JP6772650B2 - 蒸気タービン翼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸気タービン翼の製造方法及び蒸気タービン翼に関する。本発明は、特には、耐エロージョン性と耐応力腐食割れ性を両立する蒸気タービン翼の製造方法及び蒸気タービン翼に関する。
一般に蒸気タービンでは、液滴化した蒸気が、高速で回転する蒸気タービン翼に衝突することで、蒸気タービン翼の前縁部(入口側)にエロージョン摩耗が発生し、蒸気タービン翼の寿命が大きく低下する。
このような寿命の低下を抑制する方策として、蒸気タービン翼の前縁部に火炎焼入れあるいはレーザ焼入れによる表面処理(硬化処理)を施してエロージョン摩耗の発生を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。しかしながら、この方法では焼入れの境界部に大きな引張の残留応力が発生するため、使用環境や材料により、孔食や応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking、以下SCCと記載)などによる損傷を発生させる危険性がある。
その他の方法として、高硬度のNi合金の蒸着硬化層をスパッタによりタービン翼前縁部に形成し、応力の発生による翼の変形を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献3を参照)。しかしながら、近年、発電効率の向上にともない3次元的に湾曲した複雑形状の翼が多く用いられ、この手法ではそのような複雑形状の翼に均一にNi合金を形成するのは困難であるという問題があった。
特開平2−80518号公報 特開2013−209912号公報 特開平2−75701号公報
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、蒸気タービン翼前縁部を焼入れする際に発生する残留応力を低減し、耐エロージョン性と耐SCC性を有する蒸気タービン翼の製造方法及び蒸気タービン翼を提供することを目的とする。
本発明は、一実施形態によれば、蒸気タービン翼の製造方法であって、蒸気タービン翼形状に加工した母材の翼前縁部に、所定の照射面積でレーザ光を照射する第1熱処理工程を含み、翼先端部におけるレーザ照射面積が、翼脚側の端部におけるレーザ照射面積よりも大きい、製造方法に関する。
前記蒸気タービン翼の製造方法における前記第1熱処理工程において、前記レーザ光が翼先端部から翼脚側の端部に向けて走査され、前記レーザ照射面積を時間経過に伴い減少させることが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記第1熱処理工程におけるレーザ光照射部よりも翼脚側に、照射幅を減少させてレーザ光を照射する第2熱処理工程を含むことが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記第2熱処理工程におけるレーザ光照射部の翼脚側先端部の平面投射角度が、0°より大きく35°以下であることが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記第1及び/または第2熱処理工程後の母材を、温度250℃〜300℃で加熱する後熱処理工程をさらに含むことが好ましい。
前記蒸気タービン翼の製造方法において、前記第1及び/または第2熱処理工程が、レーザ照射部からの熱放射光に基づき、レーザ照射部の前記前縁部表面温度を検知する工程と、前記レーザ照射部の前記前縁部表面温度が、所定温度となるようにレーザ出力をフィードバック制御する工程とを含むことが好ましい。
前記いずれかの蒸気タービン翼の製造方法において、前記母材が、フェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であることが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、前述のいずれかに記載の製造方法により製造された蒸気タービン翼に関する。
本発明は、また別の実施形態によれば、蒸気タービン翼であって、翼前縁部に形成された、硬度450Hv以上、焼入れ深さ2mm以上の高硬度層と、前記高硬度層と連続して前記高硬度層よりも翼脚側に形成された、焼入れ幅が翼脚側の端部に向かって減少する焼入れ層とを備え、前記高硬度層の焼入れ深さが、翼先端部において翼脚側の端部よりも大きい、蒸気タービン翼に関する。
前記蒸気タービン翼において、前記記焼入れ層の翼脚側先端部の平面投射角度が、0°より大きく35°以下であることが好ましい。
