JP6652763B2 - 害虫防除剤、害虫の防除方法、形質転換効率促進剤、及び形質転換効率促進方法 - Google Patents

害虫防除剤、害虫の防除方法、形質転換効率促進剤、及び形質転換効率促進方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物抵抗性誘導制御剤、植物抵抗性誘導制御方法、植物病害の防除方法、害虫の防除方法、植物生育促進剤、微生物感染効率促進剤、及び導入遺伝子発現効率促進剤に関する。
本願は、2014年7月9日に、日本に出願された特願2014−141566号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
植物は糸状菌や細菌、ウィルスなど様々な病原微生物の侵入・攻撃を受ける。それらに対抗するために植物は防御機構を発達させている。防御機構には様々な段階があり、まず病原が侵入する前の段階では細胞壁による物理的障壁や葉の気孔開閉などにより病原侵入を阻止する。病原が侵入した後でも植物細胞が病原侵入を認識し、侵入個所に多糖類を蓄積することで感染の進行を阻害する機構を持つ(Ton and Mauch-Mani, 2009参照)。さらに、植物は病原の感染部位だけでなく、感染を受けた部位からシグナルを全身に伝達することで非感染部位においても抵抗性を強化する機構を持つ。この機構には植物ホルモンや多数の遺伝子の発現が関与している。
全身に抵抗性を誘導する機構として、植物ホルモンであるサリチル酸(salicylic acid; SA) がシグナル伝達に関与する全身獲得抵抗性(Systemic Acquired Resistance; SAR)があり、近年研究が進んでいる。SARによる防御応答は、植物自体の病害抵抗性を強化するために広範囲な病原に対抗することができることが明らかになっている。
SAは主に、生きた細胞から栄養をとる病原体である「活物寄生性病原菌」に対する抵抗性を誘導することが知られている。活物寄生性病原菌は植物細胞から養分を吸い取り、植物と共存する形態をとることが多い。活物寄生性病原菌としてイネいもち病菌がある。
SARを誘導する活性を有する化合物は抵抗性誘導剤または植物活性化剤として実用化され、主に我が国のイネの病害防除に有効な資材として活用されており、プロベナゾール(商品名オリゼメート)の例では、開発後30年以上経過しているにもかかわらず、年間100億円程度の売り上げがある。プロぺナゾールの他にもSARを誘導する活性を有する抵抗性誘導剤または植物活性化剤が複数あり、パリダマイシンA(VMA)、ベンゾチアジアゾール(BTH)、チアジニル(TDL)、イソチアニルなどが知られている。
一方、SARと異なる作用機構で働く病害抵抗性発現の仕組みも知られている。誘導抵抗性(Induced Systemic Resistance: ISR)は、SARと異なりSAには依存せず、植物ホルモンであるジャスモン酸(jasmonic acid:JA)に依存した病害抵抗性発現の経路により誘導されることが知られている(図4参照)。ISRでは、誘導される防御応答遺伝子及び抵抗対象として有効な病原体の種類もSARとは異なっていることが判明している。
JAは主に、死細胞から栄養をとる病原体である「腐生性病原菌」に対する抵抗性、及び害虫による食害等の「傷害」に対する防御応答を誘導する。代表的な腐生性病原菌として灰色かび病菌がある。灰色かび病菌はほとんど全ての植物に感染するとともに、薬剤耐性菌が非常に発生しやすい。しかし、SARを誘導する活性を有する化合物では腐生性病原菌に対する防除効果に乏しく、プロベナゾール等の既存の植物活性化剤では、灰色かび病菌のような腐生性病原菌に対して無効である。
従って、ISR系を誘導する活性を有する化合物があれば、既存のSAR系の抵抗性誘導剤では対処できないタイプの病害にも有効な新規な病害虫防除資材として活用できる可能性がある。しかし、これまでの研究では、商業的に利用可能な程度にそのような活性を有する低分子化合物は見出されていない。ベスタチン(Bestain)はJAシグナルを特異的に活性化させる化合物であると報告されている(非特許文献1)。また、これまでに、JA/ET シグナル伝達系による防御活性化誘導化合物として、ヘキサン酸,アラキドン酸,N-アシルアミド(アルカミド)などが知られている(非特許文献2〜4) 。これらはいずれも PDF1.2 や VSP2 を含む JA 応答性遺伝子の発現を誘導し、灰色かび病菌の病斑形成の抑制等に効果があることが、シロイヌナズナを用いて示されている。また、ヘキサン酸,アラキドン酸の処理においてはトマトにおいても同様にその病斑形成の抑制が観察されている(非特許文献5) 。これは、JA 系抵抗性誘導剤が灰色かび病防除に有効であることを示している。しかし、これらの薬剤の有効性は高濃度処理を必要とするなどの問題点もあり、JA系抵抗性誘導剤として実用化には至っていない。
Zheng W, Zhai Q, Sun J, Li CB, Zhang L, Li H, Zhang X, Li S, Xu Y, Jiang H, Wu X, Li C. Bestatin, an inhibitor of aminopeptidases, provides a chemical genetics approach to dissect jasmonate signaling in Arabidopsis. Plant Physiol. (2006) 141, 1400-1413. Kravchuk Z, Vicedo B, Flors V, Camanes G, Gonzalez-Bosch C, Garcia-Agustin P (2011) Priming for JA-dependent defenses using hexanoic acid is an effective mechanism to protect Arabidopsis against B. cinerea. J Plant Physiol 168: 359-366 Mendez-Bravo A, Calderon-Vazquez C, Ibarra-Laclette E, Raya-Gonzalez J, Ramirez-Chavez E, Molina-Torres J, Guevara-Garcia AA, Lopez-Bucio J, Herrera-Estrella L (2011) Alkamides activate jasmonic acid biosynthesis and signaling pathways and confer resistance to Botrytis cinerea in Arabidopsis thaliana. PLoS One 6 e27251 Savchenko T, Walley JW, Chehab EW, Xiao Y, Kaspi R, Pye MF, Mohamed ME, Lazarus CM, Bostock RM, Dehesh K (2010) Arachidonic acid: an evolutionarily conserved signaling molecule modulates plant stress signaling networks. Plant Cell 22: 3193-205 Vicedo B, Flors V, de la O Leyva M, Finiti I, Kravchuk Z, Real MD, Garcia-Agustin P, Gonzalez-Bosch C (2009) Hexanoic acid-induced resistance against Botrytis cinerea in tomato plants. Mol Plant Microbe Interact 22:1455-65
上記のように、JAシグナルを活性化させる化合物は複数報告されているが(非特許文献1〜5)、抵抗性誘導はそれほど高くなく実用化には至っていない。このような経緯から、ISR系を誘導する活性を有する新規化合物の発見と病害虫防除への応用が期待されている。また、JAシグナル系を活性化させることにより、SAR系が抑制されることが知られており、効力が高いJAシグナル活性化物質によってSAR系防御応答発現を制御し、結果として植物体の生育や病原体を用いた外来遺伝子発現効率の向上も期待できる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、植物抵抗性誘導制御活性に優れる植物抵抗性誘導制御剤の提供を課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の特徴を有する植物抵抗性誘導制御剤、植物抵抗性誘導制御方法、植物病害の防除方法、害虫の防除方法、植物生育促進剤、微生物感染効率促進剤、及び導入遺伝子発現効率促進剤を提供する。
[1]下記一般式(3−2)、(3−3)、若しくは(3−4)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する害虫防除剤。
[式中、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。
は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表し、
は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又はハロゲン原子を表す。
nはRの数を表し、0又は1である。mはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、mが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n+mは5以下の整数である。pはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、pが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[2]前記[1]に記載の害虫防除剤を用いて害虫を防除する害虫の防除方法。
[3]アグロインフィルトレーション法によって形質転換される植物に対して施用される形質転換効率促進剤であって、下記一般式(3−2)、(3−3)、若しくは(3−4)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する形質転換効率促進剤(ただし、植物病原菌の増殖抑制剤を除く)
