JP6651119B2 - 蒸気タービン翼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸気タービン翼の製造方法に関する。本発明は、特には、耐食性に極めて優れた蒸気タービン翼の製造方法に関する。
一般に、蒸気タービンでは、液滴化した蒸気が衝突することによりタービン低圧段翼の前縁部(蒸気入口側)にエロージョン摩耗を生じる。エロージョン摩耗対策として、エロージョンによって侵食される翼前縁部に、火炎トーチや高周波誘導加熱、レーザ加熱を用いた母材の硬化処理を行い、翼前縁部の耐エロージョン性を向上させており、蒸気タービン翼前縁部には、通常、硬化層が形成されている。
特に、地熱発電に用いられるタービンの駆動蒸気には、腐食成分の混入が多く、前記の耐摩耗性に加えて、耐食性が要求される。そこで、耐摩耗性と耐食性の両特性に優れる合金、例えばステライト(登録商標)による被覆層をろう付けによりタービン翼の母材上に形成する技術が知られている。このろう付けは、板状の耐食合金をタービン翼の複雑曲面形状に合わせて曲げ加工したものを用いる。この複雑曲面形状に追従した曲げ加工には熟練したノウハウが要求されるため、品質の維持が難しい場合があった。
レーザクラッディングを用いてステライトのクラッド層をタービン翼上に形成し、上記の複雑形状追従に対する問題を解決する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法は、入熱管理が容易であり、かつ微細処理が可能で、様々な翼形状に追従可能であるという利点をもつ。
特開平9−314364号公報
しかし、特許文献1のクラッディング施工では、十分な耐食性能が確保できない。クラッディング施工では、クラッド層直下の母材に過大な入熱が行われることにより、熱影響層が発生し、母材の耐食性が低下する。特許文献1では、熱影響層の生成が開示されているが、これに対する対策はなされていない。この熱影響層は電気炉等で焼き戻しを行うことで除去可能であるが、同時に熱影響のない母材まで焼き戻しが行われてしまい、母材強度が低下する問題が生じる。特に、腐食性成分を含む蒸気に接触しうる蒸気タービン翼の製造においては、従来の耐食性能では不十分である。
上述した問題に対し、熱影響層がなく耐食性により優れたクラッド層を備える蒸気タービン翼を製造する方法を提供する。
本発明は、一実施形態によれば、蒸気タービン翼の製造方法であって、母材上の腐食が発生しやすい部位にクラッド層を形成するクラッド層形成工程と、前記クラッド層下の母材を調質における焼き戻し温度で局所加熱する局所加熱工程とを含む。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記クラッド層形成工程後に、前記クラッド層下の母材の温度を前記焼き戻し温度以下に冷却する冷却工程をさらに含むことが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記局所加熱する工程が、レーザ照射により行われることが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記レーザ照射は、前記クラッド層が溶融しないレーザパワー密度で、前記クラッド層下の母材の温度が前記焼き戻し温度となるレーザスポット面積で照射されることが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記局所加熱する工程が、レーザ照射部からの熱放射光に基づき、レーザ照射部温度を検知する工程と、前記レーザ照射部温度を指標として、前記局所加熱される母材温度が前記焼き戻し温度になるようにレーザ出力をフィードバック制御する工程とにより実施されることが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、蒸気タービン翼であって、母材上にクラッド層が形成された耐食性部位を備え、前記クラッド層下の母材の硬度が、前記母材本体の硬度に対して、+10%以内である。ここで、母材本体の硬度とは、クラッド層が形成されていない箇所における母材の硬度をいうものとする。
