本明細書において、「シート」の用語は、フィルムや板をも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。「扉体」の用語は、蓋体をも含む用語として使用する。「正面パネル」の用語は、平面パネルをも含む用語として使用する。
透明樹脂シートの層
本発明の多層樹脂シートは、物品の正面パネル構成用の多層樹脂シートであって、透明樹脂シートの層を有する。該透明樹脂シートの層は、透明樹脂シートからなる層である。上記透明樹脂シートは、ガラス調の意匠を付与する観点から、高い透明性を有するものである。好ましくは高い透明性を有し、かつ着色のないものである。
そのため上記透明樹脂シートは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
また上記透明樹脂シートは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
更に上記透明樹脂シートは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
上記透明樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、深みのある意匠を付与する観点から、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であってよい。また物品の軽量化の要求に応える観点から、通常6mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下であってよい。
上記透明樹脂シートは1の樹脂シートであってもよく、2以上の樹脂シートの積層体であってもよい。なお透明樹脂シートが1の樹脂シートからなる場合は、本発明の多層樹脂シートは、「多層」と記載されているが、単層樹脂シートで有り得る。
上記透明樹脂シートが2以上の樹脂シートの積層体である場合、積層方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、各々の樹脂シートを任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により得る方法;少なくとも1の樹脂シートを任意の方法により得た後、該樹脂シート上に他の樹脂シートを溶融押出する押出ラミネート方法;任意のフィルム基材上に溶融押出、又は構成材料と溶剤とを含む塗料を塗布乾燥し、形成された樹脂シートを、上記フィルム基材から剥離し、他の樹脂シートの上に転写する方法、及びこれらの2以上を組み合わせる方法;などをあげることができる。
また上記透明樹脂シートが2以上の樹脂シートの積層体である場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。なお印刷層により、深み感を損なわないようにするため、印刷は部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けることが好ましい。また印刷層は1に限定されず、2以上であってもよい。
本発明の多層樹脂シートは、上記透明樹脂シートが、ガラス転移温度90℃以上の熱可塑性樹脂からなる耐熱樹脂シートの層を含む。これにより、正面パネルとして必要な耐熱性(扉体の製造時に必要とされる耐熱性、及び物品の使用時に必要とされる耐熱性の両方を含む。)を保持することができる。
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。一方、加工性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
本明細書において、ガラス転移温度は、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を50℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、20℃/分の降温速度で50℃まで冷却し、50℃で10分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃まで加熱するという温度プログラムにおける最後の昇温過程において測定される曲線に現れるガラス転移について、ASTM D3418の図2に従い作図して算出した中間点ガラス転移温度である。
上記耐熱樹脂シートの好ましいものとしては、例えば、(a1)ポリエステル系樹脂シート;(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート;(a3)アクリル系樹脂シート;(a4)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シート;及び(a5)上記耐熱樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上の積層シート;をあげることができる。
(a1)ポリエステル系樹脂シート
上記(a1)ポリエステル系樹脂シートは、ガラス転移温度90℃以上の熱可塑性ポリエステル系樹脂を主として(通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。好ましくは、加工性の観点から、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂である。
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、ガラス転移温度90℃以上であること、好ましくはガラス転移温度90℃以上であること、及び透明性と無着色性に優れた耐熱樹脂シートを得ることができるものであること以外は制限されず、任意の熱可塑性ポリエステル系樹脂を用いることができる。例えば、モノマーの総和を100モル%として、テレフタル酸45〜50モル%、イソフタル酸5〜0モル%、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜45モル%、2,2,4,4,−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール25〜5モル%を含む共重合体;テレフタル酸、イソフタル酸、及び4,4’−イソプロピリデンジフェニルを含む共重合体;及び2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとを含む重合体、又は共重合体;などをあげることができる。市販例としては、イーストマン ケミカル カンパニーの「トライタンFX100(商品名)」、ガラス転移温度110℃;同「トライタンFX200(商品名)」、ガラス転移温度119℃;ユニチカ株式会社の「UポリマーU−100(商品名)」、ガラス転移温度193℃;及び帝人株式会社の「テオネックス(商品名)」、ガラス転移温度155℃;などをあげることができる。上記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の成分を含ませることができる。含む得る任意成分としては、ガラス転移温度90℃以上の熱可塑性ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、ガラス転移温度90℃以上のポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。コアシェルゴムを用いることで、上記(a1)ポリエステル系樹脂シートの耐衝撃性を向上させることができる。
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などをあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記コアシェルゴムの配合量は、上記ガラス転移温度90℃以上の熱可塑性ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上である。一方、透明性を保持するため、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート
