JP6657745B2 - 巻線型n相交流誘導回転電機 - Google Patents

巻線型n相交流誘導回転電機 Download PDF

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Description

本発明は、巻線型n相交流誘導回転電機に関し、特に、回転子に流れる二次電流を外部に取り出すために用いて好適なものである。
巻線型交流誘導回転電機は、すべりによる二次銅損が回転子に発生するため、同期回転電機に比較すると効率は劣るが、堅牢であり、メンテナンスコストが安いという利点があるため広く使用されている。さらに、巻線型交流誘導回転電機には、回転子に流れる二次電流を外部回路に取り出し、外部回路を制御することで、(1)起動時のトルクを制御できる、(2)インバータ回路のような複雑な回路を用いずとも回転電機の回転数を制御できる、等のメリットがある。
巻線型三相交流誘導回転電機では、3個のスリップリングを、回転電機の回転軸に配置し、3個のスリップリングのそれぞれに3個の接触子(ブラシ)を個別に接触させることにより、回転子の三相の二次電流を外部回路に取り出す。しかしながら、このスリップリングおよび接触子(ブラシ)を使用中に頻繁にメンテナンスすることが必要であり、本来メンテナンスフリーに近い巻線型三相交流誘導回転電機の利点が損なわれるという問題がある。
このような問題に対し、特許文献1には、整流子との接触面の延長方向が整流子の軸方向に対して傾斜し、且つ、その接触面を延長方向に見たときの形状がV字状である接触子(ブラシ)について記載されている。
特開2010−207083号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、接触子(ブラシ)の形状を改善するものである。このため、特許文献1に記載の接触子(ブラシ)を巻線型交流誘導回転電機に適用しても、磨耗粉の発生を防いだり、接触子(ブラシ)およびスリップリングの交換そのものを無くしたりする効果は期待できない。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機の回転子に流れる二次電流を非接触で外部回路に取り出せるようにすることを目的とする。
本発明の巻線型n相交流誘導回転電機は、回転子コイルを有する回転子と、固定子とを有する巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機であって、前記n相のそれぞれに対して設けられ、且つ、前記巻線型n相交流誘導回転電機の回転軸の軸方向に沿って配置されるn個の誘導回路と、前記n個の誘導回路に付随する鉄心と、前記n相のそれぞれに対して設けられるn個の可変インピーダンスと、前記n個の誘導回路に交流電力を供給する交流電力供給回路とを有する二次電流制御回路と、を有し、前記n個の誘導回路のそれぞれは、前記回転軸と同軸となるように巻き回され、且つ、前記回転軸の回転に伴い回転するコイルである回転誘導コイルと、回転している前記回転誘導コイルと磁気的に結合するように巻き回され、且つ、固定された状態で配置される固定誘導コイルと、を有し、第m相(mは1〜nまでの整数)に対して設けられる前記誘導回路の前記回転誘導コイルは、当該第m相の回転子コイルと電気的に接続され、第m相(mは1〜nまでの整数)に対して設けられる前記誘導回路の前記固定誘導コイルは、当該第m相に対して設けられる前記可変インピーダンスと電気的に接続され、前記n個の誘導回路に付随するそれぞれの前記鉄心は、他の前記鉄心とは分離独立した鉄心であり、前記n個の誘導回路に付随する前記鉄心は、前記巻線型n相交流誘導回転電機の回転軸の軸方向に沿って間隔を有して配置される鉄心であり、前記交流電力供給回路は、前記n相のそれぞれに対して設けられるn個のインバータを有し、前記二次電流制御回路は、前記n相のそれぞれの前記回転子コイルに流れる二次電流の波形に基づいて、前記n相のそれぞれに対して設けられる前記インバータのそれぞれの動作を制御することと、前記n相のそれぞれの前記回転子コイルに流れる二次電流の周波数に基づいて、前記n相のそれぞれに対して設けられる前記可変インピーダンスの値のそれぞれを制御することを特徴とする。
本発明によれば、巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機の回転子コイルに流れる二次電流を非接触で外部回路に取り出すことができる。
巻線型三相交流誘導回転電機の回路構成の一例を示す図である。 誘導回路の構成の第1の例を示す図である。 誘導回路の構成の第2の例を示す図である。 誘導回路の構成の第3の例を示す図である。 誘導回路の構成の第4の例を示す図である。 誘導回路の構成の第5の例を示す図である。 誘導回路の構成の第6の例を示す図である。 誘導回路の構成の第7の例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の各実施形態では、巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機として、巻線型三相交流誘導回転電機(すなわちnが3の場合)を例に挙げて説明する。尚、回転電機は、電動機であっても、発電機であってもよい。
(第1の実施形態)
第1の実施形態を説明する。
図1は、巻線型三相交流誘導回転電機の回路構成の一例を示す図である。
図1において、巻線型三相交流誘導回転電機は、固定子コイル10と、回転子コイル(型巻きコイル)20と、誘導回路30と、二次電流制御回路40と、を有する。固定子コイル10には三相交流電源50が接続される。
図1では、固定子コイル10と回転子コイル20がそれぞれデルタ結線されている場合を例に挙げて示す。しかしながら、固定子コイル10と回転子コイル20の少なくとも何れか一方はスター結線であってもよい。例えば、スターデルタ始動(Y−Δ始動)としてもよい。また、回転子鉄心等、公知の巻線型三相交流誘導回転電機の回転子(巻線型回転子)および固定子が有する構成を本実施形態の巻線型三相交流誘導回転電機も有する。ただし、本実施形態の巻線型三相交流誘導回転電機では、スリップリングおよび接触子(ブラシ)を用いない。
図2は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図2は、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60に沿って切った場合の誘導回路30の断面図を示す。巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60は、例えば、非磁性体により構成される。
