JP2505970B2 - メタクリルイミド単位含有メタクリル樹脂の製法 - Google Patents

メタクリルイミド単位含有メタクリル樹脂の製法

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JP2505970B2 JP19879193A JP19879193A JP2505970B2 JP 2505970 B2 JP2505970 B2 JP 2505970B2 JP 19879193 A JP19879193 A JP 19879193A JP 19879193 A JP19879193 A JP 19879193A JP 2505970 B2 JP2505970 B2 JP 2505970B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はメタクリルイミド単位含
有メタクリル樹脂の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エ
ステルを用いて構成される重合体(以下、メタクリル樹
脂という)は、透明性のみならず機械的性質、耐候性等
に優れているため、高性能プラスチック光伝送性繊維や
装飾素材等として用いられ、この光伝送性繊維は近年で
は短距離光通信、光センサー等の分野で用途開発が進め
られている。しかし、メタクリル樹脂は、ポリメタクリ
ル酸メチルの熱変形温度が100℃前後である様に耐熱
性が十分でないため、用途開発が制約される分野もかな
りあり、耐熱性向上に対する要求が強い。
【0003】メタクリル樹脂の耐熱性を向上させる手段
として、例えばメタクリル酸メチルからの重合体を第1
級アミンと反応させる方法(米国特許第2,146,2
09号明細書、西独特許第1,077,872号明細
書、同第1,242,369号明細書)が提案されてい
る。
【0004】また、メタクリル酸エステルからの重合体
を水溶性アンモニウム塩またはN−アルキルアンモニウ
ム塩と反応させる方法(米国特許第3,244,679
号明細書)、メタクリル酸エステルを用いた重合体を水
系で第1級アミンと反応させる方法(米国特許第3,2
84,425号明細書)等が提案されている。更にま
た、押出機を使用してメタクリル酸エステルからの重合
体とアンモニアまたは第1級アミンとを反応させる方法
(米国特許第4,246,374号明細書)も提案され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述の方
法で得られるメタクリルイミド単位含有メタクリル樹脂
(以下、メタクリルイミド樹脂と略記することがあ
る。)は耐熱性は向上しているものの、透明性に劣った
り、メタクリル樹脂の分子量が実質的に低下したり、イ
ミド化が不均一であったりするため、機械的性質、光学
的性質、帯色性及び成形加工性等に劣り、実用に供し得
ないのが現状である。特に高度な透明性が要求される分
野においては実用に供し得るメタクリルイミド樹脂を得
ることはできなかった。
【0006】例えば、米国特許第2,146,209号
明細書に記載の方法では、イミド化反応において単一の
溶媒が使用されているか、または溶媒が使用されていな
い。そのため、この方法によれば、耐熱性の向上したメ
タクリルイミド樹脂は得られるが、透明性及び帯色性
(耐熱着色性)の優れたメタクリルイミド樹脂は得られ
なかった。
【0007】米国特許第4,246,374号明細書に
は、押出機中で、溶融メタクリル樹脂をガス状の低分子
イミド化剤、例えばアンモニア、メチルアミン等によっ
てイミド化することが示されている。しかし、この方法
では溶融高粘度系に低粘度の、つまりガス状のイミド化
剤を加えることになり、イミド化は不均一となる。ま
た、押出機を使用するのでイミド化に使われる時間が不
足し、さらにメタクリル樹脂の分子量が低下するという
問題もある。イミド化が不均一で、イミド化時間が不足
すれば透明性及び帯色性の優れたメタクリルイミド樹脂
は得られない。
【0008】本発明の目的は、メタクリル樹脂本来の優
れた光学的性質、帯色性、機械的性質、耐候性及び成形
加工性などを維持しつつ、耐熱性に優れたメタクリルイ
