ところで、特許文献1の超音波内視鏡において、先端部本体の小型化を図るためには超音波探触子と処置具導出口とを近接配置することが望ましいが、これらを近接しようとすると、次のような問題がある。
すなわち、特許文献1の超音波内視鏡は、上述したように、超音波探触子の基端側から基端方向に離間した位置に処置具導出口が設けられているので、これらを近づけた場合、処置具導出口から導出された処置具が超音波探触子に衝突しないように、挿入部の挿入方向(先端部本体の軸方向)に対する穿刺針の導出方向の傾斜角度を大きく設定する必要がある。
この場合、穿刺針の導出方向が挿入部の挿入方向に対して傾斜しているため、先端部本体は、処置具導出口から導出された穿刺針が被検部に刺入されたときに穿刺針から反力を受け易くなり、その反力により先端部本体にブレが生じ易くなる。このような先端部本体のブレは、前述した傾斜角度が大きくなるに従って大きくなり、穿刺精度が低下するといった問題がある。そのため、超音波探触子の基端側から基端方向に離間した位置に処置具導出口を配置しなければならず、先端部本体の小型化を図ることができない。
また、特許文献2の超音波内視鏡は、先端部本体の先端面に処置具導出口が設けられているので、挿入部の挿入方向に沿って穿刺針を導出することが可能であり、特許文献1の超音波内視鏡に比べて先端部本体のブレが生じ難い構造となっているが、次のような問題がある。
すなわち、特許文献2の超音波内視鏡は、上述したように、先端部本体の先端面に処置具導出口と超音波探触子とが並設されているので、処置具導出口が配置される領域と超音波探触子が配置される領域を先端部本体の径方向に並べて確保しなければならず、先端部本体の太径化を招く問題がある。その一方で、先端部本体の太径化を防ぐために、超音波探触子を小型化しようとすると、超音波探触子の感度が低下する弊害が生じるため、先端部本体の細径化には限界がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる超音波内視鏡を提供する。
本発明の目的を達成するために、本発明に係る超音波内視鏡は、体内に挿入される挿入部と、挿入部の先端に設けられた先端部本体と、先端部本体に備えられた処置具導出部であって、処置具導出口を含む処置具導出部と、先端部本体の先端側に設けられた超音波探触子であって、超音波探触子の基端側から先端側に向けて外側に凸状に湾曲した湾曲面を有する超音波探触子と、超音波探触子に設けられ、湾曲面の延長面よりも内側に形成された面によって構成される逃がし部であって、処置具導出口から導出された処置具との干渉を回避する逃がし部と、を備えている。
本発明によれば、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、処置具導出口と超音波探触子とを近接配置した場合でも、挿入部の挿入方向(先端部本体の軸方向)に対する処置具の導出方向の傾斜角度を、従来の超音波内視鏡と比較して小さくすることができる。これにより、本発明によれば、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
なお、湾曲面の延長面とは、湾曲面を延長した仮想の面である。この延長面を基準として内側に逃がし部を構成する面が形成される。逃がし部を構成する面としては、凹状の面、平坦状の面、及び湾曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径の面を例示することができる。このような逃がし部を超音波探触子に設けることにより、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、逃がし部は、凹状の面又は平坦状の面によって構成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、凹状の面又は平坦状の面によって逃がし部を構成することにより、処置具導出口から導出された処置具は、超音波探触子に干渉することなく逃がし部を通過して導出される。また、逃がし部を凹状の面又は平坦状の面とすることにより、超音波探触子に逃がし部を容易に設けることができる。
本発明の一態様は、超音波探触子は、超音波を送受信する送受信面を有する圧電素子と、圧電素子の送受信面を覆う音響レンズとを備え、音響レンズの外表面によって超音波探触子の湾曲面と逃がし部とが構成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、音響レンズの外表面に逃がし部を構成することで、逃がし部を超音波探触子に容易に設けることができる。
本発明の一態様は、音響レンズは、先端部本体の軸と直交する方向の断面が凸状の凸レンズにより構成され、凸レンズの外表面によって音響レンズの外表面が構成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、凸レンズの外表面によって構成される音響レンズの外表面に逃がし部を構成することができる。
