JP6654500B2 - 蒸留酒及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、焼酎などの蒸留酒及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、香気成分が増強された蒸留酒及びその製造方法に関する。
ジン、ラム、テキーラ、白酒、焼酎などの蒸留酒は、草根木皮、穀類、イモ類などの原料素材がバラエティに富んでおり、それぞれの原料が持つ個性を楽しむことができることが一つの特徴である。特に焼酎は主原料がイモ、麦、米、黒糖などバラエティに富んでおり、それぞれの主原料に由来する個性的で豊かな香味が多くの人の人気を集めている。
このように、蒸留酒は香味の多様性が大きな特徴の一つであり、蒸留酒の香気成分については従来から種々の検討がなされ(非特許文献1など)、これらの香味を高めるための技術開発の努力がなされてきている。
特許文献1(特開平8-214864号公報)には、超音波処理して蒸留することによって、味に深みのある香味バランスの優れた蒸留酒を製造することが提案されており、さらに蒸留時間の短縮や凝縮効率の向上についても言及されている。
また、特許文献2(特開2007-282528号公報)には、蒸留前に固液分離することが提案されている。醪固形部に豊富に含まれている芳香成分を揮発させることで、芳香性に富んだ芳醇型焼酎を得ることができる。
さらに、特許文献3(特開2003-153681号公報)は、醪のpHが3.8以下になるように調整することで、バニリンを多く含有させるようにしている。バニリンを多く含有させることで、焼酎に華やかで甘い芳香、丸みや熟成感を付与することが提案されている。
さらにまた、特許文献4(特開2010-207217号公報)には、サツマイモを4〜15時間と長時間蒸すことで、焼き芋の特徴香気成分の1つであるマルトールの含有量が高められ、焼酎に甘い芳醇な芳香を付与することが提案されている。
特許文献1〜4に記載の通り、蒸留工程などを工夫して香味に特徴のある蒸留酒を製造することが、従来から提案されている。
特開平8-214864号公報 特開2007-282528号公報 特開2003-153681号公報 特開2010-207217号公報
酒類総研第8期事業年度・業務実績報告書
本発明の課題は、甘く香ばしい香りを増強された蒸留酒及びその製法を提供することである。
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、ニコチン酸エチルやサリチル酸エチルという香気成分が蒸留酒の甘く香ばしい香りに大きな影響を与えることを見出し、さらに、これらの成分を増強できる蒸留酒の製造技術を確立した。すなわち、本発明者らは、蒸留酒におけるニコチン酸エチルの含有量を純アルコール換算で20.0ppb以上とすることによって蒸留酒の甘く香ばしい香りを強くできることを見出し、さらには、そのような蒸留酒の製法をも確立して、本発明を完成させた。
これに限定されるものでないが、本発明は、以下の発明を包含する。
(1) ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上含む蒸留酒。
(2) 蒸留酒が焼酎である、(1)に記載の蒸留酒。
(3) 焼酎が芋焼酎である、(2)に記載の蒸留酒。
(4) さらにサリチル酸エチルを含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の蒸留酒。
(5) サリチル酸エチルの濃度が純アルコール換算で1.0ppb以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の蒸留酒。
(6) ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上に調製することを含む、蒸留酒の製造方法。
(7) 醪のpHを5.0以上に調整する工程、及び/又は、醪を75〜88℃の温度で10時間以上処理する工程を含む、蒸留酒の製造方法。
(8) 醪のpHを5.0以上に調整する工程、及び/又は、醪を75〜88℃の温度で10時間以上処理する工程を含む、ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上含む、蒸留酒の製造方法。