上記(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートは、ガラス転移温度90℃以上の芳香族ポリカーボネート系樹脂を主として(通常70質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、ガラス転移温度90℃以上であること、好ましくはガラス転移温度90℃以上であること、及び透明性と無着色性に優れた耐熱樹脂シートを得ることができるものであること以外は制限されず、任意の芳香族ポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などをあげることができる。市販例としては、帝人株式会社の「パンライトAD−5503(商品名)」、ガラス転移温度145℃;帝人株式会社の「パンライトM1201Z(商品名)」、ガラス転移温度134℃;住友スタイロンポリカーボネート株式会社の「カリバー301−15(商品名)」、ガラス転移温度145℃;などをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、上記(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートの耐衝撃性をより高めることができる。コアシェルゴムとしては、例えば、上述したものをあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
(a3)アクリル系樹脂シート
上記(a3)アクリル系樹脂シートは、ガラス転移温度90℃以上のアクリル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
上記アクリル系樹脂としては、ガラス転移温度90℃以上であること、好ましくはガラス転移温度90℃以上であること、及び透明性と無着色性に優れた耐熱樹脂シートを得ることができるものであること以外は制限されず、任意のアクリル系樹脂を用いることができる。例えば、モノマーの総和を100質量%として、メタクリル酸メチルを90質量%以上の量で含むポリメタクリル酸メチル系(共)重合体;及びスチレン・メタクリル酸エステル共重合体;などをあげることができる。市販例としては、住友化学株式会社の「スミベックスMHF(商品名)」、ガラス転移温度104℃;などをあげることができる。アクリル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
上記アクリル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。アクリル系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜50質量部(アクリル系樹脂100〜50質量部)、好ましくは、コアシェルゴムを15〜50質量部(アクリル系樹脂85〜50質量部)、より好ましくは25〜40質量部(アクリル系樹脂75〜60質量部)の量で用いることにより、上記(a3)アクリル系樹脂シートの耐衝撃性をより高めることができる。コアシェルゴムとしては、例えば、上述したものをあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記アクリル系樹脂に含み得るその他の任意成分としては、上記アクリル系樹脂や上記コアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、アクリル系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
(a4)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シート
上記(a4)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートは、ガラス転移温度90℃以上のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を主として(通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上。)含む樹脂からなるシートである。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂であり、例えば、特表2011−519999号公報に開示されている。なお本明細書において、ポリ(メタ)アクリルイミドとは、ポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミドの意味である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、ガラス転移温度が90℃以上であること、好ましくはガラス転移温度90℃以上であること、及び透明性と無着色性に優れた耐熱樹脂シートを得ることができるものであること以外は制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の好ましいものとしては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融シートの安定性の観点から、好ましいものとしてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「PLEXIMID TT70(商品名)」、ガラス転移温度160℃;などをあげることができる。
(a5)耐熱樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上の積層シート
上記(a5)耐熱樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上の積層シートは、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、及びスタックプレート方式などの任意の共押出装置を使用し、所望の層構成になるように共押出製膜することにより;任意の製膜装置を使用して上記耐熱樹脂シートa1〜a4の何れか1種又は2種以上を得た後、これらを所望の層構成になるように熱ラミネート又はドライラミネートすることにより;任意の製膜装置を使用して上記耐熱樹脂シートa1〜a4の何れか1種を得た後、該シートを基材として所望の層構成になるように押出ラミネートすることにより;得ることができる。
好ましい上記積層シートa5としては、例えば、物品の正面パネルとして表面硬度をより高くする観点、及び加工性を保つ観点から、正面側から順に、上記(a4)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートの層と、上記(a1)ポリエステル系樹脂シートの層とを有する積層シートをあげることができる。層比は特に制限されないが、積層シートの正面側の表面硬度を高くする観点から、(a4)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂シートの層の厚みは20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上であってよい。
上記透明樹脂シートの厚みに対する、上記耐熱樹脂シートの層の厚み(透明樹脂シートが2以上の耐熱樹脂シートの層を含む場合は、それらの合計の厚み。)は、物品の正面パネルとして必要な耐熱性を保持する観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
上記耐熱樹脂シートは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
また上記耐熱樹脂シートは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
更に上記耐熱樹脂シートは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
上記透明樹脂シートの、上記耐熱樹脂シートの層以外の層を構成する樹脂シートは、好ましくは、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の樹脂シートを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの樹脂シートをあげることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層シートを包含する。耐熱樹脂シートの層以外の層を構成する樹脂シートとしては、これらの1種以上を用いることができる。
また上記透明樹脂シートの背面側に、印刷層を設けてもよい。印刷が上記透明樹脂シートの奥に見えることになり、深みのある意匠を多層樹脂シートに付与することができる。また正面パネルの背面に存在するもの(例えば、断熱材など。)を隠蔽することができる。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。