図1および図2において、誘導回路30は、U相用誘導回路30aと、V相用誘導回路30bと、W相用誘導回路30cと、を有する。U相用誘導回路30aは、U相の回転子コイルに流れる二次電流を回転子と非接触で検出するためのものである。V相用誘導回路30bは、V相の回転子コイルに流れる二次電流を回転子と非接触で検出するためのものである。W相用誘導回路30cは、W相の回転子コイルに流れる二次電流を回転子と非接触で検出するためのものである。このように、巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機の1つの相に対し1つの誘導回路を設ける。尚、本実施形態では、U相、V相、W相が、第m相(mは1〜nの整数)、すなわち、第1相、第2相、第3相に対応する。
U相用誘導回路30aは、回転誘導コイル31aと、鉄心32aと、固定誘導コイル33aとを有する。V相用誘導回路30bは、回転誘導コイル31bと、鉄心32bと、固定誘導コイル33bとを有する。W相用誘導回路30cは、回転誘導コイル31cと、鉄心32cと、固定誘導コイル33cとを有する。
本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cは、同じ構成を有する。
鉄心32a〜32cは、中空円筒形状を有する鉄心である。鉄心32a〜32cの内周面と巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60の外周面とが相互に対向するように、鉄心32a〜32cは、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60に取り付けられる。このとき、鉄心32a〜32cと巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60とが電気的に絶縁された状態にする。例えば、鉄心32a〜32cと巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60との間に絶縁材を挟むことにより、鉄心32a〜32cと巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60とが電気的に絶縁された状態にすることができる。尚、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60が絶縁体で形成されている場合には、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60に直接鉄心32a〜32cを取り付けることができる。
また、鉄心32a〜32cは、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60の長手方向(軸方向)において相互に間隔を有した状態で、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60に取り付けられる。尚、鉄心32a〜32cは、強磁性体により構成される。また、図2において、鉄心32a〜32cに付している矢印線は、磁力線を概念的に示すものである。
本発明者らは、回転子コイル20に流れる二次電流を非接触で検出するために、電磁誘導現象を利用することに着目した。しかしながら、誘導機に特有のすべりのために、回転子コイル20に流れる二次電流の周波数が変化することにより、三相交流の位相および波形の制御の精度が低下してしまい、一般的な接触型の巻線型三相交流誘導回転電機が有するメリットを得ることができない場合があるという知見を得た。そして、このことは、三相のそれぞれに設置される電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)が磁気的に干渉してインダクタンスが変化し、各相の誘導回路30a〜30cのインピーダンスが変化してしまうためであるという知見を得た。また、電磁誘導コイルによる電磁誘導作用は、各電磁誘導コイルのインダクタンスへの相互の影響だけでなく、配線等によるキャパシタンスや抵抗の変化を介しても、回路全体のインピーダンスの変化に影響を与えるという知見を得た。このように各相の誘導回路30a〜30cを含む回路のインピーダンスが変化すると、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下する。
そこで、本実施形態では、このような電磁誘導コイルの磁気的な干渉による巻線型三相交流誘導回転電機の効率の低下が実用上問題にならなくなるように、鉄心32a〜32cのうち、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60の長手方向において相互に隣接して配置される2つの鉄心の間隔を決定する。
尚、以下の説明では、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60を必要に応じて単に回転軸60と称する。
図1に示すように、回転誘導コイル31a、31b、31cの一端は、それぞれ、U相の回転子コイル、V相の回転子コイル、W相の回転子コイルに接続される。回転誘導コイル31a、31b、31cの他端は、相互に接続される。このように、回転誘導コイル31a、31b、31cの結線は、デルタ結線となる。
回転誘導コイル31a〜31cは、それぞれ、鉄心32a〜32cと電気的に絶縁された状態で、回転軸60と巻軸が略同軸になるように、鉄心32a〜32cの外周面に対して巻き回される。また、回転誘導コイル31a〜31cは、それぞれ、絶縁材を介して鉄心32a〜32cに固定される。したがって、回転軸60が回転すると、回転誘導コイル31a〜31cと鉄心32a〜32cは、回転軸60を回転軸として、回転軸60と共に回転する。
尚、図2では、回転誘導コイル31a〜31cが一層(一段)のコイルであるものとしているが、回転誘導コイル31a〜31cは、複数層のコイルとしてもよい。すなわち、回転誘導コイル31a、31b、31cが、それぞれ、鉄心32a、32b、32cの外周面に対して巻き回されていれば、回転誘導コイル31a〜31の巻数は限定されない。
図1に示すように、固定誘導コイル33a、33b、33cの一端は、それぞれ、二次電流制御回路40の端子41a、41b、41cに接続される。固定誘導コイル33a、33b、33cの他端は、相互に接続される。
固定誘導コイル33a、33b、33cは、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと電気的に絶縁された状態で、回転軸60と巻軸が略同軸になるように、回転誘導コイル31a〜31cの外周面に対して巻き回される。固定誘導コイル33a〜33cと回転誘導コイル31a〜31cとの間隔は可及的に短い方が好ましい。コイル間の静電容量等を低減することができるからである。固定誘導コイル33a〜33cは、固定されており、回転軸60が回転しても動かない。本実施形態では、以上のようにして固定誘導コイル33a、33b、33cと、回転誘導コイル31a、31b、31cとを磁気的に結合させる。