ミド樹脂の製法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、メタク
リル酸メチル単位を主構成単位として含み、メタクリル
酸メチル二量体の含有量が1,000ppm 以下である樹
脂を、該樹脂に対する溶媒混合物中に溶解させた状態で
一般式(I)
【0010】
【化3】R1 NH2 (I) (式中、R1 は水素原子又は炭素原子数1〜20個の脂
肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素基である)で示
されるアミンと反応させることを特徴とする一般式(I
I)
【0011】
【化4】 (式中、R1 は上記で定義した通りである)で示される
メタクリルイミド単位含有メタクリル樹脂の製法に関す
るものである。
【0012】本発明において、メタクリルイミド単位含
有メタクリル樹脂とは、メタクリル樹脂の高分子主鎖中
にメタクリルイミドセグメントが導入されている重合体
をいう。
【0013】本発明の製法で得られるメタクリルイミド
樹脂は、加熱樹脂の溶液での黄色度(YIs) が3以下、好
ましくは0.1〜1であり、成形板での黄色度(YIp) が
2.7以下、好ましくは0.2〜1.5であり、全光線
透過率が89〜95%、好ましくは90〜92%であ
る。又、ジメチルホルムアミド中、25℃で測定した固
有粘度は約0.01dl/gから3.0dl/gの範囲内であ
る。
【0014】本発明でいうメタクリル酸メチル二量体
は、メタクリル酸メチル単量体2分子から生成する化合
物であり、メタクリル酸メチル単位を主構成単位とする
重合体を製造する際に副生する。このメタクリル酸メチ
ル二量体の含有量が1000ppm 以下、好ましくは25
0ppm 以下であるメタクリル樹脂と前記の一般式(I)
で示されるアミンとを前記の溶媒混合物中で特定の条件
下で反応させることによって得られるメタクリルイミド
単位含有メタクリル樹脂は、透明性、とりわけ加熱帯色
の点で優れている。
【0015】メタクリル樹脂からメタクリルイミド単位
含有樹脂を製造する際には、一般に得られる樹脂の耐熱
性の向上の点からも、イミド化率が45%以上であるこ
とが好ましく、生産性をも考慮すると、上記一般式(I
I)で示されるメタクリルイミド単位を45〜98.5
重量%含むことが非常に望ましい。しかし、従来技術の
方法においては、メタクリルイミド単位含有率、即ちイ
ミド化率が45%を超えるような樹脂では、加熱樹脂の
溶液での黄色度(YIs) 及び成形板での黄色度(YIp) の値
が前記した範囲内に入る樹脂は得られなかった。
【0016】メタクリル酸メチル単位を主構成単位とし
て含む重合体中にメタクリル酸メチルの二量体が1,0
00ppm を超えて含まれる場合には、この二量体が後述
する反応工程でアミンと反応して低分子量のアミドから
なる着色物質を形成し、この着色物質は揮発性物質を分
離する工程でメタクリルイミド樹脂から分離することが
極めて困難である。従って、本発明の目的とする透明性
が高く、着色の少ないメタクリルイミド樹脂を製造する
ためには、アミンと反応する前のメタクリル樹脂中のメ
タクリル酸メチル二量体の含量を極力低下させることが
大切である。
【0017】本発明のメタクリルイミド樹脂の製法にお
いては、例えば上記したメタクリル樹脂5〜80重量部
を芳香族炭化水素19〜94重量部と脂肪族アルコール
1〜76重量部とからなる溶媒混合物中に溶解させた状
態(メタクリル樹脂と溶媒混合物との合計は100重量
部)で100℃以上350℃未満の温度で前記アミン
(1種でもよいし、それ以上でもよい)を添加して攪拌
混合する。その後、得られた反応生成物から揮発性物質
を分離する。溶媒混合物を使用しない場合には特に前述
したような黄色度の低いメタクリルイミド樹脂は得られ
ない。
【0018】本発明において用いられるメタクリル樹脂
は、一般に固有粘度が0.01〜3.0dl/g(25℃、
ジメチルホルムアミド中で測定)であるメタクリル酸メ
チル単独重合体、またはメタクリル酸メチルとアクリル
酸エステル、他のメタクリル酸エステル、アクリル酸、