本発明の一態様は、先端部本体には、先端部本体の軸に対して傾斜した壁部が設けられ、壁部に処置具導出部が設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、傾斜した壁面に設けた処置具導出部から処置具を導出する形態の超音波内視鏡であっても、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、処置具導出部は、壁部において先端部本体の外周側とは反対側の壁部の基部に設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、壁部において先端部本体の外周側とは反対側の壁部の基部に設けられた処置具導出部から処置具を導出する超音波内視鏡であっても、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、処置具導出部は、壁部において先端部本体の外周側に設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、壁部において先端部本体の外周側に設けられた処置具導出部から処置具を導出する超音波内視鏡であっても、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、壁部と超音波探触子との間には、処置具導出口から導出された処置具を逃がし部に向けてガイドするガイド部が設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、処置具導出口から導出された処置具は、ガイド部によってガイドされながら逃がし部に向けて導出される。このようなガイド部を設けることにより、処置具導出口から導出された処置具を、逃がし部に向けて円滑に案内することができる。本発明の態様は、処置具導出部が設けられた壁部から超音波探触子が離間して配置された超音波内視鏡に適用する場合に特に有利となる。
本発明の一態様は、ガイド部は、先端部本体の軸と直交する方向の断面形状が凹状であることが好ましい。
本発明の一態様によれば、処置具導出口から導出された処置具は、凹状のガイド部にガイドされながら逃がし部に向けて円滑に案内される。
本発明の一態様は、先端部本体には、先端部本体の軸に対して傾斜した壁部が設けられ、壁部と超音波探触子との間に処置具導出部が設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、壁部と超音波探触子との間に処置具導出部が設けられた超音波探触子であっても、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、処置具導出部と超音波探触子との間には、処置具導出口から導出された処置具を逃がし部に向けてガイドするガイド部が設けられることが好ましい。
本発明の一態様によれば、処置具導出口から導出された処置具は、ガイド部によってガイドされながら逃がし部に向けて導出される。このようなガイド部を設けることにより、処置具導出口から導出された処置具を、逃がし部に向けて円滑に案内することができる。本発明の態様は、処置具導出部から超音波探触子が離間して配置された超音波内視鏡に適用する場合に特に有利となる。
本発明の一態様は、ガイド部は、先端部本体の軸と直交する方向の断面形状が凹状であることが好ましい。
本発明の一態様によれば、処置具導出口から導出された処置具は、凹状のガイド部にガイドされながら逃がし部に向けて円滑に案内される。
本発明の一態様は、処置具導出部は、起立位置と倒伏位置との間で回動自在な起立台を有し、起立台は、処置具導出口から導出された処置具の導出方向を変更することが好ましい。
本発明の一態様によれば、起立台を有する処置具導出部であっても、超音波探触子に逃がし部が設けられているので、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
本発明の一態様は、逃がし部は、起立台が倒伏位置に位置された場合に、処置具導出口から導出された処置具との干渉を回避する位置に形成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、起立台を倒伏位置に位置させた場合に、処置具導出口から導出された処置具が、超音波探触子に干渉することなく逃がし部を通過して導出される。
本発明の一態様は、逃がし部は、処置具導出口から導出された処置具が通過する処置具導出領域に対して隙間を持って形成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、処置具導出口から導出された処置具は、超音波探触子を通過する場合に、超音波探触子に接触しないので、処置具の接触に起因する超音波探触子の損傷を防止することができる。
