JP6655650B2 - 遮光フィルム及び遮光フィルムの製造方法 - Google Patents

遮光フィルム及び遮光フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、遮光フィルム及び遮光フィルムの製造方法に関する。
スマートフォンやデジタルビデオカメラ等の光学機器のシャッター、絞り部材、又は複数のレンズ間に配置されるギャップ調整部材として、例えば特許文献1に開示されるように、遮光フィルムが用いられている。
遮光フィルムは、例えば、基材フィルムと、基材フィルムの両面に配置された一対の遮光層とを備える。遮光層は、黒色顔料、フィラー粒子、及びバインダー樹脂を含み且つ表面に微細な凹凸が形成されている。遮光層は、入射光を散乱させて写り込みを防止するアンチグレア性と、光学機器内に侵入した外光を遮光する遮光性とを有する。
特表2010−534342号公報
両面に遮光層を備える遮光フィルムを製造する場合、例えば、基材フィルムを製造する工程と、基材フィルムの一方の面に遮光層を形成する工程と、基材フィルムの他方の面に遮光層を形成する工程とを要する。このように工程数が多いと、遮光フィルムの製造効率が低下する場合がある。また、例えば遮光フィルムを複数のレンズ間に配置する場合、遮光フィルムの厚み寸法が大きいと、光学機器の小型化を図りにくい場合がある。
そこで本発明は、両面に遮光層を備えると共に厚み寸法が小さい遮光フィルムを効率よく製造可能にすることを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る遮光フィルムは、一対の遮光層と、前記一対の遮光層の各々と接触するように前記一対の遮光層の間に配置されて前記一対の遮光層を接着する接着剤層と、を備え、前記遮光層の前記接着剤層とは反対側の表面は、凹凸が形成されていることによりアンチグレア性を有する。
上記構成によれば、例えば、表面の凹凸によりアンチグレア性を有する遮光層を形成した後、一対の遮光層を接着剤層により接着することで遮光フィルムを効率よく製造できる。従って、工程数を低減しながら迅速に遮光フィルムを製造できる。また、一対の遮光層を比較的厚み寸法の小さい接着剤層により接着することで遮光フィルムを構成できるので、遮光フィルムの総厚み寸法を小さくすることができる。
前記遮光層の前記表面の入射角85度における光沢度が、20%以下の値に設定されていてもよい。これにより、遮光層の表面に優れた低光沢性(写り込み防止性)を付与でき、遮光層の表面に入射した入射光を更に良好に散乱できる。
前記遮光層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂のうちいずれかの樹脂であるバインダー樹脂と、黒色微粒子とを含み、前記黒色微粒子以外の無機微粒子の含有量、又は、有機微粒子の含有量が、0重量%以上10重量%以下の範囲の値に設定されていてもよい。
これにより、黒色微粒子以外の無機微粒子、又は、有機微粒子によって、遮光層が白色等の色に着色されるのを防止できる。よって、遮光層の遮光性がこれらの微粒子により低下するのを防止できる。また、遮光層の耐擦傷性がこれらの微粒子を含むことで低下するのを防止できるので、例えば、光学機器の内部に遮光層の一部が欠落して混入するのを防止できる。また、バインダー樹脂として幅広い種類のものを使用できるので、遮光フィルムの強度設定の設計自由度を向上できる。
前記黒色微粒子は球状であり、一次粒径が、10nm以上500nm以下の範囲の値に設定されていてもよい。これにより、遮光層の内部に黒色微粒子を均一に分散させることができ、遮光層の全体において均一な遮光性を得ることができる。
前記黒色微粒子は、カーボンナノチューブであってもよい。これにより、黒色微粒子としての材料の選択幅を広げることができる。
前記遮光層の前記表面における算術平均粗さ(Ra)が、0.03μm以上3.0μm以下の範囲の値に設定されていてもよい。これにより、遮光層の表面に微細な凹凸を付与でき、該表面における入射光を更に一層良好に散乱できる。
前記遮光層の波長380nm以上780nm以下の範囲の値における光学濃度が、5.0以上の値に設定され、前記遮光層の表面抵抗値が、1×1012Ω/□以下の値に設定されていてもよい。
このように、遮光層の光学濃度と表面抵抗値とを上記各所定値に設定することで、遮光層に高い遮光性を付与できると共に、遮光層の電気抵抗値を更に適切に調整でき、埃等の不純物が遮光層の帯電により遮光層に付着するのを一層良好に防止できる。
本発明の一態様における遮光フィルムの製造方法は、一対の遮光層を形成する形成ステップと、前記一対の遮光層の各々と接触するように前記一対の遮光層の間に接着剤層を配置して前記一対の遮光層を接着する接着ステップとを有し、前記形成ステップは、バインダー樹脂の前駆体と、黒色微粒子とを含む未硬化材料を、表面に凹凸が形成されていることにより前記表面がアンチグレア性を有する原型の前記表面に被着させる被着ステップと、前記原型の前記表面に被着させた状態で前記未硬化材料を硬化させることにより、表面に前記原型の前記表面の形状が転写された遮光層を形成する硬化ステップと、を含む。
上記方法によれば、形成ステップにおいて、表面の凹凸によりアンチグレア性を有する一対の遮光層を形成した後、接着ステップにおいて、一対の遮光層を接着剤層により接着することで、遮光フィルムを効率よく製造できる。
また形成ステップでは、前記被着ステップと前記硬化ステップとを行うことで、原型の表面の形状が表面に転写された遮光層を形成できる。従って、工程数を低減しながら、原型の表面の形状を正確に転写した遮光フィルムを迅速に製造できる。また、一対の遮光層を比較的厚み寸法の小さい接着剤層により接着することで遮光フィルムを構成できるので、遮光フィルムの総厚み寸法を小さくすることができる。