(9) pH6.0以上において75〜88℃の温度で10時間以上、醪を処理する工程を含む、(6)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10) アルカリ性の物質を添加して醪のpHを調整する、(6)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 蒸留酒が焼酎である、(6)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 焼酎が芋焼酎である、(11)に記載の方法。
本発明に係る蒸留酒は、純アルコール換算で20.0ppb以上のニコチン酸エチルを含有することによって、甘く香ばしい香りを楽しむことができる。
蒸留酒
本発明の蒸留酒は、蒸留工程によって製造されるものであれば特に制限されないが、単式蒸留酒類であることが好ましい。甘く香ばしい香りの特徴が増強されていることから、焼酎、ラム、ブランデーなどの甘い香味を有する蒸留酒が好適である。蒸留酒が焼酎である場合、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎、アルコール度数:36度未満)であっても単式蒸留焼酎(乙類焼酎、アルコール度数:45度以下)であってもよいが、単式蒸留焼酎(乙類焼酎)が特に好ましい態様である。焼酎の原料は特に制限されず、例えば、米、麦、サツマイモ、黒糖、そば、栗、酒粕、糖蜜などを適宜使用することができる。また、蒸留時に所定の物質以外を添加すると、酒税法上は焼酎に分類されないことになるが、本発明においては、焼酎に別途物質を添加した場合も焼酎とする。
本発明の蒸留酒は、蒸留後の原酒をそのまま、又は水によって希釈してアルコール度数を調整して製品としたものも含まれる。また、原酒に他の酒類を混和したものであってもよい。例えば、単式蒸留焼酎である場合は、連続式蒸留焼酎と混和して甲類乙類混和焼酎又は乙類甲類混和焼酎であってもよい。
本発明の蒸留酒は、ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上含有する。ニコチン酸エチルとは、ピリジン−3−カルボン酸エチルとも呼ばれ、甘く香ばしいフルーティな香りを持つことが特徴である。それによって、甘く香ばしい香りを蒸留酒に付与することができる。ニコチン酸エチルは、特に限定されず公知の方法で測定することができるが、例えば、ガスクロマトグラフィ(GC)などを用いて定量することができる。ニコチン酸エチルの含有量は、純アルコール換算で20.0ppb以上であるが、好ましくは25.0ppb以上、より好ましくは40.0ppb以上、さらに好ましくは90.0ppb以上、よりさらに好ましくは300.0ppb以上である。他方上限値は、500.0ppb以下とするのが好ましい。なお、ここでいう純アルコール(量)換算とは、所定の成分量を、その成分を含有する酒類のアルコール分で割った値をいう。例えば、アルコール分25w/w%の焼酎に、ある成分が20ppb含まれていた場合、その成分の純アルコール換算値は80ppb(=20ppb/0.25)となる。
また、本発明の蒸留酒は、ニコチン酸エチルに加えてサリチル酸エチルを含むものであると甘く香ばしい香りがさらに増強され、好適である。特に、サリチル酸エチルを純アルコール換算で1.0ppb以上、2.0ppb以上、あるいは、3.0ppb以上含有すると、甘く香ばしい香りがさらに増強される。サリチル酸エチルは薬草やミントのような香りを持つ香気成分であり、サリチル酸エチルとニコチン酸エチルが併存することによって、ニコチン酸エチルの甘く香ばしい香りをより増強することができる。サリチル酸エチルは、特に限定されず公知の方法で測定することができるが、例えば、ガスクロマトグラフィ(GC)などを用いて定量することができる。本発明におけるサリチル酸エチルの含有量は、純アルコール換算で10.0ppb以上が好ましく、20.0ppb以上がより好ましく、40.0ppb以上がさらに好ましく、70.0ppb以上としてもよい。他方上限値は、100.0ppb以下とするのが好ましい。
さらに、好ましい態様において本発明の蒸留酒は、フルフラール含量を少なくすることができる。フルフラールの含有量が少ないと、甘く香ばしい香りを持ちつつ焦げ臭の少ない、極めて優れた蒸留酒となる。フルフラールは、蒸留酒の焦げ臭のもとになる物質の一つである。好ましい態様において、フルフラールの上限値としては100.0ppm以下であり、60ppm以下がより好ましく、40ppm以下がさらに好ましく、20ppm以下や10ppm以下としてもよい。フルフラールに起因する焦げ臭を抑制しつつニコチン酸エチルの甘く香ばしい香りを増強するため、ニコチン酸エチル(ppb)/フルフラール(ppm)の重量比としては1.0以上であることが好ましい。