本発明によれば、蒸気タービン翼の腐食が発生しやすい部位に形成されたクラッド層に局所加熱を行うことにより、クラッディングにより生成する熱影響層を除去し、高耐食なクラッド層を有する蒸気タービン翼の製造方法を提供することができる。本発明の製造方法によれば、これまでのクラッディング施工では不可能であった、熱影響層のみの局所的な焼き戻しが可能となり、耐エロージョン摩耗性に加え、耐食性の付与と母材強度の確保が可能となる。また、熱影響層の存在に起因する残留応力による割れを防止することができる。このようにして得られた蒸気タービン翼は、特に腐食性成分である、硫酸などの硫黄化合物や塩酸などの塩素化合物を含む駆動蒸気と接触するため、高度の耐腐食性が求められる地熱発電用の蒸気タービン翼として最適である。
本発明に係る蒸気タービン翼の製造方法を模式的に示す図である。 蒸気タービン翼の腐食が生じやすい部位を示す図である。 本発明の実施例における、熱影響層の写真である。 本発明の実施例における、局所加熱温度と、熱影響層硬さの関係を示すグラフである。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。また、図面は、本発明を説明するための例示的な概略図であって、図中の各部材の寸法や相対的な位置関係は、本発明を限定するものではない。
[第1実施形態:蒸気タービン翼の製造方法]
本発明は、第1実施形態によれば、蒸気タービン翼の製造方法であって、母材上にクラッド層を形成するクラッド層形成工程(以下、第1工程ともいう)と、前記クラッド層下の母材を局所加熱する局所加熱工程(以下、第2工程ともいう)とを含む。図1は、本発明の一実施形態による、蒸気タービン翼の製造方法を模式的に示すものである。図1において、製造される蒸気タービン翼3は、母材31と、その一部に形成されたクラッド層33から構成されている。そして、第1工程において用いられるレーザクラッディング装置1、第2工程において用いられる局所加熱用レーザ装置2が、それぞれ、被加工物である蒸気タービン翼3に対向して配置されている。
母材上にクラッド層を形成する第1工程について説明する。蒸気タービン翼3の母材31としては、耐食性、耐エロージョン摩耗性に優れたステンレス鋼を用いることができ、特には、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレスから選択されるステンレス鋼を用いることが好ましい。また、特に、地熱発電用の蒸気タービン翼の母材31としては、耐食性の観点から、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いることがさらに好ましい。当該所定の材料を、所定の翼形状に成形し、本実施形態における母材31とすることができる。翼形状に加工したものにそのままクラッド層33を形成してもよく、母材31の一部を切り取って、切り取った形状のクラッド層33を形成してもよい。母材31は、第1工程前に、必要に応じて、研磨紙で磨くなどの物理的表面処理や、母材強度等の特性に影響を与えないそのほかの表面処理を行ってもよい。
母材31におけるクラッド層33形成部位は、蒸気タービン翼として用いる場合に、腐食が発生しやすい部位であってよく、例えば、翼先端近傍の周速が大きくなる部位や、周縁部位などの厚さが薄い部位であってよく、典型的には翼前縁部であるが、これらには限定されない。図2は、一般的な蒸気タービン翼の腐食が発生しやすい部位を模式的に示す図である。図2(a)は、蒸気タービン翼3の正面図を示し、(b)は、翼先端の断面図を示す。いずれの図においても、翼前縁部が、腐食が発生しやすい部位Eとなっている。このEで示す部位に、クラッド層33を形成することができる。
クラッド層33の形成は、レーザや、高密度エネルギー線によるクラッディングにより実施することができ、装置の汎用性の観点から、レーザクラッディングにより実施することが好ましい。図1は、第1工程を実施する装置の一例として、レーザクラッディング装置1を示している。
クラッド層33を形成する材料としては、耐食合金の粉末を用いることができ、例えばコバルト合金を使用することができる。特には、コバルトを主成分とし、クロムとタングステンをさらに含む合金であることが摩耗及び耐食の観点から好ましい。このような合金としては、ステライト(登録商標)として知られているもの、あるいはステイトを含む複合材を用いることができるが、これらには限定されない。クラッド層33の形成厚みは、必要とされる蒸気タービン翼3の仕様等により当業者が適宜決定することができ、特には限定されない。クラッド層33が薄すぎると耐食性・耐摩耗性が不十分となる場合があり、厚すぎると歪により割れやすくなる場合がある。また、クラッド層33は、同一材料からなる一層構成であってもよく、組成の異なる二層以上のクラッド層から構成される多層盛りに形成することもできる。