[式中、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。
は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表し、
は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又はハロゲン原子を表す。
nはRの数を表し、0又は1である。mはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、mが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n+mは5以下の整数である。pはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、pが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[4]請求項3に記載の形質転換効率促進剤を、アグロインフィルトレーション法によって形質転換される植物に施用する、形質転換効率促進方法(ただし、植物病原菌の増殖抑制方法を除く)
本発明の植物抵抗性誘導制御剤によれば、植物病害を低減することができる。また、本発明の植物抵抗性誘導制御方法によれば、対象となる植物に植物抵抗性誘導制御剤を暴露するという簡易な方法で、植物病害を低減することができる。また、この方法によって、対象となる植物が病原菌に感染することを防除(予防又は治療ともいう)することができると共に、害虫に対して優れた防除効力を発揮する。
また、植物抵抗性誘導制御剤は、植物生育促進剤として使用でき、これによって植物の生育を促進させることが出来る。
また、植物抵抗性誘導制御剤は、微生物感染効率促進剤として使用でき、これによってSAR系防御応答発現を抑制し、植物体への人為的な微生物感染効率を向上させることができ、植物体へ遺伝子が導入された場合には、その導入遺伝子の発現効率を向上させることが出来る。
シロイヌナズナ成熟個体において、灰色かび病菌に対する化合物Xの防除効果を評価した結果である。 トマト成熟個体において、灰色かび病菌に対する化合物Xの防除効果を評価した結果である。 キュウリ成熟個体において、灰色かび病菌に対する化合物Xの防除効果を評価した結果である。 病害抵抗性に関わるシグナル伝達経路を説明する図である。 PR-1a::Flucを有するシロイヌナズナに対する化合物X処理による、SA応答性遺伝子発現の測定結果である。 キャベツに対する化合物X処理による、生育促進効果の観察結果を示す写真である。 タバコに対する化合物X処理による、微生物感染効率と導入遺伝子発現効率向上効果を評価した結果である。
以下、本発明の好ましい例を説明するが、本発明はこれら例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。以下、本発明についてより詳細に説明する。
≪植物抵抗性誘導制御剤≫
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する。
[式(1)中、
、X、X、X、X、X、X、X、X及びX10は、それぞれ独立して、CH又はNを表し(但し、X、X、X、X及びXのいずれか2以上がNとなることはなく、X、X、X、X及びX10のいずれか2以上がNとなることはない。)、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。
は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表し、
は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又はハロゲン原子を表す。
nはRの数を表し、0又は1である。mはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、mが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n+mは5以下の整数である。pはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、pが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。]
及びRは、それぞれ独立して、CHであるX、X、X、X及びXのいずれかの水素原子(H)を置換している。
は、それぞれ独立して、CHであるX、X、X、X及びX10のいずれかの水素原子(H)を置換している。
の前記ハロゲン原子は、F,Cl, Br, I等の周期表において第17族に属する元素である。
の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の前記ハロアルキル基は、少なくとも一つの水素原子が独立して選ばれるハロゲン原子で置換されているアルキル基である。ハロゲン原子は前記ハロゲン原子と同様であり、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を例示できる。炭素数1〜4のハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基等が挙げられ、トリフルオロメチル基が好ましい。
の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、Rのハロアルキル基で説明した炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基と同様である。Rの炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数1〜3が好ましく、炭素数1又は2がより好ましい。
の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の前記アルケニル基は、炭素数2〜3が好ましい。前記アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)が例示できる。
、Rにおける炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、Rのハロアルキル基で説明した前記アルキル基と同様である。
、Rにおける炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基は、Rにおける前記アルケニル基と同様である。
の前記ハロゲン原子は、F,Cl, Br, I等の周期表において第17族に属する元素であり、Fが好ましい。
式(1)において、R、R、R、Rの好ましい組み合わせとしては、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがフッ素原子である組み合わせ、を例示できる。
一般式(1)で表される化合物は塩であってもよく、その塩は農業上許容可能な塩であることが好ましい。例えば、X〜Xのうちのいずれか一つがNであって残りがCHである場合、一般式(1)で表される化合物はピリジン環を有する化合物となる。その場合、前記塩としては、当該ピリジンが酸と反応して、塩を形成したものが挙げられる。また、当該塩は水溶性であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物において、X〜XがCHである場合、下記一般式(1−1)で表される化合物が挙げられる。
[式中、X、X、X、X、X、X10、R、R、R、R、n、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
一般式(1)で表される化合物において、X〜X、X〜X10がCHである場合、下記一般式(1−2)で表される化合物が挙げられる。
[式中、X、X、R、R、R、R、n、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2−1)〜(2−3)で表される化合物を包含する。
[式中、X、X、R、R、R、R、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
及びXがCHである場合、前記一般式(1−2)で表される化合物としては、下記一般式(3−1)で表される化合物が挙げられる。
がNであり、XがCHである場合、前記一般式(1−2)で表される化合物としては、下記一般式(3−2)で表される化合物が挙げられる。
がCHであり、XがNである場合、前記一般式(1−2)で表される化合物としては、下記一般式(3−3)で表される化合物が挙げられる。
及びXがNの場合、前記一般式(1−2)で表される化合物としては、下記一般式(3−4)で表される化合物が挙げられる。
[式中、R、R、R、R、n、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
前記一般式(3−2)で表される化合物において、R、R、R、Rの好ましい組み合わせとしては、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがフッ素原子である組み合わせ、を例示できる。
前記一般式(3−2)で表される化合物としては、下記一般式(3−2−1)〜(3−2−3)で表される化合物が挙げられる。
[式中、R、R、R、R、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
前記一般式(3−4)で表される化合物において、R、R、R、Rの好ましい組み合わせとしては、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがハロアルキル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが0である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがハロゲン原子である組み合わせ、
nが1であってRがトリフルオロメチル基、mが0であり、Rが水素原子、pが1であってRがフッ素原子である組み合わせ、を例示できる。
前記一般式(3−4)で表される化合物としては、下記一般式(3−4−1)〜(3−4−3)で表される化合物が挙げられる。