尚、図2では、固定誘導コイル33a〜33cが一層(一段)のコイルであるものとしているが、固定誘導コイル33a〜33cを複数層のコイルとしてもよいことは、回転誘導コイル31a〜33cと同様である。
前述したように、U相の回転子コイル、V相の回転子コイル、W相の回転子コイルは、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cに接続されている。したがって、U相の回転子巻線、V相の回転子巻線、W相の回転子巻線に二次電流が流れると、回転誘導コイル31a、31b、31cに二次電流が流れる。回転誘導コイル31a、31b、31cに二次電流が流れると、電磁誘導により、それぞれ、固定誘導コイル33a、33b、33cに、回転誘導コイル31a、31b、31cと固定誘導コイル33a、33b、33cの巻数比に応じた電流が流れる。
二次電流制御回路40は、端子41a〜41cと、可変インピーダンス42a〜42cと、交流電力供給回路43a〜43cと、制御回路44とを有する。
本実施形態では、可変インピーダンス42a〜42cは、同じ構成を有する。
可変インピーダンス42a、42b、42cの一端は、それぞれ、端子41a、41b、41cに接続される。可変インピーダンス42a、42b、42cの他端は、それぞれ、交流電力供給回路43a〜43cの一端に接続される。
可変インピーダンス42a〜42cは、抵抗R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCにより構成される回路を有し、制御回路44による制御に基づいて、抵抗R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCの少なくとも1つを変更することができる。
可変インピーダンス42a〜42cのインピーダンスを変更する方法は、公知の方法で実現することができる。インダクタンスLを変更する方法としては、例えば、ヘルムホルツコイルの中に挿入される、α鉄などの強磁性体の挿入深さを変化させる方法がある。また、有効な巻線数が異なる位置に複数の接続端子を設けたコイルにおける当該接続端子の位置を変える方法もある。キャパシタンスCを変更する方法としては、例えば、電極の位置を変更する(電極間の距離を変更する)方法がある。他の方法でインピーダンスを変更させてもよい。
また、それぞれが異なるインピーダンスを有する複数の回路として、抵抗R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCにより構成される回路を構成し、当該複数の回路の1つが選択されるようにすることで、可変インピーダンス42a〜42cのインピーダンスを変更してもよい。
尚、可変インピーダンス42a〜42cは、抵抗R、インダクタンスLおよびキャパシタンスCの全てを有さずに、これらの少なくとも1つを有していてもよい。例えば、可変インピーダンス42a〜42cは、抵抗Rと、インダクタンスLまたはキャパシタンスCとを有していてもよい。
本実施形態では、交流電力供給回路43a〜43cは、同じ構成を有する。
前述したように、交流電力供給回路43a、43b、43cの一端は、それぞれ、可変インピーダンス42a、42b、42cの他端に接続される。交流電力供給回路43a、43b、43cの他端は、相互に接続される。
このように、固定誘導コイル33a・可変インピーダンス42a・交流電力供給回路43a、固定誘導コイル33b・可変インピーダンス42b・交流電力供給回路43b、固定誘導コイル33c・可変インピーダンス42c・交流電力供給回路43cの結線は、スター結線となる。
本実施形態では、交流電力供給回路43a〜43cは、インバータと、インバータの出力側(出力端子)に接続されるリアクトルとを有する。交流電力供給回路43a、43b、43c内のインバータは、それぞれ、固定誘導コイル33a、33b、33cに交流電力を供給することにより、二次電流の波形と大きさを調整する。インバータは、制御回路44による制御に基づいて動作する。交流電力供給回路43a、43b、43c内のリアクトルは、固定誘導コイル33a、33b、33cに流れる電流の高調波を除去する。
制御回路44は、U相の回転子コイルに流れる二次電流の周波数を検出し、検出した二次電流の周波数に応じて、可変インピーダンス42aのインピーダンスの値を変更する。同様に、制御回路44は、V相の回転子コイル、W相のコイルに流れる二次電流の周波数を検出し、検出した二次電流の周波数に応じて、可変インピーダンス42b、42cのインピーダンスの値を変更する。このように制御回路44は、可変インピーダンス42a、42b、42cのインピーダンスを個別に制御することができる。このようにすることで、誘導機に特有のすべりにより、回転子コイル20の二次電流の周波数が変化するのに対応して、誘導回路30のインピーダンスを精密に可変制御することができる。例えば、巻線型三相交流誘導回転電機の始動時においては、制御回路44は、巻線型三相交流誘導回転電機の始動トルクが大きくなるように、可変インピーダンス42a〜42cのインピーダンスの値を変更することができる。また、例えば、巻線型三相交流誘導回転電機の運転時においては、制御回路44は、巻線型三相交流誘導回転電機の定格回転数が維持されるように、可変インピーダンス42a〜42cのインピーダンスの値を変更することができる。
二次電流の周波数の測定方法は公知の機器によればよい。簡易なものとしては、U相、V相、W相の各導線にクランプ式の電流計をはさむことなどが低コストで実現できる。高度な方法としては、例えば、オシログラフにより二次電流の波形を測定し、さらにその二次電流の波形の周波数成分をフーリエ解析で分離するなどの方法がある。
各可変インピーダンス42a〜42cの値は、二次電流の周波数により決まる。特にヘルムホルツコイルなどのインダクタンスがLであると、そのインピーダンスの単独の絶対値はZ=2πfLとなり、コンデンサなどのキャパシタンスがCであると、そのインピーダンスの単独の絶対値はZ=1/(2πfC)となる。
尚、可変インピーダンス42a〜42cのインピーダンスを制御回路44により自動的に変更せずに手動で変更するようにしてもよい。