前記接着ステップ後に前記遮光層を前記原型から剥離する剥離ステップを更に有してもよい。これにより、接着ステップにおいて遮光層の表面に不要な接着剤が付着するのを原型により保護しながら、遮光フィルムを安定した品質で製造できる。
前記被着ステップでは、前記未硬化材料を支持部材の表面に塗布し、前記未硬化材料を前記支持部材により支持した状態で、前記未硬化材料に前記原型の前記表面を被着させ、前記硬化ステップ後且つ前記接着ステップ前に、前記遮光層を前記支持部材から剥離してもよい。
これにより、未硬化材料を支持部材により支持しながら効率よく硬化ステップを行い、原型の表面の形状を遮光層の表面に良好に転写することができる。また、接着ステップ前に遮光層を支持部材から剥離することで、接着ステップにおいて接着剤層により接着される遮光層の表面を予め露出させることができる。
本発明の各態様によれば、両面に遮光層を備えると共に厚み寸法が小さい遮光フィルムを効率よく製造できる。
第1実施形態に係る遮光フィルムの断面図である。 図1の遮光フィルムの製造フロー図である。 (a)は、図1の遮光フィルムの製造時における被着ステップを示す図である。(b)は、図1の遮光フィルムの製造時における剥離ステップを示す図である。 第1実施形態の変形例に係る遮光フィルムの製造方法を示す図である。 変形例1に係る原型を示す拡大断面図である。 変形例2に係る原型を示す拡大断面図である。
以下、実施形態等について、図面を参照して説明する。
(実施形態)
[遮光フィルム]
図1は、第1実施形態に係る遮光フィルム1の断面図である。遮光フィルム1は、一例として、光学機器が備える複数の光学部材(レンズ等)間において、光軸を囲むように配置される。遮光フィルム1は、図1に示すように、一対の遮光層3と、接着剤層2とを備える。
接着剤層2は、一対の遮光層3の各々と接触するように一対の遮光層3の間に配置されて一対の遮光層3を接着する。接着剤層2は、黒色微粒子と、樹脂とを含む。接着剤層2に含まれる黒色微粒子は、一例として、後述する遮光層3に含まれる黒色微粒子5と同様のものである。
遮光層3の厚み寸法は、適宜設定可能であるが、ここでは1μm以上20μm以下の範囲の値に設定できる。遮光層3の厚み寸法は、一例として3μm以上10μm以下の範囲の値に設定されている。
接着剤層2の厚み寸法は、遮光層3の総厚み寸法よりも大きくても良いが、小さいことが好ましい。一例として、接着剤層2の厚み寸法は、10μm以下の値であることが望ましく、5μm以下の値であることが更に望ましく、3μm以下の値であることが一層望ましい。接着剤層2が含む樹脂としては、例えば、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。接着剤層2には、黒色顔料を添加してもよい。
遮光層3は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂のうちいずれかの樹脂であるバインダー樹脂6と、黒色微粒子5とを含む。バインダー樹脂6は、複数の樹脂成分を含んでいてもよい。
遮光層3の内部には、黒色微粒子5が分散して配置されている。黒色微粒子5としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、バインブラック、ピーチブラック、骨炭、カーボンナノチューブ、酸化銀、酸化亜鉛、マグネタイト型四酸化三鉄、銅とクロムの複合酸化物、銅、クロム、亜鉛の複合酸化物、黒色ガラス等が挙げられる。遮光層3は、黒色微粒子5を含むことで、波長380nm以上780nm以下の範囲の値における光学濃度が、5.0以上の値に設定されている。波長380nm以上780nm以下の範囲の値における遮光層3の光学濃度が5.0以上の値に設定されることで、遮光層3の遮光性の低下が良好に防止される。
黒色微粒子5の一次粒径は、10nm以上500nm以下の範囲の値に設定されている。また遮光層3の表面抵抗値は、1×1012Ω/□以下の値に設定されている。黒色微粒子5の抵抗値及び遮光層3の表面抵抗値をそれぞれ上記範囲の値に設定することで、遮光層3の帯電が良好に防止される。また、遮光層3の表面抵抗値を1×1013Ω/□以上とすることで、遮光フィルム1を絶縁部材として好適に用いることができる。
バインダー樹脂6が含む熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。このうち強度確保の観点から、環状ポリオレフィン、ポリアルキレンアリレート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ビスフェノールA型ポリカーボネート、セルロースエステルが好ましい。
バインダー樹脂6が含む熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。このうち強度確保の観点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタンが好ましい。
バインダー樹脂6が含む光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性ポリエステル、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性エポキシ(メタ)アクリレート、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの光硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。このうち強度確保の観点から、光硬化性アクリル系樹脂、光硬化性ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。なお「光硬化性樹脂」とは、活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)により硬化する樹脂を含む。
