以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の遮蔽装置を説明する。尚、本願明細書中、図1等に示す遮蔽装置(プリーツスクリーン)の正面図に対して、図示上方及び図示下方をスクリーンの吊り下げ方向に準じてそれぞれ上方向(又は上側)及び下方向(又は下側)と定義し、図示左方向を遮蔽装置(プリーツスクリーン)の左側、及び、図示右方向を遮蔽装置(プリーツスクリーン)の右側と定義して説明する。また、以下に説明する例では、図1に示す遮蔽装置(プリーツスクリーン)の正面図に対して、視認する側を前側(又は室内側)、その反対側を後側(又は室外側)とし、前後方向と称するときは、図1の正面図における図示面に対して垂直な方向を云う。
(装置全体)
以下、図面を参照して、一実施形態の遮蔽装置(プリーツスクリーン)を説明する。図1は、本発明による一実施形態の遮蔽装置の概略を示す正面図である。図2は、本発明による一実施形態の遮蔽装置の概略を示す側面図である。図3は、本発明による一実施形態の遮蔽装置の概略を示す平面図である。
図1乃至図3に示すプリーツスクリーンは、ヘッドボックス1から遮蔽材(上部スクリーン2)が吊下支持され、上部スクリーン2の下端に中間レール3が取着されている。中間レール3から遮蔽材(下部スクリーン4)が吊下支持され、下部スクリーン4の下端にボトムレール5が取着されている。
例えば、上部スクリーン2は、レース生地等の半透過性の生地をジグザグ状に折り畳み可能としたものであり、下部スクリーン4は、遮光性を備えた生地をジグザグ状に折り畳み可能としたものである。
上部スクリーン2の幅方向両側には第1及び第2の昇降コード6,7が挿通され、第1の昇降コード6の下端は中間レール3に取着されている。第2の昇降コード7は、中間レール3を貫通し、更に下部スクリーン4に挿通され、下端がボトムレール5に取着されている。
第1及び第2の昇降コード6,7の上端部は、ヘッドボックス1内で支持部材8に回転可能に支持される第1及び第2の巻取軸9,10にそれぞれ巻着されている。即ち、図3に示すように、第1及び第2の巻取軸9,10はヘッドボックス1内において第1及び第2の昇降コード6,7の上方位置で前後方向に並列する状態で支持部材8に回転可能に支持されている。
そして、第1の昇降コード6の上端部が第1の巻取軸9に巻着され、第2の昇降コード7の上端部が第2の巻取軸10に巻着され、第1及び第2の昇降コード6,7は、第1及び第2の巻取軸9,10に対し互いに逆方向に巻着されている。また、第1及び第2の昇降コード6,7は、第1及び第2の巻取軸9,10の回転に基づいて、螺旋状に巻き取られ、或いは巻戻されるようになっている。
第1の巻取軸9には、六角棒状の第1の駆動軸11が相対回転不能に挿通され、第2の巻取軸10には同じく六角棒状の第2の駆動軸12が相対回転不能に挿通されている。そして、第1の駆動軸11が第1の昇降コード6の巻取り方向に回転されると、第1の巻取軸9に第1の昇降コード6が巻き取られ、第2の駆動軸12が第2の昇降コード7の巻取り方向に回転されると、第2の巻取軸10に第2の昇降コード7が巻き取られるようになっている。
ヘッドボックス1の一方の端部には、第1及び第2の駆動軸11,12を回転駆動するための操作装置13が取着されている。操作装置13の基端側にはケース14内のプーリー15が回転可能に支持され、そのプーリー15には無端状の操作コード(例えば、ボールチェーン)16が掛装されて下方へ垂下されている。そして、操作コード16の操作によりプーリー15を回転駆動可能となっている。
プーリー15には歯車(図示せず)が一体に形成され、その歯車にケース14に回転可能に支持された伝達歯車(図示せず)が噛み合わされている。従って、プーリー15が回転されると、この伝達歯車が回転する。この伝達歯車の回転は、ケース14に回転可能に支持された一対のクラッチ機構(図示せず)の各入力軸に噛み合わされている。このクラッチ機構は、各入力軸の一方向の回転のみをそれぞれ対応する各出力軸に伝達する公知の機能を備え、伝達する回転方向は互いに逆方向である。そしてクラッチ機構の一方の出力軸に第1の駆動軸11の端部が嵌着され、他方のクラッチ機構の出力軸に第2の駆動軸12の端部が嵌着されている。
このような構成により、操作コード16を例えば図2に示す矢印A方向に操作すると、第2の駆動軸12のみが回転されて、第2の巻取軸10が第2の昇降コード7の巻取り方向に回転される。
また、操作コード16を図2に示す矢印B方向に操作すると、第1の駆動軸11のみが回転されて、第1の巻取軸9が第1の昇降コード6の巻取り方向に回転される。
第1及び第2の駆動軸11,12は、ヘッドボックス1内のストッパー装置24に挿通されている。このストッパー装置24は、中間レール3若しくはボトムレール5の引き上げ操作の後に操作コード16を手放したとき、中間レール3及びボトムレール5の自重降下を防止する公知の作用をなす。ストッパー装置24の側方にガバナー装置36,37が配置されている。ガバナー装置36,37の詳細は後述する。
ヘッドボックス1の他方の端部には、第2の巻取軸10からの第2の昇降コード7の最大巻戻し量を設定して、ボトムレール5の下限位置を設定する下限リミット装置38が配設されている。同様に、中間レール3の下限位置を設定する下限リミット装置も並設されている。
図2に示すように、第1及び第2の昇降コード6,7の挿通位置において、上部スクリーン2及び下部スクリーン4の背面側にはピッチ保持コード39が配設されている。このピッチ保持コード39は、上部スクリーン2と下部スクリーン4の折り目のピッチを一定にするように動作する。
このように構成されたプリーツスクリーンの動作を説明する。ボールチェーン16を矢印A方向に引き下げると、第2の駆動軸12のみが回転されて第2の巻取軸10に第2の昇降コード7が巻き取られ、ボトムレール5が引き上げられる。そして、ボトムレール5を所望高さまで引き上げた後、操作コード16を手放すと、ストッパー装置24の自重降下防止動作により、ボトムレール5が所望高さに保持される。
この状態から、操作コード16を矢印A方向に引いた後に手放すと、ストッパー装置24の自重降下防止動作が解除され、ボトムレール5が自重降下する。
操作コード16を矢印B方向に引き下げると、第1の駆動軸11のみが回転されて第1の巻取軸9に第1の昇降コード6が巻き取られ、中間レール3が引き上げられる。そして、中間レール3を所望高さまで引き上げた後、操作コード16を手放すと、ストッパー装置24の自重降下防止動作により、中間レール3が所望高さに保持される。
この状態から、操作コード16を矢印B方向に引いた後に手放すと、ストッパー装置24の自重降下防止動作が解除され、中間レール3が自重降下する。