また、制御回路44は、U相の回転子コイルに流れる二次電流の波形を検出し、検出した二次電流の波形と目標波形との偏差が0(ゼロ)になるように、可変インピーダンス42a内のインバータの動作を制御する(すなわち、フィードバック制御を行う)。同様に、制御回路44は、V相の回転子コイル、W相のコイルに流れる二次電流を検出し、検出した二次電流の波形と目標波形との偏差が0(ゼロ)になるように、可変インピーダンス42b、43c内のインバータの動作を制御する。このような波形制御により、電圧波形、電流波形、および位相(力率)の制御を行うことができる。また、二次電流に含まれる高調波ノイズを、インバータから発生するノイズで相殺することもできる。
尚、可変インピーダンス42a〜42cを、二次抵抗として機能させる場合、制御回路44は、前述した制御の他に、二次抵抗を用いた公知の制御を実現することができる。
以上のように本実施形態では、回転子コイル20と共に回転する回転誘導コイル31a〜31cと、回転誘導コイル31a〜31cに近接して固定される固定誘導コイル33a〜33cとの間に生じる電磁誘導現象を利用して、固定誘導コイル33a〜33cに、回転子コイル20に流れる二次電流を相ごとに個別に取り出す。したがって、回転子コイル20に流れる二次電流を非接触で個別に取り出すことができる。このように、接触子(ブラシ)とスリップリングを用いずに、回転子コイル20に流れる二次電流を取り出すことで、接触子(ブラシ)とスリップリングとの接触状態に起因する高周波ノイズが発生することを防止することができる。
また、本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cのうち、回転軸60の長手方向において相互に隣接して配置される2つの誘導回路が間隔を有して配置されるようにした。したがって、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉を抑制することで、回路のインピーダンスを高精度に制御することができる。よって、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態では、鉄心32a〜32cによる磁気回路が閉じないようにした(鉄心32a〜32cによって閉磁路が構成されないようにした)。したがって、誘導回路30a〜30cを構成する部材を加工する際の寸法の精度や、部材を組み立てる際の部材の位置の精度として高い精度を必要としない。よって、巻線型三相交流誘導回転電機および周辺回路(誘導回路30等)からなる回路のインピーダンスと、巻線型三相交流誘導回転電機を駆動する際の各相の電圧・電流波形に応じて、当該回路を再設計することが容易になり、巻線型三相交流誘導回転電機および周辺回路(誘導回路30等)を組み立て後に、各相の電圧・電流波形の制御を容易に調整することができる。
また、各相に設けられた可変インピーダンス42a〜42cと交流電力供給回路43a〜43cを用いることで、三相交流の電圧・電流の波形制御・力率制御(位相制御)をより高精度に行うことができる。したがって、巻線型三相交流回転電機のトルク制御および速度制御を、より広範囲に亘って高精度に行うことができる。
また、三相交流回路において簡潔な配線であるスター結線やデルタ結線を採用することができ、回路の配線を簡略化することができる。よって、製造コストを低減することができる。
本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cが同じ構成である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、物理的配置等により、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cのインピーダンスが異なる場合には、本実施形態のように、回転軸60の長手方向において相互に隣接して配置される2つの誘導回路の間に間隔を空けることに加えてまたは代えて以下のようにしてもよい。
すなわち、回転誘導コイル31a〜31cの少なくとも1つの巻数をその他の回転誘導コイルの巻数と異ならせることと、固定誘導コイル33a〜33cの少なくとも1つの巻数をその他の固定誘導コイルの巻数と異ならせることと、鉄心32a〜32cの少なくとも1つの透磁率をその他の鉄心の透磁率と異ならせることとの少なくとも何れか1つにより、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cのインピーダンスを同じ(等価)にすることもできる。また、このようにすることに加えまたは代えて、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cの少なくとも何れか1つに、受動素子(例えば、抵抗とコンデンサとの少なくとも何れか一方)を組み込むことで、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cのインピーダンスを同じ(等価)にすることもできる。
また、本実施形態では、可変インピーダンス42a〜42cと、交流電力供給回路43a〜43cと、を直列に接続する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、可変インピーダンス42a、42b、42cに対し、交流電力供給回路43a、43b、43cを、それぞれ並列に接続してもよい。また、前述したように交流電力供給回路43a、43b、43cを設けるのが好ましいが、必ずしも交流電力供給回路43a、43b、43cを設けなくてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。
第1の実施形態で説明したように、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉による巻線型三相交流誘導回転電機の効率の低下を抑制することが好ましい。第1の実施形態では、鉄心32a〜32cのうち、回転軸60の長手方向において相互に隣接して配置される2つの鉄心の間隔により、電磁誘導コイルの磁気的な干渉を抑制する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cに対して、磁気シールドを行うことにより、電磁誘導コイルの磁気的な干渉を抑制する。このように本実施形態と第1の実施形態は、磁気シールドの有無が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の構成については、図1〜図2に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図3は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図3は、図2に対応する図である。
