JP2016166543A - 被処理部材の硬化処理方法及び硬化処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被処理部材1の曲面形状を有する被処理面2にレーザビームを照射してレーザスポット8を形成し、被処理面に硬化層を形成する方法である。先ず、レーザスポットの曲面に沿う方向を走査して複数測定位置の熱放射光を測定する。次いで、複数測定位置の熱放射光のそれぞれに対して、波長が異なる2つの分光熱放射光に分光し、これら2つの分光熱放射光の強度の比を求めることで複数測定位置の各温度を算出する。次いで、複数測定位置の前記各温度のうち一番高い値を、レーザスポットの最高温度に設定する。そして、このレーザスポットの最高温度が目標最高温度に近づくようにレーザビームのレーザ出力値を制御する。
【選択図】図2
Description
このエロージョン摩耗を低減する技術として、エロージョンによって侵食される前縁部に火炎トーチ、或いは高周波誘導加熱を用いた硬化処理を行うことで、前縁部の耐エロージョン性を向上させる技術が知られている。
一方、例えば特許文献1に記載されているレーザビームの照射による前縁部の硬化処理は、入熱管理が容易、且つ微細処理が可能であり、様々なタービン翼形状に追従可能なので、火炎トーチ及び高周波誘導加熱による前縁部の硬化処理の問題を解決することができる。
また、タービン翼に用いられるステンレス鋼は硬化処理時の過加熱により、溶融や異常な金属組織の析出が発生することで硬度低下が生じ、耐エロージョン性の悪化を招くおそれがある。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザビームを照射した被処理面のレーザスポットから放射される熱放射光の強度に基づいてレーザスポットの温度を高精度に測定することで、被処理面に、高品質で高深度の硬化層を形成することができる被処理部材の硬化処理方法及び硬化処理装置を提供することを目的としている。
[第1実施形態:タービン翼硬化処理装置]
図1の符号1は、蒸気タービンを構成するタービン低圧段翼(タービン翼と略称する)であり、このタービン翼1の前縁部2に、液滴化した蒸気が衝突することでエロージョン摩耗が生じやすい。
図2は、タービン翼1の前縁部2にレーザビームを照射することで前縁部2に硬化層を形成する本発明に係る第1実施形態のタービン翼硬化処理装置である。
レーザ発生器3は、タービン翼1の前縁部2の表面に照射されるレーザビーム7を発生するものであって、例えば発振波長が940nm±10nm及び980nm±10nmの半導体レーザで構成されている。
レーザ照射ヘッド4は、図示しない移動駆動装置に連結し、図1で示す前縁部2の先端2aから基端側2bに向かう送り方向(図2において紙面に直交する方向)に移動可能とされ、レーザビーム7が前縁部2の表面に照射されることで、前縁部2の表面の先端2aから基端側2bにレーザスポット8が連続的に形成されていく。
熱放射光検出器5は、図3に示すように、レーザスポット8から放射される熱放射光Bを集光する集光部10と、集光部10で集光した熱放射光Bを異なる波長(1300nm、1550nm)の2つの分光熱放射光Ba,Bbに分光するビームスプリッター11と、前記2つの分光熱放射光Ba,Bbのエネルギー(強度)を測定する2つのフォトセンサー12,13と、ビームスプリッター11とフォトセンサー12,13との間に設けられた光軸調整機構14,15とを備えている。
また、光軸調整機構14,15は、ビームスプリッター11からフォトセンサー12,13に向う分光熱放射光Ba,Bbが、フォトセンサー12,13の測定スポットに向うように光軸を調整する機構である。
入力ポート21には、分光熱放射光Baのエネルギー(強度)MeA及び分光熱放射光Bbのエネルギー(強度)MeBが入力する。ここで、揺動ミラー17が揺動動作を行うことで、レーザスポット8の曲面に沿う方向の分光熱放射光Baのエネルギー(強度)MeA及び分光熱放射光Bbのエネルギー(強度)MeBが入力ポート21に入力する。
ROM24は、レーザスポット8の最高温度を算出する最高温度設定部26と、レーザスポット8の最高温度に対応したレーザ発生器3のレーザ出力値の最適値を算出するレーザ出力値設定部27とが記憶されている。
RAM22は、最高温度設定部26及びレーザ出力値設定部27の演算で使用する演算値や中間データを蓄積する領域が設けられている。
そして出力ポート23は、レーザ出力値設定部27で演算したレーザ出力値LSをレーザ発生器3に出力する。
最高温度設定部26は、先ず、揺動ミラー17の揺動動作により図1に示すタービン翼1の前縁部2の曲面に沿う方向(幅方向)を、レーザスポット8を横切るようにして例えば測定位置Lから測定位置Rまで(あるいは測定位置Rから測定位置Lまで)走査する間に、フォトセンサー12,13から入力ポート21を介して入力した分光熱放射光Baのエネルギー(強度)MeA及び分光熱放射光Bbのエネルギー(強度)MeBのうち、所定計測時間毎のエネルギー(強度)MeA,MeBを読み込む。