本発明に係る製造方法によれば、蒸気タービン翼の前縁部に高硬度層を形成しつつ、残留応力を低減することで、耐エロージョン性と耐SCC性を両立する蒸気タービン翼を製造することができる。このようにして得られた蒸気タービン翼は、特に火力発電用の蒸気タービン翼として最適である。
図1は、本発明に係る蒸気タービン翼のレーザ照射による熱処理工程を模式的に示す図である。 図2は、本発明に係る蒸気タービン翼を模式的に示す図である。 図3は、本発明の実施例による、レーザ照射面積と残留応力の関係を示すグラフである。 図4は、本発明の実施例による、送り角度と残留応力の関係を示すグラフである。 図5は、本発明の実施例による、後熱処理温度と残留応力の関係を示すグラフである。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。また、図面は、本発明を説明するための例示的な概略図であって、図面中の各部材の寸法や相対的な位置関係は、本発明を限定するものではない。
図1は、上記レーザ照射による熱処理工程を実施するために用いるタービン翼硬化処理装置2の一例を示す概念図である。本発明に係る製造方法はレーザ照射による第1熱処理工程と、任意選択的にレーザ照射による第2熱処理工程を含んでもよく、いずれの工程も、図1に示すタービン翼硬化処理装置2を用いて実施することができる。以下、図1を例示して、レーザ照射による熱処理工程を説明する。硬化処理装置2は、レーザ発生器21、レーザ照射ヘッド22、照射ヘッド位置検出器23、レーザ光走査機構24、制御装置25、および放射光検出器26を備えている。なお、レーザ照射による熱処理工程は当該装置を用いるものには限定されず、同様の工程を実施しうる任意の装置を用いて実施することができる。
レーザ照射による第1及び第2熱処理工程は、蒸気タービン翼形状に加工した母材に対して実施することができる。母材としては、耐食性、耐エロージョン摩耗性に優れたステンレス鋼を用いることができ、特には、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼から選択されるステンレス鋼を用いることが好ましい。当該所定の鋼材を、所定の翼形状に成形し、本実施形態における母材とすることができる。母材のレーザ照射部は、レーザ照射前に、必要に応じて、研磨紙で磨くなどの物理的表面処理や、母材強度等の特性に影響を与えないその他の表面処理を行ってもよい。レーザ吸収率のばらつきを抑制するためである。
第1熱処理工程におけるレーザ照射部は、蒸気タービン翼として用いる場合に腐食が発生しやすい部位であり、例えば、周速が大きくなる翼先端近傍の部位や、厚さが薄い周縁部位などであってよく、典型的には翼前縁部表面である。図2は、典型的な蒸気タービン翼を模式的に示す図である。図2において、蒸気タービン翼1の翼前縁部であって、翼先端12部から、翼長手方向の1/3〜1/2程度までが、特に腐食が発生しやすい部位である。典型的には、この部位にレーザスポットSを照射し、レーザ照射による第1熱処理(硬化)を行って、後に詳述する高硬度層10を形成することが好ましい。
レーザ照射には、レーザ発生器21及びレーザ照射ヘッド22を用いることができる。レーザ発生器21(レーザ光源)としては、半導体レーザを用いることが好ましい。レーザ照射ヘッド22はレーザ発生器21で発生したレーザ光Lを集束する集束レンズ(図示せず)を有し、この集束レンズを通過したレーザ光Lが、蒸気タービン翼1の翼前縁部10表面に、照射される。レーザ照射ヘッド22は、レーザ照射部の母材表面で反射したレーザ光Lが、レーザ装置に入射するのを防ぐことが可能な態様で配置される。具体的には、レーザ光Lが母材表面に対し、例えば45°の角度で照射されるように配置することが好ましいが、特定の照射角度には限定されない。
レーザ照射による第1熱処理工程においては、レーザ光を翼前縁部に沿って、好ましくは、図2中、翼先端12部から、翼脚13側の端部へ向かう方向にレーザ光を走査して焼入れを行う。本明細書中で翼先端12部、翼脚13側の端部とは、予め決められたレーザ照射領域中における相対的な位置関係を示すものであり、レーザ照射領域中、長手方向の翼先端12に近い一端を翼先端12部、翼脚13に近い一端を翼脚13側の端部ということができる。走査は、レーザ光が形成するレーザスポットが、母材に対して相対的に移動する態様であればよい。レーザ光の走査速度は、例えば、1〜5mm/secとすることができるが、特定の値には限定されない。レーザ光の走査は、レーザ光走査機構24により実施することができる。