遮光層3の接着剤層2とは反対側の表面3aは、凹凸が形成されていることによりアンチグレア性を有する。遮光層3の表面3aに形成された凹凸は、後述するように、遮光フィルム1の製造時において原型4の表面4aの凹凸が転写されることで形成されている。これにより遮光層3の表面3aは、外光の反射が抑制されている。
具体的に遮光層3は、以下の各設定が行われることでアンチグレア性を有している。遮光層3は、表面3aの入射角85度における光沢度が、20%以下の値に設定されている。また遮光層3は、表面3aの算術平均粗さ(Ra)が、0.03μm以上3.0μm以下の範囲の値に設定されている。また遮光層3は、表面3aの算術平均粗さ(Sa)が、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。
遮光層3の表面3aの算術平均粗さ(Ra)を0.1μm以上の値に設定することで、遮光層3の表面3aにアンチグレア性を付与し易くすることができる。また、遮光層3の表面3aの算術平均粗さ(Ra)を3.0μm以下の値に設定することで、遮光層3を比較的容易に製造できる。
なお、一次粒径は、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−6700F」)により10万倍に拡大した粒子表面の写真を撮影し、その拡大写真を必要に応じてさらに拡大し、50個以上の粒子について定規やノギス等を用い、その個数の平均粒径として測定することができる。
また、波長380nm以上780nm以下の範囲の値における光学濃度は、光学濃度計(ビデオジェット・エックスライト(株)製「X−Rite 341C」)を用い、試料に垂直透過光束を照射して、試料が無い状態との比をlog(対数)で表したものとすることができる。
また光束幅は、直径2mmの円形として測定することができる。また光沢度は、JlS K7105に準拠した測定方法により測定された値である。また算術平均粗さ(Ra)は、中心線平均表面粗さであり、JIS B 0601(1994年版)の定義により算出された値である。
以上のように、遮光フィルム1によれば、例えば、表面の凹凸によりアンチグレア性を有する遮光層3を形成した後、一対の遮光層3を接着剤層2により接着することで遮光フィルム1を効率よく製造できる。従って、工程数を低減しながら迅速に遮光フィルム1を製造できる。
また、一対の遮光層3を比較的厚み寸法の小さい接着剤層2により接着することで遮光フィルム1を構成できるので、遮光フィルム1の総厚み寸法を小さくすることができる。
また遮光層3は、表面3aの入射角85度における光沢度が、20%以下の値に設定されているので、遮光層3の表面3aに優れた低光沢性(写り込み防止性)を付与でき、遮光層3の表面3aに入射した入射光を更に良好に散乱できる。
また遮光層3は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂のうちいずれかの樹脂であるバインダー樹脂6と、黒色微粒子5とを含み、黒色微粒子5以外の無機微粒子の含有量、又は、有機微粒子の含有量が、0重量%以上10重量%以下の範囲の値に設定されている。
これにより、黒色微粒子5以外の無機微粒子、又は、有機微粒子によって、遮光層3が白色等の色に着色されるのを防止できる。よって、遮光層3の遮光性がこれらの微粒子により低下するのを防止できる。また、遮光層3の耐擦傷性がこれらの微粒子を含むことで低下するのを防止できるので、例えば、光学機器の内部に遮光層3の一部が欠落して混入するのを防止できる。また、バインダー樹脂6として幅広い種類のものを使用できるので、遮光フィルム1の強度設定の設計自由度を向上できる。
また、遮光層3は黒色微粒子5以外の無機微粒子、又は、有機微粒子を用いなくてもアンチグレア性を発揮できるため、より白味の少ない黒色の遮光フィルム1を実現できる。これにより、例えば光学機器のレンズの内部に遮光フィルム1からの不要な光が入射するのを抑制できる。
また、本実施形態の黒色微粒子5は球状であり、一次粒径が、10nm以上500nm以下の範囲の値に設定され、黒色微粒子5の抵抗値が、1Ω以上1×10Ω以下の範囲の値に設定されているので、遮光層3の内部に黒色微粒子5を均一に分散させることができ、遮光層3の全体において均一な遮光性を得ることができる。また別の例では、黒色微粒子5がカーンナノチューブであるため、黒色微粒子5としての材料の選択幅を広げることができる。
また遮光層3は、表面3aにおける算術平均粗さ(Ra)が、0.03μm以上3.0μm以下の範囲の値に設定されているので、遮光層3の表面3aに微細な凹凸を付与でき、該表面3aにおける入射光を更に一層良好に散乱できる。
また、遮光層3の波長380nm以上780nm以下の範囲の値における光学濃度が、5.0以上の値に設定され、遮光層3の表面抵抗値が、1×1012Ω/□以下の値に設定されているので、遮光層3の光学濃度と表面抵抗値とを上記各所定値に設定することで、遮光層3に高い遮光性を付与できると共に、遮光層3の電気抵抗値を更に適切に調整でき、埃等の不純物が遮光層3の帯電により遮光層3に付着するのを一層良好に防止できる。
[遮光フィルムの製造方法]
図2は、図1の遮光フィルム1の製造フロー図である。図3の(a)は、図1の遮光フィルム1の製造時における被着ステップS2を示す図である。図3の(b)は、図1の遮光フィルム1の製造時における剥離ステップS5を示す図である。