図3に示すように、ストッパー装置24の側方にガバナー装置36,37が配置され、ガバナー装置36,37の各々は、固定部材40によりヘッドボックス1内に固定されている。図4は、本発明による一実施形態の遮蔽装置におけるガバナー装置36,37及び固定部材40の概略を示す斜視図である。また、図5は、本発明による一実施形態の遮蔽装置におけるガバナー装置36,37及び固定部材の概略を示す斜視図である。
図4及び図5に示すように、ガバナー装置36は、第1の駆動軸11の回転を停止させることなく連結部材50を介して第1の駆動軸11の回転速度を所定値以下に抑制して、中間レール3の自重降下時の下降速度を抑制する。また、ガバナー装置37は、第2の駆動軸12の回転を停止させることなく連結部材50を介して第2の駆動軸12の回転速度を所定値以下に抑制して、ボトムレール5の自重降下時の下降速度を抑制する。ガバナー装置36,37の各々は、様々な形状を有する多種類のヘッドボックス1に適合可能であり、それぞれ同一形状で構成され、油圧式の制動機構を有し、その本体部は略円筒状のハウジング361,371を有している。ガバナー装置36,37の各々について、この略円筒状のハウジング361,371を固定する固定部材40は、様々な形状のヘッドボックス1に個別に適合させた形状で構成されるが、様々な形状のヘッドボックス1に対して共通した構成要素で構成される。
図5に示すように、第1及び第2の駆動軸11,12は連結部材50に挿通される。連結部材50は、第1及び第2の駆動軸11,12の回転に伴い回転可能となるよう第1及び第2の駆動軸11,12の六角形状に係合する内周面形状を有し、更に、単に挿通された状態では、第1及び第2の駆動軸11,12上を移動可能である。また、連結部材50は、ガバナー装置36,37における略筒状の中心軸362,372の内周面形状で係合する係合受部(中心軸372の係合受部372bのみ図示)に係合する係合部50aを有し、本例では六角形状に形成される。したがって、連結部材50がガバナー装置36,37における略筒状の中心軸362,372に係合しているときは、第1及び第2の駆動軸11,12の回転がそれぞれ中心軸362,372に伝達可能とされるが、連結部材50がその中心軸362,372に係合していないときは、第1及び第2の駆動軸11,12の回転がそれぞれ中心軸362,372に伝達不能とされる。後述するが、このような連結部材50を用いることによって、ガバナー装置36,37の高精度の設置、及び遮蔽装置の組立性が向上する。
ガバナー装置36,37の本体部は、略筒状(図示する例では、略円筒状)ハウジング361,371で形成され、その先端部363,373は、ハウジング361,371よりもわずかに拡径した略円筒状の形状を有する。また、ハウジング361,371には、凸状の第1突起部364,374と、二箇所に設けられるリブ状の第2突起部365,375が形成されている。
一方、ガバナー装置36,37に対して共通に利用可能な固定部材40の各々は、それぞれガバナー装置36,37のいずれか一方用に互いに逆向きに配置される。例えば、ガバナー装置37を固定する固定部材40は、その一側部にてガバナー装置37の先端部373を当接させ、その内側部にてハウジング371を挿通する収容部401が形成される。したがって、一対のガバナー装置36,37は、それぞれが一方向に対し制動動作する速度調整器として構成され、固定部材40は、当該一対の速度調整器における各々の第1突起部364,374が交差するよう配置して保持可能とするよう構成されている。
特に、固定部材40は、第1突起部364,374が遮蔽材の開閉方向とは略直角を為す向き(即ち、前後方向)で、ハウジング361,371を回転不能に保持するよう構成されているため、ヘッドボックス1内1へと設置する際の収容効率を高める態様で固定することが可能となっている。また、固定部材40の長さはハウジング361,371の全長より短く、第1突起部364,374及び第2突起部365,375の長さは、固定部材40の長さより短いため、一方の速度調整器(例えば、ガバナー装置36)を他方の速度調整器(例えば、ガバナー装置37)と逆向きに併設する際の邪魔とならないようになっており、当該一対の速度調整器における双方をより密接して固定させることができる。
収容部401には、凸状の第1突起部364,374と係合する第1係合受部402、及び、二箇所に設けられるリブ状の第2突起部365,375と係合する第2係合受部403が形成されている。このように、ハウジング361,371の外面上には、第1突起部364,374と、この第1突起部364,374と直径方向で軸芯に対し逆側の周面に設けられる第2突起部365,375が設けられているため、固定部材40は、第1突起部364,374及び第2突起部365,375により、ハウジング361,371を回転不能に保持するようになっている。
また、固定部材40は、環が広がる方向に弾性を有する環状に構成され、この固定部材40には、ガバナー装置37の先端部373が固定部材40の一側部に当接する位置で係止するための爪部404が、ガバナー装置37を挿通可能とする収容部401に形成されている。この爪部404が、凸状の第1突起部374の一部と嵌合することにより、一旦、ガバナー装置37が固定部材40に装着されると容易には取り外せないようになっている。これにより、固定部材40は、ガバナー装置36,37のハウジング361,371を軸方向に移動不能に固定することができる。そして、固定部材40の下方には、ヘッドボックス1内の底面に安定して配置するための脚部405が三箇所に設けられている。したがって、ガバナー装置36,37は、固定部材40に対して回転不能に装着され、ガバナー装置36,37とそれぞれの固定部材40とは、それぞれ一体となって、ヘッドボックス1内の底面に配置可能となり、この一体化した状態で、ヘッドボックス1内で左右方向に配置調整時に移動可能としている。
以下、代表して、連結部材50を介して駆動軸12を連結するガバナー装置37について、幾つかの実施例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1のガバナー装置)
図6(a),(b),(c),(d)は、本発明による一実施形態の遮蔽装置における実施例1のガバナー装置37の概略を示す図である。図6(a)はガバナー装置37の平面図であり、図6(b)はガバナー装置37の左側面図であり、図6(c)はガバナー装置37の正面図であり、図6(d)はガバナー装置37の右側面図である。
実施例1のガバナー装置37は、油圧式の制動機構により遮蔽材の開閉に伴う速度を調整する速度調整器として構成され、主に、略円筒状のハウジング371と、ハウジング37内に挿入された略円筒状の中心軸372と、ハウジング37内に収容され、中心軸372の回転に伴い中心軸372に沿って移動可能な略円板状の移動部材377とを備える。ハウジング371の先端部373は、ハウジング371よりもわずかに拡径した略円筒状の形状を有する。また、ハウジング371には、凸状の第1突起部374と、二箇所に設けられるリブ状の第2突起部375が形成されている。