[式中、R、R、R、R、m及びpは、前記一般式(1)におけるものと同じである。]
前記一般式(1)で表される化合物又はその塩のより具体的な例としては、以下の化合物又はその塩を挙げることができる。また、それらの化学構造を以下に示す。なお、前記一般式(1)で表される化合物は以下の例に限定されない。
N−(ピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−1の化合物)、
N−(ピリジン−2−イル)−4−メチルピリジン−2−スルホンアミド(式1−1−2の化合物)、
N−(5−イソプロピルピリジン−2−イル)−4−クロロベンゼンスルホンアミド(式1−1−3の化合物)、
N−(5−クロロピリジン−2−イル)ピリジン−3−スルホンアミド(式1−1−4の化合物)、
N−(2−クロロ−3−メチルピリジン−6−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−5の化合物)、
N−(4−クロロピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−6の化合物)、
N−(5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−7の化合物)、
N−メチル−N−(5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド(式1−1−8の化合物)、
N−(6−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)ピリジン−3−スルホンアミド(式1−1−9の化合物)、
N−(6−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−2−フルオロベンゼンスルホンアミド(式1−1−10の化合物)、
N−(6−シアノピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−11の化合物)、
N−(3−シアノ−2−イソプロピルピリジン−6−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−12の化合物)、
N−(4−シアノピリジン−2−イル)ピリジン−4−スルホンアミド(式1−1−13の化合物)、
N−(6−ニトロピリジン−2−イル)−3−メチルベンゼンスルホンアミド(式1−1−14の化合物)、
N−(5−ニトロピリジン−2−イル)ピリジン−3−スルホンアミド(式1−1−15の化合物)、及び、
N−(4−ニトロピリジン−2−イル)−N−ビニルベンゼンスルホンアミド(式1−1−16の化合物)。
上記に挙げた、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩の具体例としては、特に、N−(5−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(式1−1−7の化合物)、N−(6−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)ピリジン−3−スルホンアミド(式1−1−9の化合物)、若しくはN−(6−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)−2−フルオロベンゼンスルホンアミド(式1−1−10の化合物)、又はその塩が好ましい。
本発明の一態様としては、前記一般式(1−1−7)、(1−1−9)、及び(1−1−10)で表される化合物並びにそれらの塩からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を有効成分として含有する植物抵抗性誘導制御剤が挙げられる。
本発明の一態様としては、前記一般式(1−1−7)で表される化合物及びそれらの塩からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を有効成分として含有する植物抵抗性誘導制御剤が挙げられる。
本発明の一態様としては、前記一般式(1−1−9)で表される化合物及びそれらの塩からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を有効成分として含有する植物抵抗性誘導制御剤が挙げられる。
本発明の一態様としては、前記一般式(1−1−10)で表される化合物及びそれらの塩からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を有効成分として含有する植物抵抗性誘導制御剤が挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、前記一般式(1)で表される化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明の有効成分は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、前記一般式(1)で表される化合物は、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明の有効成分は、前記一般式(1)で表される化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
前記一般式(1)の化合物の塩とは、前記一般式(1)の化合物の農業上許容可能な塩であることが好ましく、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体の塩やアンモニウム塩等が挙げられ、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩が好ましい。
さらに本発明の有効成分は、前記一般式(1)の化合物及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明の有効成分は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
本発明において、前記一般式(1)の化合物及びその塩は、市販された化合物及びその塩を使用することができる。また、前記一般式(1)の化合物及びその塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で、当業者によく知られた適切な保護基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。
以下、前記一般式(1)の化合物の代表的な製造法を説明するが、本発明の有効成分の製造法は、以下に示した例には限定されない。
なお、前記一般式(1)の化合物は、遊離化合物、その塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として製造されうる。前記一般式(1)の化合物の塩は、当業者によく知られた造塩反応に付すことにより製造することもできる。前記一般式(1)の化合物の単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行われる。
(第一製法)
(式中の記号は、前記と同一の意味を表す。式(A1)中のXはハロゲン原子を表し、好適にはクロロ若しくはブロモ、さらに好適にはクロロである。)
本製法は、ハロゲン化スルホニル化合物(A1)とアミン化合物(A2)とをスルホニルアミド化することにより、前記一般式(1)で表される化合物を製造する方法である。
スルホニルアミド化は、当業者によく知られた手法を用いることができ、例えば、化合物(A1)と化合物(A2)とを当量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を縮合剤若しくは塩基の存在下、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは−20℃〜60℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌して行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、又は水、及びこれらの混合物が挙げられる。縮合剤としては、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ジフェニルリン酸アミド、オキシ塩化リン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いることが反応を円滑に進行させる上で有効な場合がある。塩基としては、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムエトキシド等の無機塩基を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(第二製法)
(式中の記号は、前記と同一の意味を表す。Lvは脱離基を表し、好適にはハロゲン、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシであり、より好適には、フルオロ、クロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、トリフルオロベンゼンスルホニルオキシである。)
本製法は、スルホンアミド化合物(B1)とアリール化合物(B2)とから前記一般式(1)で表される化合物を製造する方法である。
好適には、イプソ置換反応に付すことにより、前記一般式(1)で表される化合物が製造される。イプソ置換反応は当業者によく知られた手法を用いることができ、例えば、化合物(B1)と化合物(B2)とを当量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱下、好ましくは0℃〜80℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌して行われる。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒類、エステル類、ニトリル類、及びこれらの混合物が挙げられる。有機塩基や無機塩基の存在下で反応を行うことが反応を円滑に進行させる上で有効な場合がある。