本発明の超音波内視鏡によれば、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波内視鏡の好ましい実施形態について詳説する。
図1は、第1実施形態の超音波内視鏡10を含む超音波検査システム1の全体構成図である。図2は、図1に示した超音波検査システム1の全体構成を示すブロック図である。
超音波検査システム1は、体内の内視鏡画像及び超音波画像を撮影する超音波内視鏡10と、超音波画像を生成する超音波用プロセッサユニット12と、内視鏡画像を生成する内視鏡用プロセッサユニット14と、体内を照明する照明光を超音波内視鏡10に供給する光源装置16と、内視鏡画像及び超音波画像を表示するモニタ18と、を備える。
超音波用プロセッサユニット12は、超音波内視鏡10の超音波探触子を構成する複数の圧電素子を駆動することにより、所定の周波数の超音波を複数の圧電素子の送受信面から観察対象物に向けて送信する。そして、超音波用プロセッサユニット12は、観察対象物から反射する超音波を送受信面で受信して得られる電気信号(超音波信号)を超音波探触子から取得し、各種信号処理を施すことにより超音波画像用の映像信号を生成する。なお、超音波探触子については後述する。
内視鏡用プロセッサユニット14は、超音波内視鏡10の内視鏡観察部の撮像素子を駆動制御することにより、撮像素子から伝送される撮像信号を取得し、各種信号処理を施すことにより内視鏡画像用の映像信号を生成する。なお、内視鏡観察部については後述する。
光源装置16は、超音波内視鏡10の内視鏡観察部による観察視野範囲を照明するために、内視鏡観察部の照明窓から出射する照明光を照明窓に供給する。
モニタ18は、超音波用プロセッサユニット12及び内視鏡用プロセッサユニット14によって生成された各映像信号を受信し、超音波画像及び内視鏡画像を表示する。モニタ18には、超音波画像及び内視鏡画像のうち一方の画像が表示されてもよく、両方の画像が同時に表示されてもよい。
超音波用プロセッサユニット12、内視鏡用プロセッサユニット14及び光源装置16は、図1の如くキャスター付きのカート20に搭載されて一体的に移動される。また、カート20の柱22にはモニタ18が保持されている。モニタ18は、柱22に設けられた不図示の回転機構及び高さ調節機構によって、その画面の方向及び高さが調節される。
次に、超音波内視鏡10について説明する。
第1実施形態の超音波内視鏡10として、コンベックス型の超音波内視鏡を例示するが、コンベックス型に限定されるものではなく、例えばコンケーブ型の超音波内視鏡(図18参照)であってもよい。
図1及び図2の如く、第1実施形態の超音波内視鏡10は、体内に挿入される挿入部24と、挿入部24の基端に連設された操作部26と、操作部26に基端が接続されたユニバーサルコード28とからなる。ユニバーサルコード28の先端には、超音波用プロセッサユニット12に接続されるコネクタ30と、内視鏡用プロセッサユニット14に接続されるコネクタ32と、光源装置16に接続されるコネクタ34と、が設けられている。超音波内視鏡10は、これらのコネクタ30、32、34を介して超音波用プロセッサユニット12、内視鏡用プロセッサユニット14及び光源装置16に着脱自在に接続される。
図2の如く、挿入部24は、先端側から順に、硬質部材で略円筒状に構成された先端部本体36と、先端部本体36の基端側に連設された湾曲部38と、湾曲部38の基端側と操作部26の先端側との間を連結し、細径かつ長尺の可撓性を有する軟性部40と、から構成される。すなわち、実施形態の超音波内視鏡10は、挿入部24の先端に先端部本体36が設けられている。操作部26は、挿入部24の湾曲部38を上下左右に湾曲操作するアングルノブ42と、吸引操作を行う吸引ボタン44と、送気送水操作を行う送気送水ボタン46と、後述する起立台48(図3、図4参照)を回動操作する起立レバー50と、を備えている。
図3は、先端部本体36の構成を示した斜視図であり、図4は、先端部本体36の軸Aに沿った先端部本体36の断面図である。また、図3、図4には、起立台48が倒伏位置に位置された先端部本体36が図示されている。また、図5は、起立台48が起立位置に位置された先端部本体36の軸Aに沿った断面図である。
本実施形態では、先端部本体36の軸Aが、挿入部24(図1参照)の長手方向の中心軸と一致している。なお、先端部本体36の軸Aは、挿入部24の長手方向の中心軸と必ずしも一致していなくてもよい。例えば、先端部本体36の軸Aが、挿入部24の長手方向の中心軸と平行であって、挿入部24の中心軸に対し挿入部24の中心軸に直交する方向にずれている形態であってもよい。