遮光フィルム1の製造方法は、一対の遮光層3を形成する形成ステップと、一対の遮光層3の各々と接触するように一対の遮光層3の間に接着剤層2を配置して一対の遮光層3を接着する接着ステップとを有する。形成ステップは、以下に示す被着ステップと硬化ステップとを含む。
図2に示すように、具体的に本実施形態における遮光フィルム1の製造方法は、調製ステップS1、被着ステップS2、硬化ステップS3、接着ステップS4、及び剥離ステップS5を有する。遮光フィルム1は、ステップS1〜S5を順に行うことで製造される。以下、ステップS1〜S5を具体的に説明する。
オペレータは、遮光層3の材料となる未硬化材料30を調製する。未硬化材料30は、黒色微粒子5と、バインダー樹脂6の前駆体(一例として熱硬化性樹脂の前駆体)と、バインダー樹脂6の前駆体の重合開始剤とを含む。オペレータは、これらのものを混合すると共に、溶媒を添加することにより、塗工に適した流動性を有するように未硬化材料30を調製する。これにより調製ステップS1が行われる。
次にオペレータは、凹凸が形成されていることにより表面4aがアンチグレア性を有する原型4を用意する。本実施形態の原型4は、表面4aを有する原型フィルムである。この原型4の表面4aに、未硬化材料30を塗布する(図3(a))。これにより、未硬化材料30を原型4の表面4aに被着させる被着ステップS2が行われる。オペレータは、塗布された未硬化材料30の表面に熱風を当てることにより、未硬化材料30の揮発成分を一部除去する。
ここで原型4の表面4aは、微細な凹凸形状を有する。本実施形態の原型4は、詳細を後述するように、複数の樹脂成分を含み、複数の樹脂成分の相分離により形成された海島構造からなる微細な凹凸形状を有する。遮光層3の表面3aに付与されるアンチグレア性は、この原型4の表面4aの形状により設定される。
次にオペレータは、未硬化材料30を硬化する。ここでは、未硬化材料30を加熱することで熱硬化する。その後オペレータは、原型4の表面4aに被着させた状態で未硬化材料30を硬化させることにより、表面3aに原型4の表面4aの形状が転写された遮光層3を形成する。これにより硬化ステップS3が行われる。硬化ステップS3を行うことで、原型4と遮光層3との積層体が得られる。
次にオペレータは、一対の遮光層3の各々と接触するように一対の遮光層3の間に接着剤層2を配置して、一対の遮光層3を接着する。これにより接着ステップS4が行われる。
ここでは一例として、遮光層3を原型4に被着した状態のまま、一対の遮光層3の各々と接触するように、一対の遮光層3の各対向面に接着剤層2の材料である接着剤を塗工する。その後、一対の原型4を介して一対の遮光層3を厚み方向に押圧しながら一対の遮光層3を接着(ドライラミネート)する。
次にオペレータは、接着ステップS4に遮光層3を原型4から剥離する(図3(b))。これにより剥離ステップS5が行われる。以上で遮光フィルム1が得られる。
以上のように、形成ステップにおいて、表面3aの凹凸によりアンチグレア性を有する一対の遮光層3を形成した後、接着ステップS4において、一対の遮光層3を接着剤層2により接着することで、遮光フィルム1を効率よく製造できる。
また形成ステップでは、被着ステップS2と硬化ステップS3とを行うことで、原型4の表面4aの形状が表面3aに転写された遮光層3を形成できる。従って、工程数を低減しながら、原型4の表面4aの形状を正確に転写した遮光フィルム1を迅速に製造できる。また、一対の遮光層3を比較的厚み寸法の小さい接着剤層2により接着することで遮光フィルム1を構成できるので、遮光フィルム1の総厚み寸法を小さくすることができる。
また、接着ステップS4後に遮光層3を原型4から剥離する剥離ステップS5により、接着ステップS4において遮光層3の表面に不要な接着剤が付着するのを原型4により保護しながら、遮光フィルム1を安定した品質で製造できる。
ここで図4は、第1実施形態の変形例に係る遮光フィルムの製造方法を示す図である。この変形例の被着ステップS2では、未硬化材料30を支持部材7の表面に塗布し、未硬化材料30を支持部材7により支持した状態で、未硬化材料30に原型4の表面4aを被着させる。そして、硬化ステップS3後且つ接着ステップS4前に、遮光層3を支持部材7から剥離する。
このような製造方法によれば、未硬化材料30を支持部材7により支持しながら効率よく硬化ステップS3を行い、原型4の表面4aの形状を遮光層3の表面3aに良好に転写することができる。また、接着ステップS4前に遮光層3を支持部材7から剥離することで、接着ステップS4において接着剤層2により接着される遮光層3の表面を予め露出させることができる。
(原型について)
以下、原型4について詳細に説明する。原型4の表面4aは、アンチグレア性を有する。原型4の表面4aには、一例として、複数の樹脂成分の相分離により、複数の海島構造部が形成されている。海島構造部は分岐しており、密な状態で海島構造を形成している。原型4は、複数の海島構造部と、隣接する海島構造部間に位置する凹部とによりアンチグレア性を発現する。原型4の表面4aは、海島構造部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。
具体的に原型4の表面4aには、1mm当たり、所定の長さ寸法を有する海島構造部が1つ以上存在している。この海島構造部の長さ寸法は、本実施形態では、100μm以上の値に設定されている。この海島構造部の長さ寸法の値としては、一例として、200μm以上の値がより好ましく、500μm以上の値が一層好ましい。なお、海島構造部は、複数存在してもよいが、表面4aの全面が海島構造を有する場合、該表面4aにおける海島構造部の数は1となる場合もある。
