本発明の積層体は、(α)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層と、(γ)ガスバリア層とを有する。
(α)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層:
上記(α)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム層は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムからなる層である。そのため本発明の積層体は、透明性、色調、耐擦傷性、表面硬度、耐曲げ性、及び表面外観に優れたものになる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂であり、例えば、特表2011−519999号公報に開示されている。なお本明細書において、ポリ(メタ)アクリルイミドとは、ポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミドの意味である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、積層体をタッチパネルなどの画像表示装置に用いる目的から、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の好ましいものとしては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましいものとしてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、150℃以上のものが好ましい。より好ましくは170℃以上である。
また上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「PLEXIMID TT70(商品名)」などをあげることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、好ましくは、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである。なお本明細書においては、上記α1層側が表層側にくるものとして本発明を説明する。
ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は表面硬度に優れているが、高い耐打抜加工性は有していないのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は耐打抜加工性に優れているが、高い表面硬度は有していない。そのため上記の層構成にすることにより、両者の長所を併せて、表面硬度と耐打抜加工性の何れにも優れた透明多層フィルムとすることができる。
上記α1層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の積層体の耐熱性や表面硬度の観点から、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは60μm以上であってよい。
上記α2層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の積層体の耐カール性の観点から、上記α1層と同じ層厚みであることが好ましい。
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常−5〜+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。ここでの「同じ層厚み」は、「実質的に同じ層厚み」とも言い換えられる。
上記β層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の積層体の耐切削性の観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上であってよい。
上記α1層及び上記α2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂については、上述した。
なお上記α1層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂と、上記α2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えばメルトマスフローレートやガラス転移温度の異なるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いても良いが、上記透明多層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
上記β層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを得るための製造方法は、特に制限されないが、例えば、(A)押出機とTダイとを備える装置を用い、Tダイから、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを、連続的に押出す工程;(B)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルムを供給投入し、押圧する工程;を含む方法をあげることができる。
同様に、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムが上記透明多層フィルムである場合の製造方法は、特に制限されないが、例えば、(A’)押出機とTダイとを備える共押出装置を用い、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムの溶融フィルムを、Tダイから連続的に共押出する工程;(B’)回転する又は循環する第一の鏡面体と、回転する又は循環する第二の鏡面体との間に、上記透明多層フィルムの溶融フィルムを供給投入し、押圧する工程;を含む方法をあげることができる。
上記工程(A)又は上記工程(A’)で使用する上記Tダイとしては、任意のものを使用することができ、例えばマニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどをあげることができる。
上記共押出装置としては、任意のものを使用することができ、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、及びスタックプレート方式などの共押出装置をあげることができる。
上記工程(A)又は上記工程(A’)で使用する上記押出機としては、任意のものを使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。
またポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂や芳香族ポリカーボネート系樹脂の劣化を抑制するため、押出機内を窒素パージすることは好ましい。
更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は吸湿性の高い樹脂であるため、製膜に供する前に、これを乾燥することが好ましい。また乾燥機で乾燥したポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を、乾燥機から押出機に直接輸送し、投入することも好ましい。乾燥機の設定温度は、好ましくは100〜150℃である。また押出機の、通常はスクリュウ先端の計量ゾーンに、真空ベントを設けることも好ましい。
上記工程(A)又は上記工程(A’)で使用する上記Tダイの温度は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の溶融フィルム又は上記透明多層フィルムの溶融フィルムを、連続的に押出又は共押出する工程を安定的に行うために、少なくとも260℃以上に設定することが好ましい。より好ましくは270℃以上である。またポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂や芳香族ポリカーボネート系樹脂の劣化を抑制するため、Tダイの温度は、350℃以下に設定することが好ましい。
またリップ開度(R)と得られるポリ(メタ)アクリルイミドフィルムの厚み(T)との比(R/T)は、レタデーションが大きくならないようにする観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。また比(R/T)は、押出負荷が過大にならないようにする観点から、1以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。
上記工程(B)又は上記工程(B’)で使用する上記第一の鏡面体としては、例えば、鏡面ロールや鏡面ベルトなどをあげることができる。上記第二の鏡面体としては、例えば、鏡面ロールや鏡面ベルトなどをあげることができる。
上記鏡面ロールは、その表面が鏡面加工されたロールであり、金属製、セラミック製、及びシリコンゴム製などがある。また鏡面ロールの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
上記鏡面ベルトは、その表面が鏡面加工された、通常は金属製のシームレスのベルトであり、例えば、一対のベルトローラー相互間に掛け巡らされて、循環するようにされている。また鏡面ベルトの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
上記鏡面加工は、限定されず、任意の方法で行うことができる。例えば、微細な砥粒を用いて研磨することにより、上記鏡面体の表面の算術平均粗さ(Ra)を好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、十点平均粗さ(Rz)を好ましくは500nm以下、より好ましくは250nm以下にする方法をあげることができる。
理論に拘束される意図はないが、上記の製膜方法により、透明性、表面平滑性、及び外観に優れたポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム又は透明多層フィルムが得られるのは、第一鏡面体と第二鏡面体とでポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム又は透明多層フィルムの溶融フィルムが押圧されることにより、第一鏡面体及び第二鏡面体の高度に平滑な面状態がフィルムに転写され、ダイスジ等の不良箇所が修正されるためと考察できる。
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第一鏡面体の表面温度は、100℃以上にすることが好ましい。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上である。一方、フィルムに第一鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第一鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
上記面状態の転写が良好に行われるようにするため、第二鏡面体の表面温度は、20℃以上にすることが好ましい。より好ましくは60℃以上、更に好ましくは100℃以上である。一方、フィルムに第二鏡面体との剥離に伴う外観不良(剥離痕)の現れることを防止するため、第二鏡面体の表面温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
なお第一鏡面体の表面温度を、第二鏡面体の表面温度よりも高くすることが好ましい。これはフィルムを第一鏡面体に抱かせて次の移送ロールへと送り出すためである。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(上記透明多層フィルムを含む。以下同じ。)の厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明の積層体を、ディスプレイ面板として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。また画像表示装置の薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。本発明の積層体を、ディスプレイ面板の表面保護フィルムとして用いる場合には、取扱性の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。また経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることのできる積層体を得ることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムのヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることのできる積層体を得ることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることのできる積層体を得ることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、上記(γ)ガスバリア層や上記(δ)ハードコート層を形成するに際し、事前に、その少なくとも片面にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