本実施形態の誘導回路30は、第1の実施形態と同様に、U相用誘導回路30aと、V相用誘導回路30bと、W相用誘導回路30cとを有する。U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、W相用誘導回路30cは、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cに加え、磁気シールド部材34a、34b、34cを有する。
磁気シールド部材34a〜34cは、同じ構成を有する。
磁気シールド部材34a〜34cは、中空円筒の表面部分(中空円筒の表面から所定の距離だけ隔てた部分)を残した形状を有する。磁気シールド部材34a〜34cは、その内周面と回転軸60の外周面とが相互に対向し、且つ、その軸と回転軸60とが略同軸になるように、回転軸60と電気的に絶縁された状態で配置される。磁気シールド部材34a〜34cは、固定されており、回転軸60が回転しても動かない。ただし、磁気シールド部材34a〜34cを回転軸60の回転に伴って回転させるようにしてもよい。
磁気シールド部材34a、34b、34cの内部には、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cが収容される。したがって、磁気シールド部材34a、34b、34cの内部の空間の大きさは、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cが収容できる大きさを有する。
磁気シールド部材34a〜34cは、強磁性体により構成される。
以上のように本実施形態では、磁気シールド部材34a〜34cを用いるので、鉄心32a、32b、32cから発生する磁束が磁気シールド部材34a〜34cの外部に漏えいすることを抑制することができると共に、磁気シールド部材34a〜34cの外部から内部に磁束が進入することを抑制することができる。したがって、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉をより抑制することができ、回路のインピーダンスをより高精度に制御することができる。よって、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下することをより抑制することができる。また、第1の実施形態に比べ、回転軸60の長手方向(軸方向)におけるU相用誘導回路30aおよびV相用誘導回路30bの間隔と、V相用誘導回路30bおよびW相用誘導回路30cの間隔とを短くする(またはなくす)ことができる。
尚、本実施形態でも、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。
本実施形態では、回転軸60の長手方向(軸方向)に沿って隣接する2つの誘導回路(U相用誘導回路30aとV相用誘導回路30bとの間、および、V相用誘導回路30bとW相用誘導回路30c)の間の領域に非磁性体を配置することにより、電磁誘導コイルの磁気的な干渉を抑制する。このように本実施形態と第1の実施形態は、非磁性体の有無が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の構成については、図1〜図2に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図4は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図4は、図2に対応する図である。
本実施形態の誘導回路30は、U相用誘導回路30aと、V相用誘導回路30bと、W相用誘導回路30cに加え、非磁性部材35a、35bとを有する。U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、W相用誘導回路30cは、第1の実施形態と同様に、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cを有する。
非磁性部材35a、35bは、同じ構成を有する。
非磁性部材35a、35bは、中空円筒形状を有する。非磁性部材35a、35bは、その内周面と回転軸60の外周面とが相互に対向し、且つ、その軸と回転軸60とが略同軸になるように、回転軸60と電気的に絶縁された状態で配置される。非磁性部材35a、35bは、固定されており、回転軸60が回転しても動かない。ただし、非磁性部材35a、35bを回転軸60の回転に伴って回転させるようにしてもよい。
非磁性部材35aは、U相用誘導回路30aとV相用誘導回路30bとの間の空間に配置される。一方、非磁性部材35bは、V相用誘導回路30bとW相用誘導回路30cとの間の空間に配置される。
非磁性部材35a、35bは、非磁性体により構成される。
以上のように本実施形態では、非磁性部材35a、35bを用いるので、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉をより抑制することができ、回路のインピーダンスをより高精度に制御することができる。よって、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下することをより抑制することができる。
尚、本実施形態でも、前述した各実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。第3の実施形態では、回転軸60の長手方向(軸方向)に沿って隣接する2つの誘導回路(U相用誘導回路30aとV相用誘導回路30bとの間、および、V相用誘導回路30bとW相用誘導回路30c)の間の領域のみに非磁性体を配置する場合について説明した。これに対し、本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cをそれぞれ覆うように非磁性体を配置する。このように本実施形態と第3の実施形態とは非磁性体の構成が異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1、第3の実施形態と同一の構成については、図1〜図2、図4に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図5は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図5は、図2、図4に対応する図である。
本実施形態の誘導回路30は、第1の実施形態と同様に、U相用誘導回路30aと、V相用誘導回路30bと、W相用誘導回路30cとを有する。U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、W相用誘導回路30cは、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cに加え、非磁性部材36a、36b、36cを有する。