レーザクラッディング装置1を用いてレーザクラッディングを行う場合、クラッディングレーザ11からレーザ光Lを照射するとともに、粉体供給ノズル12から、図示しないキャリアガスにより耐食合金粉末Pを供給する。これにより、母材31上で耐食合金粉末Pを溶融し、接合してクラッド層33を形成することができる。
クラッディングレーザ11としては、半導体レーザを用いることが好ましい。レーザ照射条件は、母材や粉体組成、母材の曲率などにより、決定することができ、当業者であれば、レーザクラッディングにおける各種条件を、適宜設定することができる。
このような第1工程が終了した時点で、クラッド層33と接する母材31表面には、通常、深さが1〜3mm程度の熱影響層32が生じる。この熱影響層32は、クラッディング施工を行った部位を、クラッド層33に垂直に切断し、断面を目視観察すると、明らかな変色が観察されることから確認することができる。あるいは、クラッド層33直下の母材硬度とクラッド層が形成されていない箇所における母材硬度を測定し、比較することで、熱影響層32の存在を調べることもできる。クラッド層33下の母材の硬度は、例えば、断面の硬さ分布測定により測定することができる。
第1工程後に、任意選択的に、前記クラッド層下の母材の温度を前記焼き戻し温度以下に冷却する冷却工程をさらに含んでいてもよい。第1工程の終了後、母材の温度が、少なくとも調質における焼き戻し温度、すなわち第2工程における局所加熱温度以下まで下がった後に、実施することが好ましいためである。クラッディング直後の高温状態の熱影響層32に対して局所加熱を実施しても、所望の熱影響層除去効果が得られない場合がある。冷却工程は、例えば、第1工程後の被加工物を室温に静置することにより実施してもよい。この場合には、第1工程後に被加工物を室温下に静置し、例えば半日後、1日後あるいはそれ以降に第2工程を実施してもよい。あるいは、冷却工程は、除熱手段によって実施することもできる。除熱手段としては、気体の吹付等が挙げられるが、特定の手段には限定されない。除熱手段による冷却は、第1工程後、第2工程の実施までの時間を短縮することができ、かつ、耐食性を向上させることができる点で特に好ましい。
次いで、前記クラッド層33下の母材にある熱影響層32を局所加熱する第2工程を実施する。第2工程では、クラッド層33直下の母材すなわち熱影響層32を、調質における焼き戻し温度で局所加熱する。この局所加熱は、クラッド層33表面にレーザ照射をすることで実施することができる。図1においては、第2工程を実施する装置の一例として、局所加熱用レーザ装置2を用いた例を説明している。局所加熱用レーザ装置2を用いて局所加熱を行う場合、後熱処理レーザ21からレーザ光Lをクラッド層33の表面に照射する。これにより、クラッド層33直下の母材31に形成された熱影響層32が加熱され、焼き戻されて、熱影響層32を除去することができる。
具体的には、例えば、後熱処理レーザ21のレーザ光源として、半導体レーザを用いることが好ましい。レーザ照射条件は、レーザが照射される材料の表面、すなわちクラッド層33表面を溶融しないパワー密度にする必要がある。その上で、所定部位が所定の深さで調質温度となるように、照射面積(レーザスポット面積)を適宜決定する。所定の調質温度を達成する具体的なレーザ出力及び波長は、特定の値に拘束されるものではなく、照射対象となる材料や、母材材料、レーザの仕様に基づき、当業者が適宜決定することができる。通常のレーザに比べると、半導体レーザではパワー密度は小さくなるため、レーザスポット面積は比較的大きくなる。具体的には、たとえばマルテンサイト系ステンレス鋼では、レーザスポット面積が200mm以上となる条件とすることができる。そして、第1工程で形成したクラッド層33全体に対してスポットが当たるように、局所加熱用レーザ装置2を走査しながら、各スポットあたり、15〜60秒、好ましくは、15〜30秒となるように、クラッド層33表面にレーザ照射することにより、熱影響層32を局所加熱することができる。