メタクリル酸、スチレン等の共重合可能な他の単量体と
の共重合体をいう。この場合、これらの共重合可能な他
の単量体の使用量はメタクリル酸メチルとの単量体混合
物の75重量%以下であることが好ましい。アクリル酸
エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシ
ル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ベンジ
ル、またメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸
エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキ
シル、メタクリル酸ベンジル等を用いることが可能であ
る。これらの単量体は2種以上を併用してもよい。
【0019】本発明において用いられるメタクリル樹脂
において、メタクリル酸メチルの他に上記のような共重
合可能な他の単量体を用いている場合には、得られるメ
タクリルイミド樹脂は通常前記した一般式(II)で示さ
れるメタクリルイミド単位の他に、一般式(III)
【0020】
【化5】 (式中、R2 は水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキ
ル基、ベンジル基又はシクロヘキシル基であり、R3
水素原子又はメチル基である)で示されるアクリル酸、
メタクリル酸、又はそれらのエステル単位及び/又は一
般式(IV)
【0021】
【化6】 で示される芳香族ビニル単量体単位を含み、それらの量
については一般式(III)と一般式(IV)の何れか一方又
は両方を合わせた量で90重量%以下であることが好ま
しい。
【0022】本発明のメタクリルイミド樹脂の製法にお
いては、前述した反応工程の後に揮発性物質の分離工程
を伴う。反応工程はメタクリル樹脂と前記一般式(I)
で示されるアミンとを特定の条件で反応させることによ
ってメタクリル樹脂の側鎖間に縮合反応を起させる工程
である。揮発性物質分離工程は、反応工程で生成したイ
ミド化されたメタクリル樹脂を含む反応生成物から、溶
媒混合物を主成分とする揮発性物質を分離する工程であ
る。反応工程ではメタクリル樹脂が上記溶媒混合物に溶
解されている溶液中に前記一般式(I)で示されるアミ
ンを溶解させて反応させる。
【0023】溶媒としては、高分子側鎖間縮合反応であ
るイミド化反応を阻害せずに、また部分イミド化反応の
場合、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エステル
セグメント部に変化を与えないものであることが必要で
ある。
【0024】このような溶媒としては、アルコール、特
にメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアル
コール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、
イソブチルアルコール等の脂肪族アルコール類、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエ
チルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のケト
ン、エーテル系化合物等の少なくとも2種を混合したも
のが挙げられるが、その中で、ベンゼン、トルエンまた
はキシレンとメチルアルコール、エチルアルコール、プ
ロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルア
ルコール、イソブチルアルコール等との混合物が好まし
い。
【0025】優れた透明性を有するメタクリルイミド樹
脂を得るためにはこれらの溶媒を多孔質膜によっで濾過
精製して用いることが好ましい。
【0026】溶媒混合物の量は少ない方が生産面から好
ましいが、あまり少ないと前記の溶媒混合物の効果が低
下するので、重合体濃度にして5〜80重量%、好まし
くは20〜80重量%となる範囲がよい。
【0027】透明性に優れ、黄色度(YIs 、YIp )
が低いメタクリルイミド樹脂を得るには、前記原料メタ