上記コロナ放電処理を施す場合は、濡れ指数(JIS K6768:1999に従い測定。)を通常は50mN/m以上、好ましくは60mN/m以上にすることにより、良好な層間接着強度を得ることができるようになる。またコロナ放電処理を施した後、更にアンカーコートを形成してもよい。
コロナ放電処理は、絶縁された電極と誘電体ロールとの間にフィルムを通し、高周波高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、フィルム表面を処理するというものである。このコロナ放電により酸素などがイオン化し、フィルム表面に衝突することにより、フィルム表面において、樹脂分子鎖の切断や樹脂分子鎖への含酸素官能基付加が起こり、濡れ指数が高くなる。
上記コロナ放電処理の単位面積、単位時間当たりの処理量(S)は、上記の濡れ指数を得る観点から決定され、通常80W・min/m2以上、好ましくは120W・min/m2以上である。またフィルムの劣化を防止する観点から、処理量(S)は500W・min/m2以下に抑えることが好ましい。より好ましくは400W・min/m2以下である。
なお処理量(S)は次式で定義される。
S=P/(L・V)
ここでS:処理量(W・min/m2)、P:放電電力(W)、L:放電電極の長さ(m)、V:ライン速度(m/min)、である。
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート剤としては、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタンなどの公知のものを用いることができる。中でも上記(γ)ガスバリア層や上記(δ)ハードコート層との接着強度向上の観点から、熱可塑性ウレタン系アンカーコート剤が好ましい。
また上記アンカーコート剤としては、シランカップリング剤を含む塗料を用いることもできる。シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物であり、上記(γ)ガスバリア層や上記(δ)ハードコート層との接着強度を向上させる働きをする。中でも接着強度向上の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
上記シランカップリング剤を含む塗料は、シランカップリング剤を主として(固形分として通常50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上。)含む塗料である。
上記アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記アンカーコート剤を用いてアンカーコートを形成する方法は、制限されず、公知の方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを使用することができる。
また上記アンカーコート剤には、本発明の目的に反しない限度において、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、赤外線遮蔽剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、及びフィラー等の添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
上記アンカーコートの厚みは、通常0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜2μmである。
(γ)ガスバリア層:
上記(γ)層は、ガスバリア性を有する透明な薄膜である。(γ)層は、上記(α)層の表層側(積層体をタッチパネル面板として用いる場合に、タッチ面となる側)に形成してもよく、裏面側(積層体をタッチパネル面板として用いる場合に、印刷面となる側)に形成してもよく、両面に形成してもよい。(γ)層は、(α)層の上に直接形成してもよく、アンカーコートを介して形成してもよく、ハードコートを介して形成してもよい。また(γ)層を2層以上積層して形成してもよい。
上記(γ)層の厚みは、ガスバリア性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、耐クラック性、及び透明性の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下である。
上記(γ)層としては、高いガスバリア性を発現し、透明であること以外は制限されない。(γ)層としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属オキシナイトライド、金属オキシボライド、及びこれらの混合/複合物を含む薄膜などをあげることができる。上記金属酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、及び酸化ニオブなどをあげることができる。上記金属窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、及び窒化硼素などをあげることができる。上記金属オキシナイトライドとしては、例えば、アルミニウムオキシナイトライド、シリコンオキシナイトライド、及びボロンオキシナイトライドなどをあげることができる。
上記(γ)層を形成する方法は、透明な積層体を得る目的から、透明な(γ)層を形成できること以外は制限されず、任意の方法を使用することができる。上記方法としては、低温プラズマ化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法などの化学気相成長法、イオンスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法及びこれらの組合せなどをあげることができる。
また任意の透明樹脂フィルム基材の少なくとも片面に上記(γ)層を形成し、これを上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムと積層してもよい。この場合は、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムの特性を活かすため、表層側から、上記(α)層、(γ)層、上記透明樹脂フィルム基材層の順に積層するか、又は表層側から、(α)層、上記透明樹脂フィルム基材層、(γ)層の順に積層することが好ましい。
上記透明樹脂フィルム基材としては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネートなどのポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;エチレン・ノルボルネン共重合体などの環状オレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの透明樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