着色樹脂シートの層
本発明の多層樹脂シートは、好ましくは、上記透明樹脂シートの背面側に、更に着色樹脂シートの層を有する。即ち、正面側(多層樹脂シートを用いて物品の正面パネルを構成したとき、正面となる側)から順に透明樹脂シートの層と、着色樹脂シートの層とを有することが好ましい。
上記着色樹脂シートの層を設けることにより、該シートの色が、上記透明樹脂シートの奥に見えることになり、深みのある意匠を多層樹脂シートに付与することができる。また正面パネルの背面に存在するもの(例えば、発泡断熱材など。)を隠蔽することができる。
上記着色樹脂シートとしては、制限されず、任意の着色樹脂シートを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの着色樹脂シートをあげることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層シートを包含する。上記着色樹脂シートとしては、これらの1種以上を用いることができる。
上記着色樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、隠蔽効果を得る観点から、通常0.03mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上であってよい。また物品の軽量化の要求に応える観点から、通常6mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下であってよい。
上記透明樹脂シートと上記着色樹脂シートとの層間には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、本発明の多層樹脂シートに高い意匠性を付与するために設けるものであり、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。
印刷は、直接又はアンカーコートを介して、透明樹脂シートの上に又は着色樹脂シートの上に施すことができる。模様としては、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどをあげることができる。印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。
上記透明樹脂シートと上記着色樹脂シートとの積層は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、熱ラミネート、及びドライラミネートなどの方法をあげることができる。
本発明の多層樹脂シートに、高輝度感のある意匠を付与する目的から、上記透明樹脂シートと上記着色樹脂シートとをドライラミネートするに際し、接着剤として、(p1)透明接着剤100質量部;及び(p2)平均粒子径10〜250μmの、表面を酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上で被覆処理されたガラス粒子0.01〜9質量部;を含む接着剤を用いてもよい。
上記成分p1は、上記成分p2を包含するとともに、上記透明樹脂シートと上記着色樹脂シートとを接着する働きをする。また成分p1は、成分p2や着色樹脂シートの色による意匠効果を効果的に発揮させるため、透明である。
上記成分p1は、多層樹脂シート生産時はもちろんのこと、多層樹脂シートを用いて扉体を生産する際や、扉体の組み込まれた物品が使用される際にも不透明にならず、透明であることが好ましい。
上記成分p1としては、十分な接着力を有すること、及び透明であること以外は制限されず、任意の接着剤を用いることができる。例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エポキシ系、ポリクロロプレン系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、セルロース系、及びスチレン−ブタジエン共重合体系などの接着剤の1種又は2種以上の混合物を成分とする接着剤をあげることができる。
これらの中で、接着力と透明性の観点から、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、及びポリ酢酸ビニル系の接着剤が好ましい。
本明細書において、「透明接着剤」とは、可視光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上の接着剤を意味する。ここで可視光線透過率は、島津製作所株式会社の分光光度計「SolidSpec−3700(商品名)」、及び光路長10mmの石英セルを使用して接着剤の波長380〜780ナノメートルにおける透過スペクトルを測定し、接着剤の該透過スペクトルの積分面積の、波長380〜780ナノメートルの全範囲における透過率が100%であると仮定した場合の透過スペクトルの積分面積に対する割合として算出した値である。
なお本明細書において「接着剤」の用語は、粘着剤をも含む用語として使用する。
上記成分p2は、高輝度顔料として多層樹脂シートに高輝度意匠を付与するとともに、上記着色樹脂シートの色による意匠効果を効果的に発揮させる働きをする。
上記成分p2は表面を、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上の金属酸化物で被覆処理されたガラス粒子である。ガラス及び上記金属酸化物は透明な物質であり、成分p2により反射される光、即ちガラス粒子の表面や上記金属酸化物被覆層の表面で反射される光は少量であるが、ガラス粒子の表面で反射されるか、上記金属酸化物被覆層で反射されるかにより大きな行路差が生じるため、少量であっても人の目には高い輝度感を感じさせるものになる。また多くの光は成分p2を透過するため、上記着色樹脂シートの色による意匠効果が損なわれることはない。
上記金属酸化物の中で、意匠性の観点から、酸化チタンが好ましい。
上記成分p2は平均粒子径が10〜250μmである。平均粒子径が10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上であることにより、高輝度感と上記着色樹脂シートの色による意匠効果とを両立させることができる。また250μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは120μm以下であることにより、成分p2の分散ムラを目立たなくする効果や着色樹脂シートの色による意匠効果を得ることができる。
なお本明細書において、平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
上記成分p2の配合量は、上記成分p1が100質量部に対し、0.01〜9質量部である。配合量が0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であることにより、高い輝度感を得ることができる。また9質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であることにより、上記着色樹脂シートの色による意匠効果を得ることができる。
上記成分p2の市販例としては、日本板硝子株式会社の「メタシャイン(商品名)」などをあげることができる。
上記高輝度顔料を含む接着剤には、本発明の目的に反しない限度において、上記成分p1及び上記成分p2以外の任意成分を、所望に応じて、更に含ませることができる。上記任意成分としては、例えば、光重合開始剤、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、成分p2以外の顔料、及びフィラーなどの添加剤をあげることができる。上記任意成分の配合量は、成分p1が100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
上記高輝度顔料を含む接着剤を、上記透明樹脂シートの上に、又は上記着色樹脂シートの上に、直接又はアンカーコートを介して塗布する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法があげられる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを用いることができる。
表面保護層