海島構造部により形成された海島構造では、同程度の径を有する網目が不規則な形状で配列している。海島構造が有する網目の平均径(海島構造の網目が楕円形状や長方形状等の異方形状の場合、長径と短径との平均値)は、例えば、1μm以上70μm以下の範囲の値に設定されている。
この平均径の値としては、一例として、2μm以上50μm以下の範囲の値がより好ましく、5μm以上30μm以下の範囲の値が一層好ましい。また他の例では、この平均径の値としては、1μm以上40μm以下の範囲の値がより好ましく、3μm以上35μm以下の範囲の値が一層好ましく、10μm以上30μm以下の範囲の値が更に好ましい。
表面4aを平面視した場合の海島構造部の形状は、一部以上に曲線部分を有する紐状である。海島構造部の平均幅は、本実施形態では、0.1μm以上30μm以下の範囲の値に設定されている。
海島構造部の平均幅の値としては、一例として、0.1μm以上20μm以下の範囲の値がより好ましく、0.1μm以上15μm以下の範囲の値が一層好ましく、0.1μm以上10μm以下(特に0.1μm以上5μm以下)の範囲の値が更に好ましい。
また他の例では、海島構造部の平均幅の値としては、1.0μm以上20μm以下の範囲の値がより好ましく、1.0μm以上15μm以下の範囲の値が一層好ましく、1.0μm以上10μm以下の範囲の値が更に好ましい。なお、平均幅が小さ過ぎるとアンチグレア性が低下するおそれがある。
海島構造部の平均高さは、例えば、0.05μm以上10μm以下の範囲の値に設定されている。海島構造部の平均高さの値としては、一例として、0.07μm以上5μm以下の範囲の値がより好ましく、0.09μm以上3μm以下(特に0.1μm以上2μm以下)の範囲の値が一層好ましい。
表面4aにおける海島構造部の占有面積は、例えば、表面4aの全表面積の10%以上100%未満の範囲の値に設定されている。表面4aにおける海島構造部の占有面積の値としては、一例として、表面4aの全表面積の30%以上100%未満の範囲の値がより好ましく、表面4aの全表面積の50%以上100%未満(特に70%以上100%未満)の範囲の値が一層好ましい。なお、海島構造部間の面積が小さ過ぎるとアンチグレア性が低下し易いおそれがある。
ここで、表面4aの海島構造部の寸法、形状(分岐の有無等)、及び面積は、顕微鏡写真で観察される二次元的な形状に基づいて測定及び評価できる。また、上記した平均値、平均幅、及び平均高さの各々は、表面4aにおける任意の10箇所以上の位置において測定した測定値を平均した値である。
原型4の表面4aは、海島構造が形成されることで、レンズ状(海島状)の凸部が形成されるのが防止されている。遮光層3の表面3aには、このような原型4の表面4aの形状が転写されている。
なお複数の海島構造部は、互いに独立していてもよいし、繋がっていてもよい。原型4の相分離及び海島構造は、所定の原料溶液を用いて、液相からスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)を行うことにより形成される。原型4の表面形状及び製造方法の詳細については、例えば、特許第6190581号公報の記載を参照できる。
ここで、原型4が含む複数の樹脂成分は、相分離可能なものであればよいが、海島構造部が形成され且つ高い耐擦傷性を有する原型4を得る観点から、ポリマー及び硬化性樹脂を含むことが好ましい。
原型4が含むポリマーとしては、熱可塑性樹脂を例示できる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体等)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類等)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等)等を例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上の組み合わせで使用できる。
またポリマーとしては、硬化反応に関与する官能基、又は、硬化性化合物と反応する官能基を有するものも例示できる。このポリマーは、官能基を主鎖又は側鎖に有していてもよい。
前記官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基等)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリル基等のC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニル基等のC2−6アルキニル基、ビニリデン基等のC2−6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基等)等)等を例示できる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
また原型4には、複数種類のポリマーが含まれていてもよい。これらの各ポリマーは、液相からのスピノーダル分解により相分離可能であってもよいし、互いに非相溶であってもよい。複数種類のポリマーに含まれる第1のポリマーと第2のポリマーとの組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶なものを使用できる。
例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)である場合、第2のポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
また例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)である場合、第2のポリマーとしては、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2−4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