これらの中で、環状オレフィン系樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、低結晶性又は非結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、及びこれらの積層フィルムが好ましい。
上記(γ)層は、上記透明樹脂フィルム基材の上に直接形成してもよく、アンカーコートを介して形成してもよく、ハードコートを介して形成してもよい。また(γ)層を2層以上積層して形成してもよい。
(δ)ハードコート層
本発明の積層体は、好ましくは、最表層側に更に(δ)ハードコート層を有する。耐擦傷性、及び表面硬度を向上させることができる。
上記(δ)層は、上記(α)層の表層側に形成してもよく、裏面側に形成してもよく、両面に形成してもよい。また(δ)層を2層以上積層して形成してもよい。更に(δ)層は、上記(γ)層の上に形成してもよい。本発明の積層体は、表層側から順に、(δ)層、(α)層、第2の(δ)層、及び(γ)層を有するものであってよい。また(δ)層、(γ)層、(α)層、及び第2の(δ)層を有するものであってよい。
上記(δ)層を形成するための塗料としては、透明性、及び無着色性に優れたハードコート層を形成することのできるものであること以外は、制限されず、任意の塗料を用いることができる。好ましいハードコート層形成用塗料としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物をあげることができる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(δ)層は、好ましくは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(C)有機チタン 0.05〜3質量部;及び(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる。より好ましくは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物 0.2〜4質量部;(C)有機チタン 0.05〜3質量部;(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子 5〜100質量部;及び(E)撥水剤 0.1〜7質量部;を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる。透明性、色調、耐擦傷性、表面硬度、耐曲げ性、及び表面外観に優れ、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持できる積層体を得ることができる。
(A)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分Aは、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであり、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分Aとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
上記成分Bは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより上記成分Aと、アルコキシシリル基を有することにより上記成分Dと、化学結合ないし強く相互作用することができ、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる働きをする。また成分Bは上記成分Eとも、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することにより、あるいはアルコキシシリル基を有することにより、化学結合ないし強く相互作用し、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する働きもする。ここで(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。なお成分Bは、アルコキシシリル基を有するという点で成分Aとは区別され、アルコキシシリル基と1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、成分Bである。
上記成分Bとしては、例えば、一般式「(−SiO2RR’−)n・(−SiO2RR”−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。Rはメトキシ基(CH3O−)、エトキシ基(C2H5O−)などのアルコキシ基である。R’はアクリロイル基(CH2=CHCO−)、メタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO−)である。R”はメチル基(CH3)、エチル基(CH2CH3)などのアルキル基である。
上記成分Bとしては、例えば、一般式「(−SiO2(OCH3)(OCHC=CH2)−)n」、「(−SiO2(OCH3)(OC(CH3)C=CH2)−)n」、「(−SiO2(OCH3)(OCHC=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、「(−SiO2(OCH3)(OC(CH3)C=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、「(−SiO2(OC2H5)(OCHC=CH2)−)n」、「(−SiO2(OC2H5)(OC(CH3)C=CH2)−)n」、「(−SiO2(OC2H5)(OCHC=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」、及び「(−SiO2(OC2H5)(OC(CH3)C=CH2)−)n・(−SiO2(OCH3)(CH3)−)m」で表される化学構造を有する化合物をあげることができる。ここで、nは自然数(正の整数)であり、mは0又は自然数である。好ましくは、nは2〜10の自然数、mは0又は1〜10の自然数である。
上記成分Bとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分Bの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。一方、撥水性を発現し易くする観点から、また成分Bと上記成分Cとの配合比を好ましい範囲にしたときに成分Cが過剰量にならないようにする観点から、4質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
また上記成分Dと化学結合ないし強く相互作用させる観点から、上記成分Bと上記成分Dとの配合比は、成分D100質量部に対して、成分B0.5〜15質量部が好ましい。より好ましくは2〜7質量部である。