更に、ハウジング371は、透明又は半透明で構成され、内部に収容される移動部材377の位置が外部から視認できるようになっており、その移動部材377の移動距離は、概ねボトムレール5の昇降距離に対応している。そして、ハウジング371上に、移動部材377の位置とボトムレール5の調整基準位置とを比較可能な判定基準部(マーク)371dが設けられている。ボトムレール5の調整基準位置は、物理的な限界下限位置を避け、第1及び第2の巻取軸9,10による数回転分の巻取が為された状態に設定する。これは、ボトムレール5が物理的な限界下限位置まで到達するように構成すると(後述する“余巻無し”の状態とすると)、実際の遮蔽材の昇降動作で不安定な動きをする為である。このため、ボトムレール5の下限位置は高精度で調整されることが望ましいが、本例では、判定基準部(マーク)371dが設けられているため、ボトムレール5の下限位置の高精度な調整も可能となる。
また、中心軸372の係合受部372bは、連結部材50の係合部50aと係合するよう形成され、本例では六角形状に形成される。図7(a),(b),(c),(d)は、実施例1のガバナー装置37と連結部材50との連結に関する連結前後の状態を説明する図であり、図7(b),(d)は、それぞれ連結前後の平面図であり、図7(a),(c)は、それぞれ連結前後のA‐A’断面図及びB‐B’断面図である。中心軸372の先端部には、二箇所に爪部372cが設けられ、連結部材50が略筒状の中心軸372内に挿入されると、連結部材50の基端側のフランジ部50bがこの爪部372cに係止され、容易には抜けないようになっている。
また、連結部材50は、ガバナー装置37における略筒状の中心軸372の係合受部372bに係合する係合部50aを有し、本例では六角形状に形成される。したがって、連結部材50が、例えばガバナー装置37における略筒状の中心軸372に係合しているときは、第2の駆動軸12の回転を中心軸372に伝達可能とされるが、連結部材50がその中心軸372に係合していないときは、駆動軸12の回転を中心軸372に伝達不能とされる。このように、中心軸372は、第2の駆動軸12を非接触で貫通可能な形状を有する。そして、中心軸372に対して第2の駆動軸12の回転の伝達・非伝達を選択可能に構成される連結部材50が第2の駆動軸12に設けられる。この連結部材が中心軸372に取着されることにより、第2の駆動軸12の回転が中心軸372に伝達されるようになっている。
ここで、実施例1のガバナー装置37の動作について詳細に説明する。図8(a),(b),(c),(d)は実施例1のガバナー装置37の動作を説明する図であり、図8(a)は、ブラインド下降開始時(例えば、ボトムレール5の最上位からの下降開始時)の状態図であり、図8(b)は、ブラインド下降完了直前時(例えば、ボトムレール5の最下限位置の直前時)の状態図であり、図8(c)は、ブラインドのボトム高さ位置(例えば、ボトムレール5の高さ位置)と中心軸372に加わる荷重との関係を示す図であり、図8(d)は、ブラインドのボトム高さ位置(例えば、ボトムレール5の高さ位置)と中心軸372に加わるブレーキ力との関係を示す図である。
図8(a),(b)に示すように、ガバナー装置37のハウジング371の内面371aと移動部材377との間には隙間379が設けられている。ハウジング37内の収容空間378内にはオイルが充填されている。移動部材377は、中心軸372に螺合されており、且つハウジング371に対して相対スライド移動が可能で、相対回転不能に構成される。例えば、内面371aの軸直交断面内周が円とした例では、その円縁に凹条を設け、移動部材377の軸直交面断面の外周が内面371aより隙間379を隔てた円とした例では、その円縁に凸部を設け、内面371aの当該円縁の凹条と、移動部材377の当該円縁の凸部が係合するように構成すればよい。移動部材377とハウジング371とが軸方向への相対移動可能且つ相対回転不能とする場合の形態は、他にも移動部材377とハウジング371の内面371aを角形・楕円とするなどがある。
このような構成によって、中心軸372の回転に伴って移動部材377がスライド移動する。具体的には、図8(a)の矢印A方向の回転によって移動部材377が矢印X方向に移動する。移動部材377が移動する際に、収容空間378内のオイルが、移動部材377の前方(進行方向)側から隙間379を通って後方側に移動する。この際にオイルが受ける抵抗がオイルの流通抵抗であり、隙間379が狭いほど、オイルの粘性が高いほど、オイルの流通抵抗が大きくなる。そして、オイルの流通抵抗が大きいほど、移動部材377がオイルから受ける抵抗力が大きくなり、これにより、中心軸372に加わるブレーキ力が大きくなる。従って、内面371aが図示するようにテーパ状である場合、図8(c),(d)に示すように、ボトムレール5が下降するに従い、中心軸372に加わる荷重が減少し、ブレーキ力も低下する。また、隙間379の大きさやオイルの粘性を適宜変化させることによって、ガバナー装置37が中心軸372に与えるブレーキ力を容易に調整することができる。
例えば、下部スクリーン4が折り畳まれた状態では、下部スクリーン4及びボトムレール5のほぼ全重量が第2の昇降コード7によって支持されているので、第2の昇降コード7に加わる荷重が大きい。下部スクリーン4はヘッドボックス1によって吊下支持されているので、ボトムレール5が下降して下部スクリーン4が広げられるにつれて第2の昇降コード7に加わる荷重が減少する。したがって、ボトムレール5の高さ位置と、第2の昇降コード7に加わる荷重の関係は、図8(c)に示す通りになる。第2の昇降コード7に加わる荷重が大きい位置ほどボトムレール5が高速で降下しようとするので、ボトムレール5を高い位置から降下させるときにボトムレール5の降下速度が過度に大きくならないように、ガバナー装置37は、図8(d)に示すようにボトムレール5が高い位置にあるときほどブレーキ力が大きくなるように構成される。
このような特性を実現すべくガバナー装置37のハウジング371の内面371aは、図8(a),(b)に示すようにテーパ状になっていて、移動部材377が矢印X方向に移動するにつれて隙間379が徐々に大きくなることによってオイルの流通抵抗が徐々に小さくなるようになっている。このような構成により、ボトムレール5の高さ位置とガバナー装置37によるブレーキ力が図8(d)に示す関係となり、ボトムレール5の降下速度が過度に大きくなることを防ぐことができる。また、ボトムレール5の降下完了直前には、ガバナー装置37によるブレーキ力を非常に小さくすることができるので、ボトムレール5が下限位置にまで下がらないという問題の発生を防ぎ、ボトムレール5の降下完了直前で停止することなく最下限まで昇降コード7を巻き戻すことができる。これは、ボトムレール5が最下限まで停止せず昇降コード7を巻き戻すことができる許容範囲の最低ブレーキ力を広い隙間379及び粘度で定め、その条件でブラインド高さの上限付近の高い位置でブラインドの下降速度が所定速度以下となるよう狭い隙間379を定めることにより実現できる。