図3から図5に示す先端部本体36は、軸Aに対して傾斜した一対の壁面52A、52Bからなる壁部52を備える。壁部52の壁面52A、52Bは、先端側に向いた法線成分を有する。壁面52A、52Bの所定の位置に内視鏡観察部58の各部材が配置されている。
また、処置具導出部56は、壁部52において先端部本体36の外周36A側とは反対側の壁部52の基部52Cに設けられている。処置具導出部56が壁部52の基部52Cに設けられるとは、図4の紙面に直交する方向から処置具64を見た場合に、処置具64が壁部52の壁面52Aを通過する領域の中心点P1が、先端部本体36の外周36A側よりも基部52C側にオフセットされていることを言う。
ここで、図1及び図2に示した挿入部24の内部には、図4及び図5に示す穿刺針60とシース62とからなる処置具64を処置具導出口54まで導く処置具挿通チューブ66が配設される。処置具挿通チューブ66の基端は、図2の操作部26に設けられた処置具挿入口68に接続される。また、処置具挿通チューブ66の先端は、図4及び図5の如く、先端部本体36と湾曲部38(図2参照)との連結位置に配置された接続パイプ70の基端に接続される。接続パイプ70は、ステンレス等の金属製であり、その先端が先端部本体36に装着されて処置具導出口54に連通される。
図3から図5の如く、処置具導出部56は、処置具導出口54から導出された処置具64の先端、つまり、穿刺針60とシース62とからなる処置具64の先端を、体内に導出する開口部である。この処置具導出部56は、起立位置と倒伏位置との間で回動自在な起立台48を有し、起立台48は、処置具導出口54から導出された処置具64の導出方向を変更する。起立台48は、図2の操作部26に設けられた起立レバー50を操作することにより起立位置と倒伏位置と間で回動される。図3及び図4では、起立台48が倒伏位置に位置された場合の処置具64の導出方向を矢印B(以下、導出方向Bと称する。)で示しており、図5では、起立台48が起立位置に位置された場合の処置具64の導出方向を矢印Cで示している。なお、本実施形態では、処置具64として穿刺針60とシース62とからなるものを例示するが、これに限定されるものではなく、鉗子等の他の処置具であってもよい。
図3の如く、壁部52の壁面52A、52Bに配置される内視鏡観察部58は、観察窓58A、照明窓58B、58C及び洗浄用ノズル58Dによって構成される。一方の壁面52Aには、照明窓58Bが配置され、他方の壁面52Bには、観察窓58A、照明窓58C及び洗浄用ノズル58Dが配置される。
観察窓58Aを有する不図示の観察光学系は、観察窓58Aから観察視野範囲の被写体からの光を取り込み、先端部本体36の内部で被写体像を結像させる不図示の光学系部材を備える。先端部本体36の内部には、光学系部材によって結像された被写体像を撮像して撮像信号を生成する不図示の撮像素子が配置される。
照明窓58B、58Cを有する不図示の照明光学系は、光源装置16(図2参照)から不図示のライトガイドを介して伝送された照明光を、照明窓58B、58Cを介して観察視野範囲に出射する不図示の光学系部材を備える。
洗浄用ノズル58Dからは、図2の送気送水ボタン46を操作することにより、観察窓58Aに向けて液体又は気体が噴出される。
次に、超音波探触子72について図3から図5を参照して説明する。
超音波探触子72は、先端部本体36の先端側に設けられる。超音波探触子72は、超音波探触子72の基端側から先端側に向けて外側に凸状に湾曲した湾曲面73を有している。この超音波探触子72に逃がし部74が設けられている。逃がし部74については後述する。
超音波探触子72は、超音波を送受信する送受信面75Aを有する板状の複数の圧電素子75と、送受信面75Aを覆う音響レンズ76とを備える。音響レンズ76は、軸Aと直交する方向の断面が凸状の凸レンズ(図7参照)によって構成されている。よって、凸レンズの外表面によって音響レンズ76の外表面が構成され、音響レンズ76の外表面によって超音波探触子72の湾曲面73と逃がし部74とが構成されている。また、超音波探触子72は、複数の圧電素子75の底面側に設けられたバッキング材77を有している。
逃がし部74は、超音波探触子72に設けられており、図5の如く、軸Aに沿った断面に対して円弧状の湾曲面73の延長面73Aよりも内側に形成された面によって構成される。また、逃がし部74は、図4の如く処置具導出口54から導出された処置具64との干渉を回避する位置に設けられている。なお、湾曲面73の延長面73Aとは、湾曲面73を延長した仮想の面である。この延長面73Aを基準として内側に逃がし部74を構成する面が形成されている。