レーザ光走査機構24はレーザ照射ヘッド22を駆動してレーザ光Lを二次元方向に走査可能な装置である。レーザ光走査機構24は、例えばレーザ照射ヘッド22をX方向(図1中左右方向)に駆動するX方向駆動機構部と、レーザ照射ヘッド22をY方向(図1中紙面に対して垂直な方向)に駆動するY方向駆動機構部(いずれも図示せず)とから構成することができる。照射ヘッド位置検出器23はレーザ照射ヘッド22の位置を検出するものであって、レーザ光走査機構24に付設されていてもよい。母材は通常、三次元形状に加工されているため、予めタッチセンサ等で母材の三次元形状を記憶させる。その後レーザ照射ヘッド22を照射ヘッド位置検出器23で位置決めして、レーザ光走査機構24により、走査することができる。
レーザスポットは、所望の焼入れ幅を実現する照射幅をもった矩形形状であることが好ましく、長方形であることが好ましい。照射幅とは、レーザ光の走査方向に直行するスポットの長さをいうものとする。そして、走査に伴って照射面積を変化させ、翼先端12部近傍の照射部における照射面積(スポット面積)が、翼脚13側の照射部における照射面積より大きくなるようにレーザ光を照射することが好ましい。これは、第1熱処理工程により形成される高硬度層10の境界部における残留応力を緩和するためである。高硬度層10の翼脚13側に近い、未処理母材との境界部、特に位置Xにおいて残留応力が大きくなり、孔食やSCCの原因になっていた。これに対し、翼脚13側のレーザ照射部における照射面積を相対的に小さくすることで、位置X近傍における残留応力を緩和しつつ、必要な硬化処理を実施することができる。照射面積を変化させる際には、照射幅を変更することなく、走査方向に平行な照射長さを減少させることが好ましい。一例として、レーザスポット形状を、照射幅が30〜50mmで、走査方向に平行な照射長さが、50mmから10mmの範囲で変化する長方形とすることができるがこれには限定されない。
特に好ましい態様によれば、照射面積は翼先端12部から、翼脚13側に向けて、レーザスポットを移動させる際に、時間の経過に伴って、レーザ照射面積を減少させることができ、例えば、一次関数的に、指数関数的に、あるいは段階的に照射面積を減少させることができるが、特定の態様に限定されるものではない。残留応力を極力不均一にしないという観点からは、一次関数的に照射面積を減少させることが好ましい。
第1熱処理工程においては、また、1050℃〜1250℃の範囲の温度でレーザ光を照射することが好ましい。ここで、1050℃〜1250℃の範囲の温度とは、レーザ照射部の表面温度をいうものとする。この温度が、1050℃未満では、焼入れ深さが大きく低下し、必要焼入れ深さである2mmを下回ってしまう場合がある。また、温度が1250℃より高いと、残留応力が大きくなりすぎる場合がある。図1に示す硬化処理装置2では、制御装置25および放射光検出器26から構成される温度制御系により、照射部の表面温度を一定の値に制御することができる。このため、レーザ照射による熱処理工程では、レーザ照射部は母材表面が溶融しない温度で精密に熱処理を行っている。
照射部の表面温度の制御は、フィードバック制御により実施することができ、例えば、レーザ照射部からの熱放射光に基づき、レーザ照射部温度を検知する工程と、レーザ照射部温度を指標として、前縁部表面の温度が、上記所定の温度範囲にある値となるように、レーザ出力をフィードバック制御する工程とを含む。
図1では、放射光検出器26として、例えば赤外線カメラを用いることができる。この場合、まず、次式に示す熱放射光エネルギーと温度の関係式を利用し、放射光検出器26がとらえたレーザ加熱部から放射される熱放射光強度を基に温度換算を行う。プランクの放射則(熱放射光エネルギーと温度の関係式)を示す。
Figure 0006772650
上記数式中、
Me:測定された熱放射光エネルギー
ε:放射率(温度、材質、表面状態等により常時変化)
α:測定光学系の受光特性係数
λ:波長
:定数
:定数
T:温度
をそれぞれ表している。本実施形態においては、Meは、放射光検出器26で検出される熱放射光エネルギーの測定値である。εは被測定系、α、λ、C、Cは測定系に固有の数値である。この機能により計測したレーザ照射部の温度を制御指標として、制御装置25が、レーザ発生器21のレーザ出力にフィードバック制御を行うことで、精確な温度制御を行うことができる。