また、イプソ置換反応に代えて、遷移金属を用いたカップリング反応により、前記一般式(1)で表される化合物を製造することもできる。カップリング反応は当業者によく知られた手法を用いることができ、遷移金属としてはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化パラジウム−1−1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のパラジウム触媒が好適に用いられる。この際、無機塩基が好適に併せて用いられる。
(原料合成)
ハロゲン化スルホニル化合物(A1)は、対応するスルホン酸化合物を当業者によく知られた方法、例えばハロゲン化反応に付することで製造することができる。前記スルホン酸化合物は、対応するアミノ化合物を当業者によく知られた方法、例えばザンドマイヤー反応に付することで製造することができる。前記アミノ化合物は、対応するニトロ化合物を当業者によく知られた方法、例えば還元反応に付することで製造することができる。
R3が水素原子ではないスルホンアミド化合物(B1)は、R3が水素原子であるスルホンアミド化合物(B1)を当業者によく知られた方法、例えばN−アルキル化、N−アルケニル化反応に付することで製造することができる。前記R3が水素原子であるスルホンアミド化合物(B1)は、ハロゲン化スルホニル化合物(A1)を当業者によく知られた方法、例えば、アンモニア若しくは保護されたアミンとのスルホンアミド化反応に付することで製造することができる。保護されたアミンとのスルホンアミド化反応により製造された場合には、必要に応じて保護基の脱離反応を行う。
R3が水素原子ではないスルホンアミド化合物(B1)は、ハロゲン化スルホニル化合物(A1)と、R3基を有する一級アミン、若しくはR3基とさらに保護基を有する二級アミンとのスルホンアミド化反応により製造することもできる。R3基とさらに保護基を有する二級アミンとのスルホンアミド化反応により製造された場合には、必要に応じて保護基の脱離反応を行う。
前記一般式(1)の化合物は、文献(H. Nakayama et al., “Synthesis of N-(Trifluoromethyl-2-pyridinyl)arenesulfonamides as an Inhibitor of Secretory Phospholipase A2” Chemical and Pharmaceutical Bulletin (2011) Vol. 59 No. 6,p783-786.)や、文献(T. Gelbrich et al., “Structural systematics of 4,4'-disubstituted benzenesulfonamidobenzenes. 1. Overview and dimer-based isostructures” Acta Crystallographica Section B (2007). Vol. 63, Part 4, p621-632.)を参考にして製造してもよい。
本発明及び本願明細書における植物抵抗性誘導制御とは、植物の病害抵抗性又は害虫抵抗性を誘導する、強化する、促進する、および維持することを含む。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、病害抵抗性の誘導を制御するので、植物病害防除剤としても提供可能である。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、害虫抵抗性の誘導を制御するので、害虫防除剤としても提供可能である。
植物の病害抵抗性若しくは害虫抵抗性を、誘導する、強化する、及び促進するとは、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、有意に植物抵抗性若しくは害虫抵抗性の発現を向上させることを意味する。
植物の病害抵抗性又は害虫抵抗性を維持するとは、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、有意に植物抵抗性若しくは害虫抵抗性の発現を長く持続させることを意味する。
植物における病害抵抗性の発現は、後述の実施例に示すように、例えば、以下の指標により判断できる。
「1」JA応答経路で特異的に発現誘導される遺伝子の発現を指標とし、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、該遺伝子の発現が有意に向上していた場合に、病害抵抗性の発現を判断できる。
「2」植物病の状態の程度を指標とし、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、植物病の病態が有意に改善していた場合に、病害抵抗性の発現を判断できる。
植物における害虫抵抗性の発現は、後述の実施例に示すように、例えば、以下の指標により判断できる。
「3」JA応答経路で特異的に発現誘導される遺伝子の発現を指標とし、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、該遺伝子の発現が有意に向上していた場合に、害虫抵抗性の発現を判断できる。
「4」植物体の摂食被害の状態の程度を指標とし、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、植物体の摂食被害の状態が改善していた場合に、害虫抵抗性の発現を判断できる。
「5」植物抵抗性誘導制御剤の処理区における害虫等の生物の生息状態を指標とし、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物抵抗性誘導制御剤が処理された植物において、植物抵抗性誘導制御剤の処理区における害虫等の生物の生息数が低い場合に、害虫抵抗性の発現を判断できる。
本発明及び本願明細書における植物病害の防除とは、植物病の原因となる菌に対する不活化効果、植物病の原因となる菌への感染防止効果、及び植物病の原因となる菌の増殖の抑制若しくは阻止の効果を含む。
本発明及び本願明細書における害虫の防除とは、有害生物を衰弱させる効果、有害生物を死滅させる効果、及び有害生物を忌避させる効果、を含むものである。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用対象となる植物の種類は、前記ISR系が誘導されることにより抵抗性を獲得できる植物であれば特に制限されず、陸上植物であっても水生植物であってもよい。陸上植物としては、被子植物、裸子植物が好適であり、草本であっても木本であってもよい。被子植物としては、バラ科、ミカン科、ブドウ科、キク科、ラン科、ユリ科、マメ科、イネ科、アカネ科、トウダイグサ科、カヤツリグサ科、セリ科、シソ科、ウリ科、ナス科、及びアブラナ科がより好適であり、ナス科、ウリ科及びアブラナ科が更に好適である。
前記ユリ科の植物としては、タマネギが例示できる。前記マメ科の植物としては、大豆が例示できる。前記セリ科の植物としては、ニンジンが例示できる。前記イネ科の植物としては、例えばイネ、トウモロコシ、ムギ、コムギ等が挙げられる。前記ウリ科の植物としては、例えばメロン、スイカ、冬瓜、キュウリ、カボチャなどが挙げられる。前記ナス科の植物としては、例えばタバコ、トマト、ジャガイモ、ナス、ピーマンなどが挙げられる。前記アブラナ科の植物としては、例えばナズナ、アブラナ、キャベツ、ケール、ハクサイ、カブ、ダイコン、ワサビ、カラシなどが挙げられる。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用対象となる、好ましい植物として、トマト、タバコ、キュウリ、ナズナ、及びアブラナが挙げられる。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、必要に応じ、農業上許容可能な担体、増量剤等と混合して、粉剤、錠剤、粒剤、微粒剤等の製剤形態で提供されてもよい。あるいは、農業上許容可能な溶媒、界面活性剤、乳化剤、分散剤等と混合して、乳剤、液剤、懸濁剤、水和剤、水溶剤、油剤等の剤型にすることもできる。
植物抵抗性誘導制御剤を溶解させる溶媒は、植物抵抗性誘導制御剤や植物の種類に応じて適宜選択すればよいが、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド化合物;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド化合物等、親水性溶媒が好ましいものとして例示できる。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、他の農園芸用剤と併用されるような剤型で提供されてもよい。
例えば、本発明の植物抵抗性誘導制御剤と、ベスタチン、ヘキサン酸、アラキドン酸、N−アシルアミド等のその他のJA系抵抗性誘導制御剤との、合剤、組み合わせ製剤等の剤型で提供されてもよい。
また例えば、本発明の植物抵抗性誘導制御剤と、公知のSAR系抵抗性誘導制御剤の、合剤、組み合わせ製剤等の剤型で提供されてもよい。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用による防御の対象となる病原体は、特に制限されないが、ISR系の誘導を引き起こすか、ISR系の誘導により防御され得る病原体であることが好ましい。又は、ISR系の誘導を引き起こし、且つISR系の誘導により防御され得る病原体であることが好ましい。このような観点から、本発明の植物抵抗性誘導制御剤によって防御対象となる病原体は、腐生性病原菌であることがより好ましい。腐生性病原菌としては、灰色かび病菌(Botrytis cinerea),ジャガイモ炭そ病菌(Colletotrichum atramentarium),キュウリ炭そ病菌(Colletotrichum lagenarium),トマト疫病菌(Phytophthora infestans),ムギ類立枯病菌(Gaeumannomyces graminis),軟腐病菌(Erwinia carotovora),黒点病菌(Diplocarpon rosae),腐らん病菌(Valsa ceratosperma),胴枯病菌(Cryphonectria parasitica),麦角病菌(Claviceps purpurea),ナシ黒斑病菌(Alternaria alternata),褐紋病菌(Mycosphaerella pinodes),イネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus),斑点病菌(Stemphylium lycopersici),菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、,モニリア病菌(Monilinia sp.),葉かび病菌(Passalora fulva),キュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. cucumerinum),萎凋病菌(Fusarium oxysporum),ブナ科樹木萎凋病菌(Raffaelea quercivora),緑かび病菌(Penicillium digitatum),青かび病菌(Penicillium italicum),カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris pv. citri),青枯病菌(Ralstonia solanacearum)などの病原菌を例示することができる。なかでも、Alternaria属のAlternaria alternata菌、Botrytis属のBotrytis cinerea菌を代表的な腐生性病原菌をとして例示できる。