αA:分光熱放射光Baの測定光学系の受光特性係数
λA:分光熱放射光Baの波長(1300nm)
C1:定数
C2:定数
T:温度
αB:分光熱放射光Bbの測定光学系の受光特性係数
λB:分光熱放射光Bbの波長(1550nm)
C1:定数
C2:定数
T:温度
このように、揺動ミラー17の揺動動作により図1に示すタービン翼1の前縁部2の曲面に沿う方向(幅方向)を、レーザスポット8を横切るようにして例えば測定位置Lから測定位置Rまで(あるいは測定位置Rから測定位置Lまで)走査する間に、フォトセンサー12,13から入力した分光熱放射光Baのエネルギー(強度)MeA及び分光熱放射光Bbのエネルギー(強度)MeBを、所定計測時間毎に読み込み、所定計測時間毎に温度Tを算出することにより、タービン翼1の前縁部2の曲面に沿う方向(幅方向)、すなわちレーザスポット8の曲面に沿う方向での複数測定位置の各温度Tが求められる。
そして、最高温度設定部26は、複数測定位置の各温度Tのうち、一番高い温度をレーザスポット8の最高温度TMAXに設定する。
RAM22には、予め、タービン翼1の材質、レーザスポット8の面積、硬化層の深さに対応したレーザスポット8の目標最高温度TPが記憶されている。
レーザ出力値設定部27は、最高温度設定部26で設定したレーザスポット8の最高温度TMAXと目標最高温度TPとを比較し、最高温度TMAXが目標最高温度TPより低い場合には、現在の値より大きな値のレーザ出力値LSを算出し、最高温度TMAXが目標最高温度TPより高い場合には、現在の値より小さな値のレーザ出力値LSを算出する。
レーザ照射ヘッド4は、タービン翼1の前縁部2の先端2aに配置され、移動駆動装置によりレーザ照射ヘッド4を基端側2bに向う送り方向に所定速度で移動していくとともに、熱放射光検出器5の揺動ミラー17の揺動動作が行われる。
ここで、レーザ照射ヘッド4が第1回目の送り量で送り方向に移動した後に、集光部10が図1の測定位置Lから測定位置Rに向って走査しながら熱放射光Bを集光するように揺動ミラー17が揺動動作を行い、第2回目の送り量でレーザ照射ヘッド4が送り方向に移動した後に、集光部10が測定位置Rから測定位置Lに向って走査しながら熱放射光Bを集光するように揺動ミラー17が揺動動作を行い、このような動作を繰り返すように移動駆動装置及び揺動ミラー17が動作する。
レーザスポット8の曲面に沿う方向に走査しながら集光された熱放射光Bは、ビームスプリッター11を通過することで波長が異なる2つの分光熱放射光Ba,Bbに分光され、分光熱放射光Ba,Bbの強度が2つのフォトセンサー12,13で測定される。
熱放射光検出器5が、レーザスポット8の曲面に沿う方向を走査して複数測定位置の熱放射光を測定し、制御装置6の最高温度設定部26が、複数測定位置の各温度のうち一番高い温度Tをレーザスポット8の最高温度TMAXとすることで、曲面形状であるレーザスポット8の最高温度TMAXを高精度に測定することができる。
なお、図2に示すタービン翼硬化処理装置を用いて蒸気タービン翼1の前縁部2を硬化処理する場合は、レーザ吸収率のばらつきを抑制するために、蒸気タービン翼1の前縁部2の表面をあらかじめ♯80の研磨紙で磨いておくことが好ましい。
次に、図7は、タービン翼硬化処理装置を構成する第2実施形態の熱放射光検出器5を示すものであり、この図7で示す熱放射光検出器5は、第1実施形態のタービン翼硬化処理装置において、図3で示した熱放射光検出器5の代わりに設けられるものである。この図7において、図3で示した熱放射光検出器5と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
この第2実施形態の熱放射光検出器5によると、レーザスポット8の曲面に沿う方向を走査しながら集光された熱放射光Bは、集光部10のミラー16、揺動ミラー17、絞り20、ミラー18,19を通過して集光レンズ30で集光され、さらに光ファイバー31を通過した後にビームスプリッター11で2つの分光熱放射光Ba,Bbに分光される。
2,13にて異なる位置の熱放射光を検出するため、分光熱放射光のエネルギー(強度)MeA,MeB の比がズレることで測定される温度Tにばらつきが生じる可能性がある。
なお、上述の実施形態では、本発明による硬化処理の被処理部材として特にタービン翼を対象とした構成例を示したが、本発明による硬化処理の被処理部材はタービン翼に限定されるものではない。
この硬化処理を施した試験片を厚さ方向に切断して得られた試験片の硬化層の硬さを硬さ試験機で測定したところ、硬さが450Hv以上、硬化層の硬化深さが6mm以上にわたって得られていた。ここで、硬化層の表層は溶融していない。
調査の結果、硬さが450Hv以上、硬化深さが6mm以上の高硬度層を得るためには、レーザスポットの面積を600mm2以上に設定すればよいことがわかった。