従って、あらゆる重量や比重の遮蔽材・あらゆる幅高さ比率の遮蔽材でも適切にオイル粘度と隙間379を定めることによりボトムレール5が降下完了直前で停止することなく最下限まで下降させることができる。尚、図8(d)のグラフの傾斜方向は図8(c)のグラフと対応させる必要があるが、図8(d)のグラフの傾き角は、自重降下をどの高さ位置から開始しても全ての回転部分の摺動抵抗を受けつつボトムレール5が下降開始位置から最下限までボトムレール5を停止させることなく昇降コード7を巻き戻すことができる許容範囲のブレーキ力であれば、図8(c)のグラフとの厳密な同一性は要求されない。また、ボトムレール5の高さ位置とガバナー装置37によるブレーキ力の関係は図8(d)に示すような線形関係でなくてもよく、曲線又は折れ線で表される関係であってもよい。この高さ位置とブレーキ力の関係は、ハウジング37の内面形状を変更することによって容易に変化させることができる。
尚、図8(b)に示す状態から、ボトムレール5を上昇させると、移動部材377は、図8(a)の状態へと移動させることができる。そして、ボトムレール5が上限位置にまで到達したときに、移動部材377が図8(a)で示す位置にまでに移動する。
ここでは、移動部材377がハウジング371の収容空間378の略左端から略右端に渡って移動する例を挙げて説明を行ったが、移動部材377は、収容空間378の略左端又は略右端に到達しなくてもよい。また、昇降コード7の長さが異なる複数種類のプリーツスクリーンに対して共通のガバナー装置37を使用する場合には、ボトムレール5が下限位置にあるときの移動部材377の位置を揃えるように構成することが好ましい。ボトムレール5の降下完了直前でのブレーキ力を適切に規定することが重要であるからである。
前述に例示したガバナー装置36,37は、プリーツスクリーン以外にも、遮蔽材を自重降下させる日射遮蔽装置(例:横型ブラインド、たくし上げカーテン)にも適用可能である。この場合、日射遮蔽装置にて、巻き戻すにつれて中心軸372に加わるトルクが減少するようにする。また、スプリングなどの蓄勢力よる自動巻き取り機構を利用したブラインドに対し巻き取り速度が過大とならないよう制御する場合にも適用できる。この場合は、スプリングなどの付勢力とブラインド荷重との差(トルクギャップ)の位置毎に適したブレーキ力を発生するよう位置を合わせるようにする。更に、横引きの縦型ブライド、カーテンレール、パネルスクリーンのような日射遮蔽装置やプリーツ網戸やアコーデオンカーテンなどの仕切りにスプリングや錘などの蓄勢力により開閉方向のどちらか一方を自動化(自閉又は自開)させる遮蔽装置に適用することができる。この場合も、トルクギャップの傾斜に合わせてダンパトルクの傾斜を近似するようにすればよい。また、ガバナー装置36,37は、ワンウェイ機能(速度制御しない側への回転にはダンパトルクを発生させないか又は著しく減少させること)を備えるように構成することもできる。
(実施例2のガバナー装置)
次に、実施例2のガバナー装置について説明する。図9(a),(b)は、実施例2のガバナー装置37の構成及び動作を説明する図であり、図9(a)は、ボトムレール5の自重降下時の状態図を示しており、図9(b)は、ボトムレール5の上昇操作時の状態を示している。尚、同様な構成要素には同一の参照番号を付している。実施例2は、実施例1に類似しており、ワンウェイ機能(速度制御しない側への回転にはダンパトルクを発生させないか又は著しく減少させること)を備える点が異なる。具体的な部材としては、移動部材377が内部流通路380と弁部材381を備える点が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
図9に示すように、移動部材377には、移動部材377を貫通する内部流通路380と、内部流通路380を開閉可能な弁部材381が設けられている。ボトムレール5の自重降下時には移動部材377が矢印X方向に移動し、その際に弁部材381がオイルによって押されて図9(a)に示すように内部流通路380を閉じる位置に移動する。この状態では、内部流通路380の流路379aは封鎖され、オイルは、隙間379を通じてのみ、移動部材377の前方から後方に移動可能であり、オイルの流通抵抗が大きく、従ってガバナー装置37のブレーキ力が大きい。
一方、ボトムレール5の上昇操作時には移動部材377が矢印Y方向に移動し、その際に弁部材381がオイルによって押されて図9(b)に示すように内部流通路380を開く位置に移動する。この状態では、オイルは、隙間379と内部流通路380の流路379aの双方を通じて、移動部材377の前方から後方に移動可能であり、オイルの流通抵抗が小さく、従ってガバナー装置37のブレーキ力が小さい。
このように、本実施例では、弁部材381を用いて、移動部材377の移動方向によってオイルが移動部材377を通過可能な流通路の断面積を実質的に変化させることによって、ガバナー装置37のブレーキ力を変化させることが可能になっている。また、このような構成により、簡易な構成でボトムレール5の自重降下時には適切にブレーキ力を働かせることによってボトムレール5の降下速度が過度に大きくなることを抑制し、且つ速度制御しない側(ボトムレール5の上昇操作時)にはブレーキ力を低減することによって、ボトムレール5を上昇させる際の操作力の増大を抑制している。スプリングなどの蓄勢力よる自動巻き取り機構を利用したブラインドに対しこのガバナー装置37を適用するには、速度制御しない側(下げ方向)への回転で開弁するようにする。横引きのウィンドウカバリングや仕切りにおける蓄勢力による自閉装置に適用する場合、速度制御しない側(開き方向)への回転で開弁するようにする。自開装置に適用する場合、速度制御しない側(閉じ方向)への回転で開弁するようにする。
尚、ガバナー装置36,37に第1及び第2の駆動軸11,12を連結可能とするための連結部材50は、様々な変形例が想定される。図10(a),(b),(c)は本発明による一実施形態の遮蔽装置における第2の駆動軸12及び連結部材50の例を説明する図である。前述した連結部材50は、図10(a)に示すように、六角棒状の第2の駆動軸12に対してその六角形状に係合する内周面形状を有する係合部50aを有し第2の駆動軸12上を移動可能とする例を説明したが、図10(b)に示すように、例えば第2の駆動軸12と連結部材50とを一体化したものとすることも可能である。更に、図10(c)に示すように、連結部材50を第2の駆動軸12上を移動可能としつつ、連結部材50の先端面を嵌合用に凸状の係合部50aで構成し、この凸状の係合部50aと係合するよう中心軸372の一端部を凹状の係合受部372bで構成することもできる。