なかでも、本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用による防御の対象となる病原体として、腐生性病原菌であるAlternaria属の菌、腐生性病原菌であるBotrytis cinerea、Botrytis byssoidea、Botrytis squamosa、Botrytis allii等のBotrytis属の菌を好適に例示できる。なかでも、Alternaria属のAlternaria alternata、Botrytis属のBotrytis cinerea菌を好適な使用対象として例示でき、トマト灰色かび病菌(Botrytis cinerea)又はキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)を特に好適な使用対象として例示できる。
腐生性病原菌としては、周囲の環境により条件的に腐生性となる腐生性病原菌も包含する。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用による防除の対象となる害虫等の生物は、特に制限されない。上述のように、ISR系は害虫による食害等の「傷害」に対する防御応答を誘導する。したがって、本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、防除剤として、植物を摂食する昆虫やダニ等の、広範囲の種類の害虫等の生物にも適用することができる。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤の使用による防除の対象となる害虫等の生物としては、アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)等の甲虫目害虫、コナガ(Plutella xylostella)、モンシロチョウ(Pieris rapae)等の鱗翅目害虫、イエバエ(Musca domestica)、ウリミバエ(Dacus cucurbitae)等の双翅目害虫、アオクサカメムシ(Nezara antennata)半翅目害虫、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)等のアザミウマ目害虫、トノサマバッタ(Locusta migratoria)等の直翅目害虫、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)等のゴキブリ目害虫、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)等のダニ目害虫、サツマイモネコブセンチュウ (Meloidogyne incognita)等の線虫類などの各種農業害虫を含む。林木害虫としては、甲虫目害虫が挙げられ、カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)等のナガキクイムシ科害虫、マツノキクイムシ(Tomicus piniperda)等のキクイムシ科害虫が挙げられ、その他、マツノマダラカミキリ(Mochamus alternatus)やカラフトヒゲナガカミキリ(M. saltuaris)等が属するヒゲナガカミキリ属(Mochamus)害虫などを例示することができる。
後述する実施例において、本発明にかかる植物抵抗性誘導制御剤により、コナガ(Plutella xylostella)及びモモアカアブラムシ(Myzus persicae)に対する防除効果が認められたことから、本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、コナガに代表される鱗翅目(Lepidoptera)に属する害虫に対して適用されることが好ましく、コナガ科(Plutellidae)の害虫に対して適用されことがより好ましい。また、後述する実施例において、本発明にかかる植物抵抗性誘導制御剤により、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)に対する防除効果が認められたことから、本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、モアカアブラムシに代表される半翅目(Hemiptera)に属する害虫に対して適用されることが好ましく、アブラムシ上科(Aphidoidea)の害虫に対して適用されることがより好ましい。
本発明は、上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を適用対象の植物に接触させる、植物抵抗性誘導制御方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、植物抵抗性誘導制御のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を提供する。
一実施形態において、本発明は、植物抵抗性誘導制御のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、植物抵抗性誘導制御剤を製造するための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
植物抵抗性誘導制御剤は、有効量を適用対象の植物に接触させることで、抵抗性を誘導できる。
植物抵抗性誘導制御剤の有効量を植物に接触させる方法は、公知の誘導剤の場合と同様でよく、植物、植物を栽培する土壌、又は植物を栽培する水耕液に施用する処理方法が挙げられる。処理方法としては、例えば、植物が生育している土壌に植物抵抗性誘導制御剤を散布する方法、土壌混和する方法、土壌潅注する方法、植物抵抗性誘導制御剤を溶解させた植物抵抗性誘導制御剤溶液を植物に塗布又は噴霧する方法、該植物抵抗性誘導制御剤溶液中で植物を生育させる方法、水耕液へ植物抵抗性誘導制御剤を混入する方法、が例示できる。
本発明の植物の抵抗性誘導制御方法において、植物抵抗性誘導制御剤を処理又は投与する植物体の部位は特に制限されない。例えば、植物体が有する全ての葉や茎、根の全体に噴霧してもよいし、一部の葉や一部の茎、一部の根だけに噴霧してもよい。植物体全体に噴霧しない場合にも、噴霧された部位において生産された二次代謝物が、植物体の必要な箇所へ行き渡って、噴霧されていない部位においても病害虫に対する抵抗性が獲得されうる。また、土壌処理、浸漬処理などにより根系から植物体へ浸透させることによっても病害虫に対する抵抗性が獲得されうる。
植物抵抗性誘導制御剤の使用量は、誘導制御剤や植物の種類に応じて適宜調節できる。土壌に誘導制御剤を散布、混和又は潅注する方法で処理する場合には、例えば、一回あたりの有効成分の使用量を1〜20kg/10a、1〜10kg/10a、1〜1.3kg/10aとし、植物が発芽してから収穫されるまでの期間中、年に一回、又は必要に応じて複数回使用できる。複数回使用する場合は、年に2〜6回、月に1〜3回の頻度で使用することが好ましい。
また、前記誘導制御剤溶液を植物の茎葉に塗布又は噴霧する方法で処理する場合、誘導制御剤溶液に含まれる前記一般式(1)で表される化合物又はその塩の濃度は、0.1〜500μM、1〜500μM、1〜300μM、1〜100μMが好ましく、10〜50μMがより好ましい。例えば、濃度が0.1〜500μM又は1〜500μMの誘導制御剤溶液の一回あたりの使用量を葉一枚あたり1〜1000μLとし、植物が発芽してから収穫されるまでの期間中、年に一回、又は必要に応じて複数回使用できる。複数回使用する場合は、年に2〜6回、月に1〜3回の頻度で使用することが好ましい。
水耕栽培など、前記誘導制御剤溶液中で植物を生育させる方法で処理する場合の誘導制御剤溶液に含まれる前記一般式(1)で表される化合物又はその塩の濃度は、0.1〜500μMが好ましく、1〜500μMが好ましく、1〜300μMがより好ましく、1〜100μMがさらに好ましく、10〜50μMが特に好ましい。例えば、濃度が0.1〜500μM又は1〜500μMの誘導制御剤溶液の一回あたりの使用量を植物体1個体あたり1〜1000μLとし、植物が発芽してから収穫されるまでの期間中、年に一回、又は必要に応じて複数回使用できる。複数回使用する場合は、年に2〜6回、月に1〜3回の頻度で使用することが好ましい。
本発明の抵抗性誘導制御剤の使用のタイミングは、植物体の播種時、移植時又は定植時のいずれの時期でも使用可能である。また、種、芽生え、幼体、成熟個体のいずれの成長段階でも施用可能である。
トマトの場合、例えば、発芽後20日以降〜収穫14日前までに1〜3回回施用されることが挙げられる。
キュウリの場合、例えば、発芽後20日以降〜収穫14日前までに1〜3回施用されることが挙げられる。
キャベツの場合、例えば、発芽後20日以降〜収穫14日前までに1〜3回施用されることが挙げられる。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、他の農園芸用剤と組み合わせて用いられてもよい。植物抵抗性誘導制御剤および他の農園芸用剤を同時に使用されてもよいし、別々に使用されてもよい。