本発明の多層樹脂シートは、好ましくは、上記透明樹脂シートの層の正面側に、更に表面保護層を有する。即ち、正面側の最表面から順に表面保護層、透明樹脂シートの層を有することが好ましい。より好ましくは、正面側の最表面から順に表面保護層、透明樹脂シートの層、着色樹脂シートの層を有する。
上記表面保護層を、上記透明樹脂シートの層の上に、直接又は透明アンカーコートを介して、多層樹脂シートの正面側の最表面を形成するように設けることにより、耐外傷性や耐汚染性を高めることができる。
上記表面保護層としては、例えば、ハードコートをあげることができる。ハードコートの形成に使用する塗料としては、意匠性の観点から、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。このようなハードコート形成用塗料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物をあげることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の多層樹脂シートの表面保護層を形成するハードコート形成用塗料として、より好ましい上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、(α)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(γ)有機チタン 0.05〜3質量部;及び
(δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。更に好ましいものとしては、(α)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(γ)有機チタン 0.05〜3質量部; (δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;及び(ε)(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤 0.1〜7質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。
(α)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分αは、1分子中に2以上の重合性官能基を有する(メタ)アクリレートであり、1分子中に2以上の重合性官能基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができ、上記成分αとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味であることは上述した。
(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
上記成分βは、アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。ここで(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
上記成分βは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより上記成分αと、アルコキシシリル基を有することにより上記成分δと、化学結合ないし強く相互作用することができ、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる働きをする。また成分βは上記成分εとも、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより、あるいはアルコキシシリル基を有することにより、化学結合ないし強く相互作用し、成分εがブリードアウトするなどのトラブルを防止する働きもする。
上記成分βとしては、例えば、一般式「(−SiO2RR’−)n・(−SiO2RR”−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。Rはメトキシ基(CH3O−)、エトキシ基(C2H5O−)などのアルコキシ基である。R’はアクリロイル基(CH2=CHCO−)、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO−)である。R”はメチル基(CH3)、エチル基(CH2CH3)などのアルキル基である。
上記成分βとしては、例えば、一般式「(−SiO2(OCH3)(OCHC=CH2)−)n」、「(−SiO2(OCH3)(OC(CH3)C=CH2)−)n」、「(−SiO2(OCH3)(OCHC=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、「(−SiO2(OCH3)(OC(CH3)C=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、「(−SiO2(OC2H5)(OCHC=CH2)−)n」、「(−SiO2(OC2H5)(OC(CH3)C=CH2)−)n」、「(−SiO2(OC2H5)(OCHC=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、及び「(−SiO2(OC2H5)(OC(CH3)C=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。
上記成分βとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分βの配合量は、上記成分α 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。一方、撥水性を発現し易くする観点から、また成分βと上記成分γとの配合比を好ましい範囲にしたときに成分γが過剰量にならないようにする観点から、4質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
また上記成分δと化学結合ないし強く相互作用させる観点から、上記成分βと上記成分δとの配合比は、成分δ 100質量部に対して、成分β 0.5〜15質量部が好ましい。より好ましくは2〜7質量部である。
(γ)有機チタン:
上記成分γは、上記成分βの働きを補助する成分であり、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる観点において、成分βと成分γとは特異的な好相性を示す。また成分γ自身も、上記成分δなどと化学結合ないし強く相互作用し、ハードコートの耐擦傷性を高める働きをする。
上記有機チタンとしては、例えば、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、ジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミナト)チタン;及びこれらの1種以上からなる重合体;などをあげることができる。上記成分γとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、アルコキシチタンのテトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートが耐擦傷性と色調の観点から好ましい。
上記成分γの配合量は、上記成分α 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。一方、色調の観点から、3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
また上記成分βの働きを効果的に補助する観点から、上記成分βと上記成分γとの配合比は、成分β 100質量部に対して、成分γ 5〜150質量部が好ましい。より好ましくは20〜80質量部である。
(δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
上記成分δは、ハードコートの表面硬度を高める働きをする。一方、上記成分αとの相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで成分αと成分δの両方に化学結合ないし強く相互作用することのできる上記成分β、及び成分βの働きを補助する上記成分γを用い、この問題を解決したものである。