具体的に逃がし部74は、図3及び図4の如く、起立台48が倒伏位置に位置した場合に、処置具導出口54から導出された処置具64との干渉を回避する位置に形成される。また、逃がし部74は、超音波探触子72の基端側に設けられた凹状の面によって構成され、この凹状の面は延長面73Aよりも内側に形成されている。これにより、起立台48が倒伏位置に位置した図3及び図4の場合において、処置具導出口54から導出された処置具64は、処置具導出部56を通過し、超音波探触子72に干渉することなく逃がし部74を通過して、導出方向Bに導出される。
ここで、実施形態の超音波内視鏡10と従来の超音波内視鏡とを比較する。
従来の超音波内視鏡において、起立台48が倒伏位置に位置した図4の状態で処置具64を処置具導出口54から導出する場合には、処置具64が超音波探触子72に干渉しないように、処置具64の導出方向を矢印Dの方向(以下、導出方向Dと称する。)に設定する必要がある。軸Aに対する処置具64の導出方向B、Dの傾斜角度θ1、θ2を比較すると、超音波探触子72に逃がし部74を設けた本実施形態の超音波内視鏡10の傾斜角度θ1は、従来の超音波内視鏡の傾斜角度θ2よりも小さくなる。
これにより、本実施形態の超音波内視鏡10によれば、超音波探触子72に逃がし部74を設けたので、軸Aに沿って処置具導出口54と超音波探触子72とを近接配置しても、軸Aに対する導出方向Bの傾斜角度θ1を、従来の超音波内視鏡と比較して小さくすることができる。よって、本実施形態の超音波内視鏡10によれば、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体36のブレを抑制しつつ、先端部本体36の小型化を図ることができる。
一方、処置具64の導出に当たっては、逃がし部74の凹状の面をガイド面として処置具64を導出方向Bに導出させてもよい。また、図6の先端部本体36の斜視図の如く、逃がし部74の凹状の面に処置具64を接触させることなく処置具64を導出方向Bに導出させてもよい。この場合、逃がし部74は、処置具導出口54から導出された処置具64が通過する処置具導出領域78に対して隙間g(gap)を持って設けられる。このような位置に逃がし部74を設けることにより、先端部本体36を逃がし部74が設けられる側(図6の上側)から見たとき、逃がし部74を通過する処置具64は、超音波探触子72に接触しないので、処置具64の接触に起因する超音波探触子72の損傷を防止することができる。つまり、超音波探触子72を構成する音響レンズ76の外表面の損傷を防止することができる。なお、処置具導出領域78とは、導出方向Bに導出されたシース62が通過する円柱状の領域である。
図7は、軸Aと直交する方向の超音波探触子72の断面を簡略して示した図である。図7の如く、逃がし部74は、軸Aと直交する方向の超音波探触子72の断面において、円弧状に湾曲した凹状の面によって構成されている。また、図8に示す軸Aと直交する方向の超音波探触子72の断面図の如く、逃がし部74を矩形状の凹状の面によって構成してもよい。図7(図8も同様)に示す逃がし部74の幅Wを、少なくとも処置具導出領域78の直径Dよりも大きくすれば、傾斜角度θ1(図4参照)をより小さくすることができるのでより好ましい。
また、逃がし部74は凹状の面に限定されるものではない。すなわち、図9に示す先端部本体36の斜視図の如く、平坦状の面によって逃がし部74Aを構成してもよい。逃がし部74Aは、図5に示した逃がし部74と同様に、湾曲面73の延長面73Aよりも内側に形成された面によって構成される。
これにより、図9の処置具導出口54から導出された処置具64は、超音波探触子72に干渉することなく、逃がし部74Aを通過し導出方向Bに導出される。よって、平坦状の面により構成される逃がし部74Aを超音波探触子72に設けることによっても、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体36のブレを抑制しつつ、先端部本体36の小型化を図ることができる。
なお、図9に示した逃がし部74Aは、平坦状の面によって構成されているが、その面を曲面としてもよい。すなわち、図10の超音波探触子72の簡略断面図の如く、超音波探触子72の湾曲面73の曲率半径R1よりも曲率半径が大きい曲率半径R2の曲面によって逃がし部74Bを構成してもよい。この逃がし部74Bの曲面も、湾曲面73の延長面73Aよりも内側に形成されている。
なお、本発明の逃がし部を構成する面とは、湾曲面73の少なくとも一部を、湾曲面73の延長面73Aよりも内側に形成した面を指し、逃がし部74、74A、74Bの如く、凹状の面(図7及び図8参照)、平坦状の面(図9参照)及び曲面(図10参照)を含むものである。また、逃がし部は、前述の凹状の面(図7及び図8参照)、平坦状の面(図9参照)及び曲面(図10参照)に限定されるものではなく、湾曲面73の延長面73Aよりも内側に形成されているものであれば、軸Aに直交する方向の断面がV字状の面であってもよい。このような逃がし部を超音波探触子72に設けることにより、穿刺針等の処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