特にニコチン酸エチル/フルフラールの重量比が2.6以上であるとき焦げ臭が少なく甘く香ばしい香りがより顕著となり、好ましくは3.0、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは10.0以上であり、13.0以上や13.6以上としてもよい。また、フルフラールに起因する焦げ臭を抑制しつつサリチル酸エチルによる薬草やミントのような香りを増強するため、サリチル酸エチル(ppb)/フルフラール(ppm)の重量比は、0.2以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、3.0以上がよりさらに好ましい。また好ましい態様において、サリチル酸エチル(ppb)/フルフラール(ppm)の重量比を、10.0以上や50.0以上としてもよい。
蒸留酒の製造
<pH調整工程、加熱工程>
一つの態様において本発明の蒸留酒は、蒸留工程の前に、醪のpHを高くする工程、及び/又は、醪を一定時間加熱する工程を行って製造することができる。醪は酒類の原料を発酵させたもので、具体的には原料・糖化剤(麹・麦芽など)・水を混合したものである。糖化剤は焼酎であれば主に麹を使用し、ウイスキーであれば麦芽を使用する。醪は焼酎酵母を育てるため、麹と水を混合してつくる一次醪と、一次醪に主原料と水を加えてつくる二次醪がある。二次醪を蒸留して焼酎をつくる場合、二次醪をpH調整したり、一定温度で一定時間以上加熱させることで、甘く香ばしい香りを増強することができる。醪のpHは、蒸留する直前の醪をサンプリングし、pHを測定するための電極をさして測定することができる。
醪のpHを高く調整する場合、醪に対してアルカリ性の物質を添加することによって醪のpHを5.0以上にすることが好ましい。pH調整後の醪のpHは、より好ましくは5.5以上、さらに好ましくは6.0以上、特に好ましくは6.4以上に調整する。アルカリ性の物質は特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウムなどのアルカリ性物質を好適に使用することができる。
醪を一定時間加熱する場合で、醪を75℃〜88℃で加熱するが、より好ましく78〜86℃、さらに好ましくは80〜86℃で加熱する。加熱時間は10時間以上であるが、より好ましくは20時間以上である。
一つの態様において本発明は、上述のような工程を実施することによって優れた香りが増強された蒸留酒を製造することができる。また、ニコチン酸エチルやサリチル酸エチルなどの成分またはそれらを含む原材料を別途添加することによっても、本発明に係る蒸留酒を製造することができる。
<蒸留工程>
本発明の蒸留酒は、前記の醪のpH調整工程・長時間加熱工程の後で蒸留を行う。蒸留工程は、通常の蒸留酒の製造で用いられる方法を用いればよく、特に限定されない。単式蒸留機、レクチ蒸留機などを好適に利用できるが、単式蒸留機を用いると、本発明による甘く香ばしい香味を十分付与できるためより好ましい。
本発明によって製造された蒸留酒は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらなる処理を行うことができる。濾過、イオン交換樹脂処理、活性炭処理、木製の貯蔵容器(例えば樫樽)への貯蔵、タンクや甕などの容器での熟成などを単独あるいは組み合わせて実施することができる。
本発明における蒸留酒は、蒸留されたものをそのまま、あるいは前記のような処理を行った後、割り水して所望のアルコール分に調整して単式蒸留焼酎(乙類焼酎)製品とすることができる。他の単式蒸留焼酎(乙類焼酎)原酒を混和し、単式蒸留焼酎(乙類焼酎)製品としてもよく、また、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)を混和し、甲類乙類混和焼酎製品としてもよい。混和に用いる焼酎は、蒸留された原酒か、前記のような処理を行った原酒であってよく、混和の前後に割り水して所望のアルコール分に調整することができる。さらにはリキュールなどの原料酒としても使用することが可能である。
<仕込工程>
本発明において、焼酎などの蒸留酒は、仕込工程によってアルコール発酵させることができる。仕込工程は、一段でおこなってもよいが、一次仕込み、二次仕込みなど、多段仕込みによって醪を製造することができる。一次醪の製造方法は、通常実施される方法であれば特に限定されないが、麹に、水と酵母とを加えて混合し、発酵に必要なだけの酵母数となるまで所定条件下にて酵母を増殖させ、一次醪とする。