(C)有機チタン:
上記成分Cは、上記成分Bの働きを補助する成分であり、ハードコートの耐擦傷性を大きく向上させる観点において、成分Bと成分Cとは特異的な好相性を示す。また成分C自身も、上記成分Dなどと化学結合ないし強く相互作用し、ハードコートの耐擦傷性を高める働きをする。
上記有機チタンとしては、例えば、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、ジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミナト)チタン;及びこれらの1種以上からなる重合体;などをあげることができる。上記成分Cとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、アルコキシチタンのテトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートが耐擦傷性と色調の観点から好ましい。
上記成分Cの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、耐擦傷性の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。一方、色調の観点から、3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
また上記成分Bの働きを効果的に補助する観点から、上記成分Bと上記成分Cとの配合比は、成分B100質量部に対して、成分C 5〜150質量部が好ましい。より好ましくは20〜80質量部である。
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
上記成分Dは、ハードコートの表面硬度を高める働きをする。一方、上記成分Aとの相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで、成分Aと成分Dの両方に化学結合ないし強く相互作用することのできる上記成分B、及び成分Bの働きを補助する上記成分Cを用い、この問題を解決したものである。
上記成分Dとしては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;金属微粒子;などをあげることができる。有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズをあげることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの表面硬度を高めたりする目的で、当該微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いてもよい。
これらの中でより表面硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
上記成分Dの平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持し、ハードコートの表面硬度改良効果を確実に得る観点から、300nm以下である。好ましくは200nm以下であり、より好ましくは120nm以下である。一方、粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
なお本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
上記成分Dの配合量は、上記成分A 100質量部に対して、表面硬度の観点から、5質量部以上、好ましくは20質量部以上である。一方、耐擦傷性と透明性の観点から、100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
(E)撥水剤:
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、指すべり性、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める観点から、更に、(E)撥水剤 0.1〜7質量部;を含ませることが好ましい。
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、フルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができる。上記成分Eとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、上記成分Eとしては、撥水性能の観点から、フルオロポリエーテル系撥水剤が好ましい。上記成分Aや上記成分Bと成分Eとが化学結合ないしは強く相互作用し、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、成分Eとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)がより好ましい。成分Eとして更に好ましいのは、成分Aや成分Bと成分Eとの化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物である。
上記成分Eを用いる場合の配合量は、上記成分A 100質量部に対して、成分Eがブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下である。配合量の下限は、任意成分であるから特にないが、成分Eの使用効果を得るという観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上である。
上記成分A〜D、好ましくは上記成分A〜Eを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。何れについての説明も上述した。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含ませてもよい。溶剤は組成物の成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより得られる。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含むハードコート形成用塗料を用いて上記(δ)層を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
上記(δ)層の厚みは、特に制限されないが、本発明の積層体の剛性、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、通常1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であってよい。また本発明の積層体の切削加工適性やウェブハンドリング性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