次に、他の実施形態に係る超音波内視鏡について説明する。
図11は、第2実施形態に係る超音波内視鏡の先端部本体80の構成を示した斜視図である。図12は、軸Aに沿った先端部本体80の断面図である。なお、先端部本体80を説明するに当たり、図3から図5に示した先端部本体36と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
図11及び図12に示す先端部本体80は、処置具導出口54を含む処置具導出部82が、壁部52において先端部本体80の外周80A側に設けられている。処置具導出部82が壁部52において先端部本体80の外周80A側に設けられているとは、図12の紙面に直交する方向から処置具64を見た場合に、処置具64が壁部52の壁面52Aを通過する領域の中心点P2が、壁部52の基部52C側よりも先端部本体80の外周80A側にオフセットされていることを言う。このように構成された先端部本体80であっても、超音波探触子72に逃がし部74が設けられているので、軸Aに沿って処置具導出口54と超音波探触子72とを近接配置しても、軸Aに対する導出方向Eの傾斜角度θ3を、従来の超音波内視鏡と比較して小さくすることができる。
特に、第2実施形態の超音波内視鏡では、先端部本体80の外周80A側に処置具導出部82を設けているので、処置具64の導出方向Eの傾斜角度θ3を、図4で示したθ1よりも小さくすることができる。よって、図11及び図12に示した先端部本体80によれば、図4の先端部本体36と比較して、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体80のブレを更に抑制することができる。
以上説明した第1及び第2の実施形態は、起立台48を備えた超音波内視鏡の形態であるが、起立台48を備えていない超音波内視鏡の他の実施形態を、図13から図17を用いて説明する。
図13は、第3実施形態に係る超音波内視鏡の先端部本体84の構成を示した斜視図である。図14は、軸Aに沿った先端部本体84の断面図である。なお、先端部本体84を説明するに当たり、図3から図5に示した先端部本体36と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
図13及び図14に示す先端部本体84は、壁部52の基部52Cに処置具導出口54を含む処置具導出部56を備えている。また、壁部52と超音波探触子72との間には、処置具導出口54から導出された処置具64を、超音波探触子72の逃がし部74に向けてガイドする第1ガイド部86が設けられている。なお、第1ガイド部86は、壁部52と超音波探触子72との間に設けられたものであり、本発明のガイド部の一例である。
第1ガイド部86は、処置具導出口54と逃がし部74とを連通するように、壁部52と超音波探触子72との間の平坦部88に形成されている。これにより、処置具導出口54から導出された処置具64は、第1ガイド部86によってガイドされながら逃がし部74に向けて導出方向Bに導出される。第1ガイド部86を先端部本体84に設けることにより、処置具導出口54から導出された処置具64を、逃がし部74に向けて円滑に案内することができる。このような第1ガイド部86は、処置具導出部56が設けられた壁部52から超音波探触子72が離間して配置された第3実施形態に適用することが好ましい。
また、第1ガイド部86は、軸Aと直交する方向の断面形状が凹状である。これにより、処置具導出口54から導出された処置具64は、凹状の第1ガイド部86にガイドされながら逃がし部74に向けて円滑に案内される。
なお、図13及び図14に示した第3実施形態の超音波内視鏡においても、図3から図5に示した逃がし部74が超音波探触子72に設けられているので、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体84のブレを抑制しつつ、先端部本体84の小型化を図ることができる。
図15は、第4実施形態に係る超音波内視鏡の先端部本体90の構成を示した平面図である。図16は、軸Aに沿った先端部本体90の断面図である。なお、先端部本体90を説明するに当たり、図3から図5に示した先端部本体36と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