(実施例3のガバナー装置)
次に、実施例3のガバナー装置37について説明する。図11(a)乃至(h)は、実施例3のガバナー装置37の構成を説明する図であり、図11(a)は、横型ブラインドなどのウィンドウカバリングに適用する場合における第2の駆動軸12と連結部材50とを非連結状態とした際の状態図を示しており、図11(b)乃至(g)は、それぞれ図示される断面図であり、図11(h)は、横型ブラインドなどのウィンドウカバリングに適用する場合における第2の駆動軸12と連結部材50とを連結状態とした際の状態図を示している。
実施例3では、ハウジング371に設けたオイル流通路371gを用いて移動部材377がオイルから受ける抵抗力を変化させる点が主な相違点である。尚、第2の駆動軸12は、四角棒状を例に説明し、連結部材50の先端面を嵌合用に凸状係合部50aで構成し、この凸状の係合部50aと係合するよう中心軸372の一端部を凹状の係合受部372bで構成する例を説明する。
移動部材377はハウジング371内に軸方向に相対移動可能且つ相対回転不能に収容される。即ち、ハウジング371の内面371aにおける長手方向の全長に亘って設けられた凸条371cが移動部材377の溝部377eと係合した状態で中心軸372の外周面に設けられた螺合溝372aが移動部材377の中心にネジ作用で嵌め込まれることで、移動部材377の中心に中心軸372を螺合させ、中心軸372の回転に伴い移動部材377が軸方向に移動するようになっている。横型ブラインドなどのウィンドウカバリングに適用する場合には、第2の駆動軸12の下降方向の回転に基づき中心軸372が回転すると、移動部材377が図11(a)の矢印Xの方向に向かって移動するように構成される。ハウジング371の右端には、オイル流通路371gが設けられている。オイル流通路371gは、移動部材377の移動方向に離間して第1開口部371e及び第2開口部371fを備える。
ボトムレール5が下限位置から離れた位置にある場合は、図11(a)に示すように、移動部材377が第2開口部371fよりも左側にあるために、オイル流通路371gが機能せず、移動部材377がオイルから受ける抵抗力が大きい。
ボトムレール5が自重降下して下限位置近傍に到達すると、移動部材377は、第1開口部371eと第2開口部371fの間に位置することとなる。移動部材377が更にX方向に向かって移動する際には、移動部材377の進行方向側にあるオイルが第1開口部371eを通じてオイル流通路371gに入って第2開口部371fを通じて移動部材377の後方に移動するので、移動部材377がオイルから受ける抵抗力が小さい。また、上昇に転じると、移動部材377の移動によりオイルは371f、371g、371eを経て進行方向から離脱方向に逆流する。
以上の原理により、本実施例によれば、移動部材377が下限位置近傍に到達すると、移動部材377の進行方向側にあるオイルが第1開口部371eを通じてオイル流通路371gに入って第2開口部371fを通じて移動部材377の後方に移動し、移動部材377のオイルから受ける抵抗力が急激に低減され、その低い抵抗力は移動部材377が下限位置(図11(h)参照)に到達するまで継続する。従って、ボトムレール5が下限位置近傍に到達したときに移動部材377のブレーキ力を低下させるよう構成すれば、ボトムレール5を下限位置にまで確実に到達させることができる。
尚、各実施例のガバナー装置36,37は、ボトムレール5に直接設置する態様や、1つの固定部材40で、各実施例のガバナー装置36,37のいずれか一方、又は双方を装着し、一体化する形態とすることも可能である。加えて、固定部材40を利用して一体化するガバナー装置36,37に対する第1及び第2の巻取軸9,10による第1及び第2の駆動軸11,12の回転方向は、例えば図12(a)に示すように側面巻取(内向き巻取)とすることや、例えば図12(b)に示すように中央巻取(外向き巻取)とするなど、遮蔽装置の構成に応じた形態とすることができる。この場合、ガバナー装置36,37が一方向に対し制動動作し(逆回転は正動力が弱く)、固定部材40の左右両側から挿入可能とし、両向きに保持可能とすることができる。
(組立手順)
次に、図13及び図14を参照して、固定部材40を利用して、ガバナー装置36,37を遮蔽装置に組み付ける際の組み付け手順を説明する。図13は、本発明に係る遮蔽装置におけるガバナー装置36,37の組み付け手順を説明するフロー図である。図14(a),(b),(c)は本発明に係る遮蔽装置におけるガバナー装置37の組み付け手順に関する説明図であり、図14(a)は“余巻無し”で第2の駆動軸12が中心軸372に対して回転非伝達の状態(連結部材50が中心軸372に対して非係合の状態)を示し、図14(b)は“余巻有り”で第2の駆動軸12が中心軸372に対して回転伝達の状態(連結部材50が中心軸372に対して係合状態)を示し、図14(c)はボトムレール5の上限近傍まで上昇させた状態を示している。尚、図14は、実施例3のガバナー装置37を代表して図示しているが、実施例1,2のガバナー装置37についても同様である。図14では図11の実施形態を判定基準部(マーク)371dが上向き、オイル流通路371gが下向きにヘッドボックス1へ組み込んだ例を示している。図4〜7に示した形態でも同様に適用できる。
まず、ガバナー装置36,37を固定部材40に装着し、一体化する(ステップS1)。このとき、1つの固定部材40でガバナー装置36,37をそれぞれ固定する場合や、1つの固定部材40でガバナー装置36,37の双方を固定する場合があることは前述した通りである。以下、1つの固定部材40で1つのガバナー装置37を一体化させた例を説明する。
次に、一実施形態のヘッドボックス1内に、固定部材40にて一体化したガバナー装置37を含み、それぞれ各種の装置部材を設置する(ステップS2)。このとき、ガバナー装置の連結部材50aを爪部372cまで係合しない程度に中心軸372に挿通しヘッドボックス1内に仮設置してもよい。また、仮設置せず、ステップS3の段階で第2の駆動軸12を連結部材50a及び中心軸372に個別に挿通してもよい。
次に、一実施形態のヘッドボックス1に対して設置された各種の装置部材に対して、第2の駆動軸12を挿通し設置する(ステップS3)。ただし、この状態では、第2の駆動軸12は、固定部材40にて一体化したガバナー装置37の中心軸372とは連結されておらず、自由回転する。即ち、第2の駆動軸12にて連結部材50aが移動可能に挿通されているが、連結部材50がその中心軸372に係合していない状態である。より具体的には、図14(a)に示すように、第2の巻取軸10は、その一端近傍から他端に向かって断面テーパ状に径が小さくなるパイプ状に形成されている。第2の巻取軸10の先端部には、係止溝10aが形成されている。そして、第2の昇降コード7は第2の巻取軸10の基端側の下方からヘッドボックス1内に案内され、その端部が係止溝10aに掛止されている。このため、第2の巻取軸10には第2の昇降コード7が全く巻き取られていない“余巻無し”の状態にある。