本発明の積層体は、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が80%以上である。全光線透過率が80%以上であることにより、本発明の積層体は、画像表示装置部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
本発明の積層体の黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(イ)水蒸気透過性:
JIS K7129:2008の附属書B「赤外線センサ法による水蒸気透過度の求め方」に従い、該規格の表B.1中の条件3(透過セルの温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%、高温度チャンバの相対湿度90±2%、及び低温度チャンバの相対湿度0%)の条件で、GTRテック株式会社のガス・水蒸気透過率測定装置「GTR−10X/30X(商品名)を使用して測定した。
(ロ)酸素透過性:
JIS K7126−1:2006の付属書2「ガスクロマトグラフ法によるガス透過度試験方法」に従い、GTRテック株式会社のガス・水蒸気透過率測定装置「GTR−10X/30X(商品名)を使用し、温度23℃、湿度0%の条件で測定した。
(ハ)全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ニ)黄色度指数;
JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定した。
使用した原材料:
(α)ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム:
(α−1)図1に概念図を示す構成の共押出製膜装置を使用し、エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド「PLEXIMID TT70(商品名)」を押出機1により透明多層フィルムの両外層(α1層とα2層)として、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301−4(商品名)」を透明多層フィルムの中間層(β層)として、α1層;β層;α2層;が、この順に直接積層された透明多層フィルムの溶融フィルム4を、2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイ3から連続的に押出し、α1層が鏡面ロール5側になるように、回転する鏡面ロール5と鏡面ロールの外周面に沿って循環する鏡面ベルト6との間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、α1層の層厚み80μm、β層の層厚み90μm、α2層の層厚み80μmの、良好な表面外観の透明多層フィルムを得た。このとき設定条件は、製膜前の乾燥温度は、(α−1)が150℃、(β−1)が100℃;押出機1の設定温度はC1/C2/C3/C4/C5/AD=260/290〜290℃;押出機2の設定温度はC1/C2/C3/C4/C5/C6/AD=260/280/280/260〜260/270℃;押出機1、2の何れも窒素パージを行い、真空ベントを使用;Tダイ3の設定温度300℃、リップ開度0.5mm;鏡面ロール5の設定温度130℃;鏡面ベルト6の設定温度120℃、押圧1.4MPa;引取速度6.5m/分であった。全光線透過率、ヘーズ、及び黄色度指数を測定した。結果を表1に示す。
(α−2)〜(α−12)鏡面ロール5の温度、鏡面ベルト6の温度、及び各層の厚みの何れか1を表1又は表2に示すように変更したこと以外は、上記(α−1)と同様にして、良好な表面外観の透明多層フィルムを得た。全光線透過率、ヘーズ、及び黄色度指数を測定した。結果を表1又は2に示す。
(α−13)全厚みを500μm、α1層の層厚み80μm、β層の層厚み340μm、α2層の層厚み80μmに変更し、引取速度3.3m/分、リップ開度1mmとしたこと以外は、上記(α−1)と同様にして、良好な表面外観の透明多層フィルムを得た。全光線透過率、ヘーズ、及び黄色度指数を測定した。結果を表2に示す。
(α−14)エボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド「PLEXIMID TT70(商品名)」を用い、50mm押出機(L/D=29、CR=1.86のWフライトスクリュウを装着);ダイ幅680mmのTダイ;鏡面ロール(第一鏡面体)と鏡面ベルト(第二鏡面体)とで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機;を備えた装置を使用して、厚さ125μmの、良好な表面外観のフィルムを得た。このとき設定条件は、押出機の設定温度はC1/C2/C3/AD=280/300/320/320℃;Tダイの設定温度320℃;Tダイのリップ開度0.5mm;鏡面ロールの設定温度130℃;鏡面ベルトの設定温度120℃;鏡面ベルトの押圧1.4MPa;引取速度5.6m/分であった。全光線透過率、ヘーズ、及び黄色度指数を測定した。結果を表2に示す。
実施例1
上記(α−1)の片面に、低温プラズマ化学気相成長装置を使用し、へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)の蒸着用混合ガスを用い、真空度6Paの条件で、厚さ100nmの炭素含有酸化珪素蒸着膜からなる(γ)ガスバリア層を形成した。上記試験(イ)〜(二)を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜14
上記(α−1)の替わりに表1又は2に示すポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て実施例1と同様に行った。結果を表1又は2に示す。
実施例15
日本ゼオン株式会社の厚さ100μmの環状オレフィン系樹脂フィルム「ゼオノアZF14(商品名)」の片面に、低温プラズマ化学気相成長装置を使用し、へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)の蒸着用混合ガスを用い、真空度6Paの条件で、厚さ100nmの炭素含有酸化珪素蒸着膜からなる(γ)ガスバリア層を形成した。続いて、上記(α−1)のα2層側(鏡面ベルト側面)と上記で得た(γ)ガスバリア層を有する環状オレフィン系樹脂フィルムの(γ)ガスバリア層側面とを厚さ25μmの光学粘着シートを用いて積層し、積層体を得た。上記試験(イ)〜(二)を行った。結果を表3に示す。
実施例16
上記(α−1)の替わりに上記(α−14)を用いたこと以外は、全て実施例15と同様に行った。結果を表3に示す。
実施例17