例えば、本発明の植物抵抗性誘導制御剤と、ベスタチン、ヘキサン酸、アラキドン酸、N−アシルアミド等の、その他のJA系抵抗性誘導制御剤とを併用して用いてもよい。
また例えば、本発明の植物抵抗性誘導制御剤と、公知のSAR系抵抗性誘導制御剤とを、併用して用いてもよい。
植物抵抗性誘導制御剤は、害虫の発生又は植物病の発病後に、植物抵抗性誘導制御剤を植物体に接触させてもよい。また、植物抵抗性誘導制御剤は、予防的に用いられてもよく、害虫の発生又は植物病の発病前に、植物抵抗性誘導制御剤を植物体に接触させてもよい。
本発明の抵抗性誘導制御剤は、従来のJA系抵抗性誘導制御剤と比較して、低濃度での有効成分の処理で良好な抵抗性誘導が可能である。
≪植物生育促進剤≫
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、植物生育促進剤としても利用可能である。
SAR応答と植物体の矮化は密接に関係し、SAR応答誘導下においてはバイオマスの低下が起こることが知られている。後述する実施例において示されるように、本発明に係る植物生育促進剤は、SAR系防御応答遺伝子発現の抑制的制御活性を有する。したがって、本発明の植物育成促進剤によれば、植物の生育促進効果が得られる。植物生育促進剤としては、植物抵抗性誘導制御剤において説明したものと同様のものが例示できるため、説明を省略する。
本発明の植物生育促進剤は、他の農園芸用剤と併用されるような剤型で提供されてもよい。
例えば、本発明の植物生育促進剤と、その他の公知の植物生育促進効果を有する化合物との、合剤、組み合わせ製剤等の剤型で提供されてもよい。
本発明の植物生育促進剤は、他の農園芸用剤と組み合わせて用いられてもよい。植物生育促進剤および他の農園芸用剤を同時に使用されてもよいし、別々に使用されてもよい。
例えば、本発明の植物生育促進剤と、その他の公知の植物生育促進効果を有する化合物とを併用して用いてもよい。
本発明の植物生育促進剤は、植物生育促進効果を有する。植物における植物生育促進効果の発現は、後述の実施例に示すように、例えば、以下の指標により判断できる。
「1」植物体の成長速度を指標とし、本発明の植物生育促進剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物生育促進剤が処理された植物において、植物体の成長速度が有意に増加していた場合に、植物生育促進効果の発現を判断できる。
「2」特定の時点における植物体のバイオマスを指標とし、本発明の植物生育促進剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の植物生育促進剤が処理された植物において、特定の時点における植物体のバイオマスが有意に増加していた場合に、植物生育促進効果の発現を判断できる。
一実施形態において、本発明は、植物生育促進剤を植物に接触させることを含む植物生育促進方法を提供する。係る方法は、植物抵抗性誘導制御剤を植物に接触させる方法において説明したものと同様の方法が例示できるため、説明を省略する。
一実施形態において、本発明は、植物生育促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を提供する。
一実施形態において、本発明は、植物生育促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、植物生育促進剤を製造するための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
≪微生物感染効率促進剤・導入遺伝子発現効率促進剤≫
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、微生物感染効率促進剤、又は導入遺伝子発現効率促進剤としても利用可能である。
本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、SAR系防御応答発現を抑制し、植物体への人為的な微生物感染効率を促進させる。後述する実施例において示されるように、本発明に係る微生物感染効率促進剤は、アグロインフィルトレーション法による遺伝子導入発現促進効果を有する。したがって、本発明の微生物感染効率促進剤によれば、植物への微生物感染効率促進効果が得られる。本発明の微生物感染効率促進剤によれば、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)による植物の形質転換効率の促進、形質転換後の遺伝子発現の促進が達成される。この場合、本発明の植物抵抗性誘導制御剤は、形質転換促進剤、遺伝子導入促進剤、導入遺伝子発現効率促進剤としても利用可能である。
微生物感染効率促進剤としては、植物抵抗性誘導制御剤において説明したものと同様のものが例示できるため、説明を省略する。導入遺伝子発現効率促進剤としては、植物抵抗性誘導制御剤において説明したものと同様のものが例示できるため、説明を省略する。対象の微生物としては、アグロバクテリウムの他、植物に感染する各種植物ウイルスを例示できる。導入される遺伝子としては、当該微生物によって導入可能な遺伝子であれば、特に制限されない。
本発明の微生物感染効率促進剤は、他の農園芸用剤と併用されるような剤型で提供されてもよい。
例えば、本発明の微生物感染効率促進剤と、その他の公知の微生物感染効率促進効果を有する化合物との、合剤、組み合わせ製剤等の剤型で提供されてもよい。
例えば、本発明の導入遺伝子発現効率促進剤と、その他の公知の導入遺伝子発現効率促進効果を有する化合物との、合剤、組み合わせ製剤等の剤型で提供されてもよい。
本発明の微生物感染効率促進剤は、農園芸用剤と組み合わせて用いられてもよい。微生物感染効率促進剤および他の農園芸用剤を同時に使用されてもよいし、別々に使用されてもよい。
例えば、本発明の植物生育促進剤と、その他の公知の微生物感染効率促進効果を有する化合物とを併用して用いてもよい。
例えば、本発明の導入遺伝子発現効率促進剤と、その他の公知の導入遺伝子発現効率促進効果を有する化合物とを併用して用いてもよい。
本発明の微生物感染効率促進剤は、微生物感染効率促進効果を有する。植物における微生物感染効率促進効果の発現は、後述の実施例に示すように、例えば、以下の指標により判断できる。
「1」植物体に形質転換能を有する微生物を感染させ、該微生物により植物へ導入された遺伝子の発現量を指標とし、本発明の微生物感染効率促進剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の微生物感染効率促進剤が処理された植物において、前記遺伝子の発現量が有意に増加していた場合に、微生物感染効率促進効果の発現を判断できる。
本発明の導入遺伝子発現効率促進剤は、導入遺伝子発現効率促進効果を有する。植物における導入遺伝子発現効率促進効果の発現は、後述の実施例に示すように、例えば、以下の指標により判断できる。
「1」植物体に形質転換能を有する微生物を感染させ、該微生物により植物へ導入された遺伝子の発現量を指標とし、本発明の微生物感染効率促進剤が処理された植物と、処理されていない植物とを比較して、本発明の微生物感染効率促進剤が処理された植物において、前記遺伝子の発現量が有意に増加していた場合に、微生物感染効率促進効果の発現を判断できる。
一実施形態において、本発明は、微生物感染効率促進剤を植物に接触させることを含む微生物感染促進方法を提供する。係る方法は、植物抵抗性誘導制御剤を植物に接触させる方法において説明したものと同様の方法が例示できるため、説明を省略する。
一実施形態において、本発明は、微生物感染効率促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を提供する。
一実施形態において、本発明は、微生物感染効率促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、微生物感染効率促進剤を製造するための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、導入遺伝子発現効率促進剤を植物に接触させることを含む導入遺伝子発現効率促進方法を提供する。
本発明に係る導入遺伝子発現効率促進方法の一実施形態として、微生物によって植物へ遺伝子を導入し、本発明の植物抵抗性誘導制御剤を前記植物に接触させることを含む、導入遺伝子発現効率促進方法が挙げられる。
本発明に係る導入遺伝子発現効率促進方法の一実施形態として、微生物によって植物へ遺伝子を導入し、本発明の植物抵抗性誘導制御剤を前記植物に接触させ、前記遺伝子を発現させることを含む、導入遺伝子発現効率促進方法が挙げられる。
微生物によって植物へ遺伝子を導入することは、本発明の導入遺伝子発現効率促進剤を前記植物に接触させることよりも後に行ってもよく、同時に行ってもよい。
本発明の導入遺伝子発現効率促進剤を植物に接触させる方法は、植物抵抗性誘導制御剤を植物に接触させる方法において説明したものと同様の方法が例示できるため、説明を省略する。微生物によって植物へ遺伝子を導入する方法は、アグロインフィルトレーション法等の公知の方法により行うことができる。遺伝子を導入する対象の植物は、植物の細胞、組織、細胞塊、カルス、及び植物個体を包含する意味で用いている。
一実施形態において、本発明は、導入遺伝子発現効率促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を提供する。
一実施形態において、本発明は、導入遺伝子発現効率促進のための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、導入遺伝子発現効率促進剤を製造するための上記一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用を提供する。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<VSP1遺伝子の発現を誘導する化合物の選抜>