図1に示す装置を用いたレーザ照射による熱処理工程におけるフィードバック制御の一例について、より具体的に説明する。母材の前縁部10にレーザ光Lがレーザ照射ヘッド22から照射される。次にレーザ光Lがレーザ光走査機構24により二次元方向に走査されると、制御装置25は照射ヘッド位置検出器23の出力を取り込み、レーザ照射ヘッド22がレーザ光Lの照射完了位置に到達したか否かを判定する。ここで、レーザ照射ヘッド22がレーザ照射完了位置に到達している場合は、レーザ発生器21の出力を零まで下げた後、レーザ照射による熱処理工程を終了する。なお、本発明において、レーザ照射完了位置は、第1熱処理工程のみを実施する場合と、第1熱処理工程と、後に詳述する第2処理工程とを連続して実施する場合とで異なるが、いずれの場合も、レーザ照射による熱処理工程を実施するため、同様にフィードバック制御を実施することができる。
レーザ照射ヘッド22がレーザ照射完了位置に到達していない場合には、制御装置25は熱放射光検出器26の出力を取り込み、出力である熱放射光Mの強度に基づいて温度を換算し、所定の上限温度以下であるか否かを判定する。換算した温度が、上限温度を上回っている場合には、制御装置25は上限温度以下の温度に対応する熱放射光Mの強度となるようにレーザ発生器21のレーザ出力を制御する。具体的には、熱放射光Mの検出強度と上限温度に対応する強度との偏差を変数とする函数fに従ってレーザ発生器21のレーザ出力を制御する。その後、照射ヘッド位置検出器23の出力を取り込むステップに戻る。
一方、熱放射光検出器26により検出された熱放射光Mの強度が上限温度に対応する強度以下の場合には、制御装置25は熱放射光検出器26により検出された熱放射光Mの強度が、所定の下限温度に対応する下限強度以上であるか否かを判定する。ここで、強度が下限強度以上の場合は、照射ヘッド位置検出器23の出力を取り込むステップに戻る。また、熱放射光検出器26により検出された熱放射光Mの強度が下限強度を下回っている場合には、制御装置25は、下限温度に対応する下限強度以上となるようにレーザ発生器21の出力を制御する。具体的には、制御装置25はレーザ発生器21の出力が現在の出力に例えば40Wを加算した出力となるようにレーザ発生器21の出力を制御する。その後、照射ヘッド位置検出器23の出力を取り込むステップに戻る。
このようにして、フィードバック制御は、レーザ光の照射開始から完了までの間、繰り返し行われる。これにより、精確に温度制御されたレーザ照射による熱処理工程を実施することができる。
任意選択的な工程として、第1熱処理工程に次いで、第2熱処理工程を実施することができる。第2熱処理工程は、好ましくは第1熱処理工程と連続的に実施するレーザ照射による熱処理工程であって、高硬度層10からさらに翼脚13に向かって、照射幅を減少させて、母材にレーザ照射する工程である。この工程においては、レーザの送り角度を、母材の翼前縁部に対して、図2で示される所定の角度θだけ傾斜させることにより実施することができる。角度θは、0°より大きく、35°以下とすることが好ましい。この範囲で、残留応力低減効果が高いためである。レーザの送り角度を変更する操作は、図1に示す硬化処理装置2のレーザ光走査機構24により実施することができる。これにより、レーザスポットの一部が母材から外れて、母材上のレーザ照射幅が減少し、母材に対するレーザ照射面積も減少する。この際のレーザ照射ヘッド22から出射されるレーザ光自体のスポット形状は第1熱処理工程の完了時から変化させなくてもよく、時間とともに減少させてもよい。また、本工程においても、レーザ照射部の表面温度を所定の温度範囲とすることが好ましく、例えば、第1熱処理工程と同じ温度範囲とすることができるが、より低い温度範囲に設定することもできる。そして、第1熱処理工程において説明したのと同様に、温度制御を実施することができる。
レーザ照射による第1熱処理工程後または、第2熱処理工程を行う場合には第2熱処理工程後であって、好ましくは、母材の温度が常温程度まで下がった後に、任意選択的に後熱処理工程を実施することができる。このとき、母材の除熱のために、気体の吹付等の除熱工程を実施してもよい。母材の温度が常温程度まで下がった後、例えば、1時間から1日後に後熱処理工程を実施することが好ましい。後熱処理工程での焼き割れを防止するためである。
後熱処理工程は、前記前縁部表面温度が250℃〜300℃となる温度で後熱処理を行うことが好ましい。この後熱処理を行う工程によって、先のレーザ照射による熱処理工程で生じうる、硬化層周辺の応力を低減させることができる。後熱処理工程は、好ましくは、母材全体を加熱することにより実施することができるが、生産性の面で時間が問題ない場合は、上記全体を加熱する他、局所的に加熱してもよい。例えば、母材を加熱炉に投入し、250℃〜300℃の範囲内の温度で、所定時間保持する。保持時間は、残留応力の低減効果を達成可能な範囲で当業者が適宜決定することができる。加熱温度が250℃より低いと残留応力の低減効果が低くなる場合があり、300℃より高いと焼戻し脆化と呼ばれる耐食性の低下を招いてしまう場合がある。なお、ここでいう後熱処理温度は、炉内温度ではなく母材表面温度をいい、例えば、母材表面に貼り付けた熱電対等により測定した値をいうものとする。