次に、ガバナー装置37のハウジング371上に、移動部材377の位置とボトムレール5の調整基準位置(例えば、最下限位置)とを比較可能な判定基準部(マーク)371dが設けられているのを利用して、移動部材377の位置を、ガバナー装置37の中心軸372上にて判定基準部(マーク)371dに合致させた位置に合わせておき、その状態で、遮蔽材を取り付けたボトムレール5の最下限位置を調整して決定する(ステップS4)。このとき、ガバナー装置37の中心軸372に対する移動部材377の位置が変動することなく、第2の駆動軸12が回転可能である。
次に、遮蔽材を取り付けたボトムレール5の最下限位置を決定した状態で、ガバナー装置37の中心軸372に対する移動部材377の位置を固定するために、連結部材50aをその中心軸372に係合させる(ステップS5)。より具体的には、第2の駆動軸12が中心軸372とは連結されておらず自由回転する状態で、図14(b)に示すように、ボトムレール5を最下限まで下降させたときの第2の昇降コード7を、第2の巻取軸10に対し数回転分(例えば、約2.5回転分)の“余巻有り”の状態となる長さに設定する。一方で、移動部材377の位置とボトムレール5の調整基準位置(例えば、最下限位置)とを比較可能な判定基準部(マーク)371dが設けられているのを利用して、移動部材377の位置を、ガバナー装置37の中心軸372上にて判定基準部(マーク)371dに合致させた位置に合わせておく。その後、遮蔽材を取り付けたボトムレール5の最下限位置を決定した状態で、連結部材50aを中心軸372に係合させることにより、ガバナー装置37の中心軸372に対する移動部材377の位置を固定する。
尚、この“余巻有り”の状態では、第2の昇降コード7が第2の巻取軸10の全長にわたって均等に巻かれた状態となる。この“余巻有り”とすることで、ボトムレール5が最下限から最上位となるまで第2の昇降コード7を巻き取るとき、或いは、ボトムレール5が最上位から最下限となるまで第2の昇降コード7を巻き戻すときに、遮蔽材やボトムレール5の重量に基づいて、第2の巻取軸10に十分な回転力が作用するようになる。逆に云えば、図14(a)に示すような、ボトムレール5(遮蔽材下限)が物理的な限界下限位置で昇降コードが全て巻き戻された状態に構成すると(“余巻無し”の状態とすると)、下降時その数回転分(例えば、約2.5回転分)の巻き戻しにおける第2の昇降コード7の張力による第2の巻取軸10への回転トルクが十分得られず、遮蔽材の所定の伸展状態まで下降しないため、好ましくない。
これにより、ガバナー装置37によるブレーキ力特性の合わせ込みを高精度、且つ容易に実現することができる。即ち、最低ブレーキ力に対応し遮蔽材の所定の伸展状態まで確実に下降し、且つ図14(c)に示すように、第2の昇降コード7が第2の巻取軸10に螺旋状に巻き取られるとボトムレール5の上限まで上昇させることができ、ガバナー装置37内の移動部材377が、所望のブレーキ力特性(図8(d)参照)を、その中心軸372における荷重(図8(c)参照)と対応するよう精度よく合わせ込むことができる。
尚、連結部材50がその中心軸372に係合していない状態で、固定部材40にて一体化したガバナー装置37を含み、それぞれ各種の装置部材に対して第2の駆動軸12を挿通し、その後、ヘッドボックス1に対して各種の装置部材を設置する手順としてもよい。
以上のように、本発明に係る実施形態の遮蔽装置では、多種類の遮蔽装置へと適合可能とされた略円筒状のハウジング371を有するガバナー装置36,37が設けられる。このガバナー装置36,37は、遠心力を利用して制動機構を構成する代わりに、油圧式の制動機構を構成する。これにより、ガバナー装置36,37の構成要素も簡素化することができ、装置の動作信頼性を高めるとともに、低廉化を図ることができる。
また、ガバナー装置36,37は、第1及び第2の駆動軸11,12の回転に対する伝達・非伝達を選択可能な中心軸372を有するよう構成されるオイル式速度調整器として構成されるため、組立性が向上する。特に、このような中心軸372は、第1及び第2の駆動軸11,12上に設けられた連結部材50と着脱可能に構成することで、ガバナー装置36,37によるブレーキ力特性に対する組み立て時の合わせ込みを高精度、且つ容易に実現することができる。
そして、当該中心軸372は、第1及び第2の駆動軸11,12の回転を非伝達とする状態でボトムレール5の位置が調整された後、第1及び第2の駆動軸11,12の回転を伝達する状態でボトムレール5の位置が固定されるため、ガバナー装置36,37によるブレーキ力特性の合わせ込みを高精度、且つ容易に実現することができる。
そして、オイル式速度調整器としてガバナー装置36,37を構成する際に、その移動部材377の位置が視認できるようハウジング371が透明又は半透明で構成することで、ハウジング371上に、移動部材377の位置とボトムレール5の調整基準位置とを比較可能な判定基準部(マーク)371dが設けられているため、ガバナー装置36,37によるブレーキ力特性の合わせ込みを高精度、且つ容易に実現することができる。
また、連結部材50による第1及び第2の駆動軸11,12の回転伝達は、連結部材50の端面伝達か、又は外周面伝達とするよう構成したため、その連結部材50の大型化を避けることができる。
そして、このような構成を有する油圧式ガバナー装置36,37に対して、その略円筒状のハウジング361,371を固定する固定部材40を用いるため、固定部材40を様々な形状のヘッドボックス1に適合させることで、ガバナー装置36,37を多種類の遮蔽装置へと適合可能とするとともに、その略円筒状のハウジング361,371の形状を生かして一体化するよう構成されているため、その収容効率を高めることができる。
(実施例4のガバナー装置)
次に、実施例4のガバナー装置37について説明する。図15(a)乃至(f)は、一実施形態の遮蔽装置における実施例4のガバナー装置の構成を説明する図であり、図15(a)は、第2の駆動軸12と連結部材50とを非連結状態とした際の状態図を示しており、図15(b)乃至(e)は、それぞれ図示される断面図であり、図15(f)は、第2の駆動軸12と連結部材50とを連結状態とした際の状態図を示している。