第2工程において、レーザ照射する際に、局所加熱される母材31の熱影響層32表面の温度が、レーザ照射が行われている期間にわたって、一定であるように、精密な温度制御下で、後熱処理レーザ21のレーザ出力を変化させながら局所加熱をすることが好ましい。通常のレーザ加工で行われるレーザ出力一定の加熱条件では、レーザ加熱部の温度が安定せず、熱影響層の加熱温度制御はできない。これはレーザ加熱部の表面状態が時々刻々と変化するため、レーザの吸収率が変化するためである。
局所加熱温度は、母材の調質における焼き戻し温度であって、局所加熱される母材31の材料、クラッド層33厚さ、クラッド層33材料により、理論計算、シミュレーション、及び・または事前の検量線作成などによって決定することができ、特定の値には限定されない。例えば、母材31がマルテンサイト系ステンレス鋼であり、クラッド層33がステライトから構成され、1〜3mmの厚みを有する場合には、局所加熱温度は、680〜1400℃で一定となるように設定することができる。なお、この加熱温度及び上述の加熱時間については、例えば予備実験等に基づき、クラッド層下の母材(熱影響層が存在した箇所)の硬度が、第1工程を実施する前の母材の硬度あるいはタービン翼のクラッド層を形成していない部位の母材の硬度に対して、+10%以内となる条件を、当業者が適宜設定することができる。例えば、母材がマルテンサイト系ステンレス鋼であり、母材硬度が300Hvである場合、硬度の差は、30Hv以内、より好ましくは10Hv以内となる条件を、当業者が適宜設定することができる。本明細書においては、ビッカース硬度を例示して説明しているが、例えば、ロックウェル、ブリネル、ヌープ硬度などの他の硬度試験を用いても良い。
図1では、レーザ加熱部の温度制御のための温度制御系を、赤外線カメラ22により構成する例を示している。赤外線カメラ22による温度計測、および図示しない制御装置によるレーザ出力のフィードバック制御を行うことが好ましい。
この場合、まず、次式に示す熱放射光エネルギーと温度の関係式を利用し、赤外線カメラ22がとらえたレーザ加熱部から放射される熱放射光強度を基に温度換算を行う。プランクの放射則(熱放射光エネルギーと温度の関係式)を示す。
上記数式中、
Me:測定された熱放射光エネルギー
ε:放射率(温度、材質、表面状態等により常時変化)
α:測定光学系の受光特性係数
λ:波長
:定数
:定数
T:温度
をそれぞれ表している。本実施形態の第2工程においては、Meは、赤外線カメラ22で検出される熱放射光エネルギーの測定値である。εは被測定系、α、λ、C、Cは測定系に固有の数値である。この機能により計測したレーザ加熱部の温度値を制御指標として、後熱処理レーザ21のレーザ出力にフィードバック制御を行うことで、一定温度での加熱を行い高精度に熱影響層の除去を行うことができる。
なお、直接的に赤外線カメラ22で検出されるレーザ加熱部の温度値は、クラッド層33表面の温度である。本実施形態においては、事前の理論計算、及び/または検量線等から得られたクラッド層33表面の温度と、母材の熱影響層32表面温度との相関関係を利用して、熱影響層32表面温度が所定の一定値になるように、レーザ出力にフィードバック制御を行うことができる。
このような局所加熱工程により、熱影響層32を除去することができる。ここでいう熱影響層32の除去とは、調質温度での焼き戻しにより、クラッド層直下の母材硬度が、母材本体、すなわちクラッド層が形成されていない部位の母材硬度の+10%以内になっていることをいうものとする。換言すれば、局所加熱工程後の母材全体で、硬度差が+10%以内になっていることをいうものとする。これは、クラッド層形成前の母材材料硬度のバラツキを±10%以内に収めることになっていることから、局所加熱後の硬度差も+10%以内に収めることで、母材特性を損なうことがないためである。
本実施形態に係る蒸気タービン翼の製造方法においては、任意の蒸気タービン翼を製造することができ、例えば、火力発電用の蒸気タービン翼、地熱発電用の蒸気タービン翼が挙げられる。中でも、硫黄や塩素成分を多く含むガスが接触する地熱発電用の蒸気タービン翼においては、大きな耐腐食性が要求されるが、本実施形態に係る製造方法によれば、耐エロージョン摩耗特性を保持し、耐食性及び母材強度に極めて優れた蒸気タービン翼を製造することができるため、大変有利である。