複数種類のポリマーには、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)が含まれていてもよい。
ここで、原型4の相分離による海島構造は、原型4の製造時に、複数の樹脂成分に含まれていた硬化性樹脂の前駆体が活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により硬化することで固定される。また、このような硬化性樹脂により、原型4に耐擦傷性が付与される。
原型4の耐擦傷性を得る観点から、複数種類のポリマーに含まれる少なくとも一つのポリマーは、硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであることが好ましい。相分離による海島構造を形成するポリマーとしては、上記した互いに非相溶な2つのポリマー以外に、熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。第1のポリマーの重量M1と第2のポリマーの重量M2との重量比M1/M2、及び、ポリマーのガラス転移温度は、適宜設定可能である。
硬化性樹脂前駆体としては、活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により反応する官能基を有し、この官能基により硬化又は架橋して樹脂(特に硬化性樹脂又は架橋樹脂)を形成する硬化性化合物を例示できる。
このような化合物としては、熱硬化性化合物又は熱硬化性樹脂(エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基等を有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等))、紫外線や電子線等により硬化する光硬化性(電離放射線硬化性)化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー等の紫外線硬化性化合物等)等を例示できる。
好ましい硬化性樹脂前駆体としては、紫外線や電子線等により短時間で硬化する光硬化性化合物を例示できる。このうち、特に紫外線硬化性化合物が実用的である。耐擦傷性等の耐性を向上させるため、光硬化性化合物は、分子中に2以上(好ましくは2〜15、更に好ましくは4〜10程度)の重合性不飽和結合を有することが好ましい。具体的に光硬化性化合物は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体であることが好ましい。
硬化性樹脂前駆体には、その種類に応じた硬化剤が含まれていてもよい。例えば熱硬化性樹脂前駆体には、アミン類、多価カルボン酸類等の硬化剤が含まれていてもよく、光硬化性樹脂前駆体には、光重合開始剤が含まれていてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類等を例示できる。
また硬化性樹脂前駆体には、硬化促進剤が含まれていてもよい。例えば光硬化性樹脂前駆体には、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステル等)、ホスフィン系光重合促進剤等が含まれていてもよい。
(変形例1に係る原型)
図5は、変形例1に係る原型14を示す拡大断面図である。原型14は、マトリクス樹脂15と、マトリクス樹脂15中に分散された複数の微粒子16とを含む。
微粒子16は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球状や楕円体状に形成されていてもよい。また微粒子16は、中実に形成されているが、中空に形成されていてもよい。微粒子16が中空に形成されている場合、微粒子の中空部には、空気或いはその他の気体が充填されていてもよい。マトリクス樹脂15中には、複数の微粒子16が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子16が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。
微粒子16は、平均粒径が0.1μm以上10.0μm以下の範囲の値に設定されている。微粒子16の平均粒径は、1.0μm以上5.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1.0μm以上4.0μm以下の範囲の値であることがより好ましい。
また、微粒子16の粒径のバラツキは小さい方が望ましく、例えば、原型14に含まれる微粒子の粒径分布において、原型14に含まれる微粒子の50重量%以上の平均粒径が2.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子16により、原型4の表面14aには均一且つ適度な凹凸が形成される。
マトリクス樹脂15中に分散される微粒子16は、無機系及び有機系のいずれのものでもよいが、良好な透明性を有するものが好ましい。有機系微粒子としては、プラスチックビーズを例示できる。プラスチックビーズとしては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等を例示できる。
スチレンビーズは、架橋スチレンビーズでもよく、アクリルビーズは、架橋アクリルビーズでもよい。プラスチックビーズは、表面に疎水基を有するものが望ましい。このようなプラスチックビーズとしては、スチレンビーズを例示できる。