より好ましくは、母材を常温の炉中に投入し、例えば、50〜150℃/hの昇温速度で昇温し、温度250℃〜300℃の範囲内の一定温度で、好ましくは上記所定時間保持した後、炉内で徐冷し、常温に戻ってから取り出すことができる。
第1熱処理工程を経て得られた蒸気タービン翼は、レーザ照射部に、硬度が450Hv以上、焼入れ深さが2mm以上の高硬度層が形成される。本明細書において、焼入れ深さとは、レーザ照射部の断面のビッカース硬さを測定し、450Hv以上の硬度をもつ部位の深さをいうものとする。焼入れ深さは、硬化深さという場合もある。本明細書においては、ビッカース硬度を例示して説明しているが、例えば、ロックウェル、ブリネル、ヌープ硬度などの他の硬度試験を用いて、測定し、ビッカース硬度の値に換算して、硬度を特定することができる。本発明において、このような硬度を持つ領域を、高硬度層と指称する。図2を参照すると、第1熱処理工程により、タービン翼前縁部であって、翼先端12から長手方向に約1/3〜1/2程度の領域に、所定の略均一な焼入れ幅を有する高硬度層10が形成される。そして、高硬度層10中、レーザ照射面積を大きくした翼先端12部は焼入れ深さが相対的に大きく、レーザ照射面積を小さくした翼脚13に近い部分は焼入れ深さが相対的に小さくなっている。焼入れ深さは、2mm以上であって、例えば、10mm以下程度の範囲で分布させることができるが、この範囲には限定されない。
また、第1熱処理工程に次いで第2熱処理工程を実施して得られた蒸気タービン翼は、図2に示すように、高硬度層10と、焼入れ層11とが形成される。焼入れ層11とは、高硬度層10と連続して、高硬度層10よりも翼脚側に形成される硬化層であって、高硬度層10と比較して、焼入れ幅が減少していく部分の層をいうものとする。焼入れ層11の硬度は、高硬度層10の硬度よりも小さくてもよく、また、焼入れ深さが2mm未満であってもよい。焼入れ層11は、高硬度層10から翼脚13側に向かって、焼入れ幅が減少し、焼入れ層11の翼脚13側先端部が、翼前縁部と角度θをなしている。焼入れ層先端の角度θが、0°より大きく、35°以下であることが好ましい。焼入れ層11先端の角度θは、図2中、翼前縁部の先端部Z、焼入れ層11先端Y、及び、焼入れ幅を変化させる点Xで形成される角度ということもできる。なお、タービン翼は、表面に凹凸が存在する複雑な三次元形状をなす場合があり、ここでいう角度は、タービン翼を、その照射面を上面になるように置いた場合に、平面投射した角度をいうものとする。焼入れ層11先端部の角度θを、0°より大きく、35°以下とすることで、焼入れ幅を変化させる点Xにおける残留応力を低減することができるためである。角度θは、例えば5〜30°とすることがより好ましいが、これらには限定されない。
第1熱処理工程、または第1熱処理工程及び第2熱処理工程を実施して得られた蒸気タービン翼は、上記高硬度層及び焼入れ層の特徴は変わらず、これらの境界部における残留応力がさらに低下している。
本実施形態に係る蒸気タービン翼の製造方法によれば、任意の蒸気タービン翼の製造に適用することができ、特には、火力発電用の蒸気タービン翼の製造に好適である。そして、得られた蒸気タービン翼は、耐エロージョン性と耐SCC性を両立するものとなっている。
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[1:照射面積と残留応力の関係]
13Cr鋼を母材として、本発明に係る蒸気タービン翼を製造したレーザ吸収率のばらつきを抑制するために、蒸気タービン翼の形状に加工した母材の前縁部表面をあらかじめ♯60〜♯120程度の粗さの研磨紙で磨いた。レーザ照射による熱処理工程には、半導体レーザ(laserline社製)を用いた。レーザスポットは、照射幅を暫定として40mmに固定し、走査方向の照射長さを変化させた(照射長さとは、レーザ光の走査方向に平行するスポットの長さをいうものとする。)。また、照射長さは、熱処理工程に要する時間全体で熱処理に支障がない範囲で変化させている。走査速度は、1mm/sとした。温度制御には赤外線カメラを用い、母材の照射部の表面温度(焼入れ温度)が、1200℃で一定になるように、レーザ出力をフィードバック制御により変動させて加熱した、高硬度層を形成した。この母材を、大気中に静置して徐冷し、室温に戻し、本発明に係る蒸気タービン翼を得た。得られた蒸気タービン翼の高硬度層と未処理母材との境界部における残留応力を測定した。残留応力は、当該測定部位の表面酸化層を電解研磨により除去し、表面からX線回折法に基づいて測定した。結果を図3に示す。なお、残留応力は、所定の照射面積における実測値を1とした規格値で表す。図3の結果から、レーザ照射面積を小さくすることにより、高硬度層の境界部における残留応力を低減することが可能になることが示された。