非磁性部材36a、36b、36cは、同じ構成を有する。
非磁性部材36a〜36cは、中空円筒の表面部分(表面から所定の距離だけ隔てた部分)を残した形状を有する。非磁性部材36a〜36cは、その内周面と回転軸60の外周面とが相互に対向し、且つ、その軸と回転軸60とが略同軸になるように、回転軸60と電気的に絶縁された状態で配置される。非磁性部材36a〜36cは、固定されており、回転軸60が回転しても動かない。ただし、非磁性部材36a〜36cを回転軸60の回転に伴って回転させるようにしてもよい。
非磁性部材36a、36b、36cの内部には、それぞれ、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、非磁性部材36a、36b、36cが収容される。したがって、非磁性部材36a、36b、36cの内部の空間の大きさは、回転誘導コイル31a、31b、31cと、鉄心32a、32b、32cと、固定誘導コイル33a、33b、33cが収容できる大きさを有する。
非磁性部材36a、36b、36cは、非磁性体により構成される。
以上のようにしても第3の実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
尚、本実施形態でも、前述した各実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を説明する。
図6は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図6は、図3、図4に対応する図である。図6に示すように、第2の実施形態で説明した磁気シールド部材34a〜34cと、第3の実施形態で説明した非磁性部材35a、35bの双方を用いてもよい。このようにすれば、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉をより一層抑制することで、回路のインピーダンスをより一層高精度に制御することができる。よって、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下することをより一層抑制することができる。
尚、本実施形態でも、前述した各実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を説明する。
図7は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図5は、図3、図5に対応する図である。図7に示すように、第2の実施形態で説明した磁気シールド部材34a〜34cと、第4の実施形態で説明した非磁性部材36a〜36cの双方を用いてもよい。このようにすれば、電磁誘導コイル(回転誘導コイル31a〜31cおよび固定誘導コイル33a〜33c)の磁気的な干渉をより一層抑制することで、回路のインピーダンスをより一層高精度に制御することができる。よって、巻線型三相交流誘導回転電機の効率が低下することをより一層抑制することができる。
尚、本実施形態でも、前述した各実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態を説明する。第1〜第6の実施形態では、各相の誘導回路30a〜30cの鉄心32a〜32cによって閉磁路が形成されないようにした。これに対し、本実施形態では、各相の誘導回路30a〜30cの鉄心によって閉磁路が形成されるようにする。このように本実施形態と第1〜第6の実施形態は、各相の誘導回路30a〜30cの鉄心の構成が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1〜第6の実施形態と同一の構成については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図8は、本実施形態の誘導回路30の構成の一例を示す図である。図8は、図2に対応する図である。
本実施形態の誘導回路30は、第1の実施形態と同様に、U相用誘導回路30aと、V相用誘導回路30bと、W相用誘導回路30cとを有する。U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、W相用誘導回路30cは、それぞれ、回転誘導コイル37a、37b、37cと、鉄心38a、38b、38cと、固定誘導コイル39a、39b、39cとを有する。
本実施形態では、U相用誘導回路30a、V相用誘導回路30b、およびW相用誘導回路30cは、同じ構成を有する。
鉄心38a、38b、38cは、それぞれ、内周側鉄心38a1、38b1、38c1と、外周側鉄心38a2、38b2、38c2とを有する。
内周側鉄心38a1〜38c1は、中空円筒形状を有する鉄心である。内周側鉄心38a1〜38c1の内周面と回転軸60の外周面とが電気的に絶縁した状態で相互に対向するように、内周側鉄心38a1〜38c1は、回転軸60に取り付けられる。
また、内周側鉄心38a1〜38c1は、回転軸60の長手方向(軸方向)において間隔を有した状態で、巻線型三相交流誘導回転電機の回転軸60に取り付けられる。尚、内周側鉄心38a1〜38c1は、強磁性体により構成される。
外周側鉄心38a2〜38c2は、中空円筒の表面部分(表面から所定の距離だけ隔てた部分)を残した形状を有する。外周側鉄心38a2、38b2、38c2は、それぞれ、その内周面(のうち最も内側(回転軸60側)に位置する部分)と、内周側鉄心38a1、38b1、38c1の外周面とが間隔(隙間G)を有して相互に対向し、且つ、その軸と回転軸60とが略同軸になるように配置される。回転軸60が回転すると、内周側鉄心38a1〜38c1と共に回転するように外周側鉄心38a2〜38c2が構成される。例えば、前述した外周側鉄心38a2、38b2、38c2の内周面と内周側鉄心38a1、38b1、38c1の外周面との間の隙間Gに絶縁材を配置する場合、外周側鉄心38a2、38b2、38c2は、それぞれ、絶縁材を介して、内周側鉄心38a1、38b1、38c1に固定される。このようにすることにより、外周側鉄心38a2〜38c2は内周側鉄心38a1〜38c1と共に回転する。
尚、外周側鉄心38a2〜38c2は、強磁性体により構成される。また、図8において、鉄心38a〜38cの内部に付している矢印線は、磁力線を概念的に示すものである。隙間Gの大きさにより、各相の誘導回路30a、30b、30cのインダクタンスが変化する(隙間Gが大きくなると、各相の誘導回路30a、30b、30cのインダクタンスは大きくなる)。隙間Gの大きさは、各相の誘導回路30a、30b、30cのインダクタンスをどのような値にするかに応じて適宜決定される。ただし、必ずしも隙間Gを設けなくてもよい。この場合、外周側鉄心38a2、38b2、38c2の内周面(のうち最も内側(回転軸60側)に位置する部分)と、内周側鉄心38a1、38b1、38c1は、それぞれ、接触した状態になる。