マトリクス樹脂15としては、活性エネルギー線により硬化する光硬化性樹脂、塗工時に添加した溶剤の乾燥により硬化する溶剤乾燥型樹脂、及び、熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを例示できる。
光硬化性樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、反応性希釈剤を例示できる。
これらの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を例示できる。
光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン類を例示できる。また光硬化性樹脂には、光増感剤を混合して用いることも好ましい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を例示できる。
溶剤乾燥型樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を例示できる。この熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマー等を例示できる。溶剤乾燥型樹脂としては、有機溶媒に可溶であって、特に、成形性、製膜性、透明性、及び耐候性に優れる樹脂が望ましい。このような溶剤乾燥型樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)を例示できる。
(変形例2に係る原型)
図6は、変形例2に係る原型24を示す拡大断面図である。原型24は、表面24aに凹凸形状が賦形された構造を有する。原型24は、一例として、原型14のマトリクス樹脂15と同様の樹脂17により構成されている。
原型4は、例えば、板材の表面に所定の未硬化材料を塗布し、この未硬化材料の表面を金型により凹凸形状に賦形した後、該未硬化材料を硬化することにより得られる。金型は、ロール状金型以外でもよく、例えば、板状金型(エンボス板)でもよい。金型の材質は、一例として、金属、プラスチック、及び木を例示できる。
金型の表面をブラスト粒子によりブラスト処理することで、金型の表面に凹凸を形成できる。ブラスト粒子の材質としては、一例として、金属、シリカ、アルミナ、及びガラスを例示できる。ブラスト粒子は、例えば、気体又は液体の圧力により金型の表面に衝打させることができる。
ブラスト粒子の平均粒径は、適宜設定可能であるが、一例として、10μm以上50μm以下の範囲の値に設定できる。ブラスト粒子の平均粒径は、20μm以上45μm以下の範囲の値が一層望ましく、30μm以上40μm以下の範囲の値がより望ましい。このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定されたブラスト粒子により、金型の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。よって、この金型を用いて賦形することで、表面24aに凹凸形状が転写された原型24が得られる。
(確認試験)
図1に示す遮光フィルム1を実施例1として作製した。接着剤層2の材料として、ポリウレタン系樹脂接着剤(ウレタン系接着剤(三井化学(株)製「タケラックA」)90部、硬化剤(三井化学(株)製「タケネートA」)5部、及びカーボンブラック分散体(御国色素(株)製「MHIブラック#273」をカーボンブラックとして10重量%含むもの)5部の混合物)を用いた。
熱硬化性樹脂であるポリウレタン系樹脂の前駆体(三洋化成(株)製「サンプレンIB−104」)75部、カーボンブラック分散体(御国色素(株)製「MHIブラック#273」をカーボンブラックとして10重量%含むもの)20部、及び硬化剤(三井化学(株)製「タケネートA」)5部を混合することにより、遮光層3の未硬化材料30を調製した。
また、実施例1の作製に用いる原型4として、複数の樹脂成分を含み、複数の樹脂成分の相分離により形成された海島構造を有する原型フィルムを用いた。この原型フィルムとして、膜厚寸法50μm、表面の算術平均粗さ(Ra)1.5、未硬化材料の表面(遮光層3の表面3a)に被着される表面4aの入射角20度における光沢度が、0.0%、入射角60度における光沢度が、3.0%、入射角85度における光沢度が、20.0%に設定されたものを用いた。
また、以下の組成により構成される未硬化材料30を用いた以外は実施例1と同様の遮光フィルムを実施例2として作製した。即ち、紫外線硬化性樹脂であるウレタンアクリル系樹脂の前駆体(DIC(株)製「ユニデックV−4025」)72部、活性化合物(三洋化成(株)製「サンラッドSLP―003」)5部、黒色微粒子5(カーボンブラック分散体(御国色素(株)製「MHIブラック#273」をカーボンブラックとして10重量%含むもの)20部、重合開始剤(BASF(株)製「イルガキュア184」)3部を混合することにより、遮光層3の未硬化材料30を調製した。
また、入射角60度及び85度における光沢度と、表面粗さ(Ra,Sa,Sq)とが実施例1のものと異なる以外は実施例1と同様の遮光フィルム1を実施例3として作製した。実施例3の作製に際しては、実施例1で用いたものとは表面形状が異なる原型4を用いた。また比較用として、表1に示す構成及び物性を有する比較例1,2の遮光フィルムを用意した。
実施例1〜3及び比較例1,2について、入射角20度、60度、85度における各光沢度(JlS K7105に準拠する測定方法に基づく光沢度)、光学濃度、表面粗さ(Ra,Sa,Sq)(JIS B 0601(1994年版)及びISO25178に準拠する測定方法に基づく各表面粗さ)、及び表面抵抗値(JIS K7194に準拠する測定方法に基づく表面抵抗値)をそれぞれ測定した。