[2:角度と残留応力の関係]
上記1と同じ母材に対して、同じ半導体レーザを用いて熱処理を行った。レーザスポットは、照射幅を40mm、走査方向の長さを40mmとし、処理の過程で照射面積は変更せず、図2中、Xで示す所定の点から母材に対するレーザの送り角度、すなわち、図2の角度θを25〜45°の範囲で変化させた。母材の照射部の表面温度は、1200℃となるようにフィードバック制御を行った。その他の条件は上記1と同様にして、図2の位置Xにおける残留応力を測定した。結果を図4のグラフに示す。なお、残留応力は、角度θが45°の場合における実測値を1とした規格値で表す。図4の結果から、角度θが35°以下の範囲において、残留応力が大幅に低下することが示された。グラフには示さないが、角度θが25°未満においても減少傾向を示すことが合理的に推測される。
[3:後処理温度と残留応力の関係]
上記1と同じ母材に対して、同じ半導体レーザを用いて熱処理を行った。レーザスポットは、照射幅を40mm、走査方向の長さを40mmとし、処理の過程で照射面積は変更しなかった。また、上記2と同様に、図2中、Xで示す所定の点から母材に対するレーザの送り角度θを45°とした。母材の照射部の表面温度は、1200℃となるようにフィードバック制御を行った。レーザ照射による熱処理後、温度を変えて後熱処理を実施した。後熱処理は、母材全体を、炉中で加熱することにより実施した。その他の条件は上記1と同様にして、図2の位置Xにおける残留応力を測定した。結果を図5のグラフに示す。なお、残留応力は、後熱処理温度が225℃の場合における実測値を1とした規格値で表す。図5の結果から、後熱処理温度が250〜300℃の範囲において、残留応力が有意に低下することが示された。
本発明の方法により製造された蒸気タービン翼は、発電用に好ましく用いられる。例えば、火力発電用蒸気タービン翼として好適に用いられる。
1 蒸気タービン翼
10 高硬度層
11 焼入れ層
12 翼先端
13 翼脚
2 硬化処理装置
21 レーザ発生器
22 レーザ照射ヘッド
23 照射ヘッド位置検出器
24 レーザ光走査機構
25 制御装置
26 放射光検出器

Claims (7)

  1. 蒸気タービン翼形状に加工した母材の翼前縁部に、所定の照射面積でレーザ光を照射する第1熱処理工程を含む蒸気タービン翼の製造方法であって、
    翼先端部におけるレーザ照射面積が、翼脚側の端部におけるレーザ照射面積よりも大きく、前記第1熱処理工程において、前記レーザ光が翼先端部から翼脚側の端部に向けて走査され、照射長さを減少させることにより、前記レーザ照射面積を時間経過に伴い減少させる、方法。
  2. 前記第1熱処理工程におけるレーザ光照射部よりも翼脚側に、照射幅を減少させてレーザ光を照射する第2熱処理工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第2熱処理工程におけるレーザ光照射部の翼脚側先端部の平面投射角度が、0°より大きく35°以下である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1及び/または第2熱処理工程後の母材を、温度250℃〜300℃で加熱する後熱処理工程をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記第1及び/または第2熱処理工程が、
    レーザ照射部からの熱放射光に基づき、レーザ照射部の前記前縁部表面温度を検知する工程と、
    前記レーザ照射部の前記前縁部表面温度が、所定温度となるようにレーザ出力をフィードバック制御する工程と
    を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記母材が、フェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により製造された蒸気タービン翼。
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