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの替わりに、厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て実施例15と同様に行った。結果を表3に示す。
実施例18
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの替わりに、厚さ100μmのトリアセチルセルロース系樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て実施例15と同様に行った。結果を表3に示す。
実施例19
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの替わりに、厚さ100μmのポリメタクリル酸メチル系樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て実施例15と同様に行った。結果を表3に示す。
実施例20
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの替わりに、厚さ100μmの芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て実施例15と同様に行った。結果を表3に示す。
本発明の積層体は、水蒸気透過性、及び酸素透過性の何れも測定限界値未満の高いガスバリア性を示し、ディスプレイ面板として好適な物性を発現している。
最表層側に更に(δ)ハードコート層を有する場合を、実施例により説明する。
測定方法
(ホ)水接触角:
ハードコート積層フィルムのタッチ面側ハードコート面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
(ヘ)耐擦傷性(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、タッチ面側ハードコート面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置き、学振試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片のタッチ面側ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復2万回擦った後、上記(ヘ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。なお水接触角が100度以上であれば、耐擦傷性は良好であると判断される。また2万往復後の水接触角が100度未満のときは、所定の往復回数を1万5千回、及び1万回に変更した測定も行い、以下の基準で評価した。
◎:往復回数2万回後でも水接触角100度以上。
○:往復回数1万5千回後では水接触角100度以上だが、2万回後は100度未満。
△:往復回数1万回後では水接触角100度以上だが、1万5千回後は100度未満。
×:往復回数1万回後で水接触角100度未満。
(ト)指すべり性:
ハードコート積層フィルムのタッチ面側ハードコート面を人差し指で上下左右や円状になぞり、思い通りになぞることができたか否かの印象により評価した。試験は10名が各々行い、思い通りになぞれた場合を2点、ほぼ思い通りになぞれた場合を1点、指が引っ掛かるなどして思い通りになぞれなかった場合を0点として各人の点数を集計し、以下の基準で評価した。
◎:16〜20点
△:10〜15点
×:0〜9点
(チ)綿拭後の指すべり性:
上記(ヘ)の方法に従い、2万往復綿拭した後のハードコート積層フィルムをサンプルとしたこと以外は、上記(ト)指すべり性と同様に試験し、評価した。
(リ)耐擦傷性(耐スチールウール性):
ハードコート積層フィルムを、タッチ面側ハードコート面が表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を100往復擦った。上記表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:傷がない
○:1〜5本の傷がある
△:6〜10本の傷がある
×:11本以上の傷がある
(ヌ)線膨張係数(耐熱寸法安定性):
JIS K 7197:1991に従い測定した。セイコーインスツル株式会社の熱機械的分析装置(TMA)「EXSTAR6000(商品名)」を用いた。試験片は、縦20mm、横10mmの大きさで、フィルムのマシン方向(MD)が試験片の縦方向となるように採取した。試験片の状態調節は、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%で24時間とし、フィルムの物性値としての寸法安定性を測定する目的から、測定最高温度における状態調節は行わなかった。チャック間距離は10mm、温度プログラムは、温度20℃で3分間保持した後、昇温速度5℃/分で温度270℃まで昇温するプログラムとした。線膨張係数は、得られた温度−試験片長さ曲線から、低温側温度30℃、高温側温度250℃として計算した。
(ル)最小曲げ半径:
JIS−K6902の曲げ成形性(B法)を参考とし、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%にて24時間状態調節した試験片について、曲げ温度23℃±2℃、折り曲げ線はハードコート積層フィルムのマシン方向と直角となる方向とし、ハードコート積層フィルムのタッチ面側ハードコート面が外側となるように折り曲げて曲面が形成されるようにして行った。クラックが発生しなかった成形ジグのうち正面部分の半径の最も小さいものの正面部分の半径を最小曲げ半径とした。
(ヲ)切削加工性(曲線状切削加工線の状態):
コンピュータにより自動制御を行うルーター加工機を使用し、ハードコート積層フィルムに、半径0.5mmの真円形の切削孔と半径0.1mmの真円形の切削孔を設けた。このとき使用したミルは刃先の先端形状が円筒丸型の超硬合金製4枚刃、ニック付きのものであり、刃径は加工箇所に合わせて適宜選択した。続いて半径0.5mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。同様に半径0.1mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。表には前者の結果−後者の結果の順に記載した。
◎:顕微鏡観察でもクラック、ヒゲは認められない
○:顕微鏡観察でもクラックは認められない。しかしヒゲは認められる。
△:目視でクラックは認められない。しかし顕微鏡観察ではクラックが認められる。
×:目視でもクラックが認められる。
(ワ)鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、ハードコート積層フィルムのタッチ面側ハードコート面について測定した。