まず、文献(Utsugi et al. (1998) Plant Mol Biol 38:565-576; Guerineau et al. (2003) J Exp Bot 54:1153-1162)に示された結果に沿って、PCRにより、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana ecotype Columbia)のゲノムDNAからVSP1遺伝子のプロモーター配列を増幅した。レポーター遺伝子(ホタルルシフェラーゼ遺伝子(FLuc))の遺伝子配列を有するプラスミド(pBI221-Fluc)のFlucの上流に、VSP1遺伝子のプロモーター配列を連結し、pBI121-VSP1::Flucプラスミドを得た。該プラスミドをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens LBA4404)を介してシロイヌナズナに導入し、VSP1::Flucを有する形質転換シロイヌナズナVSP1::Flucを得た。この形質転換シロイヌナズナの種子をマルチウェルプレートに播種し、ルシフェリン水溶液中で発芽させた。
一般に販売されている化合物ライブラリの各化合物のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液をそれぞれ調製し、化合物の濃度が30μMの濃度となるように、この溶液を各ウェルに加えて、形質転換シロイヌナズナの芽生えを処理した。生育は22℃、12時間暗期/12時間明期(70μmolm−2−1)の光周期条件下で行った。
フォトカウンティング装置(ARGUSシステム、浜松ホトニクス社製)及びソフトウェア(AQUACOSMOS、浜松ホトニクス社製)を使用して、各ウェル内の発光強度を測定してレポーターであるFlucの発現量を測定することで、各化合物のVSP1遺伝子発現誘導活性についてそれぞれ評価した。
その結果、前記式(1−1−7)で表される化合物の処理、(1−1−9)で表される化合物の処理、及び(1−1−10)で表される化合物の処理により、上記形質転換シロイヌナズナVSP1::FlucにおいてFlucタンパク質が発現誘導されることが明らかとなった。前記式(1−1−7)で表される化合物を、以下「化合物X」という。
形質転換シロイヌナズナVSP1::Flucでは、化合物X処理数時間後からFlucタンパク質の発光強度が上昇し始めたのが確認できた。その後、化合物X処理144時間後には、形質転換シロイヌナズナVSP1::FlucでのFlucタンパク質の発光強度が約90(フォトン数/分/μm)に達した。化合物X未処理の場合、形質転換シロイヌナズナVSP1::FlucでのFlucタンパク質の発光は検出されなかった。このことから、化合物Xは、シロイヌナズナ芽生えにおいて、VSP1遺伝子の発現誘導活性を有することが示唆された。
<Fluc遺伝子発現に対する化合物Xの影響評価>
次に、化合物XによるFluc遺伝子発現誘導活性への影響を35S:: Flucを有する形質転換シロイヌナズナを用いて確認した(n = 16)。シロイヌナズナ35S:: Flucは、上記VSP1:: Flucの作出と同様にして行った。
シロイヌナズナ35S:: Flucに対する化合物X処理による、Flucタンパク質の発光強度を測定した(化合物X群)。また、コントロールとして、上記各化合物XのDMSO溶液に代えてDMSOのみを処理した群(DMSO群)、及び、上記各化合物XのDMSO溶液に代えてMeJAのDMSO溶液を処理した群(MeJA群)でもFlucタンパク質の発光強度を測定した。測定の結果、化合物X群、DMSO群、MeJA群でのFlucタンパク質の発光強度の値は、ほぼ同様の値(処理120時間後に発光強度が約3000(フォトン数/分/μm))であった。このことから、化合物XはFluc遺伝子発現活性には影響を与えないことが確認された。これら結果から、化合物XがVSP1遺伝子プロモーターに作用することで明瞭なVSP1遺伝子発現誘導活性を示していることが確認された。
さらに、上記と同様にして誘導処理した5週齢の野生型シロイヌナズナからRNAを抽出し、RT-PCR法を用いて内在性のVSP1遺伝子発現を定量したところ、Flucを用いた場合と同様に明瞭な発現誘導が観察され、化合物X処理による内在性のVSP1遺伝子発現の誘導が確認された。
以上の結果から、化合物Xは、VSP1遺伝子の発現を誘導することが示された。VSP1遺伝子はJA応答経路で特異的に発現誘導される。したがって、化合物Xを植物に処理することで、JAを介して誘導されることが知られるISR系により、抵抗性が誘導されることが確認された。
<シロイヌナズナ3週齢個体における化合物Xの作用評価>
上記選抜実験では、シロイヌナズナの芽生えに対する抵抗性誘導を評価した。同様の実験をシロイヌナズナ3週齢個体(n = 24)に対して行った。
化合物XのDMSO溶液を調整し、化合物Xの濃度が30μMの濃度となるようにこの溶液を各ウェルに加えて、形質転換シロイヌナズナを処理した群(化合物X群)、上記化合物XのDMSO溶液に代えてDMSOのみを処理した群(DMSO群)に対する評価を行った。更に、化合物X群、DMSO群の他に、化合物XのDMSO溶液に代えてMeJAのDMSO溶液を処理した群(MeJA群)に対する評価も行った。
化合物X群及びMeJA群の形質転換シロイヌナズナVSP1::Flucでは、各化合物処理の直後からFlucタンパク質の発光強度が上昇し始めたのが確認できた。処理72時間後には、化合物X群及びMeJA群の形質転換シロイヌナズナVSP1::FlucでのFlucタンパク質の発光強度の値は、約250(フォトン数/分/μm))であった。一方DMSO群のシロイヌナズナVSP1::Flucでは、Flucタンパク質の発光は検出されなかった。このことから、化合物Xは、シロイヌナズナ3週齢個体においても、VSP1遺伝子の発現誘導活性を有するすることが示唆された。
また、化合物XとMeJAとで抵抗性誘導の様態を比較すると、化合物Xの抵抗性誘導作用は、MeJAと同様の早い時点から発揮されることが判明した。そして、化合物Xの抵抗性誘導作用はMeJAの抵抗性誘導作用よりも長期間継続していた。このことから、化合物Xは、即効性と持続性を兼ね備える、非常に優れた抵抗性誘導作用を有していることがわかる。
<SAR系防御応答遺伝子発現に対する化合物Xの抑制効果>
形質転換シロイヌナズナPR-1a::Flucを用いて、化合物XのSAR系へ影響を評価した。PR-1aはSA応答経路で特異的に発現誘導される遺伝子である(Tanaka T, Ono S, Watakabe Y, Hiratsuka K (2006), Bioluminescence reporter assay system to monitor Arabidopsis MPK3 gene expression in response to infection by Botrytis cinerea. J. Gen. Plant Pathol. 72, 1-5)。
評価はシロイヌナズナPR-1a::Flucの芽生えに対して行った(n = 8)。化合物X,SAまたはMeJAの濃度が30μMの濃度となるようにDMSO溶液として各ウェルに加え、発光活性の推移を観察した(図5)。DMSOと比較してSA単独処理では明瞭な発現誘導が観察されたが、MeJAまたは化合物X処理ではSAによる発現誘導の抑制が観察され、その抑制活性は化合物Xが持続的であり、より効果的であることが示唆された。このことから、化合物Xは、SAR系防御応答遺伝子発現の抑制的制御活性を有することがわかる。
<化合物Xの抗菌活性の評価>
化合物X自体の抗菌活性を確認するため、阻止円法による評価を行った。ここでは炭疽病菌と灰色かび病菌に対する抗菌活性を調査した。炭疽病菌は活物寄生性病原菌の代表であり、灰色かび病菌は腐生性病原菌の代表である。
炭疽病菌 (C.higginsianum) の胞子100μl (1.0×105spores/ml) をPDA培地に塗布し、さらに化合物X液 10μl (100mM)を処理した。陽性対照にはハイグロマイシン10μl (100mM)、陰性対照にはDMSOを用いた。これを10日間24℃下暗所にて培養した。
灰色かび病菌 (B.cinerea) の胞子100μl (3.0×105spores/ml)をPSA培地に塗布し、さらに化合物X液 10μl (100mM)を処理した。陽性対象にはハイグロマイシン10μl(100mM)、陰性対象にはDMSOを用いた。これを5日間24℃下で培養した。
試験の結果、化合物Xは100mMという高濃度処理においても炭疽病菌、灰色かび病菌に対して抗菌活性を示さないことが明らかとなった。抗菌活性を持たない化合物は、薬剤耐性菌を生みにくい。したがって、本発明の植物抵抗性誘導制御剤にかかる化合物Xは、薬剤耐性菌を生みにくく、長期間の利用が見込める点においても優れている。
≪化合物Xの植物抵抗性誘導の評価≫
<試験1>
[比較例1]
播種37日後のシロイヌナズナ成熟個体(Col-0)(図1(a))に対して、DMSO水溶液(約0.03%)を土壌中に加え、DMSO水溶液を根から吸わせるようにしてシロイヌナズナ成熟個体に与えた。その72時間後に、シロイヌナズナ成熟個体に対して、胞子濃度5×10spores/mlに調製した灰色かび病菌を含む滅菌水をスプレーで接種し、22℃、12時間暗期/12時間明期(70μmolm−2−1)の光周期条件下で生育させた。図1(b)は接種3日後の植物体の写真である。図1(b)に示すように、植物体の葉に多数の病斑が見られた。
[実施例1]
DMSO水溶液(約0.03%)の代わりに、30μMで化合物Xを含むようにDMSO水溶液(約0.03%)を用いてに調製した化合物X水溶液を根から吸わせるようにしてシロイヌナズナ成熟個体に与えた以外は、比較例1と同様に試験した。(図1(c))は播種37日後のシロイヌナズナ成熟植物体(Col-0)である。図1(d)は接種3日後の植物体の写真である。比較例1の植物体(図1(b))と比較して、実施例1の植物体(図1(d))では病斑の発生が抑えられていることが分かる。
以上の結果から、シロイヌナズナ成熟個体において、化合物Xが、灰色かび病菌に対する浸潤抑制効果を示し、灰色かび病菌に対する高い防除効果を示すことが明らかである。
<試験2>
[比較例2]
発芽46日後のトマト成熟個体に対して、1株あたり150mL量のDMSO水溶液(約0.03%)を浸漬処理した。その72時間後に、トマト成熟個体に対して、胞子濃度1×105 spores/mlに調製した灰色かび病菌5μLをスポット接種し、Light 16h 22℃で生育させた。図2(a)は接種5日後の植物体から得た葉の写真である。葉に病斑が見られ、葉の生育が不良であることが分かる。