麹は、通常使用されている麹であれば、原料、麹菌の種類、製麹方法も特に限定されない。一般的な焼酎であれば、麹菌は、白麹菌(Aspergillus kawachii、Aspergillus usami)、黒麹菌(Aspergillus awamori)、黄麹菌(Aspergillus oryzae)などが使用される。
麹がない場合は、常法によって蒸した米、麦などの穀類原料または粉砕処理などした米、麦などの穀類原料に、α−アミラーゼやグルコアミラーゼなどの液化酵素および糖化酵素を添加したものを代用してもよい。この場合、酵素剤の選択・添加量は、酵母が増殖することができれば特に限定されない。
酵母は、アルコール発酵能を有していれば特に限定されない。通常酒類で使用される酵母としては、ワイン酵母、清酒酵母、ウイスキー酵母、焼酎酵母などが使用される。その使用形態も特に限定されず、例えば、アンプル等の容器に封入された液体状のものであっても、乾燥酵母などであってもよい。
二次醪の製造方法も、通常実施される方法であれば特に限定されないが、一次醪に、原料であるサツマイモや麦などの原料と水とを加えて混合し、所定の条件で発酵させて二次醪を製造する。この際、サツマイモなどの植物原料を使用する場合は、蒸し工程や破砕工程を適宜実施すればよい。蒸したサツマイモを原料として使用する。蒸し器や破砕機は公知のものを適宜使用することができる。破砕機としては、例えば、チョッパー型、ロール式、ハンマーミル式、カッター式などが挙げられる。
醪に添加するサツマイモなどの植物原料の量は、本発明の効果を与えることができる量であれば特に限定されない。一般に二次醪に添加される原料の重量は、一次醪に添加した麹あるいは穀類の重量に対して約5倍となることが多い。
醪を製造する際に、各種含糖物質も加えることも可能である。含糖物質としては、米・麦(大麦、ライ麦、小麦、カラス麦、裸麦など)・そば・とうもろこし・あわ・きび・ひえ、などの穀類、じゃがいも・さといも・きくいも・やまのいも・ながいも・じねんじょ、などのイモ類、かぼちゃ・トマト・にんじん、などの野菜類、デーツ(なつめやし)などの果実類、などを挙げることができる。穀類、イモ類などでんぷんをα化する必要のある含糖物質は、通常の蒸し工程を実施してから使用することが好ましい。
また、一次醪、二次醪の発酵過程で、発酵促進、アルコール収率の向上、エステルなどの好ましい香気生成の促進、などを目的として、市販の酵素剤を添加してもよい。通常焼酎の製造に使用される酵素剤としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼなどがある。
以下の実験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
蒸留酒の分析方法・定量方法
下記の実験例において、以下の手順により蒸留酒を分析した。蒸留酒のサンプルを純水で希釈し、エタノール濃度が25%の試験溶液を調製した。希釈済みサンプル144mLに対し、純水216mL、内部標準(C9メチル10ppm溶液)100μL、ジクロロメタン180mLを加えて、1時間、室温下にてスターラーで攪拌した。分液漏斗に移し替えて下層を集め、無水硫酸ナトリウム約6gを加えて1時間静置し脱水した。濾過後、エバポレータで300mmHg、湯浴温度35℃で1mL程度に濃縮し、分析サンプルとした。定量する場合は、検量線作成用サンプルを調製した。すなわち、25%エタノール溶液にて適宜希釈した標準物質を添加、抽出し、検量線作成用サンプルとした。
以上のようにして得られた試験サンプル及び検量線作成用サンプルをGC−MSにより分析した。分析条件の詳細は以下のとおりである。
・カラム:DB−WAXETR(60m×320μm×0.25μm)
・キャリアガス:He、3psi、
・温度条件:40℃/5min、4℃/min、250℃/20min
・ 注入条件:スプリットレス、250℃、注入量1μL
実験例1:芋焼酎の製造及び評価
蒸したサツマイモを原料として、芋焼酎用の醪(もろみ)を製造した。まず、一般的な焼酎麹菌を用いて製造した麹から一次醪を製造し(一次仕込工程)、この一次醪に、蒸したサツマイモと水を加えて常温にて二次発酵を行って二次醪を製造した(二次仕込工程)。二次醪のpHは約4.4、温度は25〜35℃程度であり、以下の実験は、この醪を使用して行った。
一般的な焼酎は二次醪を直ちに蒸留して製造されるところ、本実験においては、蒸留する前に醪のpHを高くするか、醪を高温で一定時間加熱し、焼酎の香味への影響を評価した。pH及び加熱工程の条件を以下の表に示すが、サンプル1(No.1)は加熱工程をせずに蒸留したコントロール(対照)である。また、サンプル9(No.9)は、醪に炭酸カルシウムを添加してpHを5.5に調整してから、加熱工程を実施せずに蒸留した。