上記成分δとしては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも使用することができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;などをあげることができる。有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズをあげることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの硬度を高めたりする目的で、当該微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを使用してもよい。
これらの中でより硬度の高いハードコートを得るためにシリカ、酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
上記成分δの平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及びハードコートの硬度改良効果を確実に得る観点から、通常、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下である。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
なお本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
上記成分δの配合量は、上記成分α 100質量部に対して、表面硬度の観点から、5質量部以上、好ましくは20質量部以上である。一方、耐擦傷性と透明性の観点から、100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
(ε)(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤:
上記成分εは、分子内にフルオロポリエーテル基、及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める観点から、用いることが好ましい。成分εは、分子内にフルオロポリエーテル基を有することにより、高い撥水性能を発現し、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める働きをする。また分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより、上記成分αや上記成分βと化学結合ないしは強く相互作用し、成分εがブリードアウトするなどのトラブルが防止される。ここで(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
上記成分εとしては、上記成分αや上記成分βと成分εとの化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物が特に好ましい。
上記成分εを用いる場合の配合量は、上記成分α 100質量部に対して、成分εがブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下である。配合量の下限は、任意成分であるから特にないが、成分εの使用効果を得るという観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上である。
また上記成分α〜δ、好ましくは上記成分α〜εを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、上述したものをあげることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また上述した触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、上述したものをあげることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は硬化性樹脂組成物の成分、及び、その他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などの塗料を用いてハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
ハードコートの厚みは、特に制限されないが、耐外傷性や耐汚染性の観点から、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上である。一方、ウェブのハンドリング性の観点から、ハードコートの厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
上記透明アンカーコートを形成するために用いるアンカーコート剤としては、透明であること以外は制限されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタン等の公知のものを使用することができる。
上記アンカーコート剤を用いて上記透明アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記透明アンカーコートの厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
上記表面保護層としては、例えば、弗化ビニリデン系樹脂フィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの高透明性、高光沢性を有し、耐外傷性や耐汚染性に優れた樹脂フィルムを積層してもよい。
上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムは、弗化ビニリデン系樹脂を任意の方法で製膜することにより得られる。また弗化ビニリデン系樹脂としては、例えば、弗化ビニリデン単独重合体、弗化ビニリデンを構成単位として70モル%以上含有する共重合体をあげることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。弗化ビニリデンと共重合されるモノマーとしては、例えば、四弗化エチレン、六弗化プロピレン、三弗化エチレン、三弗化塩化エチレン、弗化ビニルなどがあげることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また本発明の目的に反しない範囲内において、弗化ビニリデン系樹脂には、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、核剤、着色剤、及び可塑剤等を含み得る。
これらの弗化ビニリデン系樹脂の融点は、通常、145〜180℃の範囲にあるが、加工性の観点から、150〜170℃のものを使用することが好ましい。
なお本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を230℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱するという温度プログラムでDSC測定を行って得られる融解曲線における最も温度の高い側のピークトップを融点と定義した。
上記透明樹脂シートと上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムとを積層する方法は、制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、透明樹脂シートと弗化ビニリデン系樹脂フィルムを各々任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により得る方法;透明樹脂シート又は弗化ビニリデン系樹脂フィルムの一方を任意の方法により得た後、その上に他方を溶融押出する押出ラミネート方法;などをあげることができる。
上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、広く市販されており、任意のものを用いることができる。
また上記透明樹脂シートと二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを積層する方法は、制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、透明樹脂シートと二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを各々任意の方法により得た後、ドライラミネートする方法;二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に透明樹脂シートを溶融押出する押出ラミネート方法;などをあげることができる。