図15及び図16に示す先端部本体90は、処置具導出口54を含む処置具導出部56が、壁部52と超音波探触子72との間に設けられている。また、処置具導出部56と超音波探触子72との間には、処置具導出口54から導出された処置具64を、超音波探触子72の逃がし部74にガイドする第2ガイド部92が設けられている。なお、第2ガイド部92は、処置具導出部56と超音波探触子72との間に設けられたものであり、本発明のガイド部の他の例である。
処置具導出部56及び第2ガイド部92は、壁部52と超音波探触子72との間の平坦部94に形成され、第2ガイド部92を介して、処置具導出口54と逃がし部74とが連通されている。これにより、処置具導出口54から導出された処置具64は、第2ガイド部92によってガイドされながら逃がし部74に向けて導出される。第2ガイド部92を設けることにより、処置具導出口54から導出された処置具64を、逃がし部74に向けて円滑に案内することができる。このような第2ガイド部92は、処置具導出部56から超音波探触子72が離間して配置された第4実施形態に適用することが好ましい。
また、第2ガイド部92は、軸Aと直交する方向の断面形状が凹状である。これにより、処置具導出口54から導出された処置具64は、凹状の第2ガイド部92にガイドされながら逃がし部74に向けて円滑に案内される。
なお、図15及び図16に示した第4実施形態の超音波内視鏡においても、図3から図5に示した逃がし部74が超音波探触子72に設けられているので、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体90のブレを抑制しつつ、先端部本体90の小型化を図ることができる。
図17は、第5実施形態に係る超音波内視鏡の先端部本体96の構成を示した斜視図である。なお、先端部本体96を説明するに当たり、図3から図5に示した先端部本体36と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
図17に示す先端部本体96は、先端部本体96の先端面98に、処置具導出口54を含む処置具導出部56と超音波探触子72とが、先端面98の面内方向に並んで配置されている。先端部本体96の先端面98は、軸Aに対して直交する方向に形成されており、先端面98の略中央位置に処置具導出部56が配置される。よって、処置具導出口54から導出される処置具64は、軸Aと略平行な方向に導出される。
また、超音波探触子72は、処置具導出部56に近接した基端側から、処置具導出部56から離間した先端側に向けて外側に凸状の湾曲面73を有し、超音波探触子72の基端側に逃がし部74が構成される。逃がし部74は、処置具導出口54から導出された処置具64との干渉を回避するために凹状の面によって構成されているが、平坦状の面によって構成されてもよい。
図17に示した第5実施形態の超音波内視鏡は、軸Aと略平行な方向に処置具64が導出される形態なので、処置具64を被検部に刺入したときに生じる先端部本体96のブレを抑制することができる。また、第5実施形態の超音波内視鏡では、超音波探触子72の基端側の湾曲面73のうち処置具導出口54と重なる一部の湾曲面を切り欠いて逃がし部74を構成している。これにより、処置具導出口54と超音波探触子72とを、先端面98の面内方向において近接配置することができるので、逃がし部74が形成されていない超音波探触子を先端部本体の先端面に設けた従来の超音波内視鏡(特許文献2の超音波内視鏡に相当)と比較して、先端部本体96の小径化を図ることができる。
次に、本発明の超音波内視鏡として、コンケーブ型の超音波内視鏡を適用した場合の実施形態について説明する。
図18は、コンケーブ型の超音波内視鏡の超音波探触子100の斜視図である。
超音波探触子100の音響レンズ102は、軸Aと直交する方向の断面が凹状の凹レンズによって構成されている。よって、凹レンズの外表面によって音響レンズ102の外表面が構成され、音響レンズ102の外表面によって超音波探触子100の湾曲面103と逃がし部74とが構成されている。
よって、コンケーブ型の超音波内視鏡であっても、超音波探触子100に逃がし部74を設けることによって、処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制しつつ、先端部本体の小型化を図ることができる。
次に、超音波探触子72に形成される逃がし部の参考例について説明する。
一例として、図19に示す超音波探触子72の如く、超音波探触子72にスリット状の逃がし部74Cを設けてもよい。この逃がし部74Cは、音響レンズ76、圧電素子(不図示)及びバッキング材の一部を貫通して形成されるものであり、不図示の処置具導出口から導出された処置具との干渉を回避する位置に設けられている。このようなスリット状の逃がし部74Cを超音波探触子72に設けた超音波探触子であっても、処置具を被検部に刺入したときに生じる先端部本体のブレを抑制することができる。