上記のように処理した醪を、通常の常圧蒸留法にて蒸留して、アルコール度数37.0程度の芋焼酎原酒を製造した。また、得られた焼酎原酒について、純アルコールあたりのニコチン酸エチル、サリチル酸エチルを、上述の手順により定量した。
フルフラールの定量に用いたGCの測定条件は、以下の通りである。
使用機器:アジレント・テクノロジー社 GC:6890N
<GC部>
使用カラム:HP−ULTRA2(J&W社製)内径0.32mm、長さ50m、膜厚0.52μm
カラム温度:40℃(9分間保持)〜230℃(10分間保持)、昇温速度10℃/minキャリアガス制御:線速度一定(40cm/s)、カラム初期温度入口圧;133kPa注入方法:スプリット法(スプリット比15:1)
注入量:2.0μl
検出器:FID260℃
さらに、得られた焼酎原酒について、香味の官能評価を行った。官能評価は5人の官能評価パネラーが実施した。具体的には、下記の基準に基づいて、甘く香ばしい香りを5段階で相対評価した。
・1:感じない(コントロール)
・2:やや感じる
・3:感じる
・4:かなり感じる
・5:強く感じる
Figure 0006654500
表に示すように、醪を80℃又は85℃で一定時間処理してから蒸留して製造した焼酎(サンプル4〜8、10)は、ニコチン酸エチルが多く含有されており、甘く香ばしい香りが増強されていた。また、蒸留前の醪のpHを高くしてから蒸留して製造した焼酎(サンプル9)も、ニコチン酸エチルを多く含有しており、甘く香ばしい香りを持った焼酎を製造することができた。pHが高くなるように調整した上で加熱することで、ニコチン酸エチルはさらに多く含有され、甘く香ばしい香りをより強く感じることのできる焼酎を製造することができた(サンプル6,7、10)。加熱温度は75℃〜88℃、好ましくは78〜86℃、より好ましくは80〜86℃である。加熱時間は10時間以上、好ましくは20時間以上である。加熱時間が長いほどニコチン酸エチルは多く含有され、甘く香ばしい香りが強く感じられた。
サリチル酸エチルも醪を加熱することで蒸留酒に多く含有させて、甘く香ばしい香りを付与させることができる。また、pHが高くなるように調整した上で加熱することで、蒸留酒にさらに多く含有させて、甘く香ばしい香りを付与させることができ、ニコチン酸エチルと同様にpH調整と加熱による相乗効果も見られた。
醪を加熱することでニコチン酸エチルとサリチル酸エチルを多く含有することはできたが、コゲ臭の原因となるフルフラールが多く生成された(サンプル2,3,4,5)。加熱によるフルフラールの生成は、pHの調整によって抑えることができた(サンプル6,7,10)
実験例2:市販されている芋焼酎の分析
市販されている芋焼酎9種(A〜I)について、ニコチン酸エチル、サリチル酸エチル、フルフラールの含量を分析した。結果を以下の表2に示すが、市販されている芋焼酎でニコチン酸エチルが最も多く含まれていたのはDで、サリチル酸エチルが最も多く含まれていたのはEであった。
Figure 0006654500

Claims (11)

  1. ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上含む蒸留酒。
  2. 蒸留酒が焼酎である、請求項1に記載の蒸留酒。
  3. 焼酎が芋焼酎である、請求項2に記載の蒸留酒。
  4. さらにサリチル酸エチルを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蒸留酒。
  5. サリチル酸エチルの濃度が純アルコール換算で1.0ppb以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の蒸留酒。
  6. 醪を75〜88℃の温度で10時間以上処理する工程を含み、ニコチン酸エチルを純アルコール換算で20.0ppb以上に調製することを含む、蒸留酒の製造方法。
  7. 醪のpHを5.0以上に調整する工程を含む、請求項6に記載の製造方法。
  8. 醪のpHを6.0以上に調整する工程を含む、請求項6または7に記載の方法。
  9. アルカリ性の物質を添加して醪のpHを調整する、請求項6〜のいずれかに記載の方法。
  10. 蒸留酒が焼酎である、請求項6〜のいずれかに記載の方法。
  11. 焼酎が芋焼酎である、請求項10に記載の方法。
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