更に、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムの上に、直接又はアンカーコートを介して、ハードコートを形成してもよい。ハードコートについては上述した。
上記透明樹脂シートと上記表面保護層との層間には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。なお印刷層により、深み感を損なわないようにするため、部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けることが好ましい。
本発明の多層樹脂シートを含む物品
本発明の多層樹脂シートを、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の、本体正面の開口を開閉する扉体の正面パネルや本体平面の開口を開閉する蓋体の平面パネルとして用い、扉体や蓋体を生産する方法は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。
例えば、本発明の多層樹脂シートを適宜な大きさと形状に裁断し、適宜な成形治具を用いて、ヒートプレス成形法、真空成形法、及び真空圧空成形法などの任意の成形法により、正面パネルとして用いるための所望の形状に成形することができる。その際に、正面パネルの端縁近傍を背面方向に折り曲げてフランジを形成することにより、正面パネルの剛性を高めることができる。
また任意の材料で形成された任意の形状の枠体を用いて、正面パネルの外側端部の少なくとも一部を支持させてもよい。この場合、上記フランジを設けることにより、支持を確実なものにすることができる。
更に、任意の材料で形成された任意の形状の背面パネルを用いて、背面を構成させてもよい。
冷蔵庫の扉体を生産する場合には、正面を構成する正面パネルと、上記正面パネルの外側端部の少なくとも一部を支持する枠体と、背面を構成する背面パネルとで形成される空間内に、発泡ポリウレタンなどの所望の断熱材を充填すればよい。
なお本発明の多層樹脂シートを含む物品とは、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品;及びこれらの物品に組み込まれる扉体や蓋体などの両方を含む。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ロ)ヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ハ)黄色度指数:
JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定した。
(ニ)耐湿熱性1:
両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社の「スコッチ超強力両面テープ プレミアゴールド スーパー多用途KPS−25(商品名)」)を、ステンレス製枠の平面の全体に貼付け、そこに多層樹脂シートから採取した長方形(大きさは、マシン方向40cm、横方向20cm。)のシート片を、貼付けた。ここで上記ステンレス製枠は、中央に略長方形(縦300mm、横100mm)の開口部を有する、全体として略長方形(縦400mm、横200mm)の枠である。また長辺の一方には、その平面に、凸部(高さ1mm、長さ40mm、幅50mm)が5か所、等間隔に設けられている。また長辺を、長辺と平行に切断したときの断面図は、弧度2000Rの緩い円弧を、上記凸部が円弧の外周側になるように、描く。概念図を図2に示す。なおステンレス製枠の平面(シートを貼付ける面)は、円弧の外周側となる面である。続いて、上記で得た試験体を、温度70℃、相対湿度98%の環境下に1時間曝した後、シートの状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
◎:シートには何の変化も認められない。
○:枠と枠の開口部との境界部分近傍において、シートに僅かな変形が認められる。
△:枠と枠の開口部との境界部分近傍、及び枠に設けられた凸部近傍において、シートに変形が認められる。
×:シートの全体に凹凸状の(波打ち状の)変形が認められる。シートに濁り感(白化)が認められる。
(ホ)耐湿熱性2:
上記試験(ニ)と同様にして得た試験体を、温度60℃、相対湿度98%の環境下に168時間曝した後、シートの状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
◎:シートには何の変化も認められない。
○:枠と枠の開口部との境界部分近傍において、シートに僅かな変形が認められる。
△:枠と枠の開口部との境界部分近傍、及び枠に設けられた凸部近傍において、シートに変形が認められる。
×:シートの全体に凹凸状の(波打ち状の)変形が認められる。シートに濁り感(白化)が認められる。
(ヘ)深み感:
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、多層樹脂シートの正面側の面と50cmの距離を隔てた位置から垂直に入射し、多層樹脂シートの正面側の面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から多層樹脂シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:深み感が非常に高い。
○:深み感が高い。
△:深み感が低い。
×:深み感がほとんどない。
(ト)曲げ加工性:
多層樹脂シートから長方形(大きさは、マシン方向40cm、横方向40cm。)のシート片を採取し、その背面側となる面の横方向中央を加熱線として、60℃に予熱した直径16mmの円柱状加熱バーを使用して、適宜の時間予熱した後、治具(縦40cm、横40cmの正方形のステンレス板を、横方向の中央を折り曲げ線として、折り曲げ角の角度90度、該角の内側の曲率5Rになるように折り曲げたもの。)を使用し、折り曲げた。このときの加工性を以下の基準で評価した。
◎:シートの透明感への影響は認められない。
○:シートの折り曲げ部に僅かな曇り感が認められる。
△:シートの折り曲げ部に曇り感が認められる。
×:シートの折り曲げ部に凹凸状の(波打ち状の)変形が認められる。
使用した原材料
(A)透明樹脂シート:
(A−1)イーストマン ケミカル カンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「トライタンFX200(商品名)」、ガラス転移温度119℃、融解熱量0J/g(DSCセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし);を用い、Tダイ押出製膜法により、Tダイ出口樹脂温度270℃の条件で、厚み1100μmの樹脂シートを得た。
(A−2)イーストマン ケミカル カンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「トライタンFX100(商品名)」、ガラス転移温度110℃、融解熱量0J/g(DSCセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし);を用いたこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。
(A−3)住友化学株式会社のアクリル系樹脂「スミベックスMHF(商品名)」、ガラス転移温度104℃を用いたこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。
(A−4)帝人株式会社の芳香族ポリカーボネート系樹脂「パンライトM−1201Z(商品名)」、ガラス転移温度134℃;を用いたこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。
(A−5)厚みを6000μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、透明樹脂シートを得た。
(A−6)厚みを3000μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、透明樹脂シートを得た。
(A−7)厚みを300μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、透明樹脂シートを得た。
(A−8)厚みを100μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、透明樹脂シートを得た。