また、第1の実施形態で説明したように、回転誘導コイル37a、37b、37cの一端は、それぞれ、U相の回転子コイル、V相の回転子コイル、W相の回転子コイルに接続される。回転誘導コイル37a、37b、37cの他端は、相互に接続される。
図8において、回転誘導コイル37a、37b、37cは、それぞれ、鉄心37a、37b、37cと電気的に絶縁された状態で、回転軸60と巻軸が略同軸になるように、内周側鉄心38a1、38b1、38c1の外周面のうち、前述した隙間Gが形成される部分を除く領域に対して巻き回される。また、回転誘導コイル37a、37b、37cは、それぞれ、絶縁材を介して鉄心37a、38b、38cに固定される。したがって、回転軸60が回転すると、回転誘導コイル37a〜37cと鉄心38a〜38cは、回転軸60を回転軸として、回転軸60と共に回転する。
尚、図8では、回転誘導コイル37a〜37cが複数層(複数段)のコイルであるものとしているが、回転誘導コイル37a〜37cは、一層のコイルとしてもよい。すなわち、回転誘導コイル37a、37b、37cが、それぞれ、鉄心38a、38b、38cに対して巻き回されていれば、回転誘導コイル37a〜37cの巻数は限定されない。
また、第1の実施形態で説明したように、固定誘導コイル39a、39b、39cの一端は、それぞれ、二次電流制御回路40の端子41a、41b、41cに接続される。固定誘導コイル39a、39b、39cの他端は、相互に接続される。
固定誘導コイル39a、39b、39cは、それぞれ、第1の固定誘導コイル39a1、39b1、39c1と、第2の固定誘導コイル39a2、39b2、39c2とを有する。第1の固定誘導コイル39a1、39b1、39c1と、第2の固定誘導コイル39a2、39b2、39c2は直列に接続される。したがって、固定誘導コイル39a、39b、39cの一端は、第1の固定誘導コイル39a1、39b1、39c1の両端のうち、第2の固定誘導コイル39a2、39b2、39c2と接続されていない方の端部になる。一方、固定誘導コイル39a、39b、39cの他端は、第2の固定誘導コイル39a2、39b2、39c2の両端のうち、第1の固定誘導コイル39a1、39b1、39c1と接続されていない方の端部になる。
固定誘導コイル39a、39b、39cは、それぞれ、鉄心37a、37b、37cおよび回転誘導コイル31a、31b、31cと電気的に絶縁された状態で、外周側鉄心38a2、38b2、38c2の最も外周側の領域(回転軸60から最も離れた領域)に巻き回される。固定誘導コイル39a〜33cは、固定されており、回転軸60が回転しても動かない。
本実施形態では、以上のようにして固定誘導コイル39a、39b、39cと、回転誘導コイル37a、37b、37cとを磁気的に結合させる。
尚、図8では、固定誘導コイル39a〜39cが複数層(複数段)のコイルであるものとしているが、固定誘導コイル39a〜39cを一層のコイルとしてもよいことは、回転誘導コイル37a〜37cと同様である。また、第1の固定誘導コイル39a1、39b1、39c1および第2の固定誘導コイル39a2、39b2、39c2は、それぞれ、回転軸60に対して周回しないように鉄心37a、37b、37cに対して巻き回されていれば、必ずしも図8に示す位置に巻き回す必要はない。
前述したように、U相の回転子コイル、V相の回転子コイル、W相の回転子コイルは、それぞれ、回転誘導コイル37a、37b、37cに接続されている。したがって、U相の回転子巻線、V相の回転子巻線、W相の回転子巻線に二次電流が流れると、回転誘導コイル37a、37b、37cに二次電流が流れる。回転誘導コイル37a、37b、37cに二次電流が流れると、電磁誘導により、それぞれ、固定誘導コイル38a、38b、38cに、回転誘導コイル37a、37b、37cと固定誘導コイル38a、38b、38cの巻数比に応じた電流が流れる。
以上のようにしても第1の実施形態で説明した効果が得られる。特に、隙間Gを0(ゼロ)とすることにより、閉磁路に透磁率が小さい領域が存在しないようにすることができ、電磁誘導を高効率で行うことができる。また、このようにすることにより、第1の実施形態で説明したように、誘導回路30a〜30cを構成する部材を加工する際の寸法の精度や、部材を組み立てる際の部材の位置の精度として高い精度を必要としないことによる効果が得られる。
また、本実施形態に対し、第2の実施形態で説明したように磁気シールド部材を設けたり、第3、第4の実施形態で説明したように、非磁性部材を設けたり、第5、第6の実施形態で説明したように磁気シールド部材と非磁性部材の双方を設けたりすることもできる。
尚、本実施形態でも、前述した各実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
(実施例)
次に、実施例を説明する。
前述した各実施形態の巻線型三相交流誘導回転電機と、接触子(ブラシ)およびスリップリングを有する巻線型三相交流誘導回転電機をそれぞれ20000時間、定格出力で運転し、その間に要したメンテナンス回数と、力率を調査した。その結果を表1に示す。尚、何れの場合においても、同じ可変インピーダンスを用い、当該可変インピーダンスとして、抵抗とコンデンサを用いた。また、回転電機の力率は、可変インピーダンスを制御することにより調整した。
Figure 0006657745
表1において、発明例1、2、3、4では、それぞれ、第1、第2、第3、第5の実施形態の構成の巻線型三相交流誘導回転電機を用いた。比較例では、接触子(ブラシ)およびスリップリングを有する巻線型三相交流誘導回転電機を用いた。
表1に示すように、発明例1〜4では、接触子およびスリップリングが存在しないので、試験期間中にこれらのメンテナンスが不要である。一方、比較例では、接触子を5回交換し、その際に、回転電機内に堆積した接触子由来のカーボン堆積物および付着粉末を除去する必要があった。また、比較例では、スリップリングの表面の酸化被膜を除去するために、スリップリングの表面を2回研磨した。
また、比較例よりも発明例1〜4の方が、回転電機の力率が向上した。発明例1のように磁気シールド部材および非磁性部材を設けない場合よりも、発明例2、3のように磁気シールド部材または非磁性部材を設ける場合の方が、回転電機の力率が向上した。また、発明例2、3を比較すると、磁気シールド部材を設ける方が、非磁性部材を用いるよりも、U相、V相、W相の各相の間の漏れ磁束による二次電流の相互の干渉を防ぐ効果が大きくなり、回転電機の力率の改善効果が大きくなることが分かる。また、磁気シールド部材および非磁性部材の双方を設けると、回転電機の力率はさらに向上した。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