クリル樹脂及び一般式(I)で示されるアミン、さらに
は生成メタクリルイミド樹脂を溶解する溶媒の存在下で
前記イミド化反応を行なう必要がある。不溶解状態もし
くは溶媒が存在しない状態で、前記イミド化反応を行な
うと、原料メタクリル樹脂の一部分がイミド化し、他の
残りの部分はイミド化されない状態、即ち原料メタクリ
ル樹脂とメタクリルイミド樹脂の混合物として得られ、
透明性に優れた樹脂を得ることが出来ない。
【0028】また、原料メタクリル樹脂だけを溶解し易
い溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素類だけを使用した場合、生成物であるメタ
クリルイミド樹脂が溶解せず、高いイミド化率を有する
メタクリルイミド樹脂を均一に得ることが出来ない。ま
た原料メタクリル樹脂に対し貧溶媒であるメタノール、
または芳香族炭化水素類程には良溶媒と言えない脂肪族
アルコールだけを溶媒とした場合、均一状態でイミド化
反応が進行しないばかりか、イミド化反応が完結しない
ので黄色度の高い、着色したメタクリルイミド樹脂が生
成する。
【0029】一方、前記した少なくとも二種類の溶媒を
混合した溶媒混合物を使用すると前記問題点が解消さ
れ、目的とする透明性、帯色性に優れたメタクリルイミ
ド樹脂を得ることが可能となる。
【0030】本発明の製法で使用される前記一般式
(I)で示されるアミンの内、R1 が脂肪族炭化水素基
であるアミンとしては例えばメチルアミン、エチルアミ
ン、プロピルアミン等が挙げられるが、1,3−ジメチ
ル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿
素の如き加熱によりこれらのアミンを発生する化合物
類、アンモニア及び尿素等を用いることもできる。
【0031】またR1 が芳香族炭化水素基であるアミン
としては、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン
等が挙げられる。R1 が脂環式炭化水素基であるアミン
としては、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0032】これらの化合物の使用量は前記一般式(I
I)で示されるメタクリルイミド単位が少なくとも10
重量%含有される様な割合にするが、例えばメタクリル
樹脂のメタクリル酸メチルモノマーユニット1モルに対
して0.05〜20モルの範囲で用いることができる。
【0033】反応器中でのメタクリル樹脂とアミンとの
反応は100℃以上、350℃以下、好ましくは150
℃以上、300℃以下で行うことができる。反応温度が
100℃未満ではイミド化反応が遅く、また350℃を
超えると原料メタクリル樹脂の分解反応が併発する。反
応時間は特に限定されず、生産性の面からは短い方が好
ましいが、30分〜5時間が良好である。反応圧力は使
用するアミンの種類、反応温度、イミド化率に応じて決
定される。
【0034】本発明のメタクリルイミド樹脂の製法で用
いられる反応装置は、本発明の目的を阻害しないもので
あればどのようなものでもよいが、イミド化を均一に行
い、かつ均一なメタクリルイミド単位含有重合体を得る
ためには供給口、取り出し口及び攪拌装置を備えた槽型
反応装置で反応器内全体に混合機能をもつものが好まし
い。
【0035】揮発性物質の分離工程では、メタクリル樹
脂とイミド化剤との反応生成物から揮発性物質の大部分
を分離除去する。得られたメタクリルイミド樹脂中の残
存揮発性物質の含有量は最終的には1重量%以下、好ま
しくは0.1重量%以下とする。揮発性物質の除去は、
一般のベント押出機、デポライザー等を使用して行う
か、あるいは他の方法、例えば反応生成物を溶媒で稀釈
し、多量の非可溶性媒体中で沈澱濾過させて乾燥する方
法等を用いて行うことができる。
【0036】本発明の製法においては、原料であるメタ
クリル樹脂の高温反応下でのラジカル解重合による分子
量の低下を防止するために少量の抗酸化剤の添加が好ま
しい。ここでいう抗酸化剤とは、亜リン酸トリクレジ
ル、亜リン酸クレジルフェニル、亜リン酸トリオクチ