(A−9)厚みを800μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。次に、厚みを300μmに変更したこと以外は、全て(A’−1)と同様にして樹脂シートを得た。続いて、両者を熱ラミネートして、透明樹脂シートを得た。
(A−10)厚みを500μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。次に、厚みを600μmに変更したこと以外は、全て(A’−1)と同様にして樹脂シートを得た。続いて、両者を熱ラミネートして、透明樹脂シートを得た。
(A−11)厚みを300μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。次に、厚みを800μmに変更したこと以外は、全て(A’−1)と同様にして樹脂シートを得た。続いて、両者を熱ラミネートして、透明樹脂シートを得た。
(A−12)厚みを100μmに変更したこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、樹脂シートを得た。次に、厚みを1000μmに変更したこと以外は、全て(A’−1)と同様にして樹脂シートを得た。続いて、両者を熱ラミネートして、比較透明樹脂シートを得た。
(A’)比較透明樹脂シート:
(A’−1)イーストマン ケミカル カンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「KODAR PETG GS1(商品名)」、ガラス転移温度81℃、融解熱量0J/g(DSCセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし);を用いたこと以外は、全て上記(A−1)と同様に行い、比較透明樹脂シートを得た。
(B)着色樹脂シート:
(B−1)厚さ300μm、黒色(JISZ8721:1993に従い測定した明度2.3)の着色ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
実施例1
上記透明樹脂シート(A−1)について、上記試験(イ)〜(ハ)を行った、結果を表1に示す。続いて、上記透明樹脂シート(A−1)と上記着色樹脂シート(B−1)とを、下記透明接着剤(p1−1)を用いてドライラミネートし、多層樹脂シートを得た。得られた多層樹脂シートについて、上記試験(ニ)〜(ト)を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜8、比較例1
透明樹脂シートを(A−1)に替えて表1又は2に示すものを用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表1又は2に示す。
実施例9
上記透明樹脂シート(A−9)について、上記試験(イ)〜(ハ)を行った、結果を表3に示す。続いて、上記透明樹脂シート(A−9)と上記着色樹脂シート(B−1)とを、下記透明接着剤(p1−1)を用いてドライラミネートし、多層樹脂シートを得た。なお樹脂シート(A−9)のドライラミネート面は、耐熱樹脂シート側の面とした。得られた多層樹脂シートについて、上記試験(ニ)〜(ト)を行った。結果を表3に示す。
実施例10〜12
透明樹脂シートを(A−9)に替えて表3に示すものを用いたこと以外は、全て実施例9と同様に行った。結果を表3に示す。
本発明の多層樹脂シートは、物品の扉体の正面パネルを構成する部材として好適な特性を有している。一方、比較例1は、ガラス転移温度90℃以上の熱可塑性樹脂からなる耐熱樹脂シートの層を有しないため、温度70℃、相対湿度98%の環境下に1時間曝したところ、シートの全体に凹凸状の(波打ち状の)変形が生じてしまった。
高輝度意匠の付与
透明樹脂シートと着色樹脂シートとをドライラミネートする接着剤として、(p1)透明接着剤100質量部;及び(p2)平均粒子径10〜250μmの、表面を酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上で被覆処理されたガラス粒子0.01〜9質量部;を含む接着剤を用いた場合を、実施例により説明する。
測定方法
(チ)光輝性(輝度感):
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、多層樹脂シートの正面側の面と50cmの距離を隔てた位置から垂直に入射し、多層樹脂シートの正面側の面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から多層樹脂シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:光輝性が非常に高い。
○:光輝性が高い。
△:光輝性が低い。
×:光輝性がほとんどない。
(リ)透明感(着色樹脂シートの色による意匠効果):
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、多層樹脂シートの正面側の面と該蛍光灯の光線とが50cmの距離を隔てるように平行に照射し、光源側の多層樹脂シートの正面側の面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から多層樹脂シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:着色樹脂シートの色による意匠効果を全く損なわない。
○:着色樹脂シートの色による意匠効果をほとんど損なわない。
△:着色樹脂シートの色による意匠効果を少し損なう。
×:着色樹脂シートの色による意匠効果を大きく損なう。
(ヌ)暗色感:
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、多層樹脂シートの正面側の面と該蛍光灯の光線とが50cmの距離を隔てるように平行に照射し、光源側の多層樹脂シートの正面側の面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から多層樹脂シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:暗色感が非常に高い。
○:暗色感が高い。
△:暗色感が低い。
×:暗色感がない。
使用した原材料
(p1)透明接着剤:
(p1−1)DICグラフィックス株式会社の塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル共重合体系接着剤「VTP−NT(商品名)」、全光線透過率92%。
(p2)ガラス粒子:
(p2−1)日本板硝子株式会社の酸化チタン被覆ガラス粒子「メタシャイン1080RS(商品名)」、粒子径80μm。
(p2−2)粒子径20μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p2−3)粒子径40μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p2−4)粒子径120μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p2−5)粒子径200μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p’2)比較成分:
(p’2−1)粒子径5μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p’2−2)粒子径300μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(p’2−3)日本板硝子株式会社の銀被覆ガラス粒子「メタシャイン1080PS(商品名)」、粒子径80μm。
実施例P1
上記透明樹脂シート(A−1)に、上記成分(p1−1)100質量部と上記成分(p2−1)0.5質量部とを含む接着剤を、乾燥膜厚15μmとなるようにナイフコーターを使用して塗布し、乾燥後、その塗布面に上記着色樹脂シート(B−1)を、ラミネートロールの表面温度150℃の条件で熱ラミネートし、多層樹脂シートを得た。上記(ニ)〜(ヌ)の評価を行った。結果を表4に示す。
実施例P2〜P9、参考例P1〜P5
用いる原材料や配合比を、表4又は5に示すように変更したこと以外は、実施例P1と同様に行った。結果を表4又は5に示す。