また、本実施形態に係る蒸気タービン翼の製造方法には、蒸気タービン翼を新たに製造する際の製造に加えて、蒸気タービン翼を修復する方法も含むものとする。この場合、必要に応じて、母材の一部に研磨処理等を行った上で、本実施形態の製造方法同様に、必要な個所に対して、第1工程、第2工程を実施し、蒸気タービン翼を修復し、製造することができる。
本実施形態による製造方法によれば、蒸気タービン翼においてクラッディングを施した部位にて、レーザによる高精度な局所加熱を行い、熱影響部のみに焼き戻しを行うことで母材の強度低下を招くことなく、高耐食性のクラッド層を有するタービン翼を得ることができる。
[第2実施形態:蒸気タービン翼]
本発明は、第2実施形態によれば、蒸気タービン翼であって、母材上にクラッド層が形成された耐食性部位を備え、クラッド層下の母材の硬度が、前記母材本体の硬度に対して、+10%以内である蒸気タービン翼である。本発明の第2実施形態による蒸気タービン翼は、実質的には、第1実施形態による製造方法により製造された蒸気タービン翼である。したがって、その材質、製造方法などの詳細な条件は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。硬度は、腐食の要因となる母材組織の歪を表す指標であり、耐食性の簡易的な代替指標である。本実施形態による蒸気タービン翼は、特に硬度の観点から、耐食性が向上していることが確認できる。
[第3実施形態:蒸気タービン翼の耐食処理装置]
本発明は、第3実施形態によれば、蒸気タービン翼の耐食処理装置であって、レーザクラッディング装置と、局所加熱用レーザ装置と、任意選択的にレーザクラッディング装置と、局所加熱用レーザ装置の駆動機構を備える。再び図1を参照する。レーザクラッディング装置1及び、局所加熱用レーザ装置2は、それぞれ、第1実施形態において説明したとおりのものであってよく、第1実施形態において説明したように機能することができる。第3実施形態において、レーザクラッディング装置1と局所加熱用レーザ装置2は、レーザクラッディングと、局所加熱の連続処理が可能な程度に近接して設けられていてもよい。
第3実施形態による蒸気タービン翼の耐食処理装置によれば、第1実施形態において説明した蒸気タービン翼の製造及び修復を高精度かつ高効率で実施することができる。
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1・比較例1]
本実施例、比較例においては、結果を比較しやすくするために、一つのタービン翼の母材に対して、本発明の第1実施形態に係る方法を適用した部位と、クラッド層形成後、局所加熱工程を行っていない部位を設けた。
タービン翼の母材として、13クロム合金鋼(マルテンサイト系ステンレス鋼)によって構成されており、所定の形状に加工されているものを用いた。13クロム合金鋼は、レーザ吸収率のばらつきを抑制するため、あらかじめ#80の研磨紙で磨いておいた。クラッディング用レーザには波長940、980±10nmを発振する半導体レーザ(laserline社製)を用いた。レーザ焦点位置がタービン翼母材の表面となるようにレーザヘッド高さを調整した。レーザ出力を3500W、レーザスポット径はφ5.4mmとした。耐食合金粉末としては、平均粒子径が100μmのステライト(登録商標)を用い、粉体供給速度は、23.6g/minとした。また、クラッディングは、母材を固定し、レーザクラッディング装置を可動として行い、このときの送り速度は、800mm/minとした。この条件で、タービン翼の摩耗が発生する部位(図2のEで示した部位)に沿って、耐食合金粉末を供給しながらレーザ光を照射することによって耐食合金によるクラッド層を形成した。このとき、耐食合金粉末はレーザヘッドに取り付けられたノズルを通じて、キャリアガス(アルゴンガス)により定量的に供給した。得られたクラッド層厚みは、2mmであった。なお、上記以外にも、レーザ照射条件としては、レーザ出力を、3000〜4000W、レーザスポット径を、φ3〜8mmとすることができる。粉体供給の条件としては、例えば、耐食合金の粉末の平均粒子径を80〜150μm程度とし、粉体供給レートを、10〜30g/minとし、粉体を供給するためのキャリアガスとして、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。また、図1における被加工物である母材31に対してレーザクラッディング装置1を相対的に移動して加工することができ、図示しない駆動装置等を用いることができる。この場合の送り速度は、100〜1000mm/minとすることができる。しかしながら、これらの数値範囲で規定された条件は一例であり、本発明は、例示した装置や条件に限定されるものではない。