[実施例2]
DMSO水溶液(約0.03%)の代わりに、30μMで化合物Xを含むようにDMSO水溶液(約3%)を用いてに調製した化合物X水溶液を浸漬処理してトマト成熟個体に与えた以外は、比較例2と同様に試験した。図2(b)は接種5日後の植物体の写真である。比較例2の植物体(図2(a))と比較して、実施例2の植物体(図2(b))では病斑の面積が小さく抑えられ、葉の生育が良好であることが分かる。
図2(c)のグラフは、<試験2>で得られた結果を定量したものである。グラフの縦軸は、灰色かび病菌の播種5日後時点にて、各接種葉における最大病斑直径を計測した結果の値である。
図2(c)のグラフから明らかなように、化合物Xを与えた個体では病斑の面積が小さく抑えられたことがわかる。このことから、トマト成熟個体において、化合物Xが灰色かび病菌に対する高い防除効果を有することが確認された。
<試験3>
[比較例3]
発芽46日後のキュウリ成熟個体に対して、1株あたり150mL量のDMSO水溶液(約0.03%)を浸漬処理した。その72時間後に、キュウリ成熟個体に対して胞子濃度1×105 spores/mlに調製した灰色かび病菌5μLをスポット接種し、Light 16h 22℃で生育させた。図3(a)は接種5日後の植物体から得た葉の写真である。葉に病斑が見られ、葉の生育が不良であることが分かる。
[実施例3]
DMSO水溶液(約0.03%)の代わりに、30μMで化合物Xを含むようにDMSO水溶液(約3%)を用いてに調製した化合物X水溶液を浸漬処理してキュウリ成熟個体に与えた以外は、比較例3と同様に試験した。図3(b)は接種5日後の植物体の写真である。比較例3の植物体(図3(a))と比較して、実施例3の植物体(図3(b))では病斑の面積が小さく抑えられ、葉の生育が良好であることが分かる。
図3(c)のグラフは、<試験3>で得られた結果を定量したものである。グラフの縦軸は、灰色かび病菌の播種5日後時点にて、植物体に生じた病斑の最大直径を測定したものである。
図3(c)のグラフから明らかなように、化合物Xを与えた個体では病斑の面積が小さく抑えられたことがわかる。このことから、キュウリ成熟個体において、化合物Xが灰色かび病菌に対する高い防除効果を有することが確認された。
<試験4>
[比較例4]無処理区
播種85日後後のキャベツ成熟個体に対して、キャベツ成熟個体へモモアカアブラムシ(Myzus persicae)を放した。化合物X散布から2日後、6日後、9日後、15日後、22日後のモモアカアブラムシの数を計測した。
[実施例4]
30μMで化合物Xを含むように、30mM DMSO溶媒を、井戸水を用いて1000倍希釈し、展着剤マイリノーを5000倍になるように添加して調製した化合物X水溶液を、スプレーで植物体表面が十分に濡れるように十分量を噴霧してキャベツ成熟個体に与えた以外は、比較例4と同様に試験した。なお、<試験4>の調査は日本植物防疫協会に委託して行った。
試験4の結果を表1に示す。表1中の実施例4の数値は、比較例4で得られた値を基準とした補正密度指数として表している。表1に示す結果から、本試験において化合物Xは、化合物X散布後9日後までの間、モモアカアブラムシに対する防除効果を発揮することが明らかとなった。
<試験5>
[比較例5]
上記比較例4において、モモアカアブラムシに代えてコナガ(Plutella xylostella)を、化合物X散布後2日後に株あたり100卵を接種して試験を開始した以外は、上記比較例4と同様に試験を行った。放虫から9日後、15日後、22日後の若齢幼虫、中齢幼虫、老齢幼虫の合計生息コナガ幼虫数を計測した。
[実施例5]
DMSO水溶液(約3%)の代わりに、30μMで化合物Xを含むようにDMSO水溶液(約3%)を用いてに調製した化合物X水溶液を植物体全体にスプレーで噴霧してキャベツ成熟個体に与えた以外は、比較例5と同様に試験した。なお、<試験5>の調査は日本植物防疫協会に委託して行った。
試験5の結果を表2に示す。表2に示す結果から、本試験において化合物Xは、コナガに対して顕著で持続的な防除効果を発揮することが明らかとなった。
<化合物X処理による生育促進効果の評価>
SAR応答と植物体の矮化は密接に関係し、SAR応答誘導下においてはバイオマスの低下が起こることが知られている。そこで、SAR抑制活性を示す化合物Xの処理による植物体の生育への影響を評価した。
評価は、キャベツ(品種:金系201号)に対して行った。キャベツ生育条件は、播種:128穴セルトレイ、キャベツ育苗期:1区64株連性なし(2ブロック調査)、定植:播種29日後、定植後:1区14株2連性とした。
化合物Xの粉末を15mMになるようDMSOで溶解し、井戸水を用いて所定濃度の1000倍に希釈した(散布濃度は、15μM)。さらに展着剤マイリノーを5000倍になるように添加し、散布用の化合物X希釈薬液を用意した。
薬液散布1回目として、播種21日後のキャベツ(キャベツ本葉3枚)に化合物X希釈薬液を散布した。薬液散布2回目として、播種28日後のキャベツ(キャベツ本葉34枚)に化合物X希釈薬液を散布した。薬液散布3回目として、播種35日後のキャベツ(キャベツ本葉45枚)に化合物X希釈薬液を散布した。希釈薬液は、背負式噴霧器を用いて葉の表裏が濡れるように十分量を散布した。その後、播種後57日後に、観察(撮影)を行った。
観察結果を図6に示す。化合物X処理を行った区(化合物X処理区)と、化合物X処理を行わなかった区(化合物X未処理区)とで、植物体の生育状況を比較したところ、化合物X処理区では、化合物X未処理区と比較して、明瞭な生育促進効果が観察された。
<化合物X処理による微生物感染効率向上効果>
化合物Xを終濃度1μM、5μM、10μMの各濃度で含む化合物XのDMSO溶液を調整した。また、化合物XのDMSO溶液に代えてMeJAのDMSO溶液を用意した。ウェルにタバコ(Nicotiana tabacum SR1株)を播種し、調整した各濃度の液を各ウェルに加え、22℃連続光下でタバコを発芽させ、生育させた(N=24(各濃度群))。播種11日後の幼植物体に、イントロン挿入型ルシフェラーゼ遺伝子(CaMV35SプロモーターとHSPターミネーター間に挿入)を有するアグロバクテリウムLBA4404株を、常法により処理し、感染させた。高感度カメラによる発光観察により、アグロバクテリウム感染後144時間後までのルシフェラーゼ活性を連続モニタリングした。モニタリングの結果を図7に示す。図7に示すグラフの縦軸は、感染後48〜120時間後の相対活性の平均値である。化合物Xを終濃度1μM、5μM、10μMのいずれの処理区においても、明瞭な遺伝子発現の増高が確認された。特に、比較的低濃度(1μM)の化合物X処理においても明瞭な発現上昇が観察された。
本発明は、植物の育成分野全般で利用可能である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(3−2)、(3−3)、若しくは(3−4)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する害虫防除剤。
    [式中、
    は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
    は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。
    は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表し、
    は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又はハロゲン原子を表す。
    nはRの数を表し、0又は1である。mはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、mが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n+mは5以下の整数である。pはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、pが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。]
  2. 請求項1に記載の害虫防除剤を用いて害虫を防除する害虫の防除方法。
  3. アグロインフィルトレーション法によって形質転換される植物に対して施用される形質転換効率促進剤であって、下記一般式(3−2)、(3−3)、若しくは(3−4)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する形質転換効率促進剤(ただし、植物病原菌の増殖抑制剤を除く)
    [式中、
    は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のハロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、
    は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。
    は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表し、
    は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又はハロゲン原子を表す。
    nはRの数を表し、0又は1である。mはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、mが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n+mは5以下の整数である。pはRの数を表し、0〜5のいずれかの整数であり、pが2以上のとき、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。]
  4. 請求項3に記載の形質転換効率促進剤を、アグロインフィルトレーション法によって形質転換される植物に施用する、形質転換効率促進方法(ただし、植物病原菌の増殖抑制方法を除く)
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