ル、亜リン酸トリブトキシエチル等の亜リン酸エステル
系のホスファイト系抗酸化剤、ハイドロキノン、クレゾ
ール、フェノール誘導体のヒンダードフェノール系抗酸
化剤、ナフチルアミン、フェニレンジアミン、ハイドロ
キノリン誘導体のアミン系抗酸化剤、及びアルキルメル
カプタン、ジアルキルスルフィド誘導体等を具体例とし
て挙げることができる。
【0037】さらに製品の性能上の要求から可塑剤、滑
剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料等の他の添加物も添加
して使用することができる。
【0038】次に本発明のメタクリルイミド樹脂の製法
に使用される代表的な装置を図1を参照しながら説明す
る:不活性の溶媒混合物は溶媒貯槽1からライン2を通
り、ポンプ3によって溶媒供給槽4に送られ、必要に応
じて添加される抗酸化剤は抗酸化剤貯槽5からライン6
を経て溶媒供給槽4に供給されて溶解され、樹脂溶解槽
10に送られる。一方樹脂はペレット貯槽8からライン
9を経て樹脂溶解槽10に供給される。樹脂溶解槽10
は攪拌機11及びジャケット12を備え、ジャケット中
には、熱媒体が開孔13及び14を通じて流通する。樹
脂溶解槽10中の溶解樹脂は排出ライン15、ポンプ1
6、ライン17を経て、反応槽20に送られ、イミド化
剤貯槽18よりライン19を経て供給されたイミド化剤
と反応槽20中で反応させられる。反応槽20はスパイ
ラルリボン型攪拌機21及びジャケット22を備え、ジ
ャケット中には、熱媒体が開孔23及び24を通じて流
通する。反応槽20中の反応生成物は排出ライン25、
ポンプ26、ライン27を経て揮発性物質分離機28に
送られ、ここで揮発分が除去され、ポリマー排出口29
から排出される。揮発性物質分離機28はスクリュー3
0、ベント31、加熱のための手段32を備えている。
【0039】
【実施例】以下、参考例及び実施例により本発明をさら
に詳しく説明する。下記の記載において使用される部及
び%は、全光線透過率を除き、特にことわらない限り重
量部及び重量%である。なお、図1の装置系は次の仕様
を有するものである: 樹脂溶解槽 500リットル 反応槽 40リットル 揮発性物質分離装置 一軸スクリューベント型押出機 スクリュー:30mmφ×720mm長 ベント長:60mm 実施例において原料重合体や生成樹脂等の特性測定法は
次の方法によった。 (1)赤外線吸収スペクトルは赤外線分光光度計
((株)日立製作所製 285型)を用い、KBrディ
スク法によって測定した: (2)重合体の固有粘度は、デロービショップ(Dee
reax−Bischoff)粘度計によって試料ポリ
マー濃度0.5重量%のジメチルホルムアミド溶液の流
動時間(ts)とジメチルホルムアミドの流動時間(t
o)とを温度25±0.1℃で測定し、ts/to値か
らポリマーの相対粘度ηrel を求め、しかる後、次式よ
り算出した: 固有粘度=( ln ηrel /C)c→o (式中、Cは溶媒100mlあたりのポリマーのグラム数
を表わす。) (3)熱変形温度はASTM D648に基づいて測定
した。 (4)重合体のメルトインデックスは、ASTM D1
238(230℃、荷重3.8kgでの10分間のグラム
数)を用いて求めた。 (5)重合体のイミド化率(%)の測定は、元素分析値
(測定機CNHコーダー(MT−3)、柳本製作所製)
での窒素含量及びプロトンNMR JNM−FX−10
0(JEOL)スペクトロメーター100MHz により測
定し、イミド環単位とメタクリル樹脂を構成する単量体
単位との合計量に対するイミド環単位の割合を%で表示
した(表中ではモル%の表示になっている)。 (6)透明性は、得られた樹脂を厚さ2mmになるように
加熱加圧成形した後、ASTM D−1003−61に
従って測定した。 (7)加熱樹脂の溶液での黄色度(YIs) はJIS−K−
7103に従って測定した。即ち、得られたメタクリル
イミド樹脂のペレットを空気雰囲気下150℃で15日
間加熱保持した後、15重量%塩化メチレン溶液にして
上記方法により透過光で測定した黄色度(YIs) で表示