クラッド層形成後に、熱影響層が生じていることは、タービン翼の断面の目視観察により確認することができた。図3のBで示した箇所が、クラッド層形成後の熱影響層である。
1日後に室温冷却後に、熱影響層に局所加熱を行った。後熱処理用レーザとしては、波長940、980±10nmnmを発振する半導体レーザ(laserline社製)を用い、レーザスポットサイズは20×30mmとした。温度制御には、赤外線カメラを用い、母材に形成された熱影響層の表面温度が780℃で一定となるようにレーザ出力を変動させ、20秒間加熱した。本実施例においては、母材の材料、クラッド層厚さ、クラッド層材料の条件から、熱影響層の局所加熱温度を理論計算により算出し、決定した。また、同条件から、赤外線カメラにより検出したクラッド層の表面温度が900℃で一定となるようにレーザ出力を制御することで、熱影響層の表面温度が780℃で一定となることを、理論計算により算出した。
図3のAで示した箇所が、局所加熱を行った部位である。局所加熱後に、熱影響層が除去されていることが、図3のBで示した箇所との比較により示された。
[実験例]
実験例においては、実施例1と同じ母材に対して、実施例1と同じ条件で第1工程を実施し、2mmのクラッド層を形成した試料を作製した。1日後に、第2工程の局所加熱処理を、温度のみを変化させて実施した。具体的には、加熱処理なし、450℃、640℃、650℃、720℃、760℃、780℃のそれぞれの局所加熱処理を、それぞれ20秒間行った。図4に、局所加熱温度と加熱後の熱影響層硬さの関係を示す。13クロム鋼の場合、熱影響層は700℃程度の加熱により焼き戻しが行われ硬度が母材と同等の状態に戻る。熱影響層の硬度が550Hvであるのに対して、局所加熱処理を行った部位では315Hvであり、母材の硬度規格≦300Hvとほぼ同等の硬度であることから、熱影響層が除去されており、熱影響層のなく高耐食性を有するクラッド層が得られていることが確認できた。
本発明の方法により製造された蒸気タービン翼は、発電用に好ましく用いられる。例えば、地熱発電用蒸気タービン翼、火力発電用蒸気タービン翼に用いられ、耐食性が高いことから、特には地熱発電用蒸気タービン翼として好適に用いられる。
1 レーザクラッディング装置
11 クラッディングレーザ
12 粉体供給ノズル
2 局所加熱用レーザ装置
21 後熱処理レーザ
22 赤外線カメラ
3 蒸気タービン翼
31 母材
32 熱影響層
33 クラッド層

Claims (4)

  1. 母材上の腐食が発生しやすい部位にクラッド層を形成するクラッド層形成工程と、
    前記クラッド層下の母材を調質における焼き戻し温度でレーザ照射により局所加熱する局所加熱工程と
    を含み、前記レーザ照射は、前記クラッド層が溶融しないレーザパワー密度で、前記クラッド層下の母材の温度が前記焼き戻し温度となるレーザスポット面積で照射される、蒸気タービン翼の製造方法。
  2. 前記クラッド層形成工程後に、前記クラッド層下の母材の温度を前記焼き戻し温度以下に冷却する冷却工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記局所加熱する工程が、
    レーザ照射部からの熱放射光に基づき、レーザ照射部温度を検知する工程と、
    前記レーザ照射部温度を指標として、前記局所加熱される母材温度が前記焼き戻し温度になるようにレーザ出力をフィードバック制御する工程と
    により実施される、請求項2に記載の方法。
  4. 母材上にクラッド層が形成された耐食性部位を備える蒸気タービン翼であって、前記クラッド層下の熱影響層が存在した箇所における、焼き戻しされた母材の硬度が、前記母材本体の硬度に対して、+10%以内である蒸気タービン翼。
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