に得られるようにしてやれば、予め記憶装置45に検査対象の形状データを入力しておく必要もなくなる。
但し、この場合でも、検査対象物1の内部の切欠きや板厚データは計測が困難なので、必要最小限の検査対象の形状データについては予め入力しておき、セッティング時の位置ズレは計測結果から補正するようにしてやればよい。
このとき、TVカメラ90として、複眼のステレオ撮像が可能なカメラを持ちいるようにしてもよいし、TVカメラの代りにレーザ距離計などを用いて検査対象物1の表面形状を計測するようにしてもよい。
但し、TVカメラ90が単眼のカメラでも、走査機構20による移動量が参照できるので、複数箇所から撮影した映像を写真計測で3次元距離を計測するようにすれば、TVカメラの位置と合わせて計測値が求まり、その計測データで走査機構のセッティング位置を校正するようにしてもよい。
ところで、検査対象物1の表面が無地で、目視的には特徴となる点が何もない場合にはTVカメラ90で撮影しても検査対象物1の表面形状を画像情報から計測できない。そこで、この実施形態では、2基の照明装置95(1)、95(2)を用い、検査対象物1となっている配管の表面全体に所定のパターンによる模様が照射されるようにし、この状態でTVカメラ90により検査対象物1の表面形状を撮影するようにしてある。
このとき、マジックやペイントや粉体などにより検査対処物1の表面に直接模様を描いておくようにしてもよいのは勿論であるが、照明装置95(1)、95(2)により模様が得られるようにした方が、検査対象物1に直接加工を施す必要がないので、使い勝手がよくなる。
ここで、このときの模様は、図示のように、多数の点が散在しているパターンになっているが、複数本の直線や、複数の直線が交わっているメッシュ状の模様など、任意のパターンによる模様でもよい。