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート:
(A−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A−2)エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート。3官能。
(B)アルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物:
(B−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKR−513(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はアクリロイル基、R”はメチル基。
(B−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンX−40−2655A(商品名)」、Rはメトキシ基、R’はメタクリロイル基、R”はメチル基。
(B’)比較成分:
(B’−1)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−403(商品名)」、アルコキシシリル基とエポキシ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
(B’−2)信越化学工業株式会社の「信越シリコーンKBM−903(商品名)」、アルコキシシリル基とアミノ基を有する化合物。(メタ)アクリロイル基を有しない。
(C)有機チタン:
(C−1)日本曹達株式会社のチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート「TOG(商品名)」。
(C−2)日本曹達株式会社のテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン「TOT(商品名)」。
(C−3)日本曹達株式会社のジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン「T−50(商品名)」。
(C’)比較成分:
(C’−1)日本曹達株式会社のテトラ−n−プロポキシジルコニウム「ZAA(商品名)」。
(D)平均粒子径1〜300nmの微粒子:
(D−1)平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
(E)撥水剤:
(E−1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY−1203(商品名)」。
(E−2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。
その他の任意成分:
(F−1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」。
(F−2)1−メトキシ−2−プロパノール。
(F−3)ビッグケミー・ジャパン株式会社の表面調整剤「BYK−399(商品名)」。
(ε)印刷面側ハードコート形成用塗料:
(ε−1)上記(A−1)65質量部、上記(A−2)35質量部、上記(B−1)1.4質量部、上記(C−1)0.7質量部、上記(D−1)35質量部、上記(F−1)5.3質量部、上記(F−2)95質量部、及び上記(F−3)0.5質量の配合組成比で混合・攪拌して得た塗料。
(α’)比較フィルム基材:
(α’−1)三菱樹脂株式会社の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」、厚み125μm。
(α’−2)住友化学株式会社のアクリル系樹脂フィルム「テクノロイS001G(商品名)」、厚み125μm。
(α’−3)住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301−4(商品名)」を用い、50mm押出機(L/D=29、CR=1.86のWフライトスクリュウを装着);ダイ幅680mmのTダイ;鏡面ロール(第一鏡面体)と鏡面ベルト(第二鏡面体)とで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機;を備えた装置を使用して、厚さ125μmのフィルムを得た。このとき設定条件は、押出機の設定温度はC1/C2/C3/AD=280/300/320/320℃;Tダイの設定温度320℃;Tダイのリップ開度0.3mm;鏡面ロールの設定温度140℃;鏡面ベルトの設定温度120℃;鏡面ベルトの押圧1.4MPa;引取速度9.0m/分であった。
実施例21
実施例15で得た積層体の両面にコロナ放電処理を行った後、上記(α−1)側の面にはタッチ面側ハードコート形成用塗料として表4に示す配合組成(質量部)の塗料を、ダイ方式の塗工装置を使用して、硬化後厚みが25μmとなるように塗布し;上記環状オレフィン系樹脂フィルム側の面には印刷面側ハードコート形成用塗料として上記(ε−1)を、ダイ方式の塗工装置を使用して、硬化後厚みが25μmとなるように塗布して、表面にうねりや傷がなく、間近に光を透かし見ても、曇感のない、表面外観の良好なハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ワ)を行った。結果を表4に示す。
実施例22〜34、参考例1〜7
タッチ面側ハードコート形成用塗料の配合組成を表4〜7の何れか1に示すように変更したこと以外は、全て実施例21と同様に行い、表面にうねりや傷がなく、間近に光を透かし見ても、曇感のない、表面外観の良好なハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ワ)を行った。結果を表4〜7の何れか1に示す。
実施例35
実施例15で得た積層体の替わりに、実施例16で得た積層体を用いたこと以外は、全て実施例21と同様に行った。結果を表7に示す。
比較例1
上記(α−1)の替わりに上記(α’−1)を用いたこと以外は全て実施例15と同様にして得た積層体を、実施例15で得た積層体の替わりに用いたこと以外は、全て実施例21と同様に行った。結果を表7に示す。
比較例2
上記(α−1)の替わりに上記(α’−2)を用いたこと以外は全て実施例15と同様にして得た積層体を、実施例15で得た積層体の替わりに用いたこと以外は、全て実施例21と同様に行った。結果を表7に示す。
比較例3
上記(α−1)の替わりに上記(α’−3)を用いたこと以外は全て実施例15と同様にして得た積層体を、実施例15で得た積層体の替わりに用いたこと以外は、全て実施例21と同様に行った。結果を表7に示す。
本発明の積層体は、ディスプレイ面板として好適な物性を発現している。一方、比較例1は耐熱寸法安定性に劣り、表面硬度が不十分である。比較例2は耐熱寸法安定性が不十分である。比較例3は耐熱寸法安定性と表面硬度が不十分である。