し、加熱黄色度とした。YIs は次式により算出した: X,Y,Z;標準光における試験用試料または試験片の
三刺激値 また(6)で得られた成形板を使用して上記方法と同じ
方法で150℃、15日間加熱保持した後、成形板の加
熱による着色を目視評価した: ほとんど変化なし ○ わずかに黄帯色 △ 黄帯色 × (8)成形板での黄色度(YIp) は、得られた重合体ペレ
ットを5オンスの射出成形機(名機製作所(株)、SA
V−30)で2mm厚、80×80mmに平板成形した後、
平板の透過光で測定した: 成形条件 シリンダー温度 290℃ 成形サイクル 60秒 YIp は次式により算出した: X,Y,Z;標準光における試験用試料または試験片の
三刺激値 (9)メタクリル酸メチル二量体の測定方法 メタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル樹脂をア
セトン溶媒に溶解してガスクロマトグラフィー法により
測定した。測定カラム温度は150℃とした。
【0040】参考例 メタクリル酸メチル二量体含有メタクリル樹脂の調製
法:各種メタクリル酸メチル重合体を製造するのに使用
される代表的な装置を図2を参照しながら説明する。
【0041】メタクリル酸メチル単量体100部、重合
開始剤としてジ−tert−ブチルペルオキシド0.0
017部、ドデシルメルカプタン0.25部、場合によ
っては非重合性溶媒(例えばトルエン)0部〜50部か
らなる混合物を貯槽40に仕込みライン41を通してポ
ンプ42より3kg/時間(単量体分表示)の流量で重合
反応槽43に供給した。このとき必要に応じて抗酸化剤
等の添加剤は、添加剤貯槽44からライン45を経て反
応槽43に供給された。反応槽43には、スパイラルリ
ボン型攪拌機46及びジャケット47を備え、ジャケッ
ト中には、熱媒体が開孔48及び49を経て流通した。
この反応槽は内容積25リットルのもので重合反応温度
60℃〜190℃の領域で可変であった。このときの重
合転化率は40%〜70%の範囲で可変であった。重合
反応槽43で生成したメタクリル酸メチル重合体シラッ
プは、ライン50、ポンプ51、ライン52を通過し、
シラップ加熱器53を経て200〜240℃に加熱され
た。その後該シラップはライン54を経て揮発性物質分
離機55に送られ、ここで揮発性物質、例えば未反応メ
タクリル酸メチルモノマー、場合によっては非重合性溶
媒例えばトルエン等やメタクリル酸メチル二量体を、ベ
ント部温度190〜250℃、減圧度3〜500mmHgの
範囲の条件で部分的に脱気除去した。ここで言うメタク
リル酸メチル二量体は重合反応槽43またはシラップ加
熱器53等で副反応として生成するものである。生成し
たメタクリル酸メチル重合体はポリマー排出口59より
ストランド状で得られ、例えば切断機等でペレット状に
加工される。揮発性物質分離機55は、スクリュウ5
6、ベント57、加熱のための手段58を備えている。
【0042】ここでの揮発性物質分離装置は次の仕様の
ものである: 一軸スクリュウベント型押出機 スクリュウ:30mmφ、720mm長 ベント長 :60mm このようにして得られるメタクリル樹脂中には、メタク
リル酸メチル二量体が含まれているが、この量は、重合
条件(例えば溶媒使用量、重合温度、反応転化率等)及
びシラップ加熱温度さらに揮発性物質分離能などで可変
な値となる。以下実施例、比較例でのメタクリル酸メチ
ル二量体の含有量は分析値を使用する。
【0043】実施例1 十分に乾燥したメタクリル酸メチル重合体(メタクリル
酸メチル二量体30ppm 、固有粘度0.51dl/g)10
0部を、脱水乾燥した後0.1μmフルオロポア(住友
電気工業(株)製)により濾過精製したトルエン90
部、脱水乾燥した後0.1μmフルオロポアにより濾過
精製したメタノール10部と共に500リットルの溶解
槽に入れ、200℃で攪拌下に重合体を溶解させた。
【0044】次いでこの溶液を5kg/時間(樹脂分表
示)の供給速度で反応槽に連続的に供給し、攪拌回転数
を90rpm として十分混合させながら槽内温度を230
℃に調節した。その後、乾燥メチルアミンを0.1μm
フルオロポアで濾過精製して20モル/時間の速度で反