図15に例示する実施例4のガバナー装置37は、ハウジング371の内面371aにおける長手方向の全長に亘って設けられた凸条371cが移動部材377の溝部377eと係合した状態で中心軸372の外周面に設けられた螺合溝372aが移動部材377の中心にネジ作用で嵌め込まれることで、移動部材377の中心に中心軸372を螺合させ、中心軸372の回転に伴い移動部材377が軸方向に移動するようになっている。特に、移動部材377が図示右方向に移動するにつれて隙間379が徐々に大きくなることによってハウジング371の収容空間378内に充填されたオイルの流通抵抗が徐々に小さくなる。したがって、ハウジング371の内面371aが図示するようにテーパ状となっている「非調整領域」では、中心軸372の制動力(ブレーキ力)が移動部材372の移動に伴い変化するようになっている。これにより、ボトムレール5の降下速度が下限付近で停止したり過度に小さくなることを防ぐことができ、且つ上限付近で降下速度が 過度に大きく なることを防ぐことができる。これらの点で、実施例4のガバナー装置37は、実施例1とほぼ同様に構成され動作する。 尚、「非調整領域」と記載はしたが説明の便宜のためであり、必要な初動トルクが非調整領域にある遮蔽装置であれば非調整領域内に移動部材377の初期位置を調整してもよい。
また、図15に例示する実施例4のガバナー装置37は、第2の駆動軸12は、本例では四角棒状で構成し、連結部材50の先端面を嵌合用に凸状係合部50aで構成し、この凸状の係合部50aと係合するよう中心軸372の一端部を凹状の係合受部372bで構成し、中心軸372を第2の駆動軸12の回転に対する伝達・非伝達を選択可能に構成する。このような連結部材50を用いることによって、図13及び図14で上述した例と同様に、実施例4のガバナー装置37の高精度の設置、及び遮蔽装置の組立性を向上させることができ、これらの点で、実施例3とほぼ同様に構成される。
ただし、図15に例示する実施例4のガバナー装置37では、その制動力の初期位置を調整可能な調整機構(本例では、調整ダイヤル400)が設けられ、当該制動力の初期位置の「調整領域」は、当該「非調整領域」よりも制動力の変化量が小さくなるようになっている。
好適には、図16(a)に示すように、「調整領域」の流通抵抗がほぼ一定とすることができる(図16(b)参照)。或いは、図16(c),(d)に示すように、「調整領域」の流通抵抗が緩やかに減少するよう当該「非調整領域」よりも緩傾斜の直線又は曲線のテーパ状で「調整領域」におけるハウジング371の内面371aを形成し、「調整領域」の流通抵抗が徐々に減少していくように構成することができる(図16(e),(f)参照)。
より具体的に、本例の調整機構を説明するに、この調整機構として構成される略円板状の調整ダイヤル400は、その中心が中心軸372に対して相対回転不能にハウジング371の左端部側(連結部材50との係合側とは逆側)にて取着され、調整ダイヤル400を回転させることで、オイルの流通抵抗が可変となる状態を生じさせる移動部材377の初期位置を外部から操作可能としている。尚、中心軸372を第2の駆動軸12とは非連結状態としているとき、中心軸372は第2の駆動軸12に対して自由回転することから、中心軸372の基端側(図示する左端部側)に取着される調整ダイヤル400を回転操作することで、中心軸372に対する移動部材377の初期位置を調整することができる。したがって、図16(a),(b)にて図示するように、或る遮蔽装置Aの昇降領域をその初期位置の調整によってシフトさせることができる。
例えば、図15(a)に示すように、調整ダイヤル400は、中心軸372を第2の駆動軸12とは非連結状態としておき、中心軸372に対する移動部材377の初期位置を、予め定めた当該「調整領域」(一点鎖線で示すPsから二点鎖線で示すPeの範囲)内で調整可能に構成される。そして、移動部材377の初期位置を調整後、図15(b)に示すように、中心軸372を第2の駆動軸12と連結状態とすることができる。したがって、遮蔽装置に実施例4のガバナー装置37を組み付けた状態で、調整ダイヤル400を操作することにより、移動部材377の初期位置を調整し、オイルの流通抵抗の動作帯域を変化させ、ボトムレール5の自動降下時間を調整することができる。
尚、図6、図11及び図14等を参照して説明した上述した実施例のように、ハウジング371と、このハウジング371内に充填するオイルを透過性あるものとし移動部材377の位置とボトムレール5の調整基準位置とを比較可能な判定基準部(マーク)371dを設けるのが好適である(図示せず)。例えば、ボトムレール5の調整基準位置として、当該「調整領域」の範囲を示すようにし、ハウジング371の外周の当該調整領域の両端位置に判定基準部(マーク)371dを設け、移動部材377が当該調整領域内のどこにあるかを視認できるようにすることが好ましい。
例えば、ボトムレール5の降下速度が速い場合には、移動部材377が「調整領域」で長く滞在するよう移動部材377の初期位置より基端側に位置するよう調整する。逆に、ボトムレール5の降下速度が遅い場合には、移動部材377が「調整領域」で短く滞在するよう移動部材377の初期位置より先端側に位置するよう調整する。
このように、遮蔽装置に実施例4のガバナー装置37を組み付けた状態で、ボトムレール5の自動降下速度に関する速度調整を容易にできるようになる。
したがって、実施例4のガバナー装置37であれば、簡易な構成により遮蔽装置の種類(或いは遮蔽材の種類)に合わせ適切な抵抗力を付与し適切な速度に調整することができる。特に、遮蔽装置の種類ごとに多数の粘度のオイル(粘性流体)や移動部材377を多数の形状で構成したガバナー装置等、多種類の速度調整装置を用意する必要もなくなり、1つのガバナー装置37で広い種類の遮蔽装置に対応させることが可能となる。
また、外部から調整可能としたことにより、遮蔽装置を組み立てた状態で容易に当該速度調整が可能となる。
(実施例5のガバナー装置)
次に、実施例5のガバナー装置37について説明する。図17(a)乃至(d)は、一実施形態の遮蔽装置における実施例5のガバナー装置の構成を説明する図であり、図17(a)は、第2の駆動軸12と連結部材50とを非連結状態とした際の状態図を示しており、図17(b)は、第2の駆動軸12と連結部材50とを連結状態とした際の状態図を示している。図17(c)は、その左面図を示し、図17(d)は、図17(a)に示す非連結状態時の実施例5のガバナー装置の設置位置の変形例を説明する図である。
図17に例示する実施例5のガバナー装置37は、図15に例示する実施例4のガバナー装置37と比較して、ガバナー装置37の制動力の初期位置を調整可能な調整機構を調整ダイヤル400で構成する代わりに、ヘッドボックス1に対するハウジング371の設置面側に係合爪部371bを設け、ヘッドボックス1に対してスライド可能に係合させるとともに、中心軸372の基端側端部に調整溝372dを設け、これを調整機構として構成する例である。その他の構成要素は、図15に例示する実施例4のガバナー装置37と同様である。したがって、本実施例においても、当該制動力の初期位置を調整可能な調整機構が設けられ、当該制動力の初期位置の「調整領域」は、当該「非調整領域」よりも制動力の変化量が小さくなるようになっている。