したがって、タービン翼1の前縁部2表面にレーザビーム7を照射して前縁部2を硬化処理するに際して、レーザスポット8の面積が600mm2以上となるレーザビーム7を照射することで、硬さが450Hv以上、硬化深さが6mm以上の硬化層をタービン翼1の前縁部2に形成することが可能となり、これにより、エロージョン摩耗に対するタービン翼1の寿命を延ばすことができる。その結果、メンテナンスフリーとなるタービン翼1を得ることができる。
2 前縁部
2a 先端
2b 基端側
3 レーザ発生器
4 レーザ照射ヘッド
5 熱放射光検出器
6 制御装置
7 レーザビーム
8 レーザスポット
9 連結部材
10 集光部
11 ビームスプリッター
12,13 フォトセンサー
14.15 光軸調整機構
16,18,19 ミラー
17 揺動ミラー
17a 回動軸
20 絞り
21 入力ポート
22 演算処理部
23 出力ポート
24 ROM
25 RAM
26 最高温度設定部
27 レーザ出力値設定部
30 集光レンズ
31 光ファイバー
B 熱放射光
Ba,Bb 分光熱放射光
MeA,MeB 分光熱放射光のエネルギー(強度)
LS レーザ出力値
T 熱放射光温度
TMAX 最高温度
TP 目標最高温度
Claims (8)
- 被処理部材の曲面形状を有する被処理面にレーザビームを照射してレーザスポットを形成し、前記被処理面に硬化層を形成する際に、
前記レーザスポットの前記曲面に沿う方向を走査して複数測定位置の熱放射光を測定し、
前記複数測定位置の前記熱放射光のそれぞれに対して、波長が異なる2つの分光熱放射光に分光し、
これら2つの分光熱放射光の強度の比を求めることで前記複数測定位置の各温度を算出し、
前記複数測定位置の前記各温度のうち一番高い値を、前記レーザスポットの最高温度に設定し、
このレーザスポットの最高温度が目標最高温度に近づくように前記レーザビームのレーザ出力値を制御する、ことを特徴とする被処理部材の硬化処理方法。 - 前記被処理部材は、前記被処理面を前縁部の表面とした蒸気タービン翼であり、
この蒸気タービン翼の前記前縁部の先端から基端側に向う方向を送り方向とし、この送り方向に沿って前記レーザスポットを連続的に形成していくことを特徴とする請求項1記載の被処理部材の硬化処理方法。 - 前記レーザスポットの面積が600mm2以上のレーザビームを照射することで、硬さが450Hv以上、硬化深さを6mm以上とした前記硬化層を前記被処理面に形成することを特徴とする請求項1又は2項記載の被処理部材の硬化処理方法。
- 前記被処理部材の材質がフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼及び析出硬化系ステンレス鋼の何れか一つであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の被処理部材の硬化処理方法。
- 被処理部材の曲面形状を有する被処理面にレーザビームを照射するレーザ照射装置と、
前記被処理面に形成された前記レーザビームのレーザスポットから放射される熱放射光の強度を測定する熱放射光測定部と、
この熱放射光測定部が出力した情報に基づいて前記レーザ照射装置に前記レーザビームのレーザ出力値を出力する制御部と、を備え、
前記熱放射光測定部は、
前記レーザスポットから放射される熱放射光を集光する集光部と、
集光した熱放射光を波長が異なる2つの分光熱放射光に分光するビームスプリッターと、
前記2つの分光熱放射光の強度を測定する2つのフォトセンサーと、を備え、
前記制御部は、
前記2つのフォトセンサーが測定した前記2つの分光熱放射光の強度の比に基づいて前記レーザスポットの最高温度を算出する温度算出部と、
この温度算出部で算出した前記レーザスポットの最高温度及び予め設定している目標最高温度を比較し、前記レーザスポットの最高温度が前記目標最高温度に近づくように前記レーザ照射装置が照射する前記レーザビームの前記レーザ出力値を変更する出力値変更部と、を備えていることを特徴とする被処理部材の硬化処理装置。 - 前記熱放射光測定部は、前記レーザスポットの前記曲面に沿う方向を走査するスキャナー部を備え、
前記温度算出部は、前記スキャナー部の走査により前記レーザスポットの前記曲面に沿う方向に複数測定位置の熱放射光を測定し、これら複数測定位置の熱放射光のそれぞれに対して、前記2つの分光熱放射光の強度の比に基づいて前記複数測定位置の各温度を算出し、前記複数測定位置の各温度のうち一番高い値を、前記レーザスポットの最高温度とする、
ことを特徴とする請求項5記載の被処理部材の硬化処理装置。 - 前記熱放射光測定部の前記2つのフォトセンサーに、前記ビームスプリッターから流れてきた前記2つの分光熱放射光の軸位置を調整する光軸調整機構を設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の被処理部材の硬化処理装置。
- 前記熱放射光測定部のビームスプリッターに向う途中に、前記レーザスポットから放射された熱放射光が通過する光ファイバーを設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の被処理部材の硬化処理装置。
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