応槽内に連続的に供給し内圧を45kg/cm2 (ゲージ
圧)にした。反応槽内の温度は反応中230℃に維持
し、平均滞留時間を4.5時間とした。この反応槽から
取り出された反応生成物をポンプにより20リットルの
熟成槽(図1には示されていない)に入れ、平均滞留時
間を2.0時間、熟成槽内温度を230℃として十分な
攪拌下に熟成させた。熟成反応物をベント押出機に連続
的に供給して揮発性物質を分離した。ベント押出機の温
度はベント部230℃、押出部230℃、ベント部真空
度9mmHg abs' にした。
【0045】ダイスから押出したストランドを水冷した
後、切断して良好な透明性を有するペレット状の樹脂組
成物を得た。
【0046】一方、ベント部より排出したトルエン、メ
タノール及び未反応のアミンは冷却して回収した。この
ようにして得られた樹脂組成物の赤外吸収スペクトルを
測定したところ、波数1720cm-1、1663cm-1及び
750cm-1にメチルメタクリルイミド重合体特有の吸収
がみられた。
【0047】また核磁気共鳴スペクトルではこの構造を
示すシグナルが示された。元素分析においても、8.3
%の窒素含有量(イミド化量100%)を示し、ほぼ完
全にN−メチルメタクリルイミド重合体であることが確
認された。また、得られた樹脂について物性を評価した
ところ、次の様な特性を示した: 固有粘度 0.48 メルトインデックス 1.5 熱変形温度 175℃ 屈折率 nD(25℃) 1.530 (アッベ式屈折計で測定)得られたペレット状の樹脂を
使用して、5オンスの射出成形機(名機製作所(株)S
AV−30)で2mm厚、80×80mm平板を成形して透
明性を測定した: 全光線透過率 91% 平行光線透過率 90% 曇価 1.0% 得られたペレット状樹脂を使用して150℃で15日
間、空気雰囲気下で加熱した後に黄色度(YIs) を測定し
た。なお下記の初期値YIは得られたペレット状樹脂を
加熱せずに15重量%塩化メチレン溶液にして同様に測
定した時の値である: 初期値 YI=0.15 加熱後 YIs =0.4 成形板の YIp =0.6 成形板加熱着色度 ○ 上記測定によって、本実施例のメタクリルイミド樹脂は
良好な透明性を有し、加熱経時変化も少ないものである
ことが理解される。
【0048】実施例2〜23 表1及び表2に示すようなメタクリル樹脂及びアミンを
用いて実施例1と同じ方法により種々のメタクリルイミ
ド樹脂を製造した。
【0049】反応槽内圧は20〜80kg/cm2 ゲージ圧
とした。表1及び表2に反応条件と得られた樹脂の特性
の評価結果を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】 *1 メタクリル酸メチル重合体(固有粘度=0.5
6) *2 メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体
(重量比=95/5、固有粘度=0.7) *3 メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合
体(重量比=95/5、固有粘度=0.35) *4 メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体(重
量比=95/5、固有粘度=0.6) *5 メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合
体(重量比=90/10、固有粘度=1.0) *6 メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メ
タクリル酸共重合体(重量比=90/5/5、固有粘度
=0.65) *7 メタクリル酸メチル−アクリル酸tert−ブチル
−メタクリル酸tert−ブチル共重合体(重量比=90/
5/5、固有粘度=1.05) *8 メタクリル酸メチル−アクリル酸tert−ブチル
共重合体(重量比=95/5、固有粘度=0.55) *9 メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキ
シル共重合体(重量比=90/10、固有粘度=0.