より具体的には、実施例5のガバナー装置37は、ヘッドボックス1の長手方向の端部側近傍に設置される。このとき、実施例5のガバナー装置37では、当該調整機構として、まず、ヘッドボックス1に対するハウジング371の設置面側に係合爪部371bを設け、図17(a)に示すように、中心軸372を第2の駆動軸12とは非連結状態としておき、この係合爪部371bをヘッドボックス1の底面に設けた係合孔1aに挿通させて設置する。
その後、略筒状の中心軸372に第2の駆動軸12が挿通される。第2の駆動軸12と係合している連結部材50の係合部50aが中心軸372の一端部に設けられた係合受部372bに係合しているときは、第2の駆動軸12の回転が中心軸372に伝達可能とされるが、連結部材50の当該係合部50aがその中心軸372の当該係合受部372bに係合していないときは、第2の駆動軸12の回転が中心軸372に伝達不能とされる。尚、ハウジング371の設置面側に設けられた係合爪部371bにより、ハウジング371をヘッドボックス1に対してスライド可能に係合させることができ、当該スライドを可能とするよう第2の駆動軸12の端部が略筒状の中心軸372内で収まるように設置される。
実施例5のガバナー装置37内に設けられる中心軸372の基端面には調整溝372dが形成され、ハウジング371の基端部側(連結部材50との係合側とは逆側の図示左端部側)にて露出され、中心軸372を回転させることで、オイルの流通抵抗が可変となる状態を生じさせる移動部材377の初期位置を外部から操作することができる。
この中心軸372の基端面に形成される調整溝372dは、所定の調整操作部材(例えば、プラスドライバーなど)でその中心軸372を回転可能な溝で形成されており(図17(c)参照)、例えば、ヘッドボックス1の長手方向の当該端部側に設けられるサイドキャップ30に設けられた貫通孔30aに棒状のプラスドライバーを挿通して中心軸372を回転させるか、又はサイドキャップ30に貫通孔30a等の開口部が無い場合には、サイドキャップ30自体を外して中心軸372を回転させる。尚、外部から操作可能であれば調整溝372dにおける溝形状は任意な形状とすることができる。また、図17(d)に示すように、中心軸372を第2の駆動軸12とは非連結状態としているときに、中心軸372の基端面に形成される調整溝372dが、サイドキャップ30に設けられた貫通孔30aから露出するよう構成することもできる。
このようにして、中心軸372を第2の駆動軸12とは非連結状態で、中心軸372を回転して移動部材377の初期位置を調整する。そして、移動部材377の初期位置を調整後、図17(b)に示すように、ハウジング371を右方向にスライドさせて、ハウジング371の係合爪部371bをヘッドボックス1の底面に設けた係合孔1bに係合させて固定する。この固定により、中心軸372を第2の駆動軸12と連結状態とすることができるようになっている。
係合爪部371bと係合孔1bとの係合は、容易には外れないように係合することができる一方で、移動部材377の初期位置を調整する際には、ハウジング371を左方向にスライドさせることで再調整することができる。
したがって、遮蔽装置に実施例5のガバナー装置37を組み付けた状態で、移動部材377の初期位置を調整し、オイルの流通抵抗の動作帯域を変化させ、ボトムレール5の自動降下時間を調整することができる。
このように、実施例5のガバナー装置37においても、簡易な構成により遮蔽装置の種類(或いは遮蔽材の種類)に合わせ適切な抵抗力を付与し適切な速度に調整することができる。特に、遮蔽装置の種類ごとに多数の粘度のオイル(粘性流体)や移動部材377を多数の形状で構成したガバナー装置等、多種類の速度調整装置を用意する必要もなくなり、1つのガバナー装置37で広い種類の遮蔽装置に対応させることが可能となる。
また、外部から調整可能としたことにより、遮蔽装置を組み立てた状態で容易に当該速度調整が可能となる。
尚、実施例4,5のガバナー装置37は、ロールスクリーンへの適用も可能である。例えば、実施例4,5のガバナー装置37のハウジング371を、遮蔽材を巻き取る巻取パイプと相対回転不能に設置し、実施例4,5のガバナー装置37の中心軸371を、当該巻取パイプを支持する固定軸に回転不能且つ着脱可能に固定する。そして、当該巻取パイプに、調整ダイヤル400、或いは第2の駆動軸12の回転及びハウジング371のスライドを操作可能とする窓部を設けるようにすればよい。
以上、特定の実施形態の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態の例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、油圧式ガバナー装置36,37と固定部材40を一体化させるための係合手段は、特定の形状を例に説明したが、同様な作用・効果を生じさせるものであれば、他の形状とすることもできる。
また、連結部材50及び第1及び第2の駆動軸11,12の形状は、上述の例に限定されず、同様な作用・効果を生じさせるものであれば、他の形状とすることもできる。尚、図1に示すような、二条の第1及び第2の駆動軸11,12を備える遮蔽装置以外にも、一条、或いは三条以上の駆動軸を備える遮蔽装置にも適用可能であることは勿論である。
また、油圧式ガバナー装置36,37に対して、特定の例を説明したが、上述した実施例を基に、更なる変形例の形状で同様な作用・効果を生じさせるものであれば、他の形状とすることもできる。
例えば、調整領域では中心軸372に螺合溝372aを設けず、当該調整領域のハウジング371の内周面371aに螺合溝を切り、これに移動部材377の外周面を螺合させるよう構成して移動部材372を移動可能に形成することも可能である。この場合の調整領域は、中心軸372と移動部材377との間の隙間がある領域とすることができる。
また、ハウジング371の内周面371aの長手方向にテーパを設ける代わりに、長手方向に多数の溝を設けてオイルが流通する隙間を構成し、長手方向に溝の本数が徐々に増減させる構成も可能である。この場合の調整領域は、溝の本数が変化しない領域とすることができる。
また、ハウジング371の内周面371aの長手方向にテーパを設ける代わりに、長手方向に移動部材377が移動すると機械的に移動部材377の形状が変化し隙間が減る(或いは増える)ように構成させることも可能である。この場合の調整領域は、移動部材377が機械的に変化しない領域とすることができる。
また、前述の例では、固定部材40を利用して、油圧式ガバナー装置36,37を遮蔽装置に組み入れる例を主に説明したが、固定部材40を利用することなく、油圧式ガバナー装置36,37を遮蔽装置に組み入れる形態としてもよい。