透明樹脂シートと着色樹脂シートとをドライラミネートする接着剤として、(p1)透明接着剤100質量部;及び(p2)平均粒子径10〜250μmの、表面を酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上で被覆処理されたガラス粒子0.01〜9質量部;を含む接着剤を用いることにより、本発明の多層樹脂シートに、高輝度感のある意匠を付与することができる。
表面保護層
(α)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(γ)有機チタン 0.05〜3質量部;及び(δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて表面保護層を形成した場合を実施例により説明する。
測定方法
(ル)水接触角:
多層樹脂シートの正面側の面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
(ヲ)耐擦傷性(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、多層樹脂シートのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、多層樹脂シートの正面側の面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置き、学振試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、上記(ニ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。なお水接触角が100度以上であれば、耐擦傷性は良好であると判断される。また2万往復後の水接触角が100度未満のときは、所定の往復回数を1万5千回、及び1万回に変更した測定も行い、以下の基準で評価した。
◎:往復回数2万回後でも水接触角100度以上。
○:往復回数1万5千回後では水接触角100度以上だが、2万回後は100度未満。
△:往復回数1万回後では水接触角100度以上だが、1万5千回後は100度未満。
×:往復回数1万回後で水接触角100度未満。
(ワ)耐傷付き性(耐スチールウール性):
縦150mm、横50mmの大きさで、多層樹脂シートのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、多層樹脂シートの正面側の面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を100往復擦った。上記表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:傷がない
○:1〜5本の傷がある
△:6〜10本の傷がある
×:11本以上の傷がある
(カ)耐汚染性1(油性マジック)
上記で得られた積層体の塗膜表面を油性赤マジックによりスポット汚染した後、汚染部分を時計皿で被覆し、室温で24時間放置した。次いで、汚染部分を、イソプロピルアルコールを十分含ませたキムワイプ(商品名)を用いて、キムワイプ(商品名)に新たに汚れが付かなくなるまで拭いて洗浄した後、上記部分を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:汚染無し
○:汚染が僅かに残っている
△:汚染がかなり残っている
×:汚染が著しく残っている
(ヨ)耐汚染性2(水性マジック)
上記で得られた積層体の塗膜表面を水性赤マジックによりスポット汚染した後、汚染部分を時計皿で被覆し、室温で24時間放置した。次いで、汚染部分を、流水で十分洗浄した後、水道水を十分含ませたキムワイプ(商品名)を用いて、キムワイプ(商品名)に新たに汚れが付かなくなるまで拭いて洗浄した後、上記部分を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:汚染無し
○:汚染が僅かに残っている
△:汚染がかなり残っている
×:汚染が著しく残っている
使用した原材料
(α)多官能(メタ)アクリレート:
(α−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(α−2)エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート。3官能。
(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
(β−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKR−513(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はアクリロイル基、R”はメチル基。
(β−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンX−40−2655A(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はメタクリロイル基、R”はメチル基。
(β’)比較成分:
(β’−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−403(商品名)」、アルコキシシリル基とエポキシ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
(β’−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−903(商品名)」、アルコキシシリル基とアミノ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
(γ)有機チタン:
(γ−1)日本曹達株式会社のチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート「TOG(商品名)」。
(γ−2)日本曹達株式会社のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン「TOT(商品名)」。
(γ−3)日本曹達株式会社のジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン「T−50(商品名)」。
(γ’)比較成分:
(γ’−1)日本曹達株式会社のテトラ−n−プロポキシジルコニウム「ZAA(商品名)」。
(δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
(δ−1)平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
(ε)撥水剤:
(ε−1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY−1203(商品名)」。
(ε−2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。
(ζ)その他の成分:
(ζ−1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」。
(ζ−2)1−メトキシ−2−プロパノール。
実施例α1
上記透明樹脂シート(A−1)の正面側の面に、上記(α−1)65質量部、上記(α−2)35質量部、上記(β−1)1.4質量部、上記(γ−1)0.7質量部、上記(δ−1)35質量部、上記(ε−1)1.6質量部、上記(ε−2)0.2質量部、上記(ζ−1)5.3質量部、及び上記(ζ−2)95質量部を含む塗料を、ダイ方式の塗工装置を使用して、硬化後厚みが7μmとなるように塗布し、多層樹脂シートを得た。
上記試験(イ)、(ハ)〜(ト)、(ル)〜(ヨ)を行った。結果を表6に示す
実施例α2〜α14、参考例α1〜α7
表面保護層形成用塗料の配合組成を表6〜8の何れか1に示すように変更したこと以外は、全て実施例α1と同様に行った。結果を表6〜8の何れか1に示す。
表面保護層の形成用塗料として、(α)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(β)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(γ)有機チタン 0.05〜3質量部;及び(δ)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることにより、本発明の多層樹脂シートに優れた耐外傷性や耐汚染性を付与することができる。