6) *10 実施例1で使用のもの 実施例24〜28 表3に示すようなメタクリル樹脂、アミン及び溶媒を用
いて実施例1と同様な方法で種々のメタクリルイミド樹
脂を製造した。
【0052】反応槽内圧は40〜80kg/cm2 ゲージ圧
とし、溶媒の精製は実施例1と同様にした。表3に反応
条件と得られた樹脂の特性の評価結果を示す。
【0053】
【表3】 比較例1〜6 メタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル二量体の含有量
及び溶媒が表4に記載のとおりである他は、実施例1と
同じ方法を繰り返した。得られたメタクリルイミド樹脂
の特性値の測定結果を表4に示した。メタクリル酸メチ
ル二量体が多い場合及び単一溶媒を使用した場合は、加
熱による樹脂の着色の度合が著しかった。
【0054】
【表4】
【0055】
【発明の効果】本発明の製法によれば、イミド化反応を
容易に制御でき、かつ品質の優れたメタクリルイミド樹
脂を工業的に有利に製造できる。また得られたメタクリ
ルイミド樹脂は透明性、耐熱性及び耐加熱帯色性に優れ
るため、そのような特性が要求される分野、例えばCR
T用フィルター、テレビ用フィルター、蛍光管フィルタ
ー、液晶フィルター、メーター類、またはディジタル表
示用板等のディスプレイ関係、照明光学関係、自動車等
のヘッドライトカバー、電気部品、光学繊維芯材等の広
範囲に使用でき、工業的価値の極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のメタクリルイミド樹脂の製法に用いる
反応装置の概略説明図である。
【図2】メタクリル樹脂を製造する装置の概略説明図で
ある。
【符号の説明】
1 溶媒貯槽 8 ペレット貯槽 10 樹脂溶解槽 18 イミド化剤貯槽 20 イミド化反応槽 28 揮発性物質分離機 40 メタクリル酸メチル単量体貯槽 43 メタクリル酸メチル重合反応槽 44 添加剤貯槽 53 シラップ加熱機 55 揮発性物質分離機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西田 耕二 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社内 (72)発明者 森本 勝 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社内

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタクリル酸メチル単位を主構成単位と
    して含み、メタクリル酸メチル二量体の含有量が1,0
    00ppm 以下である樹脂を、該樹脂に対する溶媒混合物
    中に溶解させた状態で一般式(I) 【化1】R1 NH2 (I) (式中、R1 は水素原子又は炭素原子数1〜20個の脂
    肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素基である)で示
    されるアミンと反応させることを特徴とする一般式(I
    I) 【化2】 (式中、R1 は上記で定義した通りである)で示される
    メタクリルイミド単位含有メタクリル樹脂の製法。
  2. 【請求項2】 上記のメタクリル酸メチル二量体の含有
    量が250ppm 以下である請求項1記載のメタクリルイ
    ミド単位含有メタクリル樹脂の製法。
  3. 【請求項3】 上記の溶媒混合物がベンゼン、トルエン
    及びキシレンの少なくとも1種と脂肪族アルコールとの
    混合物である請求項1又は2記載のメタクリルイミド単
    位含有メタクリル樹脂の製法。
  4. 【請求項4】 上記のメタクリル酸メチル単位を主構成
    単位として含む樹脂5〜80重量部と、ベンゼン、トル
    エン及びキシレンの少なくとも1種19〜94重量部
    と、脂肪族アルコール1〜76重量部とからなる混合物
    (全量は100重量部)を上記のアミンと反応させる請
    求項1,2又は3記載のメタクリルイミド単位含有メタ
    クリル樹脂の製法。
  5. 【請求項5】 脂肪族アルコールがメチルアルコール、
    エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピル
    アルコール、ブチルアルコール又はイソブチルアルコー
    ルである請求項3又は4記載のメタクリルイミド単位含
    有メタクリル樹脂の製法。
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