10:固定子コイル、20:回転子コイル、30:誘導回路、30a:U相用誘導回路、30b:V相用誘導回路、30c:W相用誘導回路、31a〜31c:回転誘導コイル、32a〜32c・37a〜37c:鉄心、33a〜33c・38a〜38c:固定誘導コイル、34a〜34c・39a〜39c:磁気シールド部材、35a〜35b・36a〜36c:非磁性部材、40:二次電流制御回路、41a〜41c:端子、42a〜42c:可変インピーダンス、43a〜43c:交流電力供給回路、44:制御回路、50:三相交流電源

Claims (12)

  1. 回転子コイルを有する回転子と、固定子とを有する巻線型n相(nは2以上の整数)交流誘導回転電機であって、
    前記n相のそれぞれに対して設けられ、且つ、前記巻線型n相交流誘導回転電機の回転軸の軸方向に沿って配置されるn個の誘導回路と、
    前記n個の誘導回路に付随する鉄心と、
    前記n相のそれぞれに対して設けられるn個の可変インピーダンスと、前記n個の誘導回路に交流電力を供給する交流電力供給回路とを有する二次電流制御回路と、を有し、
    前記n個の誘導回路のそれぞれは、
    前記回転軸と同軸となるように巻き回され、且つ、前記回転軸の回転に伴い回転するコイルである回転誘導コイルと、
    回転している前記回転誘導コイルと磁気的に結合するように巻き回され、且つ、固定された状態で配置される固定誘導コイルと、を有し、
    第m相(mは1〜nまでの整数)に対して設けられる前記誘導回路の前記回転誘導コイルは、当該第m相の回転子コイルと電気的に接続され、
    第m相(mは1〜nまでの整数)に対して設けられる前記誘導回路の前記固定誘導コイルは、当該第m相に対して設けられる前記可変インピーダンスと電気的に接続され、
    前記n個の誘導回路に付随するそれぞれの前記鉄心は、他の前記鉄心とは分離独立した鉄心であり、
    前記n個の誘導回路に付随する前記鉄心は、前記巻線型n相交流誘導回転電機の回転軸の軸方向に沿って間隔を有して配置される鉄心であり、
    前記交流電力供給回路は、前記n相のそれぞれに対して設けられるn個のインバータを有し、
    前記二次電流制御回路は、前記n相のそれぞれの前記回転子コイルに流れる二次電流の波形に基づいて、前記n相のそれぞれに対して設けられる前記インバータのそれぞれの動作を制御することと、前記n相のそれぞれの前記回転子コイルに流れる二次電流の周波数に基づいて、前記n相のそれぞれに対して設けられる前記可変インピーダンスの値のそれぞれを制御することを特徴とする巻線型n相交流誘導回転電機。
  2. 前記n個の誘導回路に付随する前記鉄心は、前記回転軸と電磁気的に絶縁された状態で前記回転軸に取り付けられる部分を少なくとも有し、
    前記回転誘導コイルと前記固定誘導コイルは、前記鉄心と絶縁された状態で前記鉄心に対して巻き回されることを特徴とする請求項1に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  3. 前記n個の誘導回路に付随する前記鉄心は、前記回転軸と電気的に絶縁された状態で前記回転軸に取り付けられる内周側鉄心と、前記内周側鉄心よりも前記巻線型n相交流誘導回転電機の外周側に配置される外周側鉄心とを有し、
    前記回転誘導コイルに流れる電流により、前記内周側鉄心と前記外周側鉄心の領域に閉磁路が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  4. 前記回転誘導コイルに流れる電流により前記鉄心に閉磁路が形成されないことを特徴とする請求項1または2に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  5. 前記n個の誘導回路に付随する前記鉄心の少なくとも1つの透磁率は、その他の前記鉄心の透磁率と異なり、
    前記n個の誘導回路のインピーダンスは同じであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  6. 前記固定誘導コイルは、前記回転誘導コイルよりも前記巻線型n相交流誘導回転電機の外周側の領域において、前記回転軸と同軸となるように巻き回されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  7. 前記n個の誘導回路のそれぞれは、磁気シールド部材をさらに有し、
    前記回転誘導コイルと前記固定誘導コイルは、前記磁気シールド部材の内部に収容されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  8. 前記n個の誘導回路のうち、前記回転軸の軸方向において相互に隣接する2つの誘導回路の間の領域に少なくとも配置される非磁性部材をさらに有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  9. 前記二次電流制御回路は、第m相(mは1〜nまでの整数)に対して設けられる前記誘導回路の前記回転誘導コイルに流れる電流の周波数に応じて、当該第m相に対して設けられる前記可変インピーダンスの値を変更することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  10. 前記可変インピーダンスは、抵抗、インダクタンス、およびキャパシタンスを有することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  11. 前記n個の誘導回路の前記回転誘導コイルの少なくとも1つの巻数が、その他の前記回転誘導コイルの巻数と異なる構成と、前記n個の誘導回路の前記固定誘導コイルの少なくとも1つの巻数が、その他の前記固定誘導コイルの巻数と異なる構成との少なくとも何れか一方を有し、
    前記n個の誘導回路のインピーダンスは同じであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
  12. 前記n個の誘導回路の少なくとも1つは、受動素子をさらに有し、
    前記n個の誘導回路のインピーダンスは同じであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の巻線型n相交流誘導回転電機。
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