ここで算術平均粗さ(Sa)は、表面の平均面に対する複数点の高さの差の絶対値の平均を示す。二乗平均平方根高さ(Sq)は、平均面からの距離の標準偏差のパラメータに相当する。各測定結果を表1に示す。表1中の「CB」は遮光層、「基材」は基材フィルム、「黒PET」は黒色顔料を含むPETをそれぞれ示す。
Figure 0006655650
表1に示すように、実施例1〜3のいずれについても比較例1,2よりも良好な結果が得られた。実施例1〜3の総厚み寸法は、比較例1,2の総厚み寸法よりも大幅に小さいことが確認された。本試験では、実施例1〜3の総厚み寸法を10μm以上12μm以下の範囲の値に設定できることが分かった。
この理由として、比較例1,2では、一対の遮光層の間に相当の厚み寸法を有する基材フィルムが配置されているのに対し、実施例1〜3では、一対の遮光層3の間にこのような基材フィルムがなく、一対の遮光層3が厚み寸法の比較的小さい接着剤層2により接着されていることが挙げられる。
また、実施例1〜3の入射角85度における各光沢度の値は、いずれも比較例1,2の入射角85度における各光沢度の値よりも大幅に低く、20%以下(本試験では9.5%以下)の値であった。
また、実施例1〜3の遮光層3は、黒色微粒子5以外の無機微粒子又は有機微粒子を含まない。このため遮光層3は、肉眼観察により、白っぽく見えるのが抑えられると共に良好な黒色に着色していることが分かった。
また、実施例1,2の表面粗さ(Ra,Sa,Sq)の値は、いずれも比較例1,2の表面粗さ(Ra,Sa,Sq)の値よりも高い値であった。また、実施例3のの表面粗さ(Ra,Sa,Sq)の値は、比較例1,2の表面粗さ(Ra,Sa,Sq)の値とほぼ同等であった。この結果から、原型4として、複数の樹脂成分を含み、複数の樹脂成分の相分離により形成された海島構造を有する原型フィルムを用いることにより、遮光層3の表面3aに優れたアンチグレア性を安定した品質で付与できることが分かった。また、実施例1〜3は、比較例1,2と同等の光学濃度と表面抵抗値とを有することが分かった。
本発明は、実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。
以上のように本発明は、両面に遮光層を備えると共に厚み寸法が小さい遮光フィルムを効率よく製造できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる遮光フィルム及び遮光フィルムの製造方法に本発明を広く適用すると有益である。
1 遮光フィルム
2 接着剤層
3 遮光層
4,14,24 原型
5 黒色微粒子
6 バインダー樹脂
7 支持部材
30 未硬化材料

Claims (10)

  1. 一対の遮光層と、
    前記一対の遮光層の各々と接触するように前記一対の遮光層の間に配置されて前記一対の遮光層を接着する、単一の接着剤層と、を備え、
    前記遮光層の前記接着剤層とは反対側の表面は、凹凸が形成されていることによりアンチグレア性を有し
    前記単一の接着層が、前記一対の遮光層の各々と直接接着されている、遮光フィルム。
  2. 前記遮光層の前記表面の入射角85度における光沢度が、20%以下の値に設定されている、請求項1に記載の遮光フィルム。
  3. 前記遮光層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂のうちいずれかの樹脂であるバインダー樹脂と、黒色微粒子とを含み、前記黒色微粒子以外の無機微粒子の含有量、又は、有機微粒子の含有量が、0重量%以上10重量%以下の範囲の値に設定されている、請求項1又は2に記載の遮光フィルム。
  4. 前記黒色微粒子は球状であり、一次粒径が、10nm以上500nm以下の範囲の値に設定されている、請求項3に記載の遮光フィルム。
  5. 前記黒色微粒子は、カーボンナノチューブである、請求項3に記載の遮光フィルム。
  6. 前記遮光層の前記表面における算術平均粗さが、0.03μm以上3.0μm以下の範囲の値に設定されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
  7. 前記遮光層の波長380nm以上780nm以下の範囲の値における光学濃度が、5.0以上の値に設定され、前記遮光層の表面抵抗値が、1×1012Ω/□以下の値に設定されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮光フィルム。
  8. 一対の遮光層を形成する形成ステップと、
    前記一対の遮光層の各々と接触するように前記一対の遮光層の間に単一の接着剤層を配置して、前記単一の接着層と前記一対の遮光層直接接着する接着ステップとを有し、
    前記形成ステップは、
    バインダー樹脂の前駆体と、黒色微粒子とを含む未硬化材料を、表面に凹凸が形成されていることにより前記表面がアンチグレア性を有する原型の前記表面に被着させる被着ステップと、
    前記原型の前記表面に被着させた状態で前記未硬化材料を硬化させることにより、表面に前記原型の前記表面の形状が転写された遮光層を形成する硬化ステップと、を含む、遮光フィルムの製造方法。
  9. 前記接着ステップ後に前記遮光層を前記原型から剥離する剥離ステップを更に有する、請求項8に記載の遮光フィルムの製造方法。
  10. 前記被着ステップでは、前記未硬化材料を支持部材の表面に塗布し、前記未硬化材料を前記支持部材により支持した状態で、前記未硬化材料に前記原型の前記表面を被着させ、
    前記硬化ステップ後且つ前記接着ステップ前に、前記遮光層を前記支持部材から剥離する、請求項8又は9に記載の遮